JP4180166B2 - 木製部材接合用金具およびその金具により接合される木製部材の接合構造 - Google Patents

木製部材接合用金具およびその金具により接合される木製部材の接合構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば木製柱と登り梁との接合や梁同士の接合等に好適な木製部材接合用金具およびその金具により接合される木製部材の接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、木造建築では、工期短縮・人件費の削減・強度の向上・耐久性の向上・加工の単純化・熟練者に頼ることのない精度の高い施工を目的として、木製部材接合用金具が使用されるようになってきている。
【0003】
従来、この種の木製部材接合用金具としては、柱と梁、または柱と土台といった接合部分の接合用金具は数多くあるが、柱と登り梁接合用の接合金具は少ない。登り梁のメリットとしては、在来に比べて少量の木材しか使用しないので、コストや工期が有利、小屋裏が広く使える、強度が高いといったものがある。
【0004】
従来、この種の木製部材接合用金具としては、実開平6−51306号公報に示すもの(以下、従来技術1という)、特許第2509036号公報に示すもの(以下、従来技術2という)がある。これらは柱に固定され、梁を受けるための支持板上に登り梁を落とし込む方式のものである。さらに、特開平8−239911号公報に示すもの(以下、従来技術3という)、特開平9−100580号公報に示すもの(以下、従来技術4という)のようにコの字型の板を柱に固定し、このコ字型板上に、スリットを設けた梁を落とし込む方式などがある。
【0005】
上記従来技術1では、登り梁をドリフトピンだけでなく、鉄板でも支えているので、強度が高く、大きな変形をもたらす終局的な破壊の状況でも、登り梁を支持している可能性が高いので安全性が高い。
【0006】
また、他の従来の接合用金具としては実開平6−20608号公報掲載のもの(以下、従来技術5という)のように登り梁を柱の上に置いて、鉄筋と接着剤で固定する方式のものや、鉄板を、柱と梁の内部に挿入してピンなどで固定する方式、または、特開昭57−40042号公報掲載のもの(以下、従来技術6という)のように、鉄板を、柱と梁の内部に挿入してボルトで固定する方式、実用新案登録第3014220号公報掲載のもの(以下、従来技術7という)のように梁を柱に引き寄せて固定する方式、特許第2509036号公報掲載のもの(以下、従来技術8という)のように、柱に固定する部分と登り梁に固定する部分を蝶番により連結して角度調節自在に構成した方式などがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の木製部材接合用金具には次のような課題がある。
【0008】
従来技術1,2では、その金具本体に、梁等を受ける鉄板を固着しているので、この梁の角度は鉄板の角度にしか対応できない。そのために、登り梁等の設計の自由度が制約される。したがって、登り梁等の角度に応じた金具を予め種々用意しておく必要があり、金型コストや在庫の増加を引き起こす。もしくは、特注品対応で製作すれば、任意の角度の梁に種々対応することができるが、一品生産のためコスト高になる上に、納期が遅くなるなどの問題も発生する。
【0009】
さらに、従来技術3,4の場合は、その図5で示すように登り梁の角度は若干の範囲内の角度であれば対応できるが、1つの金具であらゆる角度に対応することはできない。しかも、この接合金具では、登り梁用と下り梁用の2種類の金具が必要であるので、金型や在庫などのコストアップ要因となる。
【0010】
また、一般に木造建築においては、登り梁の下端部を柱よりも先方へ突出させて軒先を出すことは夏期等の日射遮蔽による省エネルギ面から重要であるが、これらの金具では構造上柱勝ちとなり、軒先を出すことができないという課題がある。
【0011】
従来技術5〜7の場合は、軒先を出すことができるように工夫してあるが、従来技術5の場合は、柱材や合掌材に鉄筋の挿入後に接着剤の注入が必要であるので、現場での施工手間が多く、コストがかかるばかりか、高所での作業による安全性の課題もある。しかも、これらの作業を地上で行うためには広い敷地が必要になるなど、一般住宅向きではない。
【0012】
また、従来技術6についても、従来技術5と同様に鉄板を柱材や梁材に挿入する方法であるが、接着剤を使用することによる施工手間がかかるうえに、コスト、安全性、敷地といった先程の問題があり、さらに、必要な強度を保つためにはピンまたは釘を沢山打つために、断面積の大きい材料が必要になるなどの問題があり、一般住宅向きとはいえない。建築現場での施工手間を省くために、柱や梁に金具を工場で取り付けて運搬することも考えられるが、これら金具が柱や梁の取付部から横方向へ突出するので、これら柱や梁同士を横方向に密着させて並べにくいため、これらの運搬効率が悪い。
【0013】
さらに、従来技術6では、登り梁を柱に仮止めするための仮止め手段を有しないので、登り梁の勾配が大きい場合は登り梁が柱から滑り落ち易く危険である。また、接合金具を柱と梁の取付位置に合せる位置決め手段が取付用の締付ボルトしかないので、このボルトを挿通させるための下穴と遊びにより、柱および梁と、接合金具との取付位置にずれが生じ、取付金具の取付作業の効率が低下するという課題がある。
【0014】
さらに、柱と梁の接合後、荷重を受ける部分がボルトのみであるので、荷重がボルトに集中して、強度的にも弱く、経時変化による変形も大きくなり易い。
【0015】
従来技術7の場合、柱と登り梁等の斜材同士を引き寄せる力が作用し、両者間の接合力を増大させることができるが、部品点数が多く、そのために、金具の取付工程数が多く、また、登り梁等斜材自体の加工工数が多く、これらがコストアップ要因となる。
【0016】
従来技術8の場合、柱と登り梁等の斜材との接合角度を任意の角度に調節できるが、蝶番構造のため製造コストが増大すると共に、金具自体の重量が重くなるという課題がある。
【0017】
このように登り梁の垂直方向の傾斜角度は適宜調節できるが、登り梁の水平方向の角度、つまり、柱の中心軸回りの角度についてはほぼ直角に限定され、建築物の外形が四角形に限定されるという課題がある。
【0018】
そこで本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、登り梁等斜材の種々の垂直方向の傾斜角度と水平方向の角度とに対応して柱等他の木製部材に容易に接合させることができる低コストの木製部材接合用金具およびその金具により接合される木製部材の接合構造を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、接合しようとする複数の木製部材の各接合端部の各嵌合部内に、これら接合端部同士間を跨がるように挿入されて固定される金具本体に、上記各嵌合部内への挿入位置をそれぞれ位置決めすると共に、挿入方向を案内する第1の位置決め手段と、上記金具本体の表裏両面の各中央部にてその両面の垂直方向外方にそれぞれ突出する棒状体よりなり、各木製部材の接合端部の位置決め用嵌合部内にそれぞれ嵌入されて、その挿入深さを規制する第2の位置決め手段と、を具備していることを特徴とする木製部材接合用金具である。なお、ここで木製部材接合用金具は鉄やその合金等の金属、強化プラスチック、セラミックス等により構成してもよく、以下の請求項においても同様である。
【0020】
この発明によれば、接合しようとする木製部材の例えば柱と梁等の各接合部の各嵌合部内に、木製部材接合用金具の両端部をそれぞれ挿入する際には、その挿入位置が第1の位置決め手段により位置決めされ、かつその挿入方向が案内される。このために、木製部材接合用金具の各嵌合部内への挿入の位置決めを高精度、かつ容易に行なうことができる。そして、この柱と梁等の両接合端部の両嵌合部内に、これら接合端部同士間を跨ぐように木製部材用接合金具が挿入されてから、この金具が柱と梁等にそれぞれ固定されるので、これら柱と梁等が木製部材用接合金具を介して強く接合される。
【0021】
しかも、この木製部材接合金具は、例えば柱と梁等の接合端部の各嵌合部内に単に挿入されて、固定されるだけであり、柱や梁等の接合角度を規制する受け部等の部材がないので、1種類の木製部材接合用金具により、梁等の種々の垂直方向の傾斜角度と、梁の種々の水平方向の角度にも対応することができる。
【0022】
したがって、梁等の種々の傾斜角度と、柱の中心軸回りに沿う水平方向角度毎に、種々の木製部材用接合金具を予め製造し、保管する必要がないので、柱と梁との接合施工の施工性を向上させることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0023】
さらに、木製部材接合用金具は、第1の位置決め手段を有するので、例えば、この接合用金具の一端部を、立設した柱の接合端部の嵌合部内に挿入して、この金具の他端部を柱の接合端部から上方へ突出させた状態で、この他端部上から例えば梁の接合端部の嵌合部を落とし込み、嵌合させることにより、この梁を柱上に仮止めすることができる。このために、梁の傾斜角度が大きい場合でも、梁が柱上から滑り落ちて危険が生ずるのを未然に防止することができる。さらにまた、単に梁の嵌合部を梁の先端よりも内方に形成することにより、梁の軒先を簡単に形成することができ、夏期等の日射遮蔽による省エネルギ化を図ることができる。
【0024】
また、木製部材の一方、例えば柱の接合端部に、木製部材接合用金具を工場等で予め取り付けて建築現場等へ搬送する場合は、この柱に、その軸方向に沿って、木製部材接合用金具を取り付けることにより、この木製部材接合用金具が柱の横方向に突出するのを防止することができる。このために、この木製部材接合用金具を取り付けた柱の多数を横方向に高密度で並べて現場等に搬送することができるので、その搬送効率を向上させることができる。
【0025】
また、木製部材構造用金具の両端部を柱や梁等の嵌合部内に、それぞれ挿入すると、その挿入深さが第2の位置決め手段により規制され、必要以上に深く挿入されるのを防止することができる。
したがって、柱や梁等の嵌合部を、木製部材構造用金具よりも若干大き目に形成しても、この嵌合部内に、この木製部材構造用金具を所定深さの位置に挿入することができる。このために、柱や梁等の嵌合部の加工精度を必要以上に高くする必要がないので、その加工の容易性と作業性とを共に向上させることができる。また、柱に固定された木製部材接合用金具の一部が梁の嵌合部内に単に嵌入され、この梁に固定される前の状態において、第2の位置決め手段により梁の接合面がその傾斜により柱の接合面からずれるのを防止することができる。
さらに、木製部材接合用金具の第2の位置決め手段を、柱と梁等の各木製部材の位置決め用嵌合孔内に挿入する際には、この第2の位置決め手段の軸方向両端部が先細であるので、挿入し易い。また、この位置決め用嵌合孔を第2の位置決め手段に対しきつ目(タイト)に形成する場合には、上記挿入容易性を殆ど低下させることなく、第2の位置決め手段が位置決め用嵌合孔内でガタつくのを低減ないし防止することができ、位置決め精度を向上させることができる。
請求項2の発明は、上記金具本体は、板状体よりなり、上記第1の位置決め手段は、上記板状の金具本体に、その挿入方向に沿う軸方向両端部を先細形状に形成してなる棒状体をそれぞれ突設してなり、各木製部材の接合端部の嵌合部内に嵌入されるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の木製部材接合用金具である。
【0026】
この発明によれば、第1の位置決め手段が棒状体であり、その両端部が先細形状であるので、この第1の位置決め手段を、柱や梁等の嵌合部内に容易に挿入することができる。このために、この第1の位置決め手段を両面に突設している金具本体と柱や梁等の各嵌合部との位置決めを容易に行なうことができる。
【0027】
したがって、この棒状体の第1の位置決め手段が嵌入される柱や梁等の各嵌合部を、遊びが生じないようにきつ目(タイト)に形成した場合には、その位置決めの容易性を低下させることなく、柱や梁等の各嵌合部内に挿入されている金具本体のガタつきを低減することができる。
【0028】
また、第1の位置決め手段が棒状体であるので、その棒状体の軸直角方向への金具本体の嵌合部内での位置ずれを低減ないし防止することができる。
【0029】
請求項3の発明は、上記金具本体は、固定具の軸部を挿通せしめる木製部材の貫通孔に連通する透孔を具備していることを特徴とする請求項1または2に記載の木製部材接合用金具である。
【0030】
この発明によれば、各木製部材の接合端部の嵌合部内に、木製部材接合用金具を挿入し固定した接合部に、さらに、他の木製部材を接合するために、他の接合用金具を固定具により取り付ける場合には、この固定具の軸部を、一方の接合用金具の透孔に通すことにより、複数の接合用金具同士が干渉し合うのを回避することができる。
【0031】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材接合用金具により、柱と木製斜材の接合端部同士、または柱と横架材の接合端部同士を接合してなる木製部材接合構造である。
【0032】
この発明によれば、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合しようとする木製部材が柱と、登り梁や水平梁等の斜材ないし横架材であるので、柱と、これら斜材ないし横架材の接合端部同士を木製部材接合用金具により接合することができる。
【0033】
しかも、この木製部材接合用金具は、登り梁等の斜材ないし横架材の垂直方向に沿う傾斜角度と、柱の軸心回りに沿う斜材ないし横架材の水平方向の角度を規制する部材を有しないので、例えば1種類の木製部材接合用金具により登り梁等斜材の種々の垂直方向の傾斜角度と水平方向角度にそれぞれ対応することができ、これらの種々の角度に対応して木製部材接合用金具を種々製造し、かつ保管する必要がない。このために、木製部材接合用金具の製造や保管のコスト低減を図ることができるうえに、現場での上記接合施工の施工性を向上させることができ、建設工期の短縮を図ることができる。
【0034】
請求項5の発明は、木製部材接合用金具は、その金具本体の厚さよりも長い幅に沿う幅方向が木製斜材の長手方向に沿うように柱と斜材とに固定されていることを特徴とする請求項4記載の木製部材接合構造である。
【0035】
この発明によれば、木製部材接合用金具は、その幅員の方が厚さよりも長いので、断面係数が大きく強度も大きい。そこで、この木製部材接合用金具は、この断面係数の大きい幅方向が登り梁等の斜材の長手方向に沿うように柱と斜材とにそれぞれ固定されるので、木製部材接合用金具の強度と柱と斜材の接合強度とを向上させることができる。
【0036】
請求項6の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材接合用金具により、横架材の接合端部同士を接合してなる木製部材接合構造である。
【0037】
この発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材接合用金具により、登り梁等の斜剤ないし水平梁等の横架材の接合端部同士を、これら梁の種々の傾斜角度と水平方向角度により工場等で予め接合した木製部材接合構造を提供することができる。また、この木製部材接合構造を工場等で予め施工できるので、その施工効率と精度とを共に向上させることができる。
【0038】
請求項7の発明は、上記木製部材接合用金具は、その金具本体の厚さよりも長い幅に沿う幅方向を、横架材の重力方向に向けて両横架材に固定されていることを特徴とする請求項6記載の木製部材接合構造である。
【0039】
この発明によれば、木製部材接合用金具は、その厚さよりも断面係数の大きい幅員に沿う幅方向が、梁等の横架材の重力方向に向くように各横架材に固定されているので、この木製部材接合用金具の強度ないし横架材同士の接合部の強度を増強させることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図33に基づいて説明する。なお、これらの図中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0041】
図1(A)は本発明の第1の実施形態に係る木製部材接合用金具である接合金具1の斜視図、(B)は、この接合金具1の正面図、図2はこの接合金具1により、木製部材である柱2の接合端部2aに、同木製斜材である登り梁3の接合端部3aの軒先3xを伸ばして接合した状態の説明図である。
【0042】
図1(A)に示すように接合金具1は、長方形の金具本体4の表裏両面のほぼ中央部にて、その板厚方向外側方へ向けてそれぞれ直立する第2の位置決め手段である丸棒状の一対のガイドピン5a,5bを一体ないし一体的に突設している。金具本体4は、図1(A)中縦方向の長さが同図中横方向、すなわち幅方向の長さよりも長く、その幅員Wはその板厚tよりも長い。
【0043】
また、接合金具1は金具本体4の長手方向に沿う中心軸上にて、一対のガイドピン5a,bと直交する方向(図1(A)では上下方向)に伸びる第1の位置決め手段である丸棒状の一対のロケットピン6,7が同軸上に一体または一体的に形成されている。各ロケットピン6,7の各先端部には先方に向けて先細の円錐台状の先細部6a,7aを形成している。
【0044】
さらに、接合金具1は金具本体4に、各ロケットピン6,7の先細部6a,7aの始端から、所定長先方まで伸びる透孔であるほぼ矩形状の上下一対の窓8a,8bを板厚方向に穿設している。また、金具本体4には、その長手方向両端部にて、板厚方向に貫通する複数の挿通孔9,9…をそれぞれ穿設している。なお、この接合金具1は鉄やその合金等の金属から主に構成されるが、強化プラスチックやセラミックス等により構成してもよい。
【0045】
そして、図2〜図6に示すように柱2の接合端部2aと登り梁3の接合端部3aとには、接合金具1の一対のガイドピン5a,5bの中心を境界として図中上半部と下半部とをそれぞれ挿入せしめる嵌合部である嵌合溝2b,3bをそれぞれ形成している。
【0046】
図3に示すように柱2の嵌合溝2bは、登り梁3の接合端部3aに、所要角度で突き合わされる接合端部2aの突き合わせ傾斜端面である木口2cの厚さ方向中間部にて幅方向に貫通すると共に、長手方向図中下方に向けて所定深さで形成されている。
【0047】
この嵌合溝2bは、柱2の木口2cにて、接合金具1の一対のガイドピン5a,5bの直径方向下半部(図2中下半部)の全長が嵌入される位置決め用嵌合部である嵌合凹部2dと、この嵌合凹部2dの中心部と同心状の縦孔である例えば円形の嵌合孔2eを長手方向に形成し、この嵌合孔2e内に図3中下方のロケットピン7が軸方向に嵌入されるようになっている。
【0048】
また、図4に示すように、接合金具1の図中下半部が柱2の接合端部2aの嵌合溝2b内に挿入され、かつ一対のガイドピン5a,5bの下半部が嵌合凹部2d内に嵌入されたときに、この接合金具1の下半部の各挿通孔9に各々連通する貫通孔2fが柱2の厚さ方向に貫通するように穿設されている。
【0049】
そして、この柱2の嵌合溝2bとほぼ同様に、図2,図5,図6に示すように、登り梁3の嵌合溝3bは、柱2の接合端に突き合わされる接合端部3aにおいて、接合金具1の一対のガイドピン5a,5bの図2中直径方向上半部のほぼ全長が嵌入される位置決め用嵌合部である嵌合凹部3dと、この嵌合凹部3dの中心部と同心状の縦孔である例えば円形の嵌合孔3eを長手方向に形成し、この嵌合孔3e内に図2中上部ロケットピン7が軸方向に嵌入されるようになっている。
【0050】
また、図2に示すように、接合金具1の図中上半部が登り梁3の接合端部3aの嵌合溝3b内に挿入され、かつ一対のガイドピン5a,5bの上半部が嵌合凹部2d内に嵌入されたときに、この接合金具1の上半部の各挿通孔9に各々連通する貫通孔3fが登り梁3の接合端部3aの厚さ方向に貫通するように穿設されている。
【0051】
これら柱2と登り梁3には、その各接合端部2a,3aの垂直方向傾斜角と、各嵌合溝2b,3bとが工場等で事前に加工(プレ加工)されており、図3〜図6に示すように接合金具1により軒先3xを柱2から外方へ突出させた状態で建設現場等で接合される。
【0052】
すなわち、図3に示すようにまず、柱2の接合端部2aの嵌合溝2b内に、接合金具1の図3中下半部を挿入する。
【0053】
すると、接合金具1の下部ロケットピン7の先細先端部7aが嵌合孔2e内に挿入される。すなわち、ロケットピン7の先細先端部7aが先細であるので、嵌合孔2e内に容易に挿入され、位置決めされる。
【0054】
そこで、接合金具1の上端を図示しないハンマー等により図3中白矢印に示すように、下方へ例えば打撃力等を加えると、図4に示すように、ロケットピン7の挿入方向が嵌合孔2eにより案内されて、一対のガイドピン5a,5bの下底面が嵌合凹部2dの底面に衝突して挿入され、それ以上の挿入深さが規制される。これにより接合金具1の下半部のほぼ全体が嵌合溝2b内に嵌入され、接合金具1の上半部が木口2cから上方へ突出した状態になる。
【0055】
そして、一対のガイドピン5a,5bにより接合金具1の柱2の嵌合溝2bへの挿入深さが規制されるので、この接合金具1を嵌合溝2b内へ簡単に所定の深さまで挿入することができ、必要以上の深さまで挿入するのを防止できる。
【0056】
次に、図4に示すように柱2の接合端部2aの各貫通孔2fにドリフトピン10をそれぞれ打ち込むと、これらドリフトピン10の軸部が接合金具1の図3中下半部の各挿通孔9内を挿通して、その裏面側へ達するので、接合金具1の下半部が柱2の接合端部2aに強く固定される。
【0057】
この後、図5の白矢印に示すように接合金具1上に、登り梁3をクレーン等により吊り上げ、その上方から登り梁3の接合端部3aを、この接合金具1に嵌合溝3bを位置決めしてから落とし込む。その際、接合金具1の図5中上部ロケットピン6の先細先端部6aが登り梁3の嵌合溝3bの嵌合孔3e内に挿入されるので、その位置決めが容易に行なわれ、かつ登り梁3の落し込みに応じて上部ロケットピン6が嵌入孔3e内を挿入されることにより、接合金具2の嵌合溝3bへの挿入方向が案内される。
【0058】
これにより、図6に示すように登り梁3の接合端部3aの図中傾斜下底面が柱2の接合端部2aの傾斜上端面に突き合わされる。そこで、登り梁3の接合端部3aの各貫通孔3f内にドリフトピン10をそれぞれ打ち込むことにより、接合金具1の上半部を登り梁接合端部3aに固定する。
【0059】
これにより、柱2と登り梁3の両接合端部2a,3a同士は、軒先3xを柱2よりも先方へ突出させた状態で接合金具1により強固に固定される。
【0060】
しかも、登り梁3の傾斜角度は、この登り梁3と柱2の両接合端部3a,2aの突合せ面の傾斜角のみにより規制され、接合金具1により登り梁3の傾斜角が規制されないので、この1種類の接合金具1により登り梁3の種々の傾斜角(垂直方向の傾斜角)に対応することができる。
【0061】
したがって、登り梁3の種々の傾斜角にそれぞれ対応して種々の接合金具1を製造し、保管する必要がないので、コスト低減を図ることができるうえに、接合金具1を柱2と登り梁3の両接合端部2a,3a同士に取り付け接合するための施工の作業性を向上させることができる。
【0062】
また、図5に示すように柱2に固定した接合金具1上に、登り梁3の接合端部3aを落とし込み、その嵌合溝3b内に接合金具1の上半部を嵌入させた状態で、接合金具1により登り梁3を仮止めすることができるので、登り梁3が柱2上で滑落するのを防止することができ、建設現場での安全性の向上を図ることができる。また、この仮止め時には、一対のガイドピン5a,5bが各嵌合凹部2,3d内にそれぞれ嵌入されているので、登り梁3の接合面がその傾斜により柱2の接合面上からずれるのを防止することができる。しかも、一対のガイドピン5a,5bが登り梁3と柱2との接合面上ないし近傍にあるので、ガイドピン5a,5bにかる負荷を軽減することができる。このために、ガイドピン5a,5bの小形化を図ることができる。
【0063】
そして、図4に示すように接合金具1を柱2の嵌合溝2bに固定した工程において、接合金具1の図中上半部が柱2の接合端部2aから軸方向に突出し、横方向(軸直角方向)には突出しないので、例えば工場等でこの接合金具1を柱2に予め固定して木製部材接合構造に構成してから、その複数を建設現場に搬送する場合には、この複数の木製部材接合構造同士を横方向に高密度で並べても、隣り合う接合金具1同士を干渉させずに搬送することができる。したがって、木製部材接合構造の搬送の効率と容易性とを共に向上させることができる。
【0064】
さらにまた、接合金具1は、その断面係数が板厚方向よりも大きい幅方向を、登り梁3の長手方向にほぼ一致させているので、接合金具1自体の強度ないし柱2と登り梁3の接合強度を共に増強させることができる。
【0065】
以上説明したように、接合金具1は種々の垂直方向の傾斜角度の登り梁3を軒先3xを形成した状態で柱2に接合することができ、登り梁3の傾斜角度が例えば図7で示す3寸勾配から図8で示す8寸勾配まで、あるいは、これから図9で示す10寸勾配まで如何なる勾配であっても、1種類の接合金具1により対応することができる。なお、図7〜図9中、破線は登り梁3に直交方向に接続される母屋11であり、複数の登り梁3上には図示しない屋根パネルが取り付けられる。
【0066】
図10はこの1種類の接合金具1を、例えば1つの小屋組みにおいて、棟金具1Aとして使用する場合や、3寸勾配の登り梁3,3同士の接合用金具1B、7寸勾配の登り梁3と柱2との接合用金具1Cとして使用する場合をそれぞれ示している。
【0067】
さらに図11〜図16は上記接合金具1を、1つの小屋組みにおいて、登り梁3同士、または登り梁3と柱2とを接合する金具として使用する場合の種々の例を示している。すなわち、図11は横対縦が8寸対10寸勾配の登り梁3と、柱2とを接合する接合用金具1Dを示し、図12は3寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する接合用金具1Eとをそれぞれ示している。
【0068】
図13は1つの小屋組みにおいて、8寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する接合用金具1Fと、4,5寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する2つの接合用金具1G,1Gとを併用する例を示している。図14は、10寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する2つの接合用金具1Hを示し、図15は、1つの小屋組みにおいて、3寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する接合用金具1Iと、5寸対10寸勾配(20寸勾配)の登り梁3と柱2とを接合する接合用金具1Jとを併用する例を示している。図16は1つのアーチ小屋組みにおける3寸勾配の登り梁3と10寸勾配の登り梁3とを接合する接合用金具1Lと、10寸勾配の登り梁3と20寸勾配の登り梁3とを接合する接合用金具1Mと、20寸勾配の登り梁3と柱2とを接合する接合用金具1Nと、を併用している例を示している。なお、これら接合金具1D〜1Nは、図1等で示す接合金具1と同様に構成されている。
【0069】
図17は上記接合金具1により柱2の接合端部2aに、所要傾斜角度の登り梁3の接合端部3aを接合すると共に、この登り梁3の接合端部3aの一側面に、母屋11の軸方向一端部11aを直交方向に接続する場合の要部を示す斜視図であり、図18はその要部縦断面図である。これら図17,図18に示すように接合金具1により柱2の接合端部2aに接合した登り梁3の接合端部3aの一側面に、母屋11の軸方向一端部11aを母屋接合用金具11により接合する場合がある。図18に示すようにこの母屋接合用金具12は例えば長方形の基板12aの図18中下端に、例えば水平梁13の一端の図中底面を受ける矩形板状の受け板12bを一体に形成して側面形状がL字状になるように形成している。この受け板12b上には、その幅方向(図18では図面の表裏方向)中間部にて直立する補強板12cを一体ないし一体的に形成し、この補強板12cの図18中左側面を基板12aの右側面に固着してリブに形成している。補強板12cはその左側端部に、その板厚方向に貫通する矩形状の上下一対の窓12d,12eを形成しており、これら各窓12d,12eを臨む基板12aの各部には板厚方向に貫通する取付孔12f,12gをそれぞれ穿設している。また、補強板12cの図18中右側端部には、その板厚方向に貫通する上下一対の挿通孔12h,12iをそれぞれ穿設している。
【0070】
また、受け板12bの図18中上面上には、補強板12cの表裏両面に接して、図中上方に先細で半円柱状の一対のロケットピン12j,12kを同心状に穿設している。基板12aの図18中の左側面には、その図面の表裏方向に伸びる角柱上の突部12lを一体ないし一体的に突設している。
【0071】
一方、母屋11は、その一端部にて、その図18の図面の表裏方向中間部にて、母屋接合用金具12の補強板12cと、一対のロケットピン12j,12kとをそれぞれ嵌合せしめる嵌合溝13aを形成する一方、受け板12bを嵌合せしめる嵌合凹部13bを水平梁13の下底面に形成している。また、母屋11には母屋接合用金具12の各挿通孔12h,12iにそれぞれ連通する貫通孔13c,13dを母屋11の板厚方向に貫通させて形成している。また、登り梁3の一側面(図18では右側面)には、母屋用接合金具2の基板12aが嵌合される嵌合凹部3gと、挿通孔12f,12gに連通する貫通孔13e,13fが穿設されている。
【0072】
したがって、図17,図18に示すように接合金具1により柱2の接合端部2aに接合した後の登り梁3の接合端部3aの一側面に、母屋11を母屋接合用金具12により接合する場合には、まず、この母屋接合用金具12の基板12aを登り梁3の嵌合凹部3g内に嵌合させてから、基板12aの各取付孔12f,12g内に締付ボルト14a,14bを挿通し、登り梁3の各貫通孔13e,13f内に挿通させる。その際、図18中下方の締付ボルト14bの軸部は上記接合金具1の上部窓8aを貫通して干渉を避けることができる。こうして、登り梁3の背面側に突出した各締付ボルト14a,14bの各突出端部に、ナット15a,15bを締め付けて、母屋接合用金具12を登り梁3の一側面に固定する。
【0073】
次に、この母屋接合用金具12の受け板12b上に、その上方から母屋11の一端部を落し込んで、その嵌合溝13a内に、母屋接合用金具12の補強板12cと、一対のロケットピン12j(12k)とを嵌入させ、受け板12bを嵌合凹部13b内に嵌合せしめる。
【0074】
この後、母屋11の各貫通孔13c,13d内にドリフトピンを打ち込み、厚さ方向に貫通させると、これらドリフトピン10の各軸部が母屋接合用金具12の各挿通孔12h,12iを挿通するので、この母屋接合用金具12を母屋11の嵌合溝13a内で固定することができる。
【0075】
そして、母屋接合用金具12を、接合金具1の近傍にて登り梁3に取り付ける場合でも、その締付ボルト14a,14bの一方を、接合金具の窓8a内を挿通させるので、これら両金具12,1の干渉を防止することができる。
【0076】
図19は図2の平面図であり、登り梁3の接合端部3aを、柱2の接合端部2aに、その柱2の中心軸Oaが登り梁3の中心軸Obに対しほぼ直角で交差するように接合している点を示している。
【0077】
これに対し、図20は登り梁3を、その中心軸Obが柱2の中心軸Oa回りに水平方向に所要角度傾斜させて柱2に接合した状態の平面図を示している。つまり、接合金具1は登り梁3を垂直方向に所要角度傾斜させても、柱2に接合できると共に、登り梁3が柱2の中心軸Oa回りに沿う水平方向で所要角度傾斜している場合でも柱2に接合することができる。このとき、接合金具1はその断面係数が大きい幅方向を登り梁3の長手方向に向けた方が接合金具1自体ないし接合部の強度の増強を図ることができる。
【0078】
図21(A)〜図25(B)は上記接合金具1の他の実施形態をそれぞれ示している。図21(A)は図1等で示す上記接合金具1の一対のガイドピン5a,5bと上下一対の窓8a,8bとを省略して上下一対のロケットピン6,7を軸方向に一体に形成した接合金具1Oの斜視図、同(B)はその(A)の正面図である。
【0079】
また、図22(A)は図1等で示す接合金具1のガイドピン5a,5bを省略して上下一対のロケットピン6,7を軸方向に一体に形成した接合金具1Pの斜視図、同(B)は、その(A)の正面図である。
【0080】
図23(A)は図1等で示す接合金具1の上下一対の窓8a,8bを省略した接合金具1Qの斜視図、同(B)は、その(A)の正面図である。
【0081】
図24で示す接合金具1Rは図1等で示す接合金具1の上下一対の窓8a,8bを省略すると共に、一方のロケットピン、例えば7の設置箇所を金具本体4の図中下端部の例えば上下2対の4つの挿通孔9,9の上下方向中間部に移動し、かつその軸方向を横方向(幅方向)に向け、その軸方向両端部に、先細先端部7a,7aをそれぞれ形成した点に特徴がある。
【0082】
また、図25(A),(B)で示す接合金具1Sは、図1等で示す接合金具1の上下一対のロケットピン6,7のガイドピン5a,5b側の一端部6b,7bを削除した点に特徴がある。この接合金具1Sによれば上下一対のロケットピン6,7の一端部6b,7bを削除したので、軽量化と材質の節約を図ることができる。
【0083】
図26(A),(B)〜図33(A),(B)は本発明の他の実施形態に係る種々の接合金具1T〜1Wとその接続方法を示しており、これら接合金具1T〜1Wは主に棟金具として使用される。
【0084】
すなわち、図26(A)は接合金具1Tの平面図、同(B)はその(A)の側断面図である。この接合金具1Tは上下一対の長方形板状の固定板16,17の長手方向各一端同士をヒンジ18により角度調節自在に蝶着している。各固定板16,17は、その一面の各中央部にて、例えば角柱状の突部19,20をその中心軸が各固定部16,17の軸方向に沿うようにそれぞれ突設する一方、各固定板16,17の各コーナ部には、その板厚方向に貫通してボルトの軸部をそれぞれ挿通せしめる挿通孔21をそれぞれ穿設している。
【0085】
図27はこの接合金具1Tを棟金具として使用する場合の一例を示す縦断面図である。この接合金具1Tは図中左右一対の登り梁3,3の接続端部3a,3a同士が所要角度で接合する棟部の例えば内面(図27では下面)に取り付けられる。
【0086】
すなわち、一対の登り梁3,3の接続端部3a,3a同士が所要角度で接合する棟部の下面には、接合金具1Tのヒンジ18、各固定部16,17、各突部19,20をそれぞれ板厚方向に嵌合せしめる嵌合凹部22を形成する一方、各接合端部3aには、接合金具1Tの各挿通孔21にそれぞれ連通する図示しない連通孔をそれぞれ穿設している。
【0087】
したがって、この各接合端部3aの嵌合凹部22内に、接合金具1Tの全体を嵌合し、各固定部16,17の各挿通孔21に連通する連通孔からボルトを挿通し、その挿通先端部にナットを締め付けて、この接合金具1Tを固定すると、左右一対の登り梁3,3の各接続端部3a,3b同士を接合することができる。
【0088】
しかも、接合金具1Tは、各登り梁3に固定される両固定部16,17同士をヒンジ18により角度調節自在に連結しているので、一対の登り梁3,3同士の種々の傾斜角度に対応することができる。したがって、登り梁3,3同士の種々の傾斜角度に応じて予め複数種類製造し、保管する必要がないので、登り梁3同士の接合工事の施工性の向上とコスト低減とを共に図ることができる。
【0089】
また、図27中左右一対の突部19,20により、登り梁3,3同士の接合端側へそれぞれ引き寄せる力が作用するので、各登り梁3,3の接合端部3a,3a同士の接合力を増強させることができ、棟部を強固に接合することができる。さらに、工場等において、予め接合金具1を棟金具として2つの登り梁3,3の接続端部3a,3a同士に取り付けた後、この2つの登り梁3,3を接合金具1のヒンジ8により内方へ2つ折りに曲げて、建設現場へ搬送できるので、搬送効率を高めることができる。
【0090】
図28は上記登り梁3,3の棟部の内,外(図28では上,下)両面に、上記接合金具1Tをそれぞれ取り付けた実施形態の縦断面図である。この実施形態では棟部の内,外両面に、接合金具1Tをそれぞれ嵌合せしめる上下一対の嵌合凹部22a,22bをそれぞれ形成している。また、各登り梁接合端部には、各接合金具1Tの各挿通孔21に連通する図示しない連通孔をそれぞれ穿設している。
【0091】
したがって、上下一対の各嵌合凹部22a,22b内に各接合金具1Tをそれぞれ嵌合させ、次に、各登り梁3の各連通孔からボルトの軸部を挿通し、これらボルトの各軸部が各接合金具1Tの各挿通孔21を挿通してナットにより締結されることにより、各接合金具1Tが各嵌合凹部22a,22b内で固定される。
【0092】
したがって、この実施形態によれば、棟部の内,外両面を、内外2枚の接合金具1Tにより一対の登り梁3,3の接合端部3a,3a同士を接合するので、その接合力を増強させることができると共に、接合端側へ引き寄せる力も増強させることができる。しかも、両登り梁3,3に、仮にこれを閉脚させる方向に外力が作用した場合には、外面側の接合金具1Tにより、その閉脚を防止ないし抑制することができる。
【0093】
図29(A),(B)で示す棟金具用の接合金具1Uは図26(A),(B)等で示す接合金具1Tの角柱状の各突部19,20を、円柱状のロケットピン23,24に置換した点に特徴がある。
【0094】
すなわち、図29(A)の平面図に示すように各ロケットピン23,24は、各固定部16,17のほぼ中央部にて横向きに形成され、軸方向両端部を、先細先端部23a,24aに形成している。
【0095】
図29(B)の側面図に示すように各ロケットピン23,24は、その直径方向に沿って全長に亘って半割してなる両端先細の半円柱23b,24bを、各固定部16,17の表裏両面に同軸上に一体ないし一体的にそれぞれ突設することにより形成されている。
【0096】
図30はこの接合金具1Uの全体を一対の登り梁3,3の両接合端部3a,3a内の嵌合溝25内に埋設して、これら接合端部3a,3a同士を接合する状態の縦断面図である。
【0097】
すなわち、各登り梁3の各接合端部3aには、その一側面(図30の図面の表裏方向の一面)から、他面側へ接合金具1Uの全体を幅方向から嵌入せしめる所定深さの嵌合溝25を形成しており、ヒンジ18の中心軸が一対の登り梁3,3の接合端部3a,3aの接合面に一致するようになっている。また、各登り梁接合端部3aには、嵌合溝25内に嵌入された接合金具1Uの各挿通孔21に連通する図示しない連通孔が穿設されている。
【0098】
したがって、この接合金具1Uの全体を、その幅方向一端から棟部の嵌合溝25内に挿入すると、各ロケットピン23,24の挿入側の先細先端部23a,24aがその嵌合部内に挿入されて容易に位置決めされ、さらに、この接合金具1Uの全体を嵌合溝25内に打ち込むことにより、各ロケットピン23,24により挿入方向が案内されて所定位置まで挿入される。
【0099】
次に、各登り梁接合端部3aに、その各連通孔からボルトの軸部を挿通し、これらの各ボルトの軸部が接合金具1Uの各挿通孔21内を挿通してナットにより締結されることにより、嵌合溝25内で固定される。
【0100】
この接合金具1Uによっても、各登り梁接合端部3aの嵌合溝25内に嵌入されて固定される一対の固定部16,17同士をヒンジ18により角度調節自在に連結しているので、各登り梁3、すなわち棟部の種々の傾斜角度に対応することができる。
【0101】
図31(A),(B)で示す棟金具用の接合金具1Vは、図26(A),(B)で示す接合金具1Tの一対の突部19,20を、一対の補助板26,27に置換した点に特徴がある。各補助板26,27は側面形状がほぼ台形状をなし、各固定部16,17の一面の中心軸上にて長手方向に沿って一体ないし一体的に立設されている。
【0102】
図31(B)に示すように、各補助板26,27は、そのヒンジ18側一側端部にて板厚方向に貫通する図中左右一対の貫通孔28を穿設している。
【0103】
また、各補助板26,27の他側端部には、上下一対のロケットピン29,30を一体ないし一体的に固着している。各ロケットピン29,30は、その直径方向に沿って全長に亘って半割した一対の半円柱状体29aと29b、30aと30bを、各補助板26,27の各両面にて同軸上にそれぞれ固着してなり、その先端部29c,30cは先細に形成されている。
【0104】
図32はこの2枚の接合金具1Vにより接合された一対の登り梁3,3の接合端部3a,3aの縦断面図である。これら接合端部3a,3aには、その内,外面(図32では上,下面)から上下一対の接合金具1V,1Vのほぼ全体をそれぞれ嵌入せしめる嵌合溝31,31をそれぞれ形成している。
【0105】
各嵌合溝31は、各固定部16,17、ヒンジ18、各補助板26,27、ロケットピン29,30をそれぞれ嵌入せしめる嵌合部を有し、上下一対の接合金具1V,1Vの両ヒンジ18,18の中心軸が登り梁接合端部3a,3b同士の接合面上でそれぞれ一致するように形成されている。
【0106】
そこで、これら各嵌合溝31,31内に、その上方と下方とから各接合金具1V,1Vを嵌入させる。すると、各固定部16,17の各ロケットピン29,30の先細先端部29c,30cがその嵌合孔内に容易に挿入されるので、容易に位置決めされる。さらに、各接合金具1Vの各嵌合溝31内への押込みに応じて各ロケットピン29,30が接合金具1Vの挿入方向を案内し、所定位置まで嵌入される。
【0107】
この後、各接合金具1Vの各挿通孔21に連通する図示しない連通孔内にボルトの軸部を挿通し、その軸部が接合金具1Vの各挿通孔21を挿通してナットにより締結されることにより、各接合金具1Vが各登り梁接合端部3a,3aに固定される。但し、このボルトとナットによる接合金具1Vの固定は省略してもよい。
【0108】
さらに、各登り梁接合端部3a,3aの図32の紙面の表裏方向の一面から、各接合金具1Vの各貫通孔28に連通する各連通孔内にドリフトピン10を打ち込むことによっても各接合金具1Vを各嵌合溝31内に固定することができる。
【0109】
この接合金具1Vによっても、各登り梁接合端部3aの嵌合溝31内に嵌入されて固定される一対の固定部16,17同士をヒンジ18により角度調節自在に連結しているので、登り梁3、すなわち棟部の種々の傾斜角度に対応することができる。
【0110】
図33(A),(B)で示す棟金具用の接合金具1Wは、図中上下一対の円筒状または角筒状の固定部32,33をヒンジピン34により折曲自在に連結し、各筒状固定部32,33に、その直径方向に貫通する貫通孔35を複数穿設している。
【0111】
したがって、この接合金具1Wの全体を嵌入せしめる嵌合部と、各固定部32,33に連通する連通孔を、棟を形成する一対の登り梁3,3の両接合端部3a,3aにそれぞれ形成し、この嵌合部内に接合金具1Wを嵌入させてから、各接合端部3a,3aの連通孔にドリフトピン10の軸部を挿通して各固定部32,33を嵌合部内に固定する。
【0112】
この接合金具1Wによっても、各登り梁3の接合端部3aの嵌合部内に嵌入されて固定される一対の筒状固定部16,17同士をヒンジピン34により折曲自在に連結しているので、登り梁3、すなわち棟部の種々の傾斜角度に対応して、その接合端部3a,3a同士を強固に接合することができる。なお、上記登り梁3等の斜材や横架材等の木製部材は集成材でもよい。また上記各接合金具1,1A〜1Wは鉄やその合金等の金属から主に構成されるが、強化プラスチックやセラミックス等により構成してもよい。さらに、上記各ガイドピン5a,5bは角柱状でもよく、その嵌合凹部2d,3dも、そのガイドピン5a,5bの角柱に適合する角状凹部でもよく、これによれば、位置決め精度を向上させることができる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、接合しようとする木製部材の例えば柱と梁等の各接合部の各嵌合部内に、木製部材接合用金具の両端部をそれぞれ挿入する際には、その挿入位置が第1の位置決め手段により位置決めされ、かつその挿入方向が案内される。このために、木製部材接合用金具の各嵌合部内への挿入の位置決めを高精度、かつ容易に行なうことができる。そして、この柱と梁等の両接合端部の両嵌合部内に、これら接合端部同士間を跨ぐように木製部材用接合金具が挿入され、この金具が柱と梁等にそれぞれ固定されるので、これら柱と梁等が木製部材用接合金具を介して強く接合される。
【0114】
しかも、この木製部材接合金具は、例えば柱と梁等の接合端部の各嵌合部内に単に挿入されて、固定されるだけであり、柱や梁等の接合角度を規制する受け部等の部材がないので、1種類の木製部材接合用金具により梁等の種々の垂直方向傾斜角度と、梁の種々の水平方向の角度にも対応することができる。
【0115】
したがって、梁等の種々の傾斜角度と、柱の中心軸回りに沿う水平方向角度毎に種々の木製部材用接合金具を予め製造し、保管する必要がないので、柱と梁との接合施工の施工性を向上させることができると共に、コスト低減を図ることができる。
【0116】
さらに、木製部材接合用金具は、第1の位置決め手段を有するので、例えば、この接合用金具の一端部を、立設した柱の接合端部の嵌合部内に挿入して、この金具の他端部を柱の接合端部から上方へ突出させた状態で、この他端部上から例えば梁の接合端部の嵌合部を落とし込み、嵌合させることにより、この梁を柱上に仮止めすることができる。このために、梁の傾斜角度が大きい場合でも、梁が柱上から滑り落ちて危険が生ずるのを未然に防止することができる。さらにまた、単に梁の嵌合部を梁の先端よりも内方に形成することにより、梁の軒先を簡単に形成することができ、夏期等の日射遮蔽による省エネルギ化を図ることができる。
【0117】
また、木製部材の一方、例えば柱の接合端部に、木製部材接合用金具を工場等で予め取り付けて建築現場等へ搬送する場合は、この柱に、その軸方向に沿って、木製部材接合用金具を取り付けることにより、この木製部材接合用金具が柱の横方向に突出するのを防止することができる。このために、この木製部材接合用金具を取り付けた柱の多数を横方向に並べて現場等に搬送することができるので、その搬送効率を向上させることができる。
【0118】
また他の発明に係る木製部材接合用金具は、登り梁等の斜材の接合端部に、それぞれ固定される固定部同士をヒンジにより角度調節自在に連結しているので、登り梁同士の種々の傾斜角度に対応することができる棟金具として使用することができる。
【0119】
また、登り梁等の接合端部同士は、これら接合端部の位置決め用嵌合部に嵌合する金具の突部により、金属本体の各嵌合部へ挿入される位置が位置決めされると共に、これら登り梁等の接合端部側へ相互に引き寄せる力が作用するので、登り梁同士の結合力を増強させることができる。さらに、工場等において、予め接合金具を棟金具として2つの登り梁の接続端部同士に取り付けた後、この2つの登り梁を接合金具のヒンジにより内方へ2つ折りに曲げて、建設現場へ搬送できるので、搬送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の第1の実施形態に係る接合金具の斜視図、(B)は同(A)の正面図。
【図2】 図1で示す接合金具により柱に登り梁を接合した状態を示す図。
【図3】 図1で示す接合金具を柱の嵌合溝に挿入する工程の斜視図。
【図4】 図1で示す接合金具を柱の嵌合溝に挿入した後、柱にドリフトピンを打ち込む工程の斜視図。
【図5】 図1で示す接合金具を柱に固定した後、この柱上に登り梁を落とし込む工程の斜視図。
【図6】 柱上に登り梁を落とし込んだ後、この登り梁にドリフトピンを打ち込む工程の斜視図。
【図7】 図1で示す接合金具により3寸勾配の登り梁を柱に接合した状態の接合部拡大図。
【図8】 図1で示す接合金具により8寸勾配の登り梁を柱に接合した状態の接合部拡大図。
【図9】 図1で示す接合金具により10寸勾配の登り梁を柱に接合した状態の接合部拡大図。
【図10】 図1で示す接合金具により1つの小屋組みの種々の接合端部を接合した状態の接合部拡大図。
【図11】 1つの小屋組みにおいて図1で示す接合金具により8寸対10寸勾配の登り梁を柱に接合した小屋組みの図。
【図12】 1つの小屋組みにおいて図1で示す接合金具により3寸勾配の登り梁を柱に接合した小屋組みの図。
【図13】 1つの小屋組みにおいて図1で示す接合金具により8寸勾配と4.5寸勾配の登り梁を柱にそれぞれ接合した小屋組みの図。
【図14】 1つの小屋組みにおいて図1で示す接合金具により10寸勾配の登り梁を柱に接合した小屋組みの図。
【図15】 1つの小屋組みにおいて図1で示す接合金具により3寸勾配と20寸勾配の登り梁を柱に接合した小屋組みの図。
【図16】 1つのアーチ形小屋組みにおいて図1で示す接合金具により3寸勾配と10寸勾配同士の接合と、20寸勾配を柱に接合した小屋組みの図。
【図17】 図6で示す柱に接合された梁の側面に母屋を接合した状態の要部斜視図。
【図18】 図17の縦断面図。
【図19】 図2の平面図。
【図20】 登り梁を柱の中心軸周りに所要角傾斜させて柱に接合した状態の要部平面図。
【図21】 (A)は本発明の第2の実施形態に係る接合金具の斜視図、(B)は同(A)の正面図。
【図22】 (A)は本発明の第3の実施形態に係る接合金具の斜視図、(B)は同(A)の正面図。
【図23】 (A)は本発明の第4の実施形態に係る接合金具の斜視図、(B)は同(A)の正面図。
【図24】 本発明の第5の実施形態に係る接合金具の正面図。
【図25】 (A)は本発明の第6の実施形態に係る接合金具の斜視図、(B)は同(A)の正面図。
【図26】 (A)は本発明の第7の実施形態に係る接合金具の正面図、(B)は同(A)の側断面図。
【図27】 図26(A),(B)で示す接合金具を棟金具として使用した場合の棟部の縦断面図。
【図28】 図26(A),(B)で示す接合金具を棟金具として使用した場合の他の例を示す棟部の縦断面図。
【図29】 本発明の第8の実施形態に係る接合金具の正面図、(B)は同(A)の側面図。
【図30】 図29(A),(B)で示す接合金具を棟金具として使用した場合の棟部の縦断面図。
【図31】 (A)は本発明の第9の実施形態に係る接合金具の正面図、(B)は同(A)の側面図。
【図32】 図31で示す接合金具を棟金具として使用した場合の棟部の縦断面図。
【図33】 (A)は本発明の第10の実施形態に係る接合金具の正面図、(B)は同(A)の側面図。
【符号の説明】
1,1A〜1W 接合金具
2 柱
2a 柱の接合端部
2b 嵌合溝
2d 嵌合凹部
2e 嵌合孔
2f 貫通孔
3 登り梁
3a 登り梁の接合端部
3b 嵌合溝
3d 嵌合凹部
3e 嵌合孔
3f 貫通孔
4 接合金具の金具本体
5a,5b ガイドピン
6,7 ロケットピン
6a,7a ロケットピンの先細先端部
8a,8b 窓
9 挿通孔
10 ドリフトピン
11 母屋
12 母屋用接合金具
13 嵌合溝
14a,14b 締付ボルト
15a,15b ナット
16,17 一対の固定部
18 ヒンジ
19,20 突部
21 挿通孔
22,22a,22b 嵌合凹部
23,24 一対のロケットピン
23a,24a ロケットピンの先細先端部
25,31 嵌合溝
26,27 一対の補助板

Claims (7)

  1. 接合しようとする複数の木製部材の各接合端部の各嵌合部内に、これら接合端部同士間を跨がるように挿入されて固定される金具本体に、上記各嵌合部内への挿入位置をそれぞれ位置決めすると共に、挿入方向を案内する第1の位置決め手段と、
    上記金具本体の表裏両面の各中央部にてその両面の垂直方向外方にそれぞれ突出する棒状体よりなり、各木製部材の接合端部の位置決め用嵌合部内にそれぞれ嵌入されて、その挿入深さを規制する第2の位置決め手段と、
    を具備していることを特徴とする木製部材接合用金具。
  2. 上記金具本体は、板状体よりなり、上記第1の位置決め手段は、上記板状の金具本体に、その挿入方向に沿う軸方向両端部を先細形状に形成してなる棒状体をそれぞれ突設してなり、各木製部材の接合端部の嵌合部内に嵌入されるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の木製部材接合用金具。
  3. 上記金具本体は、固定具の軸部を挿通せしめる木製部材の貫通孔に連通する透孔を具備していることを特徴とする請求項1または2に記載の木製部材接合用金具。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材接合用金具により、柱と木製斜材の接合端部同士、または柱と横架材の接合端部同士を接合してなる木製部材接合構造。
  5. 木製部材接合用金具は、その金具本体の厚さよりも長い幅に沿う幅方向が木製斜材の長手方向に沿うように柱と斜材とに固定されていることを特徴とする請求項4記載の木製部材接合構造。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材接合用金具により、横架材の接合端部同士を接合してなる木製部材接合構造。
  7. 上記木製部材接合用金具は、その金具本体の厚さよりも長い幅に沿う幅方向を、横架材の重力方向に向けて両横架材に固定されていることを特徴とする請求項6記載の木製部材接合構造。
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