JP4180273B2 - 固体電解質用支持体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は固体電解質用支持体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、高分子と非水溶媒とからなる固体電解質を用いた非水二次電池は、非水溶媒が漏れにくく安全性の向上が図れること、さらに、電池自体を薄くかつ自由な形状にすることができるため、開発が積極的に行われている。しかしながら、このような固体電解質は機械的強度が不足しており、単独では取扱うことが難しく、実用化するのが困難であった。
【0003】
このような背景のもと、固体電解質の機械的強度を補うための支持体が提案されている。例えば、非水溶媒を電解液とする電池(例えば、リチウムイオン電池)で使用されているようなポリエチレン製の微多孔膜セパレータを、固体電解質の支持体として利用したものや、ポリオレフィン系合成樹脂繊維製不織布を支持体として使用したものが知られている(特開平9−22724号公報など)。これらの支持体を使用した固体電解質は、機械的強度に優れ、効率的に電池を組立てることができるものであったが、支持体と固体電解質とが一体化された場合に、電気導電率が低くなることが判明した。
【0004】
また、非水溶媒を内部に保持する能力が高いポリフッ化ビニリデン樹脂を支持体と複合化させることにより、電気導電率を向上させることができることが知られている。例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を支持体に含浸する方法や、支持体にポリフッ化ビニリデン樹脂膜を接着して一体化させる方法が知られている。しかしながら、これらの方法によりポリフッ化ビニリデン樹脂を複合化した支持体は、非水溶媒を単独で使用するのであれば高い電気導電率を示すものの、固体電解質と一体化すると、電気導電率が非常に低くなるという問題があった。また、前者の方法によると、有機溶媒を使用しているため作業環境が悪く、しかも有機溶媒の回収が必要になるなど、作業性の悪いものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたものであり、固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができる固体電解質用支持体を、作業性良く製造することのできる、固体電解質用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、「(1)ポリフッ化ビニリデン粉体と、(2)繊維径が5μm以下の極細繊維の集合体、圧縮気体の作用によって繊維径が5μm以下の極細繊維に分割可能な分割性繊維の集合体、パルプ状物の集合体、圧縮気体の作用によってパルプ状にフィブリル化可能な分繊性繊維の集合体、の中から選ばれる少なくとも1つの骨材とを、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記ポリフッ化ビニリデン粉体を分散させるとともに、前記骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させ、分散させる工程、分散したポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを集積して、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブを形成する工程、前記ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ中のパルプ状物は融着又は圧着させないものの、極細繊維を融着又は圧着させるか、前記ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブに圧力を加えることによってパルプ状物のフィブリル化を促進させることにより、極細繊維及び/又はパルプ状物を固定する工程、とを備えている、厚さが30μm以下で、空隙率が50%以上、80%以下である、リチウムイオンポリマー電池用固体電解質用支持体の製造方法。」であれば、前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
つまり、ポリフッ化ビニリデン粉体と前記のような骨材とを、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出して分散させた後に集積して繊維ウエブを形成すると、ポリフッ化ビニリデン粉体が前記のような骨材から発生した極細繊維及び/又はパルプ状物の表面や、極細繊維間、パルプ状物間、或いは極細繊維とパルプ状物との間に保持され、適度な空隙を形成できるため、十分な量の固体電解質を支持できる結果として、固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができることを見出した。また、この製造方法は有機溶媒を使用することなく、気体中で分散させ、集積させて製造する方法であるため、作業性良く製造することができる。
【0008】
また、パルプ状物を構成する樹脂成分が合成樹脂からなると、固体電解質を支持させた際に、非水溶媒により固体電解質用支持体が濡れたとしてもその形態を保持することができる、という効果を奏する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法により得られる固体電解質用支持体(以下、単に「支持体」ということがある)は、ゲル化することにより非水溶媒を保持して、固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができるように、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末と、支持体本来の働きである機械的強度を付与するとともに、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末を保持でき、しかも電気導電性を妨げないように、極細繊維及び/又はパルプ状物を含んでいる。そのため、まず(1)ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末と、(2)極細繊維の集合体、圧縮気体の作用によって極細繊維に分割可能な分割性繊維の集合体、パルプ状物の集合体、圧縮気体の作用によってパルプ状にフィブリル化可能な分繊性繊維の集合体、の中から選ばれる少なくとも1つの骨材、とを用意する。
【0010】
まず、ポリフッ化ビニリデン粉体の粒径は特に限定するものではないが、粒径が小さければ小さいほど、支持体全体に分散することができ、固体電解質支持後におけるイオン伝導性の均一性が高くなるため、粒径は4μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのがより好ましい。下限は特に限定するものではないが、0.1μm程度が適当である。なお、ファンデルワールス力により極細繊維及び/又はパルプ状物の表面に付着させる場合には、ポリフッ化ビニリデン粉体の粒径の下限は1μmであるのが好ましい。なお、この「粒径」は平均粒子径を意味し、この平均粒子径はレーザー回析・散乱法により測定することができる。
【0011】
次に、極細繊維の集合体としては、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れているように、極細繊維の繊維径は5μm以下であり、極細繊維の繊維径が小さければ小さい程、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れ、より粒径の小さいポリフッ化ビニリデン粉体を保持できるため、極細繊維の繊維径は4μm以下であるのが好ましい。なお、極細繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
【0012】
本発明における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には横断面積と面積の同じ円の直径を繊維径とみなす。
【0013】
この極細繊維の繊維長は均一分散性に優れているように、5mm以下であるのが好ましく、3mm以下であるのがより好ましい。なお、極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、繊維長が均一であるように、切断された極細繊維であるのが好ましい。
【0014】
本発明における「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。
【0015】
この極細繊維を構成する成分は特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂など)、全芳香族ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、全芳香族ポリエステル系樹脂、ポリベンズオキサゾール系樹脂などの有機成分、ガラス、炭素、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイトなどの無機成分から構成することができる。これらの中でも、支持体の寸法安定性及び柔軟性に優れているように、有機成分から構成されているのが好ましく、固体電解質を構成する非水溶媒との親和性に優れているポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、固体電解質を構成する非水溶媒によって侵されにくい、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂から構成されているのがより好ましい。なお、極細繊維はこれら成分単独から構成されていても良いし、2成分以上から構成されていても良い。また、繊維径、成分、或いは融着性又は圧着性の点で相違する、2種類以上の極細繊維を含んでいても良い。
【0016】
なお、極細繊維が融着可能又は圧着可能であると、極細繊維の融着又は圧着によって、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性を高めることができ、ポリフッ化ビニリデン粉体の脱落が生じにくいため好適である。
【0017】
この融着可能な極細繊維としては、極細繊維表面を構成する成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂から構成されている極細繊維を例示することができる。前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂などを例示することができ、これらの中でも、比較的融点の低いポリエチレン系樹脂やポリエステル系樹脂からなるのが好ましい。なお、極細繊維が2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の成分によって繊維形態を維持することができるため好適である。この2種類以上の成分から構成されている極細繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、融着性に優れる芯鞘型、偏芯型、海島型であるのが好ましい。
【0018】
他方、圧着可能な極細繊維として、紡糸後に十分に延伸を施していない未延伸極細繊維を挙げることができ、例えば、未延伸ポリエステル系繊維を使用することができる。
【0019】
また、極細繊維は地合いの優れる固体電解質用支持体を製造できるように、繊維軸方向において、直径が実質的に同じであるのが好ましい。このように繊維軸方向において直径が実質的に同じである極細繊維は、例えば、紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押し出して複合する複合紡糸法により製造した海島型繊維の海成分を除去して得ることができる。
【0020】
本発明の極細繊維の集合体は上述のような極細繊維が集合したものであり、その数は特に限定されるものではない。また、その集合状態も特に限定されるものではないが、例えば、規則正しく一定方向に極細繊維が配向した束状態、ランダムに配向した凝集状態などを挙げることができる。これらの中でも、束状態であると、後述の圧縮気体の作用による分散性に優れているため好適である。
【0021】
この極細繊維集合体として、異なる種類の極細繊維の集合体を組み合わせて使用しても良い。
【0022】
本発明の極細繊維集合体は、例えば、複合紡糸法又は混合紡糸法により製造した海島型繊維の海成分を除去することによって、島成分からなる極細繊維を発生させたり、スーパードロー法によって紡糸する方法で製造することができる。なお、2成分以上からなる極細繊維は海島型繊維を紡糸する際に島成分が2成分以上となるように樹脂を供給したり、スーパードロー法により紡糸する際に、2成分以上の樹脂を供給して製造することができる。また、好適である束状態の極細繊維集合体は、複合紡糸法又は混合紡糸法により製造した海島型繊維の海成分を除去することによって、得ることができる。
【0023】
次に、圧縮気体の作用によって極細繊維に分割可能な分割性繊維の集合体も、前述の極細繊維集合体と同様に、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れているように、分割性繊維から発生する極細繊維(以下、「発生極細繊維」と表記する)の繊維径は5μm以下である必要があり、発生極細繊維の繊維径が小さければ小さい程、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れ、より粒径の小さいポリフッ化ビニリデン粉体を保持できるため、発生極細繊維の繊維径は4μm以下であるのが好ましい。なお、発生極細繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
【0024】
この発生極細繊維の繊維長も均一分散性に優れているように、5mm以下であるのが好ましく、3mm以下であるのがより好ましい。なお、発生極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、繊維長が均一であるように、切断された発生極細繊維であるのが好ましい。つまり、切断された分割性繊維から発生した発生極細繊維であるのが好ましい。
【0025】
この発生極細繊維を構成する成分も特に限定するものではないが、前述の極細繊維と同様の成分から構成することができ、同様の理由で有機成分から構成されているのが好ましく、固体電解質を構成する非水溶媒との親和性に優れているポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、固体電解質を構成する非水溶媒によって侵されにくい、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂から構成されている発生極細繊維がより好ましい。この発生極細繊維も単一成分から構成されていても良いし、2成分以上から構成されていても良い。また、発生極細繊維は繊維径、成分、或いは融着性の点で相違する、2種類以上の発生極細繊維を含んでいても良い。なお、発生極細繊維が融着可能であると、発生極細繊維の融着によって、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性を高めることができ、ポリフッ化ビニリデン粉体の脱落が生じにくいため好適である。
【0026】
この融着可能な発生極細繊維としては、発生極細繊維表面を構成する成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂から構成されている発生極細繊維を例示することができる。前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂などを例示することができ、これらの中でも、比較的融点の低いポリエチレン系樹脂やポリエステル樹脂からなるのが好ましい。なお、発生極細繊維が2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の成分によって繊維形態を維持することができるため好適である。この2種類以上の成分から構成されている発生極細繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、融着性に優れる芯鞘型、偏芯型、海島型であるのが好ましい。
【0027】
また、発生極細繊維は地合いの優れる固体電解質用支持体を製造できるように、繊維軸方向において、直径が実質的に同じであるのが好ましい。このような繊維軸方向において直径が実質的に同じである発生極細繊維は、例えば、2種類以上の成分を口金規制して押し出した後に複合する複合紡糸法により製造した分割性繊維を分割して得ることができる。
【0028】
このような発生極細繊維に分割可能な分割性繊維としては、例えば、2種類以上の樹脂成分を押し出した後に複合する複合紡糸法により製造した繊維を挙げることができる。この2種類以上の樹脂成分相互の相溶性が低いほど、発生分割繊維を発生しやすく、相溶性が高いほど、後述のような一部がフィブリル化する分繊性繊維となる。つまり、実際に圧縮気体の作用によってノズルから気体中へ噴出させた場合に、完全に分割されて発生極細繊維を発生すれば分割性繊維であり、不完全に分割されてパルプ状物であるかのようにフィブリル化する場合には分繊性繊維である。より具体的には、ポリアミド系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせからなると分割性繊維である可能性が高く、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との組み合わせからなると分繊性繊維である可能性が高い。
【0029】
このような分割性繊維の横断面形状は、例えば、オレンジ状、多重バイメタル状であることができる。
【0030】
このような分割性繊維の集合体は上述のような分割性繊維が集合したものであり、その数は特に限定されるものではない。また、その集合状態も特に限定されるものではなく、例えば、規則正しく配向した状態、ランダムに配向した凝集状態などを挙げることができる。
【0031】
この分割性繊維の集合体は、異なる種類の分割性繊維の集合体を組み合わせて使用しても良い。
【0032】
本発明の分割性繊維の集合体は、例えば、常法の複合紡糸法により紡糸した後に収束して得ることができる。
【0033】
次に、パルプ状物の集合体も、パルプ状物のフィブリルによってポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れている。なお、このパルプ状物は支持体の厚さを薄くでき、均一分散性に優れており、しかもリチウムイオンポリマー電池用に使用する場合には、極板に使用する粉体の進入を防止できる。また、パルプ状物のフィブリルによるポリフッ化ビニリデン樹脂粉末の保持性に優れているため、支持体構成材量を減らすことができ、支持体の電気導電率を高くすることができる。更には、パルプ状物のフィブリル間の絡みにより保形性にも優れているため、取り扱い性にも優れている。
【0034】
このパルプ状物はどのような樹脂成分から構成されていても良いが、非水溶媒と接触しても支持体の強度が低下しないように、合成樹脂から構成されているのが好ましく、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、メタ系又はパラ系全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。
【0035】
このパルプ状物の集合体は、異なる種類のパルプ状物の集合体を組み合わせて使用しても良い。
【0036】
そして、圧縮気体の作用によってパルプ状にフィブリル化可能な分繊性繊維の集合体も、前述のパルプ状物と同様に、フィブリルによってポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れ、支持体の厚さを薄くでき、均一分散性に優れており、しかもリチウムイオンポリマー電池用に使用する場合には、極板に使用する粉体の進入を防止できる。また、支持体構成材の量を減らすことができるため、支持体の電気導電率を高くすることができる。更には、フィブリルによる絡みにより保形性にも優れているため、取り扱い性にも優れている。
【0037】
この分繊性繊維から発生するパルプ状物(以下、「発生パルプ状物」という)を構成する成分は特に限定するものではないが、前述の極細繊維と同様の成分から構成することができ、同様の理由で有機成分から構成されているのが好ましく、固体電解質を構成する非水溶媒との親和性に優れているポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、固体電解質を構成する非水溶媒によって侵されにくい、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0038】
この発生パルプ状物は単一成分から構成されていても良いし、2成分以上から構成されていても良い。また、成分や融着性の点で相違する、2種類以上の発生パルプ状物を含んでいても良い。なお、発生パルプ状物が融着可能であると、発生パルプ状物の融着によって、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性を高めることができ、ポリフッ化ビニリデン粉体の脱落が生じにくいため好適である。
【0039】
この融着可能な発生パルプ状物としては、発生パルプ状物の表面を構成する成分の少なくとも一部が熱可塑性樹脂から構成されているパルプ状物を例示することができる。前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂などを例示することができ、これらの中でも、比較的融点の低いポリエチレン系樹脂やポリエステル系樹脂からなるのが好ましい。なお、発生パルプ状物が2種類以上の成分から構成されていると、1種類の成分が融着したとしても、少なくとも1種類の成分によってパルプ状形態を維持することができるため好適である。
【0040】
このような発生パルプ状物にフィブリル化可能な分繊性繊維としては、例えば、2種類以上の樹脂成分を押し出した後に複合する複合紡糸法により製造した繊維を挙げることができる。この2種類以上の樹脂成分相互の相溶性が高いほど、分繊性繊維である可能性が高い。例えば、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との組み合わせからなる複合繊維は分繊性繊維である可能性が高い。また、溶剤紡糸法により得られたセルロース繊維、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維などの単一成分からなる繊維もフィブリル化可能な分繊性繊維である。つまり、前述のように、実際に圧縮気体の作用によってノズルから気体中へ噴出させた場合に、不完全に分割されてパルプ状物であるかのようにフィブリル化する繊維は分繊性繊維である。
【0041】
このような分繊性繊維の集合体は上述のような分繊性繊維が集合したものであり、その数は特に限定されるものではない。また、その集合状態も特に限定されるものではなく、例えば、規則正しく配向した状態、ランダムに配向した凝集状態などを挙げることができる。
【0042】
この分繊性繊維の集合体として、異なる種類の分繊性繊維の集合体を組み合わせて使用しても良い。
【0043】
本発明の分繊性繊維の集合体は、例えば、常法の紡糸法により紡糸した後に収束して得ることができる。
【0044】
本発明の固体電解質用支持体の製造方法においては、前述のような、極細繊維の集合体(A)、極細繊維に分割可能な分割性繊維の集合体(B)、パルプ状物の集合体(C)、フィブリル化可能な分繊性繊維の集合体(D)の中から選ばれる少なくとも1つの骨材を使用する。これら(A)〜(D)の組み合わせとしては15通りあるが、これらの中でも、極細繊維の集合体(A)とパルプ状物の集合体(C)との組み合わせは、支持体の均一性を高くすることができ、また、パルプ状物はフィブリル化しているため絡まりやすく、支持体の強度を高くすることができるうえ、ポリフッ化ビニリデン粉体の保持性も高くなるため、特に好ましい組み合わせである。この組み合せの場合、その配合比は、パルプ状物のフィブリルによる支持体の強度及びポリフッ化ビニリデン粉体の保持性が得られ、しかも均一分散性を損なわないように、(A):(C)=30〜90:70〜10であるのが好ましく、(A):(C)=40〜90:60〜10であるのがより好ましい。
【0045】
また、支持体中におけるポリフッ化ビニリデン粉体の含有量は、イオン伝導性を高めることができるように、支持体全体の5mass%以上であるのが好ましいため、ポリフッ化ビニリデン粉体と骨材との合計量の5mass%以上がポリフッ化ビニリデン粉体となるように配合するのが好ましい。他方、ポリフッ化ビニリデン粉体量が支持体全体の10mass%を超えると、極細繊維及び/又はパルプ状物により形成される適度な空隙を塞いでしまう傾向があるためで、ポリフッ化ビニリデン粉体と骨材との合計量の10mass%以下がポリフッ化ビニリデン粉体となるように配合するのが好ましい。
【0046】
次いで、以上のようなポリフッ化ビニリデン粉体と少なくとも1種類の骨材とを、ノズルへ供給するとともに、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、ポリフッ化ビニリデン粉体を分散させるとともに、骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させ、分散させる。
【0047】
このノズルはポリフッ化ビニリデン粉体及び骨材の供給側から噴出側へ向かって、一定の横断面積を有するものであっても良いし、連続的に又は不連続的に横断面積が小さくなるものであっても良いし、連続的に又は不連続的に横断面積が大きくなるものであっても良いし、連続的に又は不連続的に横断面積が大きくなった後に小さくなるものであっても良いし、或いは連続的に又は不連続的に横断面積が小さくなった後に大きくなるものであっても良い。
【0048】
なお、ノズルへ供給される圧縮気体の流れが渦巻き状であると、骨材同士が絡み合って極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させたり、均一分散させることが困難になる傾向があるため、ノズルへ供給される圧縮気体の流れが実質的に層流であるのが好ましい。このように実質的に層流状の圧縮気体を供給できるノズルとして、例えば、ベンチュリー管を挙げることができる。
【0049】
また、ノズルの噴出部近傍に、ポリフッ化ビニリデン粉体及び骨材、或いは骨材から発生した極細繊維及び/又はパルプ状物と衝突して、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物を分散させたり、骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物の発生を促進するために、衝突部材を設けるのが好ましい。この衝突部材(平坦部)とノズル噴出部との距離は1〜100mmであるのが好ましく、5〜40mmであるのがより好ましく、5〜30mmであるのが更に好ましく、10〜30mmであるのが更に好ましく、10〜20mmであるのが最も好ましい。
【0050】
この圧縮気体はどのような気体を利用しても良いが、空気を用いるのが製造上好適である。また、圧縮気体はポリフッ化ビニリデン粉体を分散させるとともに、骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させ、分散させることが十分にできるように、ノズル噴出口における気体通過速度が100m/sec以上であるのが好ましい。この「気体通過速度」は、ノズルから噴出された気体の1気圧における流量(m3/sec)を、ノズル噴出口における横断面積(m2)で除した値をいう。また、圧縮気体の圧力はポリフッ化ビニリデン粉体を分散させるとともに、骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させ、分散させることが十分にできるように、2kg/cm2以上であるのが好ましい。
【0051】
また、ノズルから噴出されたポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを分散させる分散媒体としての気体は、特に限定されるものではないが、空気であるのが製造上好適である。
【0052】
なお、ポリフッ化ビニリデン粉体や骨材が、界面活性剤や糊剤などの付着物の付着率が低いと、ノズルとポリフッ化ビニリデン粉体及び/又は骨材との摩擦によって静電気が発生しやすく、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物も静電気を帯びやすいため、これらが反発しあって、均一に分散しやすい。そのため、ポリフッ化ビニリデン粉体や骨材をノズルへ供給する前に付着物を取り除く処理を行うのが好ましく、例えば、アセトンなどの溶媒によって洗浄し、付着物量を少なくするのが好ましい。なお、海島型繊維の海成分を抽出して形成した極細繊維集合体の場合には付着物の少ない状態にあるため、好適な極細繊維集合体である。なお、この海島型繊維の海成分を抽出して形成した極細繊維集合体の場合であっても、アセトンなどの溶媒によって洗浄し、付着物量を更に少なくするのが好ましい。
【0053】
次いで、この分散したポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを集積して、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブを形成する。このポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物の集積は、例えば、多孔性のロールやネットなどの支持体を利用して実施することができる。なお、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを自然落下させて集積しても良いし、支持体の下方から気体を吸引して集積しても良い。気体を吸引して集積する場合、吸引力を強くすると、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とが密着した状態のポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブとすることができ、吸引力を弱くすると、比較的嵩高なポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブとすることができる。
【0054】
次いで、このポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブの極細繊維及び/又はパルプ状物を固定して、固体電解質用支持体を製造することができる。この固定方法は特に限定されるものではないが、例えば、極細繊維及び/又はパルプ状物の融着又は圧着により固定する方法、圧力を加えることによってパルプ状物のフィブリル化を促進させ、このフィブリルによってパルプ状物同士及び/又はパルプ状物と極細繊維との絡みを促進してポリフッ化ビニリデン粉体を閉じ込める方法、などを挙げることができる。これらの中でも、極細繊維及び/又はパルプ状物の融着又は圧着により固定するのが好ましい。このように極細繊維及び/又はパルプ状物の融着又は圧着によって支持体形態を維持していると、機械的強度に優れ、しかも支持体形態を維持するために空隙が塞がれておらず、空隙の多い状態にあるため、多くの固体電解質を支持することができ、結果として固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができる支持体とすることができる。例えば、エマルジョン又はサスペンジョン状のバインダーによって極細繊維及び/又はパルプ状物を結合すると、このバインダーによって皮膜が形成されて空隙が塞がれる傾向があるが、融着又は圧着によって形態を維持していると、空隙の多い状態にある。なお、パルプ状物が融着又は圧着していると、皮膜状となって空隙が塞がれる傾向があるため、パルプ状物は融着又は圧着しておらず、極細繊維が融着又は圧着しているのが好ましい。
【0055】
以上のように、本発明の支持体の製造方法によると、ポリフッ化ビニリデン粉体が極細繊維及び/又はパルプ状物の表面や、極細繊維間、パルプ状物間、或いは極細繊維とパルプ状物との間に保持され、適度な空隙を形成できるため、十分な量の固体電解質を支持できる結果として、固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができる支持体を製造できる。また、この製造方法は有機溶媒を使用することなく、気体中で分散させ、集積させて製造する方法であるため、作業性良く製造することができる。また、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ形成時にポリフッ化ビニリデン粉体の脱落がほとんどないため、設計通りにポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ、結果として支持体を製造できるという効果も奏する。なお、従来の湿式法によっては開繊が難しかったパルプ状物の集合体であっても、効率良く、しかも均一にパルプ状物に開繊でき、このパルプ状物によってポリフッ化ビニリデン粉体の保持性に優れる、という効果も奏する。更に、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを均一に混合できるため、電気導電率に優れ、例えば、リチウムイオンポリマー電池用に使用した場合には、ハイレート充放電特性に優れ、電池寿命が長くなるという効果が期待できる。
【0056】
より具体的には、本発明の製造方法により製造された支持体は、空隙率が50%以上、80%以下の空隙の多いものであるのが好ましい。この程度の空隙率であれば、支持体としての形態保持性を維持でき、しかも支持できる固体電解質の量を多くできるものである。より好ましい空隙率は55%以上である。また、空隙率は75%以下であるのがより好ましく、70%以下であるのが更に好ましい。なお、この「空隙率(P)」は、次の式から得られる値をいう。
空隙率(P)={1−W/(Tラd)}ラ100
ここで、Wは目付(g/m2)を意味し、Tは支持体の厚さ(μm)を意味し、dは支持体構成材の密度(g/cm3)を意味する。なお、支持体構成材が2種類以上存在しているため、支持体構成材の密度は各構成材の質量平均をいう。また、「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味し、「厚さ」はJIS B 7502に規定された方法により測定した値、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定された値を意味し、「密度」はJIS K 7112に規定された方法により測定された値を意味する。
【0057】
なお、本発明により製造される支持体の厚さはイオン移動距離が短く、内部抵抗を下げて電気導電率を高めることができるように、30μm以下であるのが好ましく、25μm以下であるのがより好ましい。支持体の厚さの下限は特に限定するものではないが、支持体としての固体電解質の補強効果を損なわないように、また、支持できる固体電解質の量が少なくなり過ぎないように、10μmであるのが好ましく、15μmであるのがより好ましい。なお、本発明の製造方法により製造された支持体をリチウムイオンポリマー電池用に使用した場合には、支持体がこの程度の厚さがあれば、粉体活物質の侵入による微小短絡を防ぐことができる。
【0058】
このように製造された支持体は固体電解質を支持して機械的強度を付与でき、しかも電気導電率の優れるものとすることができるため、リチウムイオンポリマー電池用のゲル状固体電解質の支持体として有効に使用できるものである。このゲル状固体電解質は80%以上が非水溶媒から構成されている場合が多いが、このように製造された支持体は空隙率が高く、しかもポリフッ化ビニリデン粉体によって非水溶媒を保持することができるため、液漏れを防ぐことができるという点でも有効である。
【0059】
次に、本発明の支持体の製造方法について、本発明の支持体を製造することのできる製造装置の模式的断面図である図1をもとに説明する。
【0060】
まず、ポリフッ化ビニリデン粉体と骨材(つまり、極細繊維集合体、分割性繊維の集合体、パルプ状物集合体、分繊性繊維集合体の中から選ばれる少なくとも1つ)は、混合装置10によって混合される。
【0061】
次いで、この混合されたポリフッ化ビニリデン粉体と骨材はノズル30へ供給される。このポリフッ化ビニリデン粉体と骨材がノズル30へ到達する手前で、圧縮気体導入口20から導入された圧縮気体の作用によって、ポリフッ化ビニリデン粉体と骨材はノズル30から勢いよく、気体40中へと噴出される。この気体40へと噴出される際に、ノズル30内と気体40との気圧差、噴出された圧縮気体と気体40との間に形成される乱流、或いはノズル30の噴出口近くに設けられた衝突部材との衝突、などの相互作用によって、ポリフッ化ビニリデン粉体は分散し、また、骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物が発生し、分散する。
【0062】
この気体40中に分散したポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物70はネットからなる支持体50上に集積して、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ80を形成する。この製造装置においては、支持体50の下方に位置する気体吸引装置60によって気体を吸引できるため、比較的緻密なポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ80を形成することができる。
【0063】
このように形成したポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ80は、更にポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物の分散性を高めるために、再度、ノズル31、32へ供給される。この製造装置においては、2つのノズルに再度供給しているが、1つのノズルに再供給しても良いし、3つ以上のノズルに再度供給しても良いし、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ80をそのまま後述のような熱融着装置90へ供給しても良い。
【0064】
このノズル31、32に再度供給される場合も同様に、ノズル31、32へ到達する手前で、圧縮気体導入口21、22から導入された圧縮気体の作用によって、ポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物はノズル31、32から勢いよく、それぞれ気体41、42中へ噴出される。この際、同様にポリフッ化ビニリデン粉体と極細短繊維及び/又はパルプ状物は均一に分散する。
【0065】
この気体41、42中にそれぞれ分散したポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物71、72は、ネットからなる支持体51上にそれぞれ集積して、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブを再度形成する。この製造装置においては、まずノズル31から噴出されたポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物71が支持体51上に集積して、単層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ81を形成した後、この単層繊維ウエブ81上に、ノズル32から噴出されたポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物72が集積して、積層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ82を形成する。なお、積層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブといっても、もともと単層のポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ80を構成するポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物を再度分散させているため、明確な層が形成される訳ではない。
【0066】
また、このポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物71、72を集積させる際にも、支持体51の下方に位置する気体吸引装置61によって気体を吸引しているため、比較的緻密な積層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ82を形成できる。この製造装置においては、1つの気体吸引装置61により気体41と気体42の両方を吸引しているが、各々の気体ごとに気体吸引装置を設けても良い。
【0067】
次いで、この積層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ82は熱融着装置90へと供給され、この熱融着装置90の熱の作用により極細繊維及び/又はパルプ状物が融着して、支持体を製造することができる。そして、この支持体は巻き取り装置100により巻き取られる。
【0068】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
【実施例】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート極細繊維(繊度=0.1dtex、繊維径=3μm、切断繊維長=3mm、繊維軸方向において実質的に直径は同じ)の集合体(並列した束状で水分によって集合している状態)を40mass%、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能極細繊維(繊度=0.2dtex、繊維径=5μm、切断繊維長=3mm、軟化温度=231℃、繊維軸方向において実質的に直径は同じ)の集合体(並列した束状で水分によって集合している状態)を20mass%、パラ系芳香族ポリアミドパルプ(繊維長=0.38mm)の集合体を30mass%、及びポリフッ化ビニリデン粉体(平均粒径=1μm)を10mass%の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した。
【0070】
次いで、これら混合物を噴出口における横断面形状が円形(直径:8.5mm)のベンチュリー管(ベンチュリー管の供給側における横断面形状は円形(直径:3mm))へ供給するとともに、ベンチュリー管の手前に設けられた圧縮気体導入口から圧縮空気(圧力:6kg/cm2、実質的に層流)を導入して、前記ベンチュリー管から混合物を空気中に噴出(ベンチュリー管の噴出口における気体通過速度:118m/s)し、前記ベンチュリー管の噴出口前方に設けた衝突部材(ベンチュリー管の噴出口と衝突部材の平坦部との距離:15mm)に衝突させて、ポリフッ化ビニリデン粉末、ポリエチレンテレフタレート極細繊維、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能繊維、及びパラ系芳香族ポリアミドパルプを分散させた。
【0071】
次いで、この分散させたポリフッ化ビニリデン粉末、ポリエチレンテレフタレート極細繊維、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能繊維、及びパラ系芳香族ポリアミドパルプを、ネットからなる支持体上に載置しておいた不織布基材(目付が30g/m2のポリプロピレン繊維製スパンボンド不織布)上に集積させ、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を形成した。なお、集積させる際には、支持体の下に設置されたサクションボックスにより空気を吸引(2m3/min)した。
【0072】
次いで、このポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を、温度130℃に設定されたオーブンに供給し、3分間熱処理を実施して、目付40g/m2、厚さ40μmの不織布基材積層固体電解質用支持体基材を製造した。
【0073】
次いで、不織布基材積層固体電解質用支持体基材から不織布基材を剥離し、固体電解質用支持体基材のみを熱カレンダー処理(圧力:500N/cm、温度:180℃)して、目付が8g/m2で、厚さが20μmの固体電解質用支持体を製造した。なお、この固体電解質用支持体においては、ポリフッ化ビニリデン粉末が、ポリエチレンテレフタレート極細繊維、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能繊維、及びパラ系芳香族ポリアミドパルプの表面に付着又は圧着していたり、ポリエチレンテレフタレート極細繊維、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能繊維、及びパラ系芳香族ポリアミドパルプによって取り囲まれた状態にあった。また、未延伸ポリエチレンテレフタレート圧着可能繊維の圧着によって支持体形態を保っていた。更に、空隙率が55%で、適度な空隙を有する状態にあった。
【0074】
また、投入原料100に対して、回収された固体電解質用支持体は95であり、収率95%の収率の高いものであった。
【0075】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート極細繊維(繊度=0.1dtex、繊維径=3μm、切断繊維長=3mm、繊維軸方向において実質的に直径は同じ)の集合体(並列した束状で水分によって集合している状態)を40mass%、パラ系芳香族ポリアミドパルプ(繊維長=0.38mm)の集合体を50mass%、及びポリフッ化ビニリデン粉体(平均粒径=1μm)を10mass%の質量比でミキサーに供給して、これらを解すとともに混合した。
【0076】
その後、実施例1と全く同様にして、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ−不織布基材複合材を得た。
【0077】
次いで、不織布基材積層固体電解質用支持体基材から不織布基材を剥離し、固体電解質用支持体基材のみを熱カレンダー処理(圧力:500N/cm、温度:180℃)して、目付が6g/m2で、厚さが15μmの固体電解質用支持体を製造した。なお、この固体電解質用支持体においては、ポリフッ化ビニリデン粉末が、ポリエチレンテレフタレート極細繊維及びパラ系芳香族ポリアミドパルプの表面に付着していたり、ポリエチレンテレフタレート極細繊維及びパラ系芳香族ポリアミドパルプによって取り囲まれた状態にあった。また、パラ系芳香族ポリアミドパルプのフィブリルの絡みによって支持体形態を保っていた。更に、空隙率が65%で、適度な空隙を有する状態にあった。
【0078】
また、投入原料100に対して、回収された固体電解質用支持体は98であり、収率98%の収率の高いものであった。
【0079】
(電気導電率の測定)
高分子物質及び非水溶媒を10:90の質量比で、室温下で混合し、ゲル電解質溶液を調製した。なお、前記高分子物質としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体(登録商標:エレクセルTA−140;第一工業製薬社製)を使用し、前記非水溶媒としては、プロピレンカーボネートとガンマーブチロラクトンを重量比で1:1に混合した溶媒に、濃度が1mol/Lとなるように、LiBF4を溶解した溶媒を使用した。
【0080】
次いで、このゲル電解質溶液を、前記実施例1並びに実施例2で製造した各支持体に均一に塗布し、支持体表面に厚さ5μm程度のゲル電解質層を形成させて、固体電解質を支持させた。
【0081】
次いで、この固体電解質を支持させた支持体を、電気導電率を測定するテストセル中に設置された、円形(直径=20mm)のステンレス鋼(SUS304)製電極間に挟み、前記と同様の非水溶媒をテストセル内に満たした後、圧力(0.2MPa/cm2)を前記電極間に加え、固体電解質を支持させた支持体の厚さ方向における電気導電率を、交流インピーダンス法に基づいて測定した。すなわち、AUTOLAB PGSTAT30(ECO CHEMI社製)により測定した複素インピーダンスの軌跡をコール・コールプロット法により解析し、電気導電率(単位=S/cm)を求めた。電気導電率は1ラ10−3S/cm以上のものが実用に適している。この結果は表1に示す通りであった。この表1から明らかなように、本発明の製造方法により製造した支持体により固体電解質を支持したものは、電気導電率が高く、実用性に優れていることが判明した。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明の固体電解質用支持体の製造方法は、適度な空隙を有し、十分な量の固体電解質を支持できる結果として、固体電解質支持後の電気導電率を高くすることができる固体電解質用支持体を製造することができる。また、作業性良く固体電解質用支持体を製造できる方法である。なお、パルプ状物を構成する樹脂成分が合成樹脂からなると、固体電解質を支持させた際に、非水溶媒により固体電解質用支持体が濡れたとしてもその形態を保持することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の固体電解質用支持体を製造することのできる製造装置の模式的断面図
【符号の説明】
10 混合装置
20、21、22 圧縮気体導入口
30、31、32 ノズル
40、41、42 気体
50、51 支持体
60、61 気体吸引装置
70、71、72 ポリフッ化ビニリデン粉体、極細繊維及び/又はパルプ状物
80 ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ
81 単層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ
82 積層ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ
90 熱融着装置
100 巻き取り装置
Claims (2)
- (1)ポリフッ化ビニリデン粉体と、(2)繊維径が5μm以下の極細繊維の集合体、圧縮気体の作用によって繊維径が5μm以下の極細繊維に分割可能な分割性繊維の集合体、パルプ状物の集合体、圧縮気体の作用によってパルプ状にフィブリル化可能な分繊性繊維の集合体、の中から選ばれる少なくとも1つの骨材とを、圧縮気体の作用によりノズルから気体中に噴出させて、前記ポリフッ化ビニリデン粉体を分散させるとともに、前記骨材から極細繊維及び/又はパルプ状物を発生させ、分散させる工程、分散したポリフッ化ビニリデン粉体と極細繊維及び/又はパルプ状物とを集積して、ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブを形成する工程、前記ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブ中のパルプ状物は融着又は圧着させないものの、極細繊維を融着又は圧着させるか、前記ポリフッ化ビニリデン粉体含有繊維ウエブに圧力を加えることによってパルプ状物のフィブリル化を促進させることにより、極細繊維及び/又はパルプ状物を固定する工程、とを備えている、厚さが30μm以下で、空隙率が50%以上、80%以下である、リチウムイオンポリマー電池用固体電解質用支持体の製造方法。
- 前記パルプ状物を構成する樹脂成分が合成樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の固体電解質用支持体の製造方法。
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