JP4192411B2 - 偏光板用保護フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶画像表示装置の寸法安定性に優れた偏光板用保護フィルムに関し、詳しくはポリマーを含有する偏光板用保護フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、セルローストリアセテートフィルムはハロゲン化銀写真感光材料のベースフィルムとして使用されて来た。このセルローストリアセテートフィルムを偏光板用保護フィルムに転用していたが、ハロゲン化銀写真感光材料にはない用途的な要求がされている。ハロゲン化銀写真感光材料と同様に、偏光板用保護フィルムにおいても、セルローストリアセテートフィルムには柔軟性や疎水性を付与する目的で可塑剤が含有されている。
【0003】
近年、ノートパソコン、カーナビゲーション、携帯電話、ゲーム機等の、液晶を搭載した情報機器の薄型、軽量化に関する開発が進んでいる。それに伴って、液晶表示装置に用いられる偏光板用保護フィルムに対してもますます薄膜化の要求が強くなって来ている。そのため、偏光板用保護フィルムはハロゲン化銀写真感光材料ベースフィルムよりも、極端に薄手化される方向にある。フィルムを薄膜化すると透湿性が低下し、湿度特に高温多湿の環境において液晶画像表示装置の機能が低下する。
【0004】
可塑剤は流延後乾燥中にウェブの厚さ方向で移行してウェブ中での分布が不均一になり、可塑剤がウェブ表面に析出したり、蒸発または揮発して装置の壁などにコンデンスして蓄積され、それが液滴となってウェブやロールを汚したりする。セルローストリアセテートフィルムを単純に薄膜化すると、透湿性が劣化し、十分に水分をカットすることが出来ず、偏光板形成後に偏光子や偏光子とセルローストリアセテートフィルムを貼り合わすのに使用した接着剤が劣化を起こす事があった。この対策として薄膜化した分だけ、可塑剤を増量することが考えられるが、可塑剤を単純に増量するだけでは、可塑剤のセルローストリアセテートフィルム表面への析出などがますます激しくなり、ハロゲン化銀写真感光材料用のベースフィルムで発現していた以上の、新たな問題を引き起こすことが判明した。高温多湿の環境下で、可塑剤等の添加剤がフィルム外に析出や揮発すること等によりフィルムの質量が減量する性質を保留性というが、従来のセルロースエステルフィルムではこの保留性が悪く液晶画像表示装置の機能低下を来している。
【0005】
また、可塑剤を増量することで、セルローストリアセテートフィルムのガラス転移点(以降、Tgということがある)がますます低下し、フィルムの軟化によってセルローストリアセテートフィルムの寸法安定性(収縮率、吸湿膨張係数、熱膨張係数)が劣化する(大きくなる)という問題があった。
【0006】
これらの対策として、ポリエステル、ポリエステルエーテル、あるいはポリウレタンエーテル等のポリマーを、あるいは低分子可塑剤と併用して高分子可塑剤として含有する技術が提案されている。例えば、特公昭47−760号、同43−16305号、特開平5−197073号公報、米国特許第3,054,673号、同第3,277,031号明細書を挙げることが出来る。また、アクリル系のポリマーをセルローストリアセテートフィルムに、またはアクリル系モノマーをセルローストリアセテート存在下で重合させて含有させる技術も提案されている。しかし、高分子可塑剤がセルローストリアセテートドープ中、乾燥中のウェブ、あるいはフィルム形成後、セルローストリアセテートとポリマーとが相分離し透明度を落としたり、水分の透過性を低下させたり、フィルムが均一的に収縮しなかったり、伸縮率が低下したりするといった課題があることがわかった。また、偏光板用保護フィルムには紫外線吸収剤が添加されていることがあるが、可塑剤同様、製膜中にフィルム表面に析出したり、蒸発または揮発して汚れの原因となったり、セルロースエステルフィルムを鹸化処理する際に添加した紫外線吸収剤が粒子化したり、結晶化したりして析出することもある。その対策として特開平6−148430号公報には高分子紫外線吸収剤をドープ中に添加して製膜している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来使用されている厚手のセルロースエステルフィルムを単純に薄膜化すると、低分子可塑剤がセルロースエステルフィルム中に存在することによるフィルムのTgが低下し収縮し易かったり、セルロースエステルフィルム中に含有されている低分子可塑剤が、フィルム製造中、あるいは高温高湿の雰囲気中でフィルムから一部が外に出ることで、フィルムや装置を汚したり、あるいはフィルムの収縮を助長したりして、上記のような様々な問題を発生するということを詳細に検討した結果、上記の課題を解決するに至った。
【0008】
本発明の第1の目的は、製膜中に低分子可塑剤等添加剤が析出、揮発または蒸発してフィルムや装置を汚さない偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを提供することにある。第2の目的は、添加物を含有してもガラス転移点が低下しない偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを提供することにある。第3の目的は、透湿性に耐性を有し、高温高湿や高湿の条件下でも伸縮したり収縮したりしない寸法安定性に優れた偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成よりなる。
【0014】
) セルロースエステルフィルム中にポリマーを含有する偏光板用保護フィルムにおいて、ポリマーがポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれるものであって、該ポリマーが400〜5000の重量平均分子量を有し、該セルロースエステルフィルム中に該ポリマーは5〜30質量%含有され、且つ該ポリマーを含有するセルロースエステルフィルムのガラス転移点が、一切の添加剤を含有していないセルロースエステルフィルムのそれより20℃は下回らないことを特徴とする偏光板用保護フィルム。
【0015】
) ポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれるポリマーが400〜2000の重量平均分子量を有していることを特徴とする()に記載の偏光板用保護フィルム。
【0017】
) セルロースエステルフィルム中にポリマーを含有する偏光板用保護フィルムにおいて、ポリマーがビニルエステルを含有する単独重合物または共重合物であり、該ポリマーが5000〜150000の重量平均分子量を有し、該セルロースエステルフィルム中に該ポリマーは5〜45質量%含有され、且つ該ポリマーを含有するセルロースエステルフィルムのガラス転移点が、一切の添加剤を含有していないセルロースエステルフィルムのそれより20℃は下回らないことを特徴とする偏光板用保護フィルム。
【0018】
) ビニルエステルを含有する単独重合物または共重合物が10000〜80000の重量平均分子量を有していることを特徴とする()に記載の偏光板用保護フィルム。
【0020】
) セルロースエステルフィルムが高分子紫外線吸収剤を含有することを特徴とする()乃至()の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0022】
) セルロースエステルがセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする()乃至()の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0023】
) セルロースエステルフィルムの乾燥後の膜厚が10〜65μmであることを特徴とする()乃至()の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0024】
また、以下の態様も本発明の効果を奏する。
(a) 23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL (mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置後、該常温常湿の雰囲気に戻した時の該寸法をL (mm)とした時、下記式の伸縮率(S50h)が流延方向と幅方向何れも±0.3%以内であり、且つ透湿度が250g/m ・24h以下であることを特徴とする偏光板用保護フィルム。
S50h(%)={(L −L )/L }×100
(b) 伸縮率(S50h)が何れも±0.1%以内であることを特徴とする(a)に記載の偏光板用保護フィルム。
(c) 23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL (mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で24時間及び100時間放置後、再び該常温常湿の雰囲気に戻した時の24時間放置の該寸法をL (mm)とし、また100時間放置の該寸法をL (mm)とした時、下記式の100時間放置したフィルムの伸縮率(S100h)と24時間放置したフィルムの伸縮率(S24h)の差が流延方向と幅方向何れも±0.1%以内であり、且つ透湿度が250g/m ・24h以下であることを特徴とする偏光板用保護フィルム。
S24h(%)={(L −L )/L }×100
S100h(%)={(L −L )/L }×100
(d) 透湿度が200g/m ・24h以下であることを特徴とする(a)乃至(c)の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
(e) 23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL (mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置後、該常温常湿の雰囲気に戻した時の該寸法をL (mm)とした時、下記式の伸縮率(S50h)が流延方向と幅方向何れも±0.3%以内であり、且つ透湿度が250g/m ・24h以下であることを特徴とする偏光板用保護フィルム。
S50h(%)={(L −L )/L }×100
(f) 伸縮率(S50h)が何れも±0.1%以内であることを特徴とする(e)に記載の偏光板用保護フィルム。
(g) 23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL (mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で24時間及び100時間放置後、再び該常温常湿の雰囲気に戻した時の24時間放置の該寸法をL (mm)とし、また100時間放置の該寸法をL (mm)とした時、下記式の100時間放置したフィルムの伸縮率(S100h)と24時間放置したフィルムの伸縮率(S24h)の差が流延方向と幅方向何れも±0.1%以内であり、且つ透湿度が250g/m ・24h以下であることを特徴とする(e)または(f)に記載の偏光板用保護フィルム。
S24h(%)={(L −L )/L }×100
S100h(%)={(L −L )/L }×100
(h) 透湿度が200g/m ・24h以下であることを特徴とする(e)乃至(g)の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
(i) 流延方向の吸湿膨張係数が6×10 −5 (1/%RH)以下であることを特徴とする(e)乃至(h)の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0025】
S50h(%)={(L1−L0)/L0}×100
(16) 伸縮率(S50h)が何れも±0.1%以内であることを特徴とする(15)に記載の偏光板用保護フィルム。
【0026】
(17) 23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL0(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で24時間及び100時間放置後、再び該常温常湿の雰囲気に戻した時の24時間放置の該寸法をL2(mm)とし、また100時間放置の該寸法をL3(mm)とした時、下記式の100時間放置したフィルムの伸縮率(S100h)と24時間放置したフィルムの伸縮率(S24h)の差が流延方向と幅方向何れも±0.1%以内であり、且つ透湿度が250g/m2・24h以下であることを特徴とする請求項5乃至16の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0027】
S24h(%)={(L2−L0)/L0}×100
S100h(%)={(L3−L0)/L0}×100
(18) 透湿度が200g/m2・24h以下であることを特徴とする(15)乃至(17)の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0028】
(19) 流延方向の吸湿膨張係数が6×10-5(1/%RH)以下であることを特徴とする(5)乃至(18)の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
【0029】
以下本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明に使用するセルロースエステルについて説明する。
【0030】
本発明に係るセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプから選ばれるセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましく用いられる。本発明に係るセルロースエステルのアセチル基の置換度は少なくとも1.5以上であることが好ましい。本発明において、セルローストリアセテート(以降、略してTACとすることがある)及びセルロースアセテートプロピオネート(以降、略してCAPとすることがある)が好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、70,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に80,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。
【0031】
本発明において、アセチル基置換度が2.88で添加物無添加のセルローストリアセテートをフィルムとして測定したガラス転移点(以降、略してTgとすることがある)は下記のバイブロン法による測定法による値を使用し199〜200℃である。また、同様にアセチル基置換度2.00、プロピオニル基0.9で添加剤無添加のセルロースアセテートプロピオネートのTgは199〜200℃である。
【0032】
本発明におけるTgは、Rheometrics社製のSOLIDS ANALYZER−RSAIIを用いて、周波数(Freqency)を100rad/sec、歪み(strain)を8.0E−4として測定したもので、tanδのピーク値になる温度をガラス転移点(Tg)とした。
【0033】
セルロースエステルを有機溶媒に溶解した溶液をドープというが、ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0034】
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンを好ましく用いられる。しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。本発明に係るドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が30〜2質量%である。本発明に用いられる良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独では溶解しないものを貧溶媒と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく使用し得る。
【0035】
本発明の偏光板用保護フィルムの特徴は、セルロースエステルフィルムがポリエステル、ポリエステルエーテル、またはビニルエステルを主とするポリマーを含有することによって、フィルム中からの析出、揮発または蒸発するものをなくすことが出来、偏光板を形成した後に、ほとんど収縮せず、添加物がフィルム外に出ることもなく、透明性が低下したりしないものである。
【0036】
本発明の偏光板用保護フィルムは、高温高湿雰囲気下に曝しても伸縮性の極めて小さいのが特徴である。
【0037】
上記における伸縮率は、23±3℃、55±3%RHの常温常湿の状態に放置したフィルムを、80±3℃、90±3%RHという高温高湿の状態に所定の時間曝し、再び23±3℃、55±3%RHという常温常湿の状態に戻した時の、フィルムの不可逆的な寸法変化(伸びあるいは縮み)をいう。従来の低分子可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムは高温高湿において、析出揮発や蒸発が主因と考えられる減量により伸縮率(特に収縮率)が大きい。これに対して、上記においては、本発明に有用なポリマーを含有させるため、析出のようなものがなく伸縮率が非常に小さい。80±3℃、90±3%RHという高温高湿の雰囲気に50時間曝した後の伸縮率は±0.3%以内、好ましくは±0.1%以内である。また、同様な高温高湿の状態に100時間曝した場合の伸縮率(S100h)と24時間曝した場合の伸縮率(S24h)の差(S100h−S24h)が±0.1%以内であり、高温高湿状態において時間的経過が大きくとも、24時間内に起こる変化からあまり変わらないのが特徴である。
【0038】
上記における高温高湿状態における伸縮率について詳しく説明する。
23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置後、該常温常湿の雰囲気に戻した時の該寸法をL(mm)とした時、伸縮率(S50h)を下記式で表すことが出来る。もちろんフィルムの流延方向と幅方向を別々に測定する。
【0039】
S50h(%)={(L−L)/L}×100
また、上記の高温高湿状態における時間的経過による伸縮率の差も重要なチェックポイントである。すなわち、23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気におけるフィルムの流延方向または幅方向の寸法をL(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で24時間及び100時間処理後、再び該常温常湿の雰囲気に戻した時の24時間処理の寸法をL(mm)とし、また100時間放置の寸法をL(mm)とした時、下記式の100時間放置したフィルムの伸縮率(S100h)と24時間放置した伸縮率(S24h)の差(S100h−S24h)で高温高湿での伸縮率の時間的変化を示す。
【0040】
S24h(%)={(L2−L0)/L0}×100
S100h(%)={(L3−L0)/L0}×100
セルロースエステルだけで添加剤を含有していないフィルムは水分の透湿性が劣り、従来から低分子の可塑剤の添加によって改良される。しかしながら、その添加量が多くないと透湿性の向上には結びつかず、そのような添加量の増量はむしろ析出等の汚れを増長させる。
【0041】
一方、添加してないセルロースエステルフィルムの上記のような伸縮率は、非常に優れているものの、低分子可塑剤を添加したものの伸縮率は、増量とともに劣化する傾向にある。
【0042】
本発明の偏光板保護フィルムは、上記伸縮率S50hが±0.3%以下で且つ透湿度が250g/m2・24hであるものであり、また、S100hとS24hの伸縮率の差が±0.1以下で且つ透湿度が250g/m2・24hであるものである。
【0043】
上記の伸縮率と透湿度、または、伸縮率の差と透湿度を満足させる方法として、以下に述べる本発明に有用なセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとしていることによって達成することが出来る。本発明の偏光板用保護フィルムは、本発明に有用なポリマーを添加することによって、透湿性、寸法安定性(伸縮率、伸縮率の差、吸湿膨張係数)、保留性、フィルムの汚れ等全てを向上させることが出来る。従来の低分子可塑剤は添加量を増せばウェブからの析出、蒸発や揮発等によりフィルムや装置を汚し、フィルム品質及び生産性を劣化させるばかりでなく、Tgも低下させ、寸法安定性も劣化させてしまう。これに対して、本発明に有用なポリマーを含有した偏光板保護フィルムは本発明の含有量の上限まで増量することも出来、十分に小さな透湿性を有するフィルムを得ることが出来る。
【0044】
また、上記において、透湿性は200g/m・24h以下がより好ましく、20〜150g/m・24hが更に好ましい。
【0045】
本発明に有用なポリマーはセルロースエステルドープあるいはセルロースエステルフィルム中で相分離が起こらないのが選ばれる。本発明者が検討した結果、その重量平均分子量(以降、Mwと略すことがある)と、セルロースエステルとの相溶性との間に関係があることがわかった。本発明に有用なポリマーはセルロースエステルドープに添加する過程、流延してフィルムを形成するまでの過程、または出来上がりのセルロースエステルフィルムの経時、高温高湿等の悪条件に曝される状態でも、相分離したり、白濁したり、ブリードアウトしたりせず、フィルム形成後、寸法変化が非常に小さく、保留性にも優れているもので、重量平均分子量400〜5000、好ましくは400〜1000を有するポリエステル及びポリエステルエーテルと、重量平均分子量5000〜150000、好ましくは7000〜100000、より好ましくは10000〜80000を有するビニルエステルを主として有するポリマーである。重量平均分子量を上記範囲より大きくすると相溶性が劣化し、透湿性を小さくする効果に薄く、むしろ保留性が劣化し易い傾向にあるため、上記のような重量平均分子量の範囲が好ましい。従って、本発明に係るポリマーはオリゴマーと呼ばれるものも含んでいる。
【0046】
また、本発明に有用な上記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1〜5の範囲にあることが好ましく、2〜5の範囲がより好ましく、3〜5の範囲が更に好ましい。Mw/Mnは大きいということは、ポリマーが低分子側のポリマーをより多く含有していることで、本発明において、低分子側に分布が高くなっているものが好ましいのである。そして低分子側のポリマー(オリゴマー的なもの)をより多く含むものであることが特徴で、相溶性がよく、相分離ブリードアウト、白濁等を起こさず好ましい。
【0047】
更に、本発明に有用な上記ポリマーは、ポリマーのZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比Mz/Mwが、1〜3の範囲にあることが好ましく、1〜2.5の範囲がより好ましい。この理由も上記と同様である。
【0048】
なお、Mn、Mw及びMzはGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することが出来る。例えば、カラム(昭和電工社製、SHODEX−K806−K803)の温度を25℃として、溶離液としてメチレンクロライドを用い、流量を1.0ml/minとし、検出R1、注入量を100μl、試料濃度を0.1(質量/容量%)とし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。
【0049】
本発明に有用なポリエステルまたはポリエステルエーテルをセルロースエステルフィルム中に、セルロースエステルに対して5〜30質量%含有するもので、より7〜20質量%が好ましい。また、本発明に有用なビニルエステルを主とするポリマーをセルロースエステルフィルム中に、セルロースエステルに対して5〜45質量%含有するもので、より7〜35質量%が好ましい。実際には、ポリマーのフィルム中の含有量はポリマーの種類や重量平均分子量によって、ドープ中、ウェブ中、フィルム形成後相分離しない範囲内で、寸法安定性、保留性及び透過率等の性能に応じて決められる。
【0050】
本発明に有用な上記Mw、Mw/Mn、Mz/Mwの範囲のポリマーはセルロースエステルとドープ中、ウェブ中、フィルム形成後相分離を起こさないものであれば制限なく使用出来る。
【0051】
本発明に有用なポリエステルについて述べる。ポリエステルの片方の構成成分である二塩基酸としては、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸が好ましく、例えば、脂肪族二塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、芳香族二塩基酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−キシリデンジカルボン酸等、脂環式二塩基酸としては、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸等を挙げることが出来る。特に、脂肪族ジカルボン酸としては炭素原子数4〜12もの、脂環式二塩基性酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、これらから選ばれる少なくとも一つのものを使用する。つまり、2種以上の二塩基酸を組み合わせて使用してよい。もう片方の構成成分であるグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることが出来るが、これらのうちエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、更に、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを好ましく用いられる。ポリエステルは結晶化しにくいものが好ましい。ポリエステルの重縮合は常法によって行われる。例えば、上記二塩基酸とグリコールの直接反応、上記の二塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば二塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応の何れかの方法により容易に合成し得るが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応によるのが好ましい。低分子量側に分布が高くあるポリエステルはセルロースエステルとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用出来る。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロール出来る。この場合、1価の酸がポリマーの安定性から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸等を上げることが出来るが、重縮合反応中には系外に溜去せず、停止して反応系外にこのような1価の酸を系外に除去するときに溜去し易いものが選ばれるが、これらを混合使用してもよい。また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても重量平均分子量を調節出来る。その他、仕込むグリコールまたは二塩基酸のモル数を偏らせることによっても出来るし、反応温度をコントロールしても調節出来る。
【0052】
本発明に有用なポリエステルエーテルは、上記ポリエステルや上記二塩基性酸あるいはこれらのアルキルエステル類と、エーテル単位の両末端にOH基を有する化合物を、ポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、末端OH基を有するポリエステルにエーテル化する反応法によりポリエステルエーテルを得ることが出来る。エーテル単位としては特に限定されないが、例えば、HO(RO)nROH(ここでRはアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、2官能脂環基等でこれらが混ざり合っていてもよい、またnは1〜100)のようなジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリフェニレングリコール、ポリシクロへキシレングリコール等を挙げることが出来、これらを組み合わて使用してもよい。ポリマーの分子量を調整する方法は、とくに制限なく使用出来、ポリエステルの場合と同様に行うことが出来る。
【0053】
本発明に適したポリエステルエーテルを市販品から求めることが出来る。例えば、Dupont社製のハイテレル(Hytrel)コポリエステル類、GAF社製のガルフレック(Galflex)ポリマー、「旭電化工業(株)社製アデカサイザーRSシリーズ」を挙げることが出来る。
【0054】
これらのポリエステルエーテルをセルロースエステルと混合して用いる量は前記ポリエステルと同様であり、フィルム形成後のセルロースエステルフィルムの透明性は低下することなく、優れた機械的性質、特に引き裂き強さ示す。
【0055】
本発明に有用なビニルエステルを主として含有するポリマーは、相分離を起こさないものであれば、その種類は特に限定されない。ビニルエステルを主とするポリマーを形成するモノマーとしては、ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、イソバレリアン酸、メチルエチル酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル等を挙げることが出来る。ビニルエステルを主とするとは、ポリマー中にビニルエステルを40質量%以上含むものをいう。ビニルエステルとの共重合成分としては、ビニルエーテル類として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等、ビニルケトン類として、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、ブチルビニルケトン等、アクリル酸またはメタクリル酸エステル類として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェネチルアクリレート等及びこれらアクリレートをメタクリレートとしたもの等を挙げることが出来る。また、上記モノマーの他にマレイン酸エステル、フマル酸エステル、塩化ビニル、ブタジエン等のモノマーと共重合成分としてあげることが出来る。本発明においては、特にビニルエステルモノマーからのポリマーがセルロースエステルと相溶性に優れており、相溶性をよくするに十分な重量平均分子量は前記ポリエステルと同様な範囲で添加することが出来る。またMw/Mn、Mz/Mwも前記と同様にすることが好ましい。また、このようなビニルエステルを主とするポリマーの分子量を調節する方法としては、特に従来の方法を制限なく使用することが出来る。例えば、重合開始剤の添加量を多くする方法、溶液重合の溶媒量を多量にして行う方法、重合温度を高くする方法、モノマー濃度を高める方法、連鎖移動剤や重合禁止剤を添加する方法などがある。連鎖移動剤としては、例えば、四塩化炭素、四塩化エタン、クロロホルム、三塩化エタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコレート、ジスルフィド、ドデシルメルカプタン、ジアゾチオエーテル等の含イオウ炭化水素類、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンのケトン類等を挙げることが出来る。また重合禁止剤も用いることが出来、例えば、ベンゾキノン、ニトロベンゼン、ジフェニルピクリルヒドラジル等を挙げることが出来る。
【0056】
本発明に有用なポリエステルの常温常湿における状態は、粘稠な液状、またはガム状、柔らかい樹脂状と様々である。また、ビニルエステルを主とするポリマーは粘稠の液状から固体状のものまである。
【0057】
これらのポリマーを含有するセルロースエステルフィルムのTgは、添加剤無添加のセルロースエステルフィルムのそれとあまり変わらず、後者のTgより20℃を下回らない範囲にある。ここで、添加剤無添加のセルロースエステルフィルムのTgをTg(a)(℃)、また何らかのものを添加したセルロースエステルフィルムのTgをTg(b)(℃)としてTg(差)(℃)を表し、下記式でTg(差)は
Tg(差)=Tg(a)−Tg(b)
となる。つまり上記のように、本発明に係るポリマーを添加したTg(b)では
20℃≧Tg(a)−Tg(b)
である。本発明においては、ポリマーを含有することによって、熱的性質が無添加のそれとほぼ同じであり、例えば、寸法安定性が良くなり、保留性に優れているのが本発明の特徴である。通常使用している低分子可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムのTgは、例えば、アセチル基置換度が2.88のセルローストリアセテートフィルムで、可塑剤としてトリフェニルホスフェート(TPP)8.5質量%及びエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)2質量%添加したセルローストリアセテートフィルムのTgは164℃と無添加に比べると36℃もTgが低下し、透湿性は小さいものの、高温高湿の条件下での寸法安定性が劣化(収縮が大きくなる)し、保留性も劣化する。本発明に有用なポリマーは、低分子可塑剤と同じ量添加したのでは、低分子可塑剤の添加より透湿度を小さくする効果は小さいが、本発明に有用なポリマーは添加量を増やすことが出来、他の性質に影響を及ぼすことなく透湿度を小さくすることが出来る。しかし、ポリマーを多量に加えることが出来ない場合には、工程でのトラブルを起こさない程度に、または保留性を劣化させない程度に低分子可塑剤を混合してもよく、添加量としては、0.1〜4.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。本発明に補助的に添加出来る低分子可塑剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系可塑剤として、前記のトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤として、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、グリコレート系可塑剤として、ブチルフタリルブチルグリコレート、前記のエチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を好ましく用いることができる。これらの可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることが出来る。
【0058】
本発明に有用なポリマーを用いて、セルロースエステルフィルムに含有させて、上記Tg差を20℃以内とすることによって、本発明は、セルロースエステルとの相溶性がよく、フィルムの汚れもなく、透明性や寸法安定性に優れ、保留性や、透湿性が小さい優れたセルロースエステルフィルム、つまり偏光板用保護フィルムが得られる。
【0059】
寸法安定性についてのメジャーとして、不可逆的なものと、可逆的なものとがあり、前者が伸縮率、後者が吸湿膨張係数及び熱膨張係数である。前者の伸縮率については前述した。
【0060】
可逆的な寸法安定性の重要な尺度として、吸湿膨張係数がある。吸湿膨張係数βは相対湿度1%当たりの寸法の変化であり、湿度の変動によって変化が大きいフィルムか小さいフィルムかを表す。フィルムが延び縮みすると、力が発生する。偏光板のように、セルロースエステルフィルム/偏光膜/セルロースエステルフィルムのように3層構造の積層板では、中層にある偏光膜が一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムで吸水性が大きいく水分によって延伸した力が弛められ縮もうとする力が働く。偏光膜に貼り合わせてある偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなればなるほど、偏光膜の縮もうとする力に抗することが出来ず、変形を起こし易い。本発明において、吸湿膨張係数吸は6×10-5(1/%RH)以下であることが好ましく、3×10-5(1/%RH)以下であることがより好ましく、1×10-5(1/%RH)以下であることが更に好ましい。本発明の偏光板用保護フィルムは偏光膜を縮ませるような湿度にあっても吸湿膨張係数が小さいため、寸法変化は小さく且つTgが(低分子可塑剤を含有する偏光板用保護フィルムより)高くフィルムの弾性率が大きく、偏光膜の縮もうとする力に抗して変形しにくいと本発明者は考えている。本発明の偏光板用保護フィルムは本発明に有用なポリマーを含有することによって、透湿性を小さくし、偏光膜への水分の侵入を抑制することが出来るので、更に偏光板の変形は非常に小さくなる。
【0061】
ここで、吸湿膨張係数β(1/%RH)は下記式で表される。下記において、L4は23℃のある相対湿度(RH4)に変化させた時のフィルム試料の長さ(mm)、L0は標準状態(23℃、55%RH)におけるフィルム試料の原寸(mm)、RH0は標準相対湿度(%RH)、RH4は上記の変化させた相対湿度(%RH)である。
【0062】
β={(L4−L0)/L0}/(RH4−RH0
本発明において、保留性は高温高湿における伸縮性に関係し、フィルム内部から外部へ析出、揮発あるいは蒸発する成分の多少に関係する。保留性は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
【0063】
この他の寸法安定性のメジャーとして熱膨張率がある。これは、試料をTMA/SS6100(Seiko Instrument Inc.製)により測定するもので、測定荷重を質量として50、100、150gの3点変化させてそれぞれの荷重で、昇温速度を2(℃/分)で60〜100℃の範囲として温度を変化させて熱膨張率を測定し、最小二乗法で近似直線を求めて、荷重0gでの値を計算し、熱膨張率を測定する。液晶画像表示装置も自動車のダッシュボードのところに設置されるため、夏日照場所においてはかなり高温となり熱膨張して変形する虞がある。この熱膨張率も小さい方がよく、5×10-5(1/℃)以下が好ましい。
【0064】
液晶画像表示装置に用いる偏光板保護フィルムや他のフィルムには、紫外線吸収剤が含有されており、紫外線吸収剤は屋外で使用する際に液晶や偏光膜の劣化防止の役割をする。本発明においても紫外線吸収剤は好ましく用いられる。紫外線吸収剤は波長370nm以下の紫外線を吸収する性能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。光に対しする安定性を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のTINUVIN109(UV−1とする)、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328等を好ましく用いることが出来るが、低分子の紫外線吸収剤は使用量によっては可塑剤同様に製膜中にウェブに析出したり、揮発する虞があるので、その添加量は3〜10質量%である。
【0065】
本発明においては、上記低分子の紫外線吸収剤より析出等が起こりにくい高分子紫外線吸収剤を、本発明に係るポリマーと共にセルロースエステルフィルムに含有させることがより好ましく、寸法安定性、保留性、透湿性等を損なうことなく、またフィルム中で相分離することもなく安定した状態で紫外線を十分にカットすることが出来る。本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーは制限なく使用出来る。市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、UVM−1の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。これらを単独又は共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。本発明において、高分子紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜6.0質量%が好ましい。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソラン、酢酸メチルなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0066】
本発明に特に有用なポリエステル、ポリエステルエーテル、及びビニルエステルを主とするポリマーの重合例を下記に示す。
【0067】
(ポリエステルの重合例、PE−1の重合)
1lの三つ口フラスコに、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、除水管を取り付ける。除水管は、分留管、その先に頭頂温度計と冷却管、また冷却管の下に目盛り(ml)の付いた水の受器を設け、受器には上部に排気管を有している。フラスコに180gのプロピレングリコール、292gのアジピン酸を入れ、窒素ガスをゆっくり流しながら内温を80〜90℃に加温し、撹拌を開始する。1時間かけて温度を150〜160℃に上昇させる。この際頭頂温度が100℃を超えないように(水だけを系外に溜去させ、グリコールが溜出しないように)して、水を排出させ、更に温度を190〜200℃とし、水が58g溜出したところで、内温を110〜120℃に下げ、更に80℃に下げた。アセトンで析出させて、析出物を濾取し、PE−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は600であった。
【0068】
(ポリエステルの重合例、PE−2〜6の重合)
溜出水量を変化させることによって、PE−1と同様の方法で、PE−2〜6を得た。重量平均分子量は以下の通りであった。以下括弧内の数値は重量平均分子量である。PE−2(980)、PE−3(1800)、PE−4(4800)、PE−5(350)、PE−6(5500)。
【0069】
(ポリエステルエーテルの重合例、PEE−1の重合)
1.5lのフラスコ以外はPE−1の重合と同様な装置を用い、フラスコに460gのポリエチレングリコール(PEG)(重量平均分子量250)、146gのアジピン酸を入れ、窒素ガスをゆっくり流しながら、同様にPE−1と同様に重合し、水が32g溜出したところで温度を下げ、同様に濾取してPEE−1を得た。PEE−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は650であった。
【0070】
(ポリエステルエーテルの重合例、PEE−2〜4の重合)
溜出水量を変化させることによって、PEE−1と同様の方法で、PEE−2〜6を得た。但し、PEGの重量平均分子量を各々下記の通り変更した。以下括弧内の数値は、前半はPEG、後半はPEEの重量平均分子量である。PEE−2(400、1000)、PEE−3(875、1900)、PEE−4(2500、5200)。
【0071】
(ポリ酢酸ビニルの重合例、PV−1の重合)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、モノマー導入管を付した三つ口フラスコを用意し、50gの酢酸ビニルモノマーを200mlの四つ口フラスコに入れ、窒素ガスを導入しながら脱水テトラヒドロフラン100mlを加えて混合溶解した後、窒素を5分更に導入して容器内を窒素置換した。この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2mgを含有する脱水テトラヒドロフランをフラスコに導入し、50℃で3時間環流し重合した。微量のニトロベンゼンのテトラヒドロフラン溶液を重合禁止剤として加え重合を停止し、重合反応後テトラヒドロフラン溶液を水蒸気を吹き込みながら未反応の酢酸ビニルモノマーをテトラヒドロフラン共に溜去する。溜出液の温度がテトラヒドロフランの沸点65℃になったら追い出しが終了し、中身のポリ酢酸ビニルを取り出し、精製して、GPCで重量平均分子量を測定した結果、30000であった。
【0072】
(ポリ酢酸ビニルの重合例、P−2〜5の重合)
重合禁止剤のニトロベンゼンを入れるタイミングを変えた以外は、PV−1と同様に重合、精製を行い、重量平均分子量の異なったPV−2〜4を得た。括弧内は重量平均分子量である。PV−2(60000)、PV−3(15000)、PV−4(7000)、PV−5(3000)。
【0073】
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤の重合例を下記に示す。
(高分子紫外線吸収剤の重合例、UVP−1の重合)
UVM−1の57.6gと酢酸ビニルモノマーの43.1gを混合して200mlの前記PV−1と同様な三口フラスコに入れ、窒素導入下脱水テトラヒドロフラン100mlに溶解した後、窒素を5分間溶液に流してフラスコ内の空気を窒素置換した。この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2mgの脱水テトラヒドロフラン溶液を添加し、50℃で3時間加熱環流して重合した。重合終了後、反応溶媒を減圧溜去した後、アセトンで析出させた。析出物を濾取し、UVP−1を90g得た。UVP−1の分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は19500であった。またUVP−1の構造を、1H−NMRによりUVM−1と酢酸ビニルモノマーのユニット比は25:75(モル比)であることを確認した。
【0074】
(高分子紫外線吸収剤の重合例、UVP−2の重合)
PUVA−93の57.6gとメチルアクリレートモノマーの43.1gを混合して300mlの同様な三口フラスコに入れ、窒素導入下脱水テトラヒドロフラン200mlに溶解した後、窒素を5分間溶液に流してフラスコ内の空気を窒素置換した。この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル37mgの脱水テトラヒドロフラン溶液を添加し、50℃で3時間加熱環流して重合した。重合終了後、反応溶媒を減圧溜去した後、アセトンで析出させた。析出物を濾取し、UVP−2を90g得た。UVP−2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した結果、数平均分子量は16800であった。またUVP−2の構造を、1H−NMRによりRUVM−93とメチルアクリレートモノマーのユニット比は24:76(モル比)であることを確認した。
【0075】
また、本発明のセルロースエステルフィルムには、酸化防止剤を含有していてもよい。例えば特開平5−197073号公報に記載されているような、過酸化物分解剤、ラジカル連鎖禁止剤、金属不活性剤または酸捕捉剤を含有していてもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0076】
また本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有するのが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL 200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばAEROSIL 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0077】
次に、本発明におけるセルロースエステルドープの調製方法について述べる。セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中でフレーク状のセルロースエステルを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。更に好ましくは、15〜25質量%である。本発明に有用なポリマーをセルロースエステルドープ中に含有させるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加、セルロースエステルドープに直接添加等、添加方法については、制限なく行うことが出来る。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないように添加する。添加量については、前記の通りである。
【0078】
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンを好ましく用いられる。しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。本発明に係るドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。本発明に用いられる良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独では溶解しないものを貧溶媒と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく使用し得る。本発明に有用なポリマーに対しても、有機溶媒の選定は、セルロースエステルの良溶媒を用いるのが好ましい。前記のように、低分子可塑剤を使用する場合には、通常の添加方法で行うことが出来、ドープ中に直接添加しても、予め有機溶媒に溶解してからドープ中に注ぎ入れてもよい。
【0079】
本発明において、前記のような種々の添加剤をセルロースエステルドープに添加する際、セルロースエステルドープと各種添加剤を少量のセルロースエステルとを溶解させた溶液にいしてインライン添加し混合を行うことも出来好ましい。例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなインラインミキサーを使用するのが好ましい。インラインミキサーを用いる場合、セルロースエステルを高圧下で濃縮溶解したドープに適用するのが好ましく、加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることが出来、加圧下で加熱、攪拌が出来ればよい。
【0080】
本発明において、セルロースエステルドープは濾過することによって異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識しまごう異物は除去しなければならい。偏光板用保護フィルムの品質は、この濾過によって決まるといってよい。濾過に使用する濾材は絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。このため、本発明のセルロースエステルドープの濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。本発明のセルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上でかつ溶媒が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×106Pa以下であることが好ましく、1.2×106Pa以下であることがより好ましく、1.0×106Pa以下であることが更に好ましい。原料のセルロースにアシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると異物故障(以下輝点とすることがある)が発生することがある。輝点は直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く何も見えないが、異物があるとそこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど液晶画像表示装置とした場合実害が大きく、50μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、更に8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。輝点は上記の直径のものが400個/cm2以下であれば実用上問題ないが、300個/cm2以下が好ましく、200個/cm2以下がより好ましい。このような輝点の発生数及び大きさを減少させるために、細かい異物を十分濾過する必要がある。また、特開2000−137115号公報に記載のような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品をドープにある割合再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は輝点を低減することが出来るため好ましく用いることが出来る。
【0081】
次に、セルロースエステルドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。金属支持体は無限に移行する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムであり、その表面は鏡面となっている。流延工程は、上記の如きドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、金属支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0082】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブ(金属支持体上に流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側及び支持体裏側から加熱風を吹かせる方法、支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。
【0083】
本発明に適した金属支持体上での乾燥方法は、例えば、金属支持体温度を0〜40℃、好ましくは5〜30℃として流延するのが好ましい。ウェブに当てる乾燥風は30〜45℃程度が好ましいが、これに限定されない。
【0084】
剥離工程は、金属支持体上で有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後ウェブは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。通常、残留溶媒量が20〜150質量%でウェブの剥離が行われる。本発明において好ましい剥離残留溶媒量は20〜40質量%または60〜120質量%で、特に好ましくは20〜30質量%または70〜115質量%である。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来る。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量を決められる。
【0085】
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0086】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を2.0質量%以下にすることが好ましい、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
【0087】
ウェブ乾燥工程ではロールを千鳥状に配置したロール乾燥装置、ウェブの両端をクリップで把持しながら、幅保持あるいは若干幅方向に延伸するテンター乾燥装置でウェブを搬送しながら乾燥する方式が採られる。本発明においては、テンター乾燥装置支持体より剥離した後任意の過程で、また任意の残留溶媒量の多いところで、幅保持または延伸することによって寸法安定性を良好ならしめるため特に好ましい。ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
【0088】
セルロースエステルフィルムの膜厚は薄い方が出来上がった偏光板が薄くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が容易になるため好ましいが、薄すぎると、透湿度や、引き裂き強度などが劣化する。これらを両立するセルロースエステルフィルムの膜厚は10〜65μmが好ましく、20〜60μmが更に好ましく、35〜50μmが特に好ましい。
【0089】
本発明のセルロースエステルフィルムは、高い透湿性、寸法安定性などから液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、偏光板、偏光板用保護フィルムに用いるのがよい。
【0090】
偏光板は製膜したセルロースエステルフィルムの偏光板用保護フィルムを40℃の2.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で60秒間表面鹸化処理を行い、3分間水洗して乾燥させた。別に120μmの厚さのポリビニルアルコールをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に立て方向に延伸した偏光膜を用意し、この両面に上記表面鹸化処理したセルロースエステルフィルムを完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として貼り合わせ偏光板を作製する。
【0091】
本発明の偏光板用保護フィルムであるセルロースエステルフィルムの面内方向におけるリターデーションR0(nm)は小さいほど良く、100nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。また、本発明の偏光板用保護フィルムのセルロースエステルフィルムの製膜方向(長手方向に相当する)と遅相軸とのなす角度θ1が0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。ただし、θ1は製膜方向と遅相軸とがなす狭い角度であり、+90°〜−90°の範囲にある。こうすることによって本発明の偏光板用保護フィルムを用いた偏光板の偏光度が向上する。ここで遅相軸とはフィルム面内の屈折率が最も高くなる方向である。更に好ましくはθ1と面内方向のリターデーションR0が下記の関係にあることがより好ましい。
【0092】
P≦1−sin2(2θ1)×sin2(πR0/λ)
ここで、Pが0.999である時にθ1とR0が上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはPが0.9995である時にθ1とR0が上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはPが0.9998である時にθ1とR0が上式を満たすことが好ましく、より好ましくはPが0.9999、更に好ましくはPが0.99995、より更に0.99998、特に0.99999である時にθ1とR0が上式を満たすことが好ましい。λはθ1とR0を求めるための三次元屈折率測定の際の光の波長を表し、380〜650nmの範囲にある。好ましくはλが590nmの時に上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはλが400nmの時に上式を満たすことである。
【0093】
本発明の偏光板用保護フィルムは、鹸化処理を行った後も、光透過率(可視光の)90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、更に94%以上であることが好ましく、またヘイズは1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5%未満、更に0.1%未満であることが好ましい。特に0%であることが最も好ましい。
【0094】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明の態様を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0095】
Figure 0004192411
上記組成を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してセルロースエステルドープを調製し、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300l/m2・時、濾圧は1.0×106Paで行った。
(流延及び乾燥)
このドープをダイを通して、ステンレスベルトの上に流延し、ステンレスベルトの温度を25℃に制御し、ウェブ側からは45℃の風を10m/秒の風速で斜めにあて、ステンレスベルトが下側になった部分では前半を40℃の風を10m/秒で垂直に当てウェブを乾燥し、ウェブ中の残留溶媒量25質量%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。その後、ウェブを千鳥状に配置したロール乾燥機で60℃で乾燥し、続いて特開昭62−115035号公報に記載されているようなテンター乾燥機にウェブを導入して幅保持しながら90〜110℃で乾燥した。最後に再びロール乾燥装置で110〜130℃で乾燥し、最終的に20℃に冷却して、巻き取り、厚さ表1のように試料1〜12の20μmと40μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0096】
Figure 0004192411
上記組成を実施例1と同様にドープを調製した。
(流延と乾燥)
上記で得られたドープを用い、実施例1と同様に流延を行い、また、実施例1と同様に乾燥して、試料13〜16の膜厚40μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
【0097】
Figure 0004192411
上記組成を実施例1と同様にドープを調製した。
(流延と乾燥)
上記で得られたドープを用い、実施例1と同様に流延を行い、また、実施例1と同様に乾燥して、試料17〜21の膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0098】
実施例4(試料22〜27)
TAC(原料:リンター、アセチル基置換度2.88) 160質量部
PE−1 (表1に記載の量をフィルムに対して添加する)
AEROSIL 200V
UV−1とPUV−1 (表1に記載の量をフィルムに対して添加する)
低分子可塑剤 (表1に記載の量をフィルムに対して添加する)
メチレンクロライド 770質量部
エタノール 65質量部
上記組成を実施例1と同様にドープを調製した。
(流延と乾燥)
上記で得られたドープを用い、実施例1と同様に流延を行い、また、実施例1と同様に乾燥して、試料22〜27の膜厚20μm及び40μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0099】
【表1】
Figure 0004192411
【0100】
以上実施例1〜4の試料1〜27について、下記のようにTg差、フィルムの汚れ、伸縮率、透湿度、吸湿膨張係数、保留性及び紫外線透過率を測定評価し、結果を表2に示した。
〔評価・測定方法〕
〈製膜後のフィルムの汚れ〉
製膜後のセルロースエステルフィルムを幅はそのままで、長さ1mに切り出し、試料を蛍光灯を3本並べ、他は光のない部屋で、蛍光灯に反射させたり、透過させて汚れの個数を全面積中に何個あるか数え、下記のようにグレード分けして評価する。この際、汚れの大きさについてもルーペで測定する。
【0101】
A:全く汚れがない
B:1〜3個10μm以下の汚れがある
C:10μm以下の汚れが3個以内、11〜20μmの汚れが1〜3個ある
D:大小含め、7〜20個ある
E:大小含め、21個以上ある。
【0102】
〈寸法安定性:伸縮率(S50h)の測定〉
フィルムの流延方向と幅方向について、各々30mm幅×120mm長さの試験片として3枚採取する。試験片の両端に6mmΦの穴をパンチで100mm間隔に開ける。これを、23±3℃、55±5%RHの室内で5時間以上調湿する。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて、パンチ間隔の原寸(L0)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。次に試験片を80℃、90%RHの恒温恒湿器に吊して50時間熱処理した後、23±3℃、55±5%RHの室内で5時間以上調湿後、熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を自動ピンゲージで測定する。そして流延方向及び幅方向の伸縮率を各々前記式により3枚の試料平均で計算する。
【0103】
伸縮率S50h(%)={(L2−L0)/L0}×100
〈寸法安定性:伸縮率差(S100h−S24h)の測定〉
上記伸縮率S50hの測定と同様に、フィルムの流延方向と幅方向の試料を23℃、55%RHで原寸を測定したのち、次に試験片を80℃、90%RHの恒温恒湿器に吊して24時間放置した後、23±3℃、55±5%RHの室内で5時間以上調湿後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法を測定し伸縮率S24hを出し、同室試験片を再び80℃、90%RHの恒温恒湿器に吊して76時間(合計100時間)放置した後、23±3℃、55±5%RHの室内で5時間以上調湿後、熱処理後のパンチ間隔の寸法を自動ピンゲージで測定し、伸縮率S100hを出す。伸縮率S100hと伸縮率S24hとの差(前記式)を3枚の平均で求める。
【0104】
〈透湿度の測定〉
JIS Z 0208に記載の方法に従い各試料の透湿度を測定した。
【0105】
〈寸法安定性:吸湿膨張係数の測定〉
フィルムの流延方向に試料を、30mm幅×220mm長さの試験片として3枚採取する。各水準の3枚の試験片の両端に6mmΦの穴をパンチで200mm間隔に開ける。これらを、23±3℃、55±5%RHの室内で5時間以上調湿する。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて、パンチ間隔の原寸(L0)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。次に23±3℃、試験片を80℃、80±5%RHの室内で5時間以上調湿放置後、同室内で熱処理後のパンチ間隔の寸法(L1)を自動ピンゲージで測定する。そして吸湿膨張係数(3枚平均)を前記の式により計算する。
【0106】
〈保留性の評価〉
試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80℃、90%RHの条件下で2週間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の方法で保留性を計算した。
【0107】
保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量} ×100
〈紫外線透過率の測定〉
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用いて製膜したフィルム試料の分光スペクトルを測定し、380nmにおける透過率をもとめた。
【0108】
【表2】
Figure 0004192411
【0109】
(結果)
本発明に係るポリマーを添加したセルロースエステルフィルムはフィルムの汚れもなく、伸縮率S50h及び伸縮率S100hと同S24hとの差、透湿度、吸湿膨張係数、更に保留性も非常に小さく、偏光板用保護フィルムとして優れていることがわかった。これに対し、分子量の低い本発明外のポリマーを添加した試料No.5、No.16及びNo.21では、何れも透湿度が大きく、特に試料No.5は伸縮率も大きかった。低分子可塑剤(特にTPPとEPEGの併用)を含有するセルロースエステルフィルムは汚れがひどく、保留性が悪かった。また低分子可塑剤EPEGを少量使用したものは、よごれもさほどではなく、伸縮率も小さいが、透湿度及び吸湿膨張係数が大きい。これに対して少量のEPEGと本発明に係るポリマーを添加した試料No.22は何れの評価項目もクリヤーしており、若干の低分子可塑剤の添加は可能であることがわかった。
【0110】
【発明の効果】
偏光板用保護フィルムとして、種々の耐性を有するセルロースエステルフィルムを提供することが出来る。

Claims (7)

  1. セルロースエステルフィルム中にポリマーを含有する偏光板用保護フィルムにおいて、ポリマーがポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれるものであって、該ポリマーが400〜5000の重量平均分子量を有し、該セルロースエステルフィルム中に該ポリマーは5〜30質量%含有され、且つ該ポリマーを含有するセルロースエステルフィルムのガラス転移点が、一切の添加剤を含有していないセルロースエステルフィルムのそれより20℃は下回らないことを特徴とする偏光板用保護フィルム。
  2. ポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれるポリマーが400〜2000の重量平均分子量を有していることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用保護フィルム。
  3. セルロースエステルフィルム中にポリマーを含有する偏光板用保護フィルムにおいて、ポリマーがビニルエステルを含有する単独重合物または共重合物であり、該ポリマーが5000〜150000の重量平均分子量を有し、該セルロースエステルフィルム中に該ポリマーは5〜45質量%含有され、且つ該ポリマーを含有するセルロースエステルフィルムのガラス転移点が、一切の添加剤を含有していないセルロースエステルフィルムのそれより20℃は下回らないことを特徴とする偏光板用保護フィルム。
  4. ビニルエステルを含有する単独重合物または共重合物が10000〜80000の重量平均分子量を有していることを特徴とする請求項3に記載の偏光板用保護フィルム。
  5. セルロースエステルフィルムが高分子紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
  6. セルロースエステルがセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
  7. セルロースエステルフィルムの乾燥後の膜厚が10〜65μmであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の偏光板用保護フィルム。
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