JP4191922B2 - 全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法および矯正装置 - Google Patents
全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法および矯正装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺材の形鋼の矯正をその全長にわたって高精度かつ高効率に行う方法および装置を提供する。
【0002】
【従来の技術】
軌条やH形鋼などの形鋼の製造技術においては、長手方向にわたる各部位の寸法精度および真直性の確保が重要な課題であり、高い寸法精度および真直性の形鋼製品を得るためには、熱間圧延のみで製造するには限界があるため、通常、圧延後に、圧延材をさらに冷間または温間で矯正することにより形鋼製品の高い寸法精度および真直性を確保している。
【0003】
従来の形鋼圧延材の矯正方法は、パスライン(形鋼の搬送方向)に沿って上下または左右に千鳥状に矯正ロールを配設したローラーレベラーを用い、後段になる程、曲げの曲率が漸減するように各矯正ロールのパスラインに対する押し込み位置を調節して、被矯正材(形鋼)の繰り返し曲げをおこなうことにより、矯正を行う方法が一般的であった。
【0004】
このローラーレベラーによる矯正方法は、比較的コンパクトな設備ですみ、また一旦、適正条件に設定すれば無人運転が可能なため導入しやすい特長があるが、以下の問題があった。
【0005】
例えば、軌条(レール)製品においては、近年鉄道車輌の高速化の指向により、その全長にわたって高い真直性の確保が要求されるが、従来のローラーレベラーによる矯正方法では、原理的に軌条(レール)の両端部の矯正は不可能であるため、両端部のみ再矯正が必要であった。この再矯正は、現状、三点曲げや四点曲げなど間歇的なプレスによる方法が実施されており、生産性を著しく低下させる一つの原因となっている。
【0006】
また、従来のローラーレベラーによる矯正方法では、被矯正材に対して弾性域と塑性域が複雑に分布する繰り返し曲げ応力を付与して矯正を行うため、矯正後の形鋼製品の内部に大きな残留応力が生じやすく、形鋼製品を使用する際の切断時に、切断面近傍で製品内部の残留応力に起因する局部変形が発生しやすい。この切断面近傍の局部変形は、構造物などに組み立てる際の継ぎ目に段差を生じさせ、所定の接合が困難になるという問題があった。
【0007】
また、H形鋼を矯正する場合には、ローラーレベラーによる繰り返し曲げによってウェブ部とフランジ部の付け根近傍のウェブ側が局部的に圧下され、この部分にせん断変形が生じ、加工硬化およびそれに伴う割れなどが発生するという材質上の問題があった。
【0008】
このようなローラーレベラーによる矯正方法に代わる方法として、特公昭56-40644号公報にはユニバーサル圧延機を用いて10%以下の圧下率で矯正圧延する方法が開示されている。
【0009】
図13は、この方法を用いてH形鋼の左右曲がりを矯正する方法を示した図であり、左曲がりのH形鋼Aを矯正する場合は、竪ロール1の圧下量P1を竪ロール2の圧下量P2より大きく(P1>P2)し、逆に、右曲がりのH形鋼Bを矯正する場合は、竪ロール2の圧下量P2を竪ロール1の圧下量P1より大きく(P1<P2)なるように設定し、水平ロール3、4でウエブ部およびフランジ部内側を拘束しつつ、竪ロール1、2でフランジ部外側を圧下し、圧下量の大きい方のフランジ部を圧下量の小さい方のフランジ部より長手方向に多く延伸させることにより左右曲がりを矯正するものである。
【0010】
また、図14は、H形鋼の上下曲がりを矯正する方法を示した図であり、H形鋼C、Dの曲がり方向に応じて、上下水平ロール3、4の軸心のオフセット量δを調節し、δを支点長さとする圧延荷重により生じる矯正方向のモーメントを利用して上下曲がりを矯正するものである。
【0011】
しかし、このような圧延による延伸差を利用した矯正のみでは、所要の真直性を得るためには10%程度の大圧下率が必要であり、被矯正材の真直性は満足できても矯正前後の寸法変化、例えば、H形鋼の左右曲がりを矯正する場合には、左右フランジ部の厚さの変化が大きくなり製品の寸法外れが生じやすくなる。
【0012】
特公昭56-40644号公報は、特に曲がりが大きい形鋼を矯正する場合には、ユニバーサル圧延機をタンデムに配置して矯正能力を向上させることを開示しているが、タンデム圧延による矯正は、矯正設備の設備コストおよび保守コストを大幅に増加させるという問題が生じる。
【0013】
また、特開平5-146824号公報には、形鋼を多パスリバース圧延するためのユニバーサル圧延機の前面または後面に、図15に示すH形鋼10(フランジ12、ウエブ11を有する。)の上下方向の端曲がりを防止するためのフランジ端拘束ローラー20、および図16に示すH形鋼10の左右の端曲がりを防止するためのフランジ側部拘束ローラー30を有する反り及び曲がり防止装置が開示されている。
【0014】
この装置は、図17(a)(平面図)および(b)(正面図)の配置例に示すように、ユニバーサル圧延機の水平ロール41および竪ロール42の出側に、ストリッパガイド44を介して、図15に示されるフランジ端拘束ローラー20を支持する上下方向反り防止ローラーガイドスタンド46、図16に示されるフランジ側部拘束ローラー30を支持する左右方向曲がり防止ローラーガイドスタンド47を交互に配置し、それらの後にサイドガイド43および搬送テーブルローラ45を配置するもので、圧延時にユニバーサル圧延機の出側において、形鋼の端部近傍をフランジ端拘束ローラー20及びフランジ側部拘束ローラー30で拘束して、上下及び左右の曲がりの発生を防止し、圧延機への噛み込みおよび搬送トラブルを防止するとともに、搬送中のサイドガイド43での擦り傷を抑制するものである。
【0015】
しかし、この反り及び曲がり防止装置は、圧延機の出側に配置して熱間圧延中の噛み込み不良や摺り疵の発生を抑制するためのサイドガイドとして使用する場合には有効であるが、これを従来のローラー矯正機に代替して、圧延後の形鋼を冷間および温間で矯正する場合には、ロール径が小であるため剛性が小であること、および熱間に比べて温間、冷間での矯正反力が大であることなどからスプリングバックが大きいために、両端部を含む寸法精度および真直性を確保できず、また、上述したような矯正後の形鋼製品内部の残留応力の発生、およびそれに伴う切断時の局部変形、加工硬化およびそれに伴う割れ発生などの問題がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の繰り返し曲げの原理に基づくローラーレベラーによる矯正では、1)両端の非定常部の矯正が出来ない、2)残留応力による切断時の局部変形が避けられない、3)H形鋼のウェブ部とフランジ部の付け根近傍の加工硬化など、不均一変形による局部的な材質劣化の問題が発生しやすい、などの課題があった。
【0017】
また、特公昭56-40644号公報に開示されているようなユニバーサル圧延機を用いた圧延矯正方法では、真直性は満足できても矯正前後の形鋼の断面形状変化が大きいため、製品の寸法精度が低下し、寸法外れが発生しやすいという問題があった。
【0018】
これらの従来の矯正方法における問題点に鑑みて、本発明は、従来のローラーレベラーのみによる矯正方法の欠点である不均一変形による形鋼内部の残留応力発生、および局部的材質劣化、従来の矯正方法の欠点である寸法精度の低下などをともに抑制でき、全長における断面寸法精度および真直性に優れ、内部残留応力および局部的材質劣化が少ない形鋼の矯正方法および矯正装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1) 矯正圧延機と、その入側および出側のうちの何れか一方または両方に配置されたピンチロール列とを用いて形鋼を矯正する方法において、前記ピンチロール列を形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能な複数のピンチロールで構成し、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列の各ピンチロールに、ロール位置、ロール反力を測定するセンサーを設け、前記矯正圧延機で圧下することにより、形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるとともに、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、反力、および、前記各ピンチロール列のピンチロールの位置、反力の各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と曲げモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機のロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置および開度のうち各ピンチロールの位置を含む1種以上とを決定する制御信号を演算し、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機のロール位置および前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの位置を、制御盤およびアクチュエーターを用いて調節することにより、ピンチロール列における形鋼のパスライン位置を設定し、前記ピンチロール列によってロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(2)矯正圧延機とその入側および出側のうちの何れか一方または両方に配置されたピンチロール列とを用いて形鋼を矯正する方法において、前記ピンチロール列を形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能な複数のピンチロールで構成し、さらに該複数のピンチロールは、形鋼を把持してパスラインの回りに回転することが可能であるものとし、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに、ロール位置、ロール反力を測定するセンサー、並びに、ピンチロール列の各ピンチロールにピンチロールの回転軸の傾きを測定するセンサーを設け、前記矯正圧延機で圧下することにより、形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるとともに、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、ロール反力、ならびに、ピンチロール列の各ピンチロールの位置、反力、および回転軸の傾きの各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と、曲げモーメントおよび捩れモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機の圧延ロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置、開度およびロール回転軸の傾きのうちの各ピンチロールの位置およびロール回転軸の傾きを含む2種以上とを決定する制御信号を演算し、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機のロール位置を設定するとともに、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの位置及び前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの回転軸のパスラインを軸とした圧延幅方向に対する傾き角度を、制御盤およびアクチュエーターを用いて調節することにより、ピンチロール列における形鋼の捻れに対するパスラインの捻れ及びピンチロール列における形鋼のパスライン位置を設定し、前記ピンチロール列によってロールバイト内の前記形鋼に対して曲げ及び捩れモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(3)さらに、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに、ロール回転速度を測定するセンサーを設け、該センサーからの前記矯正圧延機およびピンチロール列の各ピンチロールのロール回転速度の各計測信号に基づいて形鋼に作用する引張り力を演算し、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの回転速度を調節することにより、形鋼の長手方向に引張り張力を付与することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(4) 矯正圧延機の入側および出側のうちの何れか一方または両方に、該形鋼を把持して該形鋼を上下方向、左右方向および回転方向に変位することが可能な1対または複数対のピンチロールを設置し、該矯正圧延機の圧延ロールおよび該ピンチロールの位置センサーおよび荷重センサー並びに、ピンチロール制御装置、圧延制御装置、駆動装置および制御盤を有し、形鋼の垂直断面全体を該矯正圧延機によって塑性変形させるとともに、ピンチロール制御装置により、該荷重センサーの計測信号を入力して該矯正圧延機のロールバイトと該ピンチロール間の形鋼に生じる弾性たわみを演算する変形モデルと、該位置センサーの計測信号を入力して該形鋼のパスラインを演算して目標のパスラインからの偏差変位を演算するパスラインモデルと、該偏差変位に該形鋼の弾性たわみによる偏差角度を加算して実効偏差角度を推定する偏差変位モデルとを用いて、該実効偏差角度が零になるように該ピンチロール位置を調節する信号を演算して出力し、圧延制御装置により、該矯正圧延機の圧延ロールの位置センサーおよび荷重センサーの計測信号を入力して目標の圧延ひずみを形鋼に付与するように圧延ロールの開度を調節する信号を演算して出力し、駆動装置および制御盤により、該ピンチロールおよび該圧延ロールの位置を該制御装置の指令位置に変位させて、前記上下方向、左右方向もしくは回転方向の何れか一方または複数の方向にモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(5)さらに、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロール間の相対位置を調節することにより、ピンチロール列における形鋼の姿勢を調整することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(6)前記矯正圧延機の圧下率を10%未満として圧下することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
(7)形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側の何れか一方または両方に設置され、形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することが可能な複数のピンチロールで構成されたピンチロール列を有し、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列の各ピンチロールに設けられたロール位置、ロール反力を測定するセンサーと、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、反力、および、前記各ピンチロール列のピンチロールの位置、反力の各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と曲げモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機のロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置及び開度のうち各ピンチロールの位置を含む1種以上とを決定して制御信号とする演算制御手段と、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機の圧延ロールおよび前記ピンチロール列のピンチロールを制御する制御盤およびアクチュエーターとからなる制御手段を備えることを特徴とする全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
(8)形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側の何れか一方または両方に設置され、形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することが可能な複数のピンチロールで構成されたピンチロール列を有し、前記ピンチロール列を構成する複数のピンチロールが、さらに、形鋼を把持してパスラインの回りに回転することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して捻れモーメントを付与することが可能であり、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに設けられたロール位置、ロール反力を測定するセンサー、及びピンチロール列の各ピンチロールに設けられたピンチロールの回転軸の傾きを測定するセンサーと、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、ならびに、ピンチロール列の各ピンチロールの位置、反力、および回転軸の傾きの各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と、曲げモーメントおよび捩れモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピン チロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機の圧延ロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置、開度およびロール回転軸の傾きのうちの各ピンチロールの位置および回転軸の傾きを含む2種以上とを決定して制御信号とする演算制御手段と、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機の圧延ロールおよび前記ピンチロール列のピンチロールを制御する制御盤およびアクチュエーターとからなる制御装置を備えることを特徴とする全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
(9) 前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの少なくとも一対のピンチロールは、ロール回転速度を測定するセンサーを有し、回転速度を調節可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
(10)形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側のうちの何れか一方または両方に設置され、該形鋼を把持して該形鋼を上下方向、左右方向および回転方向に変位することが可能でかつ、前記上下方向、左右方向もしくは回転方向の何れか一方または複数の方向にモーメントを付与することが可能な1対または複数対のピンチロールと、該矯正圧延機の圧延ロールおよび該ピンチロールの位置センサーおよび荷重センサーを有し、該荷重センサーの計測信号を入力して該矯正圧延機のロールバイトと該ピンチロール間の形鋼に生じる弾性たわみを演算する変形モデルと、該位置センサーの計測信号を入力して該形鋼のパスラインを演算して目標のパスラインからの偏差変位を演算するパスラインモデルと、該偏差変位に該形鋼の弾性たわみによる偏差角度を加算して実効偏差角度を推定する偏差変位モデルと、該実効偏差角度が零になるように該ピンチロール位置を調節する信号を演算して出力する制御装置と、該矯正圧延機の圧延ロールの位置センサーおよび荷重センサーの計測信号を入力して目標の圧延ひずみを形鋼に付与するように圧延ロールの開度を調節する信号を演算して出力する圧延制御装置と、該ピンチロールおよび該圧延ロールの位置を該制御装置の指令位置に変位する駆動装置および制御盤を有することを特徴とする全長における断面寸法形状及び真直性に優れた形鋼の矯正装置。
(11) 前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールは、形鋼を把持して、個別に上下および左右方向に移動可能であり、各ピンチロール間の上下および左右方向の相対位置が調節可能であることを特徴とする、(7)〜(9)のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
(12) 前記矯正圧延機がユニバーサル圧延機であることを特徴とする、(7)〜(11)のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に詳細に説明する。
【0021】
本発明者らは、従来のローラーレベラーのみによる矯正方法の欠点である不均一変形による形鋼内部の残留応力発生および局部的材質劣化、従来の矯正方法の欠点である寸法精度の低下、などを抑制するために、圧延機による圧延矯正とローラーレベラーに代表される曲げ矯正の長所と短所を鋭意比較検討した結果、それぞれ単独で用いる場合の圧延矯正機構と曲げ矯正機構に対して、それぞれの特徴を組み合わせることによる相互作用で、従来にない高機能の軽圧下矯正機構が得られ、これらの機構により、全長における高断面寸法精度および真直性に優れ、内部残留応力および局部的材質劣化が少ない形鋼の矯正が可能となることを知見した。
【0022】
本発明の矯正装置は、矯正圧延機と、この矯正圧延機の入側および出側のうちの何れか一方または両方に設置されたピンチロール列により構成される。
【0023】
図1は、本発明の矯正装置の一例として、ユニバーサル圧延機51とその入側および出側にそれぞれ入側ピンチロール列52および出側ピンチロール列53を配置する矯正装置を示す。
【0024】
形鋼50は、矯正圧延機であるユニバーサル圧延機51の上下および左右にそれぞれ配置された水平ロール54、54’および竪ロール55、55’により挟み込まれて同時に所定の圧下率で圧下されることにより、垂直断面全体に均一な塑性変形が付与され、形鋼50の各部位の形状が所定の寸法に調整される。
【0025】
なお、本発明において、断面、垂直断面とは、いづれも形鋼の長手方向に直角な断面を指すものとする。
【0026】
本発明の矯正圧延機としては、形状が複雑な形鋼の垂直断面全体を圧延により均一に塑性変形させる必要があり、形鋼の周囲全体に接触させて均一に圧下することが可能であれば、いかなる形態の圧延機、たとえば孔型ロールを有する圧延機、ユニバーサル圧延機などを用いることができるが、被矯正材への汎用性の点からユニバーサル圧延機を用いることが好ましい。
【0027】
一般に、ユニバーサル圧延機は高価であるが、本発明の軽圧下圧延矯正条件であれば、加工仕事量が小さく比較的コンパクトで安価な設備で実現できる。
【0028】
ユニバーサル圧延機51の入側および出側には、パスライン(形鋼の搬送方向)に沿って上下および左右に一対づつ配設された複数のピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)で構成された入側ピンチロール列52および出側ピンチロール列53が配置されており、形鋼50に対して所要の曲げ応力を付与するとともに、好ましくは、ピンチロールに回転駆動装置(図示せず)を設け、回転駆動装置により各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)を所定の回転速度に調節すること、たとえば、ユニバーサル圧延機の圧延速度に比して入側ピンチロール列のピンチロールの回転速度を遅く、出側ピンチロール列のピンチロールの回転速度を速くするなど、により、ユニバーサル圧延機51と入側ピンチロール列52または出側ピンチロール列53との間で、形鋼50の長手方向に引張り張力を付与する。
【0029】
なお、ピンチロールに設ける回転駆動装置は、各ピンチロール列内の各ピンチロールに設けてもよいが、各ピンチロール列内で、少くとも1対のピンチロール(たとえば、57、57’および59、59’)に設けてあれば良い。なお、入側のピンチロールによる張力付与に関しては、ピンチロールにブレーキを設けることにより、モーターによるロール回転駆動方式を、回転制動方式に代替することも可能である。前述のように入側または出側の回転駆動装置を備えたピンチロールによりロールバイト内の材料に張力を付与することにより、圧下で生じた塑性変形域をより一層均一に保つことが出来るので、矯正後の形鋼の残留応力を理論的にはほぼ0まで低減することが可能である。また、本発明の矯正装置の入側および出側ピンチロール列52、53には、それぞれアクチュエータ(図示せず)が設けられており、これにより各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)を上下または左右方向に移動させ、形鋼50の所定のパスライン位置を設定することができる。
【0030】
圧延時に反りや曲がりが生じた形鋼50を矯正する際には、ユニバーサル圧延機51の各ロール(54、54’55、55’)、および入側および出側ピンチロール列52、53の各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)には、形鋼50の反りや曲がりによる所定パスラインからの幾何学的な位置偏差に起因して押付力が負荷され、それらの反力によってユニバーサル圧延機51の入側および出側近傍の形鋼50に曲げモーメントが発生し、形鋼50を所定パスラインへ矯正する機構が働く。
【0031】
また、上記の上下および左右方向に移動させることができる複数のピンチロールには、好ましくはさらに、アクチュエーター(図示せず)を設けて、複数のピンチロールの回転軸をパスラインの周りに回転させることを可能とする機能を備えさせる。すなわち、これによって、圧延時に捻れ変形が生じた形鋼50を矯正する際には、形鋼50の捻れ変形(捻れ角度)に応じて、入側ピンチロール列52の各ピンチロール(56、56’、57、57’)の回転軸に対して、出側ピンチロール列53の各ピンチロール(58、58’、59、59’)の回転軸を、上記のアクチュエーターにより、パスラインの周りに回転させ、パスラインを中心に形鋼の捻れ角度を相殺するように傾けた位置に設定する。これにより、形鋼50の捻れ変形に起因して入側および出側ピンチロール列52、53に発生する反力によって、ユニバーサル圧延機51の入側および出側近傍の形鋼50に捻れモーメントが発生し、形鋼50の捻れを矯正する機構が働く。
【0032】
また、圧延時に反りや曲がりが生じた形鋼50、または捻れ変形が生じた形鋼50を矯正する際には、上述のように、同時にユニバーサル圧延機51と入側および出側ピンチロール列52、53との間には、形鋼50の長手方向に対して引張り張力を付与することができるため、入側および出側ピンチロール列52、53の反力に起因する曲げモーメントまたは捻れモーメントと長手方向の引張り張力との重畳作用により、形鋼50は、ユニバーサル圧延機51による低い圧下率によって容易に垂直断面全体に均一な塑性変形が可能となり、全長にわたって垂直断面の寸法精度および真直性に優れた矯正が可能となる。
【0033】
短尺の形鋼50を矯正する場合は、形鋼50の自重による入側および出側ピンチロール列52、53の各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)の拘束力への影響が少ないため、各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)の位置を形鋼の目標パスライン位置に設定することにより、形鋼50を容易に矯正することができるが、長尺の形鋼50を矯正する場合は、形鋼50の自重によるピンチロールの拘束力への影響が大きくなるため、各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)の相対位置を以下のように調整する必要がある。
【0034】
つまり、長尺の形鋼50を矯正する場合は、ユニバーサル圧延機51の入側または出側のローラーテーブル上に被矯正材の形鋼50が連続して存在し、それらの自重により各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)の拘束力を妨げる方向に横荷重や曲げモーメントが作用するため、入側および出側ピンチロール列52、53における材料の把持姿勢(パスラインに対する傾き)の変動、およびそれに起因したユニバーサル圧延機51における塑性変形中の材料に作用する圧延荷重や曲げモーメントの変動が避けられず、矯正における寸法精度が大幅に低下するという問題が生じる。
【0035】
そこで、本発明では、好ましくは入側および出側ピンチロール列52、53を構成する各ピンチロール(56、56’、57、57’、58、58’、59、59’)に、それらの相対位置をアクチェータにより個別に調整することが可能な機構を設け、圧延中の材料に負荷すべき最適な曲げモーメントに対して外乱となるローラーテーブル上の形鋼50の自重により各ピンチロールに生じる余分な横荷重や曲げモーメントを相殺するように各ピンチロールの相対位置を個別に調節し、形鋼50の姿勢を調整できるようにする。これによりユニバーサル圧延機51における塑性変形中の材料に作用する圧延荷重や曲げモーメントの変動を抑制することができ、長尺の形鋼50を矯正する場合でも、短尺材の矯正と同様に、全長にわたって垂直断面の寸法精度および真直性に優れた矯正が可能となる。
また、図1では、入側、出側にそれぞれ4つのピンチロール対(8個のピンチロール)からなるピンチロール列を示しているが、上記観点からさらに多くのピンチロール対からなるピンチロール列としてもよいことは明らかである。なお、矯正に必要な拘束力を維持できるものであれば1対のピンチロール(ピンチロール2個)からなるピンチロール列を構成しても良いことは言うまでもない。
【0036】
また、曲りが大きい形鋼50を矯正する場合にも、入側ピンチロール列52または出側ピンチロール列53が形鋼50の先端と干渉しないような上下または左右位置に予め開いておき、形鋼50の先端が通過する際に、これらのピンチロールを閉じて形鋼50に対して所要の圧下を付与することによって、曲りが大きい形鋼50による搬送トラブルを回避することができる。
【0037】
上述の通り、本発明の圧延矯正装置においては、ピンチロール列の各ピンチロールは、上下、左右に移動可能であり、また、好ましくは、ピンチロールの回転軸の傾きを変更可能とする。これによって各ピンチロールの上下、左右位置を変更し、或いは好ましくは、さらに、ピンチロールの回転軸の傾きを変更して、パスラインの上下、左右位置、および好ましくは、さらにパスラインの捻れを調整するものである。上述のように、ピンチロール列の各ピンチロールの各々にアクチュエータを設け、各ピンチロール毎に位置を調整することもできるが、上下、或いは左右のピンチロール対単位にアクチュエータを設け、ピンチロール列毎に上下、左右位置、或いは好ましくは、さらに回転軸の傾きを調整して、上述のようにパスラインの位置、捻りなどの調整をするようにしても良い。また、好ましくは、ピンチロール列、たとえば、複数個のピンチロールで形成されるピンチロール列単位にアクチュエーターを設け、ピンチロール列単位に、上下、左右移動させ、あるいは好ましくは、さらにその回転軸を傾斜させて、パスラインの上下、左右位置、好ましくは、さらに捻れを調整しても良い。
【0038】
この場合、たとえば、上下、左右に移動可能な台車上にピンチロールを搭載したピンチロール対あるいは列を構成し、この台車をアクチュエーターにより上下、左右に移動させ、或いは好ましくは、さらにアクチュエータによって台車を傾斜させて、パスラインの調整を行うことができる。
【0039】
また、本発明においては、上述のように、長尺の形鋼を矯正するような場合、好ましくは、長尺材の自重によるピンチロール拘束力への影響を緩和するため、被矯正材の姿勢(パスラインに対する傾き)を制御する。このためには、ピンチロール列内における各ピンチロールの相対位置を調整する必要がある。この場合は、ピンチロールを個別に位置変更する必要があるので、ピンチロール毎に、あるいはピンチロール対毎に相対位置を変更可能とするアクチュエーターを設けた構成とすることが好ましい。
【0040】
また、相対位置とは、ピンチロール列で形成されるパスラインに対する各ピンチロールの位置のことであり、通常この位置は、パスラインと一致する。しかしながら、上述のように長尺材の場合は、ピンチロール列内のいくつかのピンチロールの位置を、パスラインからずらすことによって、すなわち相対位置を調整することによって、形鋼の姿勢を制御するものである。なお、矯正圧延機の入側および出側のいずれか一方または双方に、複数のピンチロール列を備える場合は、ピンチロール列間の相対位置を調整することにより、長尺材の姿勢を調節することもできるので、ピンチロール列単位にアクチュエータを設ける構成も好適である。アクチュエータとしては油圧式、電動式のものなど公知の装置を利用できる。
【0041】
なお、矯正圧延機の入側及び出側の双方にピンチロール列を備えた図1の装置に基づいて説明したが、ピンチロール列は、入側または出側のいずれか一方の側にのみ備えたものでもよいし、また、図1の例では、それぞれ8個のピンチロールから構成されるピンチロール列を示しているが、姿勢制御などの観点からさらに多くのピンチロールからなるピンチロール列としても良く、いずれも本発明の効果を発揮できることは言うまでもない。
【0042】
図2(a)、(b)は、本発明の矯正方法(図2(b))とローラーレベラーのみによる従来の矯正方法(図2(a))における被矯正材である形鋼50の変形特性を比較するための矯正モデルを示した図である。
【0043】
図2(a)に示すローラーレベラーのみによる従来の矯正方法においては、ローラーレベラーの矯正ロール73の形鋼50との接触部B点の位置を、矯正ロール72の形鋼50との接触部B’点の位置に対する相対移動量、つまり押し込み量をΔだけ上方(図2(a)の上方)に押し込む位置に設定し、矯正ロール71の形鋼50との接触部A点を支点として形鋼50を上の方向(図2(a)で下に凸の形状)に曲げる矯正力を負荷した例であり、この場合、矯正中の形鋼の接触点B点には矯正力に対する下向き(図2(a)で下向き)の反力が発生する。
【0044】
一方、図2(b)に示す本発明の矯正方法において、ユニバーサル圧延機のロール55、55’の出側ピンチロール59、59’のロール59’と形鋼50との接触部B点の位置を、ユニバーサル圧延機のロール55、55’の入側ピンチロール57、57’のロール57’と形鋼50との接触部B点の位置に対して、図2(a)と同じ押し込み量Δだけ上方(図2(b)で上方)に押し込む位置に設定した場合、矯正中の形鋼50の接触点B点には、同様に矯正力に対する下向き(図2(b)で下向き)の反力が発生するが、矯正中の形鋼50には、同時にユニバーサル圧延機のロール55、55’による圧延により、塑性加工域で圧下量uが負荷されており、その圧下量uにより矯正中の形鋼50の接触部B点の反力は軽減される。また、好ましくは、ユニバーサル圧延機のロール55、55’と入側ピンチロール57、57’および出側ピンチロール59、59’の間に引張り張力(図2(b)の左右の矢印の方向)が付与された状態で、ユニバーサル圧延機のロール55、55’による圧延により、塑性加工域で圧下量uが負荷されるため、矯正中の形鋼50の変形特性は変化し、それに伴ってB点の反力も変化する。
【0045】
すなわち、図3は、図2の本発明法(図2(b))と従来法(図2(a))の矯正モデルにおいて、矯正中の形鋼50の接触部B点の矯正反力を弾塑性有限要素解析により計算し、比較した結果を示したものである。ここで、本発明法の矯正モデルにおけるユニバーサル圧延機のロール55、55’の圧下率と矯正中の形鋼50とピンチロール59’との接触部B点の矯正反力との関係を知るために、図3の横軸は図2の形鋼50と圧延機のロール55、55’との接触部AおよびA’点における圧延の圧下率(%)とした。
【0046】
図3から明らかなように、本発明のユニバーサル圧延機のロール55、55’と入側および出側ピンチロール57、57’、59、59’による矯正は、従来のローラーレベラー71、72、73のみの矯正に比べて、矯正中の形鋼50とロールとの接触点B点での矯正反力を低下させることができ、その矯正反力は、ユニバーサル圧延機のロール55、55’による圧延時に圧下率(%)の増加により、低下させることができる。また、ユニバーサル圧延機のロールと、入側および出側のピンチロールにより、形鋼に引張り張力が付与されると、さらに矯正反力を低下させることができることがわかる。
【0047】
これは、本発明では、ユニバーサル圧延機のロール55、55’の圧延により既に降伏状態にあるロールバイト内、つまり図2(b)の形鋼と圧延機のロールとの接触部A点およびA’点の近傍の垂直断面に対して、出側ピンチロール59、59’の形鋼との接触部B点の押し込み量Δに起因する曲げ応力と、ユニバーサル圧延機のロール55、55’と入側および出側ピンチロール57、57’および59、59’(図1では、入側および出側ピンチロール列52、53に相当)との間の引張り張力とが重畳して作用し、ユニバーサル圧延機のロール55、55’の圧下率および引張り張力の増大により形鋼50は降伏しやすくなるため、形鋼50とピンチロール59’との接触部B点の矯正反力が減少するものと考えられる。
【0048】
図4は、図2の本発明法(図2(b))と従来法(図2(a))の矯正モデルにおける矯正中の形鋼50とローラーレベラーのロール又はピンチロールとの接触部B点の矯正反力と矯正後のスプリングバック量(形鋼が矯正機から外れた際に内部応力の解放により変形する現象)との関係を示す図である。矯正後のスプリングバック量は矯正反力(ローラーレベラーによる矯正反力P(a)、本発明の方法による矯正反力P(b))が大きいほど、大きくなることがわかる。
【0049】
このように図3および図4から本発明の矯正法は、従来の矯正方法に比べて矯正後のスプリングバック量、つまり矯正後の形状凍結性に優れ、寸法精度および真直性の高い矯正が可能であることがわかる。
【0050】
図5(a)(b)は、図2の本発明法(図2(b))と従来法(図2(a))の矯正モデルにおける矯正時の残留応力の変化を示す図である。
【0051】
図5の材料表面に平行で、厚さ方向にほぼ等間隔に示した線は、材料厚さ方向の残留応力の分布を示したもので、線の長さがその大きさを示している。
【0052】
図5(a)は、ローラーレベラーのみによる従来の曲げ矯正後の残留応力分布であり、開放される応力が開放すべき残留応力に対して小さく、残留応力が蓄積され、かつ厚さ方向に不均一な分布となっている。一方、図5(b)は、本発明の矯正方法で、ロールでの圧下前後の残留応力の分布を示しており、圧延による塑性変形が加えられた結果、開放すべき残留応力が大幅に減少しており、また、板厚方向に均一な分布となっていることがわかる。
【0053】
従来法(図2(a))であるローラーレベラーのみによる矯正方法では曲げ応力により形鋼50内部に残留応力が蓄積されるが、本発明法(図2(b))であるユニバーサル圧延機とピンチロールによる矯正方法では、原理的に残留応力を零にまで低減することが可能であり、従来法では、矯正後の形鋼を切断する際に内部の残留応力に起因して切断面近傍に局部変形が発生しやすいのに対して、本発明法では、原理的にそれらの問題を低減できる。
【0054】
図6に、ねじれ変形が生じている形鋼(図6(b))および矯正する方法の原理図(図6(a))を示す。
【0055】
一般に圧延後の形鋼を矯正する場合、形鋼圧延によって生じた上下または左右の曲がりや反りのほかに、捻れによる変形の矯正を考慮する必要がある。
【0056】
本発明において、捻れによる変形を生じた形鋼を矯正する場合は、例えば、図6(a)に示すように、形鋼の捻れ変形(捻れ角度:α)に応じて、入側ピンチロール列52の各ピンチロール(図1の56、56’、57、57’)の回転軸に対して、出側ピンチロール列53の各ピンチロール(図1の58、58’、59、59’)の回転軸をアクチュエーターにより、パスラインの回りに回転させ、パスラインを中心に形鋼の捻れ角度:αを相殺するように傾けた位置に設定する。
【0057】
本発明では、このように捻れによる変形を生じた形鋼を矯正する場合には、上述のようにユニバーサル圧延機51の圧延により既に降伏状態にある形鋼50に、入側および出側ピンチロール列52、53による捻り応力と、ユニバーサル圧延機のロール55、55’(図1)と入側および出側ピンチロール列52、53の間との引張り張力とが重畳して作用することとなるが、上述のように、ユニバーサル圧延機のロール55、55’(図1)の圧下率および引張り張力の増大により、形鋼50は降伏しやすくなり、形鋼50との接触部B点の矯正反力およびそれに起因するスプリングバックは減少し、全長にわたって垂直断面の寸法精度および真直性に優れた矯正が可能となる。
【0058】
以上のように、本発明における矯正においては、矯正すべき形鋼の曲がりや捩れなど変形の程度に応じて、更には、付与される引張り張力に応じて、矯正圧延機における圧下率、入側および出側でのピンチロールの位置、或いはピンチロールの回転軸の傾き等を調整するが、矯正圧延機における圧下率は10%未満の軽圧下とすることが好ましい。これは、圧下率が10%を超えると、形鋼の寸法精度が低下し、また、そのような圧下を加えようとすると圧延設備を大型化せざるを得ず、設備費用が増大するからである。本発明では、張力付与と組み合わせることによって、圧下率を低く、すなわち軽圧下に調整することが可能である。
【0059】
また、先に述べたように、ピンチロールの回転速度を制御することによって塑性変形中の形鋼に対して、引張張力を負荷することができる。負荷する張力は、大きい程スプリングバック低減効果があるので好ましいが、過度に大きな張力負荷は、ピンチロールの設備コストの増加を招くので、その費用対効果を考慮して設定する必要がある。一般に形鋼の変形抵抗の10%程度の張力を負荷できれば、顕著な効果が認められる。なお、ピンチロールの圧下力を大きくしたり、回転速度制御するピンチロールの数を増やしたりして、ピンチロールと形鋼との摩擦力を確保することにより、負荷する張力を調整することも好ましい。
【0060】
図7は本発明の形鋼の矯正システムに関する実施形態の一例として、ユニバーサル圧延機51とその入側および出側のピンチロール列52、53で構成された矯正装置(図1に同じ)およびその制御システムの概念図を示す.また,図8はこの制御システムによる制御の流れを示す。
【0061】
なお、図7には図示していないが、入側および出側ピンチロール列52、53の各ピンチロール列の中で、少なくとも1対以上のピンチロールには回転駆動装置が設けられており、回転速度を調整可能としている。
【0062】
ユニバーサル圧延機51と、入側および出側ピンチロール列52、53とには、それぞれ各ロールの位置、および好ましくは、ピンチロールの回転軸の傾き、を変えるためのアクチュエータ(図示せず)およびその制御盤60、61、62と、それぞれ各ロールの回転速度、ロール位置およびロール反力、および好ましくは、ピンチロールの回転軸の傾きなど、を測定するためのセンサー63、64および65が設けられており、これらは記録装置67を有する演算制御装置66と信号線で連結されている。演算制御装置66は主にピンチロール制御に関係する変形モデル81、パスラインモデル82、偏差変位モデル83、制御装置84と主に圧延制御に関係する圧延制御装置85から構成される。変形モデル81はピンチロールに設置された荷重センサー64および65の計測信号を入力してロールバイトと該ピンチロール間の形鋼に生じる弾性たわみを演算する。形鋼を梁と見なすことにより、材料力学の梁の曲げ変形の公式が適用できる。即ち、ロールバイトからピンチロールの間の形鋼をロールバイト側が固定端でピンチロール側が着力端である片持ち梁と見なせば、ピンチロール荷重やねじりモーメントなどの負荷が着力することにより、形鋼にたわみやねじれなどの弾性変形が生じる。弾性変形は負荷中に生じ、除荷によって消失する性質がある。そのため、矯正中の負荷で発生した弾性たわみや弾性ねじれは矯正後にスプリングバックと呼ばれるもどり変形で消失するので、スプリングバックを補正しないと矯正効果が不足し形状凍結性が悪化する原因となる。パスラインモデル82はピンチロールに設置された位置センサー64および65と矯正圧延機に設置された位置センサー63の計測信号を入力して形鋼のパスラインを演算して目標のパスラインからの偏差変位を演算する。通常形鋼の圧延では形鋼が入り側の搬送テーブルから圧延機で圧延されて出側の搬送テーブルに送られる。その際、形鋼が通過する軌跡を連ねた曲線がパスラインであり、定常圧延状態では1本の曲線に収斂する。通常このパスラインが目標の形鋼の形状に一致するように圧延を行う。目標パスラインと実測のパスラインの差を偏差角度として求め、これが零になるように制御すれば所望の形状の形鋼が得られる。但し、各ロールの位置から算出された矯正中の形鋼のパスラインは弾性変形を含むため矯正後にスプリングバックを生じるので、前述のように精度の高い矯正を行うためにはその補正が必要である。偏差変位モデル83は偏差角度に形鋼の弾性たわみによる偏差角度を加算して実効偏差角度を推定する。即ち、矯正後のスプリングバックにより不足する矯正量を弾性たわみの分補正することにより、矯正効果の不足を補う。これにより、矯正の高精度化がはじめて可能となる。制御装置84は実効偏差角度の分だけ該ピンチロール位置を調節する信号を演算して出力する。圧延制御装置85は矯正圧延機の圧延ロールの位置センサーおよび荷重センサー63の計測信号を入力して目標の圧延ひずみを形鋼に付与するように圧延ロールの開度を調節する信号を演算して出力する。圧延矯正では圧下が小であり形鋼の断面全体に出来るだけ均一なひずみを付与するために、圧延ロールに作用する荷重が適正範囲内を保持するようにロールの開度を調節して目標の圧延ひずみを得る。入側および出側ピンチロール列52、53に設けられたアクチュエータは、制御装置の指令に従って各ピンチロールを上下および左右方向に移動させることで形鋼のパスライン位置を変更するとともに、好ましくは、各ピンチロールの回転軸を傾斜させることによりパスラインの捻れを変更することができる。
【0063】
形鋼50を矯正する際には、ユニバーサル圧延機51の各ロールの回転速度、各ロールの位置と各ロール反力をセンサー63により測定し、これらの計測信号を制御装置66に取り込んで演算することにより、ユニバーサル圧延機51での狙いの圧下率を得るための適正ロール位置(開度)を決定するとともに、その制御信号をユニバーサル圧延機51の制御盤60に送信し、アクチュエータを介して、ロール位置(開度)を調整し、圧延の圧下率を狙い値に制御する。これより形鋼50の垂直断面形状を狙い値に保つとともに、ロールバイト内の形鋼50を塑性変形状態に保持し、入側および出側ピンチロール列52、53の矯正負荷を低減する。
【0064】
一方、入側および出側ピンチロール列52、53においては、各ロールの回転速度、各ロール位置および各ロール反力、好ましくはさらにロール回転軸の傾きを、センサー64および65で検出し、その計測信号を演算制御装置66に取り込んで演算することにより、形鋼50の形状を推定し、形鋼の形状不良を矯正するために最適な入側および出側ピンチロール列52、53の各ロール位置、開度および各ロール回転速度、好ましくはさらに、ロール回転軸の傾きなど、を決定するとともに、その制御信号を入側および出側ピンチロール列52、53の制御盤61、62に送信し、アクチュエータを介して各ピンチロールの位置、開度、および回転速度、好ましくはさらにロール回転軸の傾きなど、を調整し矯正後の形鋼の形状を狙い値になるように制御する。
【0065】
また、入側および出側ピンチロール列52、53の各ロールに取り付けられた各ロール位置および各ロール反力のセンサー64、65により、各ロール位置および各ロール反力の上下および左右方向の成分を計測する。この計測値により、矯正中に形鋼50に負荷される上下および左右方向の荷重、およびピンチロールの上下および左右位置を検出して、入側および出側ピンチロール列52、53で把持される形鋼に作用する負荷(横荷重および曲げモーメント)と、この負荷による形鋼の弾性変形量とを、次いで、各ロール位置および該形鋼の弾性変形量から形鋼の曲り量を演算制御装置66の演算機能を用いて推定するとともに、該形鋼の曲り量を相殺するような形鋼50の把持姿勢を演算し、それに応じた各ピンチロールの最適位置の制御信号を入側および出側ピンチロール列52、53の制御盤61、62に送信し、アクチュエータを介して好適に設けた個別に位置調整が可能な機構によって各ピンチロールの相対位置を調整し、形鋼の把持姿勢が狙い値になるように制御する。
【0066】
圧延後の形鋼には、全長にわたる曲がりや捻れ変形の他に、端部など局部的な曲がりや捻れ変形が生じる場合があるが、このような場合には、好ましくは、ユニバーサル圧延機51と入側および出側のピンチロール列の各ロールに荷重計、望ましくは荷重計および変位計を設け、荷重計、荷重計および変位計による計測信号をもとに、ユニバーサル圧延機51のロール位置(開度)および入側、出側のピンチロール列52、53の各ロール位置および各ロール回転速度を制御することにより、短尺および長尺に関わらず形鋼50の全長および局部に生じている上下左右の曲がりや捻れ変形の矯正を制御することができる。
【0067】
通常の形鋼を矯正する場合は、ユニバーサル圧延機51および入側および出側のピンチロール列52、53のパスラインを一致させて、一定に固定した条件で形鋼の矯正を行うことにより、形鋼の左右曲がり、上下曲がりおよび捻れ変形を矯正して、全長にわたって形鋼の各部位の寸法が目標公差内に入る寸法精度と真直性に優れた形鋼を得ることができる。また、この際、更に形鋼の矯正効果を高め、寸法精度と真直性を向上させるためには、入側または出側のピンチロール列52、53のピンチロールの回転速度の制御をおこなって、ユニバーサル圧延機51と入側または出側のピンチロール列52、53との間で形鋼に引張り張力を付与する。
【0068】
一方、非常に厳しい寸法精度および内部材質(残留応力、加工硬化が小さい)が要求される形鋼の矯正の場合には、図9〜図11に示すように左右曲がり、上下曲がりおよびねじれ変形の形鋼の形状不良の状態に応じて、入側および出側のピンチロール列52、53の各ピンチロール位置を制御する必要がある。
【0069】
つまり、図9に示すように左右曲がりが生じた形鋼を矯正する場合には、入側および出側のピンチロール列52、53の何れか一方の各ピンチロール位置を、ユニバーサル圧延機51のパスライン位置に対して左曲がりの形鋼(a)の場合は右側に、右曲がりの形鋼(b)の場合は左側に、それぞれ移動させた位置に設定する。
【0070】
図10に示すように上下曲がりが生じた形鋼を矯正する場合には、入側および出側のピンチロール列52、53の何れか一方の各ピンチロール位置を、ユニバーサル圧延機51のパスライン位置に対して上曲がりの形鋼(a)の場合は下側に、下曲がりの形鋼(b)の場合は上側に、それぞれ移動させた位置に設定する。
【0071】
また、図11に示すように捻れが生じた形鋼を矯正する場合には、入側および出側のピンチロール列52、53の何れか一方の各ピンチロールの回転軸を、ユニバーサル圧延機51のパスラインを中心に右捻れ変形の形鋼(a)の場合は左回りに、左捻れ変形の形鋼(b)の場合は右回りにそれぞれ回転させて、そのピンチロールの回転軸が水平面から傾いた位置に設定する。
【0072】
図9〜図11では、便宜上、左右曲がり、上下曲がりおよび捻れ変形のそれぞれの形状不良が単独で生じた形鋼を矯正する場合の矯正制御ロジックについて説明したが、実際のこれらの形状不良が複合して生じた形鋼を矯正する場合は、適宜、これらのピンチロール位置の設定方法を任意に組み合わせて矯正を行うことは言うまでもない。また、矯正を行なうに際してのパスライン位置、パスラインの捻りなどの設定は、手動設定としても良いし、上述の制御システムを適用して自動的に設定制御してもよい。その設定は、上述のようにパスラインを一定として固定する方法、あるいは矯正制御ロジックを適用する方法などいづれも選択できる。
尚、本発明の圧延矯正ではピンチロールを矯正圧延機の入り側と出側に設置するが、ピンチロールを1台だけ設置する場合は、圧延機の出側に設置する方が入り側に設置する場合に比べて大きな矯正効果が得られる。そこで、設備コストや設置スペースの制限からピンチロールを1台にする場合は矯正圧延機の出側にピンチロールを設置して矯正を行うことが好ましい。
【0073】
【実施例】
以下に本発明の実施例を用いてその効果を説明する。
【0074】
図12に示す一般的な形鋼の圧延工程において、本発明の矯正装置と従来のローラーレベラー矯正機をそれぞれ用いて、矯正後の形鋼の寸法精度および真直性を比較した。
【0075】
本発明の矯正装置は、上述の図7に示した本発明の実施形態の一例である、ユニバーサル圧延機51とその入側および出側のピンチロール列52、53とから構成された矯正装置および制御システムを用いた。
実施例1:ピンチロール列の位置の手動設定の場合
本発明の図7の矯正機を、図12に示す一般的な形鋼の圧延工程に設けられたローラーレベラー矯正機とリプレースし、ピンチロール列の位置を手動設定して形鋼を矯正し、両者の能力を比較した。
【0076】
先ず、ローラーレベラーではロールの押し込み量を入側で大きく、出側にいくに従って小さくする基本設定様式で、形鋼の定常部の曲がりを矯正出来る条件を見つけ矯正することが出来た。しかし、形鋼の端部に関しては、公差を外れる場合がかなりの頻度で見られた。これらの公差外れの形鋼は、生産性の極めて低いプレス装置で矯正するか、歩留落ちを前提に端部を切断除去することで対処せざるを得なかった。また、ローラーレベラー矯正後の形鋼の全長、特にプレス矯正を施した部位は、形鋼を切断した際に切断面近傍で垂直断面形状が変化して、公差から外れる場合が多く観察された。
【0077】
一方、本発明の方法でピンチロール列をパスラインに一致させた設定では形鋼の両端部を含めてほぼ目標公差に入れることができた。また、形鋼の端部を含めて何れの場所で切断しても垂直断面形状の大きな変化は見られなかった。
【0078】
以上の結果から、本発明の方法が従来のローラーレベラーを完全に代替出来ることが判明した。また、ローラーレベラーでは矯正しにくい図11のようなねじれを有する形鋼に関しても、同様に矯正出来ることが確認された。更に、短尺材と長尺材とで矯正の精度を比較したが、ピンチロール列の各ピンチロールの相対位置を最適に設定することにより両者とも高精度に矯正可能であることが確認出来た。
【0079】
但し、このピンチロール列を手動設定する方法では、ピンチロールの弾性変形や形鋼のスプリングバックの影響で、若干の形状不良が製品に残留することが判明した。そこで、この残留形状不良を除去するために実施した例を以下に示す。
実施例2:ピンチロール列の位置を自動制御する場合
実施例1で用いた図7の矯正装置の制御装置66に、図9〜図11に示す矯正原理に基づく制御ロジックを適用した。そして、図12に示す一般的な形鋼の圧延工程に設けられたローラーレベラー矯正機とリプレースし、上記の制御ロジックを自動設定するようにして、形鋼を矯正しその効果を検討した。
【0080】
先ず、図9に示す左右曲がりの形鋼に関して、センサー63、64および65で取り込んだ計測信号から演算して曲がりの方向を推定するとともに、図9のように最適ピンチロール列の位置を演算して、制御盤60、61および62に制御信号を送信し、アクチュエーターを介して、狙いのピンチロール列の位置に制御した。同様に、長尺材の矯正の場合には、上記の位置制御に加えて、ローラーテーブル上の材料からピンチロール列で把持される材料に作用する負荷を測定して、これの影響をキャンセルするようにピンチロールの相対位置を制御した。これにより、短尺材と同様の高精度の矯正が可能であった。また、各ピンチロール列の位置を測定することにより、該ピンチロール列で把持する材料の曲がりを演算し、真直になるようにピンチロールの相対位置を制御した。この場合も短尺材と同様の高精度の矯正が実現された。
【0081】
更に、圧延機およびピンチロールのロール回転数から形鋼に作用する張力を演算し、この張力を矯正に適するようにピンチロールの回転速度を制御した。なお、このとき、形鋼50の変形抵抗に対して、10%の引張張力が発生するよう複数のピンチロールの回転速度を制御して矯正した。その結果、ピンチロールの矯正反力が10%程度低下し、スプリングバックが減少した。この方法により、形鋼の全長でほぼ100%真直な矯正が再現された。また、同様な結果が図10の上下曲がりの場合や図11のねじれ不良に関しても確認された。
【0082】
更に、人工的に左右曲がり、上下曲がりおよび軸方向のねじれが複雑に分布した形鋼を作成して本発明の手法を適用したところ、形鋼の全長でほぼ100%真直な矯正が再現された。
【0083】
以上は、図12の形鋼の圧延工程の一環として組込んだ冷間での矯正の場合であるが、本発明の技術は熱間矯正、温間矯正、など幅広い工程に適用可能である。
【0084】
【発明の効果】
本発明は、均一変形性に優れた圧延矯正方法と不均一変形ではあるが形状制御性の良い曲げ矯正方法を適切に組み合わせて、両者の欠点を補うとともにその長所を十分発揮させるように工夫したことにより、従来の矯正方法では達成が極めて困難な長尺の形鋼を真直に矯正することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の矯正方法における装置の基本構成を示す図である。
【図2】従来技術と本発明の技術の矯正特性を比較するモデルを示す図であり、図2(a)はローラーレベラーの、図2(b)は本発明の、それぞれ技術におけるモデルを示す。
【図3】図2のモデルにより求めた矯正反力と圧延圧下率との関係を示す図である。
【図4】図2のモデルにより求めたスプリングバックと矯正反力の関係を示す図である。
【図5】従来技術と本発明の矯正技術における残留応力分布を模式的に示した図であり、図5(a)はローラーレベラーの場合、図5(b)は本発明の場合をそれぞれ示す。
【図6】本発明の技術によるねじれ変形の矯正原理を示す図であり、図6(a)は、矯正装置の状況を、図6(b)はH形鋼のねじれ変形の一例をそれぞれ示す図である。
【図7】本発明の形鋼の矯正システムの一実施例を示す図である。
【図8】本発明の形鋼の矯正システムにおける制御の流れを示す図である。
【図9】本発明の技術による形鋼の左右曲がりの矯正原理を示す図であり、図9(a)は、左曲りの形鋼、図9(b)は右曲りの形鋼の場合をそれぞれ示す。
【図10】本発明の技術による形鋼の上下曲がりの矯正原理を示す図であり、図10(a)は、上曲りの形鋼、図10(b)は下曲りの形鋼の場合をそれぞれ示す。
【図11】本発明の技術による形鋼のねじれの矯正原理を示す図であり、図11(a)は右捻れの形鋼、図11(b)は左捻れの形鋼の場合をそれぞれ示す。
【図12】形鋼の圧延、矯正工程を示す図である。
【図13】従来の矯正技術を示す図である。
【図14】従来の矯正技術を示す図である。
【図15】従来の矯正技術を示す図である。
【図16】従来の矯正技術を示す図である。
【図17】従来の矯正技術を示す図である。
【符号の説明】
1、2…竪ロール
3、4…水平ロール
10…H形鋼
11…H形鋼のウエブ
12…H形鋼のフランジ
20…フランジ端拘束ローラー
30…フランジ側部拘束ローラー
41…ユニバーサル圧延機の水平ロール
42…ユニバーサル圧延機の竪ロール
43…サイドガイド
44…ストリッパガイド
45…搬送テーブルローラー
46…上下方向反り防止ローラーガイドスタンド
47…左右方向曲がり防止ローラーガイドスタンド
50…形鋼
51…ユニバーサル圧延機
52…入側ピンチロール列
53…出側ピンチロール列
54、54’…ユニバーサル圧延機の水平ロール
55、55’…ユニバーサル圧延機の竪ロール
56、56’…入側ピンチロール列の水平ピンチロール
57、57’…入側ピンチロール列の竪ピンチロール
58、58’…出側ピンチロール列の水平ピンチロール
59、59’…出側ピンチロール列の竪ピンチロール
60…ユニバーサル圧延機の制御盤とアクチュエータ
61…入側ピンチロールの制御盤とアクチュエータ
62…出側ピンチロールの制御盤とアクチュエータ
63…ユニバーサル圧延機のセンサー
64…入側ピンチロール列のセンサー
65…出側ピンチロール列のセンサー
66…演算制御装置
67…記録装置
71、72、73…ローラーレベラーのロール
81…変形モデル
82…パスラインモデル
83…偏差変位モデル
84…制御装置
85…圧延制御装置
Δ…曲げ矯正量
u…圧延圧下量
A、B、C、D…H形鋼
Claims (12)
- 矯正圧延機と、その入側および出側のうちの何れか一方または両方に配置されたピンチロール列とを用いて形鋼を矯正する方法において、前記ピンチロール列を形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能な複数のピンチロールで構成し、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列の各ピンチロールに、ロール位置、ロール反力を測定するセンサーを設け、前記矯正圧延機で圧下することにより、形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるとともに、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、反力、および、前記各ピンチロール列のピンチロールの位置、反力の各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と曲げモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機のロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置および開度のうち各ピンチロールの位置を含む1種以上とを決定する制御信号を演算し、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機のロール位置および前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの位置を、制御盤およびアクチュエーターを用いて調節することにより、ピンチロール列における形鋼のパスライン位置を設定し、前記ピンチロール列によってロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- 矯正圧延機とその入側および出側のうちの何れか一方または両方に配置されたピンチロール列とを用いて形鋼を矯正する方法において、前記ピンチロール列を形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能な複数のピンチロールで構成し、さらに該複数のピンチロールは、形鋼を把持してパスラインの回りに回転することが可能であるものとし、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに、ロール位置、ロール反力を測定するセンサー、並びに、ピンチロール列の各ピンチロールにピンチロールの回転軸の傾きを測定するセンサーを設け、前記矯正圧延機で圧下することにより、形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるとともに、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、ロール反力、ならびに、ピンチロール列の各ピンチロールの位置、反力、および回転軸の傾きの各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と、曲げモーメントおよび捩れモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機の圧延ロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置、開度およびロール回転軸の傾きのうちの各ピンチロールの位置およびロール回転軸の傾きを含む2種以上とを決定する制御信号を演算し、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機のロール位置を設定するとともに、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの位置及び前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの回転軸のパスラインを軸とした圧延幅方向に対する傾き角度を、制御盤およびアクチュエーターを用いて調節することにより、ピンチロール列における形鋼の捻れに対するパスラインの捻れ及びピンチロール列における形鋼のパスライン位置を設定し、前記ピンチロール列によってロールバイト内の前記形鋼に対して曲げ及び捩れモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- さらに、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに、ロール回転速度を測定するセンサーを設け、該センサーからの前記矯正圧延機およびピンチロール列の各ピンチロールのロール回転速度の各計測信号に基づいて形鋼に作用する引張り力を演算し、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの回転速度を調節することにより、形鋼の長手方向に引張り張力を付与することを特徴とする、請求項1又は2に記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- 矯正圧延機の入側および出側のうちの何れか一方または両方に、該形鋼を把持して該形鋼を上下方向、左右方向および回転方向に変位することが可能な1対または複数対のピンチロールを設置し、該矯正圧延機の圧延ロールおよび該ピンチロールの位置センサーおよび荷重センサー並びに、ピンチロール制御装置、圧延制御装置、駆動装置および制御盤を有し、形鋼の垂直断面全体を該矯正圧延機によって塑性変形させるとともに、ピンチロール制御装置により、該荷重センサーの計測信号を入力して該矯正圧延機のロールバイトと該ピンチロール間の形鋼に生じる弾性たわみを演算する変形モデルと、該位置センサーの計測信号を入力して該形鋼のパスラインを演算して目標のパスラインからの偏差変位を演算するパスラインモデルと、該偏差変位に該形鋼の弾性たわみによる偏差角度を加算して実効偏差角度を推定する偏差変位モデルとを用いて、該実効偏差角度が零になるように該ピンチロール位置を調節する信号を演算して出力し、圧延制御装置により、該矯正圧延機の圧延ロールの位置センサーおよび荷重センサーの計測信号を入力して目標の圧延ひずみを形鋼に付与するように圧延ロールの開度を調節する信号を演算して出力し、駆動装置および制御盤により、該ピンチロールおよび該圧延ロールの位置を該制御装置の指令位置に変位させて、前記上下方向、左右方向もしくは回転方向の何れか一方または複数の方向にモーメントを付与することを特徴とする、全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- さらに、前記ピンチロール列を構成する各ピンチロール間の相対位置を調節することにより、ピンチロール列における形鋼の姿勢を調整することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- 前記矯正圧延機の圧下率を10%未満として圧下することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正方法。
- 形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側の何れか一方または両方に設置され、形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することが可能な複数のピンチロールで構成されたピンチロール列を有し、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列の各ピンチロールに設けられたロール位置、ロール反力を測定するセンサーと、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、反力、および、前記各ピンチロール列のピンチロールの位置、反力の各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と曲げモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機のロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置及び開度のうち各ピンチロールの位置を含む1種以上とを決定して制御信号とする演算制御手段と、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機の圧延ロールおよび前記ピンチロール列のピンチロールを制御する制御盤およびアクチュエーターとからなる制御手段を備えることを特徴とする全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
- 形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側の何れか一方または両方に設置され、形鋼を把持して上下および左右方向に移動することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して曲げモーメントを付与することが可能な複数のピンチロールで構成されたピンチロール列を有し、前記ピンチロール列を構成する複数のピンチロールが、さらに、形鋼を把持してパスラインの回りに回転することが可能でかつ、ロールバイト内の前記形鋼に対して捻れモーメントを付与することが可能であり、前記矯正圧延機の各圧延ロールおよびピンチロール列の各ピンチロールに設けられたロール位置、ロール反力を測定するセンサー、及びピンチロール列の各ピンチロールに設けられたピンチロールの回転軸の傾きを測定するセンサーと、該センサーからの前記矯正圧延機のロール位置、ならびに、ピンチロール列の各ピンチロールの位置、反力、および回転軸の傾きの各計測信号に基づいて、前記矯正圧延機において形鋼に作用する圧下率と、曲げモーメントおよび捩れモーメントとを演算し、該演算値並びに前記ピンチロールおよび矯正圧延機に設置された位置センサーの計測信号に基づいて、形鋼の全長を所定の寸法形状に矯正するための、前記矯正圧延機の圧延ロール位置と、前記ピンチロール列の各ピンチロールの位置、開度およびロール回転軸の傾きのうちの各ピ ンチロールの位置および回転軸の傾きを含む2種以上とを決定して制御信号とする演算制御手段と、該制御信号に基づいて、前記矯正圧延機の圧延ロールおよび前記ピンチロール列のピンチロールを制御する制御盤およびアクチュエーターとからなる制御装置を備えることを特徴とする全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
- 前記矯正圧延機の各圧延ロールおよび前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールの少なくとも一対のピンチロールは、ロール回転速度を測定するセンサーを有し、回転速度を調節可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
- 形鋼の垂直断面全体を塑性変形させるための矯正圧延機と、該矯正圧延機の入側および出側のうちの何れか一方または両方に設置され、該形鋼を把持して該形鋼を上下方向、左右方向および回転方向に変位することが可能でかつ、前記上下方向、左右方向もしくは回転方向の何れか一方または複数の方向にモーメントを付与することが可能な1対または複数対のピンチロールと、該矯正圧延機の圧延ロールおよび該ピンチロールの位置センサーおよび荷重センサーを有し、該荷重センサーの計測信号を入力して該矯正圧延機のロールバイトと該ピンチロール間の形鋼に生じる弾性たわみを演算する変形モデルと、該位置センサーの計測信号を入力して該形鋼のパスラインを演算して目標のパスラインからの偏差変位を演算するパスラインモデルと、該偏差変位に該形鋼の弾性たわみによる偏差角度を加算して実効偏差角度を推定する偏差変位モデルと、該実効偏差角度が零になるように該ピンチロール位置を調節する信号を演算して出力する制御装置と、該矯正圧延機の圧延ロールの位置センサーおよび荷重センサーの計測信号を入力して目標の圧延ひずみを形鋼に付与するように圧延ロールの開度を調節する信号を演算して出力する圧延制御装置と、該ピンチロールおよび該圧延ロールの位置を該制御装置の指令位置に変位する駆動装置および制御盤を有することを特徴とする全長における断面寸法形状及び真直性に優れた形鋼の矯正装置。
- 前記ピンチロール列を構成する各ピンチロールは、形鋼を把持して、個別に上下および左右方向に移動可能であり、各ピンチロール間の上下および左右方向の相対位置が調節可能であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
- 前記矯正圧延機がユニバーサル圧延機であることを特徴とする、請求項7〜11のいずれかに記載の全長における断面寸法形状および真直性に優れた形鋼の矯正装置。
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