JP4186933B2 - 水素透過膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、水素を選択的に透過させる水素透過膜の製造方法に関する。
水素透過膜として、例えば、バナジウム(V)を始めとする5族の金属または合金から成る基材の両面に、水素透過性被覆金属層の表面にプロトン伝導性セラミックス膜を備える水素透過膜が知られている。
また、一般的に、5族の金属または合金からなる基材は、酸化され易いことが知られており、基材の酸化を抑制するために、パラジウム(Pd)またはパラジウム合金を含有する水素透過性被覆金属層を基材上に設けることが提案されている。
特開2004−146337号公報
しかしながら、プロトン伝導性セラミックス膜の成膜は、酸素雰囲気下、比較的高い温度において実行される。被覆金属層には、細孔、粒界隙間といった結晶構造の欠陥が存在することがあり、これら欠陥から基材表面に導入される酸素によって基材表面が酸化され、酸化された基材が被覆金属層の表面に及び被覆金属層を覆ってしまうことがある。また、被覆金属層を透過する酸素によっても基材中に酸化物の固溶体が形成されてしまうことがある。いずれの場合にも、酸化によって基材の物性が変化してしまい、所期の水素透過性能を望むことができないという問題が発生する。
さらに、プロトン伝導性セラミックス膜を、結晶性良く成膜するためには高温での成膜が有効であり、一般的に、酸化速度は、温度の上昇と共に増大する傾向にある。
以上のように、従来の手法によっては、基材に対してプロトン伝導性セラミックス膜を成膜する際に、基材の酸化の抑制、防止が十分に行われておらず、基材が劣化してしまうという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、プロトン伝導性の電解質膜を備える水素透過膜を製造する際に基材の劣化を抑制または防止することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の水素透過膜の製造方法は、周期律表第5族の金属または合金からなる2つの表面を有する基材を用意し、前記基材の少なくとも一方の表面に被覆金属層を成膜し、前記被覆金属層の表面の少なくとも一部に酸素の透過を防止または抑制する保護層を成膜し、所定温度以上の酸素雰囲気下において、前記被覆金属層または保護層の表面にプロトン伝導性を有する電解質層を成膜することを特徴として備える。
本発明の水素透過膜の製造方法によれば、基材の少なくとも一方の表面に被覆金属層を成膜し、被覆金属層の表面の少なくとも一部に酸素の透過を防止または抑制する保護層を成膜し、所定温度以上の酸素雰囲気下において、被覆金属層または保護層の表面にプロトン伝導性を有する電解質層を成膜するので、プロトン伝導性の電解質層を備える水素透過膜を製造する際に基材の劣化を抑制または防止し、水素透過性能の低下を抑制することができる。
本発明の水素透過膜の製造方法において、前記被覆金属層は前記基材の一方の表面にのみ形成され、
前記製造方法はさらに、前記電解質層の成膜後に、前記基材の他方の表面に被覆金属層を成膜しても良い。かかる場合には、電解質層生成時における、基材の他方の表面と被覆金属層との間に生じる拡散を防止することができる。
本発明の水素透過膜の製造方法において、前記電解質層の成膜は、前記保護層を除去した後に、前記被覆金属層の表面に電解質層を成膜することにより実行されても良い。電解質成膜準備のため、高温酸素雰囲気とされても保護層を除去するまでの間は、基材への酸素透過を防止または抑制することができる。かかる場合には、保護層が水素透過性を有しない場合であっても、保護層の存在に伴う水素透過性能の低下を抑制することができる。
本発明の水素透過膜の製造方法において、前記保護層の成膜は、前記被覆金属層に含まれる欠陥または粒界隙間を埋めることにより実行されても良い。例えば、20nm未満の保護層を形成することによって実現され得る。かかる場合には、保護層によって被覆金属層の欠陥または粒界隙間を埋めることができるので、電解質層生成時における被覆金属層の表面への基材の酸化物の拡散を抑制または防止することができる。
本発明の水素透過膜の製造方法において、前記保護層の成膜は、前記被覆金属層の表面の全域に亘って前記保護層を形成することにより実行されても良い。例えば、20nm以上の保護層を形成することによって実現され得る。かかる場合には、被覆金属層を透過する酸素量を抑制することができるので、電解質層生成時における基材の酸化を抑制または防止することができる。
以下、本発明に係る水素透過膜の製造方法について図面を参照しつつ、いくつかの実施例に基づいて説明する。
図1〜図6を参照して第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法について説明する。図1は第1の実施例に係る水素透過膜の製造工程を示すフローチャートである。図2は第1実施例における、基材上に被覆金属層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。図3は第1実施例における、被覆金属層の表面に保護層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。図4は第1実施例における、被覆金属層上に電解質層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。図5は第1実施例における、電解質層が形成されない側において被覆金属層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。図6は第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法によって製造される水素透過膜の模式的な構成を示す説明図である。
水素透過膜100を製造する際の基材10を用意する(ステップS10)。具体的には、基材10を成膜装置内に搬送し、基材10を保持するための基台210に載置する。基材10としては、例えば、バナジウム(V)、またはバナジウム(V)を主たる(50%を超える)組成成分として含むバナジウム合金が用いられる。基材10としてはこの他にも、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)といった周期律表5族の金属、あるいはこれら金属の合金が用いられ得る。基材10は、これら金属または合金に対して圧延および焼鈍を繰り返すことによって、極めて緻密な結晶質からなる、例えば、板状の金属層として得られる。
図2に示すように装置200内の基台210に載置された基材10の一方の表面に対して被覆金属層20を成膜する(ステップS11)。被覆金属層20の形成は、例えば、PVD法、CVD法によって、酸素が存在しない無酸素雰囲気下において実行される。無酸素雰囲気は、例えば、真空ポンプによって成膜装置200内を真空にすることにより、あるいは、成膜装置200内に酸素以外の気体、例えば、窒素、アルゴンといった不活性ガスを100vol%充填することによって実現される。PVD法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング、または蒸着法が用いられる。被覆金属層20に用いられる金属は、例えば、パラジウム(Pd)、またはパラジウム(Pd)を主たる(50%を超える)組成成分として含むパラジウム合金が用いられる。被覆金属層20は、電解質層40との界面における水素分子の解離反応、または水素分子への結合反応を促進する活性を有する触媒として作用する。なお、基材10に対する被覆金属層20は、PVD法、CVD法の他にも無電解メッキ、電解メッキといったメッキ処理によっても形成され得る。
被覆金属層20の成膜に先立って、ドライエッチング、ウェットエッチングによって被覆金属層20が形成される基材10の表面の酸化物を除去する工程が付加されても良い。なお、図3〜図6では装置の図示を省略して装置内のみを示す。
生成された被覆金属層20の表面に保護層30を成膜する(ステップS12)。図2に示すように、被覆金属層20には、細孔、粒界隙間、クラックといった結晶構造上の欠陥21が存在することがあり、後の電解質層40の成膜工程において、これら欠陥21から基材10に酸素が到達し、基材10の表面において酸化物(VOx)が生成され、生成された酸化物が被覆金属層20の表面に進出し、被覆金属層20の表面を覆ってしまうおそれがある。この結果、被覆金属層20に期待される所期の性能が阻害されてしまう。また、バナジウム(V)の酸化物(VOx)は、バナジウム(V)異なる物性を示すため、基材10に期待される所期の性能が阻害されてしまう。この結果、得られる水素透過膜100の水素透過性能が低下してしまうおそれがある。
そこで、本実施例では、図3に示すように、被覆金属層20に存在する結晶構造上の欠陥21を保護材で埋めることによって、欠陥21に起因する水素透過膜100の水素透過性能の低下を抑制または防止する。すなわち、保護材として高温でも安定していると共に酸素の透過を抑制または防止する性質の物質を用い、欠陥21を通じた基材10の表面への酸素の移動を抑制または防止する。
具体的には、SiO2、Al23といったセラミックス、タングステン(W)、タンタル(Ta)といった電解質層40の成膜時の温度よりも高い融点を有する金属を用いて、PVD法、CVD法といった成膜手法によって、酸素が存在しない無酸素雰囲気下において保護層30が形成される。また、成膜厚さを20nm未満とすることによって、被覆金属層20における欠陥部分を中心とした島状の保護層30の形成が実現される。成膜厚さが20nm未満である場合には、一般的に、対象表面の全ての領域を覆うことはできず、先ず、対象表面における欠陥部分において成膜が開始することが知られている。これは、成膜時に被覆金属層20の表面に到達した原子は、被覆金属層20の表面で系全体のポテンシャルエネルギを低く安定化させる場所で捕獲されるためである。被覆金属層20における欠陥部分はポテンシャルエネルギが高いので、原子は欠陥部分において化学結合することによって核を形成し、系全体のポテンシャルエネルギを下げる。
装置内温度を所定温度、例えば、摂氏600度まで昇温し(ステップS13)、装置内に酸素導入部230を介して酸素を導入し(ステップS14)、図4に示すように被覆金属層20または保護層30の表面に電解質層40を成膜する(ステップS15)。電解質層40の成膜にあたっては、PVD法、CVD法が用いられる得るが、本実施例ではPVD法の一種であるPLD法を用いて説明する。
電解質層40を形成するためのターゲット221に用いられる化合物には、例えば、BaCeO3、SrZrO3、BaZrO3、SrCeO3といったペロブスカイト型化合物が用いられる。PLD法では、ターゲット221に対してパルスレーザ220を断続的に照射することによってターゲット221を蒸発させて、放出される原子、分子を対象物の表面に積層(蒸着)させる。例えば、BaCeO3が用いられる場合には、構成原子であるBa、Ce、Oが被覆金属層20または保護層30の表面に蒸着し、再結晶化することによって電解質層40が形成される。装置内温度を昇温させるのは、原子を再結晶化させるためであり、装置内に酸素を導入するのは蒸着過程で不足しがちな酸素を補うことで、ターゲット221と同様の酸素を含む電解質層40を形成するためである。
以上の工程を終えると、図5に示すように、電解質層40が形成されていない基材10の表面(他の表面)に対して、被覆金属層20が成膜されて、図6に示す水素透過膜100が得られる。第1の実施例に係る製造方法によって得られた水素透過膜100は、基材10、基材10の2つの表面に形成された被覆金属層20、一方の被覆金属層20の表面に形成された電解質層40を備えている。また、電解質層形成側における、被覆金属層20における結晶構造上の欠陥21には、保護層30が埋め込まれ、あるいは、欠陥21は保護層30によって覆われている。
以上説明したように、第1の実施例に水素透過膜の製造方法によれば、被覆金属層20における結晶構造上の欠陥21には、保護層30が埋め込まれ、あるいは、欠陥21は保護層30におって覆われているので、電解質層成膜時における、基材10の酸化を抑制または防止することができる。すなわち、酸素の透過を抑制または防止する保護層30によって被覆金属層20の欠陥21が塞がれるため、欠陥21を介した基材10の酸化を抑制または防止することができる。また、欠陥21を介して基材10の酸化物が被覆金属層20の表面に現れて、被覆金属層20を覆ってしまうことを抑制または防止することができる。
この結果、被覆金属層20によってもたらされる、電解質層40との界面における水素分子の解離反応、または水素分子への結合反応を促進する触媒機能の低下を抑制することができる。さらに、基材10の酸化を抑制または防止することができるので、基材10の物性の変化を抑制または防止して、水素透過膜100の水素透過性能の低下を抑制することができる。
として作用する
また、第1の実施例においては、電解質層40が形成されない側の基材10表面に対する被覆金属層20の形成は、電解質層40が形成された後に実行されるので、基材10と被覆金属層20との間に拡散防止層を備える必要がない。一般的に拡散防止層には貴金属または貴金属の合金が用いられることが多いが、第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法によれば、貴金属の使用量を低減し、水素透過膜100の製造コストを低減することができる。
図7を参照して、第1の実施例の変形例について説明する。図7は基材の両面に被覆金属層が予め形成されている基材の構造を模式的に示す説明図である。第1の実施例においては、電解質層40を形成した後に、電解質層40が形成されない側における基材10の表面に被覆金属層20が形成されているが、図7に示すように、電解質層40の形成の有無にかかわらず基材10の2つの面に予め被覆金属層20を形成しておいても良い。すなわち、第1の実施例では、被覆金属層20が一方の面にのみ形成された基材10を用いて水素透過膜を製造したが、被覆金属層20を両面に備える基材10を用いて水素透過膜を製造しても良い。この場合には、電解質層40が形成されない側の基材10と被覆金属層20との間における金属拡散を抑制または防止するために、タンタル(Ta)からなる拡散防止層15を備えることが好ましい。拡散防止層15を形成する必要はあるものの、電解質層形成側および電解質層非形成側の被覆金属層20の形成を連続して実行することができる。この結果、製造工程を簡易化することができる。
・第2の実施例:
図8〜図11を参照して第2の実施例に係る水素透過膜の製造方法について説明する。図8は第2の実施例に係る水素透過膜の製造工程を示すフローチャートである。図9は第2実施例における、被覆金属層の表面に保護層30が成膜された状態を模式的に示す説明図である。図10は第2実施例における、被覆金属層上に成膜された保護層30を除去する様子を模式的に示す説明図である。図11は第2実施例に係る水素透過膜の製造方法によって製造される水素透過膜の構造を模式的に示す説明図である。
第2の実施例に係る水素透過膜の製造方法は、第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法に対して、被覆金属層20の全面に亘って保護層30が成膜される点、電解質層40の成膜に先立って成膜された保護層30が除去される点が異なる。以下の説明では、第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法と同一の工程については簡単に説明を行い、相違点について詳細に説明する。
基材10を成膜装置内に搬送し、基材10を保持するための基台210に載置して、水素透過膜100を製造する際の基材10を用意する(ステップS20)。基材10としては、第1の実施例において説明済みの基材10が用いられ得る。装置200内の基台210に載置された基材10の一方の表面に対して被覆金属層20を成膜する(ステップS21)。被覆金属層20の成膜に先立って、ドライエッチング、ウェットエッチングによって被覆金属層20が形成される基材10の表面の酸化物を除去する工程が付加されても良い。被覆金属層20の形成は、例えば、PVD法、CVD法によって、酸素が存在しない無酸素雰囲気下において実行される。PVD法の詳細な態様、被覆金属層20に用いられる金属は、第1の実施例において説明済みである。
生成された被覆金属層20の表面に保護層30を成膜する(ステップS22)。本実施例では、図9に示すように、被覆金属層20の全域(全面)に亘って保護層30が形成される。この結果、被覆金属層20の結晶構造上の欠陥21を介した基材10の酸化抑制・防止に止まらず、被覆金属層20を透過する酸素によって引き起こされる被覆金属層20との界面における基材10の酸化を抑制、防止することができる。すなわち、被覆金属層20を透過してきた酸素に起因する、基材10中における酸化物の固溶体の形成を抑制、防止することができる。
具体的には、成膜厚さを20nm以上とすることによって、被覆金属層20における欠陥部分のみならず、被覆金属層20の全域に保護層30を形成することができる。すなわち、一般的に、対象表面における成膜は、対象表面における欠陥部分において開始されるが、成膜厚さが20nm以上である場合には、欠陥部分以外の部分、例えば、平滑面にも膜の形成が及ぶ。保護層30の成膜材料としては、酸素透過性の低い、SiO2、Al23といったセラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)といった電解質層成膜時の温度よりも高い融点を有する金属が用いられる。これら成膜材料は、PVD法、CVD法といった成膜手法によって、酸素が存在しない無酸素雰囲気下において被覆金属層20の表面に保護層30として成膜される。
装置内温度を所定温度、例えば、摂氏600度まで昇温し(ステップS23)、被覆金属層20の表面に形成した保護層30の除去を行う(ステップS24)。例えば、図10に示すように、レーザ装置240を用いたレーザアブレーション、あるいは、アルゴンエッチングによって、保護層30が除去される。基材10の酸化速度は雰囲気温度の上昇に伴って増大するが、装置内温度が、電解質層40の成膜に要求される温度に到達するまでは保護層30によって、被覆金属層20を介した基材10の表面への酸素の透過が抑制または防止される。この結果、装置内温度を電解質層成膜温度まで上昇させる期間における基材10の酸化を抑制または防止して、基材10の劣化(水素透過性能の低下)を抑制または防止することができる。
保護層30を除去した後、装置内に酸素導入部230を介して酸素を導入し(ステップS25)、図11示すように被覆金属層20または保護層30の表面に電解質層40を成膜する(ステップS26)。電解質層40の成膜にあたっては、PVD法、CVD法が用いられる得るが、本実施例ではPVD法の一種であるPLD法を用いて説明する。
電解質層40を形成するためのターゲット221に用いられる化合物には、例えば、BaCeO3、SrZrO3、BaZrO3といったペロブスカイト型化合物が用いられる。PLD法では、ターゲットに対してパルスレーザ220を断続的に照射することによってターゲット221を蒸発させて、放出される原子、分子を対象物の表面に積層(蒸着)させる。例えば、BaCeO3が用いられる場合には、構成原子であるBa、Ce、Oが被覆金属層20または保護層30の表面に蒸着し、再結晶化することによって電解質層40が形成される。装置内温度を昇温させるのは、原子を再結晶化させるためであり、装置内に酸素を導入するのは蒸着過程で不足しがちな酸素を補うことで、ターゲット221と同様の酸素を含む電解質層40を形成するためである。
以上の工程の後、電解質層40が形成されていない基材10の表面(他の表面)に対して、被覆金属層20が成膜されて、図11に示す水素透過膜が得られる。
以上説明したように、第2の実施例に水素透過膜の製造方法によれば、被覆金属層20の全面に亘って保護層30が形成されているので、電解質層成膜時における、基材10の酸化を抑制または防止することができる。すなわち、酸素の透過を抑制または防止する保護層30によって被覆金属層20を介した基材10の酸化を抑制または防止することができる。この結果、基材10の酸化を抑制または防止することができるので、基材10の物性の変化を抑制または防止して、水素透過膜の水素透過性能の低下を抑制することができる。
また、電解質層40の成膜に先立って被覆金属層20を覆っている保護層30を除去するので、保護層30が良好な水素透過性能を備えていない場合であっても、水素透過膜の水素透過性能の低下を抑制または、防止することができる。
なお、保護層30が水素透過性能を有する場合には、保護層30を除去しなくても良い。かかる場合には、電解質層40の成膜時における基材10の酸化をさらに抑制または防止することができると共に、保護層30によって水素の透過が妨げられることがないので、水素透過膜の水素透過性能の低下をさらに抑制または防止することができる。
その他の実施例:
(1)上記第2の実施例において、保護層30を除去した後に、被覆金属層20の表面のクリーニング、すなわち、被覆金属層20の表面に存在する基材10の酸化物を除去する工程を加えても良い。かかる場合には、保護層30を除去した後に被覆金属層20に残留または現れた基材の酸化物を除去することができるので、被覆金属層20の表面に基材10の酸化物が存在することに起因する水素透過性能の低下を低減することができる。
(2)さらに上記(1)に加えて、新たな被覆金属層を既存の被覆金属層20の上に成膜する工程を備えても良い。この場合には、上記(1)の工程によって基材10の酸化物が除去された既存の被覆金属層20の上に新たな被覆金属層が成膜されるので、既存の被覆金属層20における欠陥21が新たな被覆金属層によって埋められ、あるいは覆われる。この結果、欠陥21を介した基材10の表面の酸化、欠陥21を通じた基材10の酸化物の被覆金属層表面への出現をさらに抑制することができる。
(3)上記第1の実施例において、予め両面に被覆金属層20が成膜されている基材10を用いる場合には、電解質層40が形成される側の被覆金属層または/および保護層の表面に電解質層40を成膜した後に、電解質層40が形成されない側の被覆金属層20の表面における基材酸化物を除去し、既存の被覆金属層20の上に新たな被覆金属層を成膜しても良い。この場合には、電解質層40が形成されない側における水素透過膜の水素透過性能の低下を抑制または防止することができる。
(4)上記実施例では、電解質層40として、ペロブスカイト型金属酸化物を用いて説明したが、このほかにも、Sm2Zr27といったパイロクロア型金属酸化物が用いられても良い。
(5)上記実施例において、被覆金属層20の成膜、保護層30の成膜、および電解質層40の成膜は同一の成膜装置内において実行されてもよく、あるいは、それぞれ別の成膜装置内において実行されても良い。
(6)上記各実施例において製造された水素透過膜は、例えば、燃料電池における膜電極接合体の構成要素として、水素生成装置における水素選択部の構成要素として用いられ得る。
(7)上記実施例における水素透過膜の製造方法は、上記の各ステップを実行する水素透過膜の成膜装置としても実行され得る。水素透過膜の成膜装置は、処理室、基台、ヒータ等の昇温装置、処理室内を無酸素雰囲気とするための真空ポンプ、保護層の除去、電解質層の成膜を実行するためのレーザ装置を備えている。
以上、いくつかの実施例に基づき本発明に係る水素透過膜の製造方法を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
第1の実施例に係る水素透過膜の製造工程を示すフローチャートである。 第1実施例における、基材上に被覆金属層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。 第1実施例における、被覆金属層の表面に保護層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。 第1実施例における、被覆金属層上に電解質層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。 第1実施例における、電解質層が形成されない側において被覆金属層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。 第1の実施例に係る水素透過膜の製造方法によって製造される水素透過膜の模式的な構成を示す説明図である。 第1実施例の変形例として、基材の両面に被覆金属層が予め形成されている場合における水素透過膜の構造を模式的に示す説明図である。 第2の実施例に係る水素透過膜の製造工程を示すフローチャートである。 第2実施例における、被覆金属層の表面に保護層が成膜された状態を模式的に示す説明図である。 第2実施例における、被覆金属層上に成膜された保護層を除去する様子を模式的に示す説明図である。 第2実施例に係る水素透過膜の製造方法によって製造される水素透過膜の構造を模式的に示す説明図である。
符号の説明
10…基材
20…被覆金属層
21…欠陥
30…保護層
40…電解質層
100…水素透過膜
200…成膜装置
210…基台
220…パルスレーザ
221…ターゲット
230…酸素導入部
240…レーザ装置

Claims (7)

  1. 水素透過膜の製造方法であって、
    周期律表第5族の金属または合金からなる2つの表面を有する基材を用意し、
    前記基材の少なくとも一方の表面に被覆金属層を成膜し、
    前記被覆金属層の表面の少なくとも一部に酸素の透過を防止または抑制する保護層を成膜し、
    所定温度以上の酸素雰囲気下において、前記被覆金属層または保護層の表面にプロトン伝導性を有する電解質層を成膜する
    水素透過膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記被覆金属層は前記基材の一方の表面にのみ形成され、
    前記製造方法はさらに、
    前記電解質層の成膜後に、前記基材の他方の表面に被覆金属層を成膜する水素透過膜の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記電解質層の成膜は、前記保護層を除去した後に、前記被覆金属層の表面に電解質層を成膜することにより実行される水素透過膜の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3いずれか記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記保護層の成膜は、前記被覆金属層に含まれる欠陥または粒界隙間を埋めることにより実行される水素透過膜の製造方法。
  5. 請求項4に記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記保護層の成膜は、20nm未満の保護層を形成することによって実行される水素透過膜の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項3いずれか記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記保護層の成膜は、前記被覆金属層の表面の全域に亘って前記保護層を形成することにより実行される水素透過膜の製造方法。
  7. 請求項6に記載の水素透過膜の製造方法において、
    前記保護層の成膜は、20nm以上の保護層を形成することによって実行される水素透過膜の製造方法。
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