JP4180228B2 - 脂肪組織由来の間質細胞に関する多様な中胚葉系統分化能およびその使用 - Google Patents
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Description
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、1999年8月19日に提出された米国仮出願第60/149,849号の利益を主張する。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、間質細胞を、脂肪組織から、骨格筋タイプと平滑筋タイプの両者の造血支持間質細胞および筋細胞に分化させる方法および組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】
ヒト発達における新生児の期間は、多様な分化経路に従って発生する潜在的能力を有する「幹」細胞が存在することを特徴とする。これらの細胞の最終的な分化は、器官形成と組織構成とを調整するサイトカインおよびホルモンキューによって決定される。ネズミ胎児性幹細胞が単離され、in vitroおよびinvivoで広範囲に研究されている。in vitroで外因性刺激を利用して、研究者らは、多様な系統経路に沿ったES細胞分化を誘導した。この例としては、ニューロン、B系統リンパ、および脂肪細胞が挙げられる(Dani et al. (1997) J. cell sci.110:1279、Remoncourt et al. (1998) Mech. Dev. 79:185、O’Shea KS (1999) Anat. Rec. 257:32)。遺伝子特異的ヌルマウスまたは「ノックアウト」マウスを作成するための同種組換え技術により、in vitroで、ES細胞に操作がなされてきた(Johnson RS (1989) Science 245:1234)。特定の遺伝子が欠如したES細胞クローンをいったん単離したら、それらを、受精したネズミ受精卵に移植する。この単離されたES細胞の子孫は、対等に、任意の且つ全てのネズミ組織に発育することができる。
【0004】
幹細胞は、次の基準を満たさなければならない。(1)クローン性幹細胞集団の自己再生する能力、(2)in vitroで、クローン性幹細胞集団の、新しい最終的に分化した細胞型を作成する能力、および(3)それ自身の生来の細胞が枯渇した動物に移植されたとき、存在しない最終的に分化した細胞集団を補充する能力。
【0005】
多能性幹細胞は、成体の組織中に存在する。「幹細胞」の最も特徴的な例は、骨髄および末梢血から単離される造血前駆細胞である。Trentin, Till and McCulloch(McCulloch et al. (1996) Proc. Can. Cancer Conf. 6:356-366、Curry et al. (1967) J. Exp. Med. 125:703-720)による精液研究では、致命的に照射を受けたマウスを試験した。治療を行わなければ、これらの動物は、循環血球を補充することができないため死亡したが、同質遺伝的供与動物から骨髄細胞を移植すると、宿主動物が救助される。供与体細胞は、循環血球の全てを再建するのに必要であった。限定された数の未分化造血幹細胞を与えると、宿主細胞における8種以上の異なる各血球系統を再生できることが、多量の的確な研究で証明された。この研究は、ヒトにおける癌および先天的な代謝障害を治療するための広く受け入れられた治療方法である骨髄移植の基礎を提供した。このように、造血幹細胞は生涯を通して正常なヒト骨髄に存在したままであり、新生児期に限定されない。
【0006】
最近、1つの供与体細胞から生物全体が発生したことは、この仮説と一致する。「Dolly」実験は、ヒツジ乳腺から単離された細胞は、成熟したヒツジに成長することができることを示した(Pennisi & Williams (1997) Science 275:145-1416)。同様のネズミの研究で、卵巣の黄体由来の細胞は、成熟マウスに成長することができた(Pennisi (1998) Science 281:495)。以上の研究から、任意の且つ全ての細胞型に分化できる能力を有する幹細胞は、成体生物にも存在することが示唆される。このように、「胎児の」幹細胞は、生涯を通して保持される可能性がある。
【0007】
胎児起源の細胞系を使用したin vitro実験で、中胚葉幹細胞が存在することがわかった。1970年代末期のTaylorらの研究で、C3H10T1/2細胞または3T3細胞等のネズミ胎児線維芽細胞は、1〜10μMの5'アザシタジン(5'azacytadine)に曝露した後、多様な中胚葉系統経路に沿って分化することが証明された(Constantinides et al.(1977) Nature 267: 364、Jones & Taylor (1980) Cell 20:85)。2〜4週以内に、単離されたクローンは、脂肪細胞、単球、軟骨細胞または破骨細胞分化と一致する形態学的特徴を示した。生化学データから、これらの各系統を同定するためのさらなる裏づけが得られた。この結果から、骨格筋分化に関する主要調節転写因子であるMyoDを同定するための基礎が得られた(Lassar (1986) Cell 47:649)。
【0008】
成体骨髄微環境は、これらの推測に基づく中胚葉幹細胞の潜在的供給源である。成体骨髄から単離される細胞は、間質細胞、間質幹細胞、間充織幹細胞(MSC)、間充織線維芽細胞、網状内皮細胞、およびウエスタン−バニトン(Western-Baniton)細胞など、様々な名前で呼ばれる(Gimble et al.(1996) Bone 19: 421-428)。in vitro研究で、これらの細胞は多様な中胚葉系統経路および間充織系統経路に沿って分化できることが決定された。この例として、脂肪細胞(Gimble et al.(1990) Eur. J. Immunol 20:379-386、Pittenger et al. (1999) Science 284: 143-147、Nuttall et al. (1998) JBMR 13: 371-382、Park et al. (1999) Bone 24: 549-554)、軟骨細胞(軟骨形成細胞)(Dennis et al. (1999) JBMR 14:700-709)、造血支持細胞(Gimble et al.(1990) Eur. J. Immunol 20:379-386)、筋細胞(骨格筋)(Phinney (1999) J. Cell. Biochem. 72: 570-585)、筋細胞(平滑筋)(Remy-Martin et al. (1999) Exp. Hematol. 27: 1782-1795)、および骨芽細胞(骨形成細胞)(Beresford (1989) Clin Orthop Res 240: 270-280、Owen (1988) J. Cell. Sci.10: 63-76、Dorheim et al. (1992) Bone 13:81-88、Kuznetsov etal. (1997) JBMR 12: 1335-1347)などが挙げられるが、その限りではない。骨髄は、骨、軟骨、筋肉、脂肪組織、および他の間充織由来器官に関する間質幹細胞の供給源であるとして提唱されている。これらの細胞を使用する際の主な制限は、骨髄生検手技に伴う困難および危険性、ならびに現在の回収方法に随伴するメモリーB細胞および造血幹細胞の損失である。
【0009】
【解決する課題】
骨髄多能性幹細胞の使用に代わる別の生育可能な代替品は脂肪組織である。脂肪間質細胞は、多様な間充織系統に沿って分化できる、容易に入手でき且つ豊富な間質細胞の供給源を提供する。脂肪由来間質細胞を、たとえば、造血間質細胞、骨格筋の筋細胞、平滑筋筋細胞を含む、様々な細胞型に一貫して且つ定量的に分化させる方法および組成物が必要である。
【0010】
[発明の概要]
脂肪細胞を分化させる組成物および方法を提供する。一般に、本発明は、皮下組織、乳房組織、性腺組織、または網組織由来の間質細胞を、一貫して且つ定量的に、造血支持間質細胞、骨格筋細胞、平滑筋筋細胞(筋線維芽細胞)といった完全に分化した且つ機能的な中胚葉細胞系統に誘導するための方法および組成物を提供する。
【0011】
本組成物は、プレーティングした間質細胞のマイトジェンおよび分化誘導剤の役割を果たし、所望の細胞型の産生をもたらす様々な化学成分を含む。マイトジェンおよび分化誘導剤としては、インターロイキン類、flt3リガンド、幹細胞因子、マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)リガンド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、1,25ジヒドロキシビタミンD3、2−メルカプトエタノール、グルタミン、5'−アザシタジン、アンホテリシン、トランスフォーミング成長因子β、線維芽細胞成長因子などが挙げられるが、その限りではない。
【0012】
本発明は、これらの組成物が脂肪組織由来の間質細胞の分化を指令する能力および機能を決定する方法、調節遺伝子を担持するウイルスベクターを間質細胞に形質導入する方法、調節遺伝子を担持するプラスミドベクターを間質細胞に形質転換する方法、これらの遺伝子によりコードされる機能的タンパク質を追跡および検出する方法、ならびにこれらの細胞を生きている生物に再導入するための生体力学的担体を開発する方法を提供する。
【0013】
本発明は、再生不良性貧血、筋ジストロフィー、放射線中毒、ニューロパシー性筋退行変性、泌尿生殖器奇形、および消化器奇形を含むがその限りではない疾病状態の広域スペクトルと関連した化合物およびタンパク質を得るための、薬剤開発に有用な方法および組成物も提供する。
【0014】
[発明の詳細な説明]
本発明は、脂肪組織由来の間質細胞を、(a)造血支持間質細胞、(b)骨格筋細胞、(c)平滑筋の筋細胞(筋線維芽細胞)に分化させ、培養する方法および組成物を提供する。
【0015】
脂肪組織は、多能性間質細胞の供給源としての骨髄の代替物となりうる可能性を提供する。脂肪組織は容易に入手でき、且つ多くの個体に豊富に存在する。合衆国では成人の50%より多くが、身長に基づいて推奨されるBMIを超え、肥満は流行伝染病のような勢いの状況である。脂肪細胞は、外来患者ベースで、脂肪吸引によって回収することができる。この方法は、患者の大多数に受け入れられる美容効果がある比較的非侵襲的な方法である。脂肪細胞が補充可能な細胞集団であることには、十分な証拠書類がある。脂肪吸引もしくは他の方法によって外科的に除去した後でも、時が経つと個体に脂肪細胞が再び現れることは、よくみられることである。このことから、脂肪組織が自己再生できる間質幹細胞を含むことが示唆される。病理学的証拠から、脂肪組織由来の間質細胞は多様な間充織系統に沿って分化できることが示唆される。最もよくみられる軟組織腫瘍である脂肪肉腫は、脂肪細胞様細胞から発生する。混合起源の軟組織腫瘍は比較的よくみられる。これらの軟組織腫瘍は、脂肪組織、筋(平滑筋または骨格筋)、軟骨、および/または骨の要素を含む可能性がある。骨髄内の骨形成細胞が脂肪細胞に分化できるのととちょうど同じように、髄外脂肪細胞は、骨を形成することができる。発作性骨異形成として知られる珍しい病気に罹った患者では、原因不明で、皮下脂肪細胞が骨を形成する(Kaplan(1996)Arch. dermatol.132:815-818)。
【0016】
成人の髄外脂肪組織由来の間質細胞は、患者にとって最小限の危険で日常的に収穫することができる間質幹細胞供給源の代表である。髄外脂肪組織由来の間質細胞は、ex vivoで増殖させ、独特の中胚葉系経路に沿って分化させ、遺伝子操作し、自己移植または同種異系移植のいずれかとして個体に再導入することができる。本発明は、中胚葉系に沿った成人の髄外脂肪組織間質細胞の単離、特性決定、および分化の方法および組成物の例を提供し、多数の病気および疾患を治療するための使用について略述する。
【0017】
本発明の方法によって産生される細胞は、ヒトの疾患を治療し、外傷的損傷を修復するための組織エンジニアリング生成物を調査、移植、および開発するために、完全に分化し且つ機能的な細胞の供給源を提供するのに有用である。従って、1つの態様において、本発明は、(a)造血成長因子の間質発現を誘導することができるか、あるいは外因性成長因子を直接加えることができる存在する因子との共培養で、間質細胞および造血細胞の成長を維持することができる培地と、(b)間質細胞の成長および機能的骨格筋細胞への分化を維持することができ、且つ骨格筋細胞を増殖させることができる培地と、(c)間質細胞の成長および機能的平滑筋筋細胞または筋線維芽細胞への分化を維持することができ、且つ平滑筋の筋細胞または筋線維芽細胞を増殖させることができる培地とを含む組成物中で、前述の細胞を培養することを含む脂肪組織由来の間質細胞を3つの機能的に異なる中胚葉細胞系(造血支持細胞、筋細胞(骨格)、および筋細胞(平滑筋の筋線維芽細胞))の1つに分化させる方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、脂肪組織由来の間質細胞を、3つの異なる中胚葉由来の系統のそれぞれに分化させるための組成物を提供する。このような組成物は、下記のものを含む。(a)脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、および造血成長因子または外因性造血成長因子の間質細胞発現を誘導することができる成長因子または薬剤もしくはそれ自身は非ペプチドの因子。(b)脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、ならびに前述の間質細胞を骨格筋の筋細胞に分化させるのに十分な量の5'アザシタジンまたはアンホテリシンあるいはそれらの両方、あるいは他の薬剤。(c)脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、ならびに前述の間質細胞を平滑筋筋細胞または筋線維芽細胞に分化させるのに十分な量のトランスフォーミング成長因子βまたは他のペプチド成長因子。
【0019】
本方法は、各系に適した下記のものからなる培地に、約1,000〜25,000細胞/cm2の密度でプレーティングされ、単離された脂肪組織由来の間質細胞のインキュベーションを含む。(a)造血維持間質細胞では、グルコース、インターロイキン1,3,6,7,12、幹細胞因子、flt3リガンド、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球−単球コロニー刺激因子、トロンボポイエチン、エリスロポイエチン、オステオプロテゲリンリガンド、1、25ジヒドロキシビタミンD3、および2−メルカプトエタノールを含むがその限りではない造血誘導性サイトカイン類。この培地は、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、およびオステオプロテゲリンリガンドを含んでもよい。細胞を、33℃(骨髄系細胞の場合)もしくは37℃(B系統リンパ系細胞の場合)の温度で維持する。(b)骨格筋細胞では、グルコース、0%〜20%の濃度のウシ胎児血清の操作による限られた曝露期間の5'アザシタジンまたはアンホテリシン。この培地は、構成物質(たとえば、ペニシリンまたはストレプトマイシン)、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、および2−メルカプトエタノール(この限りではない)も含んでもよい。(c)平滑筋筋細胞/筋線維芽細胞では、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチンまたは他の基質もしくは三次元マトリックスの存在下で、グルコースおよび10%ウシ胎児血清。
【0020】
「脂肪間質細胞」は、脂肪細胞から生じる間質細胞を指す。「脂肪(adipose)」は、あらゆる脂肪組織(fat tissue)を意味する。脂肪細胞は、皮下、網/内臓、乳房、性腺、または他の脂肪組織部位に由来する、白色脂肪組織であっても褐色脂肪組織であってもよい。脂肪は、皮下白色脂肪組織であることが好ましい。このような細胞は、一時細胞培養または不滅化細胞系を含んでもよい。脂肪組織は、脂肪組織は有する任意の生物に由来してもよい。好ましくは脂肪組織は哺乳類であり、最も好ましくは脂肪組織はヒトである。脂肪組織の便利な供給源は脂肪吸引術によるが、脂肪組織の供給源または脂肪組織の単離方法は、本発明に重要ではない。対象者への自己移植に間質細胞が望ましい場合、その対象者から脂肪組織を単離する。
【0021】
「造血支持間質細胞」は、骨髄、脾臓、末梢血、または臍帯血に由来する造血幹細胞(CD34+またはCD34−のいずれか)としても知られる、造血前駆細胞の増殖および成熟を支持することができる間質細胞を指す。造血支持間質細胞を造血前駆細胞と共培養すると、骨髄系(マクロファージ、好中球、破骨細胞)、赤血球系(赤血球)、リンパ系(Bリンパ系、Tリンパ系)、および血小板(巨核球)を含むがその限りではない造血性血球の接着集団および非接着集団、ならびに好酸球、好塩基球、肥満細胞および他の循環血球型が産生される。造血細胞の成長および分化は、特徴的な血球系統特異的タンパク質(たとえば、B系統リンパ球の場合CD45、T系統リンパ球の場合T細胞受容体、マクロファージの場合Mac−I/LFA11、破骨細胞の場合、酒石酸耐性酸ホスファターゼ)の表面発現を評価するアッセイを含むがその限りではないアッセイによって決定される。造血幹細胞の増殖は、in vitroでは、新たな造血支持幹細胞層上にプレーティングしたとき、共培養由来の造血細胞が多様な血球系統に増殖し続けることができる証拠によって評価され、in vivoでは、共培養由来の造血細胞が骨髄を再生させ、致命的な照射を受けてそれ自身の血球が不足している動物腫宿主を救助することができる能力に基づいて評価される。
【0022】
「筋細胞(骨格)」は、転写因子myoDおよびミオゲニン、骨格アクチン、ミオシン軽鎖キナーゼ、およびミオシン重鎖キナーゼを含むがその限りではない骨格筋の特徴的な生化学的マーカー、多核複合体および筋節を含むがその限りではない骨格筋の特徴的な形態学的マーカーを発現することができ、且つ自発的にもしくはアセチルコリン等の外因性因子に応答して収縮機能を示すことができる細胞を指す。
【0023】
「筋細胞(平滑筋、筋線維芽細胞)」は、α平滑筋アクチン、フィブロネクチン、およびβ−1インテグリンを含むがその限りではない平滑筋の特徴的な生化学的マーカー、培養における張線維の形成を含むがその限りではない平滑筋の特徴的な形態学的マーカーを発現することができ、且つin vitroでコラーゲン格子に対する引張り応力の発生を含むがその限りではない特徴的な平滑筋機能を示すことができる細胞を指す。
【0024】
「造血成長因子」は、サイトカイン類、ホルモン類および他のタンパク質薬剤を指す。これらは、共培養系において間質細胞から直接誘導することも可能であり、研究者が決定した濃度で共培養に加えてもよく、組換えの供給源もしくは天然供給源から開発された富化タンパク質または精製タンパク質として得られる。この例としては、下記のサイトカイン類およびホルモン類が挙げられるが、その限りではない。B系統リンパ球に対してはインターロイキン7、全ての造血系に対しては幹細胞因子、マクロファージおよび破骨細胞に対してはM−CSF、破骨細胞に対してはオステオプロテゲリンリガンド、赤血球に対してはエリスロポイエチン、血小板および巨核球に対してはトロンボポイエイチン、血小板、巨核球およびB系統リンパ球に対してはインターロイキン6である。処理の最適濃度および長さは、専門家が、核血球系統の分化に関する既知のアッセイを用いて決定することができる。
【0025】
「非ペプチド成長因子」は、ステロイド類、レチノイド類および血球系統の分化を誘導することができる他の化学化合物または薬剤を指す。濃度は変化してもよいことが、一般に認められている。さらに、化合物または薬剤は、分化を刺激するのに十分な量で加えられることが、一般に認められている。しかし、一般に、上記化合物または薬剤は、1,25ジヒドロキシビタミンD3では約1nM〜約100nM、デキサメタゾンでは1nM〜約100nM、ヒドロコルチゾンでは約1nM〜約100nM、レチノイン酸では約1nM〜約100nM、9−シスレチノイン酸では約1nM〜約100nMの範囲の濃度、あるいは、専門家により決定され、最適化される濃度で使用される。
【0026】
分化を誘導するのに十分な5'アザシタジンまたはアンホテリシンあるいはそれらの両方の量は、間質細胞(たとえば、NIH−3T3、C3H 10T1/2、ヒト脂肪組織由来の間質細胞等々)の成長を維持することができる培地で供給されるとき、約1〜6週にわたって、前述の間質細胞を骨格筋筋芽細胞および筋細胞に分化させる5'アザシタジンおよびアンホテリシンの濃度を指す。5'アザシタジンの一般的な使用濃度は、約1μM〜約30μMの範囲である。アンホテリシンの一般的な使用濃度は、約10ng/ml〜約100ng/mlの範囲である。最適濃度および曝露の長さは、専門家が骨格筋筋芽細胞の分化に関する既知のアッセイを用いて決定することができる。このようなアッセイとしては、骨格筋関連の形態学的特徴または生化学的特徴(たとえば、多核筋管の形成、ミオシン重鎖の発現、タンパク質レベルもしくはRNAレベルでのmyoDの発現)を評価するアッセイが挙げられるが、その限りではない。
【0027】
「分化を誘導するのに十分なトランスフォーミング成長因子βもしくは他のペプチド成長因子の量」は、間質細胞(たとえば、NIH−3T3、C3H10T1/2、ヒト脂肪組織由来の間質細胞等々)の成長を維持することができる培地に供給されるとき、1日〜6週にわたって、前述の間質細胞を平滑筋筋細胞または筋線維芽細胞に分化させる、トランスフォーミング成長因子βもしくは他のペプチド成長因子の濃度を指す。トランスフォーミング成長因子βの一般的な使用濃度は、約20ng/ml〜約40ng/mlの範囲である。線維芽細胞成長因子の一般的な使用濃度は、約20ng/ml〜約40ng/mlの範囲である。最適濃度および曝露の長さは、専門家が、平滑筋の筋芽細胞の分化に関する既知のアッセイを用いて決定することができる。このようなアッセイとしては、平滑筋関連の形態学的特徴または生化学的特徴(たとえば、α平滑筋アクチンおよびフィブロネクチンの発現、トロンビンまたはリゾホスファチジン酸の存在下でコラーゲン格子内に置いた時の収縮力の発生)を評価するアッセイが挙げられるが、その限りではない。
【0028】
組織培養において間質細胞を支持することができる任意の培地を使用することができる。線維芽細胞の成長を支持する培地配合物としては、Dulbeccoの改良型Eagle培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM))、α改良最小必須培地(alpha modified Minimal Essential Medium(αMEM))、およびRoswell Park Memorial Institute Media 1640(RPMI Media 1640)等々が挙げられるが、その限りではない。間質細胞および造血細胞の成長を維持するために、一般に、0〜20%のウシ胎児血清(FBS)を上記培地に加える。しかし、間質細胞および造血細胞の成長に必要な成長因子、サイトカイン類、およびホルモン類が同定され、成長培地に適当な濃度で提供されれば、規定された培地を使用することも可能である。
【0029】
本発明の方法で有用な培地は、抗生物質、造血幹細胞にとって分裂促進的である化合物、造血幹細胞にとって分化誘導的である化合物、および/または間質細胞にとって分裂促進的または分化誘導的である化合物を含むがその限りではない関心のある1つまたは複数の化合物を含んでもよい。本発明で有用な抗生物質の例としては、ペニシリンとストレプトマイシンが挙げられるが、その限りではない。ペニシリンは、一般に、約10単位/ml〜約200単位/mlで使用される。ストレプトマイシンは、一般に10μg/ml〜200μg/mlで使用される。造血分裂促進因子の例としては、幹細胞因子およびインターロイキン3が挙げられるがその限りではなく、造血分化誘導因子としては、1,25ジヒドロキシビタミンD3、インターロイキン7、およびオステオプロテゲリンなどが挙げられるがその限りではなく、間質細胞マイトジェンとしては、トランスフォーミング成長因子βなどが挙げられるがその限りではなく、間質細胞分化因子としては、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トランスフォーミング成長因子β等々が挙げられるがその限りではない。
【0030】
「脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、ならびに造血成長因子もしくは外因性造血因子の間質細胞発現を誘導することができる成長因子および薬剤あるいはそれ自身は非ペプチドの因子」は、造血細胞の増殖および成熟をin vitroおよびin vivoで増進する、ペプチド組成と化学的組成の両者の成長因子を指す。この例としては、インターロイキン1、インターロイキン3、インターロイキン6、インターロイキン7、インターロイキン11、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子、flt3リガンド、トロンボポイエチン、エリスロポイエチン、オステオプロテゲリンリガンド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、および1,25ジヒドロキシビタミンD3などが挙げられるが、その限りではない。これらの因子の濃度および曝露の長さは、専門家により、決定され、最適化される。インターロイキン類、M−CSF、GM−CSF、flt3リガンド、および幹細胞因子は、約5pg/ml〜約1ng/mlで使用される。トロンボポイエチンは、一般に、約5pg/ml〜約1ng/mlの濃度範囲で使用される。エリスロポイエチンは、約5単位/ml〜約1000単位/mlで使用される。デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、および1,25ジヒドロキシビタミンD3は、約1nM〜約100nMの濃度で使用される。最適濃度および処理時間は、造血幹細胞と脂肪組織由来幹細胞との共培養において、特定の循環血球系統の産生をモニタリングすることによって決定される。これらの因子は、分化に十分な量で加えられることが一般に認められている。このようなアッセイおよび指標としては、細胞の形態学的特徴または生化学的特徴、たとえば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、および/または免疫蛍光法による特定の血球系統に特有の細胞表面タンパク質の発現、細胞集団における特定のmRNAの発現、共培養システムによる造血幹細胞産生のin vivo評価などが挙げられるが、その限りではない。
【0031】
「脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、ならびに上記細胞を骨格筋の筋細胞に分化させるのに十分なアザシタジンまたはアンホテリシンあるいはそれらの両方、あるいは他の薬剤の量」は、骨格筋特異的遺伝子マーカーの発現およびin vitroでの骨格筋機能を促進するのに使用される分化誘導剤を指す。この培地はウシ胎児血清、抗生物質、Lグルタミン、ピルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、および5'アザシタジンまたはアンホテリシンを含む。ウシ胎児血清は、0.5%〜20%の範囲の濃度で使用することができる。一般に使用される抗生物質は、ペニシリンまたはストレプトマイシンである。ペニシリンは、一般に、約10単位〜約200単位/mlの範囲の濃度で使用される。ストレプトマイシンは、一般に、約10μg/ml〜約200μg/mlの範囲の濃度で使用される。Lグルタミンおよびピルビン酸ナトリウムは、一般に、0.5mM〜約2mMで使用される。2−メルカプトエタノールは、一般に、約10μM〜約100μMで使用される。5'アザシタジンは、一般に、約1μM〜約30μMで使用される。アンホテリシンは、一般に約10ng/ml〜約100ng/mlで使用される。これらの因子の濃度および曝露時間の長さは、専門家により、決定され、最適化される。最適濃度および処理時間は、骨格筋に特有の形態学的マーカーおよび生化学的マーカーをモニタリングすることにより決定される。この例としては、培養における多核筋管の産生および筋特異的遺伝子およびタンパク質の発現、たとえば、筋転写因子(myoD、ミオゲニン)、ミオシン軽鎖キナーゼ、ミオシン重鎖キナーゼ、および骨格筋アクチンなどが挙げられるが、その限りではない。
【0032】
「脂肪組織由来の間質細胞、間質細胞の成長を維持することができる培地、および上記間質細胞を平滑筋の筋細胞または筋線維芽細胞に分化させるのに十分なトランスフォーミング成長因子βまたは他のペプチド成長因子の量」は、遺伝子マーカーもしくはタンパク質に関連した平滑筋の発現およびin vitroでの平滑筋機能を促進するために使用される分化誘導条件を指す。因子の濃度および曝露時間の長さは、専門家により、決定され、最適化される。最適濃度および処理時間は、平滑筋に特有の形態学的マーカーおよび生化学的マーカーをモニタリングすることにより決定される。この例としては、I型コラーゲン格子内に置いた時の細胞による引張力の発生ならびに平滑筋アクチン、フィブロネクチン、およびラミニン等の平滑筋特異的遺伝子およびタンパク質の発現などが挙げられるが、その限りではない。
【0033】
脂肪組織由来の間質細胞は、最終的な分化した細胞が導入される対象者の脂肪組織から単離されることが好ましい。しかし、間質細胞は、対象者と同じ種または異なる種のいずれの生物から単離してもよい。脂肪組織を有するいずれの生物も、潜在的な候補者である可能性がある。好ましくは、この生物は哺乳類であり、最も好ましくは、この生物はヒトである。
【0034】
プラスミド、ウイルスベクター法または代替ベクター法を使用して、脂肪組織由来の間質細胞に、関心のある核酸を安定にまたは一時的にトランスフェクションもしくは形質導入してもよい。関心のある核酸としては、(1)造血細胞系列の成長、分化、成熟または増殖を増進する遺伝子産物、たとえば、破骨細胞発生を誘導するオステオプロテゲリンリガンド、B系統リンパ球発生を誘導するインターロイキン7、赤血球発生を誘導するエリスロポイエチン、および血小板発生を誘導するトロンボポイエチン等、(2)骨格筋の分化を増進する遺伝子産物、たとえば、myoDおよびミオゲニン、筋管形成および骨格筋特異的遺伝子の発現を促進する転写因子等、(3)平滑筋細胞の成長、分化および成熟を増進する遺伝子産物、たとえば、平滑筋増殖および細胞外マトリックス産生を誘導するトランスフォーミング成長因子β等をコードするものを含むが、その限りではない。
【0035】
血球を、単独でまたは間質成分と組み合わせて、貧血もしくは血球産生不足に罹り易い対象者に導入することが可能である。この例としては、高用量化学療法を受けている患者、骨髄移植を受けている患者、再生不良性貧血患者、鎌状赤血球性貧血患者、他の血液疾患などが挙げられる。
【0036】
幹細胞の注入で治療することが可能な他の障害としては、正常な血球産生および成熟の不全または機能障害に起因する疾患(たとえば、再生不良性貧血および低増殖性幹細胞障害)、造血器官における腫瘍性悪性疾患(たとえば、白血病およびリンパ種)、非造血起源の広域スペクトル悪性充実性腫瘍、自己免疫病、および遺伝病などが挙げられるが、その限りではない。このような障害としては、薬剤、放射線、または感染に起因する再生不良性貧血、汎血球減少症、顆粒球減少症、赤血球形成不全、ブラックファンダイアモンド(Blackfan−Diamond)症候群、特発性疾患を含む、正常な血球産生および成熟の不全または機能障害、高増殖性幹細胞障害に起因する疾患急性リンパ芽球性(リンパ球性)白血病、慢性リンパ急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性悪性骨髄硬化症、多発性骨髄腫、真性赤血球増加症、原因不明骨髄様化生、ヴァルデンストレーム(Waldenstrom’s)マクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む造血性悪性腫瘍、悪性黒色腫、胃癌、卵巣癌、乳癌、小細胞胚癌、網膜芽腫、精巣癌、グリア芽細胞腫、横紋筋肉腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、リンパ腫を含む悪性充実性腫瘍患者における免疫抑制、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、慢性肝炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患、貧血、家族性形成不全、遺伝性(先天性)疾患、ファンコニー症候群、ブルーム症候群、赤芽球ろう(PRCA)、先天性角化不全症、ブラックファン−ダイアモンド症候群、先天性赤血球生成不全症候群I〜IV、チュワッチマン(Chwachmann)ダイアモンド症候群、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損症、ホルムアミノトランスフェラーゼ欠損症、レッシュナイハン症候群、先天性球状赤血球症、先天性楕円赤血球症、先天性ストマトサイト増加症、先天性Rh陰性疾患、発作性夜間血色素尿症、G6PD(グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ)変種1、2、3、ピルビン酸キナーゼ欠損症、先天性エロトロポイエチン感受性、先天性エロトロポイエチン欠損症、鎌状赤血球症および鎌状赤血球形成傾向、αサラセミア、βサラセミア、γサラセミア、後血色素血症、先天性免疫障害、重度複合免疫欠損症(SCID)、不全リンパ球症候群、イオノフォア応答性複合免疫欠損症、キャッピング異常を伴う複合免疫欠損症、ヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症、顆粒球アクチン欠損症、乳児顆粒球減少症、ゴシェ病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、コストマン症候群、網状異形成、先天性白血球機能不全症候群、ならびに大理石骨病、骨髄硬化症、後天性溶血性貧血、後天性免疫不全症、原発性免疫不全症または続発性免疫不全症を引き起こす感染症、細菌感染症(たとえば、ブルセラ症、リステリア症、結核、癩)、寄生虫感染症(たとえば、マラリア、リーシュマニア症)、真菌感染症、リンパ球セットの不均衡および加齢による免疫機能障害を含む障害、食細胞障害、コストマン顆粒球減少症、チェディアック東症候群、好中球アクチン欠損症、好中球膜GP−180欠損症、代謝性蓄積症、ムコ多糖症、免疫機構を含む種々の障害、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、α1−抗トリプシン欠損症等の他の障害が挙げられるが、その限りではない。
【0037】
脂肪組織由来の間質細胞のin vitro操作により生成される骨格筋細胞を、単独でまたは組成基質と組み合わせて導入し、代謝性疾患(筋ジストロフィー、筋炎)、外傷、および非活動性萎縮に続発する筋欠損症を修復することができる。このような組成物としては、コラーゲン基質、ポリ乳酸ポリマー、ポリグリコール酸ポリマー、アルギン酸エステル、または他の固体支持体などが挙げられるが、その限りではない。
【0038】
脂肪組織由来の間質細胞のin vitro操作により生成される平滑筋細胞を、単独でまたは組成基質と組み合わせて導入し、平滑筋欠損症を修復することができる。このような欠損症としては、新生児における遺伝的奇形による膀胱壁異常あるいは年長者における外傷もしくは腫瘍侵襲に続発する膀胱壁異常、新生児における遺伝的奇形による消化管異常あるいは年長者における外傷もしくは腫瘍侵襲に続発する膀胱壁異常、新生児における遺伝的奇形による生殖管(膣)異常、外傷もしくは腫瘍侵襲に続発する生殖管(膣)異常、または性転換手術における組織再建術のため、または移植目的の機能的大静脈の開発のため、などが挙げられるが、その限りではない。組成基質としては、ブタ腸粘膜下組織、ポリ乳酸ポリマー、ポリグリコール酸ポリマー、アルギン酸エステル、または他の固体支持体等のコラーゲン基質が挙げられるが、その限りではない。
【0039】
本発明の別の目的は、脂肪組織由来の間質細胞が、造血支持間質細胞、骨格筋の筋細胞、または平滑筋筋細胞のいずれかに分化するのを増進または阻害する化合物の同定方法および研究方法を提供することである。(a)造血支持間質細胞機能の分化を増進する化合物は、循環血球の産生減少を特徴とする血液疾患の治療において価値がある可能性があり、高用量化学療法後の患者の回復を改善することができ、(b)骨格筋の筋細胞の分化を増進する化合物は、遺伝的欠損または外傷に続発する筋骨格疾患の治療において価値がある可能性があり、(c)平滑筋幹細胞の分化を増進する化合物は、膀胱(膀胱壁)、消化管(結腸、小腸)、および生殖系(膣)の平滑筋欠損を含む、平滑筋欠損の治療において価値がある可能性がある。反対に、(a)造血支持間質細胞機能の分化を阻害する化合物は、真性赤血球増加症等の、循環血球の産生過剰を特徴とする血液疾患の治療において価値がある可能性があり、(b)骨格筋の分化を阻害する化合物は、横紋筋肉腫等の、骨格筋起源の軟組織腫瘍の治療において価値がある可能性があり、(c)平滑筋幹の分化を阻害する化合物は、平滑筋肉腫等の、平滑筋起源の軟組織腫瘍の治療において価値がある可能性がある。
【0040】
脂肪組織由来の間質細胞の、造血支持間質細胞、骨格筋の筋細胞、または平滑筋筋細胞のいずれかへの分化に影響を及ぼす能力について、化合物を試験することができる。試験すべき化合物と相溶性の適当な媒体は当業者に周知であり、且つRemington's Pharmaceutical Scienceの最新版に掲載されており、その内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0041】
【実施例】
本発明の特徴および利点は、本発明を限定するものではない以下の実施例を参照することによってさらに明らかに理解されるであろう。
【0042】
[実施例1]
[in vitroでの、脂肪組織由来の間質細胞による細胞表面接着分子および造血サイトカインの発現]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、30,000細胞/cm2の密度で、チャンバスライド、6ウェル組織培養プレート、またはT25cm2フラスコ内にプレーティングする。10%のウシ胎児血清、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、およびpH7.2の7.5mMのHEPESを加えたDMEM/Ham’s F−10中で8日間、細胞を培養し続ける。間質細胞により発現された表面タンパク質を、免疫組織化またはフローサイトメトリーあるいはそれらの両方に基づいた免疫学的技術により決定する。免疫組織化学的分析の場合、95%エタノール/5%氷酢酸を使用してチャンバスライドを固定し、ヒト細胞表面タンパク質検出用のネズミモノクローナル抗体と共にインキュベートする。抗マウス二次抗体と共役した酵素と共にインキュベートした後、タンパク質発現の証拠を組織化学反応によって検出する。あるいは、フラスコの細胞をトリプシン/EDTA消化により回収し、特異的ヒト表面タンパク質検出用の蛍光結合ネズミモノクローナル抗体と共にインキュベートする。フローサイトメトリーにより、細胞を蛍光強度について試験する。これらのアッセイの結果を表1にまとめる。以上の研究から、脂肪組織由来の間質細胞は、骨髄間質細胞による造血支持機能に関連し且つ不可欠である表面タンパク質を発現することがわかり(Miyake et al. (1990) J Exp Med 171:477-488; Miyake et al. (1991) J Exp Med 173:599-607; Miyake et al. (1991) J Cell Biol 114:557-565, 1991; Miyake et al. (1991) J Cell Biol 114: 557-565, 1991; Jacobsen et al. (1992) J Exp Med 176: 927-935; Kincade et al. (1993) Curr Top Microbiol Immunol 184:215-222; Hayashi et al. (2000) Leuk Lymphoma 38: 265-270)、この例として、とりわけ、VCAM1、CD44、インテグリンβ1、インテグリンα4,5(VLA−4、VLA−5)、およびCD9が挙げられる。
【0043】
脂肪組織由来の間質細胞のサイトカイン発現プロフィールは、骨髄間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤であるリポ多糖類(LPS)またはエンドトキシンで誘導した後、決定される(Gimbel et al. (1989) Blood 74: 303-311)。2%のウシ胎児血清、100μg/mlのストレプトマイシン、100単位/mlのペニシリン、およびpH7.2の7.5mMのHEPESを加えたDMEM培地中で、細胞の集密培養および静止培養を100ng/mlのLPSに0〜24時間曝露する。各培養から条件培地を回収し、−80℃で保存する一方で、Chomczynski and Sacchiの方法(Anal. Biochem. (1987)162: 156-159参照)により、総RNAを回収する。表2に示したサイトカイン類に関するmRNAを、下表に記載のオリゴヌクレオチドプライマーセットを使用したポリメラーゼ連鎖反応で検出する。反応の代表的なセットを、図1に示す。下記のサイトカイン類は、酵素結合免疫検定法に基づいて、著明なLPS誘導可能な免疫反応性タンパク質の発現を示した。マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン6、インターロイキン7、インターロイキン8(IL−6、IL−7、IL−8)。脂肪組織由来の間質細胞によるサイトカイン類発現のプロフィールは、in vitroで、骨髄、リンパ、および破骨細胞の増殖および分化を支持することができる骨髄由来間質細胞のものと一致する(Pietrangeli et al. (1988) Eur. J. Immunol. 18:863-872、Gimble et al. (1989) Blood 74:303-311、Gimble et al. (1992) J. Cell Biochem 50: 73-82、 Kelly et al. (1998) Endocrinol. 2092-2101)。
【0044】
[実施例2]
[in vitroでの、脂肪組織由来の間質細胞層との骨髄造血共培養の確立]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、500〜20,000細胞/cm2の密度でプレーティングする。造血前駆細胞を共培養系に導入する前に、間質細胞を培養中で1〜3日間確立させる。下記のヒト組織の1つから、造血前駆細胞を単離する。骨髄、臍帯静脈/胎盤血、末梢血、脾臓。あるいは、ネズミ組織を使用する。無菌条件下で、6〜10週齢のマウスの骨髄腔をDMEM/10%FSCで洗い流すことにより、ネズミ骨髄細胞を回収する。無菌条件下で、細かい金属スクリーンを物理的に通過させることにより、ネズミ脾細胞を回収する。下記の3つの方法のうちの1つの方法を使用して、その間質成分の混合造血細胞集団を枯渇させる。第1の代替法として、確立された技術に従って、抗CD34抗原を使用した磁気免疫ビーズ精製により、血液試料からの造血幹細胞集団を富化させる。第2の代替法として、骨髄または他の血液試料を、無菌のG−10Sephadexまたはナイロンウールカラムを通過させて造血前駆細胞を溶離させ、間質細胞を保持することによって、造血細胞を富化させる。第3の代替法として、表面タンパク質特性に基づいたフローサイトメトリー選別により、造血細胞を富化させる。造血細胞を1度洗浄し、0.3%酢酸で赤血球を溶解し、トリパンブルー染色した後、血球計を使用して、有核細胞の数を算定する。好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞10〜100個、さらに好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞20〜30個、最も好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞25〜30個の比率で、造血細胞を液体共培養に導入する。5%のCO2中、DMEM(高濃度グルコース)、10〜100nMのヒドロコルチゾンまたは10%のウマ血清を加えた10%のウシ胎児血清、10〜200単位/mlのペニシリン、10〜200μgのストレプトマイシンからなる培地中で、33℃にて細胞を培養する。共培養中の培地の半分を3〜4日ごとに取り替える。血球計カウントまたはフローサイトメトリー、あるいはそれらの両方の方法で、培地中の非接着細胞の数を決定する。主要な造血細胞系統用の定型的な抗体マーカーを使用して、非接着細胞の特徴を示す表面抗原を実証する。例として、Mac−1、Thy1、Ig重鎖、Ter−81(赤血球系マーカー)などが挙げられるが、その限りではない。10週までの期間にわたって、非接着細胞集団の数および特徴を決定する。試験の終わりに、フローサイトメトリー法または免疫組織化学的方法で、接着細胞層の細胞組成を決定する。代替法として、半固体培地で造血試験を実施する。さらに2.1%メチルセルロースが存在する条件下で造血前駆細胞をプレーティングすること以外は、上述の通りに細胞を調製する。7〜14日後に、組織学的基準、形態学的基準および免疫学的基準を使用して、赤血球、マクロファージ、単球の存在について、コロニー形成を評価する。
【0045】
[実施例3]
[in vitroで、脂肪組織由来の間質細胞/造血前駆細胞共培養が、造血前駆細胞の増殖を維持する能力]
実施例1に記載の液体培養条件で確立された脂肪組織由来の間質細胞と造血前駆細胞の共培養を使用して、この系が、in vitroで造血前駆細胞の増殖を維持する能力を評価する。ヒト脂肪組織由来の間質細胞とネズミ造血前駆細胞を使用して、共培養を確立する。緑色蛍光タンパク質またはβガラクトシダーゼ等の追跡可能なタンパク質マーカーを発現するウイルスベクターを用いて、培養細胞を形質導入する。あるいは、固有の抗原またはその起源に起因する遺伝子マーカーの発現、たとえば間質細胞でのヒトタンパク質の発現、およびネズミ造血細胞でのトランスジェニック特異的マーカーまたは男性特異的マーカーの発現によって共培養細胞を同定する。確立された共培養を、トリプシン/EDTAとの限定されたインキュベーションによって収穫し、致命的照射を受けた免疫欠損マウスに注入する。動物を経時的に追跡する。9〜14日後、マウスを屠殺し、造血細胞島または脾コロニー形成細胞(CFU−S)の出現について、その脾臓を検査する。あるいはマウスを14日以上維持し、その循環血球数を、血液学的アッセイおよびフローサイトメトリーアッセイで決定する。間質細胞の特異的マーカーの存在および供与体造血細胞を、抗体試薬または固定された細胞上の特異的DNAマーカーを用いて、フローサイトメトリーまたは従来の病理学的/組織学的方法のいずれかで検出する。14日後に、共培養細胞が受容体においてCFU−Sを確立する能力または宿主において供与体血球の増殖および成熟を維持する能力あるいはそれらの両方の能力は、脂肪組織由来の間質細胞により、in vitroで、造血前駆細胞が連続して増殖する証拠である。
【0046】
[実施例4]
[in vitroでの、脂肪組織由来の間質細胞層とのリンパ球生成共培養の確立]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、500〜20,000細胞/cm2の密度でプレーティングする。造血前駆細胞を共培養系に導入する前に、間質細胞を培養中で1〜3日間確立させる。下記のヒト組織の1つから、造血前駆細胞を単離する。骨髄、臍帯静脈/胎盤血、末梢血、脾臓。あるいは、ネズミ組織を使用する。無菌条件下で、6〜10週齢のマウスの骨髄腔をRPMI/10%FSCで洗い流すことにより、ネズミ骨髄細胞を回収する。無菌条件下で、細かい金属スクリーンを物理的に通過させることにより、ネズミ脾細胞を回収する。下記の3つの方法のうち、1つの方法を使用して、その間質成分の混合造血細胞集団を枯渇させる。第1の代替法として、確立された技術に従って、抗CD34抗原を使用した磁気免疫ビーズ精製により、血液試料からの造血幹細胞集団を富化させる。第2の代替法として、骨髄または他の血液試料を、無菌G−10Sephadexまたはナイロンウールカラムを通過させ、造血前駆細胞を溶離させ、間質細胞を保持することによって、造血細胞を富化させる。第3の代替法として、表面タンパク質特性に基づいたフローサイトメトリー選別により、造血細胞を富化させる。造血細胞を1度洗浄し、0.3%の酢酸で赤血球を溶解し、トリパンブルー染色した後、血球計を使用して有核細胞の数を算定する。好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞10〜100個、さらに好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞20〜30個、最も好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞25〜30個の比率で、造血細胞を液体共培養に導入する。5%のCO2中、RPMI1640、プレスクリーニングした10%のウシ胎児血清、10〜200単位/mlのペニシリン、10〜200μg/mlのストレプトマイシン、0.5〜2mMのLグルタミン、10〜100μMの2−メルカプトエタノールからなる培地中で、37℃にて細胞を培養する。共培養中の培地の半分を3〜4日ごとに取り替える。血球計カウントまたはフローサイトメトリーあるいはそれらの両方の方法で、培地中の非接着細胞の数を決定する。主要な造血細胞系統用の定型的な抗体マーカーを使用して、非接着細胞の特徴を示す表面抗原を実証する。例として、Mac−1、Thy1、Ig重鎖、Ter−81(赤血球系マーカー)などが挙げられるが、その限りではない。10週までの期間にわたって、非接着細胞集団の数および特徴を決定する。試験の終わりに、フローサイトメトリー法または免疫組織化学的方法で、接着細胞層の細胞組成を決定する。代替法として、半固体培地で造血試験を実施する。さらに2.1%メチルセルロースが存在する条件下で造血前駆細胞をプレーティングすること以外は、上述の通りに細胞を調製する。7〜14日後に、組織学的基準、形態学的基準および免疫学的基準を使用して、B系統リンパ球、ならびに顆粒球、赤血球、マクロファージ、および単球の存在について、コロニー形成を評価する。あるいは、上記の通り、専門家により決定されるB系統リンパ球の増殖および成熟を増進する濃度のインターロイキン7を加えて、共培養たは半固体培養あるいはそれらの両方を確立する。上に略述した技術は、この成長因子が脂肪組織由来の間質細胞の造血支持機能に及ぼす影響を評価するのに使用される。
【0047】
[実施例5]
[in vitroでの、脂肪組織由来の間質細胞層との破骨細胞誘発性共培養]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、500〜20,000細胞/cm2の密度で24ウェルプレートにプレーティングする。5%のCO2中、DMEM(高濃度グルコース)、プレスクリーニングした10%のウシ胎児血清、10〜200単位/mlのペニシリン、10〜200μgのストレプトマイシン、0.5〜2mMのLグルタミン、0.5〜2mMのピルビン酸ナトリウム、10〜100μMの2−メルカプトエタノールからなる培地中で、37℃にて細胞を培養する。間質細胞が確立された3日後、10〜100nMの1,25ジヒドロキシビタミンD3または専門家により決定された濃度のオステオプロテゲリンリガンドのいずれかを培地に加える。造血前駆細胞を共培養系に導入する前に、培地中で6日間、間質細胞を確立させる。
【0048】
下記のヒト組織の1つから、造血前駆細胞を単離する。骨髄、臍帯静脈/胎盤血、末梢血、脾臓。あるいは、ネズミ組織を使用する。無菌条件下で、6〜10週齢のマウスの骨髄腔をDMEM(高濃度グルコース)/10%FSCで洗い流すことにより、ネズミ骨髄細胞を回収する。無菌条件下で、細かい金属スクリーンを物理的に通過させることにより、ネズミ脾細胞を回収する。下記の3つの方法のうちの1つの方法を使用して、その間質成分の混合造血細胞集団を枯渇させる。第1の代替法として、確立された技術に従って抗CD34抗原を使用した磁気免疫ビーズ精製により、血液試料からの造血幹細胞集団を富化させる。第2の代替法として骨髄または他の血液試料を、無菌のG−10Sephadexまたはナイロンウールカラムを通過させ、造血前駆細胞を溶離させて間質細胞を保持することによって、造血細胞を富化させる。第3の代替法として、フローサイトメトリー選別により造血細胞を富化させる。造血細胞を1度洗浄し、0.3%の酢酸で赤血球を溶解し、トリパンブルー染色した後、血球計を使用して、有核細胞の数を算定する。好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞10〜100個、さらに好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞20〜30個、最も好ましくは、プレーティングした間質細胞当たり有核造血細胞25〜30個の比率で、造血細胞を液体共培養に導入する。共培養中の培地の半分を3〜4日ごとに取り替える。造血細胞の導入後、1,25ジヒドロキシビタミンD3またはオステオプロテゲリンの存在下で共培養を引き続き維持する。
【0049】
6〜9日の共培養期間の後、リン酸緩衝食塩水に溶解した3.7%(容量:容量)のホルムアルデヒド0.5mlで5分間、共培養を固定し、アセトン:エタノール(50:50、容量/容量)で30秒間乾燥させ、10mMの酒石酸ナトリウム、40mMの酢酸ナトリム(pH5.0)、0.1mg/mlのナフトールAS−MSリン酸(Sigma社製N−5000)、0.6mg/mlのfast red violet LB塩(Sigma社製F−3381)で10分間染色する。染色した培養を蒸留水ですすぎ、50%のグリセロール/PBS条件下で保存する。細胞質の赤色染色に基づいて、ウェル当たりの酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性細胞を光学顕微鏡で評価する。TRAP+細胞を数値で数え、核が1〜2個のものを、細胞当たり3個より多い多核細胞と区別する。このアッセイで、脂肪組織由来の間質細胞がin vitroで破骨細胞誘発性前駆体を分化および増殖できる能力がわかる。この培養手順は、破骨細胞を増殖させ且つ分化を促進することができる。これは、患者が本来の破骨細胞を産生できない脆い骨を特徴とする大理石骨病等のまれな臨床状態に潜在的用途がある。このin vitro法は、ex vivoで、各人の破骨細胞前駆体を増殖させ、且つそれらの分化を促進する手段を提供する。短期または長期の潜在的利益を有する冒された各人に、この細胞集団を再注入することができる。この方法論は非侵襲的であり、且つ専ら自己細胞に依存する可能性があるため、この手法は、患者各人の治療に繰返し使用される。
【0050】
[実施例6]
[骨髄移植および血液学的に妥協した患者の治療方法としての脂肪組織由来の間質細胞支持ex vivo造血の使用]
実施例1〜4に略述した共培養モデルは、高用量化学療法、高線量放射線治療または血球産生および骨髄機能を弱める他の治療方法を受けている患者の、骨髄機能の回復促進に使用される可能性がある。待機手法に先んじて、各個人はその後の自己移植のために、自身の脂肪組織および血球を供与することができる。免疫を無防備化する手法の前に、各個人自身の血球と間質細胞との共培養で、確立し、増殖させることができる。免疫を無防備化する手法に続いて、標準輸血方法論に従って、患者自身の血球と間質細胞との共培養を患者に再注入することができる。これは、外因性造血サイトカイン類の非存在下または存在下で、共培養に加えるか、患者に直接投与するかのいずれかで、実施することができる。この方法は患者における血球産生速度を速め、化学療法または他の免疫を無防備化する手法の総体的な費用および危険性を低減させる。本手法は、本質的にex vivoであり、特定の血球系統の産生を増進するように、間質細胞を操作することが可能である。たとえば、インターロイキン7を一時的に発現する間質細胞はB系統リンパ球の迅速な発現を促進し、エリスロポイエチンを発現する間質細胞は、赤血球の増殖を促進する。
【0051】
上に略述した通り、本方法は、主として病院誘発性血球疾患の治療用にデザインされている。しかし、自己由来の間質と造血との共培養の大規模なex vivo産生は、手術中および手術後に輸血を必要とする待機手術および非待機手術に潜在的に価値がある。現在は、輸血を必要とする患者の大半は、他者によって供与された血液製剤を受ける。このため、認識されていない感染性疾患を供与者から移される危険がある。ex vivoでの血球産生を開発することができれば、各人は、もはや骨髄腔体積による制限を受けない容量で、自身の造血細胞集団を増殖させることができる。リサイクルシステムを含む細胞工場組織培養方法を使用して、脂肪組織由来の間質細胞と造血細胞との共培養による血球の連続的産生が実現可能である。この方法は、供与者から受容者への輸血につきものの血液危険性を回避するという利点があり、その例として、特に、HIV、肝炎、サイトメガロウイルス、ヤコブ/クロイツフェルト病等の感染性疾患の伝染が挙げられる。
【0052】
[実施例7]
[脂肪組織由来の間質細胞の骨格筋筋芽細胞への分化]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、500〜20,000細胞/cm2の密度で24ウェルプレートにプレーティングする。5%のCO2中、DMEM(高濃度グルコース)、プレスクリーニングした10%のウシ胎児血清、10〜200単位/mlのペニシリン、10〜200μgのストレプトマイシン、0.5〜2mMのLグルタミン、0.5〜2mMのピルビン酸ナトリウム、10〜100μMの2−メルカプトエタノールからなる培地中で、37℃にて細胞を培養する。1〜30μMの5'アザシタジンまたは10〜100ng/mlのアンホテリシンに、1〜6日間曝露して、S期全体の細胞を、確実に、これらの薬剤に連続的に曝露させる。この期間に続いて、アザシタジンまたはアンホテリシンを加えない培地中で培養を維持する。骨格筋筋芽細胞の特徴的なマーカーを発現することができる細胞クローンを選択するために、培養を、確立された細胞密度で継続するか、制限希釈法によりサブクローニングする。形態学的基準(特に、培養中で多核筋管を形成する能力)、生化学的基準(特に、ミオシン重鎖キナーゼおよびミオシン軽鎖キナーゼ、骨格筋アクチンおよびミオシンの発現、ならびに筋原性転写因子、myoDまたはミオゲニンあるいはそれらの両方の発現)に基づいて、これらの細胞を選択する。
【0053】
[実施例8]
[脂肪組織由来の間質細胞から分化した骨格筋筋芽細胞の利用]
筋ジストロフィー、筋萎縮症、および癌または外傷を治療するための外科手技に続発する骨格筋の物理的損失の治療において、実施例6で発育させた細胞、骨格筋筋芽細胞を、組織エンジニアリンング目的に使用することができる。脂肪組織からの筋芽細胞の増殖集団のex vivoでの発育を使用して、罹患者の骨格筋質量を補給または修復することができる。ポリ乳酸、ポリグルコール酸、コラーゲンまたは筋線維を形成するための他の材料を含む生分解性マトリックス中で、筋芽細胞を培養することができる。次いで、これらを罹患部位に移植し、縫合により、既存の筋肉、腱または骨につなぎとめる。あるいは、ex vivoで増殖させた筋芽細胞を、ウイルス形質導入、プラスミドトランスフェクション、または新規の遺伝子を発現させる他の方法で遺伝子操作する。今度は、これらの新規遺伝子生成物を発現させる既存の筋肉部位に、これらの細胞を直接注入してもよい。この方法は、患者が、重要な骨格筋遺伝子の突然変異の続発症に悩む筋ジストロフィーに直接適用される。同様に、遺伝子操作を受けた間質細胞は、筋肉を不十分な循環タンパク質のための産生部位に変換する。たとえば、リポタンパク質リパーゼを発現する脂肪組織由来の間質細胞を使用して、重度心血管疾患の危険性が高い生来のリポタンパク質遺伝子に突然変異を含む多くの患者を治療することができる。
【0054】
[実施例9]
[Ex vivoでの脂肪細胞由来の幹細胞からの平滑筋の筋細胞への分化と増殖]
1999年1月29日に提出の出願番号第09/240,029号に記載されている"Methods and Compositions for the Differentiation of Human Preadipocytes into Adipocytes"に従って、ヒト皮下脂肪組織から間質細胞を単離する。この細胞を、500〜20,000細胞/cm2の密度で24ウェルプレートにプレーティングする。5%のCO2中、DMEM(高濃度グルコース)、プレスクリーニングした10%のウシ胎児血清、10〜200単位/mlのペニシリン、10〜200μgのストレプトマイシン、0.5〜2mMのLグルタミン、0.5〜2mMのピルビン酸ナトリウムからなる培地中で、37℃にて細胞を培養する。この培養に、専門家により決定されるが、40ng/を超えない濃度のトランスフォーミング成長因子βまたは線維芽細胞成長因子あるいはそれらの両方を加える。細胞を単層として培養中で維持するか、I型コラーゲンまたは他の生分解性材料(アルギナート、合成ポリマーまたはその他)を含む三次元格子で維持する。平滑筋の筋芽細胞分化に関する形態学的基準、生化学的基準、および機能的基準に基づいて、細胞を特性決定する。基準の例として、平滑筋アクチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびその他の細胞外マトリックスタンパク質の発現、および圧力変換器を使用して測定したとき引張り力を発生させることができる能力、および一列に並んだ力を三次元格子に構成する力などが挙げられるが、その限りではない。
【0055】
[実施例10]
[ex vivoでの、脂肪組織由来の間質細胞から分化した平滑筋の筋芽細胞の利用]
実施例8に記載の平滑筋の筋芽細胞を使用して、平滑筋機能が弱っている病気を治療することができる。たとえば、毎年1000人を超える新生児が、膀胱壁異常に罹る。この障害の重症度は多様であるが、破壊的なこともあり、容認できる修復および正常機能への接近を達成するためには、高額の外科手術を必要とする。多くの場合、膀胱が小さすぎるか膀胱壁の形成が不完全で、膀胱壁の代替品としての補綴材料を移植することが必要である。研究中の方法は、膀胱壁の代替材料としてのブタ腸粘膜下組織の使用を含む。1つの組織が外科的に移植されてもされなくても、膀胱壁は、伸長および収縮と関連した適当な物理的特徴および機械的特徴を実現する。この多くに、機能的平滑筋細胞が介在する。現行の方法は、ex vivoで平滑筋細胞を前移植せずに、SIS材料を移植する。外科医は、網脂肪組織を含む、隣接組織からの線維芽細胞および筋芽細胞の補充を頼みとする。平滑筋の筋芽細胞分化が可能な脂肪組織由来の間質細胞を利用できると、STS材料を、これらの細胞と共にex vivoでプレインキュベートすることが可能である。膀胱壁の外科的修復前に、これらの細胞を導入すると、適当な膀胱の緊張の改善および獲得が予期される。この方法は、平滑筋細胞に依存する、全ての弾性軟組織器官に応用できる。この例としては、小腸、大腸、膣、尿道、および静脈血管などが挙げられるが、その限りではない。脂肪細胞由来の間質細胞は、これらの器官のいずれかの欠損の外科的修復に潜在的な用途がある。
【0056】
本明細書に記載の全ての出版物は、本発明が関係する当業者の水準を示す。各個の出版物が具体的に且つ個別に引用することにより援用されると指示された場合と同程度に、出版物を引用することにより本明細書の一部をなすものする。
【0057】
明瞭さおよび理解の目的で、具体例および実施例のつもりでかなり詳細に前述の発明を説明してきたが、ある一定の変更および修飾は、添付のクレームの範囲内で実行できることは明白であろう。
【0058】
[表の説明]
[表1]
抗体およびPCR検出に基づいた、脂肪組織由来の間質細胞表面マーカーの特性決定。ヒト脂肪組織由来の間質細胞中の、記載の表面タンパク質および分析した遺伝子は、免疫組織化学的染色、フローサイトメトリーに基づき、且つ/またはポリメラーゼ連鎖反応による。マーカーは、発現される(「陽性」として記載)と発現されない(「陰性」として記載)に分けられている。
【0059】
[表2]
構成的にもしくはエンドトキシン(LPS)誘導後に、脂肪組織由来の間質細胞によって発現されるサイトカイン類。100ng/mlのリポ多糖類と共にインキュベートした後、ヒト脂肪組織由来の間質細胞から単離された総RNAにおける記載のサイトカイン類を分析した。列挙したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、表に記載のサイトカイン類を検出した。全てのサイトカイン類が、構成的方式または誘導可能方式のいずれかで発現された。
【0060】
[表3]
定量的ELISA(pg/ml)。脂肪組織由来の間質細胞分泌サイトカインのLPS誘導。条件培地中で、100ng/mlのLPSで0〜24時間誘導したヒト脂肪組織由来の間質細胞からの、記載のサイトカイン類を、分析した。全てのサイトカイン類を酵素結合イムノアッセイ(ELISA)で検出し、pg/規定された培地mlで表す。「*」で示されるサイトカイン類は、分散の一元分析に基づいて、0時間の時点と比較して、24時間誘導期間内に有意に増加したことを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】6ウェルプレートで、ヒト脂肪組織由来の間質細胞を、DMEM/F10(1:1 容量:容量)、10%のウシ胎児血清、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、およびpH7.2の7.5mMのHEPES中で集密または静止まで培養した。次いで、この細胞を、DMEM/F10(1:1 容量:容量)、2%のウシ胎児血清、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および100ng/mlのリポ多糖類(LPS)を含有したpH7.2の7.5mMのHEPES中で、インキュベートした。フェノール/クロロホルム/酸方法(Chomczynski &Sacchi(1987) Analytical Biochem 162:156−159)を使用した総RNA抽出および単離のために、細胞を直ちに(時刻「0」)もしくは4時間後(時刻「4」)に回収した。総RNAの同じアリコートを逆転写し、指示されたヒトmRNAに特異的な下記のプライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応で増幅した。アクチンプライマーは、試料間でローディングを等しくするための陽性対照の役割をした。
結果として得られるPCR生成物を、2%のアガロースゲルを用いた電気泳動にかけ、臭化エチジウム染色し、写真撮影した。
Claims (29)
- 単離された髄外脂肪組織由来の間質細胞と、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞とを含む、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞の増殖および成熟を支持するための自然発生しない細胞混合物であって、
該単離された髄外脂肪組織由来の間質細胞または該混合物が、間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤でインキュベートされ、かつ該混合物は、骨髄由来の間質成分が枯渇している細胞混合物。 - 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、造血前駆細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、骨髄細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、リンパ系細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、赤血球細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、巨核球細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、破骨細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が造血前駆細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が造血幹細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が骨髄細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞がリンパ系細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が赤血球細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が巨核球細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 生成される血液細胞が破骨細胞である請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血前駆細胞と、造血幹細胞と、骨髄細胞と、リンパ系細胞と、赤血球細胞と、巨核球細胞と、破骨細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血前駆細胞と、造血幹細胞と、骨髄細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、骨髄細胞と、リンパ系細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、赤血球細胞と、巨核球細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、リンパ系細胞と、破骨細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、リンパ系細胞と、巨核球細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、赤血球細胞と、リンパ系細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、赤血球細胞と、破骨細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 前記血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞が、造血幹細胞と、巨核球細胞と、破骨細胞とからなる群から選択される請求項1に記載の細胞混合物。
- 単離された髄外脂肪組織由来の間質細胞と、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞とを含む、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞の増殖および成熟を支持するための細胞混合物であって、該単離された髄外脂肪組織由来の間質細胞または該混合物が、間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤でインキュベートされ、かつ該混合物は、骨髄由来の間質成分が枯渇している細胞混合物。
- 単離されたヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞と、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞とを含む、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞の増殖および成熟を支持するための細胞混合物であって、該単離されたヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞または該混合物が、間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤でインキュベートされ、かつ該混合物は、骨髄由来の間質成分が枯渇している細胞混合物。
- 単離された成人ヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞と、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞とを含む、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞の増殖および成熟を支持するための細胞混合物であって、該単離された成人ヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞または該混合物が、間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤でインキュベートされ、かつ該混合物は、骨髄由来の間質成分が枯渇している細胞混合物。
- 単離された成人ヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞と、血液細胞を生成することができる脂肪由来でないヒト細胞とを含む、血液細胞を生成することができる脂肪由来でない細胞の増殖および成熟を支持するための細胞混合物であって、該単離された成人ヒト髄外脂肪組織由来の間質細胞または該混合物が、間質細胞において造血サイトカイン類を誘導することができる炎症性薬剤でインキュベートされ、かつ該混合物は、骨髄由来の間質成分が枯渇している細胞混合物。
- 前記炎症性薬剤が、リポ多糖またはエンドトキシンである、請求項1〜28のいずれかに記載の細胞混合物。
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