JP4186331B2 - はんだ合金組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、はんだ合金組成物に関し、特に、電子機器のはんだ付けに好適に利用することができるはんだ合金組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりはんだ合金組成物としては、Sn−Pbの共晶組成付近のもの(Pb約40重量%、融点はほぼ183℃)が代表的なものとして周知であり、濡れ性の良い、良好なはんだ合金組成物として使用されていた。これに対し近年、地球環境問題への関心の高まりから、鉛が環境や人体に及ぼす有害性が問題視されるようになって来ている。
【0003】
上記の状況の中で、Pbを含まないSn−Ag系はんだ、Sn−Zn系はんだのような、いわゆる無鉛はんだが注目されるようになって来た。しかしこれら従来より提案されて来ている無鉛はんだは濡れ性が必ずしも満足の行くものではなく、よってはんだ付け特性の点で、改良が望まれる。
【0004】
上述した事情から、環境や人体に対しての問題がなく、かつ、良好なはんだ付け特性を有するはんだ合金組成物の開発が要請されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記要請に基づいてなされたもので、その目的は、環境や人体に対しての問題がなく、かつ、良好なはんだ付け特性を有するはんだ合金組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した事情に鑑みて鋭意検討を行った結果、Snに、Agや、Cu,Bi,In,Zn,Geの少なくとも1種を添加してなる合金に、Pbを特定の極微量添加することで、上記要請を満たす良好なはんだ付け特性を有するはんだ合金組成物が得られることを見出すに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係るはんだ合金組成物は、Snが90重量%以上、Agが0.2〜4.0重量%、Cuが0.1〜3.0重量%、Biが0.01〜2.0重量%である金属と、Pbとからなり、Pbの含有率が0.01〜0.3重量%であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、Snと特定の金属(Ag,Cu,Bi)と、さらに特定の範囲の極微量のPbとからなるはんだ合金組成物としたことで、濡れ性の良い、良好なはんだ付け特性が得られ、かつ、組成物中のPbの含有量が極めて抑制されたものであることから、環境負荷の低減を大幅に図ることが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好ましい実施の形態について説明し、またその具体的構成例について、データをもって説明する。但し当然のことではあるが、本発明は以下述べる実施の形態の記述例に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係るはんだ合金組成物は、Snと、Ag,Cu,Bi,In,Zn及びGeからなる群から任意に選ばれる少なくとも1種の金属と、Pbとからなり、このはんだ合金組成物中のPbの含有率は、0.01〜0.3重量%であるものである。
【0011】
Pbの含有率が上記範囲を下回ると、良好なはんだ付け特性を得ることが困難になる。一方、Pbの含有率が上記範囲を超えても、はんだ付け特性はもはや格別に向上しない。環境や人体に及ぼす有害性低減の観点から、はんだ合金組成物中のPbは、少なくすることが望ましい。
【0012】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Pbの含有率は、好ましくは、0.04〜0.1重量%である。
【0013】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Snが主成分であることが好ましい。特に、Snの含有率が90重量%以上であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良く、また、適正溶融温度にできる。
【0014】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Agを含有する場合、該Agの含有率は、0.2〜4.0重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良い。なお、Sn−3.5Agが共晶であるところから、Agの含有率が4.0重量を超えると針状結晶析出のおそれがあり好ましくない。また、Agの含有率が低すぎると、はんだの溶融温度が高くなったり、破断強度や延びが不足する場合がある。
【0015】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Cuを含有する場合、該Cuの含有率は、0.1〜3.0重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良い。また、溶融温度を適正にし、また接合部に銅パッドがある場合、その銅がはんだに拡散することを防ぐ意味でも、上記の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Biを含有する場合、該Biの含有率が0.01〜2.0重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良い。また、Biの含有率が大きすぎると、強度は大きくなるが、延びがわるくなり、脆化する傾向が出る。
【0017】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Inを含有する場合、該Inの含有率は、0.1〜9.0重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良く、また、適正溶融温度にできる。(なお、上記Ag、Cu、Bi、Inの添加について、及びそのような場合のSiの含有率についてさらに詳細には、本出願人による特願平9−124445号の明細書参照)。
【0018】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Znを含有する場合、該Znの含有率は、0.1〜9.0重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良い。なお、Znの含有率がこの範囲を超えると、はんだの延性が低下して配線としたときに破断が生じやすくなったり、酸化し易くなるおそれが出る。(なお、Znの添加についてさらに詳細には、本出願人による特願平9−056539号の明細書参照)。
【0019】
本発明に係るはんだ合金組成物において、Geを含有する場合、該Geの含有率は、0.005〜0.5重量%であることが好ましい。この範囲であると、はんだの濡れ性が特に良好であり、はんだ付け性が良い。またGeにはドロスと称される酸化物の発生も抑制する作用がある。(なお、Geの添加についてさらに詳細には、本出願人による特願平9−348212号(特開平10−230384号)の明細書参照)。
【0020】
すなわち、上記Ag,Cu,Bi,In,Zn及びGeの各金属について、各金属成分が上述の範囲内にあれば、Pbを添加した際の効果、特に濡れ性の向上の効果を十分に発揮させることが容易に実現できる。
【0021】
上記Sn及びPb以外のAg,Cu,Bi,In,Zn及びGeの各金属については、各金属は少なくとも1種含有されていれば良い。これらの金属は、はんだ合金組成物の濡れ性を向上させるほか、はんだ合金の機械的強度や伸び、耐熱疲労性を向上させたり、融点を下げたり、ドロスの発生量を低減させたりする点で、効果がある。
【0022】
本発明に係るはんだ合金組成物において、はんだの表面特性の向上の観点から、組成物中に含まれる酸素濃度や、窒素濃度を限定してもよい。酸素濃度は好ましくは1〜1000ppmが良い。1000ppm以下であると酸素添加による合金の脆化のおそれがなく、1ppm以上であれば合金の精製が容易で、コスト的にも有利である。酸素濃度はより好ましくは、10〜500ppmが良い。窒素濃度は好ましくは1〜1000ppmが良い。窒素添加は合金の酸化を防止する。窒素濃度が1000ppm以下であるとやはり窒素添加による合金の脆化のおそれがなく、1ppm以上であれば合金の精製が容易で、コスト的にも有利である。窒素濃度はより好ましくは、10〜500ppmが良い。
【0023】
以下、具体的な実施の形態例について、詳しく説明する。
ここでは表1に示す15種の試料を用いて、15回の実施(Run)を行った。表1における各はんだ合金組成物は、Sn以外の金属について重量%を示し、残余はSnとしたものである。
【0024】
本実施の形態例では、各種金属を秤量した後、磁性るつぼに入れ、400℃窒素雰囲気の電気炉で2時間加熱溶融する。これにより作成した各はんだ合金組成物について、濡れ性の評価を行った。
【0025】
作成した試料は、濡れ性を評価する手法として、動的な濡れ現象を定量的に、しかも容易に測定できるウェッティングバランス法を用いることで、濡れ性の評価試験を行った。試験で使用した評価装置は、MULTICORE MUSTSYSTEM IIで、試験片は、0.6MMΦの無酸素銅線、フラックスは、弘輝製のIS64MSSである。実験条件は、はんだへの試験片浸漬速度を10mm/sec、浸漬深さを2mm、浸漬時間を10秒、はんだ温度は240℃とした。
【0026】
濡れ性を評価する際に重要なのは、濡れ時間(Wetting time)と、濡れ力(Wetting force)であり、濡れ時間は短いが、濡れ力は大きい方が濡れが良いと判断する。濡れ時間は、試験片がはんだと接触後、濡れ力が0に戻るまでの時間(Tb)、濡れ力は、試験片がはんだに浸漬後、10秒経過時の値(F2)とした。
【0027】
下記表1に、各種組成のはんだ合金組成物について、その濡れ性に関する測定結果を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示した評価結果より、以下の知見が得られる。
【0030】
表1中のRun1(比較)とRun2(本発明)とRun2’(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Ag−Cu系組成の合金(Run1)にPbを0.03重量%(Run2)、また0.04重量%添加した組成(Run2’)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0031】
表1中のRun3(比較)とRun4(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Bi−Ag−Cu系組成の合金(Run3)にPbを0.1重量%添加した組成(Run4)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0032】
また、Sn−Bi−Ag−Cu系組成の合金(Run3)にPbを0.4重量%添加(Run5)しても、0.1重量%添加した場合(Run4)と大きな差異はない。このことから、Pbを0.3重量%を超えて含有させても、濡れ性の向上効果はそれより大きくはならないことがわかる。
【0033】
次に表1中のRun6(比較),Run8(比較)と、Run6’(本発明),Run7(本発明),Run9(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Ag系組成の合金(Run6,8)にPbを0.02重量%または0.05重量%添加した組成(Run6’,7,9)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0034】
さらに、Run6’(本発明)とRun7(本発明)との対比、及び前記Run2(本発明)とRun2’(本発明)との対比により、本発明に係る試料の内でも、Pbの含有率が0.04重量%以上である場合が好ましいことが理解される。
【0035】
次に表1中のRun10(比較)とRun11(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Ag−In系組成の合金(Run10)にPbを0.2重量%添加した組成(Run11)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0036】
次に表1中のRun12(比較)とRun13(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Zn系組成の合金(Run10)にPbを0.3重量%添加した組成(Run13)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0037】
次に表1中のRun14(比較)とRun15(本発明)との対比により、次のことがわかる。すなわち、Sn−Ag−Ge系組成の合金(Run14)にPbを0.1重量%添加した組成(Run15)とすることにより、濡れ時間が低下し、濡れ力が増加することから、濡れ性が向上することがわかる。
【0038】
以上の結果より、Snと、Ag,Cu,Bi,In,Zn及びGeからなる群から任意に選ばれる少なくとも1種の金属と、Pbとからなり、Pbの含有率が0.01〜0.3重量%であるはんだ合金組成物は、濡れ性(はんだ付け特性)に優れることがわかる。よって、Pbの含有率が極微量であって環境負荷が極めて少ないはんだ合金で、かつ、はんだ付け特性が優れたはんだ合金組成物が得られることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
上述したように、本発明に係るはんだ合金組成物によれば、
環境や人体に対しての問題がなく、かつ、良好なはんだ付け特性を有するはんだ合金組成物を提供することつきを防止することができた。
Claims (1)
- Snが90重量%以上、Agが0.2〜4.0重量%、Cuが0.1〜3.0重量%、Biが0.01〜2.0重量%である金属と、Pbとからなり、
Pbの含有率が0.01〜0.3重量%であることを特徴とするはんだ合金組成物。
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