JP4187849B2 - 円板形工具の制御方法および工具ドレス機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸回りで回転駆動されるドレッサーといった円板形工具をワークに接触させて所定形状にワークを成形する工作機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばグラインダーの砥石車を所定形状に修復する工具ドレス機は広く知られている。こうした工具ドレス機は、回転する砥石車の外周面に接触するドレッサーを備える。ドレッサーのシャンクに埋め込まれたダイヤモンドが回転中の砥石車の外周面に接触すると、その外周面に露出する砥粒の目立てが実現される。
【0003】
一般に、ドレッサーでは、砥石車の外周形状に従ってダイヤモンドが配列される。したがって、砥石車の厚みや外周形状に応じてダイヤモンドの配列は変更されなければならない。その結果、砥石車ごとに専用のドレッサーが用意されなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、円板形シャンクの外周で環状にダイヤモンドといった切削材料を保持するドレッサーを提案する。こうしたドレッサーでは、中心軸回りで円板形シャンクを回転させると切削材料が単一の円軌道上を高速で移動することができる。したがって、中心軸回りで円軌道上を移動する切削材料を砥石車に接触させれば、切削材料によって砥石車は研削されることができる。砥石車の外周面に対してドレッサーの直立姿勢を維持し、砥石車の経線に沿ってドレッサーを移動させれば、移動するドレッサーによって砥石車の外周形状は所定形状に成形されることができる。砥石車の外周形状に応じてドレッサーの移動経路を設定すれば、様々な厚みや外周形状の砥石車を成形することが可能となる。したがって、砥石車の厚みや外周形状の違いに拘わらず単一のドレッサーを用いることが可能となる。しかしながら、これまでのところ、こうした汎用性の高いドレッサーは提案されていない。
【0005】
しかも、こうした円板形のドレッサーを用いて所定形状に砥石車を修復するにあたっては、砥石車の経線に対してドレッサーの法線を直交させることが望まれる。したがって、砥石車の外周面が傾斜したり曲面を描いたりしていると、そういった傾斜や曲面に応じてドレッサーの姿勢を変化させなければならない。こうしてドレッサーの姿勢が変化すると、この姿勢変化に応じてドレッサーを位置決めし直さなければならない。しかしながら、これまでのところ、こうしたドレッサーを始めとする円板形工具の姿勢を変化させながらワークの加工位置に円板形工具を位置決めすることのできる制御方法は確立されていない。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、様々な厚みや外周形状の砥石車を修復することができる汎用性の高い工具ドレス機を提供することを目的とする。また、本発明は、こうした工具ドレス機を提供するにあたって、ドレッサーといった円板形工具の姿勢を変化させつつもワークの加工位置に対して簡単に円板形工具を位置決めすることができる円板形工具の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、支持部材に対して姿勢変化可能に支持される円板形工具の回転軸を含む1平面上で円板形工具の法線の姿勢を特定する工具姿勢データを取得する工程と、前記法線上で円板形工具のワーク接触点の位置を特定する加工位置データを取得する工程と、取得した工具姿勢データおよび加工位置データを用いて、逆運動学方程式に基づき前記1平面に沿った前記支持部材の直交2軸方向変位を算出する工程とを備えることを特徴とする円板形工具の制御方法が提供される。
【0008】
かかる制御方法によれば、円板形工具の姿勢を変化させつつワークに対して円板形工具を位置決めするにあたって、ロボット工学に基づく逆運動学方程式を用いることによって円板形工具とワークとの接触点すなわちワークの加工位置に基づき支持部材の直交2軸方向変位を簡単に算出することができる。
【0009】
こうして円板形工具の姿勢が特定されれば、円板形工具を用いる工作機では、取得された工具姿勢データに基づき前記支持部材に対して前記円板形工具の姿勢を変化させ、ワークに対する円板形工具の姿勢を正確に決定することができる。しかも、こうして支持部材の直交2軸方向変位が特定されれば、工作機では、算出された前記直交2軸方向変位に基づき前記支持部材を前記1平面に沿って移動させ、ワークに対して円板形工具を正確に位置決めすることができる。
【0010】
こうした円板形工具の制御方法は、前記支持部材に対する前記法線の姿勢の変化具合を検出する工程と、前記1平面に沿って移動する前記支持部材の直交2軸方向変位を検出する工程と、検出された変化具合および直交2軸方向変位を用いて、運動学方程式に基づき前記ワーク接触点の位置を算出する工程とをさらに備えてもよい。かかる制御方法によれば、ワークに対して円板形工具の姿勢を変化させたり直交2軸方向に支持部材を変位させたりした際に、ロボット工学に基づく運動学方程式を用いることによって円板形工具とワークとの接触点すなわち加工位置を簡単に特定することができる。
【0011】
こうしてワーク接触点すなわち加工位置が特定されれば、算出された前記ワーク接触点の位置は表示器に表示されてもよい。その結果、工作機の作業者はワークの加工位置を確認しながらワークを加工することができる。
【0012】
このように逆運動学方程式を用いて支持部材の直交2軸方向変位を算出するにあたって、円板形工具の制御方法は、支軸回りで姿勢変化可能に支持される円板形工具の回転軸を含むyz平面上で円板形工具の回転軸の姿勢変化角度θ4 を特定する工具姿勢データを取得する工程と、yz平面上で、円板形工具のワーク接触点を通過して円板形工具の回転軸に平行な仮想線に対して支軸からの距離d5 を示す回転半径データを取得する工程と、yz平面内でワーク接触点のz座標値pz およびy座標値py を特定する加工位置データを取得する工程と、取得した工具姿勢データ、回転半径データおよび加工位置データを用いて、yz平面に沿った前記支軸のz軸方向変位d1 およびy軸方向変位d3 を算出する工程とを備えればよい。
【0013】
このとき、前記z軸方向変位d1 は、
【数7】
に基づき算出されればよく、前記y軸方向変位d3 は、
【数8】
に基づき算出されればよい。円板形工具の半径距離に前記距離d5 を一致させれば、簡単に前記距離d5 を特定することが可能となる。
【0014】
以上のような円板形工具の制御方法は、前記yz平面上で、前記支軸を通過して前記仮想線に直交する第1法線と、前記yz平面上で、前記ワーク接触点を通過して前記仮想線に直交する第2法線との回転軸方向距離a5 を示す偏心距離データを取得する工程をさらに備えることができる。こうした偏心距離データを特定すれば、yz平面上で円板形工具の法線上に支軸が配置される際に円板形工具の制御方法が用いられることができるだけでなく、yz平面上で円板形工具の法線に対して支軸が偏倚される際にも円板形工具の制御方法を用いることができることとなる。
【0015】
このとき、前記z軸方向変位d1 は、
【数9】
に基づき算出されればよく、前記y軸方向変位d3 は、
【数10】
に基づき算出されればよい。
【0016】
こうして円板形工具の姿勢が特定されれば、円板形工具を用いる工作機では、取得された工具姿勢データに基づき、前記回転角θ4 で前記支軸回りに前記円板形工具の回転軸を回転させ、ワークに対する円板形工具の姿勢を正確に決定することができる。しかも、工作機では、算出された前記z軸方向変位d1 に基づき、前記支軸をz軸方向に正確に移動させることができ、算出された前記y軸方向変位d3 に基づき、前記支軸をy軸方向に正確に移動させることができる。その結果、ワークに対して円板形工具を正確に位置決めすることが可能となる。
【0017】
前述のように運動学方程式を用いてワーク接触点の位置すなわち加工位置を特定するにあたって、円板形工具の制御方法は、前記支軸回りで回転する前記円板形工具の回転軸に対して回転角θ4 を検出する工程と、前記z軸方向に移動する前記支軸に対してx軸方向変位d1 を検出する工程と、前記y軸方向に移動する前記支軸に対してy軸方向変位d3 を検出する工程と、検出された回転角θ4 およびz軸方向変位d1 並びにy軸方向変位d3 に基づいて前記ワーク接触点のz座標値pz およびy座標値py を算出する工程とを備えればよい。
【0018】
このとき、前記z座標値pz は、
【数11】
に基づき算出されることができ、前記y座標値py は、
【数12】
に基づき算出されることができる。前記回転軸方向距離a5 がゼロであれば、yz平面上で円板形工具の法線上に支軸が配置される際に、円板形工具の姿勢変化や支持部材の変位に応じて円板形工具のワーク接触点すなわちワークの加工位置を簡単に特定することができる。
【0019】
さらにまた、第2発明によれば、円板形シャンクの外周で環状に切削材料を保持するドレッサーと、回転軸回りでドレッサーを回転させるスピンドルと、支軸回りで回転自在にスピンドルを支持する支持部材と、支軸が直交する1平面に設定される直交2軸座標系に従って支持部材を変位させる変位機構とを備えることを特徴とする工具ドレス機が提供される。第1発明に係る円板形工具の制御方法を用いれば、こうした工具ドレス機を簡単に実現することができる。こうした工具ドレス機によれば、砥石車の外周面に対してドレッサーの直立姿勢を維持しつつ、砥石車の経線に沿ってドレッサーを移動させることができる。したがって、砥石車の厚みや外周形状の違いに拘わらず単一のドレッサーを用いることが可能となる。汎用性の高いドレッサーが実現されるのである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1は、グラインダー10に設置されて、本発明に係る円板形工具の制御方法が適用される工具ドレス機11を示す。グラインダー10は、駆動モータ12の働きによって回転軸13すなわちz軸回りで砥石車14を回転させる。回転する砥石車14の外周がワークに接触すると、ワークの表面が削り取られ、研磨や研削が実現される。
【0022】
工具ドレス機11は、円板形シャンク16の外周で環状にダイヤモンドといった切削材料17を保持するドレッサー18を備える。ドレッサー18は、スピンドル19の回転軸20先端に固定される。回転軸20回りで円板形シャンク16が回転すると、切削材料17は単一の円軌道上を高速で移動することができる。この工具ドレス機11では、回転軸20回りで円軌道上を移動する切削材料17がグラインダー10の砥石車14に接触すると、切削材料17によって砥石車14は研削される。
【0023】
スピンドル19は支持部材22に支持される。この支持部材22は、垂直方向すなわちy軸方向に延びる第1案内部材23に沿って移動することができる。この移動は、例えばボールねじ機構で構成されるy軸方向変位機構(図示せず)の働きによって達成される。第1案内部材23は、水平方向すなわちz軸方向に延びる第2案内部材24に沿って移動することができる。この移動は、同様に、例えばボールねじ機構で構成されるz軸方向変位機構(図示せず)の働きによって達成される。こうしてボールねじ機構が用いられる場合には、ボールねじを駆動するサーボモータの回転数によってz軸方向変位d1 やy軸方向変位d3 が決定される。z軸方向変位d1 やy軸方向変位d3 を引き起こすサーボモータの回転数はエンコーダによって検出されることができる。z軸方向変位機構およびy軸方向変位機構の組み合わせによって、支持部材22は、直交2軸座標系すなわちyz座標平面に従って変位することができる。ただし、z軸方向変位機構やy軸方向変位機構は周知のように例えばリニアモータ機構で構成されてもよい。
【0024】
図2に示されるように、支持部材22とスピンドル19との間には、yz座標平面に直交する支軸25回りの相対回転が許容される。その結果、スピンドル19の回転軸20は、図1に示されるように、回転軸20の軸心とドレッサー18の法線との交点を中心に回転し、yz座標平面内でその姿勢を変化させることができる。支軸25回りのスピンドル19の回転は、例えば歯車機構で構成される姿勢変化機構(図示せず)の働きによって達成される。この場合には、歯車機構に連結されるサーボモータや歯車機構のギア比に基づいて回転軸20の姿勢変化角度θ4 が決定される。回転軸20の姿勢変化を引き起こすサーボモータの回転数はエンコーダによって検出されることができる。
【0025】
図3に示されるように、z軸方向変位機構26やy軸方向変位機構27、姿勢変化機構28はコントローラ29によって制御される。このコントローラ29は、前述のyz座標平面上でドレッサー18の法線の姿勢を特定する工具姿勢データや、そういった法線上でドレッサー18のワーク接触点の位置を特定する加工位置データ、ワーク接触点を通過して回転軸20に平行な仮想線に対して支軸24からの距離d5 すなわちドレッサー18の半径距離(図1参照)を示す回転半径データを取得するデータ取得回路30を備える。工具姿勢データは、例えば回転軸20を含むyz座標平面上で回転軸20の姿勢変化角度θ4 を特定する。加工位置データは、例えばyz座標平面内で切削材料17と砥石車14との接触位置すなわちワーク接触点のz座標値pz およびy座標値py を特定する。こうした姿勢変化角度θ4 やz座標値pz およびy座標値py 、距離d5 は、作業者のキー操作やNCプログラムを通じてデータ取得回路30に取り込まれればよい。
【0026】
変位算出回路31は、取得された工具姿勢データ、加工位置データおよび回転半径データを用いて、逆運動学方程式に基づきyz座標平面に沿った支持部材22の直交2軸方向変位すなわちz軸方向変位d1 およびy軸方向変位d3 を算出する。z軸方向変位算出回路32は、例えば次式に従ってz軸方向変位d1 を算出する。
【0027】
【数13】
y軸方向変位算出回路33は、例えば次式に従ってy軸方向変位d3 を算出する。
【0028】
【数14】
姿勢変化角度設定回路34は、取得された工具姿勢データに基づき、回転軸20の姿勢変化角度θ4 を引き起こすサーボモータの回転数を設定する。
【0029】
検出回路35は、yz座標平面に沿って移動する支持部材22の直交2軸方向変位すなわちz軸方向変位d1 およびy軸方向変位d3 を検出する。この検出にあたっては、z軸方向変位機構26やy軸方向変位機構27に設けられるエンコーダの検出値が用いられる。同時に、検出回路35は、支持部材22に対するドレッサー18の法線の姿勢変化具合すなわち姿勢変化角度θ4 を検出する。この検出にあたっては、姿勢変化機構28に設けられるエンコーダの検出値が用いられる。
【0030】
加工位置算出回路36は、検出された変化具合および直交2軸方向変位を用いて、運動学方程式に基づき次式に従ってワーク接触点の位置すなわち加工位置のz軸座標値pz およびy軸座標値py を算出する。
【0031】
【数15】
表示器駆動回路37は、算出された加工位置のz座標値pz やy座標値py 、ドレッサー18の姿勢変化角度θ4 を表示器38に表示させることができる。
【0032】
いま、前述の工具ドレス機11を用いてグラインダー10の砥石車14を修復する場面を考える。まず、作業者は、例えば図4に示されるように、yz座標平面上で砥石車14の外周面の輪郭を特定する。この特定によって、砥石車14の経線41の形状が明らかとされる。回転軸20回りでドレッサー18の切削材料17が描く円軌道は、明らかとされた経線41上を移動することとなる。この移動を実現するにあたって、作業者は、各時刻(例えば1ms)ごとに経線41のz座標値pz およびy座標値py を特定する。
【0033】
こうして各時刻ごとに加工位置のz座標値pz およびy座標値py が特定されると、作業者は、各時刻の加工位置で、砥石14の外周面に対してドレッサー18を直立姿勢に維持することができる姿勢変化角度θ4 を特定する。作業者は、各時刻ごとに特定された加工位置のz座標値pz およびy座標値py 並びに姿勢変化角度θ4 の組み合わせを加工位置データおよび工具姿勢データとしてデータ取得回路30に取り込ませる。データ取得回路30には、ドレッサー18の半径距離d5 が明らかとなった時点で回転半径データが取り込まれていればよい。
【0034】
こうして工具姿勢データ、加工位置データおよび回転半径データが取得されると、各時刻の加工位置ごとに、z軸方向変位算出回路32は支持部材22のz軸方向変位d1 を算出し、同じくy軸方向変位算出回路33は支持部材22のy軸方向変位d3 を算出する。各時刻ごとに算出されたz軸方向変位d1 やy軸方向変位d3 に加え、姿勢変化角度設定回路34で設定されるサーボモータの回転数は、z軸方向変位機構26やy軸方向変位機構27、姿勢変化機構28に各々供給される。
【0035】
すると、姿勢変化機構28は、供給された回転数に基づき、支軸25回りで支持部材22に対して姿勢変化角度θ4 でドレッサー18の姿勢を変化させ、砥石車14に対するドレッサー18の姿勢を決定する。z軸方向変位機構26やy軸方向変位機構27は、算出されたz軸方向変位d1 やy軸方向変位d3 に基づき支持部材22をyz座標平面に沿って移動させ、砥石車14に対してドレッサー18を位置決めする。こうしてドレッサー18の切削材料17は各加工位置に正確に位置決めされると同時に、砥石車14の外周面に対してドレッサー18の直立姿勢は維持されることとなる。ドレッサー18の移動に伴って、表示器38には、各加工位置のz座標値pz やy座標値py 、ドレッサー18の姿勢変化角度θ4 が表示されればよい。
【0036】
ここで、変位算出回路31の原理を簡単に説明する。まず、ワークとなる砥石車14に対して基準座標系を設定し、ロボット工学に基づく運動学モデル(リンクモデル)を構築する。例えば図5に示されるように、前述のyz座標平面に対して基準座標系X0 Z0 を設定すると、第2案内部材24と第1案内部材23とのジョイントでは第1座標系X1 Z1 および第2座標系X2 Z2 が設定されることができる。同様に、第1案内部材23と支軸25とのジョイントには第3座標系X3 Z3 および第4座標系X4 Z4 が規定され、ドレッサー18の法線に沿って第5座標系X5 Z5 が規定される。設定された基準座標系X0 Z0 に基づけば、第5座標系X5 Z5 の原点すなわちワーク接触点はベクトル(pz ,py )によって特定されることができる。
【0037】
特定された運動学モデルに基づき、各座標系ごとにパラメータθn (Zn-1 回りの回転角)、dn (Zn-1 に沿った距離)、an (Xn に沿った距離)、αn (Xn 回りの回転角)を特定すると次表が得られる。
【0038】
【表1】
得られたパラメータθn 、dn 、an 、αn に基づいて各座標系X1 Z1 〜X5 Z5 ごとに変換行列An を特定すると、
【数16】
が得られる。その結果、基準座標系X0 Z0 に対するドレッサー18の姿勢やワーク接触点の位置ベクトルは、運動学方程式に従い、
【数17】
で表現されることができる。したがって、逆運動学方程式に従えば、
【数18】
【数19】
が得られることとなる。その結果、反対に運動学方程式を用いれば、前述した加工位置算出回路36が実現されることができる。
【0039】
ただし、工具ドレス機11では、前述のように回転軸20の軸心とドレッサー18の法線との交点に支軸25の軸心を位置させる必要は必ずしもない。例えば図6に示されるように、支軸25の軸心が回転軸20の軸心から偏倚してもよい。この場合には、回転半径データは、ドレッサー18のワーク接触点(pz ,py )を通過して回転軸20に平行な仮想線41に対して支軸25からの距離d5 を示せばよい。
【0040】
また、例えば図7に示されるように、支軸25の軸心がドレッサー18の法線から偏倚してもよい。この場合には、yz平面上で、支軸25の軸心を通過して仮想線41に直交する第1法線42と、yz平面上で、ドレッサー18のワーク接触点(pz ,py )を通過して仮想線41に直交する第2法線43すなわちドレッサー18の法線との回転軸方向距離a5 を示す偏心距離データがデータ取得回路30に取り込まれればよい。その結果、z軸方向変位算出回路32は、例えば次式に従ってz軸方向変位d1 を算出することができる。
【0041】
【数20】
y軸方向変位算出回路33は、例えば次式に従ってy軸方向変位d3 を算出することができる。
【0042】
【数21】
こうしたz軸方向変位算出回路32やy軸方向変位算出回路33の原理は、例えば図8に示される運動学モデルに基づいて説明されることができる。この運動学モデルでは、支軸25の軸心(第3座標系X3 Z3 の原点)を通過して仮想線41に直交する第1法線Z4 と、ワーク接触点(第5座標系X5 Z5 の原点)を通過して仮想線43に直交する第2法線Z5 すなわちドレッサー18の法線との間で回転軸方向距離a5 は規定されることができる。ここで、仮想線41は、ドレッサー18のワーク接触点を通過してドレッサー18の回転軸20に平行に描かれるものとする。
【0043】
特定された運動学モデルに基づき、各座標系ごとにパラメータθn (Zn-1 回りの回転角)、dn (Zn-1 に沿った距離)、an (Xn に沿った距離)、αn (Xn 回りの回転角)を特定すると次表が得られる。
【0044】
【表2】
得られたパラメータθn 、dn 、an 、αn に基づいて各座標系X1 Z1 〜X5 Z5 ごとに変換行列An を特定すると、
【数22】
が得られる。その結果、基準座標系X0 Z0 に対するドレッサー18の姿勢やワーク接触点の位置ベクトルは、運動学方程式に従い、
【数23】
で表現されることができる。したがって、逆運動学方程式に従えば、
【数24】
【数25】
が得られることとなる。したがって、加工位置算出回路36は、運動学方程式に基づき次式に従ってワーク接触点の位置すなわち加工位置のz座標値pz およびy座標値py を算出することができる。
【0045】
【数26】
【数27】
以上の運動学方程式や逆運動学方程式に基づけば、回転軸方向距離a5 =0に設定することによって、図1に示される工具ドレス機11の運動学方程式および逆運動学方程式を得ることができる。
【0046】
なお、本発明に係る円板形工具の制御方法は、前述した工具ドレス機11に適用されることができるだけでなく、砥石車や丸鋸といった円板形工具を用いる工作機に適用されることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、円板形工具を用いた工作機では、円板形工具の姿勢を変化させつつもワークの加工位置に対して簡単に円板形工具を位置決めすることができる。したがって、円板形シャンクの外周で環状に切削材料を保持するドレッサーを用いて、様々な厚みや外周形状の砥石車を成形することが可能となる。汎用性の高い工具ドレス機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る工具ドレス機が設置されたグラインダーの全体構成を示す正面図である。
【図2】 図1の2−2線に沿った支持部材の一部拡大断面図である。
【図3】 工具ドレス機の制御系を概略的に示すブロック図である。
【図4】 ドレッサーの制御方法を示す図である。
【図5】 ドレッサーの運動学モデルを示す図である。
【図6】 回転軸の軸心に対して支軸の軸心が偏倚したドレッサーを示す側面図である。
【図7】 ドレッサーの法線に対して支軸の軸心が偏倚したドレッサーを示す側面図である。
【図8】 他の実施形態に係るドレッサーの運動学モデルを示す図である。
【符号の説明】
11 工具ドレス機、14 ワークとしての砥石車、16 円板形シャンク、17 切削材料、18 円板形工具としてのドレッサー、19 スピンドル、20 回転軸、22 支持部材、25 支軸、26 変位機構を構成するz軸方向変位機構、27 変位機構を構成するy軸方向変位機構、41 仮想線、42 第1法線、43 第2法線。
Claims (6)
- 円板形シャンクの外周で環状に切削材料を保持するドレッサーと、回転軸回りで前記ドレッサーを回転させるスピンドルと、支軸回りで回転自在に前記スピンドルを支持する支持部材と、前記支軸回りで回転を引き起こす姿勢変化機構と、支軸が直交する1平面に設定される直交yz座標系に従ってy軸方向およびz軸方向に前記支持部材をそれぞれ変位させるy軸方向変位機構およびz軸方向変位機構と、前記姿勢変化機構、y軸方向変位機構およびz軸方向変位機構を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記回転軸を含むyz平面上で前記回転軸の姿勢変化角度θ4を特定する工具姿勢データ、yz平面上で、前記ドレッサーのワーク接触点を通過して前記回転軸に平行な仮想線に対して前記支軸からの距離d5を示す回転半径データ、および、yz平面内でワーク接触点のz座標値pzおよびy座標値pyを特定する加工位置データを取得するデータ取得回路と、取得した工具姿勢データ、回転半径データおよび加工位置データを用いて、前記姿勢変化機構、y軸方向変位機構、z軸方向変位機構およびワーク接触点に基づき特定されるリンクモデルから得られる運動学方程式から導き出される逆運動学方程式に従って前記z軸方向変位d1およびy軸方向変位d3を算出する変位算出回路と、取得した工具姿勢データに基づき前記回転軸の姿勢変化角度θ4を設定する姿勢変化角度設定回路とを備えることを特徴とする工具ドレス機。
- 請求項1または2に記載の工具ドレス機において、前記データ取得回路は、前記yz平面上で、前記支軸を通過して前記仮想線に直交する第1法線と、前記yz平面上で、前記ワーク接触点を通過して前記仮想線に直交する第2法線との回転軸方向距離a5を示す偏心距離データを取得することを特徴とする工具ドレス機。
- 請求項5に記載の工具ドレス機において、前記回転軸方向距離a5はゼロであることを特徴とする工具ドレス機。
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