JP4180843B2 - 架線拡幅具およびこれを用いた架線拡幅保持工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、配線箇所での切分工事を行うに際して、互いに平行な3本の既設架線における相互の間隔を遠隔操作で拡幅して保持する用途に用いる架線拡幅具およびこれを用いて3本の既設架線の間隔を拡幅した状態に保持できる好適な工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数の既設架線にバイパスケーブル線などを接続する切分工事を行うに際しては、既設架線に電源を供給した状態で絶縁遠隔操作工具によって遠隔操作しながら配線する工法(以下、ホットスティック工法と称する)を採用することが好ましい。なぜならば、切分工事を行う配線箇所の電源供給側回路を遮断した状態で工事を行うと、その工事中において広範囲の電力需要者に停電の影響が及ぶからである。上記ホットスティック工法を採用するためには、比較的間隔の狭い複数本の既設架線を互いに拡幅して、切分工具の取り付けや取り外しを容易に行える状況にする必要がある。
【0003】
そこで、従来では、三角装柱配線などの平行架線配線箇所において、ホットスティック工法で切分工具を使用するために、上側に2本と下側に1本の計3本の互いに平行な既設架線を把持して架線間隔を拡幅保持する架線拡幅具および架線拡幅保持方法が提案されている(特開平9−289715号公報参照)。この架線拡幅具は、両端に架線把持具を備えるとともに伸縮機構を有する拡幅用横ロッドと、拡幅用横ロッドの軸部に着脱自在に連結れる連結具が上端に、且つ架線把持具を下端にそれぞれ備えるとともに伸縮機構を有する拡幅用縦ロッドとを備えて構成されている。そして、既設架線を拡幅するに際しては、拡幅用横ロッドを、これの両端の架線把持具に上側の2本の既設架線を挿入することにより支持させ、この拡幅用横ロッドの軸部に拡幅用縦ロッドの連結部を結合し、この拡幅用縦ロッドの架線把持具に下側の既設架線を挿入し、これと相前後して3つの架線把持具を把持状態にしたのちに、両ロッドをそれぞれ伸長させることにより、3本の架線をこれらの相互の間隔を拡幅した状態に保持する手順で行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記架線拡幅具は、上側に2本と下側に1本の計3本の互いに平行な既設架線の間隔を拡幅する用途に限定され、例えば鉛直方向または水平方向において互いに平行な3本の既設架線の間隔を拡幅する用途には活用できない。しかも、拡幅用横ロッドは、外套管の内部に出入自在に設けられた内挿管を、一対の傘歯車の組み合わせによって回転されるねじ棒とナットの螺合によって移動させるようになっており、外套管と内挿管の各々の外端部にそれぞれ既設架線把持具を有している。また、拡幅用横ロッドは、一端部に上述と同様の把持具を有し、他端部側に連結具、一対の傘歯車、回転操作用のねじ、内挿管を移動させるためのねじ棒などを有している。このように、上記架線拡幅具は、多くの部品点数を有した複雑な構造になっているため、コスト高になるだけでなく、構成の複雑化に伴い耐久性に乏しい。
【0005】
さらに、上記架線拡幅具は、上側の2本の既設架線に支持させた拡幅用横ロッドの軸部に、遠隔操作用やっとこを用いて拡幅用縦ロッドを結合して組み立て、遠隔操作用レンチを用いて3つの架線把持具の各々の駆動ねじを締め付け、遠隔操作用フック工具を用いて拡幅用横ロッドにおけるねじ棒回転用の操作リングを回転操作し、遠隔操作レンチを用いて拡幅用縦ロッドにおけるねじ棒回転用の六角ねじ頭を回転操作するといった多くの煩雑な操作や作業性の悪い組立作業を要するので、既設架線の拡幅に時間がかかり過ぎる課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、簡素化されて安価な構成としながらも、互いに平行な3本の既設架線を容易な作業で、且つ短時間で迅速に拡幅することのできる既設架線拡幅具およびこの既設架線拡幅具用いて3本の既設架線の拡幅保持を良好に行える工法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る架線拡幅具は、互いに平行な3本の既設架線の相互の間隔を拡幅する架線拡幅具において、1本の本体ロッドのほぼ中央部に、3本の前記架線のうちの真ん中の架線を架線受け部と架線押圧部材とで挟み込んで挿脱可能に把持する中線把持部材が本体ロッドの軸心に垂直な方向の回転中心線まわりに回動自在に取り付けられ、前記本体ロッドの両端側における前記中線把持部材に対し前記架線を拡幅すべき間隔に相当する距離だけ離間した2つの部位のうちの一方に、前記中線把持部材の回転中心線と平行な回転中心線まわりに回転自在なローラを有し、外側の架線を転動自在に保持しロックピンで外側の架線が抜け出ないように保持する外線保持部材が取り付けられ、他方に、前記中線把持部材の回転中心線と平行な回転中心線まわりに回転自在なローラを有し、外側の架線を転動自在に保持するとともに、外部操作によって前記架線を前記ローラに押し付けて、ローラを回転不能状態とする架線押圧部材を有し、前記架線を保持状態から把持状態としうる外線把持部材が取り付けられ、前記本体ロッドに、本体ロッドを前記中線把持部材を支点として回動させるための遠隔操作工具が着脱自在に係合される係合部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
この架線拡幅具では、1本の本体ロッドの中央部に中線把持部材が、一端部に外線把持部材が、他端部に外線保持部材がそれぞれ取り付けられただけの簡単な構成であり、上記3つの把持部材または保持部材が既設架線を拡幅すべき間隔に対応した配置で設けられていることから、従来の傘歯車、ねじ棒、外套管と内挿管との組み合わせなどの複雑な構成からなる伸縮機構が不要となっており、大幅なコストダウンを図ることができる。しかも、この架線拡幅具は、3本の既設架線が水平方向および鉛直方向の何れの方向に並べて配線されたものであっても、これらの間隔の拡幅を行える利点がある。また、伸縮機構を有していないので、遠隔操作用レンチなどによる回転操作などが不要であり、遠隔操作工具を係合部に係合して回動させるだけで、3本の既設架線の間隔を拡幅することができるから、作業時間が大幅に短縮する。
【0009】
本発明の架線拡幅具を用いた架線拡幅保持工法は、上記発明の架線拡幅具の中線把持部材を、互いに平行な3本の既設架線のうちの真ん中の架線に対しこれを把持することにより支持される状態に取り付け、前記本体ロッドを、これに回転自在に取り付いた前記中線把持部材を支点として回動させることにより、前記本体ロッドの一端の外線把持部材および他端の外線保持部材を、外側の2本の前記各架線に保持状態に係合させ、本体ロッドの係合部に遠隔操作工具を係合させたのち、その遠隔操作工具の引っ張り操作または押圧操作によって前記本体ロッドを3本の前記架線に対しほぼ直交する相対配置となるまで回動させて、両側の2本の前記架線を真ん中の前記架線から離間方向に拡幅させ、前記外線把持部材を外部操作して該外線把持部材で前記架線を把持させることにより、3本の前記架線を拡幅状態に保持させることを特徴としている。
【0010】
この架線拡幅具を用いた架線拡幅保持工法では、中線把持部材を真ん中の既設架線に把持させることにより支持させた状態で、係合部に遠隔操作工具を係合させた状態で、この遠隔操作工具を例えば引下げ操作して架線拡幅具を回動させるだけで、各既設架線の間隔を一挙に拡幅することができ、従来の架線拡幅具のような拡幅用横ロッドと拡幅用縦ロッドとの結合による組立、遠隔操作レンチによる駆動ねじの締め付け、遠隔操作レンチを用いてのねじ棒回転用の六角ねじ頭の回転操作といった煩雑な操作や作業性の悪い組立作業が一切不要であり、極めて良好な作業性の僅かな操作を行うだけでよいから、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(a),(b)は本発明の一実施の形態に係る架線拡幅具における架線拡幅具本体1を示す一部破断した正面図および一部破断した側面図である。この架線拡幅具は、架線拡幅具本体1と後述するバイパス線保持具とにより構成されている。架線拡幅具本体1は、1本の本体ロッド2の中央部に中線把持部材3が、両端部に上線保持部材4および下線把持部材7がそれぞれ取り付けられただけの簡単な構成になっている。
【0012】
上記中線把持部材3は、架線受け材8とこの架線受け材8のねじ孔9に螺合されたねじ棒10とを備えて構成されている。架線受け材8には、互いに平行な3本の既設架線S1〜S3のうちの真ん中の既設架線S2を嵌まり込ませる半円状の架線受け部8aが設けられている。ねじ棒10の架線受け部8a側の一端部には架線押圧部材11が取り付けられ、ねじ棒10の他端部には回転操作リング12が固着されている。なお、図示していないが、架線押圧部材11にはねじ棒10の一端部が回転自在に挿入され、且つねじ棒10の環状溝に抜け止め部が係合されている。これにより、架線押圧部材11は既設架線S2に接触した時点で、ねじ棒10の回転に拘わらず、回転せずに既設架線S2に押し付けられる。この中線把持部材3の架線受け材8は本体ロッド2に対し取付ピン13によって本体ロッド2の軸心に垂直な方向の回転中心線まわりに回動自在に取り付けられている。
【0013】
上記上線保持部材4は、これの一部破断した拡大正面図である図2に示すように、U字形金具14と、このU字形金具14の開口端を開閉するロックピン17と、U字形金具14に、本体ロッド2の軸心に垂直な方向の回転中心線まわりに回転自在に設けられたローラ18と、ロックピン17を開位置と閉位置とに仮固定するボール19と、このボール19をロックピン17に押し付ける方向に付勢するばね20とを備えて構成されている。この上線保持部材4は、固定ねじ15によって本体ロッド2に取り付けられている。
【0014】
上記U字形金具14の一方(図の左方)の側壁には、ロックピン17が貫通するガイド孔21と、このガイド孔21に連通して側壁の内面側に形成された係止凹部22と、側壁の上面からガイド孔21に連通する取付孔23とが形成されている。取付孔23は、上記ボール19とばね20が挿入されて、封栓28によって閉塞されている。U字形金具14の他方(図の右方)の側壁には、ロックピン17の先端の脱落防止鍔24を挿入させる径を有するガイド孔27が形成されている。
【0015】
一方、ロックピン17には、実線で図示の閉位置と2点鎖線で図示の開位置とにおいてボール19がそれぞれ嵌まり込んで仮固定される環状溝29、30が形成されており、他端部(図の左端部)に操作リング31と閉位置に位置決めするための位置決め鍔32とが設けられている。したがって、操作リング31を介してロックピン17を外方に引っ張ると、ロックピン17がボール19をばね20の付勢力に抗して環状溝29から押し出して2点鎖線で示す開位置まで移動する。このとき、ロックピン17は、脱落防止用鍔24が係止凹部22に嵌入して抜け止めされ、且つボール19が環状溝30に嵌まり込んで開位置に仮固定される。逆に、ロックピン17を開位置から内方へ押し込むと、実線で図示するように、位置決め鍔32がU字形金具14の外面に当接して閉位置に位置決めされ、且つボール19が環状溝29に嵌まり込んで閉位置に仮固定される。
【0016】
上記下線把持部材7は、本体ロッド2の軸心に垂直な方向の取付ピン33により、一端部が本体ロッド2に、前記取付ピン33まわりに回転自在に取り付けられた取付フレーム34と、この取付フレーム34の一端部のU字状部分に前記取付ピン33まわりに回転自在に取り付けられたローラ37と、取付フレーム34のねじ孔(図示せず)に螺合されたねじ棒38とを備えて構成されている。ねじ棒38のローラ38側の一端部には架線押圧部材39が取り付けられ、ねじ棒38の他端部には回転操作リング40が固着されている。なお、図示していないが、架線押圧部材39にはねじ棒38の一端部が回転自在に挿入され、且つねじ棒38の環状溝に抜け止め部が係合されている。これにより、架線押圧部材39は既設架線S3に接触した時点で、ねじ棒38の回転に拘わらず、回転せずに既設架線S3に押し付けられる。
【0017】
また、本体ロッド2における下線把持部材7が設けられている側の先端部には、遠隔操作用フック工具(図示せず)が掛け止めされるフック係止部41が両側方に突設されているとともに、後述する吊り下げ紐が結び付けられる掛け止めフック部42が設けられている。この掛け止めフック部42の近傍には、この掛け止めフック部42に結び付けられた吊り下げ紐の脱落防止片44が回動自在に設けられているとともに、脱落防止片44が鶴巻きばね43により掛け止めフック部42を閉じる方向に付勢されている。さらに、脱落防止片44には、これを開く方向に操作するための操作リング47が取り付けられている。
【0018】
上記本体ロッド2は、優れた電気絶縁性を有するとともに吸湿性が少なく、且つ容易に変形したり絶縁性能が低下しない材質、例えばエポキシ樹脂系強化プラスチック(FRP)を用いて2mm以上の厚さに形成されている。この本体ロッド2には、中線把持部材3の両側箇所に、雨天での作業時の雨切り48が設けられ、この各雨切り48の近接箇所にそれぞれフッ素系樹脂チューブ49が巻装されている。また、本体ロッド2における一方の雨切り48の両側の部位には、それぞれ収縮チューブを巻装してなる被把持部50、51が設けられている。一方の被把持部50は、間隔を拡幅すべき3本の既設架線S1〜S3が水平方向に並んで互いに平行なものである場合に、架線拡幅具本体1をやっとこなどの保持具で保持させるためのものである。他方の被把持部51は、間隔を拡幅すべき3本の既設架線S1〜S3が鉛直方向に並んで互いに平行なものである場合に、架線拡幅具本体1をやっとこなどの保持具で保持させるためのものである。
【0019】
上記架線拡幅具本体1は、1本の本体ロッド2の中央部に中線把持部材3が、両端部に上線保持部材4および下線把持部材7がそれぞれ取り付けられただけの簡単な構成であり、上記2つの把持部材3,7と1つの保持部材4とが3本の既設架線S1〜S3を拡幅すべき間隔に対応した配置で設けられていることから、従来の傘歯車、ねじ棒、外套管と内挿管との組み合わせなどの複雑な構成からなる伸縮機構が不要となっており、大幅なコストダウンを図ることができる。しかも、上記架線拡幅具本体1は、3本の既設架線S1〜S3が水平方向および鉛直方向の何れの方向に並べて配線されたものであっても、これらの間隔の拡幅を行える利点がある。また、伸縮機構を有していないので、遠隔操作用レンチなどによる回転操作などが不要であり、遠隔操作工具をフック係止部41に係合して回動させるだけで、3本の既設架線S1〜S3の間隔を拡幅することができるから、作業時間が大幅に短縮する。
【0020】
つぎに、上記架線拡幅具本体1を用いて3本の既設架線S1〜S3の間隔を拡幅して保持する工法について、図3を参照しなから説明する。この実施の形態では、図3に示すように、鉛直方向に一列に並んで互いに平行に配線された3本の既設架線S1〜S3の間隔を拡幅する場合を例示して説明する。先ず、架線拡幅具本体1を、両把持部材3、4および下線把持部材7を開放して既設架線S1〜S3の挿入が可能な状態に設定し、遠隔操作用やっとこ(図示せず)を用いて架線拡幅具本体2の被把持部51を挟持したのち、架線拡幅具本体1を鉛直の配置で各既設架線S1〜S3に近接させ、図1(a)に2点鎖線で示すように、中線把持部材3の架線受け材8の架線受け部8aに真ん中の既設架線S1を被せるようにして挿入させることにより、架線拡幅具本体1をその既設架線S2に支持させる。
【0021】
つぎに、遠隔操作用フック工具(図示せず)を用いて中線把持部材3の回転操作リング12を回してねじ棒10を既設架線S2側に進入させることにより、後述する図5に示すように、既設架線S2を架線受け部8aと架線押圧部材とで挟み込んで把持する。これにより、架線拡幅具本体1は真ん中の既設架線S2に脱落することのない確実な支持状態に取り付けられる。
【0022】
続いて、上記中線把持部材3の回転操作リング12から離した遠隔操作用フック工具をフック係止部41に掛け止め状態に係合させたのちに、この遠隔操作用フック工具を引き下げるように操作する。これにより、架線拡幅具本体1は、中線把持部材3の取付ピン13を回動支点として回動し、図3に2点鎖線で示すように、上線保持部材4および下線把持部材7がそれぞれ上下の既設架線S1,S3に接触する傾斜した配置となる。この状態から、図1(a)に2点鎖線で示すように、上側の既設架線S1を上線保持部材4のU字形金具14内に挿入させてローラ18の上面に接触させるとともに、下側の既設架線S3を下線把持部材7のローラ37の下面に当てがわせるように操作する。
【0023】
上記状態において、遠隔操作用フック工具を上線保持部材4の操作リング31に掛け止めしたのちに、この時点で開位置のロックピン17を押し込む方向に加圧する。これにより、図2で説明したように、ロックピン17は、図1(a)に示すように閉位置に位置決めされて、既設架線S1がU字形金具14から抜け出ないように保持される。一方、下線把持部材7は図1(a)に示す状態のままにして、遠隔操作用フック工具をフック係止部41に掛け止めし、この遠隔操作用フック工具をさらに引き下げて、架線拡幅具本体1をさらに回動させる。これにより、架線拡幅具本体1は、図3の2点鎖線で示す傾斜した配置から実線で示す鉛直の配置となり、この時点で遠隔操作用フック工具の引下げ操作を停止する。このとき、上線保持部材4および下線把持部材7は、これらのローラ18、37が対応する既設架線S1、S3に沿って転動することにより、既設架線S1、S3に対する係合状態を確実に保持ながら抵抗負荷を殆ど受けることなく変位する。このようにして架線拡幅具本体1が鉛直状態とされたときには、3つの既設架線S1〜S3が、上線保持部材4、中線把持部材3および下線把持部材7の各々の配設間隔によって設定された所定の間隔に拡幅されている。
【0024】
このようにして各既設架線S1〜S3の間隔の拡幅操作が終了したならば、遠隔操作用フック工具を用いて下線把持部材7の回転操作リング40を回してねじ棒38を既設架線S3側に進入させることにより、図5に示すように、既設架線S3をローラ37と架線押圧部材39とで挟み込んで把持する。したがって、中線把持部材3による既設架線S2の把持に加えて、下線把持部材7が既設架線S3を把持するので、この2箇所の把持により、架線拡幅具本体1は回転不能状態に固定されるので、3本の既設架線S1〜S3をこれらの間隔を拡幅した状態に確実に保持することができる。これにより、既設架線S1〜S3にケーブル線などのバイバス線を接続する切分工事は、隣接する既設架線S1〜S3が邪魔になることのない良好な作業性のもとで行うことができる。
【0025】
上記の架線拡幅具本体1を用いた架線拡幅保持工法では、中線把持部材3を真ん中の既設架線S1に把持させることにより支持させた状態で、フック係止部41に遠隔操作用フック工具を掛け止め状態に係合させたのちに、この遠隔操作用フック工具を引下げ操作するだけで、各既設架線S1〜S3の間隔を一挙に拡幅することができ、従来の架線拡幅具のような拡幅用横ロッドと拡幅用縦ロッドとの結合による組立、遠隔操作レンチによる駆動ねじの締め付け、遠隔操作レンチを用いてのねじ棒回転用の六角ねじ頭の回転操作といった煩雑な操作や作業性の悪い組立作業が一切不要であり、極めて良好な作業性の僅かな操作を行うだけでよいから、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0026】
図4は、上記架線拡幅具本体1と共に用いる架線拡幅具を構成するバイパス線保持具52を示す平面図である。このバイパス線保持具52は、アーム53の一端部に、架線拡幅具本体1の本体ロッド2にこれを把持する状態に固定される取付部54が設けられているとともに、アーム53の他端部に、図5に示すように既設架線S1〜S3に接続されたバイパス線57、58を保持するバイバス線保持部59が設けられ構成になっている。取付部54は、本体ロッド2のロッド受け材8とこのロッド受け材60のねじ孔61に螺合されたねじ棒62とを備えて構成されている。ねじ棒62のロッド受け材60側の一端部にはロッド押圧部材63が取り付けられ、ねじ棒62の他端部には回転操作リング12が固着されている。一方、バイバス保持具59は、U字形金具65と、このU字形金具65の開口端を開閉するロックピン66とを備えた構成になっている。ロックピン66は、上線保持部材4と同様の構成になっており、操作リング67による操作により閉位置と開位置とに択一的に位置決めされる。
【0027】
つぎに、上記バイバス線保持具52の使用法について説明する。図5に示すように、所定の間隔に拡幅した状態に保持されている既設架線S1〜S3に対してケーブル線などのバイパス線57、58を接続する切分工事を行うに際して、上記バイパス線保持具52は、取付部54で本体ロッド2を把持させることにより、本体ロッド2に対し側方(この場合は水平方向)に突出する相対配置で架線拡幅具本体1に固定して取り付けられる。このようにして取り付けられたバイパス線保持具52のU字形金具65内に接続すべきバイパス線57、58を挿入させたのち、ロックピン66を閉位置に変位させることにより、バイパス線57、58をバイバス線保持部59に抜け止め状態に保持する。さらに、バイパス線57、58におけるバイバス線保持部59に対し下方側の部分は、フック部42に結び付けられた吊り下げ紐68に束ねた状態で吊り下げられる。これにより、ホットスティック工法の切分工事を行う場合であっても、バイパス線57、58は、各既設架線S1〜S3に対し側方に離間した位置に保持されているから、既設架線S1〜S3と接触して短絡するといったおそれがなくなる。そのため、バイパス線57、58は、極めて良好な作業性のもとで既設架線S1、S2に接続される。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明の架線拡幅具によれば、1本の本体ロッドの中央部に中線把持部材が、両端部に外線把持部材、外線保持部材がそれぞれ取り付けられただけの簡単な構成であり、上記3つの把持部材または保持部材が既設架線を拡幅すべき間隔に対応した配置で設けられていることから、従来の傘歯車、ねじ棒、外套管と内挿管との組み合わせなどの複雑な構成からなる伸縮機構が不要となっており、大幅なコストダウンを図ることができる。しかも、この架線拡幅具は、3本の既設架線が水平方向および鉛直方向の何れの方向に並べて配線されたものであっても、これらの間隔の拡幅を行える利点がある。また、伸縮機構を有していないので、遠隔操作用レンチなどによる回転操作などが不要であり、遠隔操作工具を係合部に係合して回動させるだけで、3本の既設架線の間隔を拡幅することができるから、作業時間が大幅に短縮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は本発明の一実施の形態に係る架線拡幅具における架線拡幅具本体を示す一部破断した正面図および一部破断した側面図。
【図2】同上の架線拡幅具本体の上線保持部材を示す一部破断した拡大正面図。
【図3】同上の架線拡幅具本体を用いて架線拡幅保持工法を行う説明図。
【図4】同上の実施の形態に係る架線拡幅具におけるバイパス線保持具を示す平面図。
【図5】同上のバイパス線保持具を用い架線拡幅保持工法を行う過程の一部破断した正面図。
【符号の説明】
2 本体ロッド
3 中線把持部材
4 上線保持部材(外線保持部材)
7 下線把持部材(外線把持部材)
41 フック係止部(係合部)
S1〜S3 既設架線
Claims (2)
- 互いに平行な3本の既設架線の相互の間隔を拡幅する架線拡幅具において、
1本の本体ロッドのほぼ中央部に、3本の前記架線のうちの真ん中の架線を架線受け部と架線押圧部材とで挟み込んで挿脱可能に把持する中線把持部材が本体ロッドの軸心に垂直な方向の回転中心線まわりに回動自在に取り付けられ、
前記本体ロッドの両端側における前記中線把持部材に対し前記架線を拡幅すべき間隔に相当する距離だけ離間した2つの部位のうちの一方に、前記中線把持部材の回転中心線と平行な回転中心線まわりに回転自在なローラを有し、外側の架線を転動自在に保持しロックピンで外側の架線が抜け出ないように保持する外線保持部材が取り付けられ、他方に、前記中線把持部材の回転中心線と平行な回転中心線まわりに回転自在なローラを有し、外側の架線を転動自在に保持するとともに、外部操作によって前記架線を前記ローラに押し付けて、ローラを回転不能状態とする架線押圧部材を有し、前記架線を保持状態から把持状態としうる外線把持部材が取り付けられ、
前記本体ロッドに、本体ロッドを前記中線把持部材を支点として回動させるための遠隔操作工具が着脱自在に係合される係合部が設けられていることを特徴とする架線拡幅具。 - 請求項1に記載の架線拡幅具の中線把持部材を、互いに平行な3本の既設架線のうちの真ん中の架線に対しこれを把持することにより支持される状態に取り付け、
前記本体ロッドを、これに回動自在に取り付いた前記中線把持部材を支点として回動させることにより、前記本体ロッドの一端の外線把持部材および他端の外線保持部材を、外側の2本の前記各架線に保持状態に係合させ、
本体ロッドの係合部に遠隔操作工具を係合させたのち、その遠隔操作工具の引っ張り操作または押圧操作によって前記本体ロッドを3本の前記架線に対しほぼ直交する相対配置となるまで回動させて、両側の2本の前記架線を真ん中の前記架線から離間方向に拡幅させ、
前記外線把持部材を外部操作して該外線把持部材で前記架線を把持させることにより、3本の前記架線を拡幅状態に保持させることを特徴とする架線拡幅具を用いた架線拡幅保持工法。
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