以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。各フローチャートの開始条件は、記載した開始条件だけに必ずしも限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施の形態のエレベータ1の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。エレベータ1は、駆動装置2、および駆動装置2を制御する制御装置3を含んで構成される。駆動装置2は、乗客が乗車するかご、重錘であるカウンタウェイト、かごおよびカウンタウェイトを連結する索条であるロープ、ロープが巻き掛けられるシーブ、シーブの回転軸、回転軸を回転させる回転駆動源であるモータ、およびモータの回転を制動する制動手段であるブレーキを含む。制御装置3は、後述する記憶部4に記憶されているプログラムを実行することによって、少なくともかごに設けられた扉の開閉動作、モータを駆動することによるかごの昇降動作、およびブレーキを働かせることによるモータの回転の制動を制御する。
制御装置3は、各階床に設けられ行先階呼びを入力可能な行先階入力部5、かごの位置を検出するかご位置検出部6、かごの移動方向である行先方向を検出するかご方向検出部7、かごの移動速度を検出するかご速度検出部8、与えられるアナログ情報をデジタル情報に変換する入力回路9、各種情報を記憶する記憶部4、時間を計時する計時部10、与えられる情報に基づいて、駆動装置2を制御する制御部11、制御部11から与えられるデジタル情報をアナログ情報に変換し駆動装置2に与える出力回路12、かご内に設けられ情報を表示する案内部13を含む。
行先階入力部5は、行先階入力手段であって、各階床に設けられ、具体的には、かごが停止する階の壁など設置される。したがって本実施の形態では、行先階を入力するための手段は、階床にのみ設置され、かご内には設置されない。行先階入力部5は、たとえばタッチパネルによって構成され、液晶ディスプレイなどの表示画面に情報を表示することができる表示部と、表示画面に表示された操作ボタンあるいは数字と記号とを含む文字入力キーを利用者が触ることによって、触られた操作ボタンあるいは文字入力キーに対応する入力情報を入力することができる入力部とを有する。行先階入力部5の入力部、つまりタッチパネルに表示される操作ボタンは、少なくとも、行先階を選択するための行先階選択ボタンを含み、好ましくは、扉が開いている時間を延長するための開延長ボタン、各種設定をする設定画面を選択する画面を表示させるためのメニュー表示ボタン、およびメニューの中の項目を選択するためのメニュー選択ボタンを含む。
行先階入力部5の表示部に表示される表示情報は、たとえば、かごの状況に関する情報であり、かごの移動経路、かごが到着するまでの予測時間を示す予測時間情報、かごの到着の予告を示す到着予告情報、開いている扉が閉じるまでの時間を表す戸開待機時間情報、移動中のかごが現在位置している階を示す現在階情報、行先の停止予定階を示す行先階情報、かごが停止している階を示す停止階情報、扉が複数ある場合その複数の扉のうちいずれの扉が開いているかを示す戸開方向情報、故障に関する故障情報、および保守のために用いられる保守情報を含む。行先階入力部5の入力部から入力された入力情報は、行先階呼び(以下、「呼び」ということがある)として入力回路9を介して、制御部11に与えられ、制御部11から与えられる表示情報は、行先階入力部5の表示部に表示される。
案内部13は、行先階呼びに対する応答順序に基づく情報を出力する出力手段としての機能を有する。案内部13は、かごの移動経路を案内する手段である。案内部13は、かご内および各階の乗車口に設けられ、たとえば案内音声を出力する案内音声出力手段および各種の情報を表示する案内表示手段によって実現される。案内音声出力手段が出力する音声として、たとえば行先階呼びに対する応答順序に基づいて、かごが2階から出発し、行先階呼び2→3、4→5、4→2に応答して、3階、4階、5階、2階の順に走行する場合、2階出発時に、「次は、3階、4階、5階、2階の順に止まります。」と出力し、3階到着時に、「3階に止まります」と出力し、3階出発時に、「次は、4階、5階、2階の順に止まります。」と出力し、4階到着時に、「4階に止まります」と出力し、4階出発時に、「次は、5階、2階、1階の順に止まります。」と出力し、5階到着時に、「5階に止まります」と出力し、5階出発時に、「次は、2階に止まります。」と出力し、2階到着時に、「2階に止まります。」と出力する。このように4階にて逆方向の乗客も乗車させた場合でも、到着順序を出力することによって、乗客の不安を緩和することができる。また案内音声出力手段および案内表示手段が出力する情報として、後述する上方階行きまたは下方階行きであることを示す情報、移動中のかごが現在位置している階を示す現在階情報、行先の停止予定階を示す行先階情報、行先階までの停止回数を示す停止回数情報、行先階までの移動時間を示す移動時間情報、かごが停止している階を示す停止階情報、故障に関する故障情報、および保守のために用いられる保守情報を含む。案内部13は、制御部11から送信される情報が出力される。
記憶部4は、記憶手段であって、たとえば半導体メモリあるいは磁気ディスク装置などの記憶装置によって構成される。記憶部4は、行先階入力部5によって入力された行先階呼びを、入力された階床および入力された時刻と関連付けて記憶する。行先階呼びは、発生時刻順に、発生時刻A(c)と、出発階O(c)と、行先階D(c)と、応答状態(未応答、応答中、乗車、降車)を示すS(c)とが相互に関連付けられ、リストとして記憶部4に記憶される。乗客が降車後は、リストから外れるように制御される。また、記憶部4は、行先階D(c)>出発階O(c)の呼びを集めたUP呼びリストと、行先階D(c)<出発階O(c)を集めたDN呼びリストが記憶される。かごの走行を制御している場合は、記憶部4は、かごを制御するための情報であって、現在階xと復帰階yと方向dと反転可能階z(最も遠方の行先階)と出発階O(c)への到着予想時刻R(c)と復帰階yへの到着予想時刻R(y)とを相互に関連付けて記憶する。また記憶部4には、i階からj階への走行時間T(i,j)が予め計算されて記憶される。このような走行時間に関するデータの一例を、表1に示す。表1に示す走行時間は、戸開閉時間を含み、単位は秒である。
表1は、たとえば2行(2階)4列目(3階)は2階から3階への走行時間は10秒であることを示している。
また記憶部4に記憶される情報は、制御部11によって実行されるプログラム、かごが停止している時間が予め定める時間を越えた時にかごを移動させる基準階を表す基準階情報、予め定める時間である復帰時間を表す復帰時間情報、保守のために用いられる保守情報、および建物の上方階と下方階とに分割する基準となる分割階を表す分割階情報を含む。基準階は、複数の階床のうち基準となる基準階床が予め1つ設定される。このような基準階は、かごの交通パターンに合わせて設定される。計時部10は、時間を計時して、制御部11および記憶部4からの指令に応じて、現在時間に基づく情報を制御部11および記憶部4に与える。
制御部11は、マイクロコンピュータなどの処理回路によって実現される。制御部11は、記憶部4に記憶される未応答の複数の行先階呼びに対する応答順序を決定する。制御部11は、予め定める階を分割階と設定し、2つの層に分割し、具体的には分割階以上の階を上方階、分割階未満の階を下方階としてかごの移動を制御する。かごの一周運転を上方階内と下方階内とに2分割して、上下階内での上下運転と上下階層間の上下運転に分割する。このような分割階は、かごの移動可能な最下階と最上階の中間の階であり、(最上階+最下階)/2で求められる。したがってたとえば最下階が1階、最上階が9階の時の分割階は5階となる。またたとえば最下階が1階、最上階が10階の時の分割階は5階または6階のいずれか一方の階となる。またたとえばたとえば最下階が地下1階、最上階が10階の時の分割階は5階となる。制御部11は、決定した応答順序に基づいて、駆動装置2を制御して、かごを決定した応答順序に従って走行させる。
また制御部11は、基準階を計時部10から与えられる現在時刻に基づいて、設定する。たとえば事務所ビルにおいては、出勤時には1階で乗車する交通量が多くなるので1階を基準階にして予め復帰しておくのが待ち時間の短縮になる。一方、退勤時には上方階で乗車して1階で降車する交通量が多くなるので、交通量の多い上方階を基準階にして予め復帰しておくのが待ち時間の短縮になる。その他の交通パターンの時は、1階の交通量は多いので基準階を1階にしても退勤時ほどの問題は無い。したがって制御部11は、計時部10からの現在時刻と交通量とに従って基準階を決定する。出勤時は1階を基準階にする。退勤時は最上階を基準階にする。現在時刻に加え実際の交通量を併用するのは、休日などに対応するためである。
交通量(乗客の平均到着率)の推定方法として、呼びの未登録時間(呼びがキャンセルされてから一人目の乗客によって登録されるまでの時間=乗客の到着人数が0人の時間)の平均を計算すると、その逆数が平均到着率になる。乗客の到着はポワソン分布とすると、平均到着率がλの時に時間tに乗客が一人も到着しない確率は、exp(−λt)であり、最尤推定により、λ=1/(tのサンプル平均)が最尤推定値となる。またn人到着する確率は、次式(1)によって表される。
次に、制御部11の動作についてフローチャートを用いて説明する。各フローチャートの動作は、制御部11によって行われる。図2Aおよび図2Bは、制御部11による応答順序決定処理を示すフローチャートである。この処理は、エレベータ1に電力が供給されている場合に、繰り返し実行される。
ステップa1にて、行先階呼びが入力されたか否かを判断し、行先階呼びが入力された場合、ステップa2に移り、入力されていない場合、本フローを終了する。ステップa2では、記憶部4に記憶されるリストから、未応答の行先階呼びを読出しステップa3に移る。ステップa3では、読出した行先階呼びを、予め定める分割階、出発階、行先階および行先方向に基づいて6つの第1グループ〜第6グループに分割し、ステップa4に移る。第1グループは、出発階と行先階とが予め定める分割階より下方の下方階であり、行先方向が上方である行先階呼びのグループである。第2グループは、出発階が下方階であり、行先方向が下方である行先階呼びのグループである。第3グループは、出発階が下方階であり、行先階が分割階以上の上方階である行先階呼びのグループである。第4グループは、出発階が上方階であり、行先方向が上方である行先階呼びのグループである。第5グループは、出発階と行先階とが上方階であり、行先方向が下方である行先階呼びのグループである。第6グループは、出発階が上方階であり、行先方向が下方階である行先階呼びのグループである。
ステップa4では、かご位置およびかごの行先方向を検出して、ステップa5に移る。ステップa5では、かご位置に基づいて、かごが下方階であるか否かを判断し、下方階である場合、ステップa6に移り、下方階でない場合、ステップa19に移る。ステップa6では、かごが上昇中であるか否かを判断し、上昇中である場合、ステップa7に移り、上昇中でない場合、ステップa9に移る。ステップa7では、かごは下方階にて上昇中であるので、第1グループの未応答の行先階呼びと、第1グループの応答中の行先階呼びと、第2グループの未応答の行先階呼びとを読出し、ステップa8に移る。ステップa8では、第1グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第1グループの応答中の行先階呼びの行先階と、第2グループの未応答の行先階呼びの出発階とに昇順に停止するように応答順序を決定し、ステップa14に移る。
ステップa9では、かごが下降中であるか否かを判断し、下降中である場合、ステップa10に移り、下降中でない場合、ステップa12に移る。ステップa10では、かごは下方階にて下降中であるので、第6グループの応答中の行先階呼びと、第1グループの未応答の行先階呼びと、第2グループの未応答の行先階呼びと、第2グループの応答中の行先階呼びとを読出し、ステップa11に移る。ステップa11では、第6グループの応答中の行先階呼びの行先階と、第1グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第2グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第2グループの応答中の行先階呼びの行先階とに降順に停止するように応答順序を決定し、ステップa14に移る。
ステップa12では、かごは下方階にて停止中であるので、第1グループの未応答の行先階呼びと、第2グループの未応答の行先階呼びとを読出し、ステップa13に移る。ステップa13では、第1グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第2グループの未応答の行先階呼びの出発階とで、最も近い出発階に応答するように決定し、ステップa14に移る。ステップa14では、決定された応答順序に基づいて、駆動信号を出力し、ステップa15に移る。
ステップa15では、第1グループおよび第2グループに未応答の行先階呼びがあるか否かを判断し、未応答の行先階呼びがある場合、ステップa6に戻り、未応答の行先階呼びがない場合、ステップa16に移る。ステップa16では、下方階内に行先階と出発階との両方がある行先階呼びはないので、第3グループの行先階呼びの停止階に昇順に応答するように応答順序を決定し、ステップa17に移る。ステップa17では、決定された応答順序に基づいて、駆動信号を出力し、ステップa18に移る。ステップa18では、未応答の行先階呼びがあるか否かを判断し、未応答の行先階呼びがある場合、ステップa5に戻り、ない場合、本フローを終了する。
ステップa19では、かごは上方階にあるので、かごが上昇中であるか否かを判断し、上昇中である場合、ステップa20に移り、上昇中でない場合、ステップa22に移る。ステップa20では、かごは上方階にて上昇中であるので、第4グループの未応答の行先階呼びと、第4グループの応答中の行先階呼びと、第5グループの未応答の行先階呼びと、第3グループの応答中の行先階呼びを読出し、ステップa21に移る。ステップa21では、第4グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第4グループの応答中の行先階呼びの行先階と、第5グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第3グループの応答中の行先階呼びの行先階とに昇順に停止するよう応答順序を決定し、ステップa27に移る。
ステップa22では、かごが下降中であるか否かを判断し、下降中である場合、ステップa23に移り、下降中でない場合、ステップa25に移る。ステップa23では、かごは上方階にて下降中であるので、第5グループの未応答の行先階呼びと、第4グループの未応答の行先階呼びと、第5グループの応答中の行先階呼びとを読出し、ステップa24に移る。ステップa24では、第5グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第4グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第5グループの応答中の行先階呼びの行先階とに降順に停止するように応答順序を決定し、ステップa27に移る。
ステップa25では、かごは上方階にて停止中であるので、第4グループの未応答の行先階呼びと、第5グループの未応答の行先階呼びとを読出し、ステップa26に移る。ステップa26では、第4グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第5グループの未応答の行先階呼びの出発階とで、最も近い出発階に応答するように決定し、ステップa27に移る。ステップa27では、決定された応答順序に基づいて、駆動信号を出力し、ステップa28に移る。
ステップa28では、第4グループおよび第5グループに未応答の行先階呼びがあるか否かを判断し、未応答の行先階呼びがある場合、ステップa19に戻り、未応答の行先階呼びがない場合、ステップa29に移る。ステップa29では、上方階内に行先階と出発階との両方がある行先階呼びはないので、第6グループの行先階呼びの出発階に降順に応答するように応答順序を決定し、ステップa30に移る。ステップa30では、決定された応答順序に基づいて、駆動信号を出力し、ステップa31に移る。ステップa31では、未応答の行先階呼びがあるか否かを判断し、未応答の行先階呼びがある場合、ステップa5に戻り、ない場合、本フローを終了する。
このように入力される行先階呼びに基づいて、行先階呼びを第1から第6グループに分割し、順次応答するように応答順序を決定する。本フローは、繰り返し実行されるので、ステップa1からステップa2に移って、記憶部4に行先階呼びが新たに記憶される毎に、未応答のリストを読み出して応答順序を決定する。またステップa18およびステップa31においても、未応答の行先階呼びある場合、未応答のリストを読み出して応答順序を決定する。これによって記憶部4に記憶される行先階呼びに基づいて応答順序を決定され、応答順序に基づいてかごの走行を制御している場合であって、新たに追加される行先階呼びをさらに加えて、再び応答順序を決定することができる。したがって新たに追加される行先階呼びを放置することなく、かごを効率よく走行させることができる。
以上説明したように、本実施の形態のエレベータ1の制御装置3では、乗客の行先階を入力する行先階入力部5を含む。したがってエレベータ1を利用する乗客は、かごの中ではなく、各階床毎に設けられる行先階入力手段を入力操作して、行先階を入力することができる。制御部11は、記憶手段に記憶される未応答の複数の行先階呼びを、出発階と行先階と行先方向とに基づいて、第1から第6グループの6つのグループに分割する。制御部11は、下方階内の上昇運転と下降運転、上方階内の上昇運転と下降運転、下方階から上昇階に向かう上昇運転、および上昇階から下方階に向かう下降運転の各場合に関して、予め定める各グループの行先階呼びに関して応答する。たとえば下方階における上昇運転では、第1グループの未応答の行先階呼びの出発階と、第1グループの応答中の行先階呼びの行先階と、第2グループの未応答の行先階呼びの出発階とに昇順に停止するように応答する。したがって下方階における上昇運転では、第2グループの未応答の行先階呼びの出発階に停止する。これによって下方階における上昇運転では、いわゆる逆呼びにも応答することができる。このような逆呼びは、下方階における下降運転において応答される。換言すると、一方向に運転中に逆方向の呼びの出発階にも停止して、逆方向の乗客も乗り合いさせ、反転後の逆方向の運転時にそれらの行先階呼びの行先階にも停止して、それらの乗客を降車させる。したがって本発明では、上方階と下方階とに基づいて各行先階呼びをグループ毎に分割しているので、逆呼びに応答する場合であっても、反転して走行する時間を短くすることができる。
このように従来の技術では膨大な経路に基づいてサービス完了時間が最小となるような経路を求めているが、本実施の形態の制御部11では前述のように上方階および下方階に基づいて停止階に昇順、または降順で応答するので、応答順序を決定することが容易である。したがって制御部11は、簡単な演算で応答順序を決定することができ、また平均サービス完了時間を従来の技術よりも短くすることができる。これによって制御部11の演算負荷を可及的に小さくし、かつ平均サービス完了時間を短くすることができるエレベータ1の制御装置3を実現することができる。
具体的には、分割階によってサービス階を2分割しているので、逆呼びを乗車させても、逆走距離が最大N/2で抑えることができる。これによって逆呼びを乗車させても平均乗車時間が従来の技術のような方向に従い逆呼びおよび背後呼びには応答しない応答順序(以下、「セレコレ」ということがある)と同じにすることができる。
表2は、セレコレと、前述の第6の従来の技術の応答順序(以下、「第2セレコレ」ということがある)と、本実施の形態の応答順序とを比較を示す表である。本実施の形態では、乗客は、上方階内または下方階内(以下、単に「層内」ということがある)を移動する乗客と上方階から下方階、または下方階から上方階(以下、単に「層間」ということがある)を移動する乗客に2分される。それに対応して、層内を移動する乗客を運ぶ層内運転と層間を移動する層間運転がある。この中で逆呼びが乗り合いして行先階へ行く前に反転階まで一旦運ばれる現象が発生するのは層内運転においてだけであり、層間では乗客全員の行先階が他層内にあるので逆走行は発生しない。層間の平均乗車時間はRTT/4であり、層内の平均乗車時間も以下に述べるようにRTT/4である。したがって、本実施の形態の応答順序(以下、「ポストセレコレ」ということがある)の平均乗車時間は、セレコレと同じRTT/4となる。
両方向の呼びを乗り合いさせ、逆走が発生するのは、各層内の上下運転であり、運転時間はそれぞれRTT/4とセレコレの半周時間RTT/2の半分になる。仮に、分割せずに逆呼びを乗り合いさせると平均乗車時間が2倍になる。(1)ポストセレコレの逆呼びの出発階から反転階の平均乗車時間はRTT/8であり、(2)ポストセレコレの逆呼びの反転階から出発階までの平均乗車時間はRTT/8であり、(3)ポストセレコレの逆呼びの出発階から行き先階までの平均乗車時間はRTT/8である。したがって、(1)および(2)は、逆呼びの場合(発生確率1/2)だけ必要である。(3)は、順逆両方に必要である。したがってポストセレコレの平均乗車時間は、
RTT/8+RTT/8=RTT/4 …(2)
となり、セレコレの平均乗車時間と同じになる。
換言すると、ポストセレコレの平均乗車時間は、各エレベータが下方階の上下運転と、上方階の上下運転を交互に繰り返すことから、第1、第2、第4、第5グループでの順方向での乗車時間はRTT/8で逆方向での乗車時間の増加分はRTT/4であり、増加分の発生確率が1/2であるので、平均乗車時間はRTT/4となる。また第3、第6グループの平均乗車時間は、RTT/4であり、出発階と行先階が同一の層内にないので、行先階とは逆方向に反転階まで輸送されるという現象は発生しないので、逆方向での乗車による乗車時間の増加分はない。
ポストセレコレでは平均待ち時間は、行先階呼びの出発階がある層にかごがある時(確率1/2)はRTT/8であり、かごが他層から近付いている時(確率1/4)の平均待ち時間はRTT/4であり、他層内で遠ざかっている時(確率1/4)の平均待ち時間はRTT/2である。従って、平均待ち時間は
RTT/16+RTT/16+RTT/8=RTT/4 …(3)
である。
したがって、平均サービス完了時間はセレコレの3RTT/4に対して、2分割して逆呼びを乗り合いさせるポストセレコレはRTT/4+RTT/4=RTT/2となる。これによって約33%時間を短縮することができる。
また第2セレコレと比較すると、平均乗車時間が、順方向の平均乗車時間RTT/4に逆方向での増加分RTT/2の発生確率1/2を掛けた合計、
RTT/4+RTT/2×(1/2)=RTT/2 …(4)
となる。したがって平均サービス完了時間は、セレコレと同じ3RTT/4となる。したがってポストセレコレは、第2セレコレよりも平均サービス完了時間を約33%低減することができる。
セレコレとポストセレコレの操作性を比較した場合、3→4、3→1の行先階呼びがあった時、セレコレでは、応答順序が3→4→3→1である。したがって3→4は、かごが3階に上昇方向で到着した時に乗車する。3→1は、かごが4階で反転して3階に下降方向で到着するまで3階乗場で待つことになる。
これに対して、ポストセレコレでは、応答順序が3→4→1である。ここで分割階は5階とする。3→4と3→1はかごが3階に到着した時、乗車する。したがって乗客は先着戸開したかごに乗車する。このとき、案内部13は、3階、4階、1階の順で停車することを案内する。3→1の乗客は、3階で方向を意識せずに乗車したので、3→4に逆走しているという感覚は余り無く、2番目(4階の次)に降車階(1階)の順番が来ることが分かるので、乗客の不安を解消することができる。このように上方階と下方階とで2分割することによって、反転階(この例では4階)は、現在階からの距離が最大N/2に抑えることができる。
また本実施の形態では、案内部13は、制御部11によって決定される応答順序に基づく情報を出力する。これによってかごに乗車した乗客は、応答順序を認識することができる。したがって従来のセレコレのような方向に従った応答順序ではなく、逆方向の乗客も乗車させるので、応答順序を出力することによって乗客は自分がいつ降車するのかを前もって認識することができる。これによってポストセレコレのように応答順序が適宜決定される構成であっても、乗客は安心してエレベータ1を利用することができる。
また本実施の形態では、分割階は、予め設定され固定されているが、固定することなく、入力された行先階呼びに応じて動的に決定してもよい。たとえば登録されている行先階呼びの出発階と行き先階の最下階と最上階の中間の階となるように適宜設定してもよい。
また本実施の形態では、1機のエレベータ1に関して説明したが、複数のエレベータ1を制御する群制御装置であっても、エレベータ1が故障などの不具合により群制御ができない場合に、各エレベータ1を個別に制御する場合に適用してもよい。換言すると、故障などにより1台単独運転になった時のバックアップ運転時に用いることができる。これによってバックアップ時の待ち時間性能の悪化が抑えられるので、待ち時間が制御される群管理のバックアップ運転としては理想的である。またバックアップ運転時には、案内部13は、運転中のエレベータがどれであるかを示す情報を出力するように構成してもよい。これによってバックアップ運転時に、乗客は誤って停止中のエレベータ1の乗車口で待機することを防ぎ、円滑に乗車を促すことができる
次に、本発明の第2の実施の形態のエレベータ1に関して説明する。本実施の形態は、複数の階床間を就役する2機のエレベータ1を制御するエレベータ1の群制御装置である点に特徴を有する。したがって前述の第1の実施の形態のエレベータ1の制御装置3を制御する群制御装置、および行先階入力部5によって入力された行先階呼びを記憶する群記憶部とをさらに含んで構成される。群記憶部は、群記憶手段であって、第1の実施の形態の記憶部4と同様の機能を有する。群制御装置は、群記憶部に記憶される未応答の複数の行先階呼びを2機のエレベータに割当て、割当てた行先階呼びを各エレベータの制御装置3の記憶部4に与える。図3は、本実施の形態の群制御装置による応答順序決定処理を示すフローチャートである。この処理は、各エレベータ1に電力が供給されている場合に、繰り返し実行される。
ステップb1では、行先階呼びが入力されたか否かを判断し、行先階呼びが入力された場合、ステップb2に移り、入力されていない場合、本フローを終了する。ステップb2では、行先階呼びを出発グループと行先グループとに分割し、ステップb3に移る。ステップb2では、具体的には、群記憶部に記憶される未応答の複数の行先階呼びのうち、出発階床が同じ行先階呼びを、各出発階床毎に複数の出発グループに分割し、未応答の複数の行先階呼びのうち、行先階床が同じ行先階呼びを、各行先階床毎に複数の行先グループに分割する。
ステップb3では、各出発グループおよび各行先グループに基づいて、停止回数の最大値が最小になるように、応答する前の行先階呼びを2つのグループに分割し、分割した各グループの行先階呼びを各グループ毎に各エレベータにそれぞれ割当て、ステップb4に移る。ステップb4では、各エレベータの制御装置3は、行先階呼びが割当てられたので、割当てられた行先階呼びに基づいて、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定し、ステップb5に移る。テップb5では、決定された応答順序に基づいて、駆動信号を出力し、本フローを終了する。
このように2つのエレベータ1を制御する群制御装置では、行先階呼びを群管御装置が2分割して各エレベータ1の制御装置3に割当てる。群管理下にある時は、制御装置3は群制御装置から分担する呼びを割当てられる。群管理下にない時は、行先階入力部5から行先階呼びが直接制御装置3に入力される。
このような群制御装置では、各出発グループおよび各行先グループに基づいて、停止回数の最大値が最小になるように、応答する前の行先階呼びを2つのグループに分割し、分割した各グループの行先階呼びを各グループ毎に各エレベータにそれぞれ割当てる。各出発グループと各行先グループに基づくことによって、たとえば1階が出発階の行先階呼びと、1階が行先階の行先階呼びとを、1つのグループにまとめることができる。このように停止回数が最小となるように行先階呼びを2つのグループに分割することによって、各エレベータが同じ階に重複して停止することを防止することができるので、RTTを短くすることができる。これによって効率よく2機のエレベータを運転させることができる。
さらに本実施の形態では、案内部13は、群制御装置によって分割される各グループの行先階呼びに基づく情報を出力してもよい。このような案内部13は、かごが来るのを待機している乗客が容易に視認可能な位置、たとえば乗車口付近、具体的には乗車口の上方部分に設けられる。これによってかごに乗車する乗客は、自分がどちらのかごに乗車すればよいかを認識することができる。したがって行先階呼びをグループに分割した場合であっても、乗客が複数のかごの中から目的のかごを探すために混乱することがないので、乗客は乗車すべきかごを間違うことなく、安心してエレベータを利用することができる。
また本実施の形態のような応答順序を決定する制御方法は、常に実行されるものでなくてもよく、たとえば基準階の交通量が多い時は、満員発生が予想されるので基準階からの行先階呼びを分割して2台に割当てるように制御してもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態のエレベータシステムに関して説明する。本実施の形態のエレベータシステムは、複数の階床間を就役する2機のエレベータを1組として、各組のエレベータが予め定める階床をそれぞれ分担するように複数組のエレベータを制御する。したがって本実施の形態では、前述の複数の階床間を就役する2機のエレベータ1を制御するエレベータの群制御装置を複数備え、複数の群制御装置を制御するシステム制御装置、および行先階入力部5によって入力された行先階呼びを記憶するシステム記憶部とをさらに含んで構成される。システム記憶部は、システム記憶手段であって、第1の実施の形態の記憶部4と同様の機能を有する。システム制御装置は、システム記憶部に記憶される未応答の複数の行先階呼びを、各組を制御する各群制御装置が分担する行先階床に基づいて各群制御装置にそれぞれ割当てる。群制御装置は、システム制御手段としての機能を有し、各組毎に割当てられた複数の行先階呼びに対して、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定する。したがって群制御装置は、前述の第2の実施の形態と同様の構成によって実現される。したがって2機のエレベータを1群として複数の群でエレベータシステムが構成される。
エレベータシステムでは、建物のサービス階床数を複数のセクターに分割し、それぞれのセクターを分担する群を設置する。分担するセクターの一例を表3〜表6に示す。表3では、2つの群G1、G2から構成されるエレベータシステムであって、群G1が1〜5階から成るセクターを分担し、群G2が6〜10階から成るセクターを分担している場合を示す。表4では、1階を除く2〜10階を2つのセクターに分割し、それぞれを分担する2つの群G1、G2から構成されるエレベータシステムであって、群G1が2〜6階から成るセクターを分担し、群G2が7〜10階から成るセクターを分担している場合を示す。またたとえば表3に示すように、1階の乗場において、群G1には、2〜5階の行先階が入力可能な行先階入力部5が設置されており、群G2には、6〜10階の行先階が入力可能な行先階入力部5が設置されている。したがって任意の階から任意の階へ乗り換え無しで行けるように行先階入力部5にて入力可能な階が設定されている。
表5では、3つの群G1、G2、G3から構成されるエレベータシステムであって、群G1が1〜5階から成るセクターを分担し、群G2が6〜10階から成るセクターを分担し、群G3が11〜15階から成るセクターを分担している場合を示す。表6では、1階を除く2〜10階を3つのセクターに分割し、それぞれのセクターを分担する3つの群G1、G2、G3から構成されるエレベータシステムであって、群G1が2〜5階から成るセクターを分担し、群G2が6〜8階から成るセクターを分担し、群G3が9〜10階から成るセクターを分担している場合を示す。またたとえば表5に示すように、1階の乗場において、群G1には、2〜5階の行先階が入力可能な行先階入力部5が設置されており、群G2には、6〜10階の行先階が入力可能な行先階入力部5が設置されており、群G3には、11〜15階の行先階が入力可能な行先階入力部5が設置されている。
このように本実施の形態のエレベータシステムでは、各組のエレベータが分担する階床が予め定められているので、各組のエレベータは担当する階床において、与えられる行先階呼びに対して、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定する。このように応答順序を平均サービス完了時間に基づいて決定するので、効率よく各組の2機のエレベータを運転させることができる。また各組の群制御装置によって、停止階を少なくすることができ、乗客一人当たりのサービス時間が減少し輸送能力が高まるから、表5に示すように、各組当たりのセクター長を大きく設定することができる。これによってエレベータシステムを構成するエレベータ台数を削減でき、レンタブル比を向上することができる。
また表6に示すように、表3および表4に対してエレベータの台数を増やすことによって、定員の小さいかごを用いることができ、各組当たりのセクター長を小さくすることができる。これによって、従来のエレベータシステムがたとえば24人乗りのかごが4台であるエレベータシステムから、本実施の形態のように13人乗りのを3組(6台)にすることによって、レンタブル比の向上と、輸送能力の向上という従来の技術では両立しえなかったことを、本実施の形態では両立させることができる。具体的には、従来の技術では、24人乗り2台の昇降路断面は、間口5050mm、奥行き2650mm(面積14.58平方m)であるのに対して、本実施の形態では、13人乗り2台の昇降路断面は、間口4400mm、奥行き2150mm(面積9.49平方m)であり、従来の技術がトータルの行程が20階床であるのに対して、本実施の形態では、28階床であるので、昇降路占有面積は、291.6平方mから264.9平方mに減少する。
また従来の技術のセレコレの2台群管理の場合は、2台群管理の平均待ち時間がRTT/4に対して単独1台の平均待ち時間はRTT/2に低下する。これに対してポストセレコレの場合は2台群管理の平均待ち時間RTT’/4に対して、単独1台の平均待ち時間はRTT”/4となる。ここで、RTT>RTT”>RTT’であり、単独1台の場合であっても輸送性能の低下(平均待ち時間の増加)を小さくすることができる。したがってポストセレコレで応答順序が決定されるので、各組の2台のエレベータの中の1台のエレベータの故障時や点検時には、他の1台だけでも輸送性能の低下を最小限に抑えることができる。
表7は、13人乗り、移動速度105m/分のかごの各サービス階におけるアップピーク時のRTTを示す表である。表7に示すように、セレコレのRTTが143.8秒であるのに対し、ポストセレコレのRTT’は、次式(5)によって示される。
RTT’=(107.7+113.1)/2=110.4秒 …(5)
したがってセレコレのRTTより、ポストセレコレのRTT’が小さくなる。またセレコレの単独1台24人乗り105m/分のRTTは、197.9秒であり、4台での5分間輸送人数は、116.4人である。これに対して、ポストセレコレの場合は13人乗り2グループ4台群管理で、一方のグループのサービス階をS2={2−6}、および他方のグループのサービス階をS2={7−10}とした場合、輸送能力不足が検出されて呼びが2分割された状態の5分間輸送人数は153人となり、通常の24人乗り4台の輸送能力の1.31倍になり、昇降路断面積は、約35%減少する。
また各群が移動可能な階を入力することができる行先階入力部を、各群のエレベータの乗車位置付近に設けることが好ましい。このように行先階入力部を設けることによって、乗客は移動したい階を入力した行先階入力部付近のエレベータに乗車すればよいので、入力した行先階入力部から離れた場所にあるエレベータまで移動する必要がなく利便性が向上する。
また本実施の形態では、各群が分担するセクターの階数は、互いに等しくなるように設定されるが、これに限ることはない。また各群が分担するセクターの階は、連続する階にて設定されるが、これに限ることはない。たとえば建物の利用状況に応じて、分担するセクターを設定してもよい。
前述の実施の各形態では、未応答の行先階呼びに対して、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序が決定されるが、他の条件として、待ち時間の最大時間が予め設定され、前記最大時間を超える行先階呼びを優先して平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定してもよい。応答順序を平均サービス完了時間が最小となるように決定する場合、平均サービス完了時間に基づいているので、各階床の待ち時間にばらつきがあり、ばらつきの度合いによっては、非常に長く待たされる場合があるが、予め待ち時間の最大時間が設定されるので、前述のようなばらつきを防ぐことができ、かつ平均サービス完了時間が最小となるように応答順序を決定することができる。これによって乗客が最大時間よりも長く待つことを可及的に防止することができる。したがってエレベータの利便性が向上することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態のエレベータに関して説明する。本実施の形態のエレベータは、制御装置の制御が交通量および時間帯に基づいて、与えられる行先階呼びの応答順序を決定する点に特徴を有する。本実施の形態のエレベータは、前述の第1の実施の形態のエレベータ1に類似し、制御部の応答順序の決定に関して部分的に異なる。
制御部は、数式(1)に関連して説明したように、たとえば行先階呼びの未発生時間に基づいて交通量を推定する。制御装置は、推定した交通量と計時部10から与えられる現在時刻に基づいて、交通パターンを識別する。交通パターンは、たとえば閑散時、アップピーク時、ダウンピーク時、混雑時、および平常時の5つのパターンが用いられる。閑散時(IM)は、たとえば交通量が予め定めるしきい値未満のときである。またアップピーク時(UP)は、たとえば基準階が出発階となる行先階呼びが、記憶部4に記憶される未応答および応答中の行先階呼びに対する予め定める割合、たとえば80%以上を占めるときである。またダウンピーク時(DP)は、たとえば基準階が到着階となる行先階呼びが、記憶部4に記憶される未応答および応答中の行先階呼びに対する予め定める割合、たとえば80%以上を占めるときである。また混雑時(2WH)は、交通量を予め定めるしきい値以上であり、記憶部4に記憶されるUP呼びリストの未応答および応答中の行先階呼びと、DN呼びリストの未応答および応答中の行先階呼びとの数が、等しいまたはほぼ等しいときである。混雑時は、換言すると、未応答および応答中の行先階呼びの2方向の交通量に偏りが無く、交通量が所定値以上の時である。また平常時(BL)は、たとえば交通量を予め定めるしきい値未満であり、記憶部4に記憶されるUP呼びリストの未応答および応答中の行先階呼びと、DN呼びリストの未応答および応答中の行先階呼びとの数が、等しいまたはほぼ等しいときである。平常時は、換言すると、未応答および応答中の行先階呼びの2方向の交通量に偏りが無く、交通量が予め定めるしきい値未満の時である。交通量の予め定めるしきい値は、かごの輸送能力などに基づいて決定される。
制御部は、交通パターンを平常時、閑散時または混雑時と判断したときは、かごの位置と、呼びの種類応じて、次のように場合わけして制御する。
(1)かごが下方階にあり、第1グループの呼び、第2グループの呼び、第3グループの未応答の呼び、および第6グループの応答中の呼びのうち、少なくとも1つの呼びがある場合、下方階における上昇運転および下方運転を切換えて、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定する。
(2)かごが下方階にあり、第1グループの呼び、第2グループの呼び、第3グループの未応答の呼び、および第6グループの応答中の呼びがなく、残余の呼びがある場合、上方階における上昇運転または下方運転に切換えように駆動装置を制御する。
(3)かごが上方階にあり、第4グループの呼び、第5グループの呼び、第6グループの未応答の呼び、および第3グループの応答中の呼びのうち、少なくとも1つの呼びがある場合、上方階における上昇運転および下方運転を切換えて、平均サービス完了時間が短くなるように応答順序を決定する。
(4)かごが上方階にあり、第4グループの呼び、第5グループの呼び、第6グループの未応答の呼び、および第3グループの応答中の呼びがなく、残余の呼びがある場合、下方階における上昇運転または下方運転に切換えるように駆動装置を制御する。
具体的には、制御部は、交通パターンを平常時、閑散時または混雑時と判断したときは、上昇方向のフェーズ(LU,HU)では、行先階呼びの停止階(出発階、行先階)に昇順で応答し、下降方向のフェーズ(LD,HD)では、行先階呼びの停止階に降順で応答する。各フェーズは、層内で応答する行先階呼びであって、順方向の層内に行先階のある行先階呼びの行先階と、順方向の層内に出発階がある行先階呼びの出発階に全て応答した時点で終了する。各フェーズが終了すると、未応答および応答中の行先階呼びの応答を完了するために、次のフェーズに移る。ここで、LTは基準階、LU、LD,HU,HDは、4つの異なるフェーズであって、それぞれ、下方階上昇運転、下方階下降運転、上方階上昇運転、上方階下降運転である。
行先階入力部5によって、呼びのサービス時間が確定しているので、原則として、呼びが入力された順序優先、いわゆる先着順優先ではなく、残りのサービス時間(以下、「サービス残余時間」ということがある)を優先して呼びに対する応答順序を決定する。サービス残余時間は、現在時刻から呼びに応答してサービスが完了するまでの時間である。各呼びのサービス残余時間を優先して応答順序を決定するために、かごの現在位置の層(以下、「自層」ということがある)と、自層ではないもう一方の層(以下、「他層」ということがある)とすると、呼びは、自層から自層、自層から他層、他層から自層、他層から他層の4つのグループに分類することができる。サービス残余時間を優先するために、4つのグループの順序は、順次、自層から自層、自層から他層、他層から他層、および他層から自層となる。前述のようにサービス残余時間を優先するための、4つのフェーズの遷移について、次の(1)〜(7)の規則が成り立つ。
(1)自層内に行先階がある乗客が、降車しないまま他層のフェーズに遷移することは無い。
(2)自層内に未応答の呼びが有る間は、他層のフェーズに遷移することは無い。
(3)前方に未応答の順方向の呼び、または乗客の降車階が有る間は、逆方向のフェーズに遷移することは無い。
(4)逆呼びに応答した場合、前方に未応答の順方向の呼び、または乗客の降車階が無ければ逆方向のフェーズに遷移する。
(5)未応答の逆方向の呼びがあり、前方に未応答の順方向の呼び、または乗客の降車階が無ければ逆方向のフェーズに遷移する。
(6)他層に行き先階がある呼びに応答した場合、自層に降車する乗客、または未応答の呼びが無い場合、他層に一方向の呼びだけがあれば、他層のその呼びの方向のフェーズに遷移し、両方向の呼びがあれば、自層から見た他層の方向のフェーズに遷移する。
(7)他層に未応答の呼びがあり、自層に降車する乗客や未応答の呼びが無い場合、他層に一方向の呼びだけがあれば、他層のその呼びの方向のフェーズに遷移し、両方向の呼びがあれば、自層から見た他層の方向のフェーズに遷移する。
またサービス残余時間を優先するために、フェーズ内における呼びの応答順序を決定するために、次の(1)〜(3)の規則が成り立つ。
(1)自層から自層の呼びがある場合、運転方向にかかわらず自層から自層の呼びに応答する。
(2)自層から他層の呼びがある場合、その出発階にかごが他の自層から自層の呼び自層から他層の呼びあるいは他層から自層の呼びで停止した(コインシデント・ストップ)時と、運転方向と逆方向の自層内の呼びに応答していない時に自層から他層の呼びに応答する。したがって、運転方向と逆方向の自層内の呼びに応答している時は、自層から他層の呼びの出発階を一旦通過して逆呼びに応答して反転したフェーズで自層から他層の出発階で停止する。
ここで乗車時のフェーズから遷移するフェーズが、他層内のフェーズになるようにして乗車時間の短縮を図る。逆呼びに応答した場合は、フェーズの終了後に自層内の逆方向のフェーズに遷移するので、自層から他層に応答すると自層から他層の乗車時間が長くなる。コインシデント・ストップの場合は、乗客輸送に必要なトータルの停止回数が減ることによる乗客全員にとってのメリットの方が一人の乗客の乗車時間の増加のデメリットに優るとして無条件で乗車させる。交通量が増加すると、コインシデント・ストップによる応答の確率が高くなり、他層への遷移の主因となる。
(3)自層内の滞留時間が所定時間を超えると、自層から他層に優先して応答して自層から他層の呼びに応答するまでの間、運転方向とは逆の自層内の呼びには応答しなくする。これによって、運転方向と逆方向の自層内の呼びに応答していない時に、自層から他層の呼びに応答して他層内のフェーズに遷移することができる。
次に、本実施の形態の制御部11の動作についてフローチャートを用いて説明する。図4A、図4B、図4C、図4Dおよび図4Eは、閑散時、平常時、混雑時の制御部11による応答順序決定処理を示すフローチャートである。この処理は、エレベータ1に電力が供給されている場合に、繰り返し実行される。図4A、図4B、図4C、図4Dおよび図4Eに示すフローチャートでは、理解を容易にするため、自層内の滞留時間が所定時間が超える場合の処理およびコインシデント・ストップの場合の処理を除いている。
ステップc1にて、行先階呼びが入力されたか否かを判断し、行先階呼びが入力された場合、ステップc2に移り、入力されていない場合、本フローを終了する。ステップc2では、記憶部4に記憶されるリストから、未応答の行先階呼びを読出しステップc3に移る。ステップc3では、読出した行先階呼びを、予め定める分割階、出発階、行先階および行先方向に基づいて6つの第1グループ〜第6グループに分割し、ステップc4に移る。ステップc4では、かご位置およびかごの行先方向を検出して、ステップc5に移る。ステップc5では、かご位置に基づいて、かごが下方階であるか否かを判断し、下方階である場合、ステップc6に移り、下方階でない場合、ステップc30に移る。
ステップc6では、かごは下方階にあるので、第1グループ、第2グループ、第3グループおよび第6グループの行先階呼びを読出し、ステップc7に移る。ステップc7では、かごが上昇中であるか否かを判断し、上昇中である場合、ステップc8に移り、上昇中でない場合、ステップc14に移る。ステップc8では、第2グループの呼びの有無を判断し、第2グループの呼びが有る場合、ステップc9に移り、無い場合、ステップc12に移る。
ステップc9では、第2グループの呼びが有るので、第1グループの出発階・行先階、第2グループの出発階、第6グループの行先階に昇順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc10に移る。ステップc10では、上方に、第1グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第1グループおよび第6グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc11に移り、有る場合、ステップc8に戻る。ステップc11では、呼びに応答するため反転する必要があるので、下方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc15に移る。
ステップc12では、第2グループの呼びが無いので、第1グループの出発階・行先階、第3グループの出発階、第6グループの行先階に昇順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc13に移る。ステップc13では、上方に、第1グループおよび第3グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第1グループおよび第6グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc21に移り、有る場合、ステップc8に戻る。
ステップc14では、かごが下降中であるか否かを判断し、下降中である場合、ステップc15に移り、下降中でない場合、停止中であるので、ステップc21に移る。ステップc15では、第1グループの呼びの有無を判断し、第1グループの呼びが有る場合、ステップc16に移り、無い場合、ステップc19に移る。
ステップc16では、第1グループの呼びが有るので、第1グループの出発階、第2グループの出発階・行先階、第6グループの行先階に降順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc17に移る。ステップc17では、下方に、第2グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第2グループおよび第6グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc18に移り、有る場合、ステップc15に戻る。ステップc18では、呼びに応答するため反転する必要があるので、下方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc8に移る。
ステップc19では、第1グループの呼びが無いので、第2グループの出発階・行先階、第3グループの出発階、第6グループの行先階に降順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc20に移る。ステップc20では、下方に、第2グループおよび第3グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第2グループおよび第6グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc21に移り、有る場合、ステップc15に戻る。
ステップc21では、第3グループの応答中の呼びの有無を判断し、応答中の呼びが無い場合、ステップc22に移り、有る場合、ステップc28に移る。ステップc22では、第1グループ、第2グループおよび第3グループの未応答の呼びの有無を判断し、未応答の呼びが有る場合、ステップc23に移り、未応答の呼びが無い場合、ステップc26に移る。ステップc23では、未応答の呼びが有るので、未応答の呼びに第2グループの呼びがあるか否かを判断し、第2グループの呼びがある場合、ステップc25に移り、第2グループの呼びがない場合、ステップc24に移る。ステップc24では、第1グループまたは第3グループの未応答の呼びがあるので、下方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc8に移る。ステップc25では、第2グループの未応答の呼びがあるので、下方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc15に移る。
ステップc26では、第1〜第3グループの未応答の呼びが無いので、第4グループの呼びの有無を判断し、第4グループの呼びが有る場合、ステップc28に移り、無い場合、ステップc27に移る。ステップc28では、第3グループの応答中の呼び、または第4グループの呼びがあるので、上方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc32に移る。
ステップc27では、第1〜第4グループの未応答の呼びが無いので、第5グループまたは第6グループの呼びの有無を判断し、呼びが有る場合、ステップc29に移り、無い場合、第1〜第6グループの呼びが無いので、本フローを終了する。ステップc29では、第5グループまたは第6グループの呼びがあるので、上方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc39に移る。
次に、かごが上方階にある場合の処理に関して説明する。ステップc30では、かごは上方階にあるので、第3グループ、第4グループ、第5グループおよび第6グループの行先階呼びを読出し、ステップc31に移る。ステップc31では、かごが上昇中であるか否かを判断し、上昇中である場合、ステップc32に移り、上昇中でない場合、ステップc38に移る。ステップc32では、第5グループの呼びの有無を判断し、第5グループの呼びが有る場合、ステップc33に移り、無い場合、ステップc36に移る。
ステップc33では、第5グループの呼びが有るので、第4グループの出発階・行先階、第5グループの出発階、第3グループの行先階に昇順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc34に移る。ステップc34では、上方に、第4グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第3グループおよび第4グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc35に移り、有る場合、ステップc32に戻る。ステップc35では、呼びに応答するため反転する必要があるので、上方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc39に移る。
ステップc36では、第5グループの呼びが無いので、第4グループの出発階・行先階、第6グループの出発階、第3グループの行先階に昇順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc37に移る。ステップc37では、上方に、第4グループおよび第6グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第3グループおよび第4グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc45に移り、有る場合、ステップc32に戻る。
ステップc38では、かごが下降中であるか否かを判断し、下降中である場合、ステップc39に移り、下降中でない場合、停止中であるので、ステップc45に移る。ステップc39では、第4グループの呼びの有無を判断し、第4グループの呼びが有る場合、ステップc40に移り、無い場合、ステップc43に移る。
ステップc40では、第4グループの呼びが有るので、第4グループの出発階、第5グループの出発階・行先階、第3グループの行先階に降順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc41に移る。ステップc41では、下方に、第5グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第3グループおよび第5グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc42に移り、有る場合、ステップc39に戻る。ステップc42では、呼びに応答するため反転する必要があるので、上方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc32に移る。
ステップc43では、第4グループの呼びが無いので、第5グループの出発階・行先階、第6グループの出発階、第3グループの行先階に降順に停止するように駆動信号を出力し、ステップc44に移る。ステップc44では、下方に、第5グループおよび第6グループの未応答の呼びの出発階、または応答中の第3グループおよび第5グループの呼びの行先階の有無を判断し、無い場合、ステップc45に移り、有る場合、ステップc39に戻る。
ステップc45では、第6グループの応答中の呼びの有無を判断し、応答中の呼びが有る場合、ステップc52に移り、無い場合、ステップc46に移る。ステップc46では、第4グループ、第5グループおよび第6グループの未応答の呼びの有無を判断し、未応答の呼びが有る場合、ステップc47に移り、未応答の呼びが無い場合、ステップc50に移る。ステップc47では、未応答の呼びが有るので、未応答の呼びに第4グループの呼びがあるか否かを判断し、第4グループの呼びがある場合、ステップc48に移り、第4グループの呼びがない場合、ステップc49に移る。ステップc48では、第4グループの未応答の呼びがあるので、上方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc32に移る。ステップc49では、第5グループまたは第6グループの未応答の呼びがあるので、上方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc39に移る。
ステップc50では、第4〜第6グループの未応答の呼びが無いので、第2グループの呼びの有無を判断し、第2グループの呼びが有る場合、ステップc52に移り、無い場合、ステップc51に移る。ステップc52では、第6グループの応答中の呼び、または第2グループの呼びがあるので、下方階下降運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc15に移る。
ステップc51では、第2、第4〜第6グループの未応答の呼びが無いので、第1グループまたは第3グループの呼びの有無を判断し、呼びが有る場合、ステップc53に移り、無い場合、第1〜第6グループの呼びが無いので、本フローを終了する。ステップc53では、第1グループまたは第3グループの呼びがあるので、下方階上昇運転を開始するように駆動信号を出力し、ステップc8に移る。
このように応答順序を決定することによって、次のような効果を得ることができる。表8に、混雑時の平均待ち時間、平均乗車時間および平均サービス完了時間の、各呼びごとの値を示す。表8では、自層を「X」で示し、他層を「Y」で示す。
表8中の各値について、具体的な演算方法に関して、順次説明する。先ず、呼びの種類が自層から自層(X→X)の場合の、平均待ち時間に関して説明する。かごが自層にあって、サービス時間RTT/4のフェーズをサービス中であり、X→Xの出発階に到着する時間は0からRTT/4まで等確率であるので、平均待ち時間は、RTT/8となる。次に、呼びの種類が自層から自層(X→X)の場合の、平均乗車時間に関して説明する。運転方向の呼びの平均乗車時間は、RTT/8であり、逆方向の呼びの平均乗車時間はRTT/4であり、これらを平均すると、平均乗車時間は3RTT/16となる。次に、呼びの種類が自層から自層(X→X)の場合の、平均サービス完了時間に関して説明する。平均サービス完了時間は、平均待ち時間と平均乗車時間との合計であるので、5RTT/16となる。
次に、呼びの種類が自層から他層(X→Y)の場合の、平均待ち時間に関して説明する。コインシデント・ストップ(他の呼びの停止階と一致して停止する)である場合、出発階に到着する時間は0からRTT/4まで等確率であるので、平均待ち時間は、RTT/8となる。コインシデント・ストップでない場合、逆呼びに応答していない場合は、RTT/8であり、逆呼びに応答している場合は、RTT/4であり、これらを平均すると3RTT/16となる。
次に、呼びの種類が自層から他層(X→Y)の場合の、平均乗車時間に関して説明する。コインシデント・ストップである場合、逆呼びに応答していない場合、RTT/4であり、逆呼びに応答している場合、RTT/4+RTT/8であるので、RTT/8+RTT/8+RTT/16を演算して、5RTT/16となる。コインシデント・ストップでない場合、RTT/4である。
次に、呼びの種類が自層から他層(X→Y)の場合の、平均サービス完了時間に関して説明する。コインシデント・ストップである場合、平均待ち時間と平均乗車時間との合計であるので、7RTT/16となる。コインシデント・ストップでない場合、平均待ち時間と平均乗車時間との合計であるので、7RTT/16となり、コインシデント・ストップである場合と同じになる。
次に、呼びの種類が他層から他層(Y→Y)の場合の、平均待ち時間に関して説明する。自層を出発するまでの平均待ち時間は、RTT/4であり、他層のフェーズ内で出発階に到着するまでの平均待ち時間は、RTT/8であるので、平均待ち時間は、これらの合計の3RTT/8となる。次に、呼びの種類が他層から他層(Y→Y)の場合の、平均乗車時間は、X→Xの場合と同様に、3RTT/16である。したがって呼びの種類が他層から他層(Y→Y)の場合の、平均サービス完了時間は、9RTT/16となる。
次に、呼びの種類が他層から層(Y→X)の場合の、平均待ち時間に関して説明する。自層を出発するまでの平均待ち時間は、RTT/4であり、他層のフェーズ内で出発階に到着するまでの平均待ち時間は、RTT/8であるので、平均待ち時間は、これらの合計の3RTT/8となる。次に、呼びの種類が他層から自層(Y→X)の場合の、平均乗車時間は、逆呼びに応答していない場合、RTT/4であり、逆呼びに応答している場合、RTT/4+RTT/8であるので、RTT/8+RTT/8+RTT/16を演算して、5RTT/16となる。したがって呼びの種類が他層から自層(Y→X)の場合の、平均サービス完了時間は、コインシデント・ストップである場合、3RTT/8+5RTT/16を演算して、11RTT/16となり、コインシデント・ストップでない場合、3RTT/16+RTT/4を演算して、7RTT/16となる。
次に、全体の平均待ち時間に関して説明する。4つのグループの呼びの発生確率が等しいとすれば、X→YおよびY→Xにコインシデント・ストップである場合、すなわち全階に停止する程交通量が多い場合、
RTT/32+RTT/32+3RTT/32+3RTT/32=RTT/4
となる。
全体の平均待ち時間は、コインシデント・ストップが無視できる場合、
RTT/32+3RTT/64+3RTT/32+3RTT/64=RTT/4
となる。
次に、全体の平均乗車時間に関して説明する。4つのグループの呼びの発生確率が等しいとすれば、X→YおよびY→Xにコインシデント・ストップである場合、すなわち全階に停止する程交通量が多い場合、
3RTT/64+5RTT/64+3RTT/64+5RTT/64=RTT/4
となる。
全体の平均乗車時間は、コインシデント・ストップが無視できる場合、
3RTT/64+2RTT/64+3RTT/64+2RTT/64
=10RTT/64
となる。
したがって全体の平均サービス完了時間は、コインシデント・ストップである場合は、RTT/2となり、コインシデント・ストップが無視できる場合は、7RTT/16となる。
表8に示すように、コインシデント・ストップが無視できない混雑時(2WH)でも、本実施の形態のように応答順序を決定することによって、コインシデント・ストップが無視できる平常時(BL)同様に平均待ち時間が短縮することができる。混雑時は、逆呼びに応答する確率が高く、各層での滞留時間はRTT/2に近付く。前述の表2で説明したように、セレコレの平均待ち時間はRTT/2であり、平均サービス完了時間は3RTT/4である。混雑時(2WH)のRTTはほぼ同等になると考えられるので、平均待ち時間が50%、平均サービス完了時間が33%短縮される。
次に、制御部が、交通パターンをアップピーク時と判断したときの、応答順序の決定処理に関して説明する。制御部は、アップピーク時は、LT(基準階)→LU(下方階上昇運転)→LD(下方階下降運転)→LT(基準階)→HU(上方階上昇運転)→HD(上方階下降運転)→LT(基準階)とフェーズが遷移するように制御する。アップピーク時は、第1グループ(L↑L)の行先階呼びのうち、出発階が基準階である行先階呼びは、他の第1グループの行先階呼びとは、別に取り扱われる。
(1)LUでは、第6グループ(H→L)の行先階呼びの行先階と、第1グループ(L↑L)の行先階呼びの内、出発階が基準階である行先階呼び(LT→L)の行先階と、L↑Lの出発階と行先階と、L↓LとL→Hとの出発階の昇順に停止する。
(2)LDでは、L↓Lの行先階と、L→LTの行先階とに降順に停止する。
(3)HUでは、L→HとLT→Hの行先階と、H↑Hの出発階および行先階と、H↓HおよびH→Lの出発階とに昇順に停止する。
(4)HDでは、H↓Hの出発階と行先階と、H→LおよびH→LTの出発階とに、降順に停止する。
このように制御部は、アップピーク時は応答順序を決定するので、前述の第1の実施の形態の応答順序では下層内の行先階呼びが無くなった時点で上層への行先階呼びに応答する様に応答順序を決定しているので、アップピーク時のように第1グループ(L(LT)↑L)の行先階呼びが常時存在する場合はLUとLDを交互に繰り返す可能性があるが、本実施の形態のようにアップピーク時は遷移先を固定することで、基準階の交通量が多い場合に効率よく応答することができる。
また前述のようにアップピーク時の応答順序の決定することによって、輸送能力を向上することができる。下層の平均一周時間をRTTL、上層の平均一周時間をRTTHとすると、下層を2〜6、上層を7〜10とすると表7に示すように、RTTL=107.7秒、RTTH=113.1秒であり、
RTT=RTTL+RTTH …(6)
となる。そして、RTTの間に基準階から2回出発するので、平均110.4秒に1回乗客を輸送できるから、基準階における輸送能力は約30%向上する。
また本実施の形態のアップピーク時では、1台のエレベータに関して説明したが、エレベータの台数が複数、たとえば2台の場合には、一方のエレベータが下層をサービスしている時に他方のかごが上層をサービスするように制御すれば、平均運転間間隔は概ねRTT/2となり、乗客の平均待ち時間は概ねRTT/4となる。このようにエレベータの台数が複数設けられる場合は、基準階の行先階入力部5の表示部に表示される表示情報として、利用者が認識しやすい位置、たとえば基準階の各かごの出入り口上部に「上層行き」「下層行き」と切り替えて表示することが好ましい。これによって利用者が、上層行きと下層行きとを間違えて、乗り間違うことを効果的に防ぐことができる。
次に、制御部が、交通パターンをダウンピーク時と判断したときの、応答順序の決定処理に関して説明する。制御部は、ダウンピーク時は、分割階を基準階への呼びの数が等しくなるように設定する。具体的には、制御部は、各階から基準階への呼びの数が偶数の時は呼びが同数となるように分割階を設定し、呼びの数が奇数の時は下層の階数を上層の階数よりも1多くなるように分割階を設定する。制御部は、ダウンピーク時は、HD(上方階下降運転)→HU(上方階上昇運転)→LT(基準階)→LD(下方階下降運転)→LU(下方階上昇運転)→LT(基準階)とフェーズが遷移するように制御する。ダウンピーク時は、第6グループ(H→L)の行先階呼びのうち、行先階が基準階である行先階呼び(H→LT)は、他の第6グループの行先階呼びとは、別に取り扱われる。また第2グループ(L↓L)の行先階呼びのうち、行先階が基準階である行先階呼び(L→LT)は、他の第2グループの行先階呼びとは、別に取り扱われる。
(1)HUでは、第4グループ(H↑H)の応答中の行先階呼びの行先階に、昇順に停止する。
(2)HDでは、第5グループ(H↓H)の行先階と出発階と、第4グループ(H↑H)の出発階と、H→LTの出発階とに、降順に停止する。
(3)LUでは、第1グループ(L↑L)の応答中の行先階呼びの行先階に、昇順に停止する。
(4)LDでは、第2グループ(L↓L)の行先階呼びの出発階と行先階と、第1グループ(L↑L)およびL→LTの出発階とに、降順に停止する。
このように制御部は、アップピーク時は応答順序を決定するので、RTTの間に基準階へ2回到着するする。したがってRTTの間に基準階に1回到着する場合に比べて、2倍の輸送能力になる。
また本実施の形態のダウンピーク時では、1台のエレベータに関して説明したが、エレベータの台数が、複数、たとえば2台の場合には、一方のエレベータが下層をサービスしている時に他方のかごが上層をサービスするように制御すれば、平均運転間間隔は概ねRTT/2となり、乗客の平均待ち時間は概ねRTT/4となる。
以上説明したように、本実施の形態のエレベータでは、制御部は、交通パターンに基いて、応答順序の決定方法を適宜変更する。これによって交通パターンに適した応答順序を決定することができ、平均待ち時間を短縮することができる。
また本実施の形態では、基準階は、最下階に設定されるが、このような最下階に限定されるものではなく、かごの交通パターンに合わせて設定される。
また本実施の形態では、エレベータが1台であるときの制御部の制御に関して説明したが、前述の第2の実施の形態のエレベータシステムのように、複数の階床間を就役する2機のエレベータ1を制御するエレベータ1の群制御装置の、2機の内の1機が故障時またはメンテナンス時などの場合に適用してもよい。これによって2機で輸送していた交通量を1機で輸送するために輸送能力を向上することができる。
また本実施の形態では、エレベータが1台であるときの制御部の制御に関して説明したが、エレベータが複数であり、複数のエレベータを制御する群制御装置から各エレベータに与えられる行先階呼びに関して、本実施の形態のように応答順序を決定してもよい。