JP2008047755A - バルブ金属複合電極箔の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層型固体電解コンデンサの作製に適し、エッチングAl箔よりも高容量密度であり、かつ、同等の電極抵抗を有し、さらに、高価な希少金属であるTaやNbの使用量を減らした安価な電解コンデンサ用電極箔およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板(10)の上に、バルブ金属の緻密層(6)を形成し、得られた緻密層(6)の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜(7b)を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記基板(10)より剥離し、前記異相成分を溶解除去し、緻密層(6)の側に集電体層(5)を形成する。粒調整と剥離とは、順序を入れ替えることが可能であり、集電体層の形成と異相成分の溶解除去とは、順序を入れ替えることが可能である。
【選択図】図1
【解決手段】基板(10)の上に、バルブ金属の緻密層(6)を形成し、得られた緻密層(6)の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜(7b)を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記基板(10)より剥離し、前記異相成分を溶解除去し、緻密層(6)の側に集電体層(5)を形成する。粒調整と剥離とは、順序を入れ替えることが可能であり、集電体層の形成と異相成分の溶解除去とは、順序を入れ替えることが可能である。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体電解コンデンサ陽極箔等として用いられるバルブ金属複合電極箔の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化および高機能化に伴い、電子回路の小型化、高集積化、および動作周波数の高周波化が進められている。電子回路に用いられる受動部品に関しても同様に、小型化および高特性化が求められており、例えば、コンデンサに関しても、可能な限り小型、低背、大容量および低インピーダンスであることが求められている。
体積当たりの静電容量が大きいコンデンサとして、バルブ金属を陽極体として、その陽極酸化皮膜を誘電体とした電解コンデンサが、広く使用されている。例えば、電気化学的なエッチングで粗面化したAl箔を陽極酸化してAl2O3を形成したAl電解コンデンサ、Taの多孔質ペレットを陽極酸化してTa2O5を形成したTa電解コンデンサ、および、Nbの多孔質ペレットを陽極酸化してNb2O5を形成したNb電解コンデンサが用いられている。誘電体として、Ta2O5(誘電率24〜27)、および、Nb2O5(誘電率41)は、Al2O3(誘電率7〜10)に比較して、誘電率が大きいため、小型大容量の電解コンデンサの素材としては、TaやNbの方がAlより適している。
一般的なTa電解コンデンサまたはNb電解コンデンサでは、図4に示すように、TaまたはNbからなるワイヤ(2)を差し込んだ状態で、Ta粉末やNb粉末を、圧粉成型および焼結して製造された多孔質ペレット(1)を陽極体として用いている。サブミクロンのTa粉末やNb粉末を利用することにより、表面積の非常に大きな多孔質ペレットが得られるが、製法から多孔質ペレットの小型化および薄型化には限界があるため、得られるTa電解コンデンサまたはNb電解コンデンサの小型化および低背化にも、おのずと限界が生じる。
これに対して、例えば、特許文献1(米国特許第3889357号公報)に開示されているように、Ta電解コンデンサまたはNb電解コンデンサにおいて、さらなる小型化および低背化を図るために、Ta粉末またはNb粉末をペースト状にして、Ta箔またはNb箔に塗布して焼成し、箔状の陽極体を得ることが、以前から試みられている。しかし、この方法では、焼結収縮により焼結体にクラックが生じやすい。また、粉末と箔の間よりも、粉末同士の焼結が進行しやすいため、焼結体と箔の界面での密着性が十分に得られない。これらのクラック発生や密着力不足は、コンデンサ製造工程でのハンドリング中に、焼結体が箔から剥離したり、漏れ電流特性の悪化を招き、好ましくない。
また、特許文献2(特開2006−49816号公報)においては、TaやNbと、それらと相溶性を持たない異相成分を混合して、TaやNbの基板上に成膜し、真空中または不活性ガス中で熱処理をした後に、異相成分のみを選択的に除去するという方法で、TaやNbからなる多孔質層を有する箔状陽極体を製造することが開示されている。このように製造される箔状陽極体の断面図を図5に示す。得られる箔状陽極体により、コンデンサのさらなる小型化および低背化に有効である。しかしながら、これらの箔状陽極体は、希少金属であるTa箔やNb箔を、多孔質層(4)以外に、基板(3)として用いているため、従来の圧粉成型ペレットに比べて、TaやNbの使用量が多くなり、箔状陽極体のコストが高くなってしまうという問題がある。
一方、電解コンデンサの低インピーダンス化という観点からは、薄型の固体電解コンデンサ素子を複数個、積層して、電気的に接続することが有効である。例えば、特許文献3(特開平11−135367号公報)には、このような積層型固体電解コンデンサが開示されている。この方法は、コンデンサの低インピーダンス化には有効であるが、箔状陽極体として、エッチングしたAl箔を使用しているため、前述のように、TaやNbからなる固体電解コンデンサに比べて、体積あたりの静電容量密度が低くなってしまうという問題がある。
また、前述の特許文献2(特開2006−49816号公報)のように、TaまたはNbからなる箔状陽極体を使用して、薄型の固体電解コンデンサ素子を利用することは、体積あたりの静電容量密度の向上に有効であると考えられるが、前述したように、希少金属であるTaやNbの使用量が増えるため、箔状陽極体のコスト増につながる。また、電解コンデンサの低インピーダンス化には、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の低減が重要であり、箔状陽極体の抵抗も可能な限り低いことが望ましい。しかしながら、TaやNbは、体積抵抗率が比較的高いため(Taの体積抵抗率:13.5μΩcm、Nbの体積抵抗率:14.5μΩcm)、TaやNbからなる箔状陽極体の抵抗は、エッチングしたAl箔(Alの体積抵抗率:2.7μΩcm)に比較して、大きくなってしまうという問題もある。
米国特許第3889357号公報
特開2006−49816号公報
特開平11−135367号公報
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、積層型固体電解コンデンサの作製に適し、エッチングAl箔よりも高容量密度であり、かつ、同等の電極抵抗を有し、さらに、高価な希少金属であるTaやNbの使用量を減らした、低コストの電解コンデンサ用電極箔およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法は、基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とし、前記緻密層の側に集電体層を形成する。
あるいは、基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とし、前記緻密層の側に集電体層を形成する。
あるいは、基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記緻密層の側に集電体層を形成し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とする。
あるいは、基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記緻密層の側に集電体層を形成し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とする。
あるいは、基板上に膜厚が0.05〜1μmであるCu、Cu合金、Ag、またはAg合金からなる剥離層を形成し、得られた剥離層の上に、前記バルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整し、前記剥離層と合金薄膜の異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とするとともに、該多孔質層を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記緻密層の側に集電体層を形成する。
さらに、前記バルブ金属として、Ta、Ta合金、Nb、およびNb合金から選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。
さらに、前記集電体層を、AlまたはAl合金で形成することが望ましい。
予め、前記バルブ金属および集電体層の成分に対して熱力学的に安定なバリア層を前記基板上に形成することが望ましい。
さらに、前記バルブ金属および集電体層の成分に対して、熱力学的に安定なバリア層を、前記剥離層と前記緻密層の間に形成することが望ましい。
さらに、前記バリア層を、TiN、ZrN、またはHfNで形成することが望ましい。
さらに、前記合金薄膜の形成に、スパッタリング法または真空蒸着法を用いることが望ましい。
さらに、前記異相成分を、CuまたはAgとすることが望ましい。
さらに、前記基板として、石英基板またはアルミナ基板を用いることが望ましい。
本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法は、多孔質層にTa、Ta合金、Nb、またはNb合金を用いているため、エッチングAl箔よりも体積あたりの静電容量密度が大きい。また、集電体層としてAlまたはAl合金を用いているため、Ta単体やNb単体の電極箔に比べて、電極抵抗を下げることができ、電解コンデンサの等価直列抵抗の低減に有利である。さらに、希少金属であるTaやNbの使用量が少なくて済むため、Ta単体やNb単体の電極箔に比べて、電極箔のコストを下げることができる。
また、基板として、Ta、Ta合金、Nb、およびNb合金と反応性の低い石英などを用い、熱処理をした後に、Alからなる集電体層を形成することで、Al箔などを基板として成膜した後に熱処理をする場合に比べて、高温で熱処理をすることができ、Ta、Ta合金、Nb、またはNb合金を、大きな粒径とすることができ、コンデンサの耐電圧を大きくすることができる。
以上のことから、本発明のバルブ金属複合電極箔は、電解コンデンサの陰極および陽極箔として好適に用いることができる。また、薄型固体電解コンデンサや積層型固体電解コンデンサの陽極箔としても好適である。
小型、薄型、かつ、大容量であるコンデンサの作製には、誘電率の差から、エッチングAl箔よりも、TaやNbからなる電極箔が有利である。しかし、コンデンサの等価直列抵抗の低減には、電極箔の基材として、TaやNbよりも体積抵抗率の低い金属を使用することが有利であり、このような金属を用いることにより、希少金属であるTaやNbの使用量を減らすことができるため、電極箔がより低コストに製造できる。
本発明者らは、このような知見から鋭意研究を進め、TaやNbよりも体積抵抗率が数倍小さく、かつ、低コストであるAl箔の基材の上に、TaやNbと、それらと相溶性を持たない異相成分を混合して成膜し、真空中または不活性ガス中で熱処理をして粒調整をした後に、異相成分のみを選択的に除去するという方法で、従来のエッチングAl箔よりも、高容量密度であり、Ta単体やNb単体である電極箔よりも電極抵抗が小さく、さらに安価なバルブ金属の複合電極箔が得られることを見出した。
しかし、Alは融点が660℃と低く、このようにAl箔を基板として、TaやNbの多孔質層を形成した場合、多孔質層の粒調整の温度に限界がある。多孔質層の粒度が十分に大きくない場合、陽極酸化電圧を上げた時にTaやNbの粒子全体が酸化されてしまい、静電容量の低下や漏れ電流の増大を招く。このような電極箔では、陽極酸化電圧を上げることができないため、耐電圧の低い電解コンデンサしか作製することができない。
この問題を解決するために、予め、バルブ金属との反応性の低い基板に複合電極膜を形成し、粒調整をした後に、Alからなる集電体層を形成するという本発明の方法を完成するに至った。
図2に、本発明のバルブ金属複合電極箔の一態様を、断面図で示す。この態様のバルブ金属複合電極箔は、TaまたはTa合金の緻密層(6)と、緻密層(6)の上に形成され、TaまたはTa合金の多孔質層(7)とからなる積層構造を有し、この積層構造は、AlまたはAl合金からなる集電体層(5)の片面に形成されている。多孔質層(7)は、見かけ面積に対して2倍以上の表面積を持つことが望ましい。
図3に、本発明のバルブ金属複合電極箔の異なる態様を、断面図で示す。この態様のバルブ金属複合電極箔は、Ta、Ta合金、Al、およびAl合金に対して熱力学的に安定なバリア層(8)と、バリア層(8)の上に形成され、TaまたはTa合金の緻密層(6)と、緻密層(6)の上に形成され、TaまたはTa合金の多孔質層(7)とからなる積層構造を有し、この積層構造は、AlまたはAl合金からなる集電体層(5)の片面に形成され、多孔質層(7)が、見かけ面積に対して2倍以上の表面積を持つ。
なお、いずれの態様においても、TaまたはTa合金に代えて、NbまたはNb合金を用いることができる。
なお、本明細書における「見かけ面積」とは、電極箔の表面に凹凸がないと仮定した場合の電極箔の面積をいう。
電解コンデンサの電極箔として、多孔質層が十分な強度と表面積を有している必要がある。本発明のバルブ金属複合電極箔の多孔質層は、空隙率が30〜70%の範囲内であることが好ましい。空隙率が30%未満では、多孔質層の強度は十分であるが、見かけ面積あたりの表面積が小さくなってしまったり、多孔質層での異相成分の残留が多くなったり、電解コンデンサ化するときの陰極含浸が難しくなる。逆に、空隙率が70%を超えると、十分な多孔質層の強度が得られず、多孔質構造の破壊が起こりやすくなるため、好ましくない。
次に、本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法について、次のように分けられた工程毎に、詳細に説明する。図1は、本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法の複数の実施態様を合わせて示したフロー図である。
本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法は、[1]バルブ金属と反応性の低い基板上にTaまたはTa合金の緻密層を形成する第1工程、[2]得られた緻密層の上に、TaまたはTa合金、および、Taと相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を成膜する第2工程、[3a]真空熱処理により、TaまたはTa合金、および、異相成分を粒成長させる第3a工程、[3b]基板より剥離する第3b工程、[4a]緻密層の側にAlまたはAl合金からなる集電体層を形成する第4a工程、[4b]異相成分を選択的に溶解除去する第4b工程からなる。第3a工程と第3b工程とは、順序を入れ替えることが可能である。また、第4a工程と第4b工程とは、順序を入れ替えることが可能である。
あるいは、TaまたはTa合金の代わりに、NbまたはNb合金を用いることができる。
なお、Ta合金やNb合金としては、電解コンデンサの誘電体となるTa2O5やNb2O5の皮膜の漏れ電流や熱安定性などを改善するZr、Ti、HfまたはAlなどのバルブメタル、微量のP、NまたはBなどのドーパントなどを含んだもの、あるいは任意の割合のTa−Nb合金などを挙げることができる。
[1]バルブ金属と反応性の低い基板上にTaまたはTa合金(NbまたはNb合金)の緻密層を形成する第1工程:
基板(10)は、その上に形成する多層電極層を後に剥離するため、TaまたはTa合金(NbまたはNb合金)と反応しないものが望ましい。例えば、石英、アルミナなどの酸化物、セラミックス、または、ポリイミドなどの樹脂を用いることができる。
基板(10)は、その上に形成する多層電極層を後に剥離するため、TaまたはTa合金(NbまたはNb合金)と反応しないものが望ましい。例えば、石英、アルミナなどの酸化物、セラミックス、または、ポリイミドなどの樹脂を用いることができる。
緻密層(6)は、多孔質層(7)と集電体層(5)との接合層となる他、真空熱処理中に合金薄膜(7b)中へ基板成分が拡散することを防ぐ役割や、AlまたはAl合金からなる集電体層(7)を形成する時に異相成分とAlまたはAl合金との合金化を防ぐ役割をする。緻密層(6)を設けずに、直接、合金薄膜(7b)を形成した場合、真空熱処理時に、基板(10)の成分が拡散したり、AlまたはAl合金からなる集電体層(7)の形成時に、異相成分とAlとが反応することがある。そのため、多孔質層(7b)に基板(10)の成分や異相成分が多く残留してしまい、コンデンサ特性に影響を及ぼすため、緻密層(6)を設ける。
また、緻密層(6)を形成していても、緻密層(6)の膜質や膜厚、真空熱処理の温度、AlまたはAl合金からなる集電体層(5)の形成条件によっては、基板(10)の成分の拡散や、異相成分とAlとの反応を十分に抑制できない場合がある。これに対しては、基板(10)に緻密層(6)を形成する前に、Ta、Ta合金、AlおよびAl合金、または、Nb、Nb合金、Al、およびAl合金に対して、熱力学的に安定な図3に示したバリア層(図示せず)を形成しておくことが有効である。
得られるバリア層は、真空加熱処理中に、Ta、Ta合金、AlおよびAl合金、または、Nb、Nb合金、AlおよびAl合金と反応しにくいため、Alと異相成分の化合物形成をより確実に防ぐことができる。バリア層としては、TiN、ZrNまたはHfNを用いることが好ましい。これらは、熱力学的に安定であり、また、体積抵抗率が数百μΩcmであるように、比較的高い導電性を有するため、好ましい。バリア層は、バリア効果の観点からは膜質が緻密であるほど好ましい。また、電極抵抗の上昇を極力抑えるという観点からは、抵抗率が比較的大きいバリア層の厚さが薄いほど、好ましい。このように、緻密で薄いバリア層は、窒素ガスを導入した反応性スパッタリングまたは反応性蒸着により形成することが好ましい。
さらに図1に示すように、基板(10)上に、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金からなる剥離層(9)を設けておくことにより、酸洗時に異相成分と同時に剥離層(9)を溶解でき、基板(10)からの剥離が容易になるので、好ましい。膜厚は、50nm以下では剥離効果が十分でなく、1μmを超えて形成しても効果に差は見られないので、膜厚は50nm〜1μmとするのが好ましい。
なお、この場合でも、バリア層(図示せず)を形成することが好ましく、剥離層(9)の形成後にバリア層を形成し、その後に、緻密層(6)を形成する。
[2]得られた緻密層の上に、TaまたはTa合金(NbまたはNb合金)、および、Ta(Nb)と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を成膜する第2工程:
合金薄膜(7b)において、TaまたはTa合金、および、Taと相溶しない異相成分、または、NbまたはNb合金、および、Nbと相溶しない異相成分が、粒子径で1nm〜1μmの範囲内になかったり、分布が不均一であったりすると、最終的に得られる多孔質層(7)の粒子径や細孔分布が不均一になり、電解コンデンサの特性の悪化を招く。粒子径の範囲や分布の均一性は、粒子径が100nm以上の場合は、走査電子顕微鏡などで容易に確認することができる。粒子径が100nm以下のように微細な場合でも、透過電子顕微鏡で確認することができる。
合金薄膜(7b)において、TaまたはTa合金、および、Taと相溶しない異相成分、または、NbまたはNb合金、および、Nbと相溶しない異相成分が、粒子径で1nm〜1μmの範囲内になかったり、分布が不均一であったりすると、最終的に得られる多孔質層(7)の粒子径や細孔分布が不均一になり、電解コンデンサの特性の悪化を招く。粒子径の範囲や分布の均一性は、粒子径が100nm以上の場合は、走査電子顕微鏡などで容易に確認することができる。粒子径が100nm以下のように微細な場合でも、透過電子顕微鏡で確認することができる。
異相成分の添加量としては、体積分率で求め、30〜70体積%の範囲内にあることが好ましい。多孔質層(7)は、最終的に異相成分を除去することにより得られ、異相成分を完全に除去するためには、異相成分が完全につながっている必要がある。異相成分の添加量が、体積分率で求めて、30体積%未満であると、異相成分が完全につながらずに、除去することが困難になり、多孔質層に残留して、見かけ面積あたりの表面積が小さくなってしまったり、電解コンデンサ化するときの陰極含浸が難しくなる。異相成分の添加量が、体積分率で求めて、70体積%を超えると、異相成分を除去した後に、粒子の接合強度が弱かったり、粒子が完全につながりきれずに、多孔質構造を維持できなくなる。ただし、異相成分の添加量の範囲は、目安であり、異相成分の添加量を絶対的に制限するものではない。膜の配向の程度や使用目的によっては、前記範囲以外となる添加量を採用してもよい。
異相成分が微細均一に分布した合金薄膜(7b)を作製する方法としては、粒度が1nm〜1μmの範囲内にある粒子を、揮発性のバインダーに分散して、印刷する方法や、CVD(化学蒸着法)、溶射、スパッタリング、蒸着など、種々の方法が考えられる。
このように種々の方法が考えられるが、本発明においては、同時スパッタリング法または同時蒸着法を用いることが好ましい。これらの方法では、原子あるいはクラスターレベルで、飛来した物質が基板に付着して薄膜を形成していく。そのため、粒度が微細であり、かつ、均一に分散した薄膜を、再現性よく、容易に得ることができる。また、ターゲットや蒸着源に投入する電力を変えることにより、合金組成を容易に変えることができ、すなわち、最終的に得られる多孔質層(7)の空隙率を、容易に調整することができる。
異相成分としては、TaおよびTa合金、または、NbおよびNb合金に溶解せず、スパッタリングが容易であり、粒調整しやすい成分が好ましい。CuまたはAgは、Ta、Ta合金、NbおよびNb合金に、ほとんど溶解せず、スパッタリングも容易である。さらに、融点も比較的高く(Cu:1083℃、Ag:960℃)、粒調整もしやすいため、異相成分として好適である。
また、Mg、Ca、またはこれらの酸化物も好ましい。MgおよびCaは、Ta、Ta合金、Nb、およびNb合金に、ほとんど溶解せず、これらの酸化物は、Taの酸化物や、Nbの酸化物よりも、熱力学的に安定である。
[3a]真空熱処理により、TaまたはTa合金(NbまたはNb合金)、および、異相成分を粒成長させる第3a工程:
TaまたはNbを粒成長させないと、多孔質層の一体性が確保できない。また、異相成分を粒成長させて、連続化させることにより、異相成分の溶解除去が可能になる。
TaまたはNbを粒成長させないと、多孔質層の一体性が確保できない。また、異相成分を粒成長させて、連続化させることにより、異相成分の溶解除去が可能になる。
熱処理の雰囲気としては、アルゴンなどの不活性雰囲気中も可能であるが、TaまたはTa合金(NbまたはNb合金)の酸化を極力防いで、電極箔の漏れ電流を小さくするという観点から、高真空中雰囲気であることが好ましい。
一般に、高温で熱処理をするほど、粒成長が進行し、最終的に得られる多孔質層の構造が粗くなる。粒成長をさせる熱処理温度は、200℃以上、異相成分または基板の融点以下で任意に決定することができるが、700℃以上とすることが好ましい。熱処理温度が200℃未満では、多孔質層の構造の一体性が無くなり、連続体にならない場合がある。一方、熱処理温度が200℃以上であれば、熱処理温度が低いほど、粒成長が起こりにくくなり、かつ、得られる多孔質層の表面積が大きくなる。しかしながら、700℃未満の場合、得られる複合電極箔は、陽極酸化電圧が10Vにおける面積静電容量については非常に大きいものの、陽極酸化電圧を上げると面積当たりCVが急激に低下する。この現象は、多孔質層を形成しているNb粒子が微細すぎるため、陽極酸化電圧を上げたときに、Nb粒子すべてが酸化物になっていることを示している。このような現象は、単に静電容量に寄与する有効表面積を減少させるだけでなく、漏れ電流の増加や、細孔がつぶれることによる電解液の陰極含浸が困難となるなどの問題を引き起こす。このような電極箔を用いた場合には、陽極酸化電圧に限界が生ずる。例えば、固体電解コンデンサの定格電圧は陽極酸化電圧の1/3程度と言われており、このような電極箔を陽極として用いた場合には、低い耐電圧の固体電解コンデンサしか作製することができないことになる。従って、コンデンサ作成時に、より実用的な電圧で陽極酸化を行う場合、例えば15V以上の陽極酸化電圧の場合には、熱処理温度を700℃以上とすることが好ましい。
一方、異相成分または基板の融点以下とするのは、異相成分または基板が熱処理中に溶解してしまうため、好ましくないからである。たとえば、基板として石英を用いて、異相成分としてCuを用いた場合、熱処理温度の上限は、Cuの融点(1083℃)となる。
なお、スパッタリング法や真空蒸着法を行なう場合は、基板(10)を加熱しながら、合金薄膜(7b)の形成を行なうことにより、成膜と同時に粒成長を行なうことができる。
[3b]基板より剥離する第3b工程:
石英などの基板(10)から積層膜を剥離する。これは、安価で導電率の高いAlまたはAl合金からなる集電体層(5)を形成するためである。第3a工程とは、実施順序の前後をどちらとしてもよい。剥離には、成膜端部にタブなどを設けておくことにより、容易に可能である。石英などの基板(10)から積層膜を剥離すると、膜厚が薄い場合には、その後の取り扱いに注意を要する。
石英などの基板(10)から積層膜を剥離する。これは、安価で導電率の高いAlまたはAl合金からなる集電体層(5)を形成するためである。第3a工程とは、実施順序の前後をどちらとしてもよい。剥離には、成膜端部にタブなどを設けておくことにより、容易に可能である。石英などの基板(10)から積層膜を剥離すると、膜厚が薄い場合には、その後の取り扱いに注意を要する。
[4a]緻密層の側にAlまたはAl合金からなる集電体層を形成する第4a工程:
以上の工程の後、緻密層(6)あるいはバリア層の剥離面に、Alからなる集電体層(5)を形成する。これは、Alの融点が約660℃であり、高温での真空熱処理では、Alが溶融するおそれがあり、また、それほどの高温でなくても、Alの拡散が活発になり、緻密層(6)と反応するおそれがあるからである。粒調整の後に、Alからなる集電体層(5)を形成することにより、溶融や拡散が生じず、良好な複合電極膜を得ることができる。Alからなる集電体層(5)の形成には、同様にスパッタリング法や真空蒸着法などの成膜方法を用いることができる。とくに真空蒸着法は、Alの成膜速度が速く、有利である。Alからなる集電体層(5)の厚みは、1〜50μmとすることが望ましい。厚いほど、Alからなる集電体層(5)の抵抗を低下させることができ、等価直列抵抗(ESR)の観点から有利であるが、成膜に長時間を要する。ESRは、その後の素子構造に依存して低減する可能性もある。従って、たとえば導電性樹脂などにより、外部電極に接合する場合は、集電体層(5)は薄くてよい。
以上の工程の後、緻密層(6)あるいはバリア層の剥離面に、Alからなる集電体層(5)を形成する。これは、Alの融点が約660℃であり、高温での真空熱処理では、Alが溶融するおそれがあり、また、それほどの高温でなくても、Alの拡散が活発になり、緻密層(6)と反応するおそれがあるからである。粒調整の後に、Alからなる集電体層(5)を形成することにより、溶融や拡散が生じず、良好な複合電極膜を得ることができる。Alからなる集電体層(5)の形成には、同様にスパッタリング法や真空蒸着法などの成膜方法を用いることができる。とくに真空蒸着法は、Alの成膜速度が速く、有利である。Alからなる集電体層(5)の厚みは、1〜50μmとすることが望ましい。厚いほど、Alからなる集電体層(5)の抵抗を低下させることができ、等価直列抵抗(ESR)の観点から有利であるが、成膜に長時間を要する。ESRは、その後の素子構造に依存して低減する可能性もある。従って、たとえば導電性樹脂などにより、外部電極に接合する場合は、集電体層(5)は薄くてよい。
[4b]異相成分を選択的に溶解除去する第4b工程
前述したように、熱処理で粒調整をした後、異相成分の除去を行なう。第4a工程とは、実施順序の前後をどちらとしてもよい。AlまたはAl合金からなる集電体層(5)の形成を先に行った場合、全膜厚は大きくなるので、強度が増し、取り扱いが容易になるが、異相成分の溶解除去工程で集電体層(5)がダメージを受けないように保護することが望ましい。一方、異相成分の除去後に集電体層(5)を形成する場合、比較的薄い積層電極膜の裏面に、集電体層(5)を形成することになるため、集電体層(5)を形成するための基板に固定するなど、注意を払う必要がある。異相成分の除去方法として、種々の方法を用いることができるが、操作の簡便さから、電極箔の構成成分であるTa、Ta合金、Nb、Nb合金、Al、または、Al合金と、異相成分との耐食性の差を利用して、酸洗により溶解除去することが好ましい。酸には、異相成分を選択的に溶解する酸を選択する。例えば、硝酸、過酸化水素を添加した硫酸や塩酸などを使用することができる。異相成分を除去して多孔質層を形成した後、水洗し、乾燥して、バルブ金属複合電極箔が得られる。
前述したように、熱処理で粒調整をした後、異相成分の除去を行なう。第4a工程とは、実施順序の前後をどちらとしてもよい。AlまたはAl合金からなる集電体層(5)の形成を先に行った場合、全膜厚は大きくなるので、強度が増し、取り扱いが容易になるが、異相成分の溶解除去工程で集電体層(5)がダメージを受けないように保護することが望ましい。一方、異相成分の除去後に集電体層(5)を形成する場合、比較的薄い積層電極膜の裏面に、集電体層(5)を形成することになるため、集電体層(5)を形成するための基板に固定するなど、注意を払う必要がある。異相成分の除去方法として、種々の方法を用いることができるが、操作の簡便さから、電極箔の構成成分であるTa、Ta合金、Nb、Nb合金、Al、または、Al合金と、異相成分との耐食性の差を利用して、酸洗により溶解除去することが好ましい。酸には、異相成分を選択的に溶解する酸を選択する。例えば、硝酸、過酸化水素を添加した硫酸や塩酸などを使用することができる。異相成分を除去して多孔質層を形成した後、水洗し、乾燥して、バルブ金属複合電極箔が得られる。
さらに、予め、基板に50nm〜1μmのCu、Cu合金、Ag、Ag合金などの剥離層を成膜した場合には、剥離と異相成分の溶解除去を、同時に行うことができる。これは、基板(10)と複合電極膜の間に形成されたこのような層が、酸によって同時に溶解除去されることにより、引き剥がしの力を加えずに、複合電極膜を基板(10)から剥離することができるためである。なお、剥離と異相成分の溶解除去を同時に行うためには、基板(10)に、緻密層(6)、合金薄膜(7b)を形成し、該合金薄膜を粒成長させた後、剥離層と異相成分とを同時に溶解除去させる。
このようにして得られたバルブ金属複合電極箔は、空隙が均一に分布し、表面積も大きい。また、陽極酸化により誘電体皮膜が形成される多孔質層(7)が、Ta、Ta合金、Nb、または、Nb合金の粒子から形成されているため、従来のエッチングAl箔よりも、静電容量が大きくなる。また、集電体層(5)として体積抵抗率の小さいAlを用いているために、Ta、Ta合金、Nb、または、Nb合金のみで形成された電極箔よりも、電極抵抗を小さくすることができる。また、希少金属であるTaやNbの使用量が少なくてすむため、より低コストで、電極箔を作製することが可能である。
さらに、高温で粒成長させることが可能なので、高電圧まで陽極酸化可能であり、実用的な耐電圧を有する電解コンデンサを作製することができる。
以下、実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
純度99.99%のTaターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、Taからなる緻密層を約1μm成膜し、引き続きTa−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、石英基板から剥離して、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、800℃×1hrの熱処理を行ったことにより、Taの緻密層およびTa−60vol%Cu層の積層膜を得た。
純度99.99%のTaターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、Taからなる緻密層を約1μm成膜し、引き続きTa−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、石英基板から剥離して、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、800℃×1hrの熱処理を行ったことにより、Taの緻密層およびTa−60vol%Cu層の積層膜を得た。
その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解し始めた。硝酸水溶液中に1hr浸漬してCuを完全に溶解した後、水洗し、乾燥して、SUS316板上に、Taの緻密層が表れるように、テープで固定し、真空蒸着機(神港精機株式会社製、A1F−850SB)中に装着し、99.99%Alを用いて15分間Alを蒸着し、Ta/Al複合電極箔を得た。Al膜厚は10μmであった。
得られたTa/Al複合電極箔の断面を、走査電子顕微鏡で観察したところ、厚さ10μmのAlからなる集電体層の上に、Taの緻密層1μmと、粒径約0.15μmのTa粒子からなる多孔質層20μmとからなる積層構造が形成され、Ta/Al複合電極箔の総厚さは、31μmであった。
得られたTa/Al複合電極箔を、10mm角に切断し、スポットウエルダで直径0.2mmのNbワイヤをリードとして取り付けた。さらに、集電体層の面に絶縁性樹脂をコートして保護した後、電気伝導度10mS/cm、80℃のリン酸水溶液中で、初期電流密度0.01mA/cm2、電圧は10V、20Vおよび30Vの3通り、6hrの定電圧化成を行うことにより、表面に誘電体となるTa2O5皮膜を形成した。
その後、30質量%の硫酸中で、LCRメータ(Agilent社製、4263B)を用い、印加バイアス1.5V、周波数120Hz、実効値1.0Vrmsで、静電容量を測定し、面積静電容量密度(μF/cm2)および面積当たりのCV(μFV/cm2)を算出した。測定結果を表1に示す。
(実施例2)
純度99.99%のTiターゲット、TaターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar+4%N2雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、反応性スパッタリングを行い、バリア膜としてTiNを0.2μm成膜した。その後、10mtorr、Ar雰囲気中で、Taからなる緻密層を約0.8μm成膜し、引き続き、Ta−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、950℃×1hrの熱処理を行った。その後、石英基板から剥離することにより、TiNのバリア層、Taの緻密層およびTa−60vol%Cu層の積層膜を得た。
純度99.99%のTiターゲット、TaターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar+4%N2雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、反応性スパッタリングを行い、バリア膜としてTiNを0.2μm成膜した。その後、10mtorr、Ar雰囲気中で、Taからなる緻密層を約0.8μm成膜し、引き続き、Ta−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、950℃×1hrの熱処理を行った。その後、石英基板から剥離することにより、TiNのバリア層、Taの緻密層およびTa−60vol%Cu層の積層膜を得た。
その後、SUS316板上に、TiNバリア層が表れるように、テープで固定し、真空蒸着機(神港精機株式会社製、A1F−850SB)中に装着し、99.99%Alを用いて15分間Alを蒸着した。Al膜厚は10μmであった。その後、SUS316板から外して、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解し始めた。硝酸水溶液中に1hr浸漬してCuを完全に溶解した後、水洗し、乾燥して、Ta/Al複合電極箔を得た。
得られたTa/Al複合電極箔の断面を、走査電子顕微鏡で観察したところ、厚さ10μmのAlからなる集電体層の上に、TiNのバリア層0.2μmと、Taの緻密層0.8μmと、粒径約0.3μmのTa粒子からなる多孔質層20μmとからなる積層構造が形成され、Ta/Al複合電極箔の総厚さは、31μmであった。
その後、実施例1と同様に評価を行った。測定結果を、表1に示す。
(実施例3)
純度99.99%のNbターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、剥離層としてCuを約0.1μm成膜した。その後、Nbからなる緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、800℃×1hrの熱処理を行った。その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解すると共に、基板から剥離した。硝酸水溶液中に1hr浸漬してCuを完全に溶解した後、水洗し、乾燥して、Ta/Al複合電極箔を得た。
純度99.99%のNbターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、25mm×25mm×厚さ1mmの合成石英基板(英興株式会社製)に、剥離層としてCuを約0.1μm成膜した。その後、Nbからなる緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、800℃×1hrの熱処理を行った。その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解すると共に、基板から剥離した。硝酸水溶液中に1hr浸漬してCuを完全に溶解した後、水洗し、乾燥して、Ta/Al複合電極箔を得た。
その後、SUS316板上に、Nbの緻密層が表れるように、テープで固定し、真空蒸着機(神港精機株式会社製、A1F−850SB)中に装着し、99.99%Alを用いて60分間Alを蒸着した。その後、SUS316板から外して、Nb/Al複合電極箔を得た。Al膜厚は50μmであった。
得られたNb/Al複合電極箔の断面を、走査電子顕微鏡で観察したところ、厚さ50μmのAlからなる集電体層の上に、Nbの緻密層1μmと、粒径約0.2μmのNb粒子からなる多孔質層20μmとからなる積層構造が形成され、Nb/Al複合電極箔の総厚さは、71μmであった。
その後、実施例1と同様に評価を行った。測定結果を、表1に示す。
(従来例1)
厚さが約30μmである基材と、両面に厚さが約40μmであるエッチング層とからなり、総厚さが110μmである交流エッチングAl箔を、10cm角に切断し、直径0.2mmのNbワイヤをリードとして取り付けた後、ほう酸アンモニウム水溶液中で、電圧10Vで陽極酸化処理を行うことにより、表面に誘電体となるAl2O3皮膜を形成した。
厚さが約30μmである基材と、両面に厚さが約40μmであるエッチング層とからなり、総厚さが110μmである交流エッチングAl箔を、10cm角に切断し、直径0.2mmのNbワイヤをリードとして取り付けた後、ほう酸アンモニウム水溶液中で、電圧10Vで陽極酸化処理を行うことにより、表面に誘電体となるAl2O3皮膜を形成した。
その後、LCRメータ(Agilent社製、4263B)を用い、印加バイアス1.5V、周波数120Hz、実効値1.0Vrmsで、静電容量を測定し、面積静電容量密度(μF/cm2)および面積当たりのCV(μFV/cm2)を算出した。測定結果を表1に示す。
(従来例2)
純度99.9%以上の25mm×25mm×厚さ50μmのTa箔(東京電解株式会社製)を基板として、純度99.9%のTaターゲット、およびCuターゲット(いずれも株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、Ta−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、950℃×1hrの熱処理を行ったことにより、Ta電極箔を得た。
純度99.9%以上の25mm×25mm×厚さ50μmのTa箔(東京電解株式会社製)を基板として、純度99.9%のTaターゲット、およびCuターゲット(いずれも株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar雰囲気中で、Ta−60vol%Cuの組成の膜を20μm成膜した。その後、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、950℃×1hrの熱処理を行ったことにより、Ta電極箔を得た。
得られたTa電極箔の断面を、走査電子顕微鏡で観察したところ、厚さ50μmのTa箔の上に、粒径約0.3μmのTa粒子からなる多孔質層20μmとからなる積層構造が形成され、Ta電極箔の総厚さは、70μmであった。
その後、実施例1と同様に評価を行った。測定結果を、表1に示す。
(比較例1)
純度99.99%のTiターゲット、NbターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar+2.5%N2雰囲気中で、20mm×20mm×厚さ50μmのAl箔(純度99.9%)の一方の面に、反応性スパッタを行い、バリア膜としてTiNを0.5μm成膜した。その後、10mtorr、Ar雰囲気中で、Nb緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuを約10μm成膜した。その後、試料を反転させ、他方の面に、同様にNb緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuを約10μm成膜した。さらに、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、600℃×1hrの熱処理を行った。
純度99.99%のTiターゲット、NbターゲットおよびCuターゲット(いずれもφ152.4mm、株式会社高純度化学研究所製)を用い、多元スパッタ装置(株式会社アルバック製、SH−450)で10mtorr、Ar+2.5%N2雰囲気中で、20mm×20mm×厚さ50μmのAl箔(純度99.9%)の一方の面に、反応性スパッタを行い、バリア膜としてTiNを0.5μm成膜した。その後、10mtorr、Ar雰囲気中で、Nb緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuを約10μm成膜した。その後、試料を反転させ、他方の面に、同様にNb緻密層を約1μm成膜し、引き続き、Nb−60vol%Cuを約10μm成膜した。さらに、高温真空炉(株式会社東京真空製、turbo−vac)を用い、3.0×10-3Pa以下の真空中で、600℃×1hrの熱処理を行った。
その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に1hr浸漬し、Cuを完全に溶解した後、水洗し、乾燥して、Nb/Al複合電極箔を得た。
得られたNb/Al複合電極箔の断面を、走査電子顕微鏡で観察したところ、厚さ50μmのAl箔の両面に、TiNのバリア層0.5μm、Nbの緻密層1μm、粒径約0.05〜0.1μmのNb粒子からなる多孔質層10μmとからなる積層構造が形成され、Nb/Al複合電極箔の総厚さは、73μmであった。
得られたNb/Al複合電極箔を、10mm角に切断し、スポットウエルダで直径0.2mmのNbワイヤをリードとして取り付けた。その後、電気伝導度10mS/cm、80℃のリン酸水溶液中で、初期電流密度0.01mA/cm2、電圧は10V、20Vおよび30Vの3通り、6hrの定電圧化成を行うことにより、表面に誘電体となるTa2O5皮膜を形成した。
その後、30質量%の硫酸中で、LCRメータ(Agilent社製、4263B)を用い、印加バイアス1.5V、周波数120Hz、実効値1.0Vrmsで、静電容量を測定し、面積静電容量密度(μF/cm2)および面積当たりのCV(μFV/cm2)を算出した。測定結果を表1に示す。
(比較例2)
剥離層としてCuを約0.03μm成膜したこと以外は、実施例3と同様に成膜および熱処理を行った。その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解したが、基板からは完全に剥離しなかった。
剥離層としてCuを約0.03μm成膜したこと以外は、実施例3と同様に成膜および熱処理を行った。その後、6.7mol/lの硝酸水溶液に浸漬すると、気泡を発生しながらCuが溶解したが、基板からは完全に剥離しなかった。
実施例1〜3のバルブ金属複合電極箔、および従来例1のエッチングAl箔において、陽極酸化電圧が10Vの時の面積静電容量密度に着目すると、いずれもエッチングAl箔より薄いにもかかわらず、同等以上の面積静電容量密度を有しており、コンデンサの小型化および大容量化に有利であることが分かる。
また、実施例2のTa/Al複合電極箔と従来例2のTa電極箔は、陽極酸化電圧が10V、20V、および30Vで、ほぼ同じ面積静電容量密度を持つ。従って、本発明により、高価なTaの使用量を少なくして、同等の特性を持つ電極箔が得られることが分かる。
比較例1のNb/Al複合電極箔は、陽極酸化電圧が10Vにおける面積静電容量密度が非常に大きいが、陽極酸化電圧を上げると、面積当たりのCVが急激に低下していることが分かる。これは、多孔質層を形成しているNb粒子が微細すぎるため、陽極酸化電圧を上げたときには、Nb粒子すべてが酸化物になる現象が起こっていることを示す。このような電極箔では、陽極酸化電圧に限界がある。例えば、固体電解コンデンサの定格電圧は陽極酸化電圧の1/3程度と言われており、比較例1の電極箔では、最大でも耐電圧3V程度の固体電解コンデンサしか作製することができない。
一方、実施例1〜3の電極箔は、十分に粒成長させているため、陽極酸化電圧を上げても面積当たりのCVの低下が非常に少ない。従って、本発明による電極箔を用いることで、より高耐電圧の固体電解コンデンサを作製することができる。
また、実施例1は剥離〜熱処理〜酸洗〜Al蒸着という順序で、実施例2では熱処理〜剥離〜Al蒸着〜酸洗という順序で、それぞれ複合電極箔が得られている。従って、粒調整する前または後に、形成したバルブ金属積層膜を基板より剥離しても、異相成分を溶解除去する前または後に、緻密層の表面に集電体層を形成しても、いずれの工程でも複合電極箔の作製が可能である。
剥離層を0.1μm形成した実施例3では、酸洗時に剥離層を同時に溶解除去することができたが、剥離層を0.03μmとした比較例2では、酸洗時に剥離が起こらず、電極箔は得られなかった。
以上、説明したように、本発明のバルブ金属複合電極箔の製造方法により、従来のエッチングAl箔以上の面積静電容量密度を有し、かつ、Ta単体およびNb単体の電極箔と比較して、電極抵抗の低いバルブ金属複合電極箔が得られる。また、集電体層としてAlを使用しており、希少金属であるTaおよびNbを単体で使用した電極箔と比較して、低コストで電極箔を作製することが可能である。
さらに、高温で粒成長させるため、より高電圧まで陽極酸化可能なバルブ金属複合電極箔が得られ、耐電圧の大きい電解コンデンサを作製することができるようになるため、有用である。
1 多孔質ペレット
2 ワイヤ
3 基板
4、7 多孔質層
5 集電体層
6 緻密層
7a、7b 合金薄膜
8 バリア層
9 剥離層
10 基板
2 ワイヤ
3 基板
4、7 多孔質層
5 集電体層
6 緻密層
7a、7b 合金薄膜
8 バリア層
9 剥離層
10 基板
Claims (13)
- 基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とし、前記緻密層の側に集電体層を形成することを特徴とするバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とし、前記緻密層の側に集電体層を形成することを特徴とするバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記緻密層の側に集電体層を形成し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とすることを特徴とするバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 基板上にバルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が、粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記合金薄膜を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整をし、前記緻密層の側に集電体層を形成し、前記異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とすることを特徴とするバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 基板上に膜厚が0.05〜1μmであるCu、Cu合金、Ag、またはAg合金からなる剥離層を形成し、得られた剥離層の上に、前記バルブ金属の緻密層を形成し、得られた緻密層の上に、前記バルブ金属、および、前記バルブ金属と相溶しない異相成分が粒子径1nm〜1μmで均一に分布した合金薄膜を形成し、前記バルブ金属、および、前記異相成分を、真空熱処理により粒調整し、前記剥離層と合金薄膜の異相成分を溶解除去して、前記合金薄膜を前記バルブ金属からなる多孔質層とするとともに、該多孔質層を前記緻密層とともに前記基板より剥離し、前記緻密層の側に集電体層を形成することを特徴とするバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記バルブ金属として、Ta、Ta合金、Nb、およびNb合金から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記集電体層を、AlまたはAl合金で形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 予め、前記バルブ金属および集電体層の成分に対して熱力学的に安定なバリア層を前記基板上に形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記バルブ金属および集電体層の成分に対して、熱力学的に安定なバリア層を、前記剥離層と前記緻密層の間に形成することを特徴とする請求項5に記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記バリア層を、TiN、ZrN、またはHfNで形成することを特徴とする請求項8または9に記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記合金薄膜の形成に、スパッタリング法または真空蒸着法を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記異相成分を、CuまたはAgとすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
- 前記基板として、石英基板またはアルミナ基板を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のバルブ金属複合電極箔の製造方法。
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