JP4667550B2 - セメント添加剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセメント添加剤に関する。さらに詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物の流動保持性に優れ、かつ優れたモルタルの混練性を有するセメント添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
1981年にコンクリート構造物の早期劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量を減らしてその施工性と耐久性を向上させることが強く求められてきた中で、セメント配合物の品質、性能に多大なる影響を与えるセメント混和剤に対する技術革新が盛んに行われている。
【0003】
特にポリカルボン酸系セメント分散剤については、従来のナフタレン系などのセメント分散剤に比べて高い減水性能を発揮するため、多くの提案がある。例えば、特開平6−321596号公報、特開平6−279082号公報にはポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル結合をプロピレンオキシドで結合させた(メタ)アクリル酸系単量体を用いた重合体が提案されている。しかしながら、これらのオキシアルキレン基を有するポリカルボン酸においても優れた流動保持性と優れたモルタルの混練性の達成については不十分であった。
【0004】
オキシアルキレン基については公知の特許公開公報(特開平6−321596号公報、特開平6−279082号公報)によると、アクリル酸エステルにおいて、ポリプロピレンオキシドに結合しているエチレンオキシドの鎖長が短いもののみが開示されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来のセメント分散剤の問題点は、流動保持性の不足と、モルタルおよびコンクリート混練時間の短縮がまだ不十分である点にある。したがって、本発明が解決しようとする課題は、優れた流動保持性を達成でき、かつモルタルの混練性に優れ、モルタルおよびコンクリートの製造時間を短縮でき生産性を向上させることのできるセメント添加剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルよりも非常に優れたモルタルの混練性能および減水性能を有する。しかしながら、その一方でアクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルよりもエステル結合がセメントアルカリ中で加水分解しやすく、モルタルやコンクリートの流動性が経時的に低下しやすい。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリアルキレングリコールエステル単位中の構造を特定することで、アクリル酸エステルにおけるエステル部分の加水分解性を抑制し、アクリル酸エステルの優れた性能を余すことなく発揮できること、即ち、優れた流動保持性を達成でき、かつモルタル混練性能を向上できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
本発明により特定されるポリアルキレングリコールエステル単位中の構造とは、後に詳細に説明するが、簡単に述べれば、
(1) エステル結合部分に炭素数の多いアルキレンオキシド鎖を結合させること(エチレンオキシド鎖を結合させないこと)
(2) アルキレンオキシド鎖中のエチレンオキシド鎖の比率を高いものとすること
である。
【0008】
即ち、本発明は下記<1>から<4>に示す、セメント添加剤である。
<1>繰り返し単位が、下記の一般式(1)
【0009】
【化9】
【0010】
(但し、式中R1Oは炭素数3〜7のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、2種以上の場合はブロック状に付加していても、ランダム状に付加していても良い。R2Oはオキシエチレン基を表す。R3は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。nはR1Oの平均付加モル数であり1〜50の数を表す。mはR2Oの平均付加モル数であり51〜300の数を表す。オキシアルキレン基(R1OおよびR2Oの合計)の95モル%以上はオキシエチレン基である。)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(I)と
繰り返し単位が、下記の一般式(2)
【0011】
【化10】
【0012】
(R4 は水素またはメチル基を表し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウムまたは有機アミンを表す。)
で示されるカルボン酸単位(II)とを含む共重合体(A)を含有してなるセメント添加剤によって達成される。
<2>下記の一般式(3)
【0013】
【化11】
【0014】
(但し、式中の各記号の意味するところは上記一般式(1)と同様である。)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単量体(IV)と
下記の一般式(4)
【0015】
【化12】
【0016】
(但し、式中の各記号の意味するところは上記一般式(2)と同様である。)
で示されるカルボン酸単量体(V)とを含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体(B)を含有してなるセメント添加剤。
によっても達成される。
<3>繰り返し単位が、下記の一般式(5)
【0017】
【化13】
【0018】
(但し、式中R5Oは炭素数4〜7のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し、2種以上の場合はブロック状に付加していても、ランダム状に付加していても良い。R6Oはオキシエチレン基を表す。R7は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。pはR5Oの平均付加モル数であり1〜50の数を表す。qはR6Oの平均付加モル数であり1〜300の数を表す。オキシアルキレン基(R5OおよびR6Oの合計)の90モル%以上はオキシエチレン基である。)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(VII)と
繰り返し単位が、下記の一般式(6)
【0019】
【化14】
【0020】
(R8 は水素またはメチル基を表し、M′は水素、一価金属、二価金属、アンモニウムまたは有機アミンを表す。)
で示されるカルボン酸単位(VIII)とを含む共重合体(C)を含有してなるセメント添加剤によっても達成される。
<4>下記の一般式(7)
【0021】
【化15】
【0022】
(但し、式中の各記号の意味するところは上記一般式(5)と同様である。)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単量体(X)と
下記の一般式(8)
【0023】
【化16】
【0024】
(但し、式中の各記号の意味するところは上記一般式(6)と同様である。)
で示されるカルボン酸単量体(XI)とを含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体(D)を含有してなるセメント添加剤によっても達成される。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のセメント添加剤は、共重合体(A)〜(D)からなる群より選ばれる少なくとも一種の共重合体を含有してなるものである。
共重合体(A)は繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)とを含む共重合体である。共重合体(A)は前記一般式(1)で示される繰り返し単位(I)を与える単量体と前記一般式(2)で示される繰り返し単位(II)を与える単量体とを含む単量体混合物を共重合することで得ることができる。また、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸メタクリル酸)共重合体にアルコキシポリアルキレングリコールを直接エステル化反応させて得ることもできる。
【0026】
また、共重合体(B)は単量体(IV)と単量体(V)を含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体である。
共重合体(C)は繰り返し単位(VII)と繰り返し単位(VIII)とを含む共重合体である。共重合体(C)は前記一般式(5)で示される繰り返し単位(VII)を与える単量体と前記一般式(6)で示される繰り返し単位(VIII)を与える単量体とを含む単量体混合物を共重合することで得ることができる。また、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸メタクリル酸)共重合体にアルコキシポリアルキレングリコールを直接エステル化反応させて得ることもできる。
【0027】
また、共重合体(D)は単量体(X)と単量体(XI)を含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体である。
繰り返し単位(I)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の炭素原子数1〜3の脂肪族アルコール類、アリルアルコール等の炭素原子数3のアルケニル基を有するアルコール類、プロパルギルアルコール等の炭素原子数3のアルキニル基を有するアルコール類のいずれかに、最初に炭素数2〜18のアルキレンオキシドを35〜300モル付加し、さらに炭素数3〜7のアルキレンオキシドを1〜50モル付加したブロック付加状アルコキシポリアルキレングリコール類と、アクリル酸とのエステル化物である。
【0028】
繰り返し単位(VII)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))としては、上記したアルコール類のいずれかに、最初に炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜300モル付加し、さらに炭素数4〜7のアルキレンオキシドを1〜50モル付加したブロック付加状アルコキシポリアルキレングリコール類と、アクリル酸とのエステル化物である。
【0029】
繰り返し単位(I)、(VII)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV)、(X))の具体例としては、以下の単量体が挙げられる。但し、*印を付したものは、繰り返し単位(I)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))の具体例とはなるが、繰り返し単位(VII)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))の具体例とはならないものである。
【0030】
メトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロポキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、アリルオキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、アリルオキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、アリルオキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロパルギルオキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロパルギルオキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロパルギルオキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、メトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、メトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、メトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、エトキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロポキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、アリルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)、プロパルギルオキシ{ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコール}{(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノアクリレート}(*)などのアルコキシポリアルキレングリコール(ポリ)(アルキレングリコール)アクリルエステル類({ }内のアルキレングリコールはランダム状に付加していても、ブロック状に付加していても良い。)を挙げることができる。
【0031】
繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))において炭素数3〜7のアルキレンオキシド鎖(R1 O)と炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R2 O)はブロック状で結合していることが必要であり、エステル結合部分に炭素数3〜7のアルキレンオキシド鎖(R1 O)が結合していることが最も重要である。同様に繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))において炭素数4〜7のアルキレンオキシド鎖(R5 O)と炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R6 O)はブロック状で結合していることが必要であり、エステル結合部分に炭素数4〜7のアルキレンオキシド鎖(R5 O)が結合していることが最も重要である。従来のアクリルエステル系重合体ではエステル結合部分にエチレンオキシド鎖が結合しているため、セメントアルカリ中で容易に加水分解が起こり分散基であるポリオキシエチレン基が脱離して流動保持性が経時的に低下する欠点があった。しかしながら、本発明のようにエステル結合部分に炭素数の多いアルキレンオキシド鎖を有していれば、炭素数の多いアルキレンオキシド鎖の疎水性と立体障害効果によりポリオキシアルキレン基の加水分解を防止することができる。
【0032】
なお、繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))におけるR1 OとR2 Oとの境界は、エステル結合部分から見て、初めて炭素数3〜7以外の炭素数のアルキレンオキシド鎖(つまり炭素数2、8〜18)が現れたところからをR2 Oとする。同様に、繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))におけるR5 OとR6 Oとの境界は、エステル結合部分から見て、初めて炭素数4〜7以外の炭素数のアルキレンオキシド鎖(つまり炭素数2〜3、8〜18)が現れたところからをR6 Oとする。
【0033】
炭素数2〜18のアルキレンオキシド(R2 O、R6 O)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、スチレンオキシドのようなアルキレンオキシドを用いることができるが、共重合体への親水性付与と、優れた分散性とモルタル混練性能の発現のためには、エチレンオキシドが最も好ましい。エステル結合部分以外のところに炭素数の多いオキシアルキレン鎖が存在すると共重合体自身の疎水性を高めることとなるためである。また、炭素数2〜18のアルキレンオキシド付加部分としては炭素数2〜18のアルキレンオキシドの1種または2種以上用いることができる。2種以上用いる場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加のいずれの形態でも用いることができる。
【0034】
繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))における炭素数2〜18のアルキレンオキシド(R2 O)の平均付加モル数(m)は35〜300の数である。繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))における炭素数2〜18のアルキレンオキシド(R6 O)の平均付加モル数(q)は1〜300の数であり、35〜300の範囲が好ましい。そして、いずれの単量体についても、優れた分散性とモルタル混練性の向上のためには51〜280の範囲が好ましく、さらに好ましくは55〜250、さらに好ましくは60〜200の範囲である。炭素数2〜18のアルキレンオキシドの平均付加モル数が少ない場合にはモルタル混練性が低下しやすい。また、炭素数2〜18のアルキレンオキシドの平均付加モル数が300を超える場合には優れた分散性を得ることが難しい。
【0035】
繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))における炭素数3〜7のアルキレンオキシド(R1 O)としてはプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドのようなアルキレンオキシドを用いることができる。好ましくは炭素数3〜6のアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは炭素数3〜5のアルキレンオキシド付加物であり、さらに好ましくは、炭素数3〜4のプロピレンオキシド、ブチレンオキシド付加物である。また、炭素数3〜7のアルキレンオキシド付加部分としては炭素数3〜7のアルキレンオキシドの1種または2種以上用いることができる。2種以上用いる場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加のいずれの形態でも用いることができる。
【0036】
繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))における炭素数4〜7のアルキレンオキシド(R5 O)としてはブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドのようなアルキレンオキシドを用いることができる。好ましくは炭素数4〜6のアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは炭素数4〜5のアルキレンオキシド付加物であり、さらに好ましくは、炭素数4のブチレンオキシド付加物である。また、炭素数4〜7のアルキレンオキシド付加部分としては炭素数4〜7のアルキレンオキシドの1種または2種以上用いることができる。2種以上用いる場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加のいずれの形態でも用いることができる。
【0037】
繰り返し単位(I)における炭素数3〜7のアルキレンオキシド(R1 O)の平均付加モル数(n)および繰り返し単位(VII)における炭素数4〜7のアルキレンオキシド(R5 O)の平均付加モル数(p)は1〜50モルの範囲であるが、好ましくは1〜30モル、さらに好ましくは2〜20モル、さらに好ましくは2〜10モル、さらに好ましくは2〜5モルの範囲である。平均付加モル数が1モル未満の場合は、セメントアルカリ中で容易に加水分解する付加モル数が0モルのものが含まれているということである。平均付加モル数が1モル以上2モル未満の場合には、疎水性を十分に与えることができない、セメントアルカリ中で容易に加水分解する付加モル数が0モルのものが含まれることがあるために加水分解を抑制する効果が低いが、2モル以上導入すれば、疎水性を十分高め、セメントアルカリ中で容易に加水分解する付加モル数が0モルのものを十分に低減することができることができるので、加水分解を十分に抑制することができる。一方、平均付加モル数が50を超えると、耐加水分解性は向上するが、共重合体自身の疎水性と立体障害により、セメント分散性が低下する。
【0038】
そのため、繰り返し単位(I)における炭素数3〜7のアルキレンオキシド(R1 O)の付加モル数の分布および繰り返し単位(VII)における炭素数4〜7のアルキレンオキシド(R5 O)の付加モル数の分布としては、全繰り返し単位(I)および全繰り返し単位(VII)のうち、付加モル数が0モルの繰り返し単位の割合が、アルコール(HO(R1 O)n (R2 O)m R3 またはHO(R5 O)p (R6 O)q R7 )に換算した割合で2重量%以下であることが好ましい。また全繰り返し単位(I)および全繰り返し単位(VII)のうち、付加モル数が1モル以下の繰り返し単位の割合が、アルコール(HO(R1 O)n (R2 O)m R3 またはHO(R5 O)p (R6 O)q R7 )に換算した割合で20重量%以下であることが好ましい。
【0039】
繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))においてオキシアルキレン基(炭素数3〜7のアルキレンオキシド鎖(R1 O)と炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R2 O)の合計)の80モル%以上はオキシエチレン基であることが必要であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。同様に繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))においてオキシアルキレン基(炭素数4〜7のアルキレンオキシド鎖(R5 O)と炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R6 O)の合計)の80モル%以上はオキシエチレン基であることが必要であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。エステル結合部分以外のところに炭素数の多いオキシアルキレン鎖が存在すると重合体自身の疎水性を高めるため、セメント分散性が低下するためである。
【0040】
また、同じ理由から、繰り返し単位(I)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))において、炭素数3〜7のアルキレンオキシド鎖(R1 O)の平均付加モル数nと炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R2 O)の平均付加モル数mとの間に(m/n)>8以上の関係が成り立つことが好ましい。同様に繰り返し単位(VII)(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))において、炭素数4〜7のアルキレンオキシド鎖(R5 O)の平均付加モル数pと炭素数2〜18のアルキレンオキシド鎖(R6 O)の平均付加モル数qとの間に(q/p)>8以上の関係が成り立つことが好ましい。
【0041】
オキシアルキレン基の末端のR3 、R7 は炭素数1〜3の炭化水素基である。優れた分散性能とモルタル混練性能を発現させるためには、炭素数1〜2の炭化水素基が好ましく、さらには炭素数1の炭化水素基がより好ましい。炭素数が3を超える炭化水素基では疎水性が強すぎるために良好な分散性能とモルタル混練性能を得ることができない。
【0042】
なお、繰り返し単位(I)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV))および繰り返し単位(VII)を与える単量体(ポリアルキレングリコールエステル単量体(X))は1種または2種以上用いることができる。
繰り返し単位(II)、(VIII)を与える単量体(カルボン酸単量体(V)、(XI))としては、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩等がある。これらの1種または2種以上を用いることができる。セメント分散性能、モルタル混練性能の向上の面からはアクリル酸およびその一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩等を用いることが好ましい。
【0043】
必要に応じて、繰り返し単位(I)、(II)以外の繰り返し単位(III);ポリアルキレングリコールエステル単量体(IV)、カルボン酸単量体(V)以外の単量体(VI);繰り返し単位(VII)、(VIII)以外の繰り返し単位(IX);ポリアルキレングリコールエステル単量体(X)、カルボン酸単量体(XI)以外の単量体(XII)を導入することができる。繰り返し単位(III)、(IX)を与える単量体、および単量体(VI)、(XII)としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩などの不飽和ジカルボン酸類、又はそれらの無水物;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、ジアミド;これらのアルコールやアミンに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを1〜300モル付加させたアルキルポリアルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミン酸と炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどの二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、クロトン酸メチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22個のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素数1〜22個のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどのビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどのジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミン類;ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテルなどのアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、などのビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)などのシロキサン誘導体;メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールなどの炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜300モル付加したアルコキシポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのエステル化物などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの繰り返し単位(単量体)の中でもアルコキシポリアルキレングリコール、特にメトキシポリエチレングリコール等の炭素数1〜3のアルコールにエチレンオキシドを付加したアルコキシポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル化物を導入することが共重合体のセメントに対する分散性、分散保持性を維持するためには好ましい。
【0044】
本発明の共重合体(A)の繰り返し単位は、重量比で(I)/(II)/(III)=1〜99/99〜1/0〜50、好ましくは40〜99/60〜1/0〜50、さらに好ましくは70〜97/30〜3/0〜30、さらに好ましくは75〜96/25〜4/0〜10の範囲であることが好ましい。
本発明の共重合体(B)は、重量比で(IV)/(V)/(VI)=1〜99/99〜1/0〜50、好ましくは40〜99/60〜1/0〜50、さらに好ましくは70〜97/30〜3/0〜30、さらに好ましくは75〜96/25〜4/0〜10の範囲であることが好ましい。
【0045】
本発明の共重合体(C)の繰り返し単位は、重量比で(VII)/(VIII)/(IX)=1〜99/99〜1/0〜50、好ましくは40〜99/60〜1/0〜50、さらに好ましくは70〜97/30〜3/0〜30、さらに好ましくは75〜96/25〜4/0〜10の範囲であることが好ましい。
本発明の共重合体(D)は、重量比で(X)/(XI)/(XII)=1〜99/99〜1/0〜50、好ましくは40〜99/60〜1/0〜50、さらに好ましくは70〜97/30〜3/0〜30、さらに好ましくは75〜96/25〜4/0〜10の範囲であることが好ましい。
【0046】
共重合体(A)〜(D)の重量平均分子量は、通常5,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは15,000〜80,000、さらに好ましくは20,000〜70,000である。これらの成分比率と重量平均分子量の範囲を外れると高い減水性能と、モルタル混練性能の向上するセメント添加剤が得られない。
【0047】
共重合体(A)〜(D)を得る方法は、特に限定されず、例えば重合開始剤を用いての溶液重合や塊状重合などの公知の重合方法を採用できる。また、(A)および(C)についてはポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸メタクリル酸)共重合体等に直接アルコキシポリアルキレングリコールをエステル化しても得ることができる。
【0048】
重合方法は、回分式でも連続式でも行なうことができ、その際必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき特に限定されない。そのような溶剤としては、例えば水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;などが挙げられるが、単量体混合物及び得られるポリカルボン酸の溶解性からは、水および炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0049】
重合開始剤としては、公知のものを使用でき特に限定されない。このような重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどのパーオキシド;などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。この際、促進剤として亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸などの還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシンなどのアミン化合物;などの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0050】
連鎖移動剤も必要に応じて使用できる。連鎖移動剤としては、公知のものを使用でき特に限定されないが、例えばメルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ヘキサデカンチオール、デカンチオール、四塩化炭素、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
重合温度は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、通常0〜150℃の範囲内で行なわれる。
このようにして得られた本発明の共重合体(A)〜(D)は、そのままでもセメント添加剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いても良い。このようなアルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンなどが好ましいものとして挙げられる。
【0052】
本発明の共重合体(A)〜(D)は、固形分換算でセメント重量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%となる比率の量を添加すれば良い。添加量が0.01重量%未満では性能的に不十分であり、逆に10重量%を超える量を使用しても経済性の面から不利となる。
本発明の共重合体(A)〜(D)を添加する対象となるセメント組成物は、少なくともセメントと水と本発明のセメント添加剤とを含むものであり、セメントペースト(セメント水スラリー)、モルタルまたはコンクリートが例示される。セメント水ペーストはセメントと水と本発明のセメント添加剤とを必須成分として含む。モルタルは、セメント水ペーストに、さらに砂を必須成分として含んでなる。コンクリートは、モルタルに、さらに石を必須成分として含んでなる。これらセメントペースト、モルタル、コンクリートは、一般に、セメント、水、細骨材、粗骨材から適宜選んで構成されるが、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム、石灰石などの微粉体を添加しても良い。使用するセメントとしては、普通ポルトランドセメントが一般的であるが、その他にも、例えば早強、超早強、中庸熱、白色などのポルトランドセメントや、アルミナセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、シリカセメントなどの混合ポルトランドセメントなども使用できる。コンクリート1m3 あたりのセメント使用量、単位水量にはとりたてて制限はないが、高耐久性・高強度のコンクリートを製造する意味合いからは、単位水量100〜185kg/m3 、水/セメント比=10〜70重量%、好ましくは単位水量120〜175kg/m3 、水/セメント比=20〜65重量%が推奨される。
【0053】
又、本発明のセメント添加剤は、公知のセメント分散剤と併用することが可能である。併用する公知のセメント分散剤としては、例えばリグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報の如くアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、などのアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報の如く(a)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/又はその塩、(b)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/又はその加水分解物及び/又はその塩、(c)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩からなるセメント用分散剤、特許公報第2508113号の如くA成分として(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤、特開昭62−216950号公報の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル或いはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体、特開平1−226757号公報の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体、特公平5−36377号公報の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)或いはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体、特開平4−149056号公報の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体、特開平5−170501号公報の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体、特開平6−191918号公報の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)或いはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体、特開平5−43288号公報の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、或いはその加水分解物またはその塩、特公昭58−38380号公報の如くポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、或いはその塩またはそのエステル、特公昭59−18338号公報の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、特開昭62−119147号公報の如くスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、或いはその塩、特開平6−271347号公報の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物、特開平6−298555号公報の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物、などのポリカルボン酸(塩);などを挙げることができ、これら公知のセメント分散剤の複数の併用も可能である。
【0054】
尚、これら公知のセメント分散剤を併用する場合には、使用するセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的に決められないが、本発明のセメント添加剤と公知のセメント分散剤との配合重量比は、通常5〜95:95〜5、好ましくは10〜90:90〜10の範囲内である。
更に、本発明のセメント添加剤は、以下に例示する様な、他の公知のセメント添加剤(材)と組み合わせて使用することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1. 3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、バラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アビトース、リポーズ、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖などのオリゴ糖、又はデキストリンなどのオリゴ糖、又はデキストランなどの多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ( メチレンホスホン酸) 、1-ヒドロキシエチリデン-1,1- ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ( メチレンホスホン酸) 、ジエチレントリアミンペンタ( メチレンホスホン酸) 及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS (アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS (直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2、4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0055】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等を挙げることができ、これら公知のセメント添加剤(材)の複数の併用も可能である。
【0056】
特に好適な実施形態としては次の1)〜3)が挙げられる。
1)▲1▼本発明のセメント添加剤、▲2▼リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。尚、▲1▼本発明のセメント添加剤と▲2▼リグニンスルホン酸塩の配合重量比としては5〜95:95〜5の範囲が好ましく、10〜90:90〜10の範囲がより好ましい。
2)▲1▼本発明のセメント添加剤、▲2▼オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、▲2▼のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、▲1▼の本発明のセメント添加剤に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
3)▲1▼本発明のセメント添加剤、▲2▼特公昭59−18338号公報の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、▲3▼オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、▲3▼のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、▲1▼の本発明のセメント添加剤と▲2▼の共重合体の合計量に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0057】
【実施例】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、例中に特に断りのない限り%は重量%を表すものとする。
<アルキレンオキシド鎖の付加モル数の分布および平均付加モル数の測定方法>共重合体を水酸化ナトリウム水溶液によって加水分解し、得られたアルコールを構成するアルキレンオキシドの組成(重量比)を液体クロマトグラフィーにより測定した。付加モル数を重量平均したものを平均付加モル数とした。
【0058】
−液体クロマトグラフィー測定条件−
測定機種:Milleniumシステム(Waters製)
検出器:410RI検出器(Waters製)
使用カラム:ODS−2 3本(GLサイエンス製)
使用溶離液:アセトニトリル6000g、水8946g及び酢酸54gを30%水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調整したもの
流速:0.6ml/min
測定温度:35℃
<共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
以下の条件により測定した。
【0059】
測定機種:Milleniumシステム(Waters製)
検出器:410RI検出器(Waters製)
使用カラム:TSK−GEL G4000SWXL、TSK−GEL G3000SWXL、TSK−GEL G2000SWXL(東ソー製)
使用溶離液:アセトニトリル1765g、水3235g及び酢酸ナトリウム三水和物34gを酢酸でpH6に調整したもの
流速:1.0ml/min
測定温度:25℃
標準試料:重量平均分子量(Mw)が170,000、85,000、46,000、26,000、12,600、7,100のポリエチレングリコール
[製造例1]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水169.4gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数75、プロピレンオキシドの平均付加モル数2)52.9g、アクリル酸7.1g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.5g、水39.5g、3−メルカプトプロピオン酸0.6gを混合したモノマー水溶液ならびに1.15%過硫酸ナトリウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに1.15%過硫酸ナトリウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、重量平均分子量34,900の本発明の共重合体(1)の水溶液を得た。
[製造例2]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水169.4gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート52.7g、アクリル酸2.1g、メタクリル酸5.2g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.4g、水36.9g、3−メルカプトプロピオン酸0.6gを混合したモノマー水溶液ならびに2.3%過硫酸アンモニウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに2.3%過硫酸アンモニウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。得られた共重合体を30%水酸化ナトリウムでpH7.0まで中和して重量平均分子量35,600の本発明の共重合体(2)の水溶液を得た。
【0060】
得られた共重合体(2)について上記測定方法にしたがってアルキレンオキシド鎖の付加モル数の分布および平均付加モル数を測定したところ、エチレンオキシドの平均付加モル数75、プロピレンオキシドの平均付加モル数2.6、エチレンオキシド導入量96.6モル%、m/n=28.8であった。以下に、プロピレンオキシドの付加モル数の分布を示す。
【0061】
[製造例3]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水169.4gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次に製造例2で用いたのと同じメトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート34.2g、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23)18.7g、アクリル酸7.2g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.5g、水34.8g、3−メルカプトプロピオン酸0.5gを混合したモノマー水溶液ならびに2.3%過硫酸アンモニウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに2.3%過硫酸アンモニウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。得られた共重合体を30%水酸化ナトリウムでpH7.0まで中和して重量平均分子量34,300の本発明の共重合体(3)の水溶液を得た。
[製造例4]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水99.6gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート107.5g、アクリル酸27.5g、30%水酸化ナトリウム水溶液2.1g、水31.6g、3−メルカプトプロピオン酸1.7gを混合したモノマー水溶液ならびに9%過硫酸アンモニウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに9%過硫酸アンモニウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。得られた共重合体を30%水酸化ナトリウムでpH7.0まで中和して重量平均分子量20,200の本発明の共重合体(4)の水溶液を得た。
【0062】
得られた共重合体(4)について上記測定方法にしたがってアルキレンオキシド鎖の付加モル数の分布および平均付加モル数を測定したところ、エチレンオキシドの平均付加モル数25、ブチレンオキシドの平均付加モル数2.6、エチレンオキシド導入量90.6モル%、q/p=9.6であった。以下に、ブチレンオキシドの付加モル数の分布を示す。
【0063】
[比較製造例1]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水99.8gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25、プロピレンオキシドの平均付加モル数2)118.9g、アクリル酸16.0g、30%水酸化ナトリウム水溶液1.0g、水32.7g、3−メルカプトプロピオン酸1.5gを混合したモノマー水溶液ならびに1.15%過硫酸ナトリウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに1.15%過硫酸ナトリウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、重量平均分子量22,300の比較共重合体(1)の水溶液を得た。
[比較製造例2]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水169gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数75)55.3g、アクリル酸7.5g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.1g、水40.0g、3−メルカプトプロピオン酸1.0gを混合したモノマー水溶液ならびに4.6%過硫酸ナトリウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに4.6%過硫酸ナトリウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、重量平均分子量19,800の比較共重合体(2)の水溶液を得た。
[参考製造例1]
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水169.4gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)121.2g、メタクリル酸13.8g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.2g、水33.5g、3−メルカプトプロピオン酸0.7gを混合したモノマー水溶液ならびに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液24gを4時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了後、さらに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液6gを1時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、重量平均分子量24,600のポリカルボン酸の水溶液を得た。
[実施例1〜8、比較例1〜2]
セメント添加剤として、製造例1〜4で得られた本発明の共重合体(1)〜(4)、比較製造例1〜2で得られた比較共重合体(1)、(2)および参考製造例で得られたポリカルボン酸を表1に示す配合量で添加したモルタルを調製し、フロー値の経時変化およびモルタル均一時間を測定した。
【0064】
試験に使用した材料およびモルタル配合は、秩父小野田普通ポルトランドセメント600g、豊浦標準砂600g、セメント添加剤を含む水溶液210gである。
<モルタル試験方法>
モルタルはモルタルミキサーにより機械練りでセメントと砂を低速で30秒間空練りし、ついで剤込みの水を投入して3分間混練して調製した。モルタル均一時間は目視でモルタルが均一状態になった時間をモルタル均一時間とした。ついで、調製したモルタルを注水後5分後、30分後、60分後、90分後にそれぞれ、直径55mm、高さ55mmの中空円筒にモルタルを詰め、次に、円筒を垂直に持ちあげた後、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。結果を表1に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果から、モルタル均一時間について、本発明の共重合体(1)〜(4)と比較共重合体(1)および(2)を比較してみると、実施例1〜3の本発明の共重合体(1)〜(3)が60秒であり、実施例4の本発明の共重合体(4)が15秒であるのに対して、比較例1の比較共重合体(1)が120秒および比較例2の比較共重合体(2)が70秒であり、本発明の共重合体(1)〜(4)が非常にモルタル均一時間が速くなっているのがわかる。
【0067】
この理由としては、本発明の共重合体(1)〜(3)が繰り返し単位(I)中のエチレンオキシド付加モル数が75モルであるのに対して、比較共重合体(1)ではエチレンオキシド付加モル数が25モルであり、本発明の共重合体(1)〜(3)の方がエチレンオキシド付加モル数が多いため親水性が高くなっており、モルタル混練性能に重要なセメント粒子への湿潤性の付与などの面で有利であると考えられる。また、本発明の共重合体(4)は繰り返し単位(VII)中のエチレンオキシド付加モル数は25モルと、比較共重合体(1)と同じモル数であるが、エステル結合部分にブチレンオキシド鎖を有する本発明の共重合体(4)は、エステル結合部分にプロピレンオキシド鎖を有する比較共重合体(1)に比べて、エステル結合部分の疎水性が強く、セメントアルカリ中で加水分解を抑制する効果が大きい。その結果、モルタル混練性能が飛躍的に向上したと考えられる。
【0068】
また、比較共重合体(2)については、エチレンオキシド付加モル数が75モルと本発明の共重合体(1)〜(3)と同じであるが、アクリル酸とのエステル結合部分にプロピレンオキシド部分を持たないためにセメントアルカリ中で容易に加水分解が起こり本発明の共重合体(1)〜(3)よりもモルタル均一時間が遅くなったと考えられる。本発明の共重合体(1)〜(3)では、エステル結合部分にプロピレンオキシド部分を有しており、また本発明の共重合体(4)では、エステル結合部分にブチレンオキシド部分を有しており、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドの疎水性および立体障害効果によりエチレンオキシドのみ有する比較共重合体(2)よりも加水分解を抑えることができたと考えられる。
【0069】
フロー値の経時変化について、本発明の共重合体(1)〜(4)と比較共重合体(1)および(2)を比較してみると、実施例1〜4の本発明の共重合体(1)〜(4)が90分後のモルタルフロー値が70〜82mmであるのに対して、比較例1の比較共重合体(1)では65mmまで低下している。また、比較例2の比較共重合体(2)にいたっては、60分後に55mmまで低下しており、本発明の共重合体(1)〜(4)が非常に優れた流動保持性を有していることがわかる。
【0070】
流動保持性の経時的低下の原因としては、▲1▼セメント粒子に吸着した共重合体がセメント粒子の経時的水和反応により生成する結晶の中に埋もれていくため流動保持性が低下する、▲2▼セメントアルカリ中で共重合体が分解する、等の理由が考えられる。
比較共重合体(1)が本発明の共重合体(1)〜(3)よりも流動保持性が低下している原因は、本発明の共重合体(1)〜(3)のエチレンオキシド付加モル数が75モルであるのに対して、比較共重合体(1)のエチレンオキシド付加モル数が25モルと小さいためにセメント粒子の水和反応により生成する結晶内に埋もれていく時間が本発明の共重合体(1)よりも速いため流動保持性が低下すると考えられる。また、本発明の共重合体(4)はエチレンオキシド付加モル数は25モルと、比較共重合体(1)と同じモル数であるが、エステル結合部分にブチレンオキシド鎖を有する本発明の共重合体(4)は、エステル結合部分にプロピレンオキシド鎖を有する比較共重合体(1)に比べてセメント粒子近傍は若干疎水性が強いのではないかと考えられる。その若干の疎水性ゆえに流動保持性が改善されたと考えられる。
【0071】
また、比較共重合体(2)が本発明の共重合体(1)〜(4)よりも流動保持性が低下している原因は、比較共重合体(2)は、エチレンオキシド付加モル数が75モルと本発明の共重合体(1)〜(3)と同じであるが、アクリル酸とのエステル結合部分にプロピレンオキシドやブチレンオキシドを持たないエチレンオキシドであるために親水性が高く、セメントアルカリ中でエステルの加水分解が容易に起こり、経時的に分散基であるメトキシポリエチレングリコール部分を失うために、本発明の共重合体(1)〜(4)よりも流動保持性が低下したと考えられる。
【0072】
また、実施例5〜8の結果から、本発明の共重合体(1)〜(4)は従来のポリカルボン酸と併用して用いた場合にも、良好なモルタル混練性能と優れた流動保持性能を発揮することがわかる。
【0073】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のセメント添加剤を用いればモルタルおよびコンクリートの混練時間を短縮することができるので高流動コンクリートにも有効であり、モルタルやコンクリートの製造時間を短縮でき生産性を向上させることができる。さらに、本発明のセメント添加剤は優れた流動保持性能を有しているのでモルタルやコンクリートの作業性を向上させることができる。
Claims (12)
- 繰り返し単位が、下記の一般式(1)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(I)と
繰り返し単位が、下記の一般式(2)
で示されるカルボン酸単位(II)とを含む共重合体(A)を含有してなる、セメント添加剤。 - 一般式(1)で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(I)のうち、R1Oの付加モル数が0モルのポリアルキレングリコールエステル単位の割合が、アルコール(HO(R1O)n(R2O)mR3)に換算した割合で2重量%以下である、請求項1に記載のセメント添加剤。
- 一般式(1)で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(I)のうち、R1Oの付加モル数が1モル以下のポリアルキレングリコールエステル単位の割合が、アルコール(HO(R1O)n(R2O)mR3)に換算した割合で20重量%以下である、請求項1に記載のセメント添加剤。
- R1Oの平均付加モル数nとR2Oの平均付加モル数mとの間に、(m/n)>8の関係が成り立つ、請求項1に記載のセメント添加剤。
- 下記の一般式(3)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単量体(IV)と
下記の一般式(4)
で示されるカルボン酸単量体(V)とを含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体(B)を含有してなる、セメント添加剤。 - 繰り返し単位が、下記の一般式(5)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(VII)と
繰り返し単位が、下記の一般式(6)
で示されるカルボン酸単位(VIII)とを含む共重合体(C)を含有してなる、セメント添加剤。 - 一般式(5)で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(VII)のうち、R5Oの付加モル数が0モルのポリアルキレングリコールエステル単位の割合が、アルコール(HO(R5O)p(R6O)qR7)に換算した割合で2重量%以下である、請求項6に記載のセメント添加剤。
- 一般式(5)で示されるポリアルキレングリコールエステル単位(VII)のうち、R5Oの付加モル数が1モル以下のポリアルキレングリコールエステル単位の割合が、アルコール(HO(R5O)p(R6O)qR7)に換算した割合で20重量%以下である、請求項6に記載のセメント添加剤。
- R5Oの平均付加モル数pとR6Oの平均付加モル数qとの間に、(q/p)>8の関係が成り立つ、請求項6に記載のセメント添加剤。
- R5Oの平均付加モル数pが2〜5である、請求項6から9までのいずれかに記載のセメント添加剤。
- 下記の一般式(7)
で示されるポリアルキレングリコールエステル単量体(X)と
下記の一般式(8)
で示されるカルボン酸単量体(XI)とを含む単量体混合物を共重合して得られる共重合体(D)を含有してなる、セメント添加剤。 - R5Oの平均付加モル数pが2〜5である、請求項11に記載のセメント添加剤。
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