JP4191881B2 - 銅酸化物還元用の処理液および処理方法 - Google Patents

銅酸化物還元用の処理液および処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂に対する接着性を高めた銅酸化物を還元するための処理液と処理方法に係り、特に多層プリント配線板の製造における内層用銅配線と樹脂層との接着性を高め、かつ、内層用銅配線の耐酸性を高めるための処理液および処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多層プリント配線板の製造において、樹脂層と多層接着される内層用銅配線の表面が平滑であると接着力が弱いものとなり、このため、従来から、内層用銅配線の表面に酸化第一銅や酸化第二銅等の銅酸化物層を形成することが行なわれていた。この銅酸化物層は、表面が微細凹凸であるために、機械的アンカー作用を樹脂層に対して示し、かつ、樹脂層に対する化学的親和性が大きいため、樹脂層との接着性が極めて優れている。
【0003】
しかし、上記の銅酸化物層は耐酸性に劣り、例えば、多層接着工程後のスルーホールめっき工程において、無電解めっきの触媒付与のための塩酸酸性溶液によって樹脂層との接着界面の銅酸化物層が溶解する現象が発生する。
【0004】
この現象を防止するために、所望の微細凹凸を残したまま、銅酸化物層を還元して金属銅にすることによって、接着性と耐酸性を兼ね備えた内層用銅配線を作製することが行なわれている。上記の銅酸化物層の還元は、例えば、水素化ホウ素ナトリウムやホルマリン等の還元剤を含むアルカリ性水溶液に接触させる方法(特公昭64―8479号)、水素化ホウ素アルカリとホルマリンに順次浸漬する2段処理法(特開平1−156479号)、還元剤としてジメチルアミンボランを使用する方法(特開昭61−176192号、特公平3―50431号)、ジメチルアミンボランとホルマリンに順次浸漬する2段処理法(特開平5−160564号)等の処理方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭64―8479号や特開平1−156479号に開示された方法では、銅酸化物層を金属銅に充分に還元することは困難であったり、処理時間、処理温度等に大きな制約が要求される等の問題があった。また、ジメチルアミンボランを使用する処理方法では、ジメチルアミンボランが分解しやすいため、処理液の寿命が短いという問題があった。さらに、水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等の還元剤は高価であり、還元処理コストの低減に支障を来たしていた。
【0006】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、樹脂との接着性に優れ、かつ、耐酸性をもつ銅素材を得るための処理液および処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジメチルアミンボランの含有量を低減しながらも、銅酸化物を金属銅に還元できる処理液を検討し、処理対象となる面積(処理液中に浸漬される銅酸化物を有する銅素材の面積)とジメチルアミンボランの最低必要量との間に特殊な関係が存在することを見出してなされたものである。
【0009】
また、本発明の銅酸化物還元用の処理液の発明は、銅表面に形成した銅酸化物を金属銅に還元するための処理液において、少なくともジメチルアミンボランを0.15〜2.0g/Lの範囲、37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立するような構成とした。そして、好ましい態様として、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理液pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係が成立するような構成とした。
【0010】
本発明の銅酸化物還元用の処理方法は、酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するための処理方法において、処理液は、少なくともジメチルアミンボランを含有量が0.3〜2.0g/Lの範囲となり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.232x-0.185の関係が成立するように水に添加したものであり、水へのジメチルアミンボランの添加は表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後であるような構成とした。
【0011】
また、本発明の銅酸化物還元用の処理方法は、酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するための処理方法において、処理液は、少なくともジメチルアミンボランを含有量が0.15〜2.0g/Lの範囲となり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立するように基本浴に添加したものであり、該基本浴は37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲であり、基本浴へのジメチルアミンボランの添加は表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後であるような構成とした。そして、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理液pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係を成立させるような構成とした。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の最適な実施形態について説明する。
【0013】
処理液の第1の実施形態
本発明の銅酸化物還元用の処理液は、少なくともジメチルアミンボランを0.3〜2.0g/Lの範囲で含有する水溶液であり、同時に、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位処理液量当たりの処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.232x-0.185の関係が成立するものである。このように、本発明の処理液は、処理対象となる面積(処理液中に浸漬される銅酸化物を有する銅素材の面積)の増大に伴ってジメチルアミンボランの最低必要量が低下するという特殊な関係に基づいている。
【0014】
処理液におけるジメチルアミンボランの含有量が0.3g/L未満であったり、上記関係式y≧0.232x-0.185を満足しない場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。一方、処理液におけるジメチルアミンボランの含有量が2.0g/Lを超えると、ジメチルアミンボラン添加による更なる効果は得られず、逆に高価なジメチルアミンボランの使用量増大によるコスト上昇を来たし好ましくない。
【0015】
本発明の処理液を用いて、酸化第一銅あるいは酸化第二銅の銅酸化物を金属銅に還元する場合、処理液の温度には特に制限はないが、例えば、基板処理面積1dm2/L、ジメチルアミンボラン1.0g/L添加の場合、25〜60℃の範囲で設定することができ、処理(浸漬)時間は2〜6分の範囲で設定することができる。
【0016】
処理液の第2の実施形態
本発明の銅酸化物還元用の処理液は、少なくともジメチルアミンボランを0.15〜2.0g/Lの範囲、37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲である水溶液であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立するものである。このように、本発明の処理液は、処理対象となる面積(処理液中に浸漬される銅酸化物を有する銅素材の面積)の増大に伴ってジメチルアミンボランの最低必要量が低下するという特殊な関係に基づいている。処理面積が大きいほど、ジメチルアミンボランにより還元され生成される金属銅の量が多く、この金属銅を触媒とするホルマリンによる還元反応がより効率よく行なわれるので、上記の特殊な関係が成立するものと考えられる。
【0017】
処理液におけるジメチルアミンボランの含有量が0.15g/L未満であったり、上記関係式y≧0.215x-0.168を満足しない場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分であり好ましくない。一方、処理液におけるジメチルアミンボランの含有量が2.0g/Lを超えると、ジメチルアミンボラン添加による更なる効果は得られず、逆に高価なジメチルアミンボランの使用量増大によりコスト上昇を来たし好ましくない。
【0018】
処理液における37%ホルマリンの含有量が0.5mL/L未満であると、ジメチルアミンボランにより還元され生成された金属銅を触媒とするホルマリンによる還元反応が不充分となり好ましくない。また、37%ホルマリンの含有量が100mL/Lを超えると、作業環境も悪化し、含有量増加による更なる効果も得られない。
【0019】
本発明の処理液のpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム等を用いて調整することができる。pHが12未満である場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。本発明では、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理浴pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係が成立することが好ましい。
【0020】
本発明の処理液を用いて、酸化第一銅あるいは酸化第二銅の銅酸化物を金属銅に還元する場合、処理液の温度には特に制限はないが、例えば、基板処理面積1dm2/L、ジメチルアミンボラン1.0g/L添加の場合、25〜65℃の範囲で設定することができ、処理(浸漬)時間は1.5〜4.5分の範囲で設定することができる。
【0021】
処理方法の第1の実施形態
本発明の銅酸化物還元用の処理方法は、酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するものであり、処理液として、少なくともジメチルアミンボランを含有量が0.3〜2.0g/Lの範囲となり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.232x-0.185の関係が成立するように水に添加した処理液を使用する。そして、この処理液の調製における水へのジメチルアミンボランの添加は、表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後とする。
【0022】
本発明の処理方法において、水に添加するジメチルアミンボランは、粉末状態、水溶液状態のいずれであってもよい。水へのジメチルアミンボランの添加から浸漬(還元処理)までの時間が長いと、ジメチルアミンボランの分解が生じて、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。
【0023】
また、本発明の処理方法において使用する処理液中のジメチルアミンボランの含有量が0.3g/L未満であったり、上記関係式y≧0.232x-0.185を満足しない場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。一方、処理液中のジメチルアミンボランの含有量が2.0g/Lを超えると、ジメチルアミンボラン添加による更なる効果は得られず、逆に高価なジメチルアミンボランの使用量増大によりコスト上昇を来たし好ましくない。
【0024】
酸化処理により銅酸化物(酸化第一銅あるいは酸化第二銅)が表面に形成された銅素材に対して、銅酸化物を還元する処理を行う場合、処理液の温度には特に制限はないが、例えば、基板処理面積1dm2/L、ジメチルアミンボラン1.0g/L添加の場合、25〜60℃の範囲で設定することができ、処理(浸漬)時間は2〜6分の範囲で設定することができる。また、処理によってジメチルアミンボランが消費されて、上述の含有量、あるいは、上述の関係式が満足されない状態となった場合、銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後において、ジメチルアミンボランを適宜添加することができる。
【0025】
処理方法の第2の実施形態
本発明の銅酸化物還元用の処理方法は、酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するものであり、処理液として、少なくともジメチルアミンボランの含有量が0.15〜2.0g/Lの範囲となり、37%ホルマリンの含有量が0.5〜100mL/Lの範囲となり、pHが12以上の範囲である水溶液であって、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立するような処理液を使用する。そして、この処理液の調製は、37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲である基本浴に、ジメチルアミンボランを添加することにより行なわれ、基本浴へのジメチルアミンボランの添加は、表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後とする。
【0026】
本発明の処理方法において、基本浴に添加するジメチルアミンボランは、粉末状態、水溶液状態のいずれであってもよい。基本浴へのジメチルアミンボランの添加から銅素材の浸漬(還元処理)までの時間が長いと、ジメチルアミンボランの分解が生じて、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。
【0027】
また、本発明の処理方法において使用する処理液中のジメチルアミンボランの含有量が0.15g/L未満であったり、上記関係式y≧0.215x-0.168を満足しない場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。一方、処理液中のジメチルアミンボランの含有量が2.0g/Lを超えると、ジメチルアミンボラン添加による更なる効果は得られず、逆に高価なジメチルアミンボランの使用量増大によるコスト上昇を来たし好ましくない。
【0028】
基本浴(処理液)における37%ホルマリンの含有量が0.5mL/L未満であると、ジメチルアミンボランにより還元され生成された金属銅を触媒とするホルマリンによる還元反応が不充分となり好ましくない。また、37%ホルマリンの含有量が100mL/Lを超えると、作業環境も悪化し、含有量増加による更なる効果も得られない。
【0029】
また、基本浴(処理液)のpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム等を用いて調整することができる。本発明では、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理浴pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係が成立することが好ましい。pHが12未満である場合、還元反応が生じない、あるいは、還元反応が不充分となり好ましくない。
【0030】
酸化処理により銅酸化物(酸化第一銅あるいは酸化第二銅)が表面に形成された銅素材に対して、銅酸化物を還元する処理を行う場合、処理液の温度には特に制限はないが、例えば、基板処理面積1dm2/L、ジメチルアミンボラン1.0g/L添加の場合、25〜65℃の範囲で設定することができ、処理(浸漬)時間は1.5〜4.5分の範囲で設定することができる。また、処理によってジメチルアミンボランが消費されて、上述の含有量、あるいは、上述の関係式が満足されない状態となった場合、銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後において、ジメチルアミンボランを適宜添加することができる。さらに、処理によってホルマリンが消費され、また、pHが低下した場合、ホルマリンを適宜添加し、水酸化ナトリウム等を適宜添加して、上述の条件が満足されるようにする。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
まず、厚み35μmの電解銅箔を備えた1mm厚の銅基板(25.5cm×25.5cm)に対して、前処理(メルテックス(株)製エンプレートPC−499に70℃で5分間浸漬→水洗→メルテックス(株)製メルプレートAD−331に25℃で1分間浸漬→水洗→10%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬→水洗→メルテックス(株)製エンプレートMB−438Aの35mL/L水溶液に室温で1分間浸漬)を施した。その後、メルテックス(株)製エンプレートMB−438Aを80mL/L、メルテックス(株)製エンプレートMB−438Bを130mL/L含有する水溶液に浸漬(80℃、5分間)し、その後、洗浄して表面に銅酸化物薄膜を形成した。この銅酸化物薄膜は微細な凹凸を有するものであった。
【0032】
次に、水にジメチルアミンボランを下記の表1、2に示す濃度となるように添加して処理液(試料1−1〜1−15)を調製し、調製5分後に上記の銅酸化物を形成した銅基板を浸漬(50℃、5分間)して銅酸化物の還元処理を行った。尚、単位液量当たりの銅基板の処理面積が下記の表1、2に示されるものとなるように処理液量を調整した。
【0033】
上記の還元処理を行い乾燥した後、銅基板を50%塩酸水溶液に10分間浸漬して、銅基板の色の変化の有無から、溶解する銅酸化物の有無を確認し、還元処理の評価を下記の基準で行い、結果を下記表1、2に示した。
(還元処理の評価基準)
○:50%塩酸水溶液に浸漬しても色の変化が無く、還元処理は良好
△:50%塩酸水溶液に浸漬後、一部色の変化が有り、還元処理はやや不充分
×:50%塩酸水溶液に浸漬後、色の変化が有り、還元処理は不充分
【0034】
【表1】
Figure 0004191881
【0035】
【表2】
Figure 0004191881
【0036】
表1、2に示されるように、ジメチルアミンボランの含有量が0.3g/L以上であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅基板処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.232x-0.185の関係が成立する場合には、銅基板表面に形成された銅酸化物が金属銅に還元された。また、ジメチルアミンボランの含有量が2.0g/L以上では、還元作用に顕著な向上はみられなかった。
【0037】
[実施例2]
まず、実施例1と同様にして、銅基板表面に銅酸化物薄膜を形成した。
次に、下記組成の基本浴(pH=13)にジメチルアミンボランを下記の表2に示す濃度となるように添加して処理液(試料2−1〜2−15)を調製し、調製5分後に上記の銅酸化物を形成した銅基板を浸漬(50℃、5分間)して銅酸化物の還元処理を行った。尚、単位液量当たりの銅基板の処理面積が下記の表3、4に示されるものとなるように処理液量を調整した。
(基本浴の組成)
・37%ホルマリン … 10mL/L
・水酸化ナトリウム … 10g/L
・水 … 残部
【0038】
上記の還元処理を行い乾燥した後、銅基板を50%塩酸水溶液に10分間浸漬して、実施例1と同様の基準で還元処理の評価を行い、結果を下記表3、4に示した。
【0039】
【表3】
Figure 0004191881
【0040】
【表4】
Figure 0004191881
【0041】
表3、4に示されるように、ジメチルアミンボランの含有量が0.15g/L以上であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅基板処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立する場合には、銅基板表面に形成された銅酸化物が金属銅に還元された。また、ジメチルアミンボランの含有量が2.0g/L以上では、還元作用に顕著な向上はみられなかった。
【0042】
[実施例3]
まず、実施例1と同様にして、銅基板表面に銅酸化物薄膜を形成した。
次に、ジメチルアミンボラン濃度、37%ホルマリン濃度、および、処理液のpHを下記表5に示されるように設定した処理液(試料3−1〜3−10)を調製した。この処理液は、ホルマリン含有の基本浴にジメチルアミンボランを添加して調製したものであり、調製5分後に上記の銅酸化物を形成した銅基板を浸漬(50℃、5分間)して銅酸化物の還元処理を行った。尚、pH調整は水酸化ナトリウム添加量を変えることにより行った。また、単位液量当たりの銅基板の処理面積が下記の表5に示されるものとなるように処理液量を調整した。
上記の還元処理を行い乾燥した後、銅基板を50%塩酸水溶液に10分間浸漬して、実施例1と同様の基準で還元処理の評価を行い、結果を下記表5に示した。
【0043】
【表5】
Figure 0004191881
【0044】
表5に示されるように、処理液のpHが12以上であり、ジメチルアミンボランの含有量が0.15g/L以上であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅基板処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立する場合には、銅基板表面に形成された銅酸化物が金属銅に還元された。
【0045】
また、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理浴pHの値zとの関係に注目すると、両者の間にy≧−0.106z+1.57の関係が成立する場合、銅基板表面に形成された銅酸化物が金属銅に還元された。ただし、試料3−6のように、y≧−0.106z+1.57の関係が成立しない場合であっても、銅酸化物が金属銅に還元される場合がある。しかし、y≧−0.106z+1.57の関係が成立していながら、銅酸化物の金属銅への還元が不充分な場合はみられなかった。
【0046】
[実施例4]
まず、実施例1と同様にして、銅基板表面に銅酸化物薄膜を形成した。
次に、下記組成の基本浴(pH=13)に、ジメチルアミンボランを含有量が0.20g/Lとなるように添加した処理液を用いて、上記の銅酸化物を形成した銅基板の還元処理を行った。すなわち、基本浴にジメチルアミンボランを添加して処理液を調製した後、銅基板を浸漬(50℃、5分間)するまでの時間を24時間、6時間、1時間、30分、15分、10分、5分、0分として、それぞれ還元処理を行った。また、基本浴に銅基板を浸漬し、5分後にジメチルアミンボランを添加して還元処理を行った。尚、浸漬する銅基板の単位液量当たりの処理面積は、1(dm2/L)とした。
(基本浴の組成)
・37%ホルマリン … 10mL/L
・水酸化ナトリウム … 10g/L
・水 … 残部
【0047】
上記の還元処理を行い乾燥した後、銅基板を50%塩酸水溶液に10分間浸漬して、還元処理の評価を行った。その結果、基本浴にジメチルアミンボランを添加してから銅基板を浸漬するまでの時間が10分以内である場合、および、基本浴に銅基板を浸漬した後にジメチルアミンボランを添加した場合、銅基板表面に形成された銅酸化物が金属銅に還元された。
【0048】
しかし、基本浴にジメチルアミンボランを添加してから銅基板を浸漬するまでの時間が10分を超える場合、銅酸化物が残存して還元反応が不充分であったり、銅酸化物の還元が生じない場合があった。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の処理液では、高価なジメチルアミンボランの使用量が従来の処理液に比べて少なく、特に、処理面積の増大に伴ってジメチルアミンボランの最低必要量が少なくなるので、銅酸化物の金属銅への還元処理コストを低減することができる。また、銅酸化物を金属銅に還元する処理方法では、高価なジメチルアミンボランの使用量低減による処理コストの削減が可能であるとともに、ジメチルアミンボランの分解による処理液の寿命短縮、処理コストの増大を防止することができる。

Claims (5)

  1. 銅表面に形成した銅酸化物を金属銅に還元するための処理液において、
    少なくともジメチルアミンボランを0.15〜2.0g/Lの範囲、37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲であり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立することを特徴とする銅酸化物還元用の処理液。
  2. ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理液pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係が成立することを特徴とする請求項1に記載の銅酸化物還元用の処理液。
  3. 酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するための処理方法において、
    処理液は、少なくともジメチルアミンボランを含有量が0.3〜2.0g/Lの範囲となり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.232x-0.185の関係が成立するように水に添加したものであり、水へのジメチルアミンボランの添加は表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後であることを特徴とする銅酸化物還元用の処理方法。
  4. 酸化処理によって表面に銅酸化物が形成された銅素材を処理液に浸漬して表面の銅酸化物を金属銅に還元するための処理方法において、
    処理液は、少なくともジメチルアミンボランを含有量が0.15〜2.0g/Lの範囲となり、かつ、ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と単位液量当たりの銅素材の処理面積x(dm2/L)との間にy≧0.215x-0.168の関係が成立するように基本浴に添加したものであり、該基本浴は37%ホルマリンを0.5〜100mL/Lの範囲で含有し、pHが12以上の範囲であり、基本浴へのジメチルアミンボランの添加は表面に銅酸化物を有する銅素材の浸漬前10分以内、あるいは、銅素材の浸漬以後であることを特徴とする銅酸化物還元用の処理方法。
  5. ジメチルアミンボランの含有量y(g/L)と処理液pHの値zとの間にy≧−0.106z+1.57の関係を成立させることを特徴とする請求項4に記載の銅酸化物還元用の処理方法。
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