JP4190354B2 - 地盤注入材の注入装置および注入工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤中へ地盤注入材を注入する注入装置の逆流防止構造に関し、またこの注入装置を用いた注入工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地盤の液状化防止対策や軟弱地盤の強化対策等として、地盤改良用の薬液からなる地盤注入材を注入して地盤を改良する注入工法が採用されている。この工法は、下記の特許文献1に開示されているように、地盤に形成した掘削孔に注入装置を挿入して地盤注入材を注入し、これを地盤中に浸透させて硬化させることにより地盤を強化させるものである。
【0003】
図9〜図11は、従来の地盤注入材の注入装置とこれを用いた注入工法の一例を示す図である。図9は注入装置および注入工法を示す全体図、図10および図11は注入装置および注入工法を示す要部拡大図である。図9において、Gは地盤、Hは地盤Gに形成した掘削孔である。CBは掘削孔Hと後述する外管55との間に充填されたシールグラウトであって、例えばセメントベントナイト等からなる。MLは地盤改良用の薬液からなる地盤注入材である。50は掘削孔Hに挿入された注入装置であって、この注入装置50は内管51と、内管51を挿入する外管55を備えている。
【0004】
内管51は外周面51aに軸方向へ所定間隔をおいてゴム製のパッカー52を複数備えていて、隣接するパッカー52間に地盤注入材MLを吐出する吐出口51bを複数設けている。また、内管51は地盤注入材用ホース53を介して地上に設置された地盤注入材供給源MSに連結されていて、この地盤注入材供給源MSからホース53を通して内部に地盤注入材MLの供給を受ける。54はパッカー用ホースであって、このホース54は、図10に示すように内管51の内部に挿入されて複数のパッカー52の内部に連通するとともに、地上に設置した流体供給源LS(図9)に連結されている。流体供給源LSからホース54を通して、例えば水や空気等のパッカー52を膨張させる流体が供給されると、流体はパッカー52の内部に入り込んでパッカー52を膨張させる。
【0005】
外管55は、図10に示すように、D方向の端部に雌ねじ部55a、U方向の端部に雄ねじ部55bがそれぞれ形成されていて、複数の外管55の雌ねじ部55aと雄ねじ部55bとを螺合して接続することで組み立てられている。このため、外管55は接続する外管55の数により掘削孔Hの深度に合わせて軸方向の長さを調節できる。外管55の外周面55cには地盤注入材MLを注入するための注入口55dが複数穿孔されていて、この注入口55dを覆うようにゴム等の弾性体からなるスリーブ56が装着されている。このスリーブ56は、スリーブ56自体の弾性力により外周面55cを締め付けて注入口55dを封止し、注入口55dから注入した地盤注入材MLの逆流を防止する逆止弁として機能している。また、このような機能を有するスリーブとしては、図11に示すようなスリット57aの形成されたゴム等の弾性体からなるスリーブ57も採用されている。58はスリーブ57の両端部を外周面55cに固定するリング状の固定部材である。
【0006】
次に、以上の構成からなる注入装置50を用いた注入工法の施工手順を説明する。まず、ケーシングパイプ(図示省略)を用いてボーリングにより地盤G中に、図9に示すように所定深度の掘削孔Hを形成する。次に、ケーシングパイプ内にシールグラウトCBを充填し、充填後ただちに外管55を挿入する。このとき、最も深い場所に位置する外管55のD方向側の端部をキャップ等(図示省略)で閉塞しておく。そして、シールグラウトCBが硬化しないうちにケーシングパイプを掘削孔Hから引き抜き、シールグラウトCBを外管55と掘削孔Hとの間に充填させ、所定時間をおいて硬化させる。シールグラウトCBが硬化すると、外管55の注入口55dと内管51の吐出口51bが掘削孔H内で略同じ深度位置となるように内管51を外管55内部に挿入する。この後、流体供給源LSから流体を送り込んでパッカー52を膨張させると、図10に示すように内管51が外管55の内部に固定されるとともに、複数のパッカー52により外管55の内部が軸方向へ所定間隔をおいて区切られ、隣接するパッカー52間の外管55と内管51との間に空間部Xが形成される。
【0007】
そして、地盤注入材供給源MSから内管51内部に地盤注入材MLを送り込み、この地盤注入材MLを吐出口51bから高圧で吐出させると、地盤注入材MLは矢印で示すように、空間部Xを充填した後、外管55の注入口55dからスリーブ56を2点鎖線で示すように押し上げて噴出し、外周面55cとスリーブ56との接合部Tを通ってスリーブ56の両端部56aからシールグラウトCB中へ流出して行く。このとき、地盤注入材MLの流出圧力により両端部56a近傍のシールグラウトCBにクラックCRが発生し、スリーブ56の端部56aから地盤Gへ通じる地盤注入材MLの注入路が形成される。
【0008】
一方、図11に示すスリーブ57を採用した外管55においては、上述したように地盤注入材MLを内管51の吐出口51bから高圧で吐出させると、地盤注入材MLは矢印で示すように、空間部Xを充填した後、外管55の注入口55dからスリーブ57を2点鎖線で示すように押し上げて噴出し、外周面55cとスリーブ57との接合部Tを通ってスリーブ57のスリット57aからシールグラウトCB中へ流出して行く。このとき、地盤注入材MLの流出圧力によりスリット57a近傍のシールグラウトCBにクラックCRが発生し、スリット57aから地盤Gへ通じる地盤注入材MLの注入路が形成される。
【0009】
図10において、上述したようにシールグラウトCBにクラックCRが発生した後、引き続き、地盤注入材MLを内管51の吐出口51bから吐出させると、地盤注入材MLは外管55の注入口55dからスリーブ56(図11ではスリーブ57)を押し上げて噴出し、接合部TとクラックCRを通って、図9に示すように地盤G中に流出し、地盤G中に浸透して行く。この後、地盤G中に浸透した地盤注入材MLが硬化すると地盤Gが強化される。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−331145号公報(第2頁、図6〜図9)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の注入装置50では、外管55の外周面55cが軸方向に対して平行であるとともに、スリーブ56、57の内径および外径が軸方向に一定であるので、外周面55cを締め付けるスリーブ56、57の締め付け力が接合部T全体に分散されて弱くなり、スリーブ56、57の止水性能があまりよくなく、注入口55dを強固に封止できない。このため、地盤Gに複数の掘削孔Hを形成してそれぞれの掘削孔Hに注入装置50を挿入し、各注入装置50から地盤注入材MLの注入を行う場合に、隣接する注入装置50から高い注入圧力がかかると、止水性能が十分でない注入装置50では、注入した地盤注入材MLが接合部Tと注入口55dとを通って外管55および内管51の内部に逆流してしまい、その逆流した地盤注入材MLが内部で硬化することで、以後地盤注入材MLを注入できなくなる。
【0012】
また、従来の注入装置50では、スリーブ56、57の締め付け力が接合部T全体で一定の大きさとなり、注入口55dから噴出した地盤注入材MLが接合部Tを通ってスリーブ56の端部56aまたはスリーブ57のスリット57aからシールグラウトCB中にスムーズに抜け出ることができない。このため、地盤注入材MLとしてセメントミルク等の懸濁タイプの薬液を使用する場合に、長時間の連続注入や断続的な注入を行うと、接合部Tにセメント等の粒子が堆積して隙間が生じ、スリーブ56、57の逆止弁としての機能が著しく低下してしまう。そしてその結果、注入した地盤注入材MLが接合部Tと注入口55dとを通って外管55および内管51の内部に一層逆流し易くなり、前述したように逆流した地盤注入材MLが内部で硬化することで、以後地盤注入材MLを注入できなくなる。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、注入口から注入した地盤注入材が注入口を通って装置内部に逆流することを確実に防止することができる地盤注入材の注入装置および注入工法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤に形成した掘削孔に挿入し、外周面に穿孔した注入口から地盤中へ地盤注入材を注入する注入装置において、前記外周面にテーパー面を設け、内径または外径の少なくとも一方が軸方向に向かって縮小する弾性体からなる逆止弁用のスリーブを、外周面のテーパー面に、注入口を覆うように装着する。
【0015】
このようにすると、スリーブの内径が縮小する場合は、内径の縮小する方向に向かって外周面を締め付けるスリーブの締め付け力が増大し、また、スリーブの外径のみが縮小する場合は、外径の拡大する方向(外径の縮小する方向の反対方向)に向かって外周面を締め付けるスリーブの締め付け力が増大する。このため、スリーブの止水性能を向上させて、注入口を強固に封止することができ、注入口から注入した地盤注入材が注入口を通って装置内部に逆流することを確実に防止することが可能となる。また、スリーブの内径が縮小する場合は、内径の拡大する方向(内径の縮小する方向の反対方向)に向かって外周面を締め付けるスリーブの締め付け力が減少し、また、スリーブの外径のみが縮小する場合は、外径の縮小する方向に向かって外周面を締め付けるスリーブの締め付け力が減少する。このため、注入口から噴出させた地盤注入材を外周面とスリーブとの接合部の締め付け力が減少する方向へ導いて、スリーブの端部からシールグラウト中にスムーズに抜け出させることができ、地盤注入材を接合部に堆積させることなく、スリーブの逆止弁としての機能を維持することが可能となる。さらに、テーパー面にスリーブを装着する際に、スリーブの内径が縮小する場合は、内径の拡大する方向(内径の縮小する方向の反対方向)の端部からスリーブをテーパー面の広くなる方向に向かって装着して行くと、スリーブを無理なく容易に装着することができ、また、スリーブの外径のみが縮小する場合は、外径の縮小する方向の端部からスリーブをテーパー面の広くなる方向に向かって装着して行くと、スリーブを無理なく容易に装着することができるので、スリーブ自体の弾性力を損なうおそれが確実になくなる。
【0016】
また、本発明に係る地盤注入材の注入装置においては、外周面の周方向に、スリーブの端部と対向する環状の突起を設けるのが好ましい。注入口から噴出した地盤注入材が外周面とスリーブとの接合部を通ってスリーブの端部から流出した後、掘削孔の径方向へ流れて行かず、掘削孔内に充填されたシールグラウトと、外周面との界面に流れて行くと、地盤注入材が地盤中に注入されずに地表に噴出するおそれがあるが、上記のような突起を設けることで、地盤注入材がスリーブの端部から流出した後、突起に衝突して掘削孔の径方向に飛び散るため、この方向のシールグラウト中に複数のクラックを発生させることができ、この複数のクラックを通して地盤中へ地盤注入材を注入することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る地盤注入材の注入装置を用いた注入工法は、地盤に所定深度の掘削孔を形成し、該掘削孔に上述した注入装置を挿入して、地盤改良用の薬液からなる地盤注入材を、注入口から噴出させて外周面のテーパー面とスリーブとの接合部を通して地盤中へ注入する工法である。このようにすると、地盤に複数の掘削孔を形成してそれぞれの掘削孔に注入装置を挿入し、各注入装置から地盤注入材の注入を行う場合に、隣接する注入装置から高い注入圧力がかかっても、地盤注入材が注入口を通って装置内部に逆流せず、地盤中へ地盤注入材を安定して注入することが可能となる。また、地盤注入材を接合部に堆積させることなく、スリーブの逆止弁としての機能を維持できるため、地盤注入材を地盤中に長時間に渡って連続注入することや断続的に注入することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき図を参照しながら説明する。図1〜図4は、本発明に係る地盤注入材の注入装置とこれを用いた注入工法を示す図である。図1は注入装置および注入工法を示す全体図、図2は注入装置に備わるスリーブと外管の詳細構造を示す図、図3および図4は図1における要部拡大図である。なお、図中、図6〜図8と同一部分については同一符号で示す。
【0019】
図1において、Gは地盤、Hは地盤Gに形成した掘削孔である。CBは掘削孔Hと後述する外管5との間に充填されたシールグラウトであって、例えばセメントベントナイト等からなる。MLは地盤改良用の薬液からなる地盤注入材であって、例えばセメントミルク等の懸濁タイプの薬液が使用される。100は掘削孔Hに挿入された注入装置であって、この注入装置100は内管1と、この内管1が挿入される外管5を備えている。
【0020】
内管1は外周面1aに軸方向へ所定間隔をおいてゴム製のパッカー2を複数備えていて、隣接するパッカー2間に地盤注入材MLを吐出する吐出口1bを複数設けている。また、内管1は地盤注入材用ホース3を介して地上に設置された地盤注入材供給源MSに連結されていて、この地盤注入材供給源MSからホース3を通して内部に地盤注入材MLの供給を受ける。4はパッカー用ホースであって、このホース4は、図3に示すように内管1の内部に挿入され、複数のパッカー2の内部に連通するとともに、地上に設置した流体供給源LS(図1)に連結されている。このため、この流体供給源LSからホース4を通して、例えば水や空気等のパッカー2を膨張させる流体が供給されると、流体はパッカー2の内部に入り込んでパッカー2を膨張させる。
【0021】
外管5は、図3に示すように、D方向の端部に雌ねじ部5a、U方向の端部に雄ねじ部5bがそれぞれ形成されていて、複数の外管5の雌ねじ部5aと雄ねじ部5bとを螺合して接続することで組み立てられている。このため、外管5は接続する外管5の数により掘削孔Hの深度に合わせて軸方向の長さを調節できる。外管5の外周面5cには、軸方向Uに向かって狭くなるようにテーパー面5eが設けられていて、このテーパー面5eに地盤注入材MLを注入するための注入口5dが複数穿孔されている。本実施形態では、注入口5dは小径であって、テーパー面5eに図3に示す2つと紙面に対して垂直な方向に2つ(図示せず)の計4つが穿孔されているが、注入口5dの径の大きさと穿孔の数は地盤Gへ注入する地盤注入材MLの注入量等により適宜設定すればよい。なお、注入口5dの穿孔の数は単数でもよい。5fはテーパー面5eが狭くなるD方向側に形成された環状の溝であって、この溝5fのD方向側の端部には環状のエッジ部5gが設けられている。5hは外周面5cの周方向に設けられた環状の突起である。
【0022】
6はシリコンゴムや天然ゴム等の弾性体からなるスリーブであって、注入口5dを覆うように外管5のテーパー面5eに装着されている。このスリーブ6は、図2(a)に示すように装着前の内径φY1、φY2および外径φV1、φV2が、軸方向Uに向かって縮小するように形成されているとともに、径方向の厚みが、軸方向Uに向かうに連れて厚くなるように形成されている。スリーブ6とテーパー面5eとの寸法関係は、スリーブ6の内径φY1、φY2が、テーパー面5eの外径φZ1、φZ2よりも小さくなるように設定されていて(φY1<φY2<φZ1<φZ2)、スリーブ6の外径φV1、φV2が、テーパー面5eの外径φZ1よりも大きく、かつ外径φZ2よりも小さくなるように設定されている(φZ1<φV1<φV2<φZ2)。
【0023】
図2(a)に示す状態からスリーブ6を内径φY1、φY2の拡大する方向Dの端部6aから外管5のテーパー面5eにD方向に装着して行くと、スリーブ6のU方向側の端部6bに内側に屈曲するように形成された段差部6cが、外管5の外周面5cに形成された段差部5jに、図2(b)に示すように接合したときに、スリーブ6が外管5に係止されて装着が完了する。そしてこれにより、スリーブ6は、スリーブ6自体の弾性力によりテーパー面5eを締め付けて注入口5dを封止し、注入口5dから注入した地盤注入材MLの逆流を防止する逆止弁として機能する。このとき、スリーブ6は溝5fを覆ってエッジ部5gに線接触するので、テーパー面5eを締め付けるスリーブ6の締め付け力がエッジ部5gに集中して増大される。また、スリーブ6のD方向側の端部6aが、外周面5cの突起5hに対向する。また、スリーブ6を装着した部分の外径φW1が軸方向U、Dに向かって一定となる。さらに、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2が軸方向Uに向かって縮小するようにスリーブ6を形成したことで、テーパー面5eを締め付けるスリーブ6の締め付け力が、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2の縮小する方向Uに向かって増大し、拡大する方向D(縮小する方向Uの反対方向)に向かって減少するようになる。
【0024】
スリーブ6のU方向側の端部6bには、段差部6cとともに、径方向に突出する丸み部6dが形成されている。テーパー面5eにスリーブ6を装着した後、図3に示すように外管5の雄ねじ部5bに別の外管5の雌ねじ部5a’をスリーブ6の端部6bが外管5同士に挟まれるまで螺合すると、スリーブ6が外管5に強固に固定されるとともに、丸み部6dが外管5同士に挟まれて外管5同士の隙間Suを封止する。このため、地盤注入材MLが、外管5の内部から隙間Suを通ってシールグラウトCB中に漏れることや、シールグラウトCB中から隙間Suを通って外管5の内部に漏れることを防ぐことができる。
【0025】
次に、以上の構成からなる注入装置100を用いた注入工法について説明する。まず、ケーシングパイプ(図示省略)を用いてボーリングにより地盤G中に、図1に示すように所定深度の掘削孔Hを形成する。次に、ケーシングパイプ内にシールグラウトCBを充填し、充填後ただちに外管5を挿入する。このとき、最も深い場所に位置する外管5のD方向側の端部をキャップ等(図示省略)で閉塞しておく。そして、シールグラウトCBが硬化しないうちにケーシングパイプを掘削孔Hから引き抜き、シールグラウトCBを外管5と掘削孔Hとの間に充填させ、所定時間をおいて硬化させる。シールグラウトCBが硬化すると、外管5の注入口5dと内管1の吐出口1bが掘削孔H内で略同じ深度位置となるように内管1を外管5内部に挿入する。この後、流体供給源LSから流体を送り込んでパッカー2を膨張させると、図3に示すように内管1が外管5の内部に固定されるとともに、パッカー2により外管5の内部が軸方向U、Dへ所定間隔をおいて区切られ、隣接するパッカー2間の外管5と内管1との間に空間部Xが形成される。
【0026】
そして、地盤注入材供給源MSからホース3を通して内管1の内部に地盤注入材MLを送り込み、図4に示す矢印のように地盤注入材MLを吐出口1bから高圧で吐出させると、地盤注入材MLは空間部Xを充填した後、外管5の注入口5dからスリーブ6を押し上げて噴出する。このとき、テーパー面5eを締め付けるスリーブ6の締め付け力が、スリーブ6の内外径φY1、φY2、φV1、φV2の拡大する方向Dに向かって減少するため、注入口5dから噴出した地盤注入材MLは、矢印で示すようにテーパー面5eとスリーブ6との接合部TをD方向に導かれて、エッジ部5gとスリーブ6の間を抜けてスリーブ6の端部6aから流出する。そして、スリーブ6の端部6aから流出した地盤注入材MLは、即座に端部6aに対向する突起5hに衝突して外管5および掘削孔Hの径方向に飛び散り、シールグラウトCB中に複数のクラックCRを発生させる。このとき発生させた複数のクラックCRは、スリーブ6の端部6aから地盤Gへ通じる地盤注入材MLの注入路となる。
【0027】
引き続き、地盤注入材供給源MSからホース3を通して内管1の内部に地盤注入材MLを供給し、地盤注入材MLを内管1の吐出口1bから吐出させると、地盤注入材MLは、空間部Xを通った後に外管5の注入口5dからスリーブ6を押し上げて噴出し、テーパー面5eとスリーブ6との接合部TをD方向に導かれて、エッジ部7bとスリーブ6の間を通過してスリーブ6の端部6aから流出する。そして、流出した地盤注入材MLは、突起5hに衝突した後に、さらに複数のクラックCRを通って地盤G中に流出し、図1に示すように地盤G中に浸透して行く。この後、地盤G中に浸透して行った地盤注入材MLを硬化させることで地盤Gが強化される。
【0028】
以上のように、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2が軸方向Uに向かって縮小するようにスリーブ6を形成したことで、外管5のテーパー面5eを締め付けるスリーブ6の締め付け力が、スリーブ6の内径φY1、φY2および外径φV1、φV2の縮小する方向Uに向かって増大するため、スリーブ6の止水性能を向上させて、注入口5dを強固に封止することができ、注入口5dから注入した地盤注入材MLが注入口5dを通って外管5および内管1の内部に逆流することを確実に防止することが可能となる。また、スリーブ6の締め付け力が、スリーブ6の内径φY1、φY2および外径φV1、φV2の拡大する方向Dに向かって減少するため、注入口5dから噴出した地盤注入材MLを外管5のテーパー面5eとスリーブ6との接合部TをD方向へ導いて、スリーブ6の端部6aからシールグラウトCB中にスムーズに抜け出させることができ、地盤注入材MLを接合部Tに堆積させることなく、スリーブ6の逆止弁としての機能を維持することが可能となる。
【0029】
また、注入口5dから噴出した地盤注入材MLが接合部Tを通ってスリーブ6の端部6aから流出した後、掘削孔Hの径方向へ流れて行かず、シールグラウトCBと外管5の外周面5cとの界面に流れて行くと、地盤注入材MLが地盤G中に注入されずに地表に噴出するおそれがある。然るに、上述したように外周面5cに突起5hを設けたことで、地盤注入材MLがスリーブ6の端部6aから流出した後、突起5hに衝突して掘削孔Hの径方向に飛び散るため、この方向のシールグラウト中に複数のクラックを発生させることができ、この複数のクラックを通して地盤G中へ地盤注入材MLを注入することが可能となる。また、テーパー面5eに環状のエッジ部5gを設けたことで、スリーブ6がテーパー面5eに面接触ではなく線接触するため、テーパー面5eを締め付けるスリーブ6の締め付け力がエッジ部5gに集中して増大され、スリーブ6の止水性能を一層向上させることができる。
【0030】
また、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2が軸方向Uに向かって縮小するようにスリーブ6を形成したことに加え、外管5の外周面5cにテーパー面5eを設けたことで、テーパー面5eにスリーブ6を装着する際に、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2の拡大する方向Dの端部6aからスリーブ6を、テーパー面5eの広くなる方向Dに向かって装着して行くと、スリーブ6をテーパー面5eに無理なく容易に装着することができるので、スリーブ6自体の弾性力を損なうおそれが確実になくなる。また、スリーブ6を装着した部分の外径φW1(図2)が軸方向U、Dに向かって一定となるようにスリーブ6の内径φY1、φY2および外径φV1、φV2とテーパー面5eの外径φZ1、φZ2をそれぞれ設定したことで、注入装置100が掘削孔Hの径方向に大きくなるのを抑えることができる。このため、注入装置100を挿入する掘削孔Hを大きくする必要がなく、掘削孔Hの形成に要する時間の短縮と、掘削孔H内に充填するシールグラウトCBの使用量の削減を図ることが可能となる。
【0031】
さらに、地盤Gに複数の掘削孔Hを形成して、複数の注入装置100を挿入し、この複数の注入装置100から上述したように地盤注入材MLの注入を行う場合に、隣接する注入装置100から高い注入圧力がかかっても、地盤注入材MLが注入口5dを通って外管5および内管1の内部に逆流せず、地盤G中へ地盤注入材MLを安定して注入することが可能となる。また、地盤注入材MLが接合部Tに堆積することなく、スリーブ6の逆止弁としての機能を維持できるため、地盤注入材MLを地盤G中に長時間に渡って連続注入することや断続的に注入することが可能となる。
【0032】
図5は、他の実施形態を示す図であって、注入装置に備わるスリーブと外管の詳細構造を示している。なお、図中、図1〜図4に示したスリーブ6および外管5と同一部分には同一符号を付してある。また、図中、図1〜図4に示したスリーブ6および外管5の各部分と同一の機能を有する部分には、符号を付して説明するのを省略する。
【0033】
図5の実施形態では、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2が軸方向Uに縮小する前述のスリーブ6(例えば図2)と、外周面15cに軸方向Uに向かって広くなるようにテーパー面15eが形成された外管15を用いている。スリーブ6とテーパー面15eとの寸法関係は、図5(a)に示すようにスリーブ6の内径φY1、φY2が、テーパー面15eの外径φZ3、φZ4よりも小さくなるように設定されていて(φY1<φY2<φZ3<φZ4)、スリーブ6の外径φV1、φV2が、テーパー面15eの外径φZ3よりも大きく、かつ外径φZ4よりも小さくなるように設定されている(φZ3<φV1<φV2<φZ4)。このようにすることで、図5(b)に示すようにテーパー面15eにスリーブ6を装着すると、スリーブ6は、スリーブ6自体の弾性力によりテーパー面15eを締め付けて注入口15dを封止し、逆止弁として機能する。このとき、スリーブ6に対してテーパー面15eをU方向に向かって広くなるように形成したことで、テーパー面15eを締め付けるスリーブ6の締め付け力が、内径φY1、φY2および外径φV1、φV2の縮小する方向Uに向かって顕著に増大し、拡大する方向Dに向かって顕著に減少するようになる。
【0034】
図6〜図8は、スリーブの他の実施形態を示す図である。
【0035】
図6のスリーブ16は、内径φY3、φY4および外径φV3、φV4が軸方向Uに縮小するように形成されているとともに、径方向の厚みが、一定の厚みになるように形成されている。外管5、15にスリーブ16を装着する際に、内径φY3、φY4の拡大する方向Dの端部16aからスリーブ16をD方向に向かって装着して行くと、スリーブ16を容易に装着することができ、スリーブ16自体の弾性力を損なうおそれが少なくなる。
【0036】
図7のスリーブ26は、外径φV5は縮小せず内径φY5、φY6のみが軸方向Uに縮小するように形成されている。外管5、15にスリーブ26を装着する際に、内径φY5、φY6の拡大する方向Dの端部26aからスリーブ26をD方向に向かって装着して行くと、スリーブ26を容易に装着することができ、スリーブ26自体の弾性力を損なうおそれが少なくなる。
【0037】
図8のスリーブ36は、内径φY7は縮小せず外径φV6、φV7のみが軸方向Dに縮小するように形成されている。外管5、15にスリーブ36を装着する際に、外径φV6、φV7の縮小する方向Dの端部36aからスリーブ36をD方向に向かって装着して行くと、スリーブ36を容易に装着することができ、スリーブ36自体の弾性力を損なうおそれが少なくなる。
【0038】
上記実施形態では、図2および図5において、外管5、15の外周面5c、15cを直接テーパー状に加工してテーパー面5e、15eを形成した例を挙げているが、本発明はこれに限定するものではなく、外周面をテーパー状に加工した中空管を外管5、15とは別に形成し、この中空管を注入口5d、15dを覆うように外管5、15の外周面5c、15cへ圧入等により取り付けるようにしてもよい。なお、この場合、中空管には外管5、15の注入口5d、15dと同じ径で同じ数の穿孔を施し、この穿孔が注入口5d、15dと連通するように外管5の外周面5cに中空管を取り付ける。
【0039】
また、上記実施形態では、外管5の外周面5cに一体的に突起5hを加工形成して環状の突起とした例を挙げているが、本発明はこれに限定するものではなく、これ以外に、外周面5cに環状の部材を連結して環状の突起としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、外管5内に内管1を挿入した後に、内管1の吐出口1bから地盤注入材MLを吐出して、外管5の各注入口5dからシールグラウトCB中へ注入する例を挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、内管1を用いずに、地盤注入材供給源MSに連結された複数のホースを外管5の各注入口5dに直結し、この複数のホースを通して地盤注入材MLを各注入口5dへ直接送り込むことで、地盤注入材MLをシールグラウトCB中へ注入するようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、外管5の内部を地盤Gの深度方向へ多段に区切り、区切った内部空間に連通する複数の注入口5dのそれぞれから、掘削孔Hが形成された深度までの地盤G全体に地盤注入材MLを注入する例を挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、掘削孔H内の特定の深度に位置する注入口5dから特定の深度の地盤Gのみに地盤注入材MLを注入するようにしてもよい。なお、この場合、上記実施形態のような内外管方式の注入装置100を必ずしも用いる必要はなく、例えば、先端が閉塞され、後端に地盤注入材供給源MSに連結されたホースが連結され、外周面に注入口が穿孔された管状の部材に、上述したような逆止弁構造を適用したものを用いて、特定の深度の地盤Gへ地盤注入材MLを注入してもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、スリーブの軸方向に向かって外周面を締め付けるスリーブの締め付け力が増大するため、スリーブの止水性能を向上させて注入口を強固に封止し、注入口から注入した地盤注入材が注入口を通って装置内部に逆流することを確実に防止することができる。また、締め付け力が増大する軸方向の反対の軸方向にスリーブの締め付け力が減少するため、注入口から噴出した地盤注入材を、外周面とスリーブとの接合部の締め付け力が減少する方向へ導いて、スリーブの端部からスムーズに抜け出させることができ、地盤注入材を接合部に堆積させることなく、スリーブの逆止弁としての機能を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地盤注入材の注入装置および注入工法を示す図である。
【図2】注入装置に備わるスリーブと外管の詳細構造を示す図である。
【図3】注入装置および注入工法の要部拡大図である。
【図4】同要部拡大図である。
【図5】他の実施形態のスリーブと外管の詳細構造を示す図である。
【図6】スリーブの他の実施形態を示す図である。
【図7】スリーブの他の実施形態を示す図である。
【図8】スリーブの他の実施形態を示す図である。
【図9】従来の地盤注入材の注入装置および注入工法を示す図である。
【図10】同要部拡大図である。
【図11】同要部拡大図である。
【符号の説明】
5、15 外管
5c、15c 外周面
5d、15d 注入口
5e、15e テーパー面
6、16、26、36 スリーブ
5h 突起
100 注入装置
G 地盤
H 掘削孔
ML 地盤注入材
T 接合部
φV1〜φV7 外径
φY1〜φY7 内径
Claims (3)
- 地盤に形成した掘削孔に挿入し、外周面に穿孔した注入口から地盤中へ地盤注入材を注入する注入装置において、
前記外周面にテーパー面を設け、内径または外径の少なくとも一方が軸方向に向かって縮小する弾性体からなる逆止弁用のスリーブを、前記外周面のテーパー面に、前記注入口を覆うように装着したことを特徴とする地盤注入材の注入装置。 - 請求項1に記載の地盤注入材の注入装置において、
前記外周面の周方向に、前記スリーブの端部と対向する環状の突起を設けたことを特徴とする地盤注入材の注入装置。 - 請求項1または2に記載の地盤注入材の注入装置を用いた注入工法であって、
地盤に所定深度の掘削孔を形成し、該掘削孔に前記注入装置を挿入して、地盤改良用の薬液からなる地盤注入材を、前記注入口から噴出させて前記外周面のテーパー面と前記スリーブとの接合部を通して地盤中へ注入することを特徴とする地盤注入材の注入工法。
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