JP4181658B2 - アルミナ−マグネシア質流し込み材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流し込み施工用耐火物、とくに、取鍋、DHあるいはRH浸漬管、タンディッシュ等の内張り施工に好適に用いられるアルミナ−マグネシア質流し込み材に関する。
【0002】
【従来の技術】
このアルミナ−マグネシア質流し込み材は、例えば、特公平7−106946号公報、特開平9−263457号公報等に開示されており、使用時の加熱により、施工体中のマグネシア粒子がアルミナ粒子と反応してスピネルを生成して緻密化し、この生成したスピネルと緻密化との複合作用による耐食性と耐スラグ浸潤性の向上が図られるという利点があることが知られている。
【0003】
ところが、このアルミナ−マグネシア質流し込み材は使用時に施工体表面部で剥離が発生し易く、そのため、材料の持つ優れた耐食性及び耐スラグ浸潤性が発揮されない場合が多い。特に、施工体の使用初期における剥離が顕著な場合には、施工体の寿命が短命に終わる原因にもなっている。
【0004】
この使用初期段階での剥離の原因は熱的スポーリングによるものであるが、熱的スポーリングの要因となる熱歪みに大きく影響するのは、配合中のマグネシア粒子とアルミナ粒子が使用時の加熱により反応してスピネルを生成する際に発生する膨張である。
そこで、マグネシア粒子とアルミナ粒子との間のスピネル生成反応による膨張量を制御する観点から、剥離防止対策としてマグネシア粒子の粒径とマグネシア配合率の検討がなされ、特に、マグネシア粒子の含有率は膨張量に直接影響するため、低マグネシア含有率の領域で剥離防止対策の検討が行われ実用に供されている。しかし、マグネシア粒子の含有率を低下させると、生成するスピネル量が減少し、それに伴う緻密化の程度も低下するため、耐食性及び耐スラグ浸潤性の向上が図れなくなるという矛盾を含んでいる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、マグネシア質原料の含有率を低下させないで、施工体使用初期段階で発生する剥離を抑制した高耐用性のアルミナ−マグネシア質流し込み材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粒径0.1mm以下のマグネシア質原料10〜20重量%、最大粒径10μm以下の中間アルミナ5〜20重量%、粒径1mm未満のアルミナ質原料10〜35質量%、残部が粒径1mm以上10mm以下のアルミナ質原料からなる配合物に、非晶質シリカ超微粉を外掛けで0.1〜3重量%添加したことを特徴とする。
【0007】
本発明において、中間アルミナ及びアルミナ質原料は、骨材並びに流し込み材の結合材(マトリックス材)としての機能を有している。マグネシアが残留することなく完全にスピネル化反応が進行することを保証するには理論上マグネシアの2.55倍以上のアルミナが必要であり、骨材並びに流し込み材の結合部を形成させる量のアルミナが必要となるため全量で80〜90重量%使用する。
【0008】
その中、アルミナ質原料としては、焼結アルミナ、電融アルミナの何れでも良く、骨材として使用する粒径は1〜10mmのものが35〜60重量%を占め、残部は骨材を結びつけるためのマトリックス材として使用する粒径が1mm未満のアルミナ質原料と中間アルミナである。この粒径1mm未満のアルミナ質原料と、10μm以下の中間アルミナは、使用時の加熱によりマグネシア粒子と反応してスピネルを生成する働きを有すると共にアルミナ粒子自体が焼結し、流し込み材の強度を発現する機能を有する。 マグネシア粒子と反応してスピネルを生成するアルミナ粒子は、1000℃から顕著にマグネシア粒子と反応してスピネルを生成する中間アルミナの部分と、1200℃以上の温度域でマグネシアと反応してスピネルを生成する通常の微粒アルミナのαアルミナの部分とに分けられる。
【0009】
ここで、中間アルミナとは、アルミナ水和物を低温より順次加熱していく際に、最初に脱水反応により生成する準安定相のアルミナ無水物を指す。この準安定相の無水物は加熱が進むと最終的にはαアルミナとなる。通常アルミナと呼んでいるものは、このαアルミナを指している。中間アルミナはアルミナ水和物の種類、粒度、加熱条件等の相違により結晶構造が異なるのでその種類は多く、通常はγ、δ、η、θ、ρ、χ、κ等を付記して区別している。比表面積の大きなものや多孔質のもの等多様な状態のものが得られるが、共通した特徴として水と水和反応を起こし再度水和物に変化する点を挙げることができる。
【0010】
通常の微粒アルミナ粒子だけを配合したアルミナ−マグネシア質流し込み材においては、温度が1200℃以上で微粒アルミナ粒子とマグネシア粒子との反応でスピネルを生成し、しかも、このような高温での反応速度は大きく、急激なスピネル化反応が起こり、このため非常に大きな反応膨張が発生し施工体の剥離が生じ易くなる。
【0011】
これに対して、本発明のアルミナ−マグネシア質流し込み材中に含まれる中間アルミナ粒子は、通常の微粒アルミナ粒子と比較して200℃も低い1000℃でマグネシア粒子と反応してスピネルを生成する。しかし、温度が低いために反応速度は大きくなく、そのためマグネシアは徐々に減少し反応に伴う急激な膨張は発生せず、マグネシア含有率が高いにも拘わらず使用初期の段階での剥離が抑制される。
【0012】
一方、中間アルミナ粒子と通常の微粒アルミナ粒子を併用した場合には、温度が上昇してスピネル化生成反応の速度が増大する1200℃以上となった時点では、低温域でのスピネル化反応によりマグネシア粒子が消費され残存量は低下している。そのため、反応するマグネシア粒子の絶対量が少なくなっているため、スピネル化反応速度が大きくなる1200℃以上の温度領域でのスピネル生成量は少なくなり、反応に伴う膨張量も小さくなる。また、1200℃以上ではアルミナ粒子の焼結も開始するので、焼結に伴う収縮とスピネル化反応に伴う膨張が相互に影響を及ぼし合い、施工体全体としての寸法変化は小さくなる。
【0013】
このように、スピネル化反応の温度域を拡大して、スピネルの生成量を特定の温度範囲に集中させないようにし、スピネル化反応に伴う膨張発生を特定温度域に集中させないようにすることにより使用初期段階での剥離を防止することができる。
【0014】
中間アルミナ粒子を使用した場合にスピネル化反応が低温から生じるのは、流し込み材に水を添加して流し込み可能な状態を調整するときに、中間アルミナ粒子が水の添加により再水和反応を起こして水和物となり、この水和物が使用時の加熱により分解されたときに非常に高活性なアルミナを生成するためである。粒径の大きな中間アルミナを用いても前記と同様の効果はあるが、後述する粒子間を凝集させる効果が低下する問題が生じ、凝集力を高めるためには多量の中間アルミナを必要とする。そのため本発明に使用する10μm以下の中間アルミナにおいてもその粒子の再水和反応を十分に保証するためには、使用する中間アルミナ粒子の最大粒径を10μm以下としておくことが望ましい。
【0015】
本発明に使用する10μm以下の中間アルミナにおいてもその含有量を大きくすると、流し込み施工時の添加水分量を増加する必要が生じ、添加水分量の増加により流し込み施工体の特性は低下してしまう。そのため、配合原料中の中間アルミナ含有率を最大で20重量%とした。この中間アルミナの使用に対する、1200℃以上でのスピネル化反応量を制御して剥離が生じないようにできるマグネシア質原料の最大配合率は20重量%となる。また、通常の流し込み材で使用するアルミナセメント中の酸化カルシウムは流し込み材の耐食性を低下させる作用を有している。しかし、中間アルミナ粒子は再水和反応により粒子間を凝集させる機能を有しているため、5重量%以上使用することで安定した強度付与を可能とし、通常の流し込み材のように施工体の強度付与ためにアルミナセメントを使用する必要がなく、そのため、流し込み材の耐食性は更に向上する。
【0016】
また、本発明のマグネシア質原料は、使用時の加熱によりアルミナ質原料と反応してスピネルを生成するものであればよく、焼結マグネシア、電融マグネシアあるいは水酸化マグネシウムや炭酸マグネシウム等の化合物であってもよい。しかし、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の化合物ではアルミナ原料との加熱反応時に脱水化、脱炭酸化等の体積変化という大きな反応が付随的に生じるため、安定した施工体組織を形成するという観点からは、焼結マグネシア、電融マグネシア等の方が好ましい。マグネシア質原料の粒径は0.1mm以下が良い。粒径が0.1mmを越えるとスピネル生成量が少なくなり耐スラグ浸潤性の向上が図れなくなる。そのため、マグネシア質原料の粒径を0.1mm以下と規定した。マグネシア質原料の配合量は、10重量%未満では生成するスピネルの量が少なくなり緻密化の達成度が低く、耐食性と耐スラグ浸潤性の向上に大きくは貢献しない。また、20重量%を越えると中間アルミナの使用量から1200℃以上でのスピネル生成量が過多となり、体積膨張に伴う剥離が促進される結果となる。
【0017】
さらに、非晶質シリカ超微粉は、流し込み材の流動性の改善に寄与する。これは、非晶質シリカの粒径がサブミクロンの粒子であるため、他の粒子の間に容易に分散進入して、他の粒子同士の相対移動を容易にする作用を有するためであると考えられる。その配合量が外掛けで0.1重量%未満では流動性改善の効果が小さく、3重量%を越えて添加すると低融点物質を生成して耐食性が低下する。なお、本発明の流し込み材には、スピネル質原料を使用しない。当初よりスピネルを使用した場合は、アルミナとマグネシアとの反応により生成したスピネルに比較して、スラグとの反応による浸透防止効果が低い。また、スピネル質原料の粒径は小さいほど、また、添加量が多いほどスラグとの反応による浸透防止効果が高くなるため、微粒のスピネル質原料を多量に使用することも考えられるが、微粒のスピネル質原料を多量に使用すると流し込み材自体の焼結性は低下してしまうため、流し込み材の気孔率は増加してしまい、却って、スラグとの反応性を向上させてしまう。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって更に説明する。
【0019】
表1に本発明の実施例に係るアルミナ−マグネシア質流し込み材の配合組成と特性を比較例とともに示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004181658
同表は、骨材としての電融アルミナと、マトリックス部に1mm未満の電融アルミナと中間アルミナとして最大粒径が10μm以下と100μm以下(比較例)のγアルミナ、10μm以下のρアルミナをそれぞれ用いた配合物に、外掛けで施工水を5重量%および8重量%(比較例)と、分散剤としてヘキサメタリン酸ソーダを0.1重量%添加し、混練後に型枠内に振動を付与した状態で流し込み、養生後、110℃で24時間乾燥して試験片を作製した。また、比較例の9〜11には、従来例としてアルミナセメントを使用したアルミナ−マグネシア質流し込み材を記載した。
【0021】
特性値において、室温曲げ強さの測定は、110℃で24時間乾燥したもの、乾燥後1500℃で3時間焼成したものについて行った。また、回転浸食試験は、溶鋼取鍋スラグを使用して1650℃で5時間行い、溶損寸法とスラグ浸潤層の寸法を測定した。さらに、熱的スポーリング性の評価は、試験片の片面を1500℃で15分間急加熱してから5分間水冷するという操作を繰り返し、剥落に至るまでの繰り返し回数を測定した。
【0022】
実施例1及び4と比較例1及び6との対比によって、マグネシア質原料の含有量の差による特性値を比較する。比較例1に示すマグネシア含有量が8重量%の場合には回転浸食試験結果が悪く、比較例6に示すマグネシア含有量が23重量%では熱的スポーリング性の試験結果が悪くなっている。それに対し、規定範囲内の含有量の実施例1及び4においては回転浸食試験及び熱的スポーリング性とも向上していることが判る。
【0023】
実施例2は中間アルミナの種類を変えて特性を調査した例である。これによると、実施例1,3,4と比較しても遜色なく、中間アルミナの種類が変わっても本発明品の特性に与える影響がないことが確認できる。
【0024】
実施例1及び4と比較例2及び5との対比によって中間アルミナの含有量の違いによる効果を比較する。中間アルミナが3重量%では強度が低く熱的スポーリング性も低下し、23重量%となると添加水分が多く必要になり、強度低下や熱的スポーリング性の低下が生じているのに対し、中間アルミナが5重量%及び20重量%の実施例では、強度及び熱的スポーリング性が上回っている。
【0025】
実施例1及び4と比較例7及び8との対比によって非晶質シリカの添加量の違いによる効果をみると、非晶質シリカが0.08重量%と少ないと添加水分量が増加し、強度の低下が生じて回転浸食試験結果と熱的スポーリング試験結果がともに低下し、3.3重量%と多い場合、回転浸食結果と熱的スポーリング試験結果が低下している。
【0026】
実施例3と比較例4、5との対比によって中間アルミナ及びマグネシア粒径が異なることによる効果の違いを比較してみると、中間アルミナの粒径が100μmと大きい場合は、強度が低下し回転浸食試験及び熱的スポーリング試験の結果が悪く、また、マグネシア質原料の粒径が1mm以上と大きい場合、スピネル生成量が低下し、マグネシアが残留するため回転浸食試験及び熱的スポーリング試験の結果が悪くなることがわかる。
【0027】
比較例9〜11のアルミナセメントを使用した場合を見ると、アルミナセメント中に含有される酸化カルシウムのために回転浸食結果が悪くなると同時に、マグネシアの含有量が多くなるにつれて熱的スポーリング性が低下して行くことがわかる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によって、マグネシア原料の含有率を低下させないで施工体使用初期段階で発生する剥離を抑制した高マグネシア含有流し込み材が得られる。したがって、本流し込み材は取鍋用流し込み材、DHあるいはRH浸漬管、タンディッシュ用母材等の高耐食性が要求される部分に十分適用可能となる。

Claims (1)

  1. 粒径0.1mm以下のマグネシア質原料10〜20重量%、最大粒径10μm以下の中間アルミナ5〜20重量%、粒径1mm未満のアルミナ質原料10〜35質量%、残部が粒径1mm以上10mm以下のアルミナ質原料からなる配合物に、非晶質シリカ超微粉を外掛けで0.1〜3重量%添加したアルミナ−マグネシア質流し込み材。
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