JP4188128B2 - 筒状部材内周面焼入方法 - Google Patents

筒状部材内周面焼入方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状部材の内周面を高周波焼入れする筒状部材内周面焼入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の機械・装置に筒状の部材が使用されている。この場合、筒状部材の内周面の耐摩耗性等を向上させるためにこの内周面を硬化することがある。筒状部材の内周面を硬化する技術として浸炭焼入れが知られている。浸炭焼入れは、浸炭炉内で筒状部材の全体を所定の温度に加熱してその内周面に炭素を拡散させて急冷することにより内周面を硬化させる技術である。浸炭焼入れでは、筒状部材の全体を所定の温度に加熱して急冷するので筒状部材が変形し易い。また、浸炭焼入れでは、炭素を拡散させるので焼入れ作業の時間が長くなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した変形や作業時間の長さを解消するために、高周波焼入れを利用する技術が考えられる。高周波焼入れを利用して筒状部材の内周面を硬化させる場合、内周面に近接させて誘導加熱コイルを配置しておき、この誘導加熱コイルに高周波電流を通して内周面を短時間で焼入温度まで加熱して急冷する。従って、作業時間は短くなる。しかし、誘導加熱コイルに高周波電流を通すので大電力が必要となり、また、変形も生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、大電力を必要とせずに変形を抑えて筒状部材の内周面を硬化できる筒状部材内周面焼入方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の筒状部材内周面焼入方法は、筒状部材の内周面を焼入れする筒状部材内周面焼入方法において、
(1)筒状部材の内周面の所定部分のみを高周波焼入れすることを特徴とするものである。
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第2の筒状部材内周面焼入方法は、溝が形成された内周面を有する筒状部材の前記内周面を焼入れする筒状部材内周面焼入方法において、
(2)前記溝の所定部分のみを高周波焼入れすることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、
(3)前記所定部分のみを高周波焼入れするに当たり、前記所定部分に誘導加熱コイルを接近させておき、前記所定部分と前記誘導加熱コイルを相対的に移動させながら該所定部分を誘導加熱して冷却することにより高周波焼入れしてもよい。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の第3の筒状部材内周面焼入方法は、螺旋状に延びる溝が形成された内周面を有する筒状部材の前記内周面を焼入れする筒状部材内周面焼入方法において、
(4)前記螺旋状の溝の所定部分のみを高周波焼入れすることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、
(5)前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝の一部に近接して配置しておき、前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れしてもよい。
【0010】
ここでまた、
(6)前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝のうち、前記筒状部材を立てた状態のときに下方に位置する部分に近接して配置しておき、
(7)立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に下降させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れしてもよい。
【0011】
ここでまた、
(8)前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝のうち、前記筒状部材を立てた状態のときに上方に位置する部分に近接して配置しておき、
(9)立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れしてもよい。
【0012】
ここでまた、
(10)前記螺旋状の溝の底の延べ距離を求め、この距離と前記所定長さの部分の位置とに基づいて、前記筒状部材をその周方向に1回転させたときに該筒状部材を下降させる距離を予め演算し、
(11)この演算の結果に基づいて前記誘導加熱コイルに誘導電流を通すタイミングを決めておき、
(12)前記所定長さの部分のみを誘導加熱して冷却してもよい。
【0013】
ここでまた、
(13)前記誘導加熱コイルと前記筒状部材との距離を測定するギャップセンサを前記誘導加熱コイルに取り付けておき、
(14)このギャップセンサが測定した距離が一定になるように前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させてもよい。
【0014】
ここでまた、
(15)前記誘導加熱コイルで前記所定部分を誘導加熱するに先立って、前記ギャップセンサを前記溝に沿って移動させて該溝の形状を所定のメモリに記憶させておき、
(16)この記憶した内容に基づいて前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させてもよい。
【0015】
ここでまた、
(17)前記筒状部材は、その外周面と前記螺旋状の溝とをつなぐ孔が形成されたものであり、
【0016】
前記溝の所定部分のみを高周波焼入れする際には、前記溝のうち前記孔の近傍部分を高周波焼入れしなくてもよい。
【0017】
なお、上記した溝としては、その横断面が半円、半楕円、正方形、長方形などの溝が挙げられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1を参照して、本発明の筒状部材内周面焼入方法の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は、筒状部材の内周面を焼入れする方法を示す模式図であり、円筒状部材の一部は切断されている。
【0021】
筒状部材の内周面を高周波焼入れするための焼入装置10は、円筒状部材20(本発明にいう筒状部材の一例である)が載置される円筒形の載置台12と、この載置台12を円筒状部材20の周方向(矢印A方向)に回転させる回転サーボモータ14を備えている。回転サーボモータ14は鉛直方向に延びる回転軸14aを有しており、この回転軸14aに載置台12が固定されている。回転サーボモータ14は、全体形状がL字状のワークサドル(ベース台)16に固定されている。このワークサドル16は、上昇・下降サーボモータ(図示せず)によって鉛直方向(矢印B方向)に上昇・下降する。回転サーボモータ14を駆動させて載置台12を回転させると共にワークサドル16を上下動させることにより、円筒状部材20をその周方向に回転させながら鉛直方向に上下動させられる。
【0022】
載置台12には、円筒状部材20が立てられた状態で載置されている。この円筒状部材20の内周面22には螺旋状の溝24が形成されている。焼入装置10には、この溝24を誘導加熱して急冷する誘導加熱装置30が備えられている。誘導加熱装置30は、溝24を誘導加熱する誘導加熱コイル40や、この誘導加熱コイル40に高周波電流を通すための高周波電源32などから構成されている。誘導加熱コイル40については後述する。
【0023】
上記した焼入装置10では、上述したように、回転サーボモータ14を駆動させて載置台12を回転させると共にワークサドル16を上下動させることにより、円筒状部材20をその周方向に回転させながら鉛直方向に上下動させられる。従って、誘導加熱コイル40に適宜のタイミングで高周波電流を通すことにより、円筒状部材20の内周面22の所定部分のみを誘導加熱できる。この結果、この内周面22の所定部分のみを高周波焼入れできることとなる。
【0024】
図2を参照して、筒状部材の一例を説明する。
【0025】
図2は、被加熱材となる円筒状部材を示す一部断面図である。
【0026】
円筒状部材20には、内径が約250mmの中空部26が形成されている。この中空部26は内周面22に取り囲まれている。この内周面22に螺旋状の溝24が形成されている。溝24は、円筒状部材20の上端部から下端部まで螺旋状に延びており、その横断面は半円状である。また、溝24の深さは約15mmである。また、円筒状部材20の肉厚tは約60mmである。
【0027】
図3と図4を参照して、誘導加熱コイル40について説明する。
【0028】
図3は、誘導加熱コイルを示す斜視図である。図4は、溝に接近した誘導加熱コイルを示す模式図である。
【0029】
誘導加熱コイル40のうち溝24に近接する近接部分40aは、螺旋状の溝24の傾斜角度Θに倣って傾斜した弓形のものである。近接部分40aの外周面は、溝24の壁面に倣って湾曲している。近接部分40aの長手方向両端部のうち、図3における左側部分が右側部分よりもやや下がるように傾斜している。この傾斜角度がΘである。また、近接部分40aの長さは、円筒状部材20の内周長の約1割程度の長さである。従って、近接部分40aの長さは、螺旋状の溝24よりも非常に短い。近接部分40aの長手方向両端部からは接続部42,44が上方に延びており、これら接続部42,44は高周波電源30(図1参照)に接続されている。なお、接続部42と接続部44の間には絶縁物46が固定されている。
【0030】
近接部分40aのうち、図3における左側部分(下がっている部分)には、冷却液を噴射する冷却ジャケット47が近接して固定されている。冷却ジャケット47には、冷却液が噴射される多数の噴射孔47aが形成されている。螺旋状の溝24のうち誘導加熱コイル40によって焼入温度に誘導加熱された部分に噴射孔47aから冷却液が噴射されて、この部分が焼入れされる。なお、冷却ジャケット47には、この冷却ジャケット47に冷却液を供給する冷却液配管(図示せず)が接続されている。
【0031】
誘導加熱コイル40には、誘導加熱コイル40と溝24を構成する壁との距離を測定するギャップセンサ49が取り付けられている。このギャップセンサ49は耐熱性のものである。ギャップセンサ49で測定した距離が一定になるように誘導加熱コイル40と円筒状部材20とを保ちながら円筒状部材20をその周方向(矢印A方向)に回転させると共に上昇若しくは下降させる。この結果、誘導加熱コイル40と円筒状部材20との距離が一定に保たれるので、一様な深さの焼入層が得られる。
【0032】
上記した焼入装置10を用いて螺旋状の溝24の所定部分のみを焼入れする方法を、図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、筒状部材内周面焼入方法の一例を示すグラフである。このグラフの縦軸は、円筒状部材20の高さ方向を表し、横軸は、高周波焼入れの経過時間を表す。上記した溝24の所定部分とは、螺旋状に延びる溝24のうち所定長さの部分をいう。この所定部分は複数箇所存在する。また、ここでは、誘導加熱コイル40を固定した状態で円筒状部材20を回転及び上下動させて、溝24の所定部分を高周波焼入れする。
【0034】
円筒状部材20を、図1に示すように、載置台12に立てて置き、誘導加熱コイル40(図3参照)の近接部分40aを螺旋状の溝24のうちの上部(円筒状部材20の高さ方向上端部)に近接して配置して、誘導加熱コイル40と溝24との距離をギャップセンサ49(図4参照)で調整する。この調整位置は、図5の「原位置」で示される。この「原位置」で誘導加熱コイル40の近接部分40aを溝24に近接させて配置した状態を保ちながら、回転サーボモータ14を駆動させて載置台12を回転させると共にワークサドル16(図1参照)を上昇させることにより、円筒状部材20をその周方向に回転させながら鉛直方向に上昇させる(誘導加熱コイル40は溝24に沿って下降する)。このようにして円筒状部材20を上昇させることにより誘導加熱コイル40を溝24に沿って溝24の下部まで下降させながら溝24の底の延べ距離を演算器(図示せず)によって求める。また、この延べ距離と上記の所定部分の位置とに基づいて、円筒状部材20をその周方向に1回転させたときに円筒状部材20を下降させる距離を予め演算し、この演算の結果に基づいて誘導加熱コイル40に誘導電流を通すタイミングを決める。
【0035】
上記のようにして誘導加熱コイル40を螺旋状の溝24のうちの下部(円筒状部材20の高さ方向下端部)に位置させる。この状態から高周波焼入れを開始する。
【0036】
先ず、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま誘導加熱コイル40によって時間t1だけ誘導加熱して、溝24のうち近接部分40aに向き合う部分を焼入温度にする。続いて、このように焼入温度に誘導加熱された部分に冷却ジャケット47から冷却液を噴射してこの部分を急冷しながら、円筒状部材20を回転及び下降させ始める。これにより、近接部分40aが溝24に沿って上昇しながら近接部分40aに向き合う部分を焼入温度に誘導加熱すると共に、焼入温度に加熱された部分が、冷却ジャケット47から噴射された冷却液によって急冷される。従って、この焼入温度に加熱された部分は硬化する。
【0037】
上記のようにして円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却し続けることにより、溝24の全てを硬化できる。しかし、ここでは、溝24のうち所定部分のみを硬化する。このために、時間t1が終了後に、時間t2だけ円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却する。これにより、溝24の複数箇所の所定部分のうちの1箇所だけを先ず硬化する。
【0038】
この1箇所を硬化した後、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま、且つ、誘導加熱コイル40に高周波電流を通さずに(即ち、溝24を加熱せずに)冷却ジャケット47から冷却液を時間t3だけ噴射する。このようにして上記の1箇所を室温にまで冷却する。
【0039】
続いて、円筒状部材20を時間t4だけ回転及び下降させる。このときは、誘導加熱コイル40に高周波電流を通さずに、且つ、冷却ジャケット47から冷却液を噴射しない。従って、誘導加熱コイル40は溝24に沿って上昇するだけである。溝24のうち時間t4に相当する部分は、硬化させない部分(未硬化部)である。
【0040】
時間t4が終了した(経過した)直後、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま誘導加熱コイル40によって時間t5だけ誘導加熱して、溝24のうち近接部分40aに向き合う部分を焼入温度にする。続いて、このように焼入温度に誘導加熱された部分に冷却ジャケット47から冷却液を噴射してこの部分を急冷しながら、円筒状部材20を回転及び下降させ始める。これにより、誘導加熱コイル40が溝24に沿って上昇しながら近接部分40aに向き合う部分を焼入温度に誘導加熱すると共に、焼入温度に加熱された部分が、冷却ジャケット47から噴射された冷却液によって急冷される。従って、この焼入温度に加熱された部分は硬化する。
【0041】
上記のようにして円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却し続けることにより、溝24の残りの部分の全てを硬化できる。しかし、ここでは、溝24のうち第2の所定部分のみを硬化する。このために、時間t5が終了後に、時間t6だけ円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却する。これにより、溝24の複数箇所の所定部分のうちの第2の箇所だけを硬化する。
【0042】
この第2の箇所を硬化した後、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま、且つ、誘導加熱コイル40に高周波電流を通さずに(即ち、溝24を加熱せずに)冷却ジャケット47から冷却液を時間t7だけ噴射する。このようにして上記の第2の箇所を室温にまで冷却する。
【0043】
続いて、円筒状部材20を時間t8だけ回転及び下降させる。このときは、誘導加熱コイル40に高周波電流を通さずに、且つ、冷却ジャケット47から冷却液を噴射しない。従って、誘導加熱コイル40は溝24に沿って上昇するだけである。溝24のうち時間t8に相当する部分は、硬化させない部分(未硬化部)である。
【0044】
時間t8が終了した直後、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま誘導加熱コイル40によって時間t9だけ誘導加熱して、溝24のうち近接部分40aに向き合う部分を焼入温度にする。続いて、このように焼入温度に誘導加熱された部分に冷却ジャケット47から冷却液を噴射してこの部分を急冷しながら、円筒状部材20を回転及び下降させ始める。これにより、誘導加熱コイル40が溝24に沿って上昇しながら近接部分40aに向き合う部分を焼入温度に誘導加熱すると共に、焼入温度に加熱された部分が、冷却ジャケット47から噴射された冷却液によって急冷される。従って、この焼入温度に加熱された部分は硬化する。
【0045】
上記のようにして円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却し続けることにより、溝24の残りの部分の全てを硬化できる。しかし、ここでは、溝24のうち第3の所定部分のみを硬化する。このために、時間t9が終了後に、時間t10だけ円筒状部材20を回転及び下降させながら誘導加熱コイル40で誘導加熱して冷却ジャケット47で冷却する。これにより、溝24の複数箇所の所定部分のうちの第3の箇所だけを硬化する。
【0046】
この第3の箇所を硬化した後、円筒状部材20を回転及び上下動させずに固定したまま、且つ、誘導加熱コイル40に高周波電流を通さずに(即ち、溝24を加熱せずに)冷却ジャケット47から冷却液を時間t11だけ噴射する。このようにして上記の第3の箇所を室温にまで冷却する。
【0047】
上記のように円筒状部材20の回転及び下降と、誘導加熱コイル40への通電を予め定めたタイミングで繰り返して実行させることにより、溝24のうち複数の所定部分のみを硬化できる。また、時間tの長さを適宜に変更することにより、所定部分(硬化部分)及び未硬化部分の長さを変更できる。上述したように必要部分だけを加熱して急冷するので、大電力を必要とせずに変形を抑えることができる。
【0048】
上記した焼入方法では、誘導加熱コイル40を円筒状部材20の下部から上部に向けて移動させたが、この逆に、誘導加熱コイル40を円筒状部材20の上部から下部に向けて移動させながら(即ち、円筒状部材20を上昇させながら)所定部分のみを焼入れしてもよい。
【0049】
また、誘導加熱コイル40で所定部分を誘導加熱するに先立って、ギャップセンサ49を溝24に沿って移動させてこの溝24の形状を所定のメモリに記憶させておき、この記憶した内容に基づいて誘導加熱コイル40と円筒状部材20を保ちながら円筒状部材20をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させてもよい。
【0050】
図6を参照して、上記のようにして硬化した硬化層を説明する。
【0051】
図6は、上記した焼入方法を用いて、円筒状部材の内周面に形成された溝を高周波焼入れしたときの硬化層を模式的に示す断面図である。
【0052】
上記したように誘導加熱コイル40の近接部分40aを溝24に近接させながら、溝24の所定長さの部分のみを誘導加熱して急冷した。この結果、溝24の所定長さの部分のみに焼入層24aが形成される。円筒状部材20の肉厚tは焼入層24aの深さに比べて非常に厚い。円筒状部材20のうち焼入層24aを除く大部分は加熱されない。従って、焼入層24aを形成することに起因して歪みが生じようとしても、この歪みは、歪まない部分によって抑制されるので、円筒状部材20の全体は歪まずに変形しない。
【0053】
また、溝24の底と円筒状部材20の外周面とをつなぐ孔24bが複数形成されている。溝24のうち孔24bが形成されている部分は加熱され易いので割れ易い。そこで、溝24のうち孔24bの近傍部分を高周波焼入れしないことにより、割れの無い高周波焼入れを実現できる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の本発明の第1の筒状部材内周面焼入方法によれば、内周面の所定部分のみを高周波焼入れするので、内周面の全面を焼入れする場合に比べて消費電力が少なくて済み、省電力で焼入れできる。また、内周面のうち加熱され易い部分(例えば凸部)を避けて高周波焼入れすることにより、割れの無い高周波焼入れをできる。
【0055】
また、本発明の第2の筒状部材内周面焼入方法によれば、溝の所定部分のみを高周波焼入れするので、内周面の全面を焼入れする場合に比べて消費電力が少なくて済み、省電力で焼入れできる。また、溝のうち加熱され易い部分を避けて高周波焼入れすることにより、割れの無い高周波焼入れをできる。
【0056】
ここで、前記所定部分のみを高周波焼入れするに当たり、前記所定部分に誘導加熱コイルを接近させておき、前記所定部分と前記誘導加熱コイルを相対的に移動させながら該所定部分を誘導加熱して冷却することにより高周波焼入れする場合は、所定部分が複数箇所に存在していてもこれら複数箇所の所定部分を容易に高周波焼入れできる。
【0057】
また、本発明の第3の筒状部材内周面焼入方法によれば、螺旋状の溝の所定部分のみを高周波焼入れするので、内周面の全面を焼入れする場合に比べて消費電力が少なくて済み、省電力で焼入れできる。また、溝のうち加熱され易い部分を避けて高周波焼入れすることにより、割れの無い高周波焼入れを実現できる。
【0058】
ここで、前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝の一部に近接して配置しておき、前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れする場合は、いっそう容易に高周波焼入れできる。
【0059】
さらに、前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝のうち、前記筒状部材を立てた状態のときに下方に位置する部分に近接して配置しておき、立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に下降させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れする場合は、いっそう容易に高周波焼入れできる。
【0060】
さらにまた、前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝のうち、前記筒状部材を立てた状態のときに上方に位置する部分に近接して配置しておき、立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇させながら、前記溝の所定部分のみを誘導加熱して冷却することによりこの部分のみを高周波焼入れする場合は、いっそう容易に高周波焼入れできる。
【0061】
さらにまた、前記螺旋状の溝の底の延べ距離を求め、この距離と前記所定長さの部分の位置とに基づいて、前記筒状部材をその周方向に1回転させたときに該筒状部材を下降させる距離を予め演算し、この演算の結果に基づいて前記誘導加熱コイルに誘導電流を通すタイミングを決めておき、前記所定長さの部分のみを誘導加熱して冷却する場合は、所定部分のみをいっそう確実に焼入れられる。
【0062】
さらにまた、前記誘導加熱コイルと前記筒状部材との距離を測定するギャップセンサを前記誘導加熱コイルに取り付けておき、このギャップセンサが測定した距離が一定になるように前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させる場合は、誘導加熱コイルと筒状部材との距離が一定に保たれるので、一様な深さの焼入層が得られる。
【0063】
さらにまた、前記誘導加熱コイルで前記所定部分を誘導加熱するに先立って、前記ギャップセンサを前記溝に沿って移動させて該溝の形状を所定のメモリに記憶させておき、この記憶した内容に基づいて前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させる場合は、所定部分のみをさらにいっそう確実に焼入れできる。
【0064】
さらにまた、前記筒状部材は、その外周面と前記螺旋状の溝とをつなぐ孔が形成されたものであり、前記溝の所定部分のみを高周波焼入れする際には、前記溝のうち前記孔の近傍部分を高周波焼入れしない場合は、溝のうち孔が形成されている部分は加熱され易いので割れ易いが、溝のうち孔の近傍部分を高周波焼入れしないので、割れの無い高周波焼入れを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】筒状部材の内周面を焼入れする方法を示す模式図である。
【図2】被加熱材となる円筒状部材を示す一部断面図である。
【図3】誘導加熱コイルを示す斜視図である。
【図4】溝に接近した誘導加熱コイルを示す模式図である。
【図5】筒状部材内周面焼入方法の一例を示すグラフである。
【図6】上記した焼入方法を用いて、円筒状部材の内周面に形成された溝を高周波焼入れしたときの硬化層を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10 焼入装置
12 載置台
14 回転サーボモータ
16 ワークサドル
20 円筒状部材
22 内周面
24 溝
30 誘導加熱装置
40 誘導加熱コイル
49 ギャップセンサ

Claims (7)

  1. 螺旋状に延びる溝が形成された内周面を有する筒状部材の前記内周面を焼入れする筒状部材内周面焼入方法において、
    前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを前記螺旋状の溝の一部に近接して配置しておき、前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させながら、前記溝のうちその長さ方向に予め定めた長さをもつ複数箇所の硬化部分のみを誘導加熱して冷却することにより該硬化部分のみを高周波焼入れすることを特徴とする筒状部材内周面焼入方法。
  2. 前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを、前記螺旋状の溝のうち前記筒状部材を立てた状態のときに下方に位置する部分に近接して配置しておき、立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に下降させながら、前記硬化部分のみを誘導加熱して冷却することにより該硬化部分のみを高周波焼入れすることを特徴とする請求項1に記載の筒状部材内周面焼入方法。
  3. 前記螺旋状の溝の傾斜角度に倣って傾斜した、該溝よりも短い誘導加熱コイルを、前記螺旋状の溝のうち前記筒状部材を立てた状態のときに上方に位置する部分に近接して配置しておき、立てた状態の前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇させながら、前記硬化部分のみを誘導加熱して冷却することにより該硬化部分のみを高周波焼入れすることを特徴とする請求項1に記載の筒状部材内周面焼入方法。
  4. 前記螺旋状の溝の底の延べ距離を求め、この距離と前記硬化部分の位置とに基づいて、前記筒状部材をその周方向に1回転させたときに該筒状部材を下降させる距離を予め演算し、この演算の結果に基づいて前記誘導加熱コイルに誘導電流を通すタイミングを決めておき、前記硬化部分のみを誘導加熱して冷却することを特徴とする請求項2又は3に記載の筒状部材内周面焼入方法。
  5. 前記誘導加熱コイルと前記筒状部材との距離を測定するギャップセンサを前記誘導加熱コイルに取り付けておき、このギャップセンサが測定した距離が一定になるように前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させることを特徴とする請求項1,2,3,又は4に記載の筒状部材内周面焼入方法。
  6. 前記誘導加熱コイルで前記硬化部分を誘導加熱するに先立って、前記ギャップセンサを前記溝に沿って移動させて該溝の形状をメモリに記憶させておき、この記憶した内容に基づいて前記誘導加熱コイルと前記筒状部材を保ちながら前記筒状部材をその周方向に回転させると共に上昇若しくは下降させることを特徴とする請求項5に記載の筒状部材内周面焼入方法。
  7. 前記筒状部材は、その外周面と前記螺旋状の溝とをつなぐ孔が形成されたものであり、
    前記硬化部分のみを高周波焼入れする際には、前記溝のうち前記孔の近傍部分を高周波焼入れしないことを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載の筒状部材内周面焼入方法。
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