JP2008541168A - 制御された表面形態をもつ自己清掃の親水性コーティングを有するエレクトロクロミックデバイス - Google Patents

制御された表面形態をもつ自己清掃の親水性コーティングを有するエレクトロクロミックデバイス Download PDF

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Abstract

乗物用の可変反射度バックミラーは、(a)少なくとも高反射度状態と低反射度状態を示すように印加電位に応答して反射率が変化する可変反射度ミラー素子と、(b)前記ミラー素子の前面に付着され、制御された表面形態(312)を含む自己清掃親水性コーティング(300)と、を備えている。
【選択図】図6

Description

本発明は、一般に、エレクトロクロミックデバイスに係り、より詳細には、制御された表面形態を有する自己清掃親水性コーティングを備えた乗物のバックミラーのようなエレクトロクロミックデバイスに係る。
本出願は、2004年10月29日に出願された“ELECTROCHROMIC DEVICE HAVING A SELF-CLEANING HYDROPHILIC COATING WITH AN ACID RESISTANT UNDER LAYER”と題する米国特許出願第10/976,940号の一部継続であり、これは、2003年10月30日に出願された“ELECTROCHROMIC DEVICE HAVING A SELF-CLEANING HYDROPHILIC COATING WITH AN ACID RESISTANT UNDER LAYER”と題する米国プロビジョナル特許出願第60/515,588号の利益を請求するものであり、これらは、そこに引用された全ての参照文献を含めて、その全体を参考としてここに援用する。又、本出願は、2000年6月23日に出願された“AN ELECTRO-OPTIC DEVICE HAVING A SELF-CLEANING HYDROPHILIC COATING”と題する米国特許出願第09/602,919号、並びに1999年11月5日に出願された“ELECTROCHROMIC DEVICE HAVING A SELF-CLEANING HYDROPHILIC COATING”と題する米国特許第6,193,378号にも係り、これらは、両方とも、そこに引用された全ての参照文献を含めて、その全体を参考としてここに援用する。
乗物のウインドウから水滴や霧雨を容易に除去できるようにするために、ウインドウには、通常、ウインドウの外面で水滴を玉状にさせる疎水性材料が被覆される。これらの水玉は、次いで、暴風ガラスのワイパーによって一掃されるか、又は乗物が走行するときにウインドウから吹き飛ばされる。
外部のバックミラーから水を取り除くことも等しく望まれる。しかしながら、疎水性のコーティングが外部バックミラーに施されている場合には、それらの表面に形成された水玉を有効に吹き飛ばすことができない。というのは、このようなミラーは、乗物の走行によって生じる直接空気流から比較的遮蔽されるからである。従って、ミラーの表面に形成することが許される水滴又は水玉は、それらが蒸発するか又はサイズが増大してそれらの自重で落下するまで、ミラーに留まる。これらの水滴は、小さなレンズとして作用して、運転者へ反射される映像を歪める。更に、水滴が蒸発すると、水のシミがミラー上に残され、これは、シミを残す水滴とほぼ同程度に気が散らされる。濃霧や高湿度では、外部ミラーの表面に霧が形成される。このような霧は、実際上ミラーを視覚的に使用不能にさせるほど、濃くなることがある。
上述した問題を克服する試みにおいて、ミラーの製造者は、外部ミラーの外面に親水性コーティングを設けている。米国特許第5,594,585号を参照されたい。1つのこのような親水性コーティングは、二酸化シリコン(SiO2)の単一層を含む。このSiO2層は、比較的多孔性である。ミラー上の水は、ミラーの表面にわたって均一にSiO2層の孔へ吸収され、その後、蒸発して、水のシミを残さない。SiO2のこのような単一層コーティングに伴う1つの問題は、オイル、グリース、及び他の汚染物もSiO2層の孔に充填されることである。多くのこのような汚染物、特に、炭化水素状のオイルやグリースは、容易に蒸発せず、従って、SiO2層の孔を詰まらせる。SiO2層の孔がカーワックス、オイル及びグリースで詰まったときには、ミラーの表面が疎水性となり、従って、ミラー上の水が玉となって、上述した問題を招く傾向となる。
親水性層に関する前記問題に対する解決策は、二酸化チタン(TiO2)の比較的厚い層(例えば、約1000−3000Å以上)のコーティングを形成することである。ヨーロッパ特許出願公告第EPO816466A1号を参照されたい。このコーティングは、紫外線(UV)に曝したときに光触媒特性を示す。より詳細には、このコーティングは、UV光子を吸収し、水が存在するときには、高反応性のヒドロキシルラジカルを生成し、これは、その孔内又は表面上に収集した有機材料を酸化させる傾向がある。その結果、ミラー上に収集するオイルやグリースのような炭化水素は、二酸化炭素(CO2)に変換され、従って、最終的に、UV放射がミラー表面に当たったときにミラーから除去される。従って、この特定のコーティングは、自己清掃の親水性コーティングである。
特定コーティングの親水性の1つの尺度は、水滴の側面がコーティングの表面とで形成する接触角度を測定することである。親水性の許容レベルは、この接触角度が、約30°未満であるとき、更に好ましくは、約20°未満であるとき、そして最も好ましくは、約10°未満であるときに、ミラーに存在する。前記自己清掃親水性コーティングは、UV放射に曝したときに、コーティングの自己清掃作用及び親水性効果の結果として減少する接触角度を示す。しかしながら、このコーティングの親水性効果は、ミラーがUV放射に曝されないときには時間と共に逆転する傾向がある。
前記自己清掃親水性コーティングは、比較的厚いTiO2層の頂部に約1000Å未満のSiO2フィルムを設けることにより改良することができる。米国特許第5,854,708号を参照されたい。これは、必要なUV放射の量を減少し、且つミラーがもはやUV放射にさらされなくなった後もミラーの親水性効果を長期間にわたって維持することにより、TiO2層の自己清掃特性を向上させると思われる。
前記親水性コーティングは、ガラス基板の後面にクロム又は銀の層を有する従来のバックミラーでは充分に機能するが、エレクトロクロミックミラーのような可変反射ミラーには、多数の理由で利用されていない。第1の理由は、上述した親水性コーティングの多くが色の二重像を導入して、可変反射ミラーの低端反射率を増加することである。例えば、商業的に入手できる外部のエレクトロクロミックミラーは、低端反射率が約10%で且つ高端反射率が約45ないし85%のものが存在する。屈折率の高いTiO2のような材料を含む親水性コーティングをミラーのガラス面に設けることにより、ミラーの可変反射率レベルに関わりなく、入射光の著しい量がガラス/TiO2層の界面で反射される。従って、低端反射率がそれに応じて増加される。このように高い低端反射率は、ミラーが示す可変反射度の範囲を明らかに著しく縮小し、ひいては、後続乗物のヘッドライトからの迷惑な眩光を減少させるミラーの有効性を低減させることが明らかである。
高い低端反射度が受け容れられ又はそれが望まれる用途でも従来の親水性コーティングが多くの電気−光学素子に利用されていない別の理由は、それらが著しい着色の問題を引き起こすことである。SiO2の150Å層でTiO2の1000Å層を覆ったもののようなコーティングは、非常に紫の色合いを示す。ガラス素子の後面にクロム又は銀が施された従来のミラーに使用したときには、このような着色は、高反射性のクロム又は銀層により効果的に減少される。というのは、高反射性の層からの中性色反射が、低反射率の親水性コーティング層の着色を圧倒するからである。しかしながら、エレクトロクロミック素子に使用された場合には、このような親水性コーティングは、非常に不快な着色を与え、これは、色も導入し得るエレクトロクロミック素子の他の成分により悪化される。
従来のコーティングが多くの電気−光学素子に利用されていない別の理由は、曇りである。この曇りは、SiO2のようなバインディング媒体にTiO2粒子を分散したものより成る親水性コーティングにおいて特に明らかである。二酸化チタンの粒子は、屈折率が高く、散乱光において非常に有効である。このような第1表面の親水性コーティングにより散乱される光の量は、従来ミラーの全反射光に対して僅かである。しかしながら、低反射状態のエレクトロクロミックミラーでは、ほとんどの光が第1の表面で反射され、散乱光と全反射光との比がかなり大きくなり、霧がかかった又は不明瞭な反射像を形成する。
TiO2で作られた親水性コーティングをエレクトロクロミックミラーに設けることに関連したこれらの問題のために、このようなミラーの製造者は、このような親水性コーティングを使用しないことを選択した。その結果、エレクトロクロミックミラーは、水滴や霧により生じる上述した悪い結果で悩まされている。
従って、本発明の1つの態様は、これに限定されないが、エレクトロクロミックミラーのようなエレクトロクロミックデバイスに使用するのに適した親水性コーティングを提供することにより、前記問題を解消することである。これら及び他の態様並びに効果を達成するために、本発明によるエレクトロクロミックミラーは、少なくとも高反射度状態及び低反射度状態を示すように印加電位に応答して変化する反射率を有する可変反射度ミラー素子と、制御された表面形態を有する自己清掃親水性コーティングとを備えている。以下に詳細に述べるように、制御された表面形態は、とりわけ、幾つか列挙すると、(1)製造コストを削減し、(2)反射特性を向上させ及び/又は制御し、(3)色中性化を向上させ及び/又はヨーロッパ自動車産業のブルー色調のような意図的な好ましい着色の制御性を向上させ、(4)光触媒特性を向上させ及び/又は制御し、そして(5)これまで得られなかった広い範囲の生産プロフィールを促進する。又、本発明によるエレクトロクロミックミラーは、前記低反射度状態において20%未満の反射性を示し、且つ又好ましくは、前記高及び低の両反射度状態において約25未満のC*値を示して、実質的な色中性化を示すと共に、前記高及び低の両反射度状態において実質的に曇りがない。或いは又、エレクトロクロミックミラーは、b*がC*値の少なくとも約50%に貢献し、更に好ましくは、C*値の少なくとも約75%に貢献する場合には、高反射度状態及び低反射度状態の1つ以上において約25より大きなC*値を示してもよい。
更に、エレクトロクロミックミラーは、色抑制されてもされなくてもよい耐酸性の下層を含むのが好ましい。実際に、耐酸性の下層は、これに限定されないが、酸性雨及び/又は酸性雰囲気状態が散発的に又は永続的に存在するような首都エリアのような多数の環境のいずれにおいても効果的である。
本発明によれば、エレクトロクロミックミラーは、自己清掃親水性コーティングの前面の水滴が、好ましくは約30°未満の、より好ましくは約20°未満の、そして更に好ましくは約10°未満の接触角度を示すように、充分な親水性である自己清掃親水性コーティングを備えているのが好ましい。
本発明のこれら及び多数の他の特徴、効果及び目的は、当業者であれば、以下の説明、特許請求の範囲、及び添付図面から更に理解できるであろう。
本発明は、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
添付図面に示された本発明の好ましい実施形態を以下に詳細に説明する。同じ又は同様の部分を指すために添付図面全体にわたり可能な限り同じ参照番号を使用する。
図1は、本発明により構成された外部バックミラーアッセンブリ10を示す。図示されたように、このミラーアッセンブリ10は、一般に、ハウジング15と、このハウジング15に可動に取り付けられたミラー20とを備えている。ハウジング15は、アッセンブリ10を乗物の外部に取り付けるのに適した従来の構造を有する。
図2は、ミラー20の第1の実施形態の構造を例示する。ここに広く述べるように、ミラー20は、印加電圧に応答して反射率が変化し得る反射素子100と、この反射素子100の前面112aに付着された光学的コーティング130とを備えている。反射素子100は、好ましくは、第1(即ち前部)素子112と、第2(即ち後部)素子114とを含み、これらの素子は、離間関係でシール結合されて、チャンバーを画成する。前部素子112は、前面112a及び後面112bを有し、そして後部素子114は、前面114a及び後面114bを有する。更なる説明のために、前部素子112の前面112aは、反射素子100の第1表面と称され、前部素子112の後面112bは、第2表面と称され、後部素子114の前面114aは、第3表面と称され、そして後部素子114の後面114bは、第4表面と称される。好ましくは、両素子112及び114は、透明であり、シール部材116によってシール結合される。
又、反射素子100は、第2表面112b及び第3表面114aの一方に支持された透明な第1電極118と、第2表面112b及び第3表面114aの一方に支持された第2電極120も備えている。第1電極118は、1つ以上の層を有し、色抑制コーティングとして働くことができる。第2電極120は、反射性でも半透過性でもよく、或いはミラー100の第4表面114bに個別の反射器122が設けられてもよく、この場合、電極120は、透明となる。しかしながら、好ましくは、第2電極120は、反射性又は半透過性であり、そして番号122で示された層が不透明な層であるか又は完全に省かれる。又、反射素子100は、好ましくは、第1及び第2電極118及び120に電気的に接触してチャンバーに収容されたエレクトロクロミック媒体124も含む。
このエレクトロクロミック媒体124は、エレクトロクロミックアノード及びカソード材料を含み、これらは、次の分類にグループ分けすることができる。
(i)単一層 − エレクトロクロミック媒体は、小さな非均質領域を含む材料の単一層で、材料がイオン伝導電解質の溶液に収容されて、電気化学的酸化又は還元時に電解質の溶液に保持されるような溶液相デバイスを含む。溶液相電気活性材料は、クロスリンク型ポリマーマトリクスの連続溶液相に収容することができ、これは、“ELECTROCHROMIC LAYER AND DEVICES COMPRISING SAME”と題する米国特許第5,928,572号、或いは“ELECTROCHROMIC POLYMERIC SOLID FILMS, MANUFACTURING ELECTROCHROMIC DEVICES USING SUCH SOLID FILMS, AND PROCESSES FOR MAKING SUCH SOLID FILMS AND DEVICES”と題する国際特許出願第PCT/US98/05570号の教示に従って行なわれる。
少なくとも2つがエレクトロクロミックであるところの少なくとも3つの電気活性材料を合成して、予め選択された色を与えることができ、これは、“ELECTROCHROMIC MEDIUM CAPABLE OF PRODUCING A PRE-SELECTED COLOR”と題する米国特許第6,020,987号に述べられている。
アノード及びカソード材料は、ブリッジユニットにより合成又はリンクすることができ、これは、“ELECTROCHROMIC SYSTEM”と題する国際出願第PCT/WO97/EP498号に説明されている。又、同様の方法によりアノード材料又はカソード材料をリンクすることもできる。これら特許出願に述べられた概念を更に組み合せて、種々のエレクトロクロミック材料を生成し、リンクすることができる。
更に、単一層媒体は、アノード及びカソード材料をポリマーマトリクスに合体することのできる媒体を含み、これは、“ELECTROCHROMIC POLYMER SYSTEM”と題する国際出願第PCT/WO98/EP3862号、又は“ELECTROCHROMIC POLYMERIC SOLID FILMS, MANUFACTURING ELECTROCHROMIC DEVICES USING SUCH SOLID FILMS, AND PROCESSES FOR MAKING SUCH SOLID FILMS AND DEVICES”と題する国際特許出願第PCT/US98/05570号に説明されている。
又、媒体の1つ以上の材料がデバイスの動作中に相変化を受けるような媒体、例えば、材料がイオン伝導電解質の溶液に収容されて、電気化学的酸化又は還元時に電子伝導電極に層又は部分層を形成するような堆積システムも含まれる。
(ii)多層 − 媒体は、層で作り上げられ、そして電子伝導電極に直接取り付けられるか又はその至近に閉じ込められる少なくとも1つの材料を含み、これは、電気化学的酸化又は還元時に取り付けられたままであるか又は閉じ込められたままである。この形式のエレクトロクロミック媒体の例は、金属酸化物フィルム、例えば、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、及び酸化バナジウムである。電極に取り付けられるポリチオフェン、ポリアニリン、又はポリピロルのような1つ以上の有機エレクトロクロミック層を含む媒体も、多層媒体と考えられる。
更に、エレクトロクロミック媒体は、光吸収剤、光安定剤、熱的安定剤、酸化防止剤、厚み増加剤、又は粘性変更剤のような他の材料を含んでもよい。
反射素子100は、本質的にいかなる構造を有してもよいので、このような構造の詳細は、これ以上説明しない。好ましいエレクトロクロミックミラー構造の例が、1990年2月20日にH.J.バイカー氏に発行された“SINGLE-COMPARTMENT, SELF-ERASING, SOLUTION-PHASE ELECTROCHROMIC DEVICES, SOLUTIONS FOR USE THEREIN, AND USES THEREOF”と題する米国特許第4,902,108号、1992年5月19日にJ.H.ベチテル氏等に発行された“AUTOMATIC REARVIEW MIRROR SYSTEM FOR AUTOMOTIVE VEHICLES”と題するカナダ特許第1,300,945号、1992年7月7日にH.J.バイカー氏に発行された“VARIABLE REFLECTANCE MOTOR VEHICLE MIRROR”と題する米国特許第5,128,799号、1993年4月13日にH.J.バイカー氏等に発行された“ELECTRO-OPTIC DEVICE”と題する米国特許第5,202,787号、1993年4月20日にJ.H.ベチテル氏に発行された“CONTROL SYSTEM FOR AUTOMATIC REARVIEW MIRRORS”と題する米国特許第5,204,778号、1994年1月11日にD.A.セイスト氏等に発行された“TINTED SOLUTION-PHASE ELECTROCHROMIC DEVICES”と題する米国特許第5,278,693号、1994年1月18日にH.J.バイカー氏に発行された“UV-STABILIZED COMPOSITIONS AND METHODS”と題する米国特許第5,280,380号、1994年1月25日にH.J.バイカー氏に発行された“VARIABLE REFLECTANCE MIRROR”と題する米国特許第5,282,077号、1994年3月15日にH.J.バイカー氏に発行された“BIPYRIDINIUM SALT SOLUTIONS”と題する米国特許第5,294,376号、1994年8月9日にH.J.バイカー氏に発行された“ELECTROCHROMIC DEVICES WITH BIPYRIDINIUM SALT SOLUTIONS”と題する米国特許第5,336,448号、1995年7月18日にF.T.ビューア氏等に発行された“AUTOMATIC REARVIEW MIRROR INCORPOTATING LIGHT PIPE”と題する米国特許第5,434,407号、19995年9月5日にW.L.トナー氏に発行された“OUTSIDE AUTOMATIC REARVIEW MIRROR FOR AUTOMOTIVE VEHICLES”と題する米国特許第5,448,397号、1995年9月19日にJ.H.ベチテル氏等に発行された“ELECTRONIC CONTROL SYSTEM”と題する米国特許第5,451,822号、1998年10月6日にジェフェリーA.フォゲット氏等に発行された“ELECTROCHROMIC REARVIEW MIRROR INCORPORATING A THIRD SURFACE METAL REFLECTOR”と題する米国特許第5,818,625号、及び1998年9月21日に出願された“IMPROVED SEAL FOR ELECTROCHROMIC DEVICES”と題する米国特許出願第09/158,423号に開示されている。これらの特許及び特許出願の各々は、本発明と共通に譲渡されたもので、そこに取り上げられた参照文献を含む各々の開示を参考としてここに援用する。
ミラーアッセンブリが、反射素子100の反射電極又は反射層の背後に信号ライト、ディスプレイ又は他の印を含む場合には、反射素子100は、参考としてここに援用するW.L.トナー氏等の1999年5月14日に出願された“ELECTROCHROMIC REARVIEW MIRROR INCORPORATING A THIRD SURFACE METAL REFLECTOR AND A DISPLAY/SIGNAL LIGHT”と題する共通に譲渡された米国特許出願第09/311,955号に開示されたように構成されるのが好ましい。反射素子100が、日本及びヨーロッパの車の乗客側外部バックミラー及び運転者側外部バックミラーに対して通常そうであるように、凸状又は非球面である場合には、反射素子100は、より薄い素子112及び114を使用する一方、それらの間に形成されたチャンバーにポリマーマトリクスを使用して作られ、これは、1997年4月2日に出願された“ELECTROCHROMIC MIRROR WITH TWO THIN GLASS ELEMENTS AND A GELLED ELECTROCHROMIC MEDIUM”と題する共通に譲渡された米国特許第5,940,201号に開示されている。この米国特許に取り上げられた参照文献を含む全開示を参考としてここに援用する。反射素子100の第3表面114aに複合反射器/電極120を追加すると、2枚のガラス素子の平行がずれることにより生じる残留二重像を除去する上で更に役立つ。
本発明のエレクトロクロミック素子は、色中性であるのが好ましい。色中性のエレクトロクロミック素子において、素子は、エレクトロクロミックミラーに使用したときに他の色よりも禁欲的に心地良い灰色へと暗くなる。“ELECTROCHROMIC MEDIUM CAPABLE OF PRODUCING A PRE-SELECTED COLOR”と題する米国特許第6,020,987号は、通常の動作範囲全体にわたって灰色に感じるエレクトロクロミック媒体を開示している。この特許の全開示を、参考としてここに援用する。“ELECTROCHROMIC REARVIEW MIRROR INCORPORATING A THIRD SURFACE METAL REFLECTOR AND A DISPLAY/SIGNAL LIGHT”と題する米国特許出願第09/311,955号は、実質的な色中性化を示す一方、エレクトロクロミックミラーの反射表面の後方にディスプレイを配置できるようにする付加的なエレクトロクロミックミラーを開示している。この特許出願の全開示を参考としてここに援用する。
反射素子100に加えて、ミラー20は、光学的コーティング130も備えている。この光学的コーティング130は、自己清掃の親水性光学的コーティングである。光学的コーティング130は、反射素子100の第1表面112aに、約20%未満の反射度を示すのが好ましい。第1表面112aの反射度が約20%より大きい場合には、著しい二重像が生じ、反射素子100の可変反射度の範囲が著しく縮小される。可変反射度ミラーは、1つのユニットとして、その反射度が、最低反射度状態において約20%未満でなければならず、より好ましくは15%未満でなければならず、そして最も好ましくは、ほとんどの場合に10%未満でなければならない。
又、光学的コーティング130は、コーティング130の前面における水滴が、約30°未満、より好ましくは約20°未満、そして最も好ましくは約10°未満の接触角度を示すように、充分親水性であるのが好ましい。接触角度が約30°より大きい場合には、コーティング130は、気を散らす水玉の形成を防止するには不充分な親水性特性しか示さない。又、光学的コーティング130は、UV放射へ露出した後に親水性特性を回復できるような自己清掃特性も示さねばならない。又、以下に詳細に述べるように、光学的コーティング130は、色中性となるか、或いはミラー素子の着色の補色をなしてミラーを色中性とするようなある色特性を有していなければならない。これらの目的のため、コーティング130は、1つ以上の光学層132及び134を含む色抑制コーティング131を備えることができる。
一実施形態において、光学的コーティング130は、交互に高い屈折率及び低い屈折率の少なくとも4つの層を含む。より詳細には、図2に示すように、光学的コーティング130は、順に、高い屈折率を有する第1層132と、低い屈折率を有する第2層134と、高い屈折率を有する第3層136と、低い屈折率を有する第4層138とを含む。好ましくは、第3層136は、光触媒材料で作られ、そして第4層138は、表面にヒドロキシル群を生成することにより光触媒層136の親水性特性を向上させる材料で作られる。親水性を向上させる適当な材料は、SiO2及びAl23を含むが、SiO2が最も好ましい。適当な光触媒材料は、TiO2、ZnO、SnO2、ZnS、CdS、CdSe、Nb25、KTaNbO3、KTaO3、SrTiO3、WO3、Bi23、Fe23、及びGaPを含むが、TiO2が最も好ましい。最も外側の層をTiO2及びSiO2とすることにより、コーティング130は、単一前部ガラス素子の後面に反射器が設けられた従来のミラーに施された従来の親水性コーティングにより得られるものと同様の優れた自己清掃親水性特性を示す。好ましくは、外側のSiO2層の厚みは、約800Å未満であり、より好ましくは300Å未満であり、そして最も好ましくは150Å未満である。外側のSiO2層が厚過ぎる(例えば、約1000Åを越える)場合には、その下の光触媒層が少なくとも短い時間周期内にSiO2親水性外側層を「清掃」することができない。第1の実施形態では、2つの付加的な層(層132及び134)を設けて、反射素子100の前面における望ましからぬ反射レベルを減少すると共に、必要な色補償/抑制を与えて、ミラーの望ましい着色を行なうようにする。好ましくは、層132を光触媒材料で作り、そして第2層134を親水性向上材料で作り、コーティングの親水性及び光触媒特性に貢献するようにする。従って、層132は、上述した光触媒材料の1つ又はその混合物で作ることができ、そして層134は、上述した親水性向上材料のいずれか又はその混合物で作ることができる。好ましくは、層132は、TiO2で作り、そして層134は、SiO2で作る。
ガラスと、主として光触媒金属酸化物で構成される層(即ち層136)との間に高屈折率層及び低屈折率層を使用することに対する別の技術は、主としてシリカの最小最上層厚みを維持しながら全ての望ましい特性を得るために、中間屈折率の層(1つ又は複数)を使用することである。この層(1つ又は複数)は、酸化スズのような単一材料でもよいし、チタニア及びシリカの混合物のような材料の混合物でもよい。潜在的に有用なものとしてモデリングされた材料の中には、ゾル−ゲル堆積及び他の手段により得ることのできるチタニア及びシリカの混合物、並びに酸化スズ、酸化インジウムスズ、及び酸化イットリウムがある。ガラスと、主として光触媒材料で構成された層との間に等級付けされた屈折率を使用することもできる。
本発明のコーティングにおいて層として使用される好ましい混合酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化スズ、又は酸化プラセオジムと混合されたチタニアであり、チタニアは、この混合酸化物が光触媒層の全部又はある部分に対して使用される場合には酸化物の約70%以上を構成する。これは、層内に光触媒エネルギーがある程度発生され、そしてそのエネルギーが層を経て搬送されるのを許す。
更に、場合によって、例えば、ゾル−ゲルにより堆積されたチタニア及びシリカ混合物に対して材料を混合することにより光触媒層の屈折率が若干下げられる場合には、主としてシリカを含む薄い最上層で、又はおそらく最上層を伴わずに、ほぼ同じ色及び反射度特性を得ることができる。チタニア及びシリカ混合層の低い屈折率は、反射率を低くし、光学的な補償をあまり必要とせず、それ故、より薄い最上層を許す。この薄い最上層は、表面汚染に到達するのに、より多くの光触媒作用を許す。
本発明によれば、コーティング131(132及び/又は134を含む)も、酸に耐えるのが好ましいことが理解されよう。特に、耐酸層は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)を含み、ここで、SnとInの比は、重量でほぼ10:90より大きいのが好ましい。以下に実験で示すように、Inに対するSnの濃度が高まるにつれて、層は、意外にも、大きな耐酸性を示す(即ち、層は、酸性環境に露出しても、視覚的及び/又は機能的に許容し得る表面特性を維持することができる)。好ましくは、SnとInの比は、重量で約20:80より大きい。より好ましくは、SnとInの比は、重量で約35:65より大きい。しかしながら、以下に述べるように、100%の酸化スズは、機能的ではあるが、屈折率及び/又は製造上の問題のために、常に望ましいものではないことが理解されよう。
特に、酸化スズは、二酸化ルチルチタンに対する格子一致に非常に近いカセットライトの結晶を形成することが知られている。それ故、結晶性酸化スズの表面に形成される二酸化チタンの層は、ルチル構造を形成する傾向があり、これは、二酸化アナターゼチタンに比して、光触媒の観点からあまり望ましくない。又、二酸化ルチルチタンは、高い反射率を与えるアナターゼ形態よりも屈折率が高い。
しかしながら、酸化スズを、酸化インジウムのような別の材料と混合した場合には、カセットライト構造を形成する傾向は、存在する酸化インジウムの量にある程度基づいて、抑制される。他の材料をスズと混合し、O2の存在中で反応性スパッタリングして、同様の効果を得ることもできる。又、スズを含まない混合物を使用してもよい。例えば、これに限定されないが、幾つか挙げると、アサヒセラミックスから商業的に入手できる混合金属、例えば、スズシリコン及び/又はジルコニウムシリコンが含まれる。更に、二酸化シリコン又は酸化アルミニウムのような材料の薄い層を、酸化スズ結晶層と酸化チタン層との間に配置して、上述した酸化スズ上にルチルが優先的に形成されるのを回避することができる。
耐酸性実験No.1
耐酸層の組成を変更することの利益をサポートするために、0.2mLの0.1ノーマル(N)H2SO4を各サンプルの表面に塗布して多数の実験を行なった。全てのサンプルは、テストの期間中、何も覆わないままとし、H2SO4が蒸発により濃縮することが許された。ここに示す実験の各々に対して、耐酸層(131)は、高い温度での従来のマグネトロンスパッタリングにより、ソーダ−ライムガラス(112)上に堆積された。各サンプルに対するおおよその層厚みは、次の通りである。層138については100ÅのSiO2、層136については2250ÅのTiO2、及び層131については600Åの耐酸性材料。
実験No.1の実験条件及び関連結果を以下に示す。
実験No.1の耐酸性目視結果

Figure 2008541168
前記実験から明らかなように、90%In/10%Sn(ITO)は、2つの実験で目に見える表面ダメージを示し、一方、80%In/20%Sn(ITO)は、2つの実験で目に見える変化を示さず、50℃でH2SO4に15時間露出させたときに僅かな(許容し得る)曇りを示しただけであった。
耐酸性実験No.2
耐酸層の組成を変更することの利益を更にサポートするために、変化する濃度のH2SO4を各サンプルの表面(138)に塗布して多数の実験を行なった。この一連の実験では、サンプルは、テストガラスの表面(138)に従来のOリングを配置することにより形成された覆われたセルで構成された。実験No.1に一致するように、耐酸層(131)は、高い温度で従来のマグネトロンスパッタリングにより、ソーダ−ライムガラス(112)上に堆積された。各サンプルに対するおおよその層厚みは、次の通りである。層138については100ÅのSiO2、層136については2250ÅのTiO2、及び層131については600Åの耐酸性材料。ソーダライムガラスは、Oリングよりも若干広く覆い、Oリングの頂部に配置された。バインダークリップをセルの各側に取り付け、Oリングを圧縮して、密封セルを形成した。カバーガラスの小さな充填穴は、注射器を使用して各セルに酸を充填するのを許した。各セルは、適当な濃度のH2SO4(0.5ノーマル(N)、1N、2N、4N、8N、16N、24N及び35N)を使用して充填された。装置全体を50℃のオーブンに入れ、15−17時間エージングさせた。50℃でのエージング時間の後に、装置をオーブンから取り出し、セルを取り出し、ガラスストリップを水ですすいだ。次いで、ガラスストリップを、通常の照明の下で目視検査し、親水性コーティング上の酸襲撃によるダメージを比較した。
実験No.2に関連した実験結果を以下に示す。
実験No.2の耐酸性目視結果

Figure 2008541168
前記実験から明らかなように、80%In/20%Sn(ITO)は、各濃度において90%In/10%Sn(ITO)より性能が優れており、これは、親水性コーティングの下層のスズ含有量を増加すると、通常の照明条件のもとでの目視検査により耐酸性が著しく高くなることを検証するものである。
耐酸性実験No.3
耐酸層の組成を変更することの利益を更にサポートするために、変化する濃度のH2SO4を各サンプルの耐酸層(131)に塗布して多数の実験を行なった。この一連の実験では、サンプルは、テストガラスの耐酸層(131)にOリングを配置することによって形成された覆われたセルで構成された。より詳細には、耐酸層(131)は、高い温度の従来のマグネトロンスパッタリングによりソーダ−ライムガラス(112)上に堆積された。各サンプルのおおよその層厚みは、次の通りである。層131については600Åの耐酸性材料。ソーダライムガラスは、Oリングよりも若干広く覆い、Oリングの頂部に配置された。バインダークリップをセルの各側に取り付け、Oリングを圧縮して、密封セルを形成した。カバーガラスの小さな充填穴は、注射器を使用して各セルに酸を充填するのを許した。各セルには、適当な濃度のH2SO4(0.1N、1N、4N)が充填された。全てのサンプルを室温に17時間放置した。17時間後に、サンプルを取り出し、ガラスを水ですすいだ。次いで、ガラスを通常の照明のもとで目視検査し、コーティング上の酸襲撃によるダメージを比較した。第1テーブルは、目視検査結果を含む。酸のダメージを良好に定量化するために、酸のダメージによる透過度の変化を、従来のMacbeth 7000A分光光度計を使用して測定した。次いで、透過度を正規化し、コーティングのロスによる透過度の変化を比較した。第2テーブルは、透過データの比較を含む。
実験No.3に関連した実験結果を以下に示す。
実験No.3の耐酸性目視結果

Figure 2008541168
実験No.3の耐酸性量的結果
コーティング透過・対・H2SO4濃度

Figure 2008541168
前記実験から明らかなように、Sn含有量及び耐酸性に関して正の相関が存在する。最も注意すべきことに、100%Snは、0.1N、1.0N及び4N硫酸では無傷であるが、10%Sn及び20%Snのコーティングは、1N及び4N硫酸の両方により完全に除去されている。
第2及び第3の実施形態について以下に説明するように、色抑制コーティング131は、ITOのような導電性透明材料の層150も含むことができる。
所与のコーティングシステムから得られるチタニアフィルムの屈折率は、コーティング条件の選択に伴い実質的に変化し、そして充分な量のアナターゼ又はルチル形態をフィルムに維持し且つ充分な耐摩滅性及び物理的耐久性を示しながら、考えられる最低の屈折率を与えるように選択することができる。このようにして得られる低い屈折率は、低屈折率の材料をチタニアと混合することにより屈折率を低下させるのと同様の効果を生み出す。ロン・ウイリーは、彼の著書“Practical Design and Production of Optical Thin Films”、マーセル・デッカー、1996年の中で、基板の温度、酸素の分圧、及び堆積速度が、堆積されるチタニアの屈折率を約n=2.1からn=2.4まで変化させる実験について述べている。
透明な第2表面導体として使用される材料は、通常、屈折率が約1.9以上であって、半波長厚みの倍数を使用するか、又は用途に対して考えられる最も薄い層を使用するか、或いは多数の「非玉虫色ガラス構造」の1つを使用することによりそれらの色を最小とした材料である。これらの非玉虫色構造は、通常、高屈折率の導電性コーティングの下に高及び低屈折率の層を使用し(例えば、ロイ・ゴードン氏の米国特許第4,377,613号及び米国特許第4,419,386号を参照)、又は中間屈折率の層を使用し(ロイ・ゴードン氏の米国特許第4,308,316号を参照)、或いは等級付けされた屈折率の層を使用する(ロイ・ゴードン氏の米国特許第4,440,822号を参照)。
非玉虫色構造を使用するフッ素ドープの酸化スズ導体は、Libbey−Owens−Fordから商業的に入手でき、現在製造されているほとんどの内部自動車用エレクトロクロミックミラーにおける第2表面透明導体として使用される。この第2表面コーティングスタックを使用するデバイスの暗状態の色は、それが第2表面導電性コーティングとして使用されるときには、光学的半波厚み酸化インジウムスズ(ITO)を使用する素子より優れている。この非玉虫色コーティングの欠点は、本書のどこかで述べる。1000Åチタニア500Åシリカのような約800Å未満のシリカ最上層を伴う親水性及び光触媒コーティングスタックは、対向表面の親水性コーティングスタックの色を補償するように設計されていない前節で述べたこの非玉虫色の第2表面導体及び他の非玉虫色の第2表面構造に関連して第1表面コーティングスタックとして使用されたときには、依然として、受け容れられない色及び/又は反射率を与える。これらのコーティングが第2表面に使用された場合に暗状態におけるシステムのC*を減少するためにこの実施形態に関する技術を依然として第1表面に適用する必要がある。
第2表面導体として通常使用されるITO層は、非常に薄いもの(ほぼ200−250Å)であって、多くのディスプレイ装置に充分なシート抵抗を維持しながら材料をできるだけ薄くすることにより材料の光学的効果を最小にするか、或いは半波光学厚み(約1400Å)の倍数であって、コーティングの全体的な反射率を最小にするかのいずれかである。いずれの場合にも、前節のように対向面に光触媒親水性コーティングスタックを追加すると、第2表面導体として使用されるITOのこれら層厚みの使用に関連して、受け容れられない色及び/又は反射率を生じさせる。この場合も、暗状態におけるシステムのC*を減少するためにこの実施形態に関する技術を依然として第1表面に適用する必要がある。
第1及び第2表面の両コーティングを含むシステムの色及び反射率を最適化するように第1表面のコーティングスタックを変更するのと若干同様の形態で、システムの色を最適化するように第2表面のコーティングスタックを変更することができる。これは、比較的低い全体的反射度を依然維持しながら、システムの反射度を可視スペクトルにわたってより均一にするように第2表面において補償色を本質的に生成することにより行われる。例えば、本書の中の数箇所で述べた1000Åチタニア500Åシリカのスタックは、緑において有するよりも若干高い反射度をスペクトルの紫及び赤の両部分において有するために、赤みがかった紫色となる。3/4波光学厚みITOのような緑色をもつ第2表面コーティングは、緑色でない半波光学厚みのITOの、より標準的な厚みをもつシステムよりも、暗状態システムに対して低いC*値を生じさせる。更に、層の厚みを変更したり、又は上述した非玉虫色構造に若干異なる屈折率をもつ材料を選択したりして、補償色第2表面を生成することもできる。
これら第2表面補償色層は、第1表面コーティングスタックにおける相対的反射度最小値に反射度を追加する。必要であれば、これらの第2表面コーティングスタックは、第1表面コーティングが存在しない状態で反射度を追加することができる。例えば、上述した3/4波光学厚みITO層は、反射度の相対的最大値にあり、そして第2表面に使用されるときには、付加的な第1表面コーティングが存在するかどうかに関わらず、第2表面に半波光学厚みITOをもつ同様の構造の素子よりも高い暗状態反射率をもつ素子を生じさせる。
第1表面を色補償する別の方法は、暗状態におけるエレクトロクロミック媒体の色を予め選択することによるものであり、これは、“ELECTROCHROMIC MEDIUM CAPABLE OF PRODUCING A PRE-SELECTED COLOR”と題する共通に譲渡された米国特許第6,020,987号の教示に従って行なわれる。この場合も、例えば、1000Åのチタニアと、これに続く500Åのシリカより成る第1表面コーティングを使用することにより、その後の変更が、活性化時にエレクトロクロミックミラーのC*値を下げる際の助けとなるようにする。この場合に、活性化時に緑領域においてあまり吸収されないようにエレクトロクロミック媒体の色を選択すると、素子の第3又は第4表面反射器からの光の緑波長の高い反射度が、暗状態におけるユニットの反射度をバランスする上で役立つ。
第1、第2表面及びエレクトロクロミック媒体に対する前記概念の組み合せも、設計に対する潜在的な効果となる。
時々、特に、凸面又は非球面ミラーにおいて、その凸面又は非球面から反射される映像の輝度減少を補償するために、電気−光学ミラーの低端反射度を約12%以上に制限することが望まれる。この増加される低端反射度値についての厳格な公差の維持は、電気−光学媒体の全暗吸収のみを制御することで達成するのは困難であり、これは、印加電圧を減少するか、又は電気−光学媒体における電気−光学材料の密度を変更することで達成される。ガラスのみより高い屈折率を有し、ひいては、高い第1表面反射度を有する第1表面フィルムでこの増加される低端反射度に対する公差を維持しそして制御することが非常に好ましい。この増加される低端反射度の均一性を製造時にバッチからバッチへ維持するのは、電気−光学媒体の場合より、第1表面フィルムの方が非常に容易である。上述したように、二酸化チタンのような光触媒層は、このように高い屈折率を有する。暗状態反射率は、非光触媒の性質である第1表面コーティングを使用して高めることもできる。例えば、1/4波光学厚みの酸化アルミニウムを第1表面の唯一の層として使用することにより、素子の暗状態反射度を、約3ないし4%高めることができる。
堆積されるフィルムの光学的特性は、酸素ガスの分圧、基板の温度、堆積速度、等を含む堆積条件に基づいて変化する。特に、特定のシステムにおけるパラメータの特定セットに対する屈折率は、ここに述べる光学的特性を得るための最適な層厚みに影響する。
チタニア等の光触媒材料、及びシリカ等の親水性材料の光触媒及び親水性特性に関する説明は、一般に、その混合物が光触媒作用及び/又は親水性作用の基本的特性を保持する限り、混合材料の層に適用することができる。耐摩滅性も、最外層において重要な事項である。EP0816466A1号は、シリカ混合チタニアの耐磨耗性、光触媒、親水性の層と、同様の特性をもつ酸化スズ混合チタニアの層について説明している。米国特許第5,755,867号は、これらの混合物を使用して得られるシリカ及びチタニアの光触媒混合について説明している。これらのコーティングは、おそらく、エレクトロクロミックデバイスに使用するのに適した光学的特性を変化させるための変更を必要とする。本発明に対するこれらの光学的特性変更の潜在的な効果については、以下で説明する。
本発明のある変形例では、特に基板がソーダライムガラスである場合にその基板と、光触媒層(1つ又は複数)との間に、特に浸出するナトリウムに対するバリアとして働くための材料層を含ませるのが好ましい。ソーダライムガラス上のシリカのように、この層が基板の屈折率に近い場合には、システムの光学特性に著しく影響することはなく、層間の対照的な光学的特性に関して本発明の精神を逸脱するものと考えてはならない。
ミラー上の水の蒸発を促進し且つミラー上で水の薄膜が凍結するのを防止するために、反射素子100の第4表面114bにヒータ素子122を任意に設けることができる。或いは又、以下に述べるように、透明な前面フィルムの1つを導電性材料で形成し、ヒータとして働くようにしてもよい。
本発明の第2の実施形態が図3に示されている。図示されたように、エレクトロクロミックミラー100は、図2に示したものと同様の構造を有している。しかしながら、光学的コーティング130は、親水性の層136の下に横たわる透明の導電性コーティング150を含むという点で異なる。適当な透明導体は、ITO、ZnO及びSnO2(フッ素ドープ)を含む。これら透明導体の各々は、素子112のガラスの屈折率(1.45)と層136のTiO2の屈折率(〜2.3)との間の屈折率を有するので、親水性の層136を付着した結果として色及び反射率を減少させることにより優れた光学的サブ層を形成する。
ミラー素子100の前面に透明導体150を使用することにより得られる付加的な効果は、層150に電流が通過して、層150がヒータとして機能することである。親水性コーティングは、ミラーの表面にわたり水を薄膜へと広げる傾向があるので、水は、急速に凍結して視界を悪くする。従って、透明な導電層150は、ヒータとして、及び色/反射抑制層として、二重の働きをする。
ミラーの前面にヒータ層150を設けると、多数の効果が発揮される。第1に、ミラーの背部にコストの高いヒータを設ける必要性を排除する。更に、ヒータ150は、ミラーから霜を取り去るために熱が最も必要とされるミラーの前面に熱を与える。ミラーの背部に適用される電流ヒータは、前面の霜膜に到達するまでに全ミラー質量を通して加熱しなければならない。
層150にまたがって電圧を印加するために、一対のバスクリップ152及び154をミラー100の頂面及び底面又は両側に固定し、導体118及び120を経てエレクトロクロミック媒体124にまたがって電圧を印加するのに使用されるバスクリップの邪魔にならないようにする。
或いは又、図4に示すように、共通のバスクリップ160を設けて電極118及びヒータ層150の一方の縁を接地する一方、個別の電気的バス接続162及び164を設けてヒータ素子150の他方の側及び電極120を正の電位に各々結合する。
本発明の特性及び効果を説明するために、以下に例を挙げる。以下の例は、本発明の範囲を限定するものではなく、その応用及び使用を例示するものである。これらの例では、そこに取り上げたパラメータに基づいて構成されたエレクトロクロミックミラーのスペクトル特性について説明する。色について検討するには、Commission Internationale de I'Eclairage's (CIE) 1976 CIELAB色度図(L*a*b*チャートと一般に称される)及び3刺激値x、y又はzを参照するのが有用である。色の技術は、比較的複雑であるが、非常に包括的な説明が、F.W.ビリメイヤ及びM.ソルツマンにより、Principles of Color Technology、第2版、J.ウィリー・アンド・ソンズ・インク(1981年)掲載されており、本開示は、色技術及び用語に係るので、一般にこの説明に従う。L*a*b*チャートでは、L*は、明るさを定義し、a*は、赤/緑値を表わし、そしてb*は、黄/青値を表わす。エレクトロクロミック媒体の各々は、3ナンバー呼称、即ちそれらのL*a*b*値に変換することのできる各特定の電圧において吸収スペクトルを有する。スペクトル透過又は反射からL*a*b*値のような1組の色座標を計算するために、2つの付加的な項が必要となる。その1つは、ソース又は光源のスペクトルパワー分布である。本開示は、CIE標準光源D65を使用する。必要とされる第2の項は、オブザーバーのスペクトル応答である。本開示は、2度CIE標準オブザーバーを使用する。使用する光源/オブザーバー組み合せは、D65/2度として表わされる。以下に示す多くの例は、1931 CIE標準からの値Yを参照する。というのは、これが、L*よりも反射度により厳密に対応するからである。これも以下に示す値C*は、(a*)2+(b*)2の平方根に等しく、従って、色中性化を定量化するための尺度を与える。相対的な色中性化を有するエレクトロクロミックミラーを得るために、ミラーのC*値は、25未満でなければならない。好ましくは、C*値は、20未満であり、より好ましくは15未満であり、更に好ましくは約10未満である。
例1
2.2mm厚みのガラスで作られた後部素子を有し、真空蒸着を使用してこの後部素子の前面にクロム層が施され且つクロム層の頂面にロジウム層が施された2つの同じエレクトロクロミックミラーが構成された。両ミラーは、1.1mm厚みのガラスで作られた前部透明素子を含み、その後面には、1/2波光学的厚みの透明な導電性ITOコーティングが被覆された。前部透明素子の前面は、200Å厚みのTiO2の第1層、250Å厚みのSiO2の第2層、1000ÅのTiO2の第3層、及び500Å厚みのSiO2の第4層を含むコーティングにより覆われた。各ミラーに対し、2つの被覆されたガラス基板の周囲には、セルにエレクトロクロミック溶液を真空充填するのに使用される小さなポートを除いて、エポキシシールが敷設された。シールは、ガラススペーサビードにより維持された約137ミクロンの厚みを有するものであった。素子には、3重量%のポリメチルメタクリレート、30MmのチヌビンP(UV吸収剤)、38MmのN、N’−ジオクチル−4、4’ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、27Mmの5、10−ジヒドロジメチルフェナジンを含んだプロピレンカルボネートを含むエレクトロクロミック溶液が充填され、そしてポートにUV硬化性接着剤が詰め込まれた。電気的接触バスクリップが透明な導体に電気的に結合された。
高反射度状態(接触バスクリップに電位が印加されない状態)では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=78.26、a*=−2.96、b*=4.25、C*=5.18、及びY=53.7。最低反射度状態(1.2Vの電位が印加された状態)では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=36.86、a*=6.59、b*=−3.51、C*=7.5、及びY=9.46。清掃された後にエレクトロクロミックミラーの表面に形成された水滴の平均接触角度は、7°であった。
比較のために、第1表面コーティングをもたずに、2つの同様のエレクトロクロミックミラーを構成した。これら2つのミラーは、同じ構造を有するものであった。高反射度状態では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=78.93、a*=−2.37、b*=2.55、C*=3.48、及びY=54.81。最低反射度状態では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=29.46、a*=0.55、b*=−16.28、C*=16.28、及びY=6.02。この比較が示すように、本発明の親水性コーティングを有するエレクトロクロミックミラーは、意外にも且つ驚くべきことに、このような親水性コーティングをもたない同様の構造のエレクトロクロミックミラーよりも優れた色中性化を有していた。更に、この比較が示すように、親水性コーティングの追加で、ミラーの低端反射度を著しく高めることはない。
例2
異なる第1表面コーティングスタックが堆積されることを除いて、例1の説明に従ってエレクトロクロミックミラーを構成した。第1表面スタックは、約700Åの厚みを有するITOの第1層と、2400Åの厚みを有するTiO2の第2層と、約100Åの厚みを有するSiO2の第3層とで構成された。ITO層の物理的厚みは、500nmにおける約1/4波光学的厚みに対応し、そしてTiO2層の物理的厚みは、550nmにおける約1波光学的厚みに対応する。TiO2層におけるアナターゼチタニアとルチルチタニアとの割合は、同様のコーティングパラメータのもとで同じ時間フレームにおいて処理されるガラスから取り出された同様の部片のX線回折分析から約89%アナターゼ形態及び11%ルチル形態であると決定された。
高反射度状態では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=80.37、a*=−2.49、b*=3.22、C*=4.07、及びY=57.35。最低反射度状態(1.2Vの電位が印加される状態)では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=48.46、a*=−6.23、b*=−4.64、C*=7.77、及びY=17.16。清掃後のこのエレクトロクロミックミラーの表面における水滴の接触角度は、4°であった。この例は、親水性の層136及び138の下に横たわるITO色抑制層150の適合性を示している。
例3
商業的に入手できる薄膜モデリングソフトウェアを使用してエレクトロクロミックミラーをモデリングした。この例では、モデリングソフトウェアは、ニュージャージー州プリンストンのFTGソフトウェアアソシエートから入手できるFILMSTARであった。モデリングされたエレクトロクロミックミラーは、ミラーの前面に施される光学的コーティングの構造を除いて、前記例1及び2と同じ構造を有するものであった。更に、ミラーは、完全吸収エレクトロクロミック流体の屈折率が1.43であると仮定して、暗状態でのみモデリングされた。光学的コーティングスタックは、厚みが720Åで、屈折率が550nmにおいて1.90であるSiO2の第1層と、厚みが1552Åで、屈折率が550nmにおいて約2.43である高密度TiO2の第2層と、屈折率が550nmにおいて約2.31で、538Åの厚みで施されるTiO2と同様の波長依存屈折率をもつ材料の第3層と、屈折率が550nmにおいて1.46で、厚みが100ÅのSiO2の第4層とで構成される。エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=43.34、a*=8.84、b*=−12.86、C*=15.2、及びY=13.38。
第3層を構成する屈折率2.31の材料は、組み合せて使用してもよいし単独で使用してもよい次のものを含む多数の仕方で得ることができる。(1)層におけるチタニアの密度を減少し、(2)層におけるアナターゼとルチルチタニアの比を変化させ、及び/又は(3)チタニアと、屈折率の低い少なくとも1つの他の金属酸化物、例えば、とりわけ、Al23、SiO2又はSnO2との混合酸化物を生成する。前記例1及び2に使用されたエレクトロクロミック材料は、電圧印加時に完全な吸収層にならず、それ故、完全吸収エレクトロクロミック層をベースとするモデルは、予想光度反射度Yが実際のデバイスより若干低い傾向となる。
例4
例3と厳密に同じパラメータを有するが、550nmにおいて屈折率が2.43のTiO2の1552Å厚みの第2層及び550nmにおいて屈折率が2.31の538Å厚みの第3層を、550nmにおいて屈折率が2.31の2100Å厚みの材料の単一層と置き換えたエレクトロクロミックミラーがモデリングされた。このようにモデリングされたエレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=43.34、a*=0.53、b*=−6.21、C*=6.23、及びY=15.41。
例3と4を比較すると、例3における屈折率2.43及び2.31の層は、同じスタックにおける屈折率2.31の等しい厚みの材料よりも低いYをもつユニットを形成することに注意されたい。それでも、色中性化値C*は、第4の例の方が低い。
例5
例3と同じパラメータを使用するが、次のような第1表面コーティングスタックをもつエレクトロクロミックミラーがモデリングされた。厚みが161Åで、屈折率が550nmにおいて約2.13であるTa25の第1層、厚みが442Åで、屈折率が550nmにおいて約1.67であるAl23の第2層、厚みが541Åで、屈折率が550nmにおいて約2.43であるTiO2の第3層、厚みが554Åで、屈折率が550nmにおいて約2.31であるTiO2、又は別の酸化物と混合されたTiO2の第4層、及び厚みが100Åで、屈折率が550nmにおいて約1.46であるSiO2の第5層。このエレクトロクロミックミラーは、モデリングソフトウェアにより予想される次の平均値を有していた。L*=39.01、a*=9.39、b*=−10.14、C*=13.82、及びY=10.66。
例6
異なる第1表面コーティングスタックが堆積される以外は、例1について上述したのと同様にエレクトロクロミックミラーが構成された。この第1表面スタックは、厚みが約1000ÅのTiO2の第1層と、厚みが約200ÅのSiO2の第2層とで構成される。
高反射度状態では、次の平均値が測定された。L*=79.47、a*=−0.34、b*=2.10、C*=2.13、及びY=55.74。最低の反射度状態(1.2Vの電位が印加された状態)、では、エレクトロクロミックミラーは、次の平均値を有していた。L*=36.21、a*=−28.02、b*=−17.94、C*=33.94、及びY=9.12。
従って、本発明は、エレクトロクロミックデバイスに適しているだけでなく、実際には、デバイスの色中性化を改善する親水性コーティングを提供する。
本発明の親水性コーティングの自己清掃光触媒特性を立証するために、4つの異なるサンプルが作られ、そしてコーティングの表面上の水滴の初期接触角度が測定された。その後、75W90ギアオイルの薄い層がこれらコーティングの表面にわたって塗布され、余分なオイルは、溶媒のない布で拭くことにより取り去られた。次いで、表面上の水滴の接触角度を測定した。次いで、テストの残りの時間中、UV光(1mW/m2)の下にサンプルを配置した。第1サンプルは、厚みが1200ÅのTiO2の単一層を有するものであった。第2サンプルは、厚みが2400ÅのTiO2の単一層を有するものであった。第3サンプルは、厚みが700ÅのITOの底部層と、厚みが2400ÅのTiO2の中間層と、厚みが100ÅのSiO2の頂部層とを含むものであった。第4サンプルは、厚みが2400ÅのTiO2の下部層と、厚みが300ÅのSiO2の頂部層とを有するものであった。これらのサンプルは、全て、同日にスパッタ堆積により作成された。しかしながら、サンプル3では、ITOは、予め堆積された。X線回折分析は、TiO2層の結晶構造を、74%アナターゼのTiO2及び26%ルチルのTiO2を含むものとして示した。全てのサンプルは、ソーダライムガラス基板上に形成された。テストの結果を以下のテーブル1に示す。
テーブル1

Figure 2008541168
テーブル1から明らかなように、SiO2の頂部層は、その下のTiO2層の光触媒作用を有効なものとするために比較的薄く保たれねばならない。又、TiO2層の厚みを増加すると、光触媒の割合が高くなることも明らかである。
上述した例は、真空蒸着技術を使用してコーティングを付着するが、これらのコーティングは、従来のゾル−ゲル技術によって付着することもできる。この解決策では、テトライソプロピルチタネート、テトラエチルオーソシリケート、等の先駆体から作られた金属アルコキシドがガラスに被覆される。これらの金属アルコキシドは、種々の割合でブレンド又は混合し、そして通常は、金属酸素金属結合を形成することにより分子重量を増加するように部分的に加水分解して凝縮した後にアルコール溶液からガラスに被覆することができる。金属アルコキシドのこれらコーティング溶液は、ディップコーティング、スピンコーティング、又はスプレーコーティングのような多数の手段によりガラス基板に塗布することができる。これらのコーティングは、次いで、通常、450℃より高い温度で焼成されて、金属アルコキシドを金属酸化物へ変換する。この方法を使用して、非常に均一で且つ耐久性のある薄膜を形成することができる。真空プロセスが含まれないので、これらの膜は、製造が比較的低廉である。付着と付着との間に被覆し乾燥することにより、組成の異なる複数の膜を、焼成の前に積み重ねることができる。この解決策は、特に、曲がったガラスから作られる凸面又は非球面ミラーのようなミラーのためのガラスに低廉な親水性コーティングを形成するのに非常に有用である。ガラスを曲げるには、ガラスを550℃より高い温度に加熱しなければならない。曲げる前の平らなガラス基板(通常、出来上がったミラーの凸状面となるもの)にゾル−ゲルコーティングが付着される場合には、コーティングが曲げプロセス中に焼成されて、耐久性のある金属酸化物になる。従って、親水性コーティングは、あまりコストを追加せずに、曲がったガラス基板に付着することができる。今日世界中で使用される外部ミラーの大半は、曲がったガラスから作られるので、この解決策は、コスト的に非常に有益である。幾つかの又は全てのコーティングをこのゾル−ゲルプロセスで付着し、残りのコーティングを、スパッタリングやEビーム堆積のような真空プロセスで付着できることに注意されたい。例えば、TiO2及びSiO2の第1の高屈折率層及び低屈折率層は、ゾル−ゲル技術により付着でき、次いで、頂部のTiO2及びSiO2層は、スパッタリングにより付着することができる。これは、コーティング装置の要件を簡単化し、コスト節約を果たす。ナトリウムのようなイオンがソーダライムガラス基板から親水性の層へ移動するのを防止することが望まれる。ナトリウムイオンの移動率は温度に依存し、高いガラス屈曲温度では非常に急速に生じる。ゾル−ゲル形成されたシリカ又はドープされたシリカ層、例えば、燐ドープシリカは、ナトリウムの移動を減少するのに有効である。このバリア下層は、ゾル−ゲルプロセスを使用して付着することができる。このシリカ層は、基礎ガラスに最初に付着することもできるし、又は光触媒層とガラスとの間の親水性スタックに合体することもできる。
一般的に、本発明は、建築物の窓及び天窓、自動車のウインドウ、バックミラー、及びサンルーフを含むエレクトロクロミック要素に適用することができる。バックミラーに関しては、本発明は、主として、曇った状態になるか霧で覆われる見込みが高いので外部ミラーに意図される。内部及び外部バックミラーは、構成が若干異なる。例えば、内部ミラーの前部ガラス素子の形状は、一般的に外部ミラーより長く且つ狭い。又、外部ミラーに比して内部ミラーには若干異なる性能基準が課せられる。例えば、内部ミラーは、一般に、完全にクリアな状態にされたときに、反射度の値が約70%から約85%以上でなければならず、一方、外部ミラーは、しばしば、反射度が約50%から約65%である。又、米国では(自動車製造者により供給されるように)、乗客側のミラーは、通常、非平面で球状に曲げられるか又は凸状の形状であり、一方、運転者側のミラー111a及び内部ミラー110は、現在、平坦でなければならない。ヨーロッパでは、乗客側のミラー111bは、凸状の形状である。日本では、両方の外部ミラーが非平面の凸形状である。
外部バックミラーがしばしば非平面であることで、設計上付加的な制約が生じる。例えば、非平面前部素子の後面に付着される透明導電層は、典型的に、平面ミラーに通常使用されるフッ素ドープの酸化スズでは作られない。というのは、酸化スズコーティングは、曲げプロセスを複雑化し、2.3mmより薄いガラスでは商業的に得られないからである。従って、このような屈曲ミラーは、典型的に、ITOの層を前部透明導体として利用する。しかしながら、ITOは、若干着色され、不利なことに、運転者から見て反射像に青い色を導入する。素子の第2面に付着されるITO層により導入される色は、エレクトロクロミック素子の第1表面に光学的コーティングを使用することにより中性化することができる。この作用を説明するために、片側に半波厚みITO層がそして他側に前記例1で述べた親水性コーティングが被覆されたガラス素子と同様に、半波厚みITO層が被覆されたガラス素子が構成された。親水性コーティングをもたないITO被覆ガラスは、次の特性を有していた。L*=37.09、a*=8.52、b*=−21.12、C*=22.82、及び第1/第2表面スペクトル反射度Y=9.58。対照的に、前記例の本発明の親水性コーティングを含むITO被覆ガラスは、次の特性を示した。L*=42.02、a*=2.34、b*=−8.12、C*=8.51、及び第1/第2表面スペクトル反射度Y=12.51。著しく減少したC*値により明らかなように、親水性コーティングは、ITOが被覆されたガラス素子の着色を著しく改善することにより色抑制コーティングとして働く。外部バックミラーはしばしば曲げられ、そして透明な導体としてITOを含むので、曲がったガラスの反対側に色抑制コーティングを追加することにより前部被覆素子の色を改善する能力が多数の製造上の効果をもたらす。
第1透明電極118のコーティングも、第1の高い、次いで、低い屈折率の適当な厚みの厚い層を合体するか、又は中間屈折率の適当な厚みの下層を合体することにより、更に色中性にすることができる。例えば、半波及び全波ITO膜は、中間屈折率の酸化アルミニウム(Al23)の1/4波下層により更に色中性にすることができる。以下のテーブル2は、ガラスにAl23の1/4波厚み下層をもつ場合及びもたない場合の半波及び全波ITOフィルムの測定された反射色値を列挙する。両膜は、反応性マグネトロンスパッタリングによりガラス基板に付着される。
テーブル2

Figure 2008541168
他の光減衰装置、例えば、散乱粒子ディスプレイ(米国特許第5,650,872号、第5,325,220号、第4,131,334号、及び第4,078,856号に説明されたような)、或いは液晶ディスプレイ(米国特許第5,673,150号、第4,878,743号、第4,813,768号、第4,693,558号、第4,671,615号、及び第4,660,937号に説明されたような)も、これら原理の適用から利益を得ることができる。光減衰層がガラス又はプラスチックの2つの部片間にあるデバイスでは、同じ基本的制約及びこれら制約に対する解決策が適用される。第1表面の親水性層又は層スタックの色及び反射率は、たとえこの第1表面層スタックが明状態特性に著しく影響しないときでも暗状態においてデバイスに実質的な色及び反射率を与えることができる。それ故、エレクトロクロミックデバイスについて述べたのと同様の第1表面層スタックに対する調整は、暗くされるデバイスの色及び/又は反射率に好都合に影響する。デバイスの第2表面に対してなされる調整、又は暗くなる層それ自体の色にも同じことが適用される。
これらの原理は、可変透過度絶縁ウインドウのようなデバイスにも適用できる。図5は可変透過度ウインドウ200の一例を示す。図示されたように、このウインドウは、内部ガラス板又は他の透明素子204と、外部ガラス板又は他の透明素子202と、これらガラス板202及び204を平行離間関係に保持するウインドウフレーム206とを備えている。ガラス板202と204との間には可変透過度素子が配置され、これは、ミラーの反射層が除去される以外、エレクトロクロミックミラーの形態をとる。従って、この素子は、一対の離間された透明基板112及び114を備え、これらは、シール116により一緒に接合されてチャンバーを画成し、その中にエレクトロクロミック媒体が入れられる。当業者であれば、ウインドウ200の構造は、例示のために示されたものであり、フレーム及びコンポーネント同士の関係は変化し得ることが明らかであろう。
図5に示すように、外部板202は、その外面に光学的コーティングが配置されている。より詳細には、このコーティングは、ガラス板202の中間屈折率を有する第1層150と、二酸化チタンのような光触媒材料で作られた第2層136とを備えている。第3層137は、層136の上に任意に配置され、二酸化チタンのような光触媒材料で構成される。好ましくは、上述したように、このような層は、層136よりも低い屈折率を有するように変更される。このコーティングは、更に、SiO2のような材料で作られた任意の親水性の層138も備えている。一般に、上述した親水性コーティングのいずれを使用することもできる。色抑制と、ウインドウ全体として中性色(無彩色)を得ることは、設計上の制約であってもよいし、そうでなくてもよいことに注意されたい。より詳細には、あるウインドウは、建築上の目的で意図的に特定の色に色付けされる。このような場合には、特定の色を向上させるように、色抑制又は色調整層が選択されてもよい。
光学的作用及び光触媒作用に対して層材料及び層厚みを最適化する際に、高屈折率機能のコーティングの厚みを増すと、光触媒作用の強度が高くなることに注意されたい。これは、前記テーブル1におけるサンプル1及び2の比較により証明される。又、ドーパントの使用は、光触媒の作用を高め、おそらく、特定レベルの光触媒作用を維持しながら層の厚みの減少を許す。このようなドーパントは、白金、グループメタル、銅、ニッケル、ランタン、コバルト、及びSnO2を含む。一般に、コーティングの反射率を下げるためには、最外層の屈折率を下げることが望ましい。これは、最外層の密度を下げることにより達成できるが、このようにすると、耐かき傷性が低下する。又、TiO2層は、この層の屈折率を下げるために、シリカ、アルミナ、酸化スズ、酸化亜鉛、ジルコニア、及び酸化プラセオジムと混合することができる。例3に述べたような設計では、中間屈折率の材料(即ち、SnO2層)の大半を保持し、又はある程度の光触媒作用を有する別の材料と混合し、これにより、全スタックの光触媒作用を高めることができる。例えば、SnO2は、単独で使用することもできるし、別の酸化物と混合して使用することもできる。
上述したように、SiO2最上層が厚いほど、相対的に低いC*及びYを得ることが容易であるが、SiO2最上層が厚過ぎるときにはスタックの光触媒に関して実質的な望ましからぬ絶縁作用がある。
添付図面の図6を特に参照すれば、制御された表面形態300を有する自己清掃親水性コーティング(「アッセンブリ」又は「スタック」とも称される)が断面図で示され、これは、一般に、基板302と、拡散バリア層304と、ベース層306(「色抑制」及び/又は「耐酸性」層とも称される)と、ブレーカ層308と、制御された表面形態又は粗面性を界面領域312に有する自己清掃又は光触媒層310と、親水性の層314とを備えている。図6は、自己清掃親水性スタック300を単に示すに過ぎないことを理解されたい。従って、ある部分は、図示明瞭化のための実際の縮尺から歪まされている。
自己清掃親水性スタック300は、説明上、エレクトロクロミック及び/又は従来のミラー、ウインドウ、ディスプレイ装置、コントラスト構造フィルタ、等に関連付けられることを理解されたい。以下で詳細に説明するように、自己清掃親水性スタック300は、上述した層/サブアッセンブリコンポーネント302ないし314を含むものとして開示されるが、自己清掃親水性スタック300は、制御された表面形態を有する自己清掃又は光触媒層310と、親水性の層314とを備え、これは、当業者に知られた多数の従来の基板のいずれか1つの少なくとも一部分に関連付け及び/又は適用できることを理解されたい。従って、層302ないし308は、多数の用途に好ましいものであるが、自己清掃親水性スタック300を動作機能させるのには必要のないものである。
基板302は、電磁スペクトルの可視領域において透明又は実質的に透明な多数の材料の1つ、例えば、ホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、フロートガラス、ガラス状物質、天然及び合成ポリマー樹脂、又はニュージャージー州サミットのチコカから商業的に入手できるTopas(登録商標)を含むプラスチック、から製造することができる。基板302は、厚みが約0.5ミリメータ(mm)ないし約12.7mmの範囲のガラスシートから製造されるのが好ましい。もちろん、基板の厚みは、主として、装置の特定の用途に依存する。特定の基板材料を例示の目的で開示するが、多数の他の基板材料も、それらが少なくとも実質的に透明で、且つ意図された使用条件の中で有効に動作できるようにする適切な物理的特性を示す限り、同様に使用するよう意図されることを理解されたい。
図2に示すようなエレクトロクロミックミラーに関して、基板302が第1基板112に取って代わり、そして自己清掃親水性スタック300の残り部分が、全体的又は部分的に光学的コーティング130にとって代わるか又はそれを増強する。
拡散バリア層304は、好ましくは、基板302の少なくとも一部分に関連され及び/又はそれに付着され、そして光触媒層310の性能に悪影響を及ぼし得る素子の拡散を減少し又はより好ましくはそれを排除するように働く。更に、拡散バリア層304は、光触媒層310の堆積特性を指図するように働くこともできる。拡散バリア層304は、説明上、幾つか挙げると、シリコン酸化物、窒化物、オキシニトライド又はオキシカーバイドを含んでもよく、又はフッ素を含むアルミニウム酸化物Al23:Fで作られてもよく、或いはアルミニウム窒化物で作られてもよい。
ベース層306は、好ましくは、任意の拡散バリア層304又は基板302の少なくとも一部分に関連され及び/又はそれに付着される。ベース層306は、例えば、特定製品の色を減衰又は減少するように設計された前記色抑制層を含んでもよい。更に、色抑制層は、特定の望ましくない着色を抑制するが、ヨーロッパ及び日本の自動車産業で望まれる着色のような望ましい着色を同時に向上させることもできる。又、ベース層306は、前記耐酸性の層を含んでもよく、その利点は、ここに充分に開示した。又、説明上、ベース層306は、ルチル形態に比して、アナターゼTiO2を種付けし、その成長を促進し、さもなければ、向上させるように働くランタンアルミネートから製造することもできる。ベース層306は、色抑制層(ここに開示したような)、耐酸性層(ここに開示したような)、及びランタンアルミネートを含むものとして開示されたが、本発明によれば、前記の組み合せ、複数の遷移金属酸化物、例えば、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物を含む多数の他の材料も、同様に、使用のために意図されることが理解されよう。唯一の制限は、ベース層が、自己清掃光触媒層310及び/又はそれに関連した制御表面形態に実質上悪影響を及ぼしてはならないことである。
ベース層306の全体又は一部分がSnO2から作られる場合には、ある製造パラメータを使用して、光触媒層310の自己清掃作用を最大にするための好ましい結晶構造(例えば、アナターゼ)を促進することができる。図7に示すように、マグネトロンスパッタリングによるSnO2の付着温度は、光触媒層310の自己清掃作用に直接相関している。特に、付着温度が約150℃から約350℃まで上昇するときには、オイル(意図される汚染物)を焼き尽くすための時間が約4時間から約10時間以上へと150%以上増加し、これは、高い付着温度では、望ましからぬ結晶構造が発生し、ひいては、光触媒層310について不利な種付けを行い及び/又はその望ましい結晶構造形成を妨げることを指示する。特に、図7から確認できるように、SnO2は、高い付着温度ではカセライトを形成し、これは、ルチルTiO2の結晶構造一致(即ち、促進剤)である。それ故、TiO2の望ましからぬルチル形成を回避するために、製造パラメータを使用し(即ち、温度制御し)、SnO2のカセライト形成を減少及び/又は排除することができる。更に、SnO2ベース層306は、必要に応じて、SnO2のカセライト形態の形成を抑制する材料及び/又はプロセスパラメータでドープすることができる。適当なドーパントは、例えば、シリカ、ランタナイド、ビスマス含有化合物、等を含む。
ブレーカ層308は、好ましくは、ベース層306の少なくとも一部分に関連され及び/又はそれに付着され、ベース層306の結晶構造形成の影響を減少し及び/又は排除するように働く。従って、ブレーカ層308は、ルチルTiO2のような望ましからぬ結晶構造形成を防止することができる。又、ブレーカ層308は、所定の、望ましい形態又は電子的状態を誘起させることにより光触媒層310の特性を改善するように選択することもできる。ブレーカ層308として適した材料は、SiO2、及び当業者に以前から知られていた他の材料を含む。ブレーカ層308は、その厚みが、約5Åから、関連デバイスの光学特性に悪影響が及ぶ厚みまでの範囲である。例えば、50Å、100Å及び150ÅのTiO2が、層310の光触媒作用を高めることが分っている。
自己清掃又は光触媒層310は、好ましくは、任意のブレーカ層308又はベース層306の少なくとも一部分に関連され及び/又はそれに付着される。本発明によれば、光触媒層310は、制御された表面形態又は粗面性を界面領域312に備え、これは、光触媒層310の有効屈折率を変更及び/又は低下させるように働き、これにより、ここで与えられる他の利点の中でも、厚い親水性層を必要とせずに反射強度を下げることができる。
制御された表面形態又は粗面性が有効屈折率を実質上低下することを検証するために、2つの自己清掃親水性スタックを次のように準備して実験が行なわれた。
Figure 2008541168
異なる波長の電磁放射、主として、可視放射への露出の関数として%反射度の変化を示した二次元プロットである図8に示すように、%反射度は、光触媒層が制御された表面形態又は粗面性を含むかどうかに実質上依存する。従って、実験No.4A及び4Bは、低反射度の製品とするためには、自己清掃/光触媒材料の制御された表面形態又は粗面性が重要であることを検証するものであり、これは、幾つか挙げると、親水性層314の厚みの任意の減少、自己清掃/光触媒層310の厚みの任意の減少、関連デバイスの色、彩度及び/又はC*の任意の減少、光触媒及び/又は親水性層を含むデバイスに関連した製造コストの任意の減少、層310の光触媒作用の任意の増加を含む(これに限定されないが)多数の利点を促進する。
説明上、自己清掃/光触媒層310は、均一な層でもよいし、組成及び/又は屈折率が等級付けされたものでもよい。例えば、非ドープの及びドープされたTiO2、ZnO、SnO2、ZnS、CdS、CdSe、Nb25、KTaNbO3、KTaO3、SrTiO3、WO3、Bi23、Fe23、及びGaP、その混合物/組み合せ、並びに当業者に知られた他の多数の従来の光触媒材料を含む。ベース/色抑制層306の特性は、光触媒層310と協働相互作用するように選択できることを理解されたい。
自己清掃/光触媒層310の制御された表面形態又は粗面性は、好ましくは、表面の粗面度が約10nmから約100nm(即ち、山から谷)であることを理解されたい。
制御された表面形態を有する自己清掃親水性コーティングを製造する方法は多数あることを更に理解されたい。例えば、ベース層306は、マグネトロンスパッタリング、化学蒸着、熱分解、ゾル−ゲル、等を使用して基板302又はバリア層304へ付着することができ、それにより得られるベース層306の表面は、自己清掃親水性スタックの製造中に自己清掃又は親水性層310の表面へと伝播する制御された表面形態を含む。或いは又、自己清掃又は光触媒層310は、最初、制御された表面形態を一般的にもたずに(即ち、円滑に)製造され、その後に、従来使用される多数の従来技術のいずれかにより化学的及び/又は物理的に変更することができる。最後に、自己清掃/親水性層310は、希望の制御された表面形態又は粗面性を発生するように制御された堆積パラメータを使用して製造することができる。
スタックの反射度に対する表面の粗面度とシリカとの間の関係を発見する試みにおいて、TFCalcを使用して多数のコーティングが計算上準備された。設計基準は、特定の反射度値及び一般的な中性色を得ることである。CIELab色座標を使用して「中性」を指定した。これらの計算上準備された例では、全ての反射度値に対するターゲットとして[−3、−3]が入力される。他のカラー座標も実現可能であり、以下の例は、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。20未満のC*値又は彩度が伝統的な色中性基準として使用された。コーティングスタックは、ガラス/SnO2/TiO2/粗面/シリカであり、そして使用されたSnO2の屈折率は、1.98であった。ターゲットカラー又はC*値を得るように表面の粗面度を変化させそしてシリカの厚みを計算で決定した。図9は、必要なシリカ厚みと、得られる粗面度・対・シリカ厚みの比との間の関係を示す。粗面度がゼロで、完全にフラットな表面のときには、粗面度・対・シリカの比もゼロであることを理解されたい。図9に示すように、低い反射度値を得るには、厚いシリカ層が必要とされる。更に図9に示すように、粗面の厚みが増加するにつれて、必要なシリカが少なくなる。従って、高い反射度値が望まれるときには、必要なシリカ及び/又は粗面が少なくなる。逆に、低い反射度値が必要とされるときには、シリカ及び/又は粗面層を厚くしなければならない。不都合なことに、シリカに関する光触媒作用も増大する。それ故、光触媒特性を妥協せずに反射度を下げるためには、制御された表面形態又は粗面性を使用する能力が重要となる。
例えば、約250Å未満のシリカを必要とすると仮定すれば、粗面度・対・シリカの比は、18%のターゲット反射度の場合は約0.5より高く、15%の場合は約0.75より高く、そして12%の反射度の場合は約1.4より高くなければならない。あまりシリカを望まない場合には、所与の反射度ターゲットに対して粗面度・対・シリカの高い比が要求される。要約すれば、計算で準備されるコーティングからのこのような結果を使用して、ある範囲のTiO2厚み値で低反射度の中性コーティングを得ることができる。
付加的な例として、テーブル3は、種々のコーティング及びそれにより生じる色を示している。この例では、全てが15%の反射度をもつように設計された。しかしながら、他の反射度を受け容れることもできる。粗面度は、30nmに任意にセットされたが、粗面度・対・シリカの高い比で、同等の性能及び低いシリカ厚み値を生じる。
テーブル3:TiO2厚み値が異なるコーティングの例
Figure 2008541168
親水性層314は、好ましくは、界面領域312の付近で光触媒層310の少なくとも一部分に関連され及び/又は付着される。親水性層314は、コーティング又はスタックがUV光にもはや露出されないときに親水性特性の安定性を与える。又、親水性層314は、反射防止的な特性を通してスタックの反射度を下げるようにも働く。適当な親水性向上材料は、例えば、SiO2及びAl23を含む。
幾つかの好ましい実施形態について本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、多数の修正や変更が明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲のみによって限定されるもので、前記実施形態の詳細な説明により限定されない。
本発明により構成された外部バックミラーアッセンブリの前方斜視図である。 図1の2−2’線に沿った外部バックミラーアッセンブリの第1の実施形態の断面図である。 図1の3−3’線に沿った外部バックミラーアッセンブリの第2の実施形態の断面図である。 図1の4−4’線に沿った外部バックミラーアッセンブリの第3の実施形態の断面図である。 本発明により構成されたエレクトロクロミック絶縁ウインドウの部分断面図である。 本発明により製造された自己清掃親水性コーティングの断面概略図である。 オイル焼き尽し時間の変化をベース層付着温度の関数として示す二次元プロットである。 パーセント反射度の変化を、実験No.1及び2について異なる波長の電磁放射への露出の関数として示す二次元プロットである。 SiO2に対する粗面度の比の変化をSiO2の厚みの関数として示す二次元プロットである。

Claims (20)

  1. 少なくとも高反射度状態と低反射度状態を示すように印加電位に応答して反射率が変化する可変反射度ミラー素子と、
    前記ミラー素子の前面に付着され、制御された表面形態を含む自己清掃親水性コーティングと、
    を備えた乗物用の可変反射度バックミラー。
  2. 前記制御された表面形態は、約10nmから約100nmの範囲の表面粗面度を含む、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  3. 前記ミラーは、前記低反射度状態において約20未満のC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  4. 前記ミラーは、前記高反射度状態及び低反射度状態の両方において約20未満のC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  5. 前記ミラーは、前記低反射度状態において約25未満のC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  6. 前記ミラーは、前記高反射度状態及び低反射度状態の両方において約25未満のC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  7. 前記ミラーは、b*がC*値の少なくとも約50%に貢献する場合だけ、前記高反射度状態及び低反射度状態の1つ以上において約20より大きなC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  8. 前記ミラーは、b*がC*値の少なくとも約75%に貢献する場合だけ、前記高反射度状態及び低反射度状態の1つ以上において約20より大きなC*値を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  9. 前記自己清掃親水性コーティングは、その自己清掃親水性コーティングの前面の水滴が約30°未満の接触角度を示すに充分な親水性である、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  10. 前記自己清掃親水性コーティングは、その自己清掃親水性コーティングの前面の水滴が約20°未満の接触角度を示すに充分な親水性である、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  11. 前記自己清掃親水性コーティングは、その自己清掃親水性コーティングの前面の水滴が約10°未満の接触角度を示すに充分な親水性である、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  12. 前記ミラーは、おおよそ20%、18%、16%、14%及び12%の少なくとも1つの値未満の反射度を示す、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  13. 前記ミラーは、ブレーカ層を備えた、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  14. 前記ミラーは、色抑制層、耐酸性層、及びその組み合せより成るグループから選択されたベース層を備えた、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  15. 前記ミラーは、拡散バリア層を備えた、請求項1に記載の可変反射度バックミラー。
  16. 基板と、
    前記基板の少なくとも一部分に関連され、制御された表面形態を有する自己清掃光触媒層であって、前記制御された表面形態が約10nmから約100nmの範囲の表面粗面度を含むような光触媒層と、
    前記自己清掃光触媒層の少なくとも一部分に関連した親水性層と、
    を備えた自己清掃親水性コーティング。
  17. 前記自己清掃光触媒層の少なくとも一部分に関連したブレーカ層を更に備えた、請求項16に記載の自己清掃親水性コーティング。
  18. 前記ブレーカ層の少なくとも一部分に関連したベース層を更に備えた、請求項17に記載の自己清掃親水性コーティング。
  19. 前記ベース層は、色抑制層、耐酸性層、及びその組み合せより成るグループから選択される、請求項18に記載の自己清掃親水性コーティング。
  20. 前記ベース層の少なくとも一部分に関連した拡散バリア層を更に備えた、請求項19に記載の自己清掃親水性コーティング。
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