JP4184830B2 - 複合材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、基材表面に適宜の機能を有する下地層(中間層)を形成し、該下地層の上に光触媒層を積層した構造を有する複合材に関し、下地層の存在により膜の耐久性が低下するのを防止した複合材を提供しようとするものであり、併せて、表面反射率および反射色を抑制した複合材を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
基材表面に酸化チタン等の光触媒膜を被覆して、表面に付着した汚れ等を分解除去したり、表面を親水化する技術が知られている。例えば、特許文献1には、基材表面に光触媒を被覆して、表面に付着した汚れを分解除去する技術が記載されている。特許文献2,3には、基材表面に光触媒層を成膜し、その上に最表層として多孔質無機酸化層を成膜して、最表層の多孔質無機酸化層で親水性を得るとともに、多孔質無機酸化層の表面に付着した汚れを下層の光触媒層で分解除去して、最表層の多孔質無機酸化層の親水性を維持する技術が開示されている。特許文献4には、基材表面に光触媒層を成膜して、該光触媒自体が有する親水性を利用して基材表面を親水化する技術が開示されている。
【0003】
この種の光触媒技術においては、ガラス基材の表面に酸化チタン等の光触媒膜を直接被覆すると、ガラス基材中のナトリウムイオンが光触媒層に拡散して光触媒機能を低下させることがある。そこで、この現象を防止するために、ガラス基材と光触媒層との間に、下地層としてSiO等のナトリウム拡散抑制層を形成する場合がある。また、光触媒技術を、基材表面に反射膜を形成する表面鏡に適用する場合、反射率特性を調整する目的で、反射膜と光触媒膜との間に、下地層としてSiO、Al等の反射率特性調整層を形成する場合がある。
【特許文献1】
特開昭63−100042号公報
【特許文献2】
特開平10−36144号公報
【特許文献3】
特開2000−53449号公報
【特許文献4】
WO96/29375号国際公開公報
【特許文献5】
特開平11−228283号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス基材と酸化チタン光触媒層との間にSiO、Al等のナトリウム拡散抑制層や反射率特性調整層を形成すると、これらの膜と基材との密着力が不十分となり、膜剥離が生じやすくなる問題があった。密着力の不十分さの原因としては、光触媒層、特に酸化チタンの結晶化による応力・歪みの発生が考えられる。下地層としてナトリウム拡散抑制層を形成した場合の膜剥離の問題を解決する手法として、特許文献5では、下地層にシリカ−アルミナ、シリカ−チタニアまたはシリカ−アルミナ−チタニアを含有させる手法が提案されていた。しかし、この手法を施した場合にも、熱水にさらすと膜剥離が生じる場合があった。
【0005】
この発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、下地層を形成する場合に膜の耐久性をより向上させた複合材を提供しようとするものである。また、この発明は、併せて、表面反射率および反射色を抑制した複合材を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ガラス基板の表面にLaとAl、もしくはPrとAl、もしくはLaとSiO 複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有するものである。これによれば、ガラス基板と膜との密着力が向上し、例えば熱水にさらした場合の耐剥離性を向上させることができる。
【0007】
この発明は、ガラス基板の表面にTa からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO 光触媒層を積層したものである。これによれば、ガラス基板と膜との密着力が向上し、例えば熱水にさらした場合の耐剥離性を向上させることができる。
【0008】
この発明は、ガラス基板の表面にCrからなる反射膜を形成し、該反射膜の上にLa とAl の複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO 光触媒層を積層したものである。これによれば、ガラス基板と膜との密着力が向上し、例えば熱水にさらした場合の耐剥離性を向上させることができる。
【0009】
この発明は、ガラス基板の表面にCrからなる反射膜を形成し、該反射膜の上にTa からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO 光触媒層を積層したものである。これによれば、ガラス基板と膜との密着力が向上し、例えば熱水にさらした場合の耐剥離性を向上させることができる。
【0011】
この発明の複合材は、透過型素子として、あるいは非透過型素子として構成することができる。透過型素子としては、例えば窓ガラス、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ等として構成することができる。非透過型素子としては、例えば反射型素子である鏡として構成することができる。鏡を構成する場合は、例えば自動車用アウターミラー、バスルーム用ミラー、歯科用検診ミラー等のミラー本体として利用することができる。
【0012】
この発明において、前記ガラス基板は、用途に応じて透明、不透明、半透明の材料を使用することができる。前記光触媒層は、例えば光触媒TiOを主成分とすることができる。ガラス基板をソーダ石灰ガラス等の透明ガラス板で構成すれば、下地層を構成するLaとAl、もしくはPrとAl、もしくはLaとSiO 複合酸化物または混合物、またはTa 、いずれもガラス基板とTiO光触媒層の中間の屈折率となるので(あるいは中間の屈折率となるように調整することができるので)、下地層を有しない場合に比べて表面反射率および反射色を抑制する(ニュートラルな色調にする)ことができる。
【0013】
この発明は、前記光触媒層の上に、他の層として、例えば親水層を積層して防曇素子として構成することができる。この親水層は、例えばSiOを主成分とすることができる。親水層は、多孔質状膜、非多孔質状膜のいずれも使用できるが、多孔質SiO等の多孔質状膜に形成すれば、親水性がより向上する。また、親水層の膜厚を60〜130nm、好ましくは70〜130nm、より好ましくは80〜120nmに設定することにより、表面反射率および反射色を極力抑制することができる。表面反射率および反射色を極力抑制した防曇鏡は、自動車用アウターミラーやバスルーム用ミラーの他、歯科用検診ミラーとしても好適である。すなわち、歯科用検診ミラーとして構成すれば、口内診察の際、防曇効果が得られるとともに、二重像が抑制され、反射色も抑えられるので、観察対象が小さくても視認性が良好である。
【0014】
この発明は、前ガラス基板を透明ガラス基板とし、該複合材の表裏面間にわたり透明に構成したものとすることができる。また、前記透明ガラス基板の背面に反射膜を形成して鏡を構成することができる。また、前記透明ガラス基板と前記下地層との間に反射膜を形成して鏡を構成する場合、前記下地層は、該複合材の表面反射率特性を調整する反射率特性調整層を構成するものとすることができる。
【0015】
この発明は、前記透明ガラス基板の裏面側に、第2の基板を対向配置し、該両基板間にエレクトロクロミック現象を発現する物質を挟み込んでEC素子を構成することができる。この場合、前記第2の基板を透明基板とし、該第2の基板の外面側に反射膜を成膜することにより、ECミラーを構成することができる。これに代えて、前記第2の基板(不透明でよい)の内面側に電極兼反射膜を形成することによっても、ECミラーを構成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を以下説明する。なお、図面に示す複合材の断面構造は模式的に示したものであり、図示された各層の膜厚は実際の膜厚を反映したものではない。この発明の実施の形態を図1に断面図で示す。複合材10は、透明ガラス基板12の片側の面に、下地層14、光触媒層16、親水層18を真空蒸着、スパッタリング等のPVD法、その他の成膜方法で順次積層して構成され、複合材10の表裏面間にわたり透明な防曇素子として構成されている。下地層14は、例えばナトリウム拡散抑制層あるいは反射率特性調整層あるいはその両方を構成するもので、(a)SiO、Al である無機酸化物と、La、Pであるランタノイドを用いた酸化ランタノイドとの混合物またはそれらの複合酸化物、(b)Ta いずれかで構成され、ガラス基板12に対する膜の密着性が改善されている。光触媒層16は、光触媒TiOで構成されている。親水層18は、例えば多孔質SiOあるいは非多孔質SiOで構成されている。多孔質構造のSiOは、例えばSiOを出発材料とするPVD法により多孔質状に成膜する場合は、その成膜条件を多孔質膜が形成される条件に設定して成膜する。すなわち、薄膜の微細構造モデルで知られているように、真空蒸着法の場合は基板温度が低い状態で成膜し、スパッタ法の場合はアルゴン圧力が高く基板温度が低い状態で成膜することにより、多孔質構造のSiOを形成することができる。
【0017】
図1の複合材10によれば、積層膜20の最表面の親水層18で親水性が得られ、親水層18の表面に付着した汚れ等を、光励起された光触媒層16の光触媒作用で分解除去することにより、親水層18の親水性が維持される。また、下地層14により、ガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散して光触媒機能が低下するのが防止される。また、下地層14は、ガラス基板12と光触媒層16の中間の屈折率の材料を使用することにより、反射率特性調整層として、表面反射を低減する機能を果たすことができる。
【0018】
図1の構造の複合材10は、例えば、車両用、建築用等の窓ガラス、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、カメラ用フィルター等として利用する(積層膜20を外側に向けて配置する)ことができる。いずれの場合も、親水性、防汚性が得られる。なお、車両用、建築用等の窓ガラス、眼鏡用レンズ等の場合、必要に応じて、積層膜20をガラス基板12の両面に成膜することもできる。
【0019】
また、図1の構造を用いて、図2に示すように、ガラス基板12の裏面にAl、Cr等の反射膜22を成膜すれば、鏡24(裏面鏡)が構成され、車両用アウターミラー、バスルーム用ミラー、歯科用検診ミラー等のミラー本体として利用することができる。いずれの場合も、防曇鏡として、親水性、防汚性が得られる。
【0021】
この発明の他の実施の形態を図3に示す。図1、図2と共通する部分には、同一の符号を用いる。この複合材26は、表面鏡を構成するもので、透明または不透明ガラス基板12の片側の面に、反射膜28、下地層30、光触媒層16、親水層18を真空蒸着、スパッタリング等のPVD法、その他の成膜方法で順次積層して構成されている。反射膜28は、Al、Cr等で構成されている。下地層30は、反射率特性調整層を構成するもので、SiO、Al である無機酸化物と、La、Prを用いた酸化ランタノイドとの混合物もしくはそれらの複合酸化物、またはTa いずれかで構成され、ガラス基板12に対する膜の密着性が改善されている。光触媒層16は、例えば光触媒TiOで構成されている。親水層18は、例えば多孔質SiOあるいは非多孔質SiOで構成されている。
【0022】
図3の複合材26によれば、積層膜32の最表面の親水層18で親水性が得られ、親水層18の表面に付着した汚れ等を、光励起された光触媒層16の光触媒作用で分解除去することにより、親水層18の親水性が維持される。また、下地層30により、反射光の分光反射率特性が調整される。
【0023】
図3の構造の複合材26は、例えば、車両用アウターミラー、バスルーム用ミラー、歯科用検診ミラー等のミラー本体として利用することができる。いずれの場合も、防曇鏡として、親水性、防汚性が得られる。車両用アウターミラーの場合は、下地層30の材料および膜厚を適切に設定することにより、反射光色を光干渉を利用した青色にして、ブルー鏡を構成することができる。
【0025】
【実施例および参考例
(実施例1:図1の複合材10の実施例:下地層が酸化ランタノイドを含有)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてLaとAlの複合酸化物または混合物(La3/Al重量比=50/50)を30nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0026】
(実施例2:図1の複合材10の実施例:実施例1の複合酸化物または混合物の配合割合変更)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてLaとAlの複合酸化物または混合物(La3/Al重量比=80/20)を30nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0027】
(実施例3:図1の複合材10の実施例:実施例1のランタノイド変更)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてPrとAlの複合酸化物または混合物(Pr3/Al重量比=50/50)を30nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0028】
(実施例4:図1の複合材10の実施例:実施例1の酸化物変更)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてLaとSiOの複合酸化物または混合物(La3/SiO重量比=50/50)を30nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0029】
参考例5:図1の複合材10の参考例:実施例1のランタノイドおよび酸化物変更)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてCeOとSiOの複合酸化物または混合物(CeO2/SiO重量比=50/50)を30nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0030】
(実施例6:図3の複合材26の実施例:下地層が酸化ランタノイドを含有)ガラス基板12の表面にスパッタリング法でCrを100nm以上成膜して反射膜28を形成した後、ガラス基板12を200℃に加熱して、反射膜28上に、真空蒸着法で、反射率特性調整層を構成する下地層30として、LaとAlの複合酸化物または混合物(La3/Al重量比=50/50)を10nm厚、光触媒層16としてTiOを65nm厚、親水層18としてSiOを10nm厚で順次成膜した。光触媒層16は、基板温度が高い状態で成膜されるので、成膜の時点で光触媒化され、その後の500℃での熱処理はしない。
【0031】
(実施例7:図1の複合材10の実施例:下地層をTaで構成)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてTaを70nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0032】
参考例8:図1の複合材10の参考例:下地層をZrOで構成)
100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてZrOを70nm厚、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。ガラス基板12と光触媒層16との間に、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14が配置されているので、この熱処理の際にガラス基板12中のナトリウムイオンが光触媒層16に拡散するのが防止される。
【0033】
(実施例9:図3の複合材26の実施例:下地層をTaで構成)
ガラス基板12の表面にスパッタリング法でCrを100nm以上成膜して反射膜28を形成した後、ガラス基板12を200℃に加熱して、反射膜28上に、真空蒸着法で、反射率特性調整層を構成する下地層30としてTaを10nm厚、光触媒層16としてTiOを65nm厚、親水層18としてSiOを10nm厚で順次成膜した。光触媒層16は、基板温度が高い状態で成膜されるので、成膜の時点で光触媒化され、その後の500℃での熱処理はしない。
【0034】
参考例10:図1の複合材10の参考例:下地層をYで構成)
ガラス基板12上に、真空蒸着法で、反射率特性調整層を構成する下地層14としてYを70nm厚、光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18として多孔質SiOを20nm厚で順次成膜した。
【0035】
参考例11:図1の複合材10の参考例:下地層をZrOとTiOの混合物で構成)
ガラス基板12上に、真空蒸着法で、反射率特性調整層を構成する下地層14としてZrOとTiOの混合物(ZrOとTiOの混合重量比が9:1で、屈折率が約2.1程度となるもの)を70nm厚、光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18として多孔質SiOを20nm厚で順次成膜した。この実施例によれば、下地層をZrOで構成した参考例8に比べて、屈折率が若干高くなり、これに伴い反射率が若干高くなり、分光的な反射ピークも若干高くなるものの、膜が緻密となり膜強度が向上する。
【0036】
(比較例1:図1の構造において下地層なし)
図1の構造のナトリウム拡散抑制性能を調べるために、比較例1として、100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、未光触媒状態の光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。
【0037】
(比較例2:図1の構造において下地層をSiOで構成)
図1の構造の耐剥離性能を調べるために、比較例2として、100℃に加熱したガラス基板12上に、真空蒸着法で、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてSiO(ランタノイドを含有せず)を30nm厚、光触媒層16としてTiO(未光触媒状態)を200nm厚、親水層18としてSiOを20nm厚で順次成膜した。その後500℃で熱処理して、光触媒層16を光触媒化した。
【0038】
(比較例3:図3の構造において下地層をAlで構成)
図3の構造の耐剥離性能を調べるために、比較例3として、ガラス基板12の表面にスパッタリング法でCrを100nm以上成膜して反射膜28を形成した後、ガラス基板12を200℃に加熱して、反射膜28上に、真空蒸着法で、反射率特性調整層を構成する下地層30としてAl(ランタノイドを含有せず)を10nm厚、光触媒層16としてTiOを75nm厚、親水層18としてSiOを10nm厚で順次成膜した。
【0039】
以上の実施例または参考例1〜11および比較例1〜3の試料を作製し、各試料の性能を次の方法により評価した。
(a)光触媒性能
各試料の親水層18の上に油を落として水滴接触角を高くし、これに紫外線を照射して水滴接触角の変化を調べた。紫外線照射開始後一定時間以内に水滴接触角が5°以下になるものを○とし、5°よりも高いままのものを×とした。
(b)耐熱水性能
各試料を沸騰水中に一定時間入れ、膜の密着力の変化(膜剥離の有無)を調べた。膜剥離が無いものを○とし、膜剥離があるものを×とした。
【0040】
実施例または参考例1〜11の試料の能評価結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004184830
【0041】
比較例1〜3の試料の性能評価結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004184830
【0042】
表1,2の性能評価結果によれば、次のことが言える。下地層(ナトリウム拡散抑制層)が無い比較例1では十分な光触媒性能が得られないが、実施例または参考例1〜11ではいずれも十分な光触媒性能が得られている。下地層がランタノイドを含有してないかあるいはTa、ZrO、Y、ZrOとTiOの混合物で構成されていない比較例1〜3では十分な耐熱水性能が得られないが、実施例または参考例1〜11ではいずれも十分な耐熱水性能が得られている。
【0043】
図4は、実施例と比較例の分光反射率特性を示す。特性Aは実施例1の構造においてガラス基板12の裏面にCr反射膜を成膜した鏡の特性、特性Bは比較例1の構造においてガラス基板12の裏面にCr反射膜を成膜した鏡の特性である。これによれば、ナトリウム拡散抑制層を構成する下地層14としてLaとAlの複合酸化物または混合物(La3/Al重量比=50/50)を30nm厚で設けても、下地層14が無い場合の分光反射率特性がほぼ維持されることがわかる。
【0044】
図4において、特性Cは実施例6の特性、特性Dは比較例3の特性である。これによれば、反射率特性調整層を構成する下地層30が酸化ランタノイドLaを含有しても、酸化ランタノイドLaを含有しない場合の分光反射率特性がほぼ維持されることがわかる。
【0046】
次に、図1の複合材について、反射色と表面反射率を極力抑えるように構成する場合について説明する。はじめに、異なる2つの媒質の境界面での反射について簡単に説明する。図5は、屈折率が異なる媒質A(屈折率n)と媒質B(屈折率n)が接する場合において、媒質Aから入射された光が、媒質A,Bの境界面aで一部が反射し、残りが透過する状態を示す。境界面aでの振幅反射係数rは、
r=(1−ρ)/(1+ρ) …(1)
と表すことができる。(1)式において、ρは媒質A,Bの屈折率の比であり、図5の場合は、
ρ=n/n
である。一方、境界面aでの振幅透過係数tは、
t=2/(1+ρ) …(2)
と表すことができる。
【0047】
ここで、光が垂直入射である場合には、反射率Rと透過率は、振幅反射係数rと振幅透過係数tを用いて、以下のように記述することができる。すなわち、(1)式および(2)式から、
r=(n−n)/(n+n
t=2n/(n+n
入射媒質Aおよび出射媒質Bがともに透明である場合、
R=r={(n−n)/(n+n)} …(3)
T=n・t/n=4n・n/(n+n …(4)
と表すことができる。(3)式から、反射率Rは媒質A,Bの屈折率差(n−n)が小さいほど低くなることがわかる。
【0048】
図6は、図1の構造において下地層14および親水層18がない構造(透明ガラス基板12の表面にTiO光触媒層16のみが形成されている構造)について、TiO光触媒層16の膜厚を変化させた場合の分光反射率特性を示す。この構造では、TiO光触媒層16の膜厚により、種々の反射率特性を示し、種々の反射色を生じてしまう。
【0049】
表3は、図1の下地層14がない構造(透明ガラス基板12の表面にTiO光触媒層16およびSiO親水層18のみが形成されている構造)において、TiO光触媒層16の膜厚を200nmとし、SiO親水層18の膜厚を変化させた場合の、可視光域全体での平均の反射率を示す。
【表3】
Figure 0004184830
【0050】
なお、表3において、1行目の反射率4.2%は、図1の下地層14、光触媒層16、親水層18がない構造(透明ガラス基板12の表面が外気に露出している構造)における表面反射率(透明ガラス基板12自身の表面反射率)である。表3によれば、透明ガラス基板12の表面にTiO光触媒層16およびSiO親水層18のみが形成されている構造の表面反射率は、透明ガラス基板12自身の表面反射率よりも高くなることがわかる。
【0051】
図7は、図1の構造において親水層18がない構造の分光反射率特性を示す。曲線Aは、透明ガラス基板12の表面に下地層14としてZrO膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を140nm厚に形成した場合の特性を示す。曲線Bは、透明ガラス基板12の表面に下地層14としてTa膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を140nm厚に形成した場合の特性を示す。曲線Cは、比較のため、下地層14がなくTiO光触媒層16を140nm厚に形成した場合の特性を示す。透明ガラス基板12(ソーダ石灰ガラス)の屈折率は約1.5、TiO光触媒層16の屈折率は約2.3であり、下地層14としてZrO、Taのように、透明ガラス基板12とTiO光触媒層16の中間の屈折率を有する酸化膜を使用することにより(ZrO膜の屈折率は約2.05、Ta膜の屈折率は約2.1)、下地層14がない場合に比べて全体的に反射率が下がり、しかも分光的な反射ピークが小さくなるので、反射色が生じるのを抑えることができる。
【0052】
図8は、図1の構造において下地層14としてZrO膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を140nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を様々に変えて形成した場合の分光反射率特性を示す。(a)はSiO親水層18の膜厚を20〜100nmに変化させた場合の各特性、(b)は同じく110〜140nmに変化させた場合の各特性である。比較のため、SiO親水層18がない場合(ZrO下地層14およびTiO光触媒層16の膜厚は変更なし)の特性を併せて示す。図8によれば、可視光域全体での平均の反射率は、SiO親水層18の膜厚を0から厚くしていくと徐々に下がり、膜厚100nmで反射率は最小値となり、さらに厚くすると反射率は高くなり、膜厚130nmで特定の波長で波あるが、反射率ピークがSiO親水層18がない場合と一致する。SiO親水層18の膜厚をさらに厚くすると、全体の反射率が上昇するので、SiO親水層18の膜厚の上限は130nmが望ましいことがわかる。
【0053】
この現象はTiO光触媒層16の膜厚を変えても、ZrO下地層14の膜厚を変えても、また、下地層14の材料を変えても同様となる。以下に、その例を示す。図9は、図1の構造において下地層14としてZrO膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性を示す。比較のため、SiO親水層18がない場合(ZrO下地層14およびTiO光触媒層16の膜厚は変更なし)の特性を併せて示す。また、図9の特性における可視光域全体での平均の反射率を表4に示す。なお、表4において、1行目の反射率4.2%は、図1の下地層14、光触媒層16、親水層18がない構造(透明ガラス基板12の表面が外気に露出している構造)における表面反射率(透明ガラス基板12自身の表面反射率)である。
【表4】
Figure 0004184830
【0054】
図10は、図1の構造において下地層14としてZrO膜を200nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性を示す。比較のため、SiO親水層18がない場合(ZrO下地層14およびTiO光触媒層16の膜厚は変更なし)の特性を併せて示す。
【0055】
図11は、図1の構造において下地層14としてTa膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性を示す。比較のため、SiO親水層18がない場合(Ta下地層14およびTiO光触媒層16の膜厚は変更なし)の特性を併せて示す。
【0056】
図12は、図1の構造において下地層14としてY膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性を示す。比較のため、SiO親水層18がない場合(Y下地層14およびTiO光触媒層16の膜厚は変更なし)の特性を併せて示す。
【0057】
図8〜図12および表3、表4の結果から、図1の構造において、透明ガラス基板12をソーダ石灰ガラスで構成し、下地層14をZrO、Ta、Yのいずれかで構成し、光触媒層16をTiOで構成し、親水層18をSiOで構成した場合に、反射色を抑え、かつ、表面反射率を極力抑えて透明ガラス基板12自体の表面反射率(4.2%)と同程度にしたい場合は、SiO親水層18の膜厚を60〜130nm、好ましくは70〜130nmとするのが望ましいことがわかる。さらに、表面反射率を透明ガラス基板12自体の表面反射率(4.2%)よりも低く抑えたい場合は、SiO親水層18の膜厚を80〜120nmとするのが望ましいことがわかる。下地層14を無機酸化物と酸化ランタノイドとの混合物もしくは複酸化物、または、ZrOとTiOの混合物で構成した場合も同様と考えられる。以上のことを図13に簡単に示す。
【0058】
【その他の実施の形態】
この発明の複合材を使用した自動車用ECアウターミラー(防眩ミラー)のミラー本体の実施の形態を図14に示す。図1と共通する部分には同一の符号を用いる。このECアウターミラーのミラー本体32は、ガラスで構成される透明基板12の片側の面に透明な積層膜20が成膜されている。積層膜20は、下地層14、光触媒層16、親水層18を真空蒸着、スパッタリング等のPVD法、その他の成膜方法で順次積層して構成されている。下地層14は、例えばナトリウム拡散抑制層あるいは反射率特性調整層あるいはその両方を構成するもので、SiO、Al である無機酸化物と、La、Prを用いた酸化ランタノイドとの混合物もしくはそれらの複合酸化物、またはTa いずれかで構成され、ガラス基板12に対する膜の密着性が改善されている。光触媒層16は、例えば光触媒TiOで構成されている。親水層18は、例えば多孔質SiOあるいは非多孔質SiOで構成されている。
【0059】
ガラス基板12の裏面には、ITO、SnO等の透明電極膜34、EC層35(IrO、NiO等の酸化発色層36、Ta等の固体電解質層38、WO、MoO等の還元発色層40の積層体)、Al、Cr等の電極兼反射膜42が順次成膜されている。この積層膜34,35,42は、エポキシ等のシール剤44および別のガラス基板(封止ガラス)46で封止されている。ガラス基板12の上下両縁部には、クリップ電極48,50が装着されている。クリップ電極48は透明電極膜34に導通し、クリップ電極50は電極兼反射膜42に導通している。クリップ電極48,50間に着色電圧を印加することによりEC層35は着色し(防眩状態)、消色電圧を印加しまたは両電極間を短絡することによりEC層35は消色する(非防眩状態)。
【0060】
参考例12:図14のミラー本体32の参考例
1.1mm厚のガラス基板12の表面上に、下地層14としてZrO膜を70nm厚、光触媒層16としてTiOを200nm厚、親水層18としてSiOを100nm厚に順次成膜し、ガラス基板12の裏面上に透明電極膜34としてITO膜を220nm厚、酸化発色層36としてSn・IrO膜を120nm厚、固体電解質層38としてTa膜を550nm厚、還元発色層40としてWO膜を500nm、電極兼反射膜42としてAlを100nm厚に順次成膜し、エポキシシール剤44を介して封止ガラス46にて封止し、クリップ電極48,50を装着して図14のミラー本体32を作製した。クリップ電極48,50に電圧1.3Vを印加して防眩状態としたときの分光反射率特性を図15に特性Aで示す。比較のため、ガラス基板12の表面に下地層14、光触媒層16、親水層18がない場合の分光反射率特性を特性Bで示し、下地層14がない場合(TiO光触媒層16およびSiO親水層18の膜厚は変更なし)の分光反射率特性を特性Cで示す。図15によれば、参考例12のミラー本体32の特性Aは、下地層14がない場合の特性Cに比べて、下地層14、光触媒層16、親水層18がない場合の特性Bに近く、EC素子本来の色調に近い色調が得られる。また、SiO親水層18の膜厚が100nmと比較的厚いので表面反射率が抑えられ、防眩状態での反射率を、下地層14、光触媒層16、親水層18がない場合と同等かそれ以下とすることができる。表5は図15の特性における可視光域全体での平均の反射率を示す。
【表5】
Figure 0004184830
【0061】
この発明の複合材を使用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の他の実施の形態を図16に示す。図1と共通する部分には同一の符号を用いる。このECアウターミラーのミラー本体51は、透明ガラス基板12の裏面にITO、SnO等の透明電極膜52が成膜されている。透明ガラス基板12と対向配置されるガラス等の基板54(不透明でよい)の内周面には、Al、Cr等の電極兼反射膜56が成膜されている。透明ガラス基板12と基板54との間にはEC層58を構成するEC溶液(例えば、ビオロゲン等のEC物質、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート等の溶媒、ベンゾフェノン、シアノアクリレート等の紫外線吸収剤の混合溶液)が充填されている。EC層58はシール剤60で封止されている。透明ガラス基板12の下縁部には、クリップ電極62が装着され、透明電極膜52と導通している。基板54の上縁部には、クリップ電極64が装着され、電極兼反射膜56と導通している。クリップ電極62,64間に着色電圧を印加することによりEC層58は着色し(防眩状態)、消色電圧を印加しまたは両電極間を短絡することによりEC層58は消色する(非防眩状態)。
【0062】
この発明の複合材を使用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体のさらに別の実施の形態を図17〜図19にそれぞれ示す。図1と共通する部分には同一の符号を用いる。これらは透明ガラス基板66の裏面にAl、Cr等の反射膜68を成膜したものである。反射膜68の背面には保護コート69が被覆されている(ただし、反射膜68が腐食を起こさない場合は保護コート69は不要)。図17のECアウターミラーのミラー本体70は、透明ガラス基板66の前面に透明電極膜72およびSiO等の電極保護層74を成膜し、透明ガラス基板12の背面にITO、SnO等の透明電極膜75およびWO、MoO、IrO、NiO等のEC物質膜76を成膜し、両基板12,66間に電解質溶液78(例えば、LiI、LiClO等の電解質、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート等の溶媒、ベンゾフェノン、シアノアクリレート等の紫外線吸収剤の混合溶液)を充填している。EC層80(EC物質膜76および電解質溶液78)はシール剤82で封止されている。透明ガラス基板12の下縁部には、クリップ電極84が装着され、透明電極膜75と導通している。透明ガラス基板66の上縁部には、クリップ電極86が装着され、透明電極膜72と導通している。図18のECアウターミラーのミラー本体88は、図17におけるEC物質膜76と電解質溶液78の配置を入れ替えたものである。図17と共通する部分には同一の符号を用いる。図19のECアウターミラーのミラー本体89は、EC層90をEC溶液で構成したものである。EC層90はシール材92で封止されている。図17、図18と共通する部分には、同一の符号を用いる。
【0063】
この発明の複合材を使用して、全体を透明に構成したEC素子の実施の形態を図20〜図23にそれぞれ示す。これらは、例えば、建築物、車両等の調光窓等として利用することができる。前記各実施の形態と共通する部分には、同一の符号を用いる。図20のEC素子94は、図14の構造において、電極兼反射膜42に代えて透明電極膜96を配置し、シール剤44をエポキシ等の透明材料で構成し、ガラス基板98を透明ガラス基板で構成したものである。図21のEC素子100は、図17の構造において、反射膜68および保護コート69を取り除いたものである。図22のEC素子102は、図18の構造において、反射膜68および保護コート69を取り除いたものである。図23のEC素子104は、図19の構造において、反射膜68および保護コート69を取り除いたものである。
【0064】
なお、前記各実施の形態では、下地層を単一の層で構成した場合について説明したが、異なる材料の複数の層の積層構造で構成することもできる。例えば、図1の構造において、下地層14の1層目を(a)SiO、Al である無機酸化物と、La、Prを用いた酸化ランタノイドとの混合物またはそれらの複合酸化物、(b)Ta いずれかの材料で構成し、2層目をこれらのうちの他のいずれかの材料またはこれら以外の材料(屈折率がガラス基板12とTiO光触媒層16の中間の材料)で構成することができる。下地層14を3層以上の積層構造にすることもできる。下地層14を積層構造にする場合のその各層の膜厚は、例えば50nm以下に構成することができる。このように下地層を積層構造としても、その各層の屈折率をガラス基板12とTiO光触媒層16の中間の屈折率にすれば、下地層14全体としてガラス基板12とTiO光触媒層16の中間の屈折率となり、下地層14がない場合に比べて表面反射率を低減することができる。
【0065】
参考として、下地層14の1層目をTiOで構成し、2層目をSiOで構成した場合の分光反射率特性を図24に曲線Aで示す。これは、図1の構造において、下地層14の1層目を20nm厚のTiO、2層目を20nm厚のSiOとした2層積層構造で構成し、その上に180nm厚のTiO光触媒層16および20nm厚のSiO親水層18を順次積層した複合材の分光反射率特性を示す。比較のため、同構造において下地層14がない場合の分光反射率特性を曲線Bで示す。2層積層構造の下地層14がある場合は、下地層14がない場合に比べて、全体的に反射率が下がり、また、分光的な反射ピークが少なくなるので、反射色が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示す模式断面図である。
【図2】 この発明の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図3】 この発明の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図4】 実施例と比較例の分光反射率特性を示す図である。
【図5】 屈折率が異なる透明媒質A,Bが接する場合の光の反射および透過を説明する図である。
【図6】 図1の構造において下地層14および親水層18がない場合の分光反射率特性図である。
【図7】 図1の構造において親水層18がない場合の分光反射率特性図である。
【図8】 図1の構造において下地層14としてZrO膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を140nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を様々に変えて形成した場合の分光反射率特性図である。
【図9】 図1の構造において下地層14としてZrO膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性図である。
【図10】 図1の構造において下地層14としてZrO膜を200nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性図である。
【図11】 図1の構造において下地層14としてTa膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性図である。
【図12】 図1の構造において下地層14としてY膜を70nm厚に形成し、その上にTiO光触媒層16を200nm厚に形成し、その上にSiO親水層18を膜厚を110〜140nmに変えて形成した場合の分光反射率特性図である。
【図13】 図1の複合材について、反射色と表面反射率を極力抑えるように構成する場合のSiO親水層18の膜厚の範囲を説明する図である。
【図14】 図1の構造を利用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の実施の形態を示す模式断面図である。
【図15】 図14のECミラー他の防眩時の分光反射率特性図である。
【図16】 図1の構造を利用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図17】 図1の構造を利用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図18】 図1の構造を利用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図19】 図1の構造を利用した自動車用ECアウターミラーのミラー本体の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図20】 図1の構造を利用し全体を透明に構成したEC素子の実施の形態を示す模式断面図である。
【図21】 図1の構造を利用し全体を透明に構成したEC素子の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図22】 図1の構造を利用し全体を透明に構成したEC素子の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図23】 図1の構造を利用し全体を透明に構成したEC素子の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図24】 図1の構造において下地層14をSiOとTiOの2層積層構造とした場合の分光反射率特性図である。
【符号の説明】
10…複合材、12…ガラス基板(基材)、14…ナトリウム拡散抑制層または反射率特性調整層(下地層)、16…光触媒TiO(光触媒層)、18…SiO(親水層)、22,28…反射膜、24,26…鏡(複合材)、30…反射率特性調整層(下地層)、 32,51,70,88,89…自動車用ECアウターミラーのミラー本体(EC素子、複合材)、42,56…電極兼反射膜、46,54,66,98…第2の基板、94,100,102,104…EC素子。

Claims (17)

  1. ガラス基板の表面にLaとAlの複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  2. ガラス基板の表面にPrとAlの複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  3. ガラス基板の表面にLaとSiOの複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  4. ガラス基板の表面にCrからなる反射膜を形成し、該反射膜の上にLaとAlの複合酸化物または混合物からなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  5. ガラス基板の表面にTaからなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  6. ガラス基板の表面にCrからなる反射膜を形成し、該反射膜の上にTaからなる下地層を形成し、該下地層の上にTiO光触媒層を積層した構造を有する複合材。
  7. 前記光触媒層の上に親水層を積層してなる請求項1からのいずれか1つに記載の複合材。
  8. 前記親水層が、SiOを主成分とする請求項記載の複合材。
  9. 前記親水層の膜厚が60〜130nmである請求項記載の複合材。
  10. 前記ガラス基板が透明ガラス基板であり、該複合材の表裏面間にわたり透明に構成されている請求項1からのいずれか1つに記載の複合材。
  11. 前記透明ガラス基板の背面に反射膜が形成されて鏡を構成している請求項10に記載の複合材。
  12. 前記透明ガラス基板の裏面側に、第2の基板を対向配置し、該両基板間にエレクトロクロミック現象を発現する物質を挟み込んでEC素子を構成している請求項10記載の複合材。
  13. 前記第2の基板が透明基板であり、該第2の基板の外面側に反射膜が成膜されてECミラーを構成している請求項12記載の複合材。
  14. 前記第2の基板の内面側に電極兼反射膜が形成されてECミラーを構成している請求項12記載の複合材。
  15. 自動車用アウターミラーのミラー本体として構成されている請求項111314のいずれか1つに記載の複合材。
  16. バスルーム用ミラーのミラー本体として構成されている請求項11の何れか1つに記載の複合材。
  17. 歯科用検診ミラーのミラー本体として構成されている請求項11の何れか1つに記載の複合材。
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