JP3946998B2 - 新規共重合体及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規水溶性重合体及びその用途(具体的には、セメント混和剤)に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントに水を添加したセメントペーストや、これに細骨材である砂を混合したモルタル、さらに粗骨材である小石を混合したコンクリートは、各種構造材等に大量に使用されている。しかしながら、モルタルやコンクリートは、経時的にセメントと水との水和反応が進行して硬化するため、水添加後の時間経過と共に作業性が低下することが一般的である。この様なセメントの分散性を確保すべく、種々のセメント混和剤が開発されている。
【0003】
例えば、特公昭59−18338号公報には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを共重合させたセメント分散剤が開示されている。該公報開示のセメント分散剤は、1分子中に非イオン性の親水性基であるポリアルキレングリコール鎖とアニオン性のカルボキシル基とを有しており、前者の親水性及び立体障害によって後者のセメント粒子への吸着を抑制するため、凝結遅延効果が少なく、かつ優れた分散性能を発揮するとしている。
【0004】
又、特許2730770には「ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体から導かれた水溶性プレポリマー(a)」と「プレポリマー(a)の有する官能基(カルボン酸及びまたは水酸基)と反応する化合物(b)」とを反応させて得られる親水性樹脂化合物(c)からなるセメント混和剤が開示されている。該公報開示のセメント混和剤はセメントペースト中での混練直後はセメントに対する吸着力が弱く、経時的な外部作用(アルカリによる加水分解等)により分散能力を有する分子に切断され、分散能力を発揮している。
【0005】
このように、従来から分散保持性能がある重合体、またはセメント混和剤は知られている。しかしながら、骨材の種類、セメントの種類、使用温度、生コンクリートの設計強度等セメント混和剤の使用条件が異なると、求められる分散保持性能も異なるため、すべての使用条件で最適なセメント混和剤は得られていない。常に新しい構造を持ち、分散保持性を有するセメント混和剤が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、充分な分散保持性能を確保できる新規ポリマーを提供する事にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来用いられてきたポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体の代わりに、(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系単量体(a)を単量体成分として含み、さらに多官能不飽和単量体(b)を含む単量体成分を共重合してなる共重合体が分散保持性能を発揮する事を見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
すなわち、本発明は、下記1)〜3)に示す構成からなる。
【0009】
1)(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系単量体(a)と多官能不飽和単量体(b)を含む単量体成分からなる水溶性重合体(P−1)。
さらに、不飽和カルボン酸系単量体(c)も必須成分とする単量体成分からなる水溶性重合体(P−2)。
【0010】
2)(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系構成単位(A)を含む重合体であり、セメント濾液で0.5%溶液に調整後、60℃で3時間攪拌することにより、重量平均分子量が減少することを特徴とする水溶性重合体(P−3)。さらに、不飽和カルボン酸単位(C)も必須成分とする水溶性重合体(P−4)。
【0011】
3)そして、これらの水溶性重合体を含んでなるセメント混和剤。さらに、ポリカルボン酸系のセメント減水剤も必須成分とし含むセメント混和剤。
【0012】
【発明の実施の形態】
水溶性重合体(P−1)は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)と多官能不飽和単量体(b)とを必須成分とする単量体成分からなる水溶性重合体である。この場合の水溶性重合体とはpH7で20℃の水100gに対して、0.5g以上溶解する重合体のことを示す。
【0013】
水溶性重合体(P−2)は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)と多官能不飽和単量体(b)と不飽和カルボン酸系単量体(c)を必須成分とする単量体成分からなる水溶性重合体である。
【0014】
また、水溶性重合体(P−1)(P−2)は、上記で必須成分だけだけでなく、さらにその他の共重合可能な単量体(d)を含むものでもよい。
【0015】
なお、上記単量体(a)単量体(b)単量体(c)単量体(d)はそれぞれを単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0016】
重合体(P−1)において、各単量体の重量割合としては、単量体(a)が1〜99重量%、単量体(b)が99〜1重量%であることが好ましい。単量体(a)の割合が1重量%未満では、重合体(P−1)に含まれる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来のオキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、単量体(b)の割合が1重量%未満では、重合体(P−1)の架橋率が低下し、十分な分散保持性能を発揮し得ないこととなる。より好ましくは、単量体(a)/単量体(b)=20〜98/1〜80重量%、さらに好ましくは、単量体(a)/単量体(b)=50〜97/3〜50重量%、特に好ましくは、単量体(a)/単量体(b)=70〜95/5〜30重量%
である。
【0017】
重合体(P−2)において、各単量体の重量割合としては、単量体(a)が1〜99重量%、単量体(b)が1〜99重量%、単量体(c)が0〜99重量%であることが好ましい。単量体(a)の割合が1重量%未満では、重合体(P−2)に含まれる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来のオキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、単量体(b)の割合が1重量%未満では、重合体(P−2)の架橋率が低下し、十分な分散保持性能を発揮し得ないこととなる。より好ましくは、単量体(a)/単量体(b)/単量体(c)=20〜98/2〜80/1〜99重量%、さらに好ましくは、単量体(a)/単量体(b)/単量体(c)=50〜95/3〜50/1〜50重量%、特に好ましくは、単量体(a)/単量体(b)/単量体(c)=70〜90/5〜30/2〜30重量%である。
【0018】
水溶性重合体(P−3)は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系構成単位(A)を必須成分とする単量体成分からなる水溶性重合体である。
【0019】
水溶性重合体(P−4)は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系構成単位(A)と不飽和カルボン酸系構成単位(c)を必須成分とする単量体成分からなる水溶性重合体である。
【0020】
また、水溶性重合体(P−3)(P−4)は、上記で必須成分だけだけでなく、さらにその他の共重合可能な単量体(d)に由来する構成単位(D)を含むものでもよい。
【0021】
なお、上記構成単位(A)構成単位(C)構成単位(D)はそれぞれを単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0022】
重合体(P−3)において、構成単位(A)の重量割合は1〜99重量%あることが好ましい。構成単位(A)の割合が1重量%未満では、重合体(P−1)に含まれる不飽和オキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、構成単位(A)の割合が99重量%を越えると、重合体(P−1)の架橋率が低下し、十分な分散保持性能を発揮し得ないこととなる。より好ましくは、構成単位(A)=20〜98重量%、さらに好ましくは、構成単位(A)=50〜97重量%、特に好ましくは、構成単位(A)=70〜95重量%である。
【0023】
重合体(P−4)において、構成単位(A)の重量割合は1〜99重量%、構成単位(C)の重量割合は0〜99重量%あることが好ましい。構成単位(A)の割合が1重量%未満では、重合体(P−1)に含まれる不飽和オキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、構成単位(A)の割合が99重量%を越えると、重合体(P−1)の架橋率が低下し、十分な分散保持性能を発揮し得ないこととなる。より好ましくは、構成単位(A)/構成単位(C)=20〜98/2〜99重量%、さらに好ましくは、構成単位(A)/構成単位(C)=50〜95/5〜50重量%、特に好ましくは構成単位(A)/構成単位(C)=70〜90/10〜30重量%である。
【0024】
重合体(P−3)は、例えば、構成単位(A)を与える不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)を必須成分として含む単量体成分を共重合して製造することができるが、これに限定されない。例えば、単量体(a)の代わりに、アルキレンオキシドを付加する前の単量体、すなわちメタリルアルコール等の不飽和アルコールを用い、これを重合開始剤の存在下で共重合させた後(必要に応じ、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体をさらに共重合させてもよい)、アルキレンオキシドを平均1〜500モル付加する方法によっても得ることができる。
同様に、重合体(P−4)の場合は、構成単位(A)を与える不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)、構成単位(C)を与える不飽和カルボン酸系単量体(c)を必須成分として含む単量体成分を共重合して製造することができるが、これに限定されず、アルキレンオキシドを付加する前の単量体成分を用いて共重合させた後にアルキレンオキシドを付加する方法によっても得ることができる。
次に本発明の水溶性重合体を形成することになる単量体成分を構成する単量体について説明する。
(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系単量体(a)は下記一般式(1)で表わされる単量体が好ましい
【0025】
【化1】
【0026】
前記一般式(1)において、オキシアルキレン基R1Oの炭素原子数としては、2〜18の範囲が適当であるが、2〜8の範囲が好ましく、2〜4の範囲がより好ましい。又、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物については、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれでも用いることができる。尚、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、95モル%以上がオキシエチレン基であることがとりわけ好ましい。
【0027】
前記一般式(1)において、オキシアルキレン基の平均付加モル数mは、1〜500であることが適当である。好ましくは2〜500、より好ましくは5〜500、さらに好ましくは10〜500、とりわけ好ましくは15〜500、最も好ましくは20〜300である。この平均付加モル数が小さいほど、得られる重合体の親水性が低下して分散性能が低下する傾向があり、一方、500を超えると、共重合反応性が低下する傾向となる。
【0028】
前記一般式(1)において、R2は水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基であればよく、この炭素原子数1〜30の炭化水素基として具体的には、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素原子数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられるが、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、R2が炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜4がとりわけ好ましく、R2が水素原子の場合が最も好ましい。
【0029】
前記一般式(1)において、Yで示されるアルケニル基の炭素原子数としては、2〜8の範囲が適当であるが、3〜8の範囲が好ましく、3〜5の範囲がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等が挙げられるが、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が等が挙げられ、これらの1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。
【0030】
前記一般式(1)で示される不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)は、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加して製造することができるが、具体的には、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル;等が挙げられる。本発明では、構成単位(A)を与える単量体(a)として、これらの1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。
【0031】
尚、上記一般式(1)で表わされる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)として、オキシアルキレン基の平均付加モル数mの異なる2種類以上の単量体を組み合わせて用いることができる。好適な組み合わせとして、例えば、mの差が10以上(好ましくはmの差が20以上)の2種類の単量体(a)の組み合わせ、あるいは各々の平均付加モル数mの差が10以上(好ましくはmの差が20以上)の3種類以上の単量体(a)の組み合わせ等が挙げられる。さらに、組み合わせるmの範囲としては、平均付加モル数mが40〜500の範囲の単量体(a)と、1〜40の範囲の単量体(a)との組み合わせ(但しmの差は10以上、好ましくは20以上)、平均付加モル数mが20〜500の範囲の単量体(a)と、1〜20の範囲の単量体(a)との組み合わせ(但しmの差は10以上、好ましくは20以上)等が可能である。尚、上記一般式(1)で表わされる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(A)を必須の構成単位として含む、重合体(A)、重合体(C)及び重合体(G)それぞれにおいて、オキシアルキレン基の平均付加モル数mの異なる2種類以上の単量体を組み合わせて用いてもよいし、それぞれの重合体ごとにオキシアルキレン基の平均付加モル数mの異なる該単量体を用いてもよい。
【0032】
多官能不飽和単量体(b)としては、1分子中に2個以上の不飽和基を持ち、pH10以上のアルカリ溶液中で加水分解することにより2分子以上に分解する単量体が好ましい。
【0033】
不飽和基の種類としては、エチレン性不飽和基であればよく、具体的には(メタ)アクリロイル基、マレイン酸基、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、(無水)マレイン酸エステル基、(無水)マレイン酸アミド基等が挙げられ、これらの1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。
【0034】
不飽和基は1分子中に2個以上存在することが必要であり。好ましくは2〜100個、より好ましくは2〜50個、更に好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜6個である。1分子中の不飽和基の数が100個を越えると、共重合体の分子量が高くなりすぎて、水溶性共重合体が得られない。
【0035】
多官能不飽和単量体(b)の分子量は特に制限はないが、(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系単量体(a)の分子量の10%以上であることが好ましい。分子量が10%未満の場合、分子量が大きくならず、充分な分散保持性能が得られない。例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール(Mw2286)の場合、分子量229以上の多官能不飽和単量体(b)を用いることが好ましい。好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%、特に好ましくは40%以上である。
【0036】
多官能不飽和単量体(b)にはpH10以上のアルカリ溶液中で加水分解する官能基を1個以上含有する必要がある。官能基の種類としては、エステル基、アミド基、ウレタン基、が好ましく中でもセメント組成物中での加水分解性の点から、エステル基を含有していることが好ましい。官能基の数は1個以上であれば特に制限させるものではないが、好ましくは1〜100個、より好ましくは2〜100個、更に好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜6個である。
【0037】
多官能不飽和単量体(b)は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化により得られた化合物と同一構造を有する化合物が好ましい。これは、単量体(b)が製法より限定させるものではなく、他の製法により得られた同一構造を有する化合物も含まれる。
【0038】
多価アルコールとは、1分子中に平均2個以上の水酸基を含有する化合物であれば、特に限定させる物ではないが、好ましくは、多価アルコール残基が炭素、水素、酸素の3つの元素から構成される化合物であれば良い。
【0039】
多価アルコール有する水酸基数の好ましい範囲は2〜500個、好ましくは2〜300個、さらに好ましくは2〜100である。水酸基が500個以上であれば、水酸基を反応させて得られる不飽和基の数が多くなりすぎて、共重合体の分子量が高くなりすぎて、水溶性共重合体が得られない。
【0040】
多価アルコールの具体例としてはポリグリシドール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等が好適である。また糖類として、グルコース、フルクトース、マンノース、インド−ス、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロース、等のヘキソース類;アラビノース、リブロース、リボース、キシロース、キシルロース、リキソース等のペントース類;トレオース、エリトルロース、エリトロース等のテトロース類;ラムノース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュウクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等のその他糖類:およびそれらの糖アルコール、糖酸(糖類;グルコース、糖アルコール;グルシット、糖酸;グルコン酸)等も好適である。さらにこれら例示化合物の部分エーテル化物や部分エステル化物などの誘導体も好適である。さらに、上記例示化合物の水酸基に対してオキシアルキレン化合物を付加させた化合物も好適である。この場合のオキシアルキレン化合物とはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等であり、任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物を、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれでも用いることができる。尚、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。さらに、これらの多価アルコールは1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。
【0041】
多官能不飽和単量体(b)の具体例はトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類等が挙げられ、これらの1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。中でも特に、ポリ(n=4〜50)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが重合性、分散保持性能の面から好ましい。
【0042】
不飽和カルボン酸系単量体(c)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等不飽和ジカルボン酸系単量体のが挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸又はこれらの塩、マレイン酸及びこれらの塩、又は無水マレイン酸が、共重合性の点から、好ましい。本発明では、これらの1種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することができる。
【0043】
単量体(d)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)と共重合可能な単量体である。このような単量体(d)として具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のアルケニルアルコール類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
前記水溶性重合体(P−1),(P−2),(P−3)及び(P−4)を得るには、重合開始剤を用いて前記単量体成分を重合させればよい。重合は、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。
【0045】
溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;等が挙げられる。原料単量体及び得られる水溶性重合体(P−1),(P−2),(P−3)及び(P−4)の溶解性並びに該重合体の使用時の便からは、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級アルコールの中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が特に有効である。
【0046】
水溶液重合を行なう場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2‘−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。尚、水溶性の重合開始剤として過酸化水素を用いる場合は、L−アスコルビン酸(塩)等の促進剤と組み合わて用いるのが好ましい。
【0047】
又、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0048】
塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0049】
また、得られる水溶性重合体(P−1),(P−2),(P−3)及び(P−4)の分子量調節のために、連鎖移動剤を併用することもできる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。さらに、重合体の分子量調整のためには、単量体(g)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0050】
所定の分子量の水溶性重合体(P−1),(P−2),(P−3)及び(P−4)を再現性よく得るには、重合反応を安定に進行させることが必要であることから、溶液重合する場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下の範囲とすることが好ましい。好ましくは0.01〜4ppmの範囲、さらに好ましくは0.01〜2ppmの範囲、最も好ましくは0.01〜1ppmの範囲である。尚、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とする。
尚、溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよく、溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。 上記のようにして得られた各重合体は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和して用いてもよい。このようなアルカリ性物質としては、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等が好ましいものとして挙げられる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
【0051】
水溶性重合体(P−1),(P−2),(P−3)及び(P−4)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で1,000〜1,000,000の範囲が適当であるが、5,000〜1,000,000の範囲が好ましく、10,000〜800,000の範囲がより好ましい。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散保持性能を発揮するセメント混和剤が得られる。
【0052】
さらに本発明の水溶性重合体(P−3)及び(P−4)はセメント濾液で0.5%溶液に調整後、60℃で3時間攪拌することにより、重量平均分子量が減少するものである。 分子量変化後の水溶性重合体(P−3)及び(P−4)の重量平均分子量はGPCによるポリエチレングリコール換算で1,000〜200,000の範囲が適当であるが、5,000〜100,000の範囲が好ましく、10,000〜80,000の範囲がより好ましい。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散保持性能を発揮するセメント混和剤が得られる。
【0053】
さらに水溶性重合体(P−3)及び(P−4)の重量平均分子量に対する、セメント濾液で0.5%溶液に調整後、60℃で3時間攪拌することにより減少した重量平均分子量の変化率は1〜99%が適当が、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくな10%以上、特に好ましくは20%以上、より特に好ましくは30%以上、最も好ましくは40%以上である。また、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは70%以下、より特に好ましくは60%以下、最も好ましくは50%以下である。重量平均分子量の変化率が1%未満の場合、分散保持性能の発現が遅く、99%以上であれば充分な分散保持性能が発揮されない。
【0054】
次に本発明で用いるセメントろえきの製造方法について説明する普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)500gとイオン交換水500gを混合し、25℃で3時間攪拌させる。0.45μのフィルターを用いて、セメント粒子を除去し、セメントろ液を得た。
【0055】
本発明のセメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明のセメント混和剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0056】
前記例示の水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、そのような本発明のセメント組成物は、前記本発明のセメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなる。
【0057】
本発明のセメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。又、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0058】
本発明のセメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比にはとりたてて制限はなく、単位水量100〜185kg/m3、使用セメント量250〜800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3、使用セメント量270〜800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0059】
本発明のセメント組成物における本発明のセメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜5.0%、好ましくは0.02〜2.0%、より好ましくは0.05〜1.0%となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では性能的に不十分であり、逆に5.0%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0060】
また、本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0061】
又、本発明のセメント混和剤は、公知のセメント分散剤と併用することが可能である。併用する公知のセメント分散剤としては、例えばリグニンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報の如くアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、などのアミノスルホン酸系;等を挙げることができ、これら公知のセメント分散剤の複数の併用も可能である。
【0062】
尚、上記公知のセメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント混和剤と公知のセメント分散剤との配合重量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10の範囲内である。
【0063】
さらに、本発明のセメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント混和剤(材)を含有することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0064】
その他の公知のセメント混和剤(材)としては、たとえば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。尚、上記公知のセメント混和剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0065】
本発明のセメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の1)〜6)が挙げられる。
【0066】
1)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、▲2▼のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、▲1▼のセメント混和剤に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0067】
2)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。尚、▲1▼のセメント混和剤と▲2▼のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましい。
【0068】
3)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。尚、▲1▼のセメント混和剤と▲2▼のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましい。
【0069】
4)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、▲1▼のセメント混和剤と▲2▼の材料分離低減剤との配合重量比としては、10/90〜99.99/0.01の範囲が好ましく、50/50〜99.9/0.1の範囲がより好ましい。この組み合わせからなるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0070】
5)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。
遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。尚、▲1▼のセメント混和剤と▲2▼の遅延剤との配合重量比としては、50/50〜99.9/0.1の範囲が好ましく、70/30〜99/1の範囲がより好ましい。
【0071】
6)▲1▼本発明のセメント混和剤、▲2▼促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。
促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。尚、▲1▼のセメント混和剤と▲2▼の促進剤との配合重量比としては、10/90〜99.9/0.1の範囲が好ましく、20/80〜99/1の範囲がより好ましい。
【0072】
【0073】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。尚、例中、特にことわりのない限り、「%」は重量%を、「部」は重量部を表わすものとする。
実施例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、還流冷却器を備えたガラス製反応容器にイオン交換水79部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素30%水溶液1.0部を添加した。次に、アクリル酸3.3部、ヒドロキシエチルアクリレート34.5部、ポリエチレングリコール(分子量600)ジアクリレート16.3部とイオン交換水5.9部の混合物、および、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを25モル付加した不飽和アルコール94.8部とイオン交換水35.2部との混合物をそれぞれ反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、L−アスコルビン酸0.4部と3−メルカプトプロピオン酸0.7部とイオン交換水28.9部との混合物を反応容器内に3.5時間かけて滴下した。その後、引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を完結させ、その後、65℃以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液を中和し、重量平均分子量15万以上の重合体水溶液を得た。
実施例2
温度計、攪拌機、滴下漏斗、還流冷却器を備えたガラス製反応容器にイオン交換水79部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素30%水溶液1.1部を添加した。次に、アクリル酸4.9部、ヒドロキシエチルアクリレート36.3部、ポリエチレングリコール(分子量600)ジアクリレート8.0部とイオン交換水10.9部の混合物、および、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを25モル付加した不飽和アルコール99.7部とイオン交換水30.3部との混合物をそれぞれ反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、L−アスコルビン酸0.4部と3−メルカプトプロピオン酸0.8部とイオン交換水28.8部との混合物を反応容器内に3.5時間かけて滴下した。その後、引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を完結させ、その後、65℃以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液を中和し、重量平均分子量47000の重合体水溶液を得た。
製造例1
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水1698部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)1668部、メタクリル酸332部及びイオン交換水500部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量24,000の重合体水溶液を得た。
比較例1
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水277部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル400部を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素0.670部と水12.73部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸58.4部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水16.49部にL−アスコルビン酸0.868部及び3−メルカプトプロピオン酸1.569部を溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。重合反応終了時の重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は60%であった。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量30,500の重合体水溶液を得た。
<加水分解実験>
太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント500gとイオン交換水500gを混合し、25℃で3時間攪拌させる。0.45μのフィルターを用いて、セメント粒子を除去し、セメントろ液を得た。
【0074】
上記セメントろ液10gに対して、実施例1,2で得た共重合体水溶液を重合体の固形分換算で0.05g混合し、60℃で3時間静置した後、分子量を確認した。実施例1の共重合の分子量は15万以上から28200に減少した。実施例2の共重合の分子量は47000から32000に32%減少した。
<モルタル試験>
実施例1、実施例2、比較例1の水溶性重合体、実施例1の重合体と製造例1の重合体の混合物をそれぞれ添加したモルタルを調製し、モルタル試験を行った。モルタル試験はいずれも25℃に調温した材料を用いて25℃雰囲気下で行い、試験に使用した材料及びモルタル配合は、以下の通りである。
セメント:太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント1000g
細骨材:大井川水系陸砂と木更津産山砂との混合砂(比重2.62、FM2.70)
水:本発明のあるいは比較セメント混和剤を含むイオン交換水
(水/セメント比(重量比)=0.49、細骨材/セメント比率=2.5)
尚、モルタル中の気泡がモルタルの流動性に及ぼす影響を避けるために、市販のオキシアルキレン系消泡剤を用いて空気量が2.0±0.3%となる様に調整した。セメントに対するセメント混和剤の添加量(セメントに対するセメント混和剤中の固形分[不揮発成分]の量)(重量%)は表1に示す。
尚、セメント混和剤中の固形分[不揮発成分]は、適量のセメント混和剤溶液を130℃で加熱乾燥することにより揮発成分を除去して測定し、セメントと配合する際に所定量の固形分[不揮発成分]が含まれるように混和剤水溶液を計量して使用した。
(モルタルフロー値の測定)
モルタルはホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)で調製した。セメントと上記セメント混和剤を含むイオン交換水を添加し15秒間低速で混練した後、細骨材を添加し60秒間混練した。モルタルミキサーの容器に付着したモルタルを掻き落した後、さらに4分間混練することにより調製した。
得られたモルタルを水平に設置されたフローテーブル(JIS R5201)に置かれた上端内径70mm、下端内径100mm、高さ60mmのフローコーン(JIS R5201)に摺り切りまで充填し、混練開始8分後にこのフローコーンを静かに垂直に持ち上げた。その後、1秒間に1回の割合で15回ハンドルを回転させて上下運動を与え、広がったモルタルの最大径とこれに直角な方向とを測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。以後、モルタルの全量を密閉容器内で所定時間静置後、上と同様の操作を繰り返し、モルタルフロー値の経時変化を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1中の合計使用量はセメントに対する各共重合体の固形分の量。
【0077】
表1から、多官能不飽和単量体であるポリエチレングリコール(分子量600)ジアクリレートを用いたい実施例1,2の重合体は多官能不飽和単量体を使用していない比較例1の重合体と比較して分散保持性能がよいことが確認できた。
また、実施例1の重合体と製造例1の重合体を混合して用いた場合、少ない添加量で初期分散性が得られ、分散保持性能のバランスが良いセメント混和剤として使用できることを確認した。
【0078】
【発明の効果】
本発明の課題は、充分な分散保持性能を確保できる新規水溶性共重合体を見いだした。
Claims (6)
- 一般式(1) YO(R 1 O) m R 2
(式中、R 1 Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数1〜500を表し、R 2 は水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、Yは炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)
で表される(ポリ)アルキレングリコールモノアルケニルエーテル系単量体(a)と
1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基とエステル基、アミド基から選ばれる官能基を1個以上含有し、加水分解により2分子以上に分解する多官能不飽和単量体(b)を含む単量体成分を共重合してなる水溶性重合体(P−1)
を含んでなることを特徴とするセメント混和剤。 - 前記多官能不飽和単量体(b)は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化により得られた化合物と同一構造を有する化合物である請求項1に記載のセメント混和剤。
- 前記多官能不飽和単量体(b)は、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートである請求項1に記載のセメント混和剤。
- 更に、前記単量体成分が、不飽和カルボン酸系単量体(c)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセメント混和剤。
- 不飽和カルボン酸系単量体(c)が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、又はこれらの塩、又は無水マレイン酸である請求項4に記載のセメント混和剤。
- 更に、前記セメント混和剤が、ポリカルボン酸系セメント減水剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセメント混和剤。
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