JP4180117B2 - 擬塑性水性ボールペン用インキ - Google Patents
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Description
本発明は、水性ボールペン用インキに関し、更に詳しくは油性ボールペンの長所を有した擬塑性水性ボールペン用インキに関するものである。
背景技術
ボールペン用インキとしては、溶剤が水や水溶性溶媒からなりインキ粘度が10mPa・s以下である低粘度の水性ボールペン用インキと、鉱物油、多価アルコール、脂肪酸、セルソルブなどの油性溶媒からなりインキ粘度が1000〜20000mPa・sである油性ボールペン用インキが一般的である。
油性ボールペン用インキを使用する油性ボールペンは、小径のインキ収納管を通しペン先のボールに付着したインキがボールの回転によって紙面に転写され、その転写された分だけのインキが収納管を通して供給される構造になっている。
水性ボールペン用インキを使用する水性ボールペンは、細かい繊維をかためた中継誘導芯の毛細管作用によってボール面や紙面へインキが供給される構造になっている。
前記した水性ボールペン用インキおよび油性ボールペン用インキは、それぞれ優れた長所を有している反面、いろいろな問題点を有している。
例えば、水性ボールペン用インキは粘性が低いために、その供給の原理は、毛細管作用を利用している。すなわち、ボールペン先端部と紙とが接触さえすればその接点に毛管作用が働き、ペン先へインキが供給される。そのため筆圧をあまり加えなくても紙面に良好な筆跡をつくりだすことができて、線割れ、かすれ、ボテの発生が起こり難くなっている。しかし、その反面、インキ収納管に直接インキを収容すると振動、衝撃、外気の温度上昇などが原因でインキが洩れだし、ペン先ボールへのインキ供給量が不安定になるため、ボールペンは細かい繊維で固めた中継誘導芯を有する複雑な構造が必要となり、更にインキ収納管のインキ残量が確認しにくいう問題がある。
一方、油性ボールペン用インキは粘性が高いため、ペン先からのインキのボタ落ちが防止でき、小径のインキ収納管に直接インキを収納でき、ボールペンの構造が簡素化できることやインキ収納管に透明な材質を使用することでインキ残量の確認が可能となる特徴がある。その反面、回転したボールと接触した紙面のみにインキが転写されるため、ボールの回転が不安定な挙動を呈すると線割やかすれを発生し易く、また紙面にインキが浸透しにくいため未転写のインキによって汚れが生じるボテが発生し易い問題点がある。
このような問題点を解決するため、最近では水溶性インキにゲル化剤や水溶性糊剤を添加して特殊な粘度特性を与えた水性ボールペン用インキ(以下、擬塑性水性インキと称す)が知られている。
この擬塑性水性インキを用いた水性ボールペンは、筆記する際にはチップ先端のボールの回転により、インキに剪断力が加えられるためにインキ粘度が低下し、水性ボールペンのような滑らかな筆記が可能となり、紙面に良好な筆跡をつくりだすことができる。また、非筆記時にはインキの粘度が高いためにペン先からのインキのボタ落ちが防止でき、しかもインキ収納管に直接インキが収納できてボールペンの構造が簡素化できることや透明な材質を使用することでインキ残量の確認が可能となる。このように擬塑性水性ボールペン用インキを用いると水性ボールペンと油性ボールペンの特徴を兼ね備えた筆記具となる。しかし実際に擬塑性水性ボールペン用インキを試作してみると、使用するチップに合わせてインキの粘度調整を行わなければ目的のペン品質を維持させることは非常に難しい。例えば、小径のボール用チップに適した品質を有するインキを、大径ボール用チップで使用するとボールとホルダーのクリアランスが変わることや、筆記時にインキに加わる剪断速度が小さくなることが原因でボテ、線割が発生したり、インキ流量過多に伴う描線乾燥性の低下といった問題が発生してくる。
本発明の目的は上記問題を解決することであり、ボール径、材質、寸法など、どのような条件のチップにも対応し得る、ボテや線割の現象が起こらず、常に滑らかに安定な筆記流量が得られて、経時安定性および描線乾燥性の高い擬塑性水性ボールペン用インキを提供することである。
発明の開示
本発明らは、前記課題を解決するために研究を行った結果、擬塑性水性インキを充填したボールペンで筆記した際に、発生する描線ボテ、線割および乾燥性の低さの問題を取り除くために、水性インキに特定の界面活性剤を特定量混合することにより目的を達成することを見出し本発明を完成するに至った。
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキは、増粘剤、着色剤、分散剤、水および極性溶剤からなる擬塑性水性ボールペン用インキに、インキ全量に対してジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを0.05〜5重量%含有することからなる。
また、本発明の第二の擬塑性水性ボールペン用インキは、増粘剤、着色剤、分散剤、水および極性溶剤からなる擬塑性水性ボールペン用インキに、インキ全量に対してジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを0.05〜3重量%、フッ素系界面活性剤を0.01〜2重量%含有することからなる。
本発明においての擬塑性とは、静止状態あるいは外力の小さい(低剪断力)ときは、極めて流動しがたくて大きな見かけ粘度を示し、外力が増大する(高剪断力)と流動性が極めて上昇し粘度も急激に減少していく状態を示している。
発明を実施するための最良の形態
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキに用いるジアルキルスルホコハク酸ナトリウムは、次式で示される。
具体的には、2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどを挙げることができる。
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムは、インキに潤滑性を与え、筆記紙面への浸透を高める効果を示す。
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキに用いるフッ素系界面活性剤としては、フルオロアルキル(C2〜C10)カルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−〔フルオロアルキル(C8〜C11)オキシ〕−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸、パーフルオロアルキル(C7〜C13)カルボン酸、モノパーフルオロアルキル(C8〜C16)エチルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
具体的な商品名としては、トーケムプロダクツ製のエフトップ“EF−352”などが例示される。
本発明の第一の擬塑性水性ボールペン用インキにおけるジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの含有量は、インキ全量に対して0.05〜5重量%である。0.05%より少ないと浸透効果が小さく、5%より多いと滲みが大きくなり筆記描線が不鮮明となってしまう。
本発明の第二の擬塑性水性ボールペン用インキにおけるジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの含有量は、インキ全量に対して0.05〜3重量%である。0.05%より少ないと浸透効果が小さく、3%より多いと滲みが大きくなり筆記描線が不鮮明となってしまう。また、フッ素系界面活性剤の含有量はインキ全量に対して0.01〜2重量%であり、インキの表面張力を著しく低下させ、インキに潤滑性を与える効果がある。0.01%より少ないと効果がなく、2重量%より多いとペン先部分のインキの直流、ボタ落ちが発生し易くなる。
次に本発明の水性ボールペン用インキにおいて使用される他の成分について説明する。
着色剤としては、水性系溶媒に溶解もしくは分散可能な染料および顔料がすべて使用可能であり、その具体例としては、エオシン、フオキシン、ウォターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォターレッド、ウォターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNBなどの酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBBなどの直接染料;ローダミン、メチルバイオレットなどの塩基性染料;カーボンブラック、群青などの無機顔料;銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエローなどの有機顔料などを挙げることができる。これらは、1種もしくは2種類以上混合して使用できる。また、これらの含有量は0.1から30重量%が好ましい。
分散剤としては、ポリエチレングリコール、スチレン−アクリル酸共重合体の塩、スチレン−マレイン酸共重合体の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体の塩などをあげることができる。
水は主要溶剤として使用でき、極性溶剤として水に相溶性のある極性基を有するすべての溶剤が使用できる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ピロリドンなどを挙げることができる。
増粘剤としては、キサンタンガム、グアーガム、ウェランガムなどの天然樹脂類、アクリル系、ウレタン系、架橋型アクリル酸重合体などの合成高分子、スメクタイト、モンモリナイトなどの無機質類が挙げられる。
架橋型アクリル酸重合体などの合成高分子の具体例としては、和光純薬(株)製の“ジュンロンPW−110”、“ジュンロンPW−111”、“ハイビスワコー103”、“ハイビスワコー104”、“ハイビスワコー105”、“ハイビスワコー304”など、BFグッドリッチカンパニー製の“カーボポール941”など、ローム&ハースジャパン(株)製の“プライマルASE−60”、“プライマルASE−75”、“プライマルTT−615”“プライマルTT−935”“プライマルGS”などが挙げられる。
他の上記成分以外に調整剤として、防錆剤としてはベンゾトリアゾール、サポニン類など、pH調整剤としては水酸化カリウム、リン酸カリウム、トリエタノールアミンなど、防腐剤としてはナトリウムオマジン、1−2ベンゾイソチアゾリンなどを、必要に応じて使用することができる。
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキの製造法は、上記成分を必要に応じて加熱溶解・混合撹拌することにより容易に得ることができる。
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキは、活性剤として従来とは異なるジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、またはフッ素系界面活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを添加することで、ボールペンに使用した時、ボール径、材質、寸法などに関係なく、ボテや線割の現象が起こらず、常に滑らかに安定な筆記流量が得られ、しかも経時安定性および描線乾燥性が高いものである。
この理由は、フッ素系界面活性剤を含有したインキは、その表面張力が著しく低下し、またジアルキルスルホコハク酸ナトリウムは、インキに固/液の界面張力、および表面張力を低下させる能力を持つ。このような性質を有するインキはボールペン用として使用するとチップに対する濡れ性が向上するために、どのような大きさのボールを用いても(つまりインキにかかる剪断力が変わっても)インキがとぎれることなく安定に筆記できる。また紙面に対してもインキの界面張力が低く、充分な浸透効果を持つために描線乾燥性が高く、ボテ、線割の発生も防止できると推察される。
実施例
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例、比較例で得られたインキ組成物について下記の試験を行った。結果を表1および表2に示す。
粘度:
E型回転粘度計により剪断速度3.84s-1および384s-1において測定した。
書き味:
筆記試験機によりボールペンで筆記し、そのインキの流出状態を次の基準で評価した。
○ 滑らかに筆記できる
△ ややひっかかりがある
× 掠れる
ボテ防止性:
筆記試験機で速度4.5m/min、角度60°、荷重100gの条件で筆記した後に、チップホルダーに付着したインキ量と描線中に落下している余分なインキ跡を観察し、つぎの基準で評価した。
○ ほとんどボテがないもの
△ わずかにボテがあるもの
× ボテが多いもの
線割防止性:
筆記試験機によりボールペンで筆記し、その描線状態を次の基準で評価した。
○ 線割れがなく良好なもの
△ 多少線割れするもの
× 線割れが目立つもの
速書性:
通常の2倍の速度で筆記した時のインキ組成物の追従性を次の基準で評価した。
○ 描線がかすれず良好に筆記できる
△ わずかにかすれる
× かすれが目立つ
描線乾燥性:
温度25℃、湿度65%の恒温室中で筆記用紙に「らせん」を筆記し、10秒後に市販綿棒でこすり、インキによる汚れ観察し、つぎの基準で評価した。
○ 汚れがない
△ わずかに汚れる
× 汚れる
実施例−1
下記配合で青色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを調製した。
フタロシアニンブルー 8.0重量%
スチレン−アクリル酸樹脂アンモニウム塩 3.0 〃
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
(花王(株)製“ペレックスOTP”) 1.0 〃
エチレングリコール 20.0 〃
アミノメチルプロパノール 0.3 〃
ベンゾトリアゾール 0.2 〃
増粘剤(アクリル系合成高分子) 0.4 〃
イオン交換水 残 部
実施例−2
下記配合で黒色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを調製した。
カーボンブラック 8.0重量%
スチレン−アクリル酸樹脂アンモニウム塩 3.0 〃
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
(花王(株)製“ペレックスTR”) 1.5 〃
エチレングリコール 20.0 〃
アミノメチルプロパノール 0.3 〃
ベンゾトリアゾール 0.2 〃
増粘剤(架橋型アクリル酸重合体) 0.4 〃
イオン交換水 残 部
実施例−3
下記配合で青色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを調製した。
フタロシアニンブルー 8.0重量%
スチレン−アクリル酸樹脂アンモニウム塩 3.0 〃
フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルカルボン酸塩:
旭硝子(株)製“サーフロンS-111”) 0.1 〃
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
(花王(株)製“ペレックスOTP”) 0.5 〃
エチレングリコール 20.0 〃
アミノメチルプロパノール 0.3 〃
ベンゾトリアゾール 0.2 〃
増粘剤(アクリル系合成高分子) 0.4 〃
イオン交換水 残 部
実施例−4
下記配合で黒色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを調製した。
カーボンブラック 8.0重量%
スチレン−アクリル酸樹脂アンモニウム塩 3.0 〃
フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルカルボン酸:
トーケムプロダクツ製“EF−352”) 0.5 〃
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
(花王(株)製“ペレックスTR”) 1.0 〃
エチレングリコール 20.0 〃
アミノメチルプロパノール 0.3 〃
ベンゾトリアゾール 0.2 〃
増粘剤(架橋型アクリル酸重合体) 0.4 〃
イオン交換水 残 部
比較例−1
実施例−1において、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを除き、リン酸エステル(東邦化学製“フォスファノールRS−610”)を0.8重量%添加して青色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを得た。
比較例−2
実施例−2において、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを除き、リン酸エステル(東邦化学製“フォスファノールRS−610”)を0.8重量%添加して黒色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを得た。
比較例−3
実施例−3において、フッ素系界面活性剤とジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを除き、カリ石鹸を0.6重量%添加して青色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを得た。
比較例−4
実施例−4において、フッ素系界面活性剤とジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを除き、カリ石鹸を0.6重量%を添加して黒色擬塑性水性ボールペン用顔料インキを得た。
上記実施例1〜4の処方によって得られたインキと比較例1〜4の処方によって得られたインキをそれぞれ、ボール径0.5mmボールペン体とボール径1.0mmボールペン体に充填し、ペンのインキの品質評価を行った。
結果を表1及び表2に示す。
産業上の利用可能性
本発明の擬塑性水性ボールペン用インキは、ボールペンに使用した時、ボール径、材質、寸法などに関係なく、ボテや線割の現象が起こらず、常に滑らかに安定な筆記流量が得られ、しかも経時安定性および描線乾燥性が高いものである。チップのボール径によらず、水性ボールペンに好適に使用することができる。
Claims (1)
- 増粘剤、着色剤、分散剤、水および極性溶剤からなる擬塑性水性ボールペン用インキに、インキ全量に対してジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを0.05〜3重量%、フッ素系界面活性剤を0.01〜2重量%を含有する擬塑性水性ボールペン用インキを充填したボール径が0.5〜1.0mmである水性ボールペン。
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