JP4184718B2 - 反応性固相担体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体高分子物質の構造の解析に有用な検出用具に関し、特に遺伝子の発現、変異、多型等の効率的な解析に有用な、多数の生物起源の高分子物質もしくはその類縁体を固相担体表面に整列固定させた検出用具に関する。本発明は特に、DNA断片試料の塩基配列の解析に有用な、多数のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を固相担体表面に高密度に整列固定させた高密度アレイ型検出用具(DNA検出チップ)、そしてその高密度アレイ型検出用具の作製に有利に用いることのできる反応性固相担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
多彩な生物の遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発が急速に進んでおり、それらのDNAもしくはDNA断片の塩基配列の解析のために、DNAチップとよばれる、多数のDNA断片あるいは合成オリゴヌクレオチドなどのヌクレオチド誘導体を固相基板の表面に固定した検出用具が用いられている。このような固相基板の表面に結合固定されたヌクレオチド誘導体などの、DNAもしくはその断片あるいは合成オリゴヌクレオチドのような検出用分子はプローブ分子とも呼ばれる。代表的なDNAチップは、スライドガラス等の固相担体に多数のプローブ分子を整列固定させたマイクロアレイである。このDNAチップの製造、そしてその使用に関するDNAチップ関連技術は、DNA以外の生体分子の検出にも利用可能であると考えられ、従って、創薬研究、疾病の診断や予防法の開発等に新しい手段を提供するものとして期待されている。
【0003】
DNAチップ関連技術が具体化してきたのは、DNAの塩基配列をオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって決定する方法が考案されたことに始まる。この方法は、ゲル電気泳動を用いる塩基配列決定法の限界を克服できる方法ではあったが、当初は実用化には至らなかった。
【0004】
その後、上記のような構成のDNAチップと、その作製技術が開発され、遺伝子の発現、変異、多型等を短時間で効率よく調べることが可能となった。すなわち、作製されたDNAチップ上のDNA断片もしくはオリゴヌクレオチドに相補性を示すDNA断片試料(標的DNA断片ともいわれる)は、一般的には、DNAチップ上のDNA断片もしくはオリゴヌクレオチドと、標識したDNA断片試料とのハイブリダイゼーションを利用して検出される。
【0005】
DNAチップ作製技術を実用化するためには、多数のDNA断片やオリゴヌクレオチドを固相担体表面に高密度に、かつ安定に整列させるための技術が必要とされる。
【0006】
DNAチップの作製方法としては、固相担体表面で直接オリゴヌクレオチドを合成する方法(「オン・チップ法」という。)と、予め調製用意したDNA断片あるいはオリゴヌクレオチドを固相担体表面に結合固定する方法とが知られている。オン・チップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術および固相合成技術とを組み合わせ、所定の微少なマトリックス領域でのオリゴヌクレオチドの選択的な合成を行なう方法(「マスキング技術」という)が代表的である。
【0007】
予め調製用意したDNA断片やオリゴヌクレオチドを固相担体表面に結合固定する方法としては、DNA断片の種類や固相担体の種類に応じて下記の方法が知られている。
(1)固定するDNA断片がcDNA(mRNAを鋳型にして合成した相補的DNA)やPCR産物(cDNAをPCR法によって増幅させたDNA断片)である場合には、cDNAあるいはPCR産物を、DNAチップ作製装置に備えられたスポッタ装置により、ポリ陽イオン化合物(ポリリシン、ポリエチレンイミン等)で表面処理した固相担体の表面に点着し、DNA断片の持つ電荷を利用して固相担体に静電結合させるのが一般的である。なお、固相担体表面の処理方法としては、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤を用いる方法も利用されている。このシランカップリング剤を用いた表面処理では、アミノ基、アルデヒド基等は、共有結合により固相担体表面に固定されるため、ポリ陽イオン化合物による表面処理の場合と比較して、安定に固相担体表面に固定される。
【0008】
上記のDNA断片の電荷を利用する方法の変法として、アミノ基で修飾したPCR産物をSSC(標準食塩−クエン酸緩衝液)に懸濁させ、これをシリル化したスライドガラス表面に点着し、インキュベートした後、水素化ホウ素ナトリウムによる処理および加熱処理を順に行なう方法が報告されている。しかし、この固定方法では必ずしも充分なDNA断片の固定安定度が得られ難いという問題がある。DNAチップ技術では、検出限界が重要となる。そのため、固相担体表面に充分な量で(すなわち、高密度に)、かつ安定にDNA断片が結合固定することは、DNA断片プローブと標識した試料核酸断片とのハイブリダイゼーションの検出限界の向上に直接影響する。
【0009】
(2)固定するオリゴヌクレオチド(プローブ分子)が合成オリゴヌクレオチドである場合には、まず反応活性基を導入したオリゴヌクレオチドを合成し、予め反応性基を形成させるように表面処理した固相担体表面に該オリゴヌクレオチドを点着して、該オリゴヌクレオチドを固相担体表面に共有結合により結合固定させる方法も知られている。例えば、表面にアミノ基を導入したスライドガラスに、PDC(p−フェニレンジイソチオシアネート)の存在下、アミノ基導入オリゴヌクレオチドを反応させる方法、および該スライドガラスに、アルデヒド基導入オリゴヌクレオチドを反応させる方法が知られている。これらの二つの方法は、前記(1)のDNA断片の電荷を利用して静電結合により固定する方法と比べると、オリゴヌクレオチドが固相担体表面に安定に結合固定されるという利点がある。しかし、PDCを存在させる方法は、PDCとアミノ基導入オリゴヌクレオチドとの反応が遅く、またアルデヒド基導入オリゴヌクレオチドを用いる方法では、反応生成物であるシッフ塩基の安定性が低い(従って、加水分解が起こり易い)という問題点がある。
【0010】
なお、近年、DNAチップのプローブ分子として、オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(合成されたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド及びDNA分子やDNA断片、そしてRNA分子やRNA断片をも包含する)の代りに、PNA(ペプチド核酸)と呼ばれるオリゴヌクレオチド類縁体を用いる技術も提唱されている。このPNAの固相基板へ共有結合により固定するための方法として、アビジンとビオチンとを組合わせて用いる方法も知られている(特開平11−332595号公報)。この公開公報には、固相基板として、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサを利用することの技術も記載されている。表面プラズモン共鳴バイオセンサ上にプローブ分子が固定されたDNAチップを用いて、その表面にハイブリダイゼーションを介して結合固定されたDNA断片は、表面プラズモン共鳴現象を利用して検出することができる。
【0011】
また、DNAチップの基板として、電荷結合素子(CCD)を用いることも知られている(Nucleic Acids Research, 1994, Vol.22, No.11, 2124-2125)。
【0012】
特開平4−228076号公報(米国特許第5387505号明細書に対応)には、ビオチン分子を付けた標的DNAを、アビジン分子を表面に固定した基体に結合させて、標的DNAを分離する技術が記載されている。
【0013】
特公平7−43380号公報(米国特許第5094962号明細書に対応)には、リガンド−受容体アッセイに用いる検出用具であって、表面に反応活性基を有する微孔質ポリマー粒子の表面に受容体分子を結合させた分析用具が記載されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、予め調製した、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド核酸などのヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を、迅速かつ安定に結合固定させるために特に有利に用いることができる反応性固相担体の製造方法を提供することを、その課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明により製造されるのは、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、一群のビニルスルホニル基(別に、ビニルスルホン基あるいはスルホニルビニル基と呼ぶこともある)もしくはその反応性前駆体基がそれぞれ連結基を介して共有結合により結合固定されてなる反応性固相担体である。
上記のビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と連結基との連結体は、広義には、下記の式(1)により表わされるものである。
【0016】
【化4】
−L−SO2−X −−− (1)
【0017】
[上記の式において、Xは、−CR1=CR2R3または−CHR1−CR2R3Yを表わし;R1、R2及びR3は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;Yは、ハロゲン原子、−OSO2R11、−OCOR12、−OSO3M、及び四級ピリジニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基および炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子およびアンモニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;そして、Lは連結基を表わす]。
【0018】
上記の式(1)において、Xは、−CH=CH2で表わされるビニル基であることが望ましく、
【0019】
Lは、炭素原子以外の二価以上の原子を含む連結基であることが望ましい。Lとしては、−NH−、−S−、もしくは−O−などの連結部位を有する連結基であることが望ましい。Lの例としては、−(L1)n−NH−(CR1R2)2−または−(L1)n−S−(CR1R2)2−[但し、R1及びR2は前記と同じ意味を表わし、L1は連結基を表わし、そしてnは0もしくは1である]で表わされる連結基を挙げることができる。特に、Lが、−(L1)n−NHCH2CH2−[但し、L1は連結基を表わし、そしてnは0もしくは1である]で表わされる連結基あることが望ましい。上記のL1は、−OSi−で表わされる基を含む連結基であることが望ましい。
【0020】
本発明の反応性固相担体は、表面にアミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシ基、もしくはカルボキシル基である反応性基が導入された、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体に、下記式(2):
【0021】
【化5】
X1−SO2−L2−SO2−X2 −−− (2)
【0022】
[上記の式において、X1およびX2は互いに独立に、−CR1=CR2R3、または−CHR1−CR2R3Y(反応性前駆体基)を表わし;R1、R2及びR3は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;Yは、ハロゲン原子、−OSO2R11、−OCOR12、−OSO3M、及び四級ピリジニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基および炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子およびアンモニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;そして、L2は連結基を表わす]
で表わされるジスルホン化合物を接触させることによって、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、一群の、−SO 2 −L 2 −SO 2 −X 2 で表わされるジスルホニル基が共有結合により固定されてなる反応性固相担体として容易に製造することができる。
【0023】
上記の式(2)で表わされるジスルホン化合物の代表的な例としては、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを挙げることができる。
【0024】
上記の固相担体表面に導入されている反応性基は、アミノ基、メルカプト基もしくはヒドロキシル基であることが望ましい。
【0025】
本発明により得られる、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、一群のビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基がそれぞれ共有結合により固定されてなる反応性固相担体は、該表面に、該反応性基と反応して共有結合を形成する反応性基を備えたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を接触させることにより、スルホニル基を有する連結基を介してヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が担体表面に結合固定された固相担体とすることができる。
【0026】
固相担体に固定するヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の代表的な例としては、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびペプチド核酸を挙げることができる。これらのヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体としては、その分子の一方の端部もしくは端部附近に、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基、カルバモイル基、ヒドラジノカルボニル基、もしくはカルボキシイミド基などの、ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応する共有結合を形成する反応性基を持つものが利用される。
【0027】
上記のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が固定された固相担体は、水性媒体の存在下、該固定ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体に対して相補性を示すオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAもしくはその断片、あるいはRNAもしくはその断片)を接触させて、ハイブリダイゼーションを発生させることにより、その相補性オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを固定することができる。固定すべき相補性のオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドは、その固定を外部から検知することが可能なように、検知可能な標識(例、蛍光標識)が結合していることが望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明により得られる反応性固相担体は、広義には、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、一群のビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基がそれぞれ連結基を介して共有結合により結合固定された構成を有している。
【0029】
固相担体は、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体である。
【0030】
本発明の反応性固相担体の製造に用いる固相担体としては、従来よりDNAチップの製造に用いられているか、あるいはDNAチップの製造用として提案されているガラス基板、シリコン基板、電極基板が好ましく利用することができる。
【0031】
固相担体の表面には、ジビニルスルホン化合物などの二官能反応性化合物を共有結合により結合固定するために、ポリ陽イオン化合物(例えば、ポリ−L−リシン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミン等であることが好ましく、ポリ−L−リシンであることがさらに好ましい)などのアミノ基を側鎖に有するポリマーによって被覆処理(この場合、固相担体表面へ導入される反応性基は、アミノ基である)することが望ましい。あるいは、固相担体表面は、シランカップリング剤などの固相担体表面と反応する反応性基と、そして別にアミノ基などの反応性基を有する表面処理剤によって接触処理することができる。
【0032】
固相担体表面は、ポリ陽イオン化合物による被覆処理の場合には、アミノ基もしくはメルカプト基がポリマー化合物と固体担体表面との静電結合によって固相担体表面に導入されるのに対して、シランカップリング剤による表面処理の場合には、固相担体表面に共有結合によって結合固定されるため、アミノ基もしくはメルカプト基が固相担体表面に安定に存在する。アミノ基およびメルカプト基の他に、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、あるいは水酸基も好ましく導入することができる。
【0033】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランあるいはN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを用いることが好ましく、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0034】
ポリ陽イオン化合物を用いる処理に、シランカップリング剤による処理を組み合わせて行ってもよい。この方法により、疎水性、あるいは親水性の低い固相担体とDNA断片との静電的相互作用を促進することができる。ポリ陽イオン化合物による処理がされた固相担体表面上に、さらに、電荷を有する親水性高分子等からなる層や架橋剤からなる層を設けてもよい。このような層を設けることによって、ポリ陽イオン化合物による処理がされた固相担体の凹凸を軽減することができる。固相担体の種類によっては、その担体中に親水性高分子等を含有させることも可能であり、このような処理を施した固相担体も好ましく用いることができる。
【0035】
通常のDNAチップ用の固相担体の表面には、予め区画あるいは想定された多数の領域が設定されており、各領域毎に上記のように、ジビニルスルホン化合物などの二官能性反応性化合物と反応することができる反応性基が予め導入されている。用いる固相担体の各領域の表面のそれぞれには、上記のアミノ基、メルカプト基、あるいはヒドロキシル基などの反応性基が備えられているが、そのような反応性基を持たない固相担体には、前述のように、シランカップリング剤による表面処理、あるいはアミノ基などの反応性基を側鎖に有するポリマーなどを固相担体の表面に塗布被覆する方法を利用して、反応性基の導入が行なわれる。
【0036】
反応性基を備えた固相担体は、ジビニルスルホン化合物などの二官能性反応性化合物と接触することによって、その反応性基と二官能性反応性化合物とが反応し、共有結合が形成され、固相担体の反応性基部分が延長され、その先端もしくは先端附近にビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を持つ反応性鎖が形成され、これにより本発明の反応性固相担体が生成する。
【0037】
本発明により得られる反応性固相担体において、固相担体表面に導入されるビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と連結基との連結体は、広義には、下記の式(1)により表わされるものである。
【0038】
【化6】
−L−SO2−X −−− (1)
【0039】
上記の式(1)において、Xは、−CR1=CR2R3または−CHR1−CR2R3Y(反応性前駆体基)を表わす。R1、R2およびR3は、それぞれ互いに独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、あるいは炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表わす。炭素原子数が1乃至6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ヘキシル基を挙げることができ、メチル基であることが特に好ましい。アリール基としては、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。R1、R2及びR3は共に水素原子であることが好ましい。
【0040】
Yは、−OH、−OR0、−SH、NH3、NH2R0(但し、R0は、水素原子を除く、アルキル基などの基である)などの求核試薬によって置換される基、あるいは塩基によって「HY」として脱離する基を表わし、その例としては、ハロゲン原子、−OSO2R11、−OCOR12、−OSO3M、あるいは四級ピリジニウム基を表わす(R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、あるいは炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基あるいは炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子あるいはアンモニウム基を表わす)を挙げることができる。
【0041】
Lは、固相担体もしくは固相担体に結合している連結基と、上記−SO2−X基とを連結している二価もしくはそれ以上の連結基を表わす。ただし、Lは単結合であってもよい。二価の連結基としては、炭素原子数が1乃至6のアルキレン基、炭素原子数が3乃至16の脂肪族環基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、N、SおよびPからなる群より選ばれるヘテロ原子を1乃至3個含む炭素原子数が2乃至20の複素環基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−SO3−、−NR11−、−CO−およびこれらの組み合わせから群より選ばれる基を一つあるいは複数個組み合わせてなる基であることが好ましい。R11は、水素原子、炭素原子数が1乃至15のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、あるいは炭素原子数が1乃至6のアルキル基を有する炭素原子数が7乃至21のアラルキル基であることが好ましく、水素原子もしくは炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基もしくはエチル基であることが特に好ましい。
Lが−NR11−、−SONR11−、−CONR11−、−NR11COO−、および−NR11CONR11−からなる群より選ばれる基を二個以上組み合わせてなる基である場合には、それらのR11同士が結合して環を形成していてもよい。
【0042】
R11のアルキル基、R11のアリール基、およびR11のアラルキル基は、置換基を持っていてもよい。このような置換基としては、水酸基、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数が1乃至6のアルケニル基、炭素原子数が2乃至7のカルバモイル基、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が7乃至16のアラルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、スルファモイル基(もしくはそのNa塩、K塩等)、スルホ基(もしくはそのNa塩、K塩等)、カルボン酸基(もしくはそのNa塩、K塩等)、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至6のアルケニレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、スルホニル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる原子もしくは基を挙げることができる。
【0043】
上記「−X」基の好ましい具体例を以下に示す。また、「−L−SO2−X」として使用できる基の例についても、その後に示す。
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
「−X」は、上記具体例中、(X1)、(X2)、(X3)、(X4)、(X7)、(X8)、(X13)あるいは(X14)であることが好ましく、(X1)あるいは(X2)であることがさらに好ましい。特に好ましいのは、(X1)で表わされるビニル基である。
【0047】
Lの好ましい具体例を以下に示す。但し、aは、1乃至6の整数であり、1もしくは2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。bは、0乃至6の整数であり、2もしくは3であることが好ましい。
【0048】
【化9】
【0049】
Lとしては、上記記載の二価の連結基の他に、上記式のアルキレン基の水素原子が−SO2CH=CH2基によって置換されてなる基も好ましい。
【0050】
前記の式(1)で表わされるビニルスルホニル基もしくは反応性前駆体基が共有結合により固定された固相担体を得るために利用される二官能反応性化合物としては、下記の式(2)で表わされるジスルホン化合物が有利に利用できる。
【0051】
【化10】
X1−SO2−L2−SO2−X2 −−− (2)
【0052】
[上記の式において、X1およびX2は互いに独立に、−CR1=CR2R3、または−CHR1−CR2R3Y(反応性前駆体基)を表わし;R1、R2及びR3は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;Yは、ハロゲン原子、−OSO2R11、−OCOR12、−OSO3M、及び四級ピリジニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基および炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子およびアンモニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;そして、L2は連結基を表わす]。
【0053】
すなわち、上記の式(2)で表わされるジスルホン化合物を、前記の固相担体と、例えば水性雰囲気にて、接触させることによって、目的の反応性固相担体を容易に製造することができる。
【0054】
本発明で好ましく用いるジスルホン化合物の代表例を下記に示す。なお、ジスルホン化合物は、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0055】
【化11】
【0056】
【化12】
【0057】
上記の式(2)で表わされるジスルホン化合物の代表的な例としては、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを挙げることができる。
【0058】
本発明で用いるジスルホン化合物の合成法については、たとえば、特公昭47−2429号、同50−35807号、特開昭49−24435号、同53−41551号、同59−18944号等の各種公報に詳細が記載されている。
【0059】
上記のようにして得られた反応性固相担体を利用して、DNA、RNA、DNA断片、あるいはRNA断片などの天然起源のポリヌクレオチドあるいはオリゴヌクレオチドの検出固定のための検出具(一般にDNAチップと呼ばれているもの)を作製するためには、上記の反応性固相担体を、その担体表面上のビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応して共有結合を形成するアミノ基などの反応性基を備えたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体と接触させる方法が利用される。すなわち、このようにして所望のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体からなるプローブ分子を備えた検出具(いわゆるDNAチップ)を作製することができる。
【0060】
本発明により得られる反応性固相単体の固相基板表面に共有結合を介して結合されたビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基は、加水分解に対して高い抵抗性を有しているため、容易に安定に保存することができ、また、アミノ基を予め備えているか、あるいはアミノ基などの反応性基が導入されているかヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の反応性基と迅速に反応して、安定な共有結合を形成することができる。
【0061】
プローブ分子として用いるヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の代表例としては、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、そしてペプチド核酸を挙げることができる。これらのヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体としては、天然起源のもの(DNA、DNA断片、RNA、あるいはRNA断片など)であってもよく、あるいは合成化合物であってもよい。また、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体としては、その糖単位部分に架橋基を有するLNAと呼ばれる化合物(J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 13252-13253に記載)などの各種の類縁化合物が含まれる。
【0062】
プローブ分子としてDNA断片を用いる場合は、目的によって二通りに分けることができる。遺伝子の発現を調べるためには、cDNA、cDNAの一部、EST等のポリヌクレオチドを使用することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、その機能が未知であってもよいが、一般的にはデータベースに登録された配列を基にしてcDNAのライブラリー、ゲノムのライブラリーあるいは全ゲノムをテンプレートとしてPCR法によって増幅して調製する(以下、「PCR産物」という)。PCR法によって増幅しないものも、好ましく使用することができる。また、遺伝子の変異や多型を調べるには、標準となる既知の配列をもとにして、変異や多型に対応する種々のオリゴヌクレオチドを合成し、これを使用することが好ましい。さらに、塩基配列の分析を目的とする場合、4n(nは、塩基の長さ)種のオリゴヌクレオチドを合成して、それらを使用することが好ましい。DNA断片の塩基配列は、一般的な塩基配列決定法によって予めその配列が決定されていることが好ましい。DNA断片は、2乃至50量体であることが好ましく、10乃至25量体であることが特に好ましい。
【0063】
オリゴヌクレオチドやDNA断片などのヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の一方の末端には、前記のビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応して共有結合を形成する反応性基を導入する。このような反応性基は、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基、カルバモイル基、ヒドラジノカルボニル基、もしくはカルボキシイミド基であることが好ましく、アミノ基であることが特に好ましい。オリゴヌクレオチドやDNA断片には、通常、クロスリンカーを介してこれらの反応性基が結合される。クロスリンカーとしては、たとえば、アルキレン基あるいはN−アルキルアミノ−アルキレン基が利用されるが、ヘキシレン基あるいはN−メチルアミノ−ヘキシレン基であることが好ましく、ヘキシレン基であることが特に好ましい。なお、ペプチド核酸(PNA)はアミノ基を有しているため、通常は、改めて別に反応性基を導入する必要はない。
【0064】
反応性基を備えたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体と反応性固相担体との接触は、通常、該ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の水溶液を反応性固相担体の表面に点着することにより実施される。具体的には、反応性基を備えたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を水性媒体に溶解あるいは分散して水性液としたのち、その水性液を、96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した水性液をスポッター装置等を用いて固相担体表面上に滴下して行うことが好ましい。
【0065】
点着後のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の乾燥を防ぐために、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が溶解あるいは分散してなる水性液中に、高沸点の物質を添加してもよい。高沸点の物質としては、点着後のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が溶解あるいは分散してなる水性液に溶解し得るものであって、検出対象の核酸断片試料(標的核酸断片)などの試料とのハイブリダイゼーションを妨げることがなく、かつ粘性があまり大きくない物質であることが好ましい。このような物質としては、グリセリン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよび低分子の親水性ポリマーを挙げることができる。親水性ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、そしてポリアクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。このポリマーの分子量は、103乃至106の範囲にあることが好ましい。高沸点の物質としては、グリセリンあるいはエチレングリコールを用いることがさらに好ましく、グリセリンを用いることが特に好ましい。高沸点の物質の濃度は、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の水性液中、0.1乃至2容量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至1容量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0066】
また、同じ目的のために、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を点着した後の固相担体を、90%以上の湿度および25乃至50℃の温度範囲の環境に置くことも好ましい。
【0067】
反応性基を有するヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を点着後、紫外線、水素化ホウ素ナトリウムあるいはシッフ試薬による後処理を施してもよい。これらの後処理は、複数の種類を組み合わせて行ってもよく、特に加熱処理と紫外線処理を組み合わせて行うことが好ましい。これらの後処理は、ポリ陽イオン化合物のみによって固相担体表面を処理した場合には特に有効である。点着後は、インキュベーションを行うことも好ましい。インキュベート後は、未反応のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を洗浄して除去することが好ましい。
【0068】
ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の固定量(数)は、固相担体表面に対して、102乃至105種類/cm2の範囲にあることが好ましい。ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の量は、1乃至10-15モルの範囲にあり、重量としては数ng以下であることが好ましい。点着によって、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の水性液は、固相担体表面にドットの形状で固定される。ドットの形状は、ほとんど円形である。形状に変動がないことは、遺伝子発現の定量的解析や一塩基変異を解析するために重要である。それぞれのドット間の距離は、0乃至1.5mmの範囲にあることが好ましく、100乃至300μmの範囲にあることが特に好ましい。1つのドットの大きさは、直径が50乃至300μmの範囲にあることが好ましい。固相担体表面に点着するヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の量は、100pL乃至1μLの範囲にあることが好ましく、1乃至100nLの範囲にあることが特に好ましい。
【0069】
図1に、本発明により得られる反応性固相単体を用いるオリゴヌクレオチド固定固相担体の製造方法および代表的なオリゴヌクレオチド固定固相担体の構成を模式的に示す。
上記のオリゴヌクレオチドが固定された固相担体の製造方法としては、前記式(2)で表されるジスルホン化合物を用いた場合、そのX1およびX2によって四種類の製造方法が利用できる。
【0070】
図1には、式(2)のジスルホン化合物のX1とX2とが何れも−CHR1−CR2R3Y(反応性前駆体基)である場合のオリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C1)の製造方法(a)、およびX1が−CHR1−CR2R3Yであって、X2が−CR1=CR2R3である場合のオリゴヌクレオチド固定固相担体(C2)の製造方法(b)を示す。ただし、X1を、固相担体1の表面に導入された反応性基(R)と最初に反応する基と仮定して、そのX1を−CR1=CR2R3とする製造方法であってもよい。以下、「X1」を、固相担体1の表面に導入された反応性基(R)と最初に反応する基として説明を行なう。
【0071】
製造方法(a)および(b)について説明する。
工程(1):担体表面に反応活性基(R)が導入された固相担体1[固相担体(A)]に、式(1)で表わされるジスルホン化合物を接触させ、X1の−Y部分に反応性基(R)を置換させることによって、−(CR1R2)n−SO2−L−SO2−X2基を固相担体表面に導入する。
【0072】
工程(2):工程(1)で導入された−(CR1R2)n−SO2−L−SO2−X2基のX2に、一方の末端に反応性基(Z)を有するオリゴヌクレオチド2を接触させることによって反応性基(Z)を付加させる、または該X2の−Yに該オリゴヌクレオチド2を接触させることによって反応性基(Z)を置換させる。
【0073】
本発明のプローブ分子固定用担体は、X1を固相担体1の表面に導入された反応性基(R)と最初に反応する基とする場合に、そのX1を−CR1=CR2R3とする下記の方法によって製造されるものであってもよい。
【0074】
工程(1):固相担体1の表面に活性基(R)が導入された固相担体(A)に、式(I)で表されるジスルホン化合物を接触させ、X1の−CR1=CR2R3に、反応性基(R)を付加させることによって、−R3R2C−R1HC−SO2−L−SO2−X2基を固相担体表面に導入する。
【0075】
工程(2):工程(1)において導入された−R3R2C−R1HC−SO2−L−SO2−X2基のX2に、一方の末端に反応性基(Z)を有するオリゴヌクレオチドを接触させることによって反応性基(Z)を付加させるか、あるいは該X2の−Yの部分に、該オリゴヌクレオチドを接触させることによって、この反応性基(Z)を置換させる。
【0076】
一方の末端に反応性基(Z)を有するオリゴヌクレオチドは、図1において、2によって示される化合物である。クロスリンカー(Q)は、必須ではないが、反応性のオリゴヌクレオチド2の調製の都合上、反応性基(Z)とリン酸エステル基との間に存在するのが一般的である。−リン酸エステル基−NNNN・・・NNは、オリゴヌクレオチドを表わす。R4は、反応性基(R)とX1との反応によって、Z1は、X2と反応性基(Z)との反応によってそれぞれ決定される基である。
【0077】
図1の固相担体(B)の表面に反応性基(Z)を有するオリゴヌクレオチド2を点着させると、X2またはX2の−Yと該反応性オリゴヌクレオチド片2との反応が起こるが、固相担体(B)の表面には該オリゴヌクレオチド2が結合していない未反応のX2も存在する。このようなX2は、後に行なわれる標識された核酸断片試料とのハイブリダイゼーションにおいて非特異的な反応を生じる可能性があり、非特異的な結合を測定してしまうおそれがあるため、予め該X2(即ち、例えば、X2のハロゲン原子)をマスク処理しておくことが好ましい。マスク処理は、固相担体(C1)(もしくは(C2))の表面に、アミノ基もしくはメルカプト基を有するアニオン性化合物を接触させることによって行うことが好ましい。該オリゴヌクレオチド2は、負の電荷を有するため、固相担体(C)表面にも負の電荷を発生させることによって、オリゴヌクレオチド2が未反応のX2と反応するのを防ぐことができる。このようなアニオン性化合物としては、X2のハロゲン原子と反応し、かつ負の電荷(COO-、SO3 -、OSO3 -、PO3 -、もしくはPO2 -)を有するものであれば何れのものも用いることができるが、アミノ酸であることが好ましく、グリシンもしくはシステインであることが特に好ましい。また、タウリンも好ましく用いることができる。
【0078】
本発明によって得られる反応性固相単体を用いて製造されたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が固定された固相担体の寿命は、cDNAが固定されてなるcDNA固定固相担体では通常、数週間であり、合成オリゴヌクレオチドが固定されてなる固相担体ではさらに長期間である。従って、このヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が固定された固相担体は、遺伝子発現のモニタリング、塩基配列の決定、変異解析、多型解析等に利用される。検出原理は、後述する標識した試料核酸断片とのハイブリダイゼーションである。
【0079】
標識方法としては、RI法と非RI法(蛍光法、ビオチン法、化学発光法等)とが知られているが、本発明では蛍光法を用いることが好ましい。蛍光標識に利用される蛍光物質としては、核酸の塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、市販のCy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミノフルオレン(AAF)あるいはAAIF(AAFのヨウ素誘導体)を使用することができる。
【0080】
試料核酸断片としては、通常、その配列や機能が未知であるDNA断片試料あるいはRNA断片試料などの核酸断片試料が用いられる。
【0081】
核酸断片試料は、遺伝子発現を調べる目的では、真核生物の細胞や組織サンプルから単離することが好ましい。試料がゲノムならば、赤血球を除く任意の組織サンプルから単離することが好ましい。赤血球を除く任意の組織は、抹消血液リンパ球、皮膚、毛髪、精液等であることが好ましい。試料がmRNAならば、mRNAが発現される組織サンプルから抽出することが好ましい。mRNAは、逆転写反応により標識dNTP(「dNTP」は、塩基がアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)もしくはチミン(T)であるデオキシリボヌクレオチドを意味する。)を取り込ませて標識cDNAとすることが好ましい。dNTPとしては、化学的な安定性のため、dCTPを用いることが好ましい。一回のハイブリダイゼーションに必要なmRNA量は、点着する液量や標識方法によって異なるが、数μg以下である。なお、ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体固定固相担体上のDNA断片がオリゴDNAである場合には、核酸断片試料は低分子化しておくことが望ましい。原核生物の細胞では、mRNAの選択的な抽出が困難なため、全RNAを標識することが好ましい。
【0082】
核酸断片試料は、遺伝子の変異や多型を調べる目的では、標識プライマーもしくは標識dNTPを含む反応系において標的領域のPCRを行なって得ることが好ましい。
【0083】
ハイブリダイゼーションは、96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注しておいた、標識した核酸断片試料が溶解あるいは分散してなる水性液を、本発明のヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を固定した固相担体上に点着することによって実施することが好ましい。点着の量は、1乃至100nLの範囲にあることが好ましい。ハイブリダイゼーションは、室温乃至70℃の温度範囲で、そして6乃至20時間の範囲で実施することが好ましい。ハイブリダイゼーションの終了後、界面活性剤と緩衝液との混合溶液を用いて洗浄を行い、未反応の核酸断片試料を除去することが好ましい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いることが好ましい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いることができるが、クエン酸緩衝液を用いることが特に好ましい。
【0084】
ヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体を固定した固相担体を用いるハイブリダイゼーションの特徴は、標識した核酸断片試料の使用量を非常に少なくできることである。そのため、固相担体に固定するヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体の鎖長や標識した核酸断片試料の種類により、ハイブリダイゼーションの最適条件を設定する必要がある。遺伝子発現の解析には、低発現の遺伝子も十分に検出できるように、長時間のハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。一塩基変異の検出には、短時間のハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。また、互いに異なる蛍光物質によって標識した核酸断片試料を二種類用意し、これらを同時にハイブリダイゼーションに用いることにより、同一のDNA断片固定固相担体上で発現量の比較や定量ができる特徴もある。
【0085】
【実施例】
[実施例1]オリゴヌクレオチド固定スライドの作製、およびオリゴヌクレオチドの固定量の測定
本発明により得られる反応性固相単体を用いるオリゴヌクレオチドの固定方法を、オリゴヌクレオチドの反応経路によって表すこととし、その反応経路を図2に示す。図中、1は、スライドガラスを表す。
【0086】
(1)ビニルスルホニル基が導入された固相担体(B)の作成
2重量%アミノプロピルエトキシシラン(信越化学工業(株)製)のエタノール溶液に、スライドガラス(25mm×75mm)を10分間浸した後、これを取り出し、エタノールで洗浄した後、110℃で10分間乾燥して、シラン化合物被覆スライド(A)を作成した。次に、このシラン化合物被覆スライド(A)を、5重量%1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンのリン酸緩衝液(pH8.5)溶液に1時間浸した後取り出し、アセトニトリルで洗浄し、1時間減圧下乾燥し、表面にビニルスルホニル基が導入された固相担体(B)を得た。
【0087】
(2)オリゴヌクレオチドの点着と蛍光強度の測定
3’末端および5’末端がそれぞれアミノ基、蛍光標識試薬(FluoroLink Cy5−dCTP、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されたオリゴヌクレオチド(3’−CTAGTCTGTGAAGTGTCTGATC−5’)を0.1M炭酸緩衝液(pH9.3)に分散した水性液(1×10-6M、1μL)を、上記(1)で得たスライド(B)に点着した。直ちに、点着後の固相担体を25℃、湿度90%にて1時間放置した後、この固相担体を0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と2×SSC(2×SSC:SSCの原液を2倍に希釈した溶液、SSC:標準食塩−クエン酸緩衝液)との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液で1回順次洗浄した。次いで、上記の洗浄後のスライドを0.1Mグリシン水溶液(pH10)中に1時間30分浸積した後、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥させ、DNA断片が固定された固相担体(C)を得た。この固相担体(C)表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、2500であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いる固定化方法により、オリゴヌクレオチドが効率よくスライドガラスに固定されたことが分かる。
【0088】
[実施例2]相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
(1)オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製
3’末端がアミノ基で修飾された40merのオリゴヌクレオチド(3’−TCCTCCATGTCCGGGGAGGATCTGACACTTCAAGGTCTAG−5’)を0.1M炭酸緩衝液(pH9.3)に分散してなる水性液(1×10-6M、1μL)を、実施例の(1)で得た固相担体(B)に点着した。直ちに、点着後の固相担体を25℃、湿度90%にて1時間放置した後、この固相担体を0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と2×SSC(2×SSC:SSCの原液を2倍に希釈した溶液、SSC:標準食塩−クエン酸緩衝液)との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液で1回順次洗浄した。次いで、上記の洗浄後のスライドを0.1Mグリシン水溶液(pH10)中に1時間30分浸積した後、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥させ、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C’)を得た。
【0089】
(2)相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
5’末端にCy5(蛍光標識)が結合した22merの標的オリゴヌクレオチド試料(CTAGTCTGTGAAGTTCCAGATC−5’)をハイブリダイゼーション用溶液(4×SSCおよび10重量%のSDSの混合溶液、20μL)に分散させたものを、上記(1)で得た固相担体(C’)に点着し、表面を顕微鏡用カバーガラスで保護した後、モイスチャーチャンバー内にて60℃で20時間インキュベートした。次いで、このものを0.1重量%SDSと2×SSCとの混合溶液、0.1重量%SDSと0.2×SSCとの混合溶液、及び0.2×SSC水溶液で順次洗浄した後、600rpmで20秒間遠心処理し、室温で乾燥した。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、1219であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製されたオリゴヌクレオチド固定固相担体を用いることによって、そのオリゴヌクレオチド固定固相担体に固定されているオリゴヌクレオチドと相補性を有する標的DNA断片試料などの標的オリゴヌクレオチド試料を効率的に検出できることが分かる。
【0090】
[実施例3]オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製、およびオリゴヌクレオチドの固定量の測定
(1)アミノ基が導入された固相担体(B1)の作製
2重量%アミノプロピルエトキシシラン(信越化学工業(株)製)のエタノール溶液に、スライドガラス(25mm×75mm)を10分間浸した後取り出し、エタノールで洗浄後、110℃で10分間乾燥して、シラン化合物被覆スライド(A)を作成した。次いで、このシラン化合物被覆固相担体(A)を、クロロスルホニルイソシアナート(0.5g)をアセトニトリル(1mL)に溶解したアセトニトリル溶液に2時間浸した後、取り出し、アセトニトリルで洗浄し、1時間減圧下乾燥し、固相担体(B1)を得た。
【0091】
(2)オリゴヌクレオチドの点着と蛍光強度の測定
3’末端および5’末端がそれぞれアミノ基、蛍光標識試薬(FluoroLink Cy5−dCTP、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されたオリゴヌクレオチド(3’−CTAGTCTGTGAAGTGTCTGATC−5’)を0.1M炭酸緩衝液(pH8.0)に分散した水性液(1×10-6M、1μL)を、上記(1)で得た固相担体(B1)に点着した。直ちに、点着後の固相担体を、25℃、湿度90%にて1時間放置した後、この固相担体を、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と2×SSC(2×SSC:SSCの原液を2倍に希釈した溶液、SSC:標準食塩−クエン酸緩衝液)との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液で1回順次洗浄した。次いで、上記の洗浄後のスライドを0.1Mグリシン水溶液(pH10)中に1時間30分浸積した後、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥させ、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C1)を得た。この固相担体(C1)表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、3210であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いる固定化方法により、標的DNA断片試料などの標的オリゴヌクレオチド試料が効率よくスライドガラスに結合固定されたことが分かる。
【0092】
[実施例4]相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
(1)オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製
3’末端が蛍光標識試薬で修飾されていないオリゴヌクレオチドを用いる以外は実施例1と同様にして、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C1’)を得た。
(2)相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
5’末端にCy5が結合した22merのオリゴヌクレオチド試料(CTAGTCTGTGAAGTTCCAGATC−5’)をハイブリダイゼーション用溶液(4×SSCおよび10重量%のSDSの混合溶液)(20μL)に分散させたものを、上記(1)で得た固相担体(C1’)に点着し、表面を顕微鏡用カバーガラスで保護した後、モイスチャーチャンバー内にて60℃で20時間インキュベートした。次いで、このものを0.1重量%SDSと2×SSCとの混合溶液、0.1重量%SDSと0.2×SSCとの混合溶液、および0.2×SSC水溶液で順次洗浄した後、600rpmで20秒間遠心し、室温で乾燥した。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、1078であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製されたオリゴヌクレオチド固定固相担体を用いることによって、固相担体に固定されているオリゴヌクレオチドと相補性を有する標的DNA断片試料のような標的オリゴヌクレオチド試料を効率良く検出できることが分かる。
【0093】
[実施例5]オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製、およびオリゴヌクレオチドの固定量の測定
クロロスルホニルイソシアナートの代わりに、スクシンイミジル(4−ビニルスルホニル)ベンゾエート(0.5g)を用いる以外は、実施例3の(1)と同様にして固相担体(B2)を作製し、これを用いる以外は実施例3の(2)と同様の操作を行って、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C2)を得た。固相担体(C2)表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、3250であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。本発明により得られる反応性固相単体を用いることにより、オリゴヌクレオチドが効率よくスライドガラスに固定されたことが分かる。
【0094】
[実施例6]相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
(1)オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製
3’末端が蛍光標識試薬で修飾されていないオリゴヌクレオチドを用いる以外は実施例3と同様にして、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体(C2’)を得た。
(2)標的オリゴヌクレオチド試料の検出
上記(1)で得た固相担体(C2’)を用いる以外は実施例2と同様にしてスライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、2325であり、バックグラウンド蛍光強度よりも大きく増加した。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製されたオリゴヌクレオチド固定固相担体を用いることによって、オリゴヌクレオチド固定固相担体に固定されているオリゴヌクレオチドと相補性を有する標的DNA試料のような標的オリゴヌクレオチド試料を効率良く検出できることが分かる。
【0095】
[実施例7]オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製、およびオリゴヌクレオチドの固定量の測定
(1)ビニルスルホン化合物−シランカップリング剤結合体の合成
ビニルスルホニルアセト酢酸1.5gをテトラヒドロフラン75mLに溶解したのち、これに3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.2g、次いでN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、縮合剤)2.1gを添加して、室温で2時間攪拌した。得られた反応混合物を濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)により精製することにより、目的の結合体を得た。
【0096】
(2)ビニルスルホン化合物固定基板の製造
上記の操作により得られたビニルスルホン化合物−シランカップリング剤結合体の2%水溶液を調製し、その水溶液にスライドガラス(25mm×75mm)を10分間浸したのち取り出し、エタノールで洗浄後、110℃で10分間乾燥して、ビニルスルホン化合物固定基板を得た。
【0097】
(3)オリゴヌクレオチドの点着と蛍光強度の測定
3’末端および5’末端がそれぞれアミノ基、蛍光標識試薬(FluoroLink Cy5−dCTP、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されたオリゴヌクレオチド(3’−CTAGTCTGTGAAGTGTCTGATC−5’)を0.1M炭酸緩衝液(pH8.0)に分散した水性液(1×10-6M、1μL)を、上記(2)で得た固相担体に点着した。点着後の固相担体を直ちに25℃、湿度90%にて1時間放置した後、この固相担体を、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と2×SSC(2×SSC:SSCの原液を2倍に希釈した溶液、SSC:標準食塩−クエン酸緩衝液)との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液で1回順次洗浄した。次いで、上記の洗浄後のスライドを0.1Mグリシン水溶液(pH10)中に1時間30分浸積した後、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥させ、オリゴヌクレオチドが固定された固相担体を得た。この固相担体表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、3500であり、バックグラウンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明の固定化方法により、オリゴヌクレオチドが効率よくスライドガラスに固定されたことが分かる。
【0098】
[実施例8]オリゴヌクレオチド固定固相担体の作製、およびオリゴヌクレオチドの固定量の測定
(1)ビニルスルホニル基が表面に固定された金電極の作成
表面をアセトンで洗浄した金電極(表面積:2.25mm2)の表面に、11−アミノ−1−ウンデカチオールの水溶液(1mM)を2μL滴下し、室温で水溶液が乾燥しないようにしながら10時間放置した後、蒸留水とエタノールとで電極表面を順次洗浄した。次いで、この金電極の表面に3%の1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを含むリン酸緩衝液(pH8.5)を2μL滴下し、室温で2時間放置した後、蒸留水とエタノールとで電極表面を順次洗浄した。その後、1時間減圧下に乾燥することにより、表面にビニルスルホニル基が連結基を介して結合した金電極を得た。
【0099】
(2)オリゴヌクレオチドの固定(電気化学的分析素子の製造)
上記の(1)で得た表面にビニルスルホニル基を有する金電極に、5’末端にアミノヘキシル基を導入したチミン20量体のオリゴヌクレオチド(T20)の水溶液(100ピコモル/1μL)を2μL滴下し、室温で1時間放置した後、余分なオリゴヌクレオチド(T20)を洗浄除去し、その後、乾燥することによって電気化学的分析素子を製造した。
【0100】
(3)フェロセンラベル化オリゴヌクレオチドの調製
アデニンの20量体(A20)の5’末端にアミノヘキシル基リンカーを結合させて、アミノヘキシル基結合オリゴヌクレオチドを得た。
上記で得たアミノヘキシル基結合オリゴヌクレオチドを用いて、竹中等によるAnalytical Biochemistry, 218, 436-443 (1994)に記載されている方法に従い、5’末端がフェロセンで標識されたアデニン20量体のオリゴヌクレオチド(F1−A20)を調製した。
【0101】
(4)相補的な標的オリゴヌクレオチド試料の検出
上記の(2)で作成した電気化学的分析素子の表面に、上記の5’末端がフェロセンで標識されたアデニン20量体のオリゴヌクレオチド(F1−A20)を含む10mMトリス緩衝液(pH7.5)溶液の2μLを滴下し、25℃で30分間インキュベートした。インキュベートが終了したのち、分析素子の表面を純水にて洗浄し、未反応の化合物F1−A20を除去した。
0.1M塩化カリウム−0.1M酢酸緩衝液(pH5.60)溶液を測定溶液(38℃)として、100〜700mVの印加電圧範囲で、ディファレンシャル・パルス・ボルタンメトリー(DVP)を行なったところ、460mVの印加電圧において、化合物F1−A20に由来する応答電流が得られた。
上記の操作と結果によって、オリゴヌクレオチドが金電極の表面に安定に結合固定され、この電極を用いて、電気化学的標識物質によって標識された、相補的な標的ヌクレオチド試料の検出が可能であることが確認された。
【0102】
【発明の効果】
本発明により得られる反応性固相単体を用いる固定方法を利用することによって、固相担体の表面に、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、あるいはペプチド核酸などのヌクレオチド誘導体あるいはその類縁体ヌクレオチドのプローブを安定かつ迅速に固定することができる。従って、本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製されたヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体が固定された固相担体は、加水分解によるプローブの離脱が起こりにくい非常に安定な固相担体となる。特に、固相担体として、その表面にアミノ基等をシランカップリング剤を用いて導入した場合には、アミノ基等の固相担体表面への結合も、プローブの結合も共に共有結合であるため、固相担体上に強固にプローブを固定することができる。プローブの安定な固定により、遺伝子解析等に有効に利用することができる高い検出限界を有する検出用具を得ることができる。
【0103】
その一つの例として、本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製されたオリゴヌクレオチド固定固相担体を用いて、試料核酸断片とのハイブリダイゼーションを行なうことにより、オリゴヌクレオチド固定固相担体に固定されているプローブに相補性を有する核酸断片試料を感度よく検出することができる。また、オリゴヌクレオチドなどのプローブ試料を反応性固相担体の表面に点着後、グリシン等のアニオン性化合物で固相担体表面を処理することによって、試料核酸断片の非特的吸着を防ぐことができ、このことは相補性を有する核酸断片試料の高感度の検出に大きな効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明により得られる反応性固相単体を用いて作製される代表的なオリゴヌクレオチド固定固相担体および本発明により得られる反応性固相単体を用いる代表的なオリゴヌクレオチドの固定方法を示す模式図である。
【図2】実施例1の固定方法を示す模式図である。
Claims (4)
- 表面にアミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、エポキシ基、もしくはカルボキシル基である反応性基が導入された、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体に、下記式:
【化2】
X1−SO2−L2−SO2−X2
[上記の式において、X1およびX2は互いに独立に、−CR1=CR2R3、または−CHR1−CR2R3Yを表わし;R1、R2及びR3は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;Yは、ハロゲン原子、−OSO2R11、−OCOR12、−OSO3M、及び四級ピリジニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、及び炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基および炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子およびアンモニウム基からなる群より選ばれる原子もしくは基を表わし;そして、L2は連結基を表わす]
で表わされるジスルホン化合物を接触させることを特徴とする、ガラス、シリコン、もしくは金属のいずれかからなる固相担体の表面に、一群の、−SO 2 −L 2 −SO 2 −X 2 で表わされるジスルホニル基が共有結合により固定されてなる反応性固相担体の製造方法。 - X 1 およびX 2 は、−CH=CH 2 で表わされるビニル基である請求項1に記載の反応性固相担体の製造方法。
- 固相担体表面に導入されている反応性基がアミノ基、メルカプト基、もしくはヒドロキシル基である請求項1もしくは2に記載の反応性固相担体の製造方法。
- 固相担体表面に導入されている反応性基がアミノ基である請求項3に記載の反応性固相担体の製造方法。
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