JP4180740B2 - ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩、すなわち中和されたポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体は、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルおよび不飽和カルボン酸を含む単量体成分の共重合、あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸とメトキシポリアルキレングリコールのエステル化等により製造され、側鎖としてアルキレンオキサイド付加物基とカルボキシル基とを有していて、これらの基に由来する種々の機能性を持っているため、セメント添加剤など種々の用途に好適に使用されている。
【0003】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体は酸性であるため、貯蔵タンクを腐食させたり、水に高濃度で溶解しにくいため作業性が低かったりするという問題点を有するため、通常は中和されてポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩として貯蔵されたり取り扱われたりしている。
このようにして得られたポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩は、中和前の共重合体に比べて機能性を変化させたり分子量を低下させたりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、中和前と比べて機能性の変化や分子量の低下を生じにくくなるようにしてポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩を製造することができる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討、実験を重ねた結果、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の中和の際の温度管理または中和に使用する塩基の濃度設定に問題があることを見いだした。すなわち、中和は、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体を含む反応混合物(通常は、水溶液の状態である。)に塩基の水溶液を添加することにより行われているが、中和反応熱により反応混合物の温度が上昇したり、または、添加された塩基が反応混合物中に速やかに均一に混合されにくくて局所的に長時間高濃度になったりして、共重合体の主鎖を構成する炭素とアルキレンオキサイド付加物基との間のエステル結合が加水分解されて、共重合体の有するアルキレンオキサイド付加物基が減少していたのである。このため、共重合体塩は、中和前の共重合体に比べて、機能性が変化したり分子量が低下したりするという問題を有していた。
そこで、発明者は、加水分解しにくくなるように、中和反応熱による温度上昇を見越した温度管理をするか、および/または、添加された塩基が反応混合物中に速やかに均一に混合されるように塩基の濃度を設定することを検討した結果、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明にかかるポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法は、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体を中和する重合体塩の製造方法において、前記ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体がポリアルキレングリコールのアクリル酸エステルおよび不飽和カルボン酸を含む単量体成分の共重合により生成した共重合体であって、前記中和を30重量%未満の濃度のアルカリ水溶液を用いて行い、前記中和時の温度を50℃未満に抑えることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の中和は、この重合体の水溶液に攪拌下で塩基水溶液を添加することにより行われる。この中和時に反応熱が発生するが、中和時の温度を50℃未満に抑えるか、および/または、中和を30重量%未満の濃度のアルカリ水溶液を用いて行うことにより、共重合体の主鎖を構成する炭素とアルキレンオキサイド付加物基との間のエステル結合の加水分解を生じにくくするのである。
【0009】
中和により得られたポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩は、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルに由来するポリアルキレングリコール基と、不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基とを側鎖として有している。そして、ポリアルキレングリコール基は分散基として働き、カルボキシル基は吸着基として働くため、セメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWN用分散剤、増粘剤など種々の用途に好適に使用される。しかも、このポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩は、貯蔵タンクを腐食させにくく、水に高濃度で溶解しやすいため作業性が高い。
【0010】
中和時の温度を50℃未満に抑える方法としては、たとえば、▲1▼重合体水溶液の温度を予め十分に低くしておき50℃未満のアルカリ水溶液を徐々に添加する方法、▲2▼50℃未満の重合体水溶液を冷却しながら50℃未満のアルカリ水溶液を徐々に添加する方法、▲3▼50℃未満のアルカリ水溶液の濃度を十分に低くしておき50℃未満の重合体水溶液に添加する方法、これらの2以上の方法を組み合わせた方法、などが挙げられる。▲1▼重合体水溶液の温度を予め十分に低くしておき50℃未満のアルカリ水溶液を徐々に添加する方法としては、重合体水溶液の温度を、たとえば40℃以下、好ましくは35℃以下にしておくことが挙げられる。▲2▼50℃未満の重合体水溶液を冷却しながら50℃未満のアルカリ水溶液を徐々に添加する方法としては、たとえば、重合体水溶液を攪拌しておき、アルカリ水溶液の添加量と上昇温度を比較しながら、アルカリ水溶液の添加条件を調整することが挙げられる。▲3▼50℃未満のアルカリ水溶液の濃度を十分に低くしておき50℃未満の重合体水溶液に添加する方法としては、50℃未満のアルカリ水溶液をあらかじめ水で希釈し、濃度を、たとえば30重量%未満、好ましくは25重量%未満にしておき、重合体水溶液を攪拌させながらアルカリ水溶液を添加することが挙げられる。
【0011】
中和に用いるアルカリとしては、特に制限されないが、水酸化物M(OH)m の形式を有し、塩基性を示す物質であればよく、この場合のMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属やアンモニウム基等をいう。さらに、アルカリ金属の炭酸塩や燐酸塩、アンモニア、アミン等もここでいうアルカリに含まれる。よって、アルカリとしては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン等が挙げられるが、セメントに配合した場合に異臭が発生しないとの理由から、好ましくはアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩等であり、工業材料として安価であることや、水に対する溶解度が高い点で、水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、本発明では、これらアルカリを1種若しくは2種以上を適当な比率で混合して使用してもよい。
【0012】
本発明では、また、上記ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の中和を30重量%未満、好ましくは25重量%未満の濃度のアルカリ水溶液を用いて行うことができる。30重量%未満の濃度のアルカリ水溶液は、これを中和に用いることにより、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の水溶液と速やかに混合するので、中和反応熱が発生しても重合体水溶液が局所的に高温になりにくいため、上記エステル結合の加水分解を引き起こしにくい。30重量%未満の濃度のアルカリ水溶液を中和に用いる場合、中和時の重合体水溶液の温度は50℃以上になってもよいが、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。重合体水溶液の温度の温度は、特に限定はないが、中和直前には、たとえば50℃以下、好ましくは40℃以下である。アルカリ水溶液の温度も、特に限定はないが、たとえば40℃以下、好ましくは30℃以下である。重合体水溶液またはアルカリ水溶液が前記温度よりも高温であると上記エステル結合の加水分解が起こりやすくなることがある。これらの温度の管理は、上記した方法に準拠して行うことができる。
【0013】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体の製造方法については、特に限定されないが、好ましくは、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(単量体A)および不飽和カルボン酸(単量体B)を含む単量体成分の共重合により生成される。
ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(単量体A)とは、たとえば、アルキレングリコールとアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルであり、下記一般式(I)の反応によって得られるものである。
【0014】
【化1】
【0015】
上記で、アルキレングリコールは、一般式R1O(R2O)nHで示される化合物である。
上記一般式R1O(R2O)nHにおいて、R1は、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R1が炭素原子数30を超える炭化水素基である場合には、一般式R1O(R2O)nHで示される化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルを、たとえば、(メタ)アクリル酸とのエステルと共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、たとえば、セメント分散性能等が低下する。R1の好ましい範囲は、その使用用途により異なり、たとえば、セメント分散剤の原料として用いる場合には、R1は、炭素原子数1〜18の直鎖または枝分かれ鎖のアルキル基、および、アリール基が好ましい。R1としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアルキルフェニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基等が挙げられる。これらのうちでも、セメント分散剤の原料として用いる場合には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。
【0016】
また、R2Oは、炭素原子数2〜18、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基である。R2Oが炭素原子数18を超えるオキシアルキレン基である場合には、一般式R1O(R2O)nHの化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルを、たとえば、(メタ)アクリル酸とのエステルと共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、たとえば、セメント分散性能等が低下する。R2Oとしては、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。これらのうちでも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。R2Oの繰り返し単位は、同一であっても、異なっていてもよい。R2Oの繰り返し単位が異なる場合、すなわち、2種以上の異なる繰り返し単位を有する場合には、各R2Oの繰り返し単位はブロック状またはランダム状に付加していてもよい。
【0017】
上記一般式でnは、1〜300の数であり、R2O(オキシアルキレン基)の繰り返し単位の平均付加モル数を表す。nが300を超える場合には、一般式R1O(R2O)nHの化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルの重合性が低下する。この平均付加モル数nも、エステル化反応により得られるモノエステルの使用目的に応じて、その最適範囲は異なるものであり、たとえば、セメント分散剤の原料として用いる場合には、平均付加モル数nは、5〜200の数が好ましく、より好ましくは8〜150である。また、増粘剤等として用いる場合には、平均付加モル数nは、10〜250の数が好ましく、より好ましくは50〜200である。
【0018】
一般式R1O(R2O)nHの化合物として、1種のものを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物の形態で使用してもよい。2種以上の混合物の形態としては、特に限定されるものではなく、R1、R2Oおよびnのうちの少なくとも1つが異なる混合物であればよい。混合物の形態としては、好ましくは、▲1▼R1がメチル基とブチル基の2種で構成されている場合、▲2▼R2Oがオキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種で構成されている場合、▲3▼nが1〜10のものと、11〜100のものの2種で構成されている場合、および▲1▼〜▲3▼を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
【0019】
上記の反応で得られたポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
不飽和カルボン酸とは、下記一般式(II)
【0021】
【化2】
【0022】
(ここで、R4 は水素またはメチル基を表す。)
で示される、アクリル酸およびメタクリル酸、等を挙げることができ、さらに、これらの酸基の一部分のみを中和した塩(いわゆる部分中和物)をここにいう不飽和カルボン酸として扱っても良い。そして、これらの1種または2種以上を用いることができる。完全に中和した不飽和カルボン酸塩を用いると、分子量が大きくならなかったり、残存モノマーが多くなって好ましくない。
【0023】
前記単量体成分は、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(単量体A)および不飽和カルボン酸(単量体B)のみからなっていてもよく、あるいは、これらと必要に応じて配合される他の共重合可能な単量体(以下、「他の単量体」と言う。)とを含んでいてもよい。他の単量体としては、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸(不飽和ジカルボン酸の無水物を用いてもよい。)ならびにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜20個の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜300の(アルコキシ)ポリアルキレングリコールとのモノエステルあるいはジエステル;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレンなどの芳香族ビニル類;(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸類ならびにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。ここで、有機アミン塩とは、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンである。
【0024】
単量体成分の配合は、共重合体塩の用途に応じて適宜設定される。共重合体塩がセメント混和剤として使用される場合には、単量体成分は、たとえば、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを5〜98重量%、不飽和カルボン酸を95〜2重量%、および他の単量体を0〜50重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのが好ましく、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを25〜96重量%、不飽和カルボン酸を75〜4重量%、および他の単量体を0〜30重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのがより好ましい。さらに好ましくは、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを40〜94重量%、不飽和カルボン酸を60〜6重量%、および他の単量体を0〜20重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのがより好ましい。共重合体塩が増粘剤として使用される場合には、単量体成分は、たとえば、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを2〜95重量%、不飽和カルボン酸を5〜98重量%、および他の単量体を0〜60重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのが好ましい。
【0025】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体の重量平均分子量は、共重合体塩の用途に応じて種々異なる。共重合体塩をセメント混和剤として用いる場合には、中和前の共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算で、たとえば10,000〜500,000、好ましくは10,000〜100,000の範囲にある。共重合体塩が増粘剤として使用される場合には、中和前の共重合体の重量平均分子量は、GPCによるポリエチレングリコール換算で、たとえば200万〜1万、好ましくは100万〜1万の範囲にある。
<重量平均分子量測定条件>
機種 :Shodex SYSTEM-21
検出器:Shodex RI-71S
溶離液:種類 アセトニトリル/水=40/60Vol% pH6.0
流量 0.5ml/min
カラム:種類 東ソー(株)製
TSK-GEL α−2500、α−3000
各 7.8×300mm
検量線:ポリエチレングリコール基準
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体が有するアルキレンオキサイド付加物基およびカルボキシル基の量は、重合体塩の用途に応じて種々異なる。重合体塩をセメント混和剤として用いる場合には、中和前の重合体が有するアルキレンオキサイド付加物基およびカルボキシル基の量は、それぞれ、たとえば、5〜98(単位:重量%)および0.1〜15(単位:meq/g )、好ましくは25〜96(単位:重量%)および0.2〜10(単位:meq/g )、さらに好ましくは40〜94(単位:重量%)および0.3〜5(単位:meq/g )の範囲にある。アルキレンオキサイド付加物基またはカルボキシル基の量が前記範囲を外れると、減水性能が低下することがある。重合体塩が増粘剤として使用される場合には、中和前の重合体が有するアルキレンオキサイド付加物基およびカルボキシル基の量は、それぞれ、5〜98(単位:重量%)および0.2〜15(単位:meq/g )、好ましくは10〜95(単位:重量%)および0.4〜12(単位:meq/g )、さらに好ましくは20〜90(単位:重量%)および0.5〜10(単位:meq/g )の範囲にある。アルキレンオキサイド付加物基またはカルボキシル基の量が前記範囲を外れると、増粘効果が低下することがある。
【0026】
本発明の方法によれば、中和前のポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体と中和された重合体塩とを比べた場合、重量平均分子量の低下は5%程度であり、加水分解により重合体より外れたアルキレンオキサイド付加物基の量は1%程度であり、カルボキシル基の量の増加は1%程度(ミリ当量)であり、いずれも、従来の中和方法よりも低下が非常に少ないものである。
【0027】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体を得るための重合方法は、特に限定されず、例えば、重合開始剤を用いての溶液重合や塊状重合などの公知の方法で行なうことができる。
水溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、水、または、水および水と相溶し得る有機溶剤(たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物)等が挙げられるが、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶媒工程を省略できる点で更に好ましい。
【0028】
水溶液重合を行なう場合は、重合開始剤として、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2, 2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物などの水溶性の重合開始剤が使用され、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素等の促進剤を併用することもできる。
【0029】
また、低級アルコール、芳香族、あるいは、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を重合系の溶剤として用いる際には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシドなどのパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用することもできる。
【0030】
更に、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤或いは重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
塊状重合は、たとえば、重合開始剤として前記のものを用い、50〜200℃の温度範囲内で行うことができる。
【0031】
また、以上の各種の重合において、必要に応じて、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸などの連鎖移動剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記のようにして重合することにより得られたポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体を上記のようにして中和することによりポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩が得られる。
本発明で得られるポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩は、セメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWN用分散剤、増粘剤等に用いることが出来るが、特にセメント分散剤として好ましく使用することができる。
【0033】
ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩は、単独または混合物の形態や、水溶液の形態でそのままセメント分散剤として使用することができる。また、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩を他の公知のセメント混和剤と組み合わせて使用してもよく、このような公知のセメント混和剤としては、たとえば、従来のセメント分散剤、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、および消泡剤等を挙げることができる。
【0034】
本発明で得られるポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩を必須とするセメント分散剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメントや各種混合セメント等の水硬セメント、または、石膏等のセメント以外の水硬材料等に用いることができる。
上記セメント分散剤は、たとえば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリートに使用する場合には、セメント重量の0.01〜1.0%、好ましくは、0.02〜0.5%程度の比率の量を添加すれば良い。この添加によってスランプ保持性能の向上、単位水量の低減、コンクリート強度の増大、およびモルタルまたはコンクリートの耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。セメント分散剤の添加量が0.01%未満では性能的に不十分であり、逆に、1.0%を超えた量を使用しても、その効果は実質上、頭打ちとなり、経済性の面から不利である。
【0035】
上記セメント分散剤を用いてなるセメント組成物は、少なくともセメント、水および上記セメント分散剤を含有する組成物である。セメント分散剤の配合割合は、セメント固形分100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。セメント分散剤が上記範囲を満たすように配合されて調製されたセメント組成物では、たとえば、スランプ保持時間がはるかに向上する他、単位水量の低減、コンクリート強度の増大、およびモルタルまたはコンクリートの耐久性の向上等の各種好ましい諸効果がもたらされる。なお、セメント組成物に配合し得るセメントとしては、特に制限はなく、たとえば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメントや各種混合セメント等の水硬セメントが挙げられる。また、セメント組成物に配合し得る細骨材および粗骨材においても、特に制限されるものではなく、現在使用されている数多くの種類の細骨材および粗骨材から適宜選択して使用することができる。また、セメント組成物中への細骨材および粗骨材の配合量等に関して特に制限されるものではなく、使用する材料等に応じて、適宜決定される。
【0036】
【実施例】
以下に実施例と参考例および比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。なお、例中、特にことわりのない限り、%は重量%を、部は重量部をそれぞれ表すものとする。
また、下記例中、重合体の重量平均分子量は、前述した測定条件のGPCにより求められたポリエチレングリコール換算値である。
【0037】
<製造例1(重合体の製造)>
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水473部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。そして、メトキシポリエチレングリコ−ルモノアクリル酸エステル(以下、MPEGAEと呼ぶ。)434部(エチレンオキサイドの平均付加モル数25)、アクリル酸196部、水157部と連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸5.9部を均一に混合した単量体混合物水溶液を4時間、および10%過硫酸ナトリウム水溶液140部を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。pH2.2、重量平均分子量31,600のポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体(1)の水溶液(ポリマー水溶液(1))を得た。
【0038】
(参考例1)
温度計、攪拌機を設置したビーカーに25℃のポリマー水溶液(1)300部を入れ、温度・pHを観察しながら48%水酸化ナトリウム水溶液(23℃)を滴下した。pH7に調整した水酸化ナトリウム水溶液は31g必要であった。ビーカーの外側を氷水で冷却を行いながら中和を行ったが、中和発熱のため41℃まで温度上昇が見られた。pH調整によりポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体塩(1)を得た。
【0039】
(参考例2)
温度計、攪拌機を設置したビーカーに48℃のポリマー水溶液(1)300部を入れ、温度・pHを観察しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液74g(23℃)を加え、pH7に調整した。ビーカーの外側を氷水で冷却を行いながら中和を行ったが、中和発熱のため57℃まで温度上昇が見られた。pH調整によりポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体塩(2)を得た。
【0040】
(実施例1)
温度計、攪拌機を設置したビーカーに30℃のポリマー水溶液(1)300部を入れ、温度・pHを観察しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液74g(23℃)を3回に分けて分割投入し、pH7に調整した。ビーカーの外側を氷水で冷却を行いながら中和を行ったが、中和発熱のため39℃まで温度上昇が見られた。pH調整によりポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体塩(3)を得た。
【0041】
(比較例1)
温度計、攪拌機を設置したビ−カ−に49℃のポリマー水溶液(1)300部を入れ、温度・pHを観察しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液31g(23℃)を加えたところpH6.5になった。さらに48%水酸化ナトリウム水溶液2gを加え、pH7に調整した。冷却を行いながら中和を行ったが、中和発熱のため67℃まで温度上昇が見られた。pH調整により比較ポリアルキレングリコールポリカルボン酸共重合体塩(1)を得た。
【0042】
未中和品(共重合体(1))および共重合体塩について、重量平均分子量、分子量分布をGPCにより測定し、中和工程で加水分解により生成したメトキシポリエチレングリコール(n=25)(以下、MPEG25と呼ぶ。)の量を決定した。
加水分解性を下記基準で評価した。
【0043】
◎:MPEG25の生成量0.5%以下かつ分子量変化5%未満
○:MPEG25の生成量0.5〜20%かつ分子量変化5〜10%
×:MPEG25の生成量20%かつ分子量変化10%以上
結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1では、未中和品と比較してポリマーの重量平均分子量の低下はほとんどなく、加水分解した場合に生成するMPEG25の増加もない。しかし、参考例1、参考例2および比較例1においては分子量が低下し、「MPEGAE+MPEG25」が増加したことにより、MPEG25の生成が確認でき、ポリマーが加水分解していることがわかる。加水分解によりポリマー純分は低下し、ポリマー組成が変化する。
【0046】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、中和前と比べて機能性の変化や分子量の低下を生じにくくなるようにしてポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩を得ることができる。このような重合体塩をセメント分散剤等に用いれば、重合体のときに想定した機能性を発揮することができる。
Claims (4)
- ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体を中和する重合体塩の製造方法において、前記ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体がポリアルキレングリコールのアクリル酸エステルおよび不飽和カルボン酸を含む単量体成分の共重合により生成した共重合体であって、前記中和を30重量%未満の濃度のアルカリ水溶液を用いて行い、前記中和時の温度を50℃未満に抑えることを特徴とする、ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法。
- アルカリ水溶液の温度が50℃未満である、請求項1に記載のポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法。
- 中和を冷却しながら行う、請求項1または2に記載のポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法。
- 前記ポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体が、ポリアルキレングリコールのアクリル酸エステルおよび不飽和カルボン酸を含む単量体成分の水溶液重合によって得られるものである、請求項1から3までのいずれかに記載のポリアルキレングリコールポリカルボン酸系重合体塩の製造方法。
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