JP4190683B2 - ファン装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファン装置に係り、例えば、パワーショベル等の建設機械を含む作業車両やその他の車両のエンジン冷却システムのファン装置、あるいは、各種の産業用冷却システムのファン装置の改良に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、車両等のエンジン冷却システムでは、エンジンとラジエータとの間を循環する冷却液でエンジンを冷却している。この冷却液は、ラジエータに隣接したファンで吸引または吐き出される冷却空気で冷却される。
図13および図14には、ラジエータ91および図示しないエンジン間に配置された従来のファン92が示されている。ファン92は、その外周側に配置されたファンシュラウド93の形状の違いに係わらず、先端(径方向の先端)側が回転軸(不図示)の軸線に平行な直線部94になっているものが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ファンの性能を向上させるためには、ファンの大きさや回転数を変えずに流量を増加させ、また、旋回流によって生じる気流音等の騒音を低減させる必要がある。
しかし、ファン92の先端形状が直線部94であるのに対して、ファンシュラウド93の形状が吸引側および吐出側でベルマウス状になっているため、これら吸引側および吐出側において、ファン92の先端とファンシュラウド93とのチップクリアランスが大きくなり、渦流の発生が多くなって冷却空気のスムーズな流れを妨げるという問題がある。
すなわち、図13、図14に示した形状のファンおよびファンシュラウドの組合せでは、冷却空気の流量の増加および騒音の低下を図るのには限界があり、その解決が望まれている。
【0004】
本発明の目的は、流量増加および騒音低減を確実に実現できるファン装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ファンの先端形状を工夫改良することで、前記目的を達成しようとするものである。
具体的には、請求項1記載のファン装置は、回転駆動されるファンの先端部外形形状による回転軌跡が、回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたって中凹形状であるとともに、前記ファンの先端部回転軌跡から間隔をあけて前記中凹形状に対応したベルマウス状のファンシュラウドが設けられ、前記回転軌跡およびファンシュラウド間の前記間隔は、前記回転軸の軸線に平行な方向のほぼ全域にわたって同じあることを特徴とする。
このような発明においては、ファンの先端側の回転軌跡が中凹形状とされて冷却空気等の流体の流れに沿った形状になるので、この形状に沿って冷却空気の吸引がスムーズに行われ、しかも吐出側(下流側)では、冷却空気の径方向外側への自然な流れも吐出側のベルマウス状部分がガイドするから、冷却空気の吐出もスムーズに行われる。従って、冷却空気が上流から下流にスムーズに流れるようになり、流量が増加し、かつ騒音が低減する。
【0006】
なお、本発明において、「ほぼ全域にわたる中凹形状」には、軸線と平行方向の途中の一部にだけ急激に窪んだ中凹部分を有した形状や、上流側のみが径方向の外側に延出した形状、あるいは下流側のみが径方向の外側に延出した形状は含まれない。
一部に急激な凹状部分がある形状では、回転軌跡の上流側および下流側での冷却空気の流れがスムーズでない場合が多い。上流側のみが延出した形状では、下流側での冷却空気の自然な流れを期待できず、吐出がスムーズに行われにくい。下流側のみが延出した形状では、上流側での冷却空気の逆流が生じ易く、吸引がスムーズに行われにくい。
【0007】
また、このような構成によれば、回転軌跡およびファンシュラウド間の間隔が同じであるから、回転軌跡の形状に応じてファンシュラウドの内周面も冷却空気の流れ沿った形状すなわちベルマウス状に形成され、前記間隔が全域で均一に縮小される。このため、冷却空気の吸引側および吐出側でのファンとファンシュラウドとの間のチップクリアランスが小さくなって渦流の発生が減少するとともに、吸引側および吐出側でのファンの外径が大きくなるので、ファンの仕事量が増加し、ファンの静圧上昇および風量が一層増大する。
【0008】
請求項2記載のファン装置は、請求項1に記載のファン装置において、ファンの被冷却体側の外径が、ファンシュラウドの最小内径よりも小さいことを特徴とする。
ファンの被冷却体側の外径がファンシュラウドの最小内径よりも大きいと、ファンシュラウドを所定位置に固定した後では、ファンをファンシュラウド内に収容することができない。従ってこのような場合には、例えば、ファンシュラウドを複数の小部材からなる分割タイプに構成するとともに、ファンを被冷却体に隣接配置した後に、個々の小部材をファン周囲に枠状に取り付けることでファンをファンシュラウド内に収容させる必要があり、作業手順が限られるうえ、それぞれの小部材を取り付けるのに手間がかかる。特に、ファン装置をエンジンの冷却システムに適用する場合には、小部材の取付作業を狭いエンジンルーム内に手を差し入れる等して行う必要があり、作業が煩雑になる。
これに対して本発明では、ファンの被冷却体側の外径がファンシュラウドの最小内径よりも小さいので、先にファンシュラウドを枠状に組み立てた後でも、ファンシュラウド内にファンが容易に収容されるようになり、ファン装置の設置箇所等に応じて作業手順を変更するなど、柔軟に対応可能であり、作業性も向上する。
【0009】
請求項3記載のファン装置は、請求項1または請求項2に記載のファン装置において、ファンシュラウドの内周面の少なくとも一部は、ファンの先端部外形形状による回転軌跡と対向した多孔質吸音材で形成されていることを特徴とする。 このような構成では、ファンシュラウドに取り付けられた多孔質吸音材の吸音性により、ファンの先端部分およびファンシュラウド間での旋回流による気流音が吸音され、騒音が格段に低減する。
請求項4記載のファン装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のファン装置において、前記ファンシュラウドは、前記ファンの回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたる曲面部で形成されていることを特徴とする。
請求項5記載のファン装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のファン装置において、前記ファンの先端側は、前記回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたって前記ファンシュラウドと対向していることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第2〜第6実施形態においては、第1実施形態で説明する同一部材および同一機能を有する部材には同じ符号を付し、重複する説明を省略または簡略化する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係るファン装置1の要部を示す縦断面図である。
ファン装置1は、被冷却体としてのラジエータ81および図示しないエンジン(図中の右方向に位置する)間に配置されたファン10と、ラジエータ81にラジエータフード82を介してボルト止めされ、かつファン10が収容された開口部20Aを有する枠状のファンシュラウド20とを備えている。
【0012】
ファン10は、回転軸周りに設けられた複数の羽根11を備え、エンジンのクランクシャフトよりプーリーおよびファンベルトで伝達された出力で駆動される。ただし、図1では、羽根11を一枚のみ図示するとともに、回転軸やプーリー等の動力伝達手段の図示も省略した。
ファン10(羽根11)の先端側は、回転軸の軸線と平行方向すなわち図中の左右方向の両端から中央に向かうに従って回転軸側に凹んだ円弧状の曲線部12となっており、ファン10を回転させた時の先端部外形形状による回転軌跡の形状が、軸線に平行な方向のほぼ全域にわたって中凹形状に形成され、ファン10の先端側での冷却空気の流れに沿った形状となる。
この曲線部12は、一つの曲率半径で形成される必要はなく、複数の曲率半径で形成されていてもよい。
【0013】
ファンシュラウド20は、例えば4つに分割可能な複数の金属製等のシュラウド体21をファン10の周囲に枠状に配置した分割タイプであり、ラジエータフード82内に位置する内周面がファン10の先端部外形形状による回転軌跡から所定間隔離れている。
ファンシュラウド20の前記内周面は、ファン10の曲線部12と同じ曲率で、かつ曲線部12よりも小さい半径で形成された曲面部23を有するベルマウス状であり、ファン10の回転軌跡(曲線部12)および曲面部23間の間隔(チップクリアランス)C1がほぼ全域にわたって同じであるとともに、冷却空気の流れに沿った形状になっている。
【0014】
このようなファン装置1では、ファン10のラジエータ81側の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも大きい。
このため、ファンシュラウド20を枠状に組んだ後では、ファン10をファンシュラウド20の開口部20A内に収容することが困難になる。従って、先ずラジエータフード82が付いた状態のラジエータ81をファン10に隣接させてエンジンルーム内に設置し、この後に個々のシュラウド体21をファン10の外周側に配置しながら順次ラジエータフード82に取り付け、枠状のファンシュラウド20を完成させることでファン10を開口部20A内に収容させる。
【0015】
そして、ファン10をエンジンで駆動することにより、冷却空気はラジエータ81を通過することで冷却液との熱交換を行った後、図中の白抜き矢印で示すように、ファン10の吸引側に送られ、吐出側から吐き出される。
【0016】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
1)ファン10の先端側に曲線部12が設けられ、その回転軌跡が中凹形状とされて冷却空気の流れに沿った形状となるので、このファン10では、吸引側(上流側)の円弧状部分に沿って冷却空気をスムーズに吸引できる。しかも吐出側(下流側)では、冷却空気の径方向外側への自然な流れも吐出側の円弧状部分でガイドするから、冷却空気をスムーズに吐き出すことができる。このため、冷却空気の上流から下流への全体の流れをスムーズにでき、流量を増加させ、かつ騒音を低減できる。
【0017】
2)ファン10の先端部外形形状による回転軌跡およびファンシュラウド20間の間隔C1が全域にわたって同じであることにより、ファンシュラウド20の内周面も回転軌跡に応じた形状すなわち冷却空気の流れに沿ったベルマウス状となるため、ファンシュラウド20の曲面部23を回転軌跡に均一により近づけることができる。従って、冷却空気の吸引側および吐出側でのファン10とファンシュラウド20との間の間隔C1を小さくして渦流の発生を減少させることができるとともに、吸引側および吐出側でのファン10の外径が大きくなるので、ファン10の仕事量を増加させ、ファン10の静圧上昇および風量を一層増大させることができる。
【0018】
3)ファン10のラジエータ81側の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも大きいが、ファン10をファンシュラウド20内に収容するのには、先ずラジエータ81側を先にファン10に隣接配置し、この後に各シュラウド体21を取り付けてファンシュラウド20を完成させ、よってファンシュラウド20の開口部20A内にファン10を収容するから、金属面であるファンシュラウド20の曲面部23にファン10の先端部を接触させる心配がなく、ファン10の欠損等を防止できる。
【0019】
〔第2実施形態〕
図2に示す第2実施形態のファン装置2では、第1実施形態の構成に加え、ファンシュラウド20の内周面全域に吸音材22が貼設されており、この吸音材22の内周側が曲面部23とされ、ファン10との間隔C1が維持されている。
このような吸音材22は、各シュラウド体21に個別に貼設等された例えば発泡ウレタン樹脂からなる多孔質(ポーラス状)で形成されており、各シュラウド体21をファン10の外周側に配置する以前に予め貼設される。
なお、本実施形態および後述の各実施形態のファンシュラウド20も複数のシュラウド体からなる分割タイプであるが、各実施形態で用いる図面ではシュラウド体間の分割位置等の図示を省略した。
【0020】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様な構成により、1)、2)の効果を得ることができる。また、吸音材22を予め各シュラウド体21に貼り付けた後に、第1実施形態と同様な手順でファン10をファンシュラウド20内に収容させれば、吸音材22にファン10の先端が接触せず、吸音材22の一部が欠損する等の心配がない。このため、部品の欠損を防ぐという観点からは、前述の3)の効果も同様に得ることができる。さらに、以下の効果がある。
4)ファンシュラウド20の内周面は吸音材22で形成されているので、ファン10の先端部分およびファンシュラウド20間での旋回流による気流音を有効に吸音でき、騒音を格段に低減できる。
【0021】
〔第3実施形態〕
図3に示す第3実施形態のファン装置3では、ファン10の先端側の形状は、左右両端がそれぞれ上流側曲線部13および下流側曲線部14とされ、これらの間が回転軸の軸線に平行な直線部15になっている。ただし、この直線部15は、軸線に対して傾斜していてもよい。このようなファン10でも、回転させた時の先端部外形形状による回転軌跡は軸線と平行な方向のほぼ全域で中凹形状となり、冷却空気の流れに沿った形状になる。
【0022】
ファンシュラウド20の内周部分はファン10の回転軌跡に応じた形状であって、冷却空気の流れに沿ったベルマウス状であり、上流側曲面部24、下流側曲面部25、これらの間の平面部26(軸線方向の断面が直線状となる部分)を有している。ファンシュラウド20の内周面には吸音材が設けられておらず、ファンシュラウド20の金属面等の硬質面がファン10の先端部外形形状による回転軌跡と対向している。
ファン10の先端部外形形状による回転軌跡およびファンシュラウド20の内周面間の間隔C1は全域にわたって同じである。
ファン10のラジエータ81側の外径D1は、ファンシュラウド20の平面部26部分の内径である最小内径d1よりも大きい。
【0023】
本実施形態においても、第1実施形態と同様ファン10の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも大きいので、ファン10をファンシュラウド20内に収容するのには、先ずラジエータフード82付きのラジエータ81をファン10に隣接させて設置し、この後に各シュラウド体(図示略)をファン10の周りに位置させてラジエータフード82に順次取り付け、枠状のファンシュラウド20を完成させる必要がある。
【0024】
本実施形態によれば、ファン10の先端側が上流側曲線部13、下流側曲線部14、および直線部15で形成され、回転軌跡が中凹形状となって冷却空気の流れに沿った形状になるから、冷却空気の流れがスムーズになり、流量の増加および騒音の低減を実現でき、前述した1)の効果を同様に得ることができる。
また、第1実施形態と同様な構成により、2)、3)の効果も得ることができる。
【0025】
〔第4実施形態〕
図4に示す第4実施形態のファン装置4では、ファン10の先端側の形状は、それぞれ軸線に対して傾斜した上流側直線部16、下流側直線部17、およびこれらの間の直線部15で形成されている。上流、下流側直線部16,17のそれぞれは、ファン10の端部(図中の左右方向の端部)に向かうに従って径方向の外側に位置するように傾斜しており、回転軌跡がやはり中凹形状で冷却空気の流れに沿った形状となる。
ファンシュラウド20の内周部分もファン10の形状に応じて、上流側平面部27、下流側平面部28、およびこれらの間の平面部26で形成され、上流側および下流側に向かって拡開したベルマウス状である。この際、ファンシュラウド20には吸音材が設けられていない。
ファン10の先端部外形形状による回転軌跡およびファンシュラウド20の内周面間の間隔C1も全域にわたって同じである。
また、ファン10のラジエータ81側の外径D1は、ファンシュラウド20の最小内径d1よりも大きい。
なお、本実施形態のファン10およびファンシュラウド20は、上流側の略半分がラジエータフード82内に収容されるが、下流側の略半分が外側に位置するタイプである。
【0026】
本実施形態では、ファン10の先端部外形形状による回転軌跡のおよびファンシュラウド20が冷却空気の流れに沿った形状であるから、前記1)の効果を得ることができて本発明の目的を達成でき、また、前記2)の効果および3)と同様な効果も得ることができる。
【0027】
〔第5実施形態〕
図5に示す第5実施形態のファン装置5では、ファン10の先端側外形形状は、回転軸の軸線に対して傾斜した上流側直線部16および下流側直線部17のみで形成され、図に示す位置においてV字形である。このような形状でも、ファン10の先端部回転軌跡は中凹形状で冷却空気の流れに沿った形状になる。
ファンシュラウド20も、上流側平面部27および下流側平面部28のみで形成されたベルマウス状である。
他の構成は、第4実施形態と同じである。
本実施形態においても、前記1)〜3)の効果を得ることができる。
【0028】
〔第6実施形態〕
図6に示す第6実施形態のファン装置6では、ファン10の形状が第1実施形態とほぼ同じで、ファンシュラウド20の内周部分も円弧状であるが、ファン10のラジエータ81側の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも小さいことが、他のいずれの実施形態とも大きく異なる。
このため、ファン装置6では、ファンシュラウド20を枠状に組み立てた後に、このファンシュラウド20内にファン10を収容することが可能であり、また、こうした場合でも、ファンシュラウド20の金属等の硬質面からなる内周面にファン10の先端が接触する心配がない。
【0029】
本実施形態では、前記1)の他、以下の効果がある。
5)ファン10のラジエータ81側の外径D1は、ファンシュラウド20の最小内径d1よりも小さいので、ファンシュラウド20を枠状に組み立てた後でも、ファン10を金属面等からなるファンシュラウド20の内周面に接触させずに収容でき、ファン10を破損等を防止できる。
また、ファンシュラウド20付きのラジエータ81をエンジンルーム内に設置することで、ファン10をファンシュラウド20内に確実に収容できるから、各シュラウド体21を狭い取付スペース内に手を差し入れる等してラジエータ81側に取り付けなくともよく、ファンシュラウド20の取付作業を容易にできる。
【0030】
また、ファン10の先端部外形形状による回転軌跡およびファンシュラウド20間の間隔C1が他の実施形態に比して大きいが、それぞれの形状が冷却空気の流れに沿った形状であることには変わりなく、かつ間隔C1が全域にわたって均一でるから、他の実施形態程ではないが、前記2)の効果も得ることができる。
【0031】
〔第7実施形態〕
図7に示す第7実施形態のファン装置7では、ファン10の形状は第3実施形態と同じであり、ファン10のラジエータ81側の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも小さい。しかし、ファンシュラウド20の形状が他のいずれの実施形態とも異なる。
すなわち、本実施形態のファンシュラウド20では、内周面のうちのファン10の直線部15で形成される回転軌跡と対向した平面部26のみが吸音材22で形成されている。このような吸音材22は、周方向に沿って連続して形成された凹溝29内に保持されている。
本実施形態によれば、第6実施形態と同じく1)、2)、5)の効果を得ることができるのに加え、吸音材22が設けられていることで前記3)の効果を得ることができる。また、以下の効果がある。
6)吸音材22の端部(図中の左右方向の端部)がラジエータ81側およびエンジン側に露出していないから、ファン10の上流側および下流側で巻き込む小石等の異物で吸音材22が損傷するのを防止でき、安定した騒音レベルを維持できる。
【0032】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記第2実施形態は第1実施形態の構成に吸音材22を設けたものであったが、吸音材22が設けられていない第3〜第6実施形態のファン装置1,3〜6のファンシュラウド20に吸音材22を設けて騒音をより低減させてもよい。
反対に、第2実施形態の吸音材22を省いて第1実施形態のような構成にするのと同じように、第3実施形態のような形状のファンシュラウド20を用いた場合でも、吸音材22を省略できる。
要するに、吸音材22を用いるか否かは、要求される騒音レベル等を勘案して任意に決められてよい。
なお、用いられる吸音材22の材質は、吸音性を有した多孔質材であれば任意であり、ウレタン樹脂に限定されない。
【0033】
前記第2実施形態では、ファン10の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも大きいことにより、吸音材22付きの各シュラウド体21をファン10の周囲に配置するようにしてファン10をファンシュラウド20内に収容させていたが、このような吸音材22付きのファンシュラウド20では、ファン10の外径D1よりも小さい内径部分が弾力性のある柔らかい吸音材22の一部になっているから、吸音材22にファン10の先端側を接触させても接触量がごく僅かで吸音材22に何ら欠損等が生じない場合には、吸音材22を取り付けた枠状のファンシュラウド20を予め完成させておき、ファン10を吸音材22に接触させて当該吸音材22を弾性変形させながらファンシュラウド20内に収容してもよい。
このような場合には、ファンシュラウド20を枠状に組んだ後に吸音材22を貼設可能であるから、吸音材22をシュラウド体21の大きさに応じた小さなサイズに設ける必用がなく、ファンシュラウド20の内周面を周方向に連続して覆う帯状にでき、吸音材22の貼付作業を一度に効率よく行える。
【0034】
前記各実施形態では、ファンシュラウド20の支持位置が吐出側の端部であったり、吸引側と吐出側との中間位置であったが、これに限定されない。すなわち、図8に示すように、ファンシュラウド20を吸引側でラジエータフード82等に支持させてもよい。
【0035】
さらに、前記各実施形態のファンシュラウド20では、金属などからなる内周面自身がベルマウス状に形成されていたが、図9に示すように、このような部分をベルマウス状ではなく単なる円筒状の内周面を形成するようにしたうえで、同図に二点鎖線で示すように、ファンシュラウド20の円筒状の内周面に断面中凸状(かまぼこ型などファン10の先端部外形形状に応じた形状)の吸音材22を設けることで前記請求項1記載の発明を構成してもよい。
【0036】
本発明に係るファンシュラウドは、各実施形態で示したような分割タイプでなくともよく、特に、ファン10のラジエータ81側の外径D1がファンシュラウド20の最小内径d1よりも小さい場合などには、ファンシュラウド20を枠状の一体型に設けてもファン10を確実に収容でき、一体型にすることでファンシュラウド20の取付作業をより容易にできる。
【0037】
また、前記各実施形態では、ファン10がラジエータ81の下流側に配置され、ファン10の吸引側の冷却空気によってラジエータ81を冷却する構成であったが、ファン10をラジエータ10の上流側に配置し、ファン10で吐き出される冷却空気でラジエータ10を冷却してもよい。ただしこのような場合には、ファン10とエンジンとの間にラジエータ81が位置し、ファン10をエンジンで駆動することが困難であるから、別途モーター等で駆動する。
また、ラジエータ81とエンジンとの間にファン10を配置した場合でも、ファン10の回転方向を変えることにより、ファン10から吐き出される冷却空気でラジエータ81を冷却してもよく、反対に、ファン10とエンジンとの間にラジエータ81がある場合、ファン10の吸引側の冷却空気で冷却してもよい。
【0038】
本発明のファン装置は、建設機械を含む作業車両や一般の乗用車のエンジン冷却システムの他、各種の工場において、プラント冷却水を冷却する冷水塔に代表されるような産業用冷却システムに利用可能である。
【0039】
【実施例】
図2に示す第1実施形態に基づいて本発明の実施例に係るファン装置を製作し、図13、図14に示す各従来例に基づいて第1、第2比較例に係るファン装置を製作し、同一回転時の流量、同一回転時の騒音、および同一流量時の騒音に関して、各ファン装置の性能を比較した。この比較結果を図10〜図12に示す。なお、第1比較例は、図13に示すように、軸線に平行な直線部94のみからなるファン92と、吸音材95で形成された曲面部96からなるベルマウス状のファンシュラウド93とを組み合わせた構成である。第2比較例は、図14に示すように、同様なファン92と、吸音材95で形成された上流、下流側曲面部97,98および平面部99からなるベルマウス状のファンシュラウド93とを組み合わせた構成である。
【0040】
比較結果によれば、先ず図10に示すように、各装置を一定回転で回転させた場合、第1比較例では、実施例に比して約97.5%の流量しか得られない。第2比較例では、ファンシュラウド93の形状違いによって第1比較例よりも改善されているが、実施例に比べると約98.5%の流量が得られただけである。
従って、実施例では、各比較例に比して同じ回転数での流量を確実に増加させることができると認められ、本発明の流量増加に係る優位性を確認できた。
なお、図10に示すグラフにおいて、具体的な目盛りの表示を省略した。以下の図11、12でも同様である。
【0041】
また、図11に示すように、各装置を一定回転で回転させた場合、第1比較例の音圧レベルは、実施例の音圧レベルの約2.5dBA増と非常に高く、第2比較例の音圧レベルは、第1比較例に比べて若干の改善が見られるが、実施例の約2dBA増と依然として高い。
一方、図12に示すように、各装置での流量が一定となるように各装置を回転させた場合でも、第1比較例の音圧レベルは、実施例の音圧レベルの約3dBA、第2比較例の音圧レベルは、実施例の約2.5dBAとそれぞれ高い。
従って、実施例では、各比較例に比して同じ回転数および同じ流量での騒音を確実に低減できると認められ、本発明の騒音に係る優位性も確認できた。
【0042】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、ファンの先端部外形形状による回転軌跡が中凹形状といった冷却空気等の流体の流れ沿った形状になるので、流体の上流から下流への全体の流れをスムーズにでき、流量増加をよび騒音低減を確実に実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係るファン装置の要部を示す断面図である。
【図8】本発明の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の他の変形例を示す断面図である。
【図10】実施例と比較例との性能差を示すグラフである。
【図11】実施例と比較例との他の性能差を示すグラフである。
【図12】実施例と比較例とのさらに他の性能差を示すグラフである。
【図13】従来のファン装置の要部を示す断面図である。
【図14】従来の他のファン装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
1〜6 ファン装置
10 ファン
20 ファンシュラウド
22 弾性部材でもある多孔質吸音材
81 被冷却体であるラジエータ
C1 間隔
D1 外径
d1 最小内径
Claims (5)
- 回転駆動されるファンの先端部外形形状による回転軌跡が、回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたって中凹形状であるとともに、
前記ファンの先端部回転軌跡から間隔をあけて前記中凹形状に対応したベルマウス状のファンシュラウドが設けられ、
前記回転軌跡およびファンシュラウド間の前記間隔は、前記回転軸の軸線に平行な方向のほぼ全域にわたって同じある
ことを特徴とするファン装置。 - 請求項1に記載のファン装置において、前記ファンの被冷却体側の外径が前記ファンシュラウドの最小内径よりも小さいことを特徴とするファン装置。
- 請求項1または請求項2に記載のファン装置において、前記ファンシュラウドの内周面の少なくとも一部は、前記ファンの先端部外形形状による回転軌跡と対向した多孔質吸音材で形成されていることを特徴とするファン装置。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のファン装置において、前記ファンシュラウドは、前記ファンの回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたる曲面部で形成されていることを特徴とするファン装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のファン装置において、前記ファンの先端側は、前記回転軸の軸線方向のほぼ全域にわたって前記ファンシュラウドと対向していることを特徴とするファン装置。
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