JP4179193B2 - 排気熱回収装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排気熱回収装置に関し、特に、小型化が実現し易い排気熱回収装置に関する。
近年、乗用車やバス、トラック等の車両に搭載される内燃機関の排熱や工場排熱を回収するために、理論熱効率に優れたスターリングエンジンが注目されてきている。
特開2002−266701号公報(特許文献1)には、図9に示すような内燃機関の排気熱エネルギ回収装置が開示されている。内燃機関Eの排気ポートに接続される排気管202の途中には、排気浄化用の第1触媒コンバータ204と、この第1触媒コンバータ204の下流端に隣接する第2触媒コンバータ205とが介装される。第1及び第2触媒コンバータ204、205は、排気管202に接続され共通のハウジング206を備えている。第1触媒コンバータ204は、このハウジング206の上流側半部に触媒を担持させたハニカム筒体を嵌装して構成されている。第2触媒コンバータ205は、スターリングエンジンSの加熱器として利用される。第2触媒コンバータ205は、ハウジング206の下流側半部に、触媒を各表面に担持させた受熱体208を収容して構成される。その受熱体208は、複数の伝熱管208aと、これら伝熱管208aを相互に連結する多数の受熱板208bとで構成され、受熱板208bは、ハウジング206内での排ガスの流れに沿って配置される。
上記特許文献1の排気熱エネルギ回収装置では、排気管の熱が排気熱エネルギ回収装置のうちヒータ部を除いた部分に伝達され易く、熱変形により、摺動・回転部材等の所定間隔を保って作動する部材に悪影響が及ぶおそれがある。
特開2002−266701号公報 実開平6−60751号公報
排気管に対して、排気熱回収装置が簡便な方法で取り付けられることが望まれている。
また、排気管の熱が排気熱回収装置のうちヒータ部を除く部分に伝達され難く、熱変形による、摺動・回転部材等の所定間隔を保って作動する部材への悪影響が抑制されることが望まれている。
本発明の目的は、排気管に対して、排気熱回収装置が簡便な方法で取り付けられることが可能な排気熱回収装置を提供することである。
本発明の他の目的は、排気管に対して、排気熱回収装置が簡便な方法で取り付けられることが可能であり、かつ、排気管の熱が排気熱回収装置のうちヒータ部を除く部分に伝達され難く、熱変形による、摺動・回転部材等の所定間隔を保って作動する部材への悪影響が抑制される排気熱回収装置を提供することである。
本発明の排熱回収装置は、熱媒体が流通する配管に少なくとも2つのシリンダが取り付けられる排気熱回収装置であって、少なくとも2つの前記シリンダと、前記シリンダの内部に空気軸受を介して前記シリンダと非接触の状態で支持されるピストンと、再生器と、直線近似機構と、を有する排気熱回収装置本体と、熱膨張の少ない素材で構成されると共に、前記2つのシリンダの相対的位置の基準となる基準体と、前記熱媒体が流通する前記配管の内部に設けられると共に、前記シリンダの側面に設けられるフランジと前記再生器の側面に設けられるフランジとを覆う遮熱部材と、を備え、前記排気熱回収装置本体は、前記基準体を介して前記配管に取り付けられることを特徴としている。
本発明において、排気熱回収装置本体は、スターリングエンジンであることができる。また、本発明において、排気熱回収装置は、スターリングエンジンと基板とを備えていることができる。本発明によれば、排気熱回収装置が配管に対して簡便な方法で取り付けられることができる。また、本発明によれば、基準体と配管とが連結固定可能であるため、排気熱回収装置と配管との取付精度が悪化することが抑制される。
本発明の排気熱回収装置において、前記熱媒体の熱が前記配管の外部に伝達されることを抑制する伝熱抑制構造を備えたことを特徴としている。
本発明によれば、熱媒体の熱が配管の外部に伝達されることが抑制されるため、熱源のロスが抑制され、排気熱回収装置の出力の低下が抑制される。
本発明の排気熱回収装置において、前記伝熱抑制構造は、前記配管と前記基準体との間に設けられた第1断熱部材であることを特徴としている。
本発明によれば、熱媒体の熱が基準体に伝達されることが抑制されるため、熱源のロスが抑制され、排気熱回収装置の出力の低下が抑制される。また、本発明によれば、熱媒体の熱が基準体に伝達されることが抑制されるため、基準体が熱変形することが抑制される。
本発明の排気熱回収装置において、前記伝熱抑制構造は、前記配管の内部に設けられ前記熱媒体の熱が前記基準体に伝達されることを抑制する遮熱部材であることを特徴としている。
本発明によれば、遮熱部材が配管の内部の熱媒体の熱の外部(基準体)への伝達を抑制するため、熱源のロスが抑制され、排気熱回収装置の出力の低下が抑制される。
本発明において、排気熱回収装置は熱媒体が流通する配管に取り付けられる排気熱回収装置であって、少なくとも2つのシリンダを有する排気熱回収装置本体と、前記2つのシリンダの相対的位置の基準となる基準体とを備え、前記排気熱回収装置本体は、前記基準体を介して前記配管に取り付けられており、前記基準体には、冷媒が通るための冷媒通路が設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、基準体の冷媒通路が低温側シリンダ側(再生器の低温側シリンダ側)に設けられて、冷却されることにより、排気熱回収装置の出力低下の抑制に有効である。
本発明の排気熱回収装置において、前記冷媒通路は、前記2つのシリンダのうちの低温側シリンダ側にのみ設けられていることを特徴としている。
本発明の排気熱回収装置において、前記冷媒通路では、前記2つのシリンダのうちの高温側シリンダ側から前記冷媒が供給されることを特徴としている。
本発明によれば、相対的に低温の冷媒が冷媒通路の高温側シリンダ側で流れることになり、有効な冷却が行われる。
本発明の排気熱回収装置において、前記冷媒には、前記排気熱回収装置本体の冷却器の冷却水が使用されることを特徴としている。
本発明の排気熱回収装置において、前記排気熱回収装置本体のピストンの往復方向が概ね水平方向となるように、車両に取り付けられることを特徴としている。
本発明の排気熱回収装置において、前記排気熱回収装置本体は、前記基準体を介して前記配管に設けられたフランジ部に取り付けられることを特徴としている。
本発明の排気熱回収装置において、前記配管のフランジ部と前記基準体とを固定する固定具と、前記配管のフランジ部との間には、第2断熱部材が設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、熱媒体の熱が固定具に伝達されることが抑制されるため、熱源のロスが抑制され、排気熱回収装置の出力の低下が抑制される。
本発明の排気熱回収装置において、前記排気熱回収装置本体は、前記配管の内径が前記熱媒体の流れにおける上流側よりも相対的に拡径された部分に取り付けられることを特徴としている。
本発明の排気熱回収装置において、前記少なくとも2つのシリンダは、直列に配置され、前記排気熱回収装置本体は、冷却器と再生器と加熱器とを含む熱交換器を有し、前記熱交換器は、第1の前記シリンダと第2の前記シリンダとを結ぶように前記熱交換器の少なくとも一部がカーブ形状を有するように構成されていることを特徴としている。
上記本発明によれば、2つのシリンダが直列に配置され、かつ熱交換器が第1及び第2のシリンダとを結ぶようにその少なくとも一部がカーブ形状を有するように構成されているので、搭載スペースがコンパクトに抑えられ、車両のような限られたスペースに搭載される場合であっても設置の自由度が増す。更に、例えば管の内部のように受熱可能な領域が限定されている場合に、その領域内で加熱器をカーブ形状に形成すれば伝熱面積を極力大きく確保することができる。また、冷却器または再生器をカーブ形状にした場合には、角のある形状に比べて流路抵抗を低減することができる。流路抵抗の観点から、熱交換器の一部にでも角の部分がないように構成される。熱交換器の流路の軸線は、角の部分が形成されないように直線同士の組み合わせではなく、曲線と直線との組合わせまたは曲線のみから、構成されるのが良い。
本発明の排気熱回収装置において、前記加熱器は、前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとを結ぶような前記カーブ形状を有するように構成され、前記再生器は、前記シリンダの延在方向に沿う直線状に構成されていることを特徴としている。
上記本発明によれば、加熱器のカーブ形状の部分を、例えば管の内部のように受熱可能な領域であって限定された領域に対応させて設計・配置すれば、その領域内で伝熱面積を極力大きく確保することができる。また、再生器がシリンダの延在方向に沿う直線状に構成されているため、流路抵抗が少ない。
本発明の排気熱回収装置において、前記第1のシリンダにおいて前記加熱器と接続される面と、前記再生器において前記加熱器と接続される面は、前記熱媒体が流通する熱媒体通路に露出するように設けられ、前記第1のシリンダにおいて前記加熱器と接続される面と、前記再生器において前記加熱器と接続される面は、概ね同一であることを特徴としている。
上記本発明によれば、熱媒体通路内において、前記第1のシリンダにおいて前記加熱器と接続される面と、前記再生器において前記加熱器と接続される面との間に大きな段差が形成されないので、熱媒体通路を流れる熱媒体の流動に対して流動抵抗が抑制される。
排気熱回収装置の設置方法が簡単であるほど、搭載性が良くなる。このことから、本発明では、排気熱回収装置であるスターリングエンジンのシリンダ、熱交換器の取付ベースとなる基盤部材を設定し、この基盤部材が排気管のフランジ部と接合される構成が採用される。
上記本発明において、インバーなどのような熱膨張の少ない素材で構成される。
上記基盤部材には、冷却用のドリル穴が設けられ、その穴の中に水などの冷媒を流す。この場合、スターリングエンジンの冷却器の排出水を利用することができる。
排気管内で、排気ガスと接触する基盤部材面上に遮熱板を設けることが有効である。
スターリングエンジンが取り付けられる排気管には、スターリングエンジンの加熱器の投影面積よりも大きな開口部が設けられている。
スターリングエンジンが取り付けられる基盤部材と排気管の間には、断熱・耐熱ガスケットが介在することが望ましい。
スターリングエンジンが取り付けられる基盤部材と排気管は、排気管のフランジ部においてボルト、クランプのような締結手段により、外部から接続可能であることができる。
スターリングエンジンが車両に搭載される場合には、スターリングエンジンのピストン往復方向が水平となるように配置されることが好ましい。
排気管にスターリングエンジンが取り付けられるに際しては、その取付に用いられるボルト、クランプなどの固定手段を介してスターリングエンジンに熱が伝達されることを抑制するため、SUS(断熱)ボルト、断熱ワッシャー、断熱クランプ座などが用いられることが好ましい。
本発明の排気熱回収装置によれば、排気管に対して、排気熱回収装置が簡便な方法で取り付けられることができる。
以下、本発明の排気熱回収装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態の排気熱回収装置を示す正面図である。図1に示すように、本実施形態の排気熱回収装置は、α型(2ピストン形)のスターリングエンジン10であり、二つのパワーピストン20、30を備えている。二つのパワーピストン20、30は、直列並行に配置されている。低温側パワーピストン30のピストン31は、高温側パワーピストン20のピストン21に対して、クランク角で90°程度遅れて動くように位相差がつけられている。
高温側パワーピストン20のシリンダ(以下高温側シリンダという)22の上部の空間(膨張空間)には、加熱器47によって加熱された作動流体が流入する。低温側パワーピストン30のシリンダ(以下低温側シリンダという)32の上部の空間(圧縮空間)には、冷却器45によって冷却された作動流体が流入する。
再生器(再生熱交換器)46は、膨張空間と圧縮空間を作動流体が往復する際に熱を蓄える。即ち、膨張空間から圧縮空間へと作動流体が流れる時には、再生器46は、作動流体より熱を受け取り、圧縮空間から膨張空間へと作動流体が流れる時には、蓄えられた熱を作動流体に渡す。
2つのピストン21、31の往復動に伴い、作動ガスの往復流動が生じて高温側シリンダ22の膨張空間と低温側シリンダ32の圧縮空間にある作動流体の割合が変化するとともに、全内容積も変わるため、圧力の変動が生じる。2つのピストン21、31がそれぞれ同位置にある場合の圧力を比較すると、膨張ピストン21についてはその上昇時より下降時の方がかなり高く、圧縮ピストン31については逆に低くなる。このため、膨張ピストン21は外部に対し大きな正の仕事(膨張仕事)を行い、圧縮ピストン31は外部から仕事(圧縮仕事)を受ける必要がある。膨張仕事は、一部が圧縮仕事に使われ、残りが駆動軸40を介して出力として取り出される。
本実施形態のスターリングエンジン10は、車両においてガソリンエンジン(内燃機関)と共に用いられてハイブリッドシステムを構成する。即ち、スターリングエンジン10は、ガソリンエンジンの排気ガスを熱源として用いた排気熱回収装置である。スターリングエンジン10の加熱器47が車両のガソリンエンジンの排気管100の内部に配置され、排気ガスから回収した熱エネルギーにより作動流体が加熱されてスターリングエンジン10が作動する。
本実施形態のスターリングエンジン10は、排気管100の内部にその加熱器47が収容されるというように車両内の限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。そのために、スターリングエンジン10では、2つのシリンダ22、32をV字形ではなく、直列並行に配置した構成を採用している。
加熱器47が排気管100の内部に配置されるに際しては、排気管100の内部において相対的に高温の排気ガスが流れる排気ガスの上流側(ガソリンエンジンに近い側)100aに、加熱器47の高温側シリンダ22側が位置し、相対的に低温の排気ガスが流れる下流側(ガソリンエンジンから遠い側)100bに加熱器47の低温側シリンダ32側が位置するように配置される。加熱器47の高温側シリンダ22側をより多く加熱するためである。
高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32のそれぞれは、円筒状に形成されており、基準体である基板42に支持されている。本実施形態においては、この基板42が、スターリングエンジン10の各構成要素の位置基準となる。このように構成されることで、スターリングエンジン10の各構成要素の相対的位置精度が確保される。また、この基板42は、スターリングエンジン10が排熱回収対象である排気管(排気通路)100等に取り付けられるときの基準として用いられる。基板42は、インバーのような熱膨張の少ない材料で構成される。
高温側シリンダ22の側面(外周面)22cに設けられたフランジ22fの上面、及び再生器46の側面(外周面)46cに設けられたフランジ46fの上面には、遮熱板120a、120bが設けられている。図3は、遮熱板120a、120bを示す上面図である。
図3に示すように、遮熱板120a、120bは、2つの板状部材120a、120bから構成されており、これら2つの板状部材120a、120bによって、フランジ22fの上面及びフランジ46fの上面を周方向全域に亘って覆う構成とされている。遮熱板120a、120bは、図7に示される、排気管100に設けられた開口部100cにおいて、高温側シリンダ22の頂部22b及び再生器46の上部46a以外の領域を全て覆うような形状とされている。遮熱板120a、120bは、半割型に構成され、図3の破線及び図1に示すように、一部が互いに重なり合った構成とされている。
遮熱板120a、120bは、排気管100の内部において、高温側シリンダ22のフランジ22f及び再生器46のフランジ46fを覆って、排気ガスに直接さらされることを防ぎ、フランジ22f及びフランジ46fに排気ガスの熱が伝達されることを有効に抑制している。これにより、スターリングエンジン10が動作する際の熱源となる排気ガスの熱のロスが抑制される。
高温側シリンダ22のフランジ22f及び再生器46のフランジ46fと遮熱板120a、120bは、基板42に対して、耐熱性のSUS製ボルト88により固定されている。排気管100のフランジ100fに対して、断熱・耐熱ガスケット110(断熱材、スペーサ、図示せず)を介して、基板42が耐熱性のSUS製ボルト81により固定されている。図2は、スターリングエンジン10の側面図である。図2に示されるように、排気管100のフランジ100fは、基板42及び断熱・耐熱ガスケット110に対して、断熱性のワッシャー82を介して、ボルト81により固定されている。排気管100とスターリングエンジン10が、排気管100の外部にてボルト81により固定されるため、排気管100に対してスターリングエンジン10を簡便に取り付けることができる。また、基板42には、後述する隔壁70が固定されている。
なお、図1及び図2に示した構成例では、排気管100のフランジ100fは、基板42及び断熱・耐熱ガスケット110に対して、断熱ワッシャー82を介して、ボルト81により固定されている例について説明したが、この構成に代えて、図6に示すように、排気管100のフランジ100fは、基板42及び断熱・耐熱ガスケット110に対して、断熱クランプ座83を介してクランプ84により固定されることができる。
上記のように、排気管100と基板42の間には、断熱・耐熱ガスケット110が介在するように設けられている。このことから、排気管100の表面から熱が奪われることが抑制され、これにより、スターリングエンジン10が動作する際の熱源となる排気ガスの熱のロスが抑制される。また、排気管100の表面の熱が基板42に対して伝達されることが抑制されるため、基板42が熱により変形することが防止される。
同様に、排気管100のフランジ100fには、断熱ワッシャー82や断熱クランプ座83を介して、ボルト81やクランプ84で固定されるため、排気管100の表面から熱が奪われることが抑制され、これにより、スターリングエンジン10が動作する際の熱源となる排気ガスの熱のロスが抑制される。
排気管100とスターリングエンジン10とは、基板42を介して取り付けられる。このとき、基板42と、高温側シリンダ22において加熱器47が接続される側の端面(頂部22bの上面)、及び低温側シリンダ32において冷却器45が接続される側の端面(頂面32a)とが実質的に平行になるように、スターリングエンジン10が基板42に取り付けられる。あるいは、基板42とクランクシャフト43(又は駆動軸40)の回転軸とが平行になるように、もしくは排気管100の中心軸とクランクシャフト43の回転軸とが平行になるように、スターリングエンジン10が基板42に取り付けられる。これにより、既存の排気管100に大幅な設計変更を加えることなく、容易に排気管100にスターリングエンジン10を取り付けることができる。その結果、排熱回収対象である車両の内燃機関本体の性能や搭載性、騒音等の機能を損なうことなくスターリングエンジン10を排気管100に搭載することができる。また、同一仕様のスターリングエンジン10を異なる排気管に取り付ける場合でも、加熱器47の仕様を変更するだけで対応できるので、汎用性を向上させることができる。
図1に示すように、基板42における低温側シリンダ32側には、冷却水などの冷媒を流通させるための冷却水路42aが設けられている。冷却水路42aが基板42のうち低温側シリンダ32側(または再生器46側)に設けられているのは、低温側シリンダ32の上方の再生器46の下部を冷却するためである。高温側シリンダ22側に冷却水路42aは設けなくてもよい。
図4は、冷却水路42aを示す上面図である。図4に示すように、冷却水路42aは、概ね全周に亘って再生器46の下部を周方向に囲むように設けられている。図4では、冷却水路42aの左に高温側シリンダ22が配置されている。冷却水路42aに冷却水が供給されるに際しては、再生器46の下部の周囲の領域のうち高温側シリンダ22に臨む側(左側)を最初に冷却水が通り、その後に、再生器46の下部の周囲の領域のうち高温側シリンダ22とは反対側を冷却水が通り、その後に冷却水路42aから排出される流れとなるように構成されている。
即ち、図4においては、冷却水路42aのうち、高温側シリンダ22と低温側シリンダ32に挟まれる部分の最も奥(図4では上)に、冷却水の入口42bが設けられている。冷却水路42aの入口42bから流入した冷却水は、冷却水路42aのうち高温側シリンダ22に臨む部分を通ることで、再生器46の下部の高温側シリンダ22の臨む部分を冷却する。その後、冷却水路42a内の冷却水は、再生器46の下部の高温側シリンダ22とは反対側を冷却した後に、出口42cから外部に排出される。
再生器46の下部のうち特に冷却の必要性が高いのは、高温側シリンダ22に隣接する側である。相対的に高温である高温側シリンダ22に距離が近いため、その分、高温となるからである。また、排気管100の内部において、排気ガスは、図1の矢印100aの方向から流れるため、再生器46の下部のうち高温側シリンダ22に隣接する側の温度が高いからである。
冷却水路42aにおいて冷却水が上記のような流れ方をすることにより、再生器46の下部のうち特に冷却の必要性が高い高温側シリンダ22に隣接する側が、相対的に低温の冷却水で冷却されることになり、高い冷却効果が得られる。即ち、冷却水路42a内の冷却水は、冷却対象(再生器46の下部)と熱交換をして冷却することにより、相対的に水温が上昇し、冷却性能が低下する傾向にあるが、再生器46の下部のうち特に冷却の必要性が高い高温側シリンダ22に隣接する側には、冷却性能が未だ低下していない冷却水が提供されることにより、高い冷却効果が得られる。なお、冷却水路42aに供給される冷却水は、冷却器45において冷却用として使用された後に冷却器45から排出された水が用いられることができる。
図7は、図1のA−A断面を示している。図7において、符号100cは、排気管100に設けられた開口部を示している。排気管100の開口部100cは、加熱器47の投影面積47gよりも大きい。排気管100のフランジ100fには、フランジ100fと、断熱・耐熱ガスケット110及び基板42を固定するためのボルト81が配設されている。
なお、図4では、単一の冷却水路42aが、再生器46の下部の周囲をその周方向の概ね全域に亘って囲むように設けられた構成例について説明した。これに代えて、図7に示すように、複数の冷却水路42aが用いられることができる。図7では、複数の冷却水路42aのそれぞれは、直線状に設けられており、各冷却水路42aがそれぞれ、再生器46の下部の周方向の接線方向に設けられている。複数の冷却水路42aのそれぞれの流路が図4の単一の冷却水路42aよりも短いため、冷却効果が高い。
次に、図1を参照して、排気管100に対するスターリングエンジン10の取付方法について説明する。
まず、基板42と高温側シリンダ22のフランジ22fと再生器46のフランジ46fと遮熱板120a、120bとをボルト88により固定する。これにより、スターリングエンジン10が遮熱板120a、120bとともに基板42に固定される。
次に、基板42に対して遮熱板120a、120bとともにボルト88により固定されたスターリングエンジン10の加熱器47側を、排気管100の開口部100cから排気管100の内部に入れる。
次に、排気管100のフランジ100fに対し、断熱・耐熱ガスケット110を介して基板42をボルト81により固定する。これにより、図1に示されるように、排気管100に対してスターリングエンジン10が取り付けられた状態となる。
上記のように、基板42に対してスターリングエンジン10が固定され、そのスターリングエンジン10が固定された基板42が排気管100に固定されることにより、排気管100に対して、スターリングエンジン10を簡便な方法で取り付けることができる。また、排気管100に対して基板42が連結固定されることにより、スターリングエンジン10における加熱・冷却を繰り返す運転状態においても、取付精度の悪化が防止される。
図5に示すように、スターリングエンジン10は、車両130の床下に配された排気管100に隣接するスペースに、横置き、即ち、車両130の床面131に対して、高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32のそれぞれの軸線方向が概ね平行になるように配置され、2つのピストン21、31は、水平方向(図中矢印X方向)に往復動される。通常、排気管100は、車両130の底部に設けられており、排気管100と地面との間の高さは小さいが、スターリングエンジン10が水平方向に取り付けられることにより、スターリングエンジン10の搭載性が向上する。また、スターリングエンジン10が水平方向に取り付けられることにより、垂直方向に取り付けた場合に比べて、重心が低く設定され、車両の安定性につながる。本実施形態では、説明の便宜上、2つのピストン21、31の上死点側を上方向、下死点側を下方向であるとして説明する。
作動流体は、その平均圧力が高い程、冷却器45や加熱器47による同じ温度差に対しての圧力差が大きくなるので高い出力が得られる。そのため、上記のように、高温側シリンダ22、低温側シリンダ32内の作動流体は高圧に保持されている。
ピストン21,31は、円柱状に形成されている。ピストン21、31の外周面とシリンダ22、32の内周面との間には、それぞれ数十μmの微小クリアランスが設けられており、そのクリアランスには、スターリングエンジン10の作動流体(空気)が介在している。ピストン21,31は、それぞれシリンダ22、32に対して空気軸受48により非接触の状態で支持されている。したがって、ピストン21,31の周囲には、ピストンリングは設けられておらず、また、一般にピストンリングと共に使用される潤滑油も使用されていない。但し、シリンダ22、32の内周面には、固定潤滑材が付されている。空気軸受48の作動流体の摺動抵抗は元々極めて低いが、更に低減するために、固定潤滑材が付されている。上記のように、空気軸受48は、作動流体(気体)により膨張空間、圧縮空間それぞれの気密を保ち、リングレスかつオイルレスでクリアランスシールを行う。
加熱器47は、複数の伝熱管(管群)47tを有し、それらの複数の伝熱管47tが概ねU字形の形状に形成されてなるものである。各伝熱管47tの第1端部47aが高温側シリンダ22の上部(頂部)(頂面22a側の端面)22bに接続されている。各伝熱管47tの第2端部47bが再生器46の上部(加熱器47側の端面)46aに接続されている。上記のように、加熱器47が概ねU字形に形成されている理由については後述する。
再生器46は、蓄熱材(マトリックス、図示せず)と、そのマトリックスが収容される再生器ハウジング46hとを備えている。再生器ハウジング46hには、高圧の作動流体が入るため、再生器ハウジング46hは、耐圧容器である。再生器46では、マトリックスとして、積層された金網が用いられている。
再生器46には、上述した機能から、以下の条件が要求される。即ち、伝熱性能と蓄熱容量が高く、流動抵抗(流動損失、圧力損失)が小さいことのほか、作動流体の流れ方向の熱伝導率が小さく、温度勾配を大きくとれることが要求される。その金網の材料は、ステンレス鋼であることができる。積層された各金網のメッシュを通過するときに、その金網に作動流体の熱が蓄熱される。
上記のように、再生器46の側面46cには、フランジ46fが設けられており、そのフランジ46fが基板42に固定されている。フランジ46fの上面46faには、断熱材(図示せず)を介して、シュラウド46sが設けられている。シュラウド46sは、再生器46(再生器ハウジング46h)の側面46cに、排気管100内の排気ガスの熱が伝達されることを抑制する。
再生器46の上部は、排気管(排気ダクト)100の内部に配設されている。以下に、再生器46の上部が排気管100の内部に設けられている理由について説明する。
本実施形態では、スターリングエンジン10の熱源が車両の内燃機関の排気ガスであることから、得られる熱量に制約があり、その得られる熱量の範囲でスターリングエンジン10を効果的に作動させる必要がある。そのため、膨張空間に、なるべく高温の作動流体が流れるべく、高温側シリンダ22の頂部(上部)22b及び高温側シリンダ22の側面22cの上部が、排気管100の内部に配設されている。これにより、上死点近傍での膨張ピストン21の上部は、排気管100の内部に位置することになり、膨張ピストン21の上部が効果的に加熱される。
一方、2つのシリンダ22、32が直列並行に配置されてなるスターリングエンジン10において、第1端部47aから第2端部47bまでの全体が排気管100の内部に配設される加熱器47の、上記高温側シリンダ22が接続される第1端部47aと反対側の第2端部47bには、再生器46の上面46aが接続されている。スターリングエンジン10の出力に直接的には関与しない無効容積の増大を抑制すべく、加熱器47の第2端部47bと再生器46の上面46aとは、接続用の配管を介することなく、直接的に接続されている。この再生器46の上面46aは、上下方向において、高温側シリンダ22の頂部22bと概ね同じ位置となるように排気管100の内部に収容されている。
以下、排気管100の内部において、再生器46の上面46aが、上下方向において、高温側シリンダ22の頂部22bと概ね同じ位置となるように配置されている理由について説明する。
その第一の理由は、排気管100内を流れる排気ガスの流動抵抗の増大や、よどみの発生を抑制するためである。即ち、排気ガスが、排気管100の延在方向(図中左右方向)に沿うように直線状に円滑に流れるようにするため、再生器46の上面46aと、高温側シリンダ22の頂部22bとの間に上下方向の段差が形成されないように構成されている。
第二の理由は、スターリングエンジン10の装置規模のコンパクト化のためである。即ち、スターリングエンジン10は、車両130の床下に配される内燃機関の排気管100に隣接する限られた空間に搭載されることから、スターリングエンジン10の小型化が要求されている。ここでは、スターリングエンジン10の小型化の指標として、排気管100の内部に収容される加熱器47の第1及び第2端部47a、47bのそれぞれから、クランクシャフト43(駆動軸40)までの上下方向の長さ寸法を考えることとする。
この場合、加熱器47の第1及び第2端部47a、47bのそれぞれから、クランクシャフト43までの上下方向の長さを決定付けるのは、高温側パワーピストン20側ではなく、低温側のパワーピストン30側の長さである。その理由は、上下方向において、高温側パワーピストン20側の構成要素が高温側シリンダ22のみであるのに対して、低温側のパワーピストン30側は低温側シリンダ32に加えて冷却器45及び再生器46がある分だけ、上下方向の長さが大きくなることにある。
ここで、本実施形態では、膨張ピストン21の上下方向の長さが圧縮ピストン31に比べて大きく形成され、また、高温側シリンダ22の上下方向の長さが低温側シリンダ32に比べて大きく形成されている。その結果として、上述した構成要素の数の差に伴って生じる、高温側パワーピストン20側と低温側のパワーピストン30側の上下方向の長さの差が緩和されている。
しかしながら、それでも、低温側のパワーピストン30側の長さの方が長いことには変わりがない。このことから、スターリングエンジン10の上下方向の長さを決定付けるのは、低温側のパワーピストン30側の長さということになる。
以上のことから、本実施形態では、冷却器45が、スターリングエンジン10全体の上下方向の大きさに与える影響を最小限に抑えるべく、冷却器45の構成を工夫している。
なお、上記において、膨張ピストン21の上下方向の長さが圧縮ピストン31に比べて大きく形成され、また、高温側シリンダ22の上下方向の長さが低温側シリンダ32に比べて大きく形成されている理由は、以下の通りである。
膨張空間の高温の作動流体がクランクシャフト43の高温側パワーピストン20側の周辺の空間に流入したり、圧縮空間の低温の作動流体がクランクシャフト43の低温側のパワーピストン30側の周辺の空間に流入することがないように、高温側シリンダ22と膨張ピストン21とのシール及び低温側シリンダ32と圧縮ピストン31とのシールが確実に行われる必要がある(後述のように、そのシールには空気軸受48が使用されている)。
一方で、上記のように、膨張空間を高温にすべく、高温側シリンダ22の頂部22b及び側面22cの上部は、排気管100の内部に収容されるため、高温側シリンダ22の上部及び膨張ピストン21の上部が熱膨張する。高温側シリンダ22及び膨張ピストン21のそれぞれの上部の熱膨張する部分では、シールが確実に行えないおそれがある。このことから、本実施形態では、膨張ピストン21及び高温側シリンダ22の上下方向の長さを長く設定し、これにより、膨張ピストン21の上下方向に温度勾配を持たせて、熱膨張の影響を受けない部分(膨張ピストン21の下部)にてシールが確実に行えるようにしている。また、高温側シリンダ22と膨張ピストン21との間は、膨張ピストン21の下部(熱膨張の影響を受けない部分)にてシールされるので、そのシール部の移動距離を十分に確保して膨張空間を十分に圧縮するために、高温側シリンダ22の上下方向の長さが長く設定されている。
次に、図1を参照して、冷却器45の構成について説明する。
再生器46と低温側シリンダ32との間には、上記隔壁(部材)70が設けられている。隔壁70は、熱伝導率の低い材質で形成されている。隔壁70において、低温側シリンダ32の軸線方向(上下方向)の長さ寸法は、後述する伝熱管45tの引き回しの機能を果たすために十分な大きさを確保しつつなるべく小さく設計されている。スターリングエンジン10の小型化に寄与するためである。
上記のように、隔壁70は、基板42に固定されている。隔壁70の上面70aは、再生器46の下面(加熱器47側の上記端面46aと反対側の端面)に、直接接触するように設けられている。隔壁70の下面70bは、低温側シリンダ32の頂面32aを兼ねている。隔壁70の側面(外周面)には、冷却器45の後述するクーラ容器45cが固定されている。
冷却器45は、水冷の多管式熱交換器(shell-and-tube exchanger, tubular exchanger)により構成されている。冷却器45は、複数の伝熱管(管群)45tと、クーラ容器45cとを有している。冷却器45の複数の伝熱管45tの大部分は、クーラ容器45cに収容されている。伝熱管45tのクーラ容器45cに収容された部分は、クーラ容器45cに供給された冷却水(冷媒)Wと接触し、これにより、伝熱管45tを流れる作動流体が冷却される。
上記のように、クーラ容器45cは、隔壁70の外周面に固定されている。クーラ容器45cは、隔壁70の外周面の周方向に亘ってリング状に設けられている。このクーラ容器45cは、低温側シリンダ32の外周部の上部(圧縮空間に対応する部分)を周方向に囲むようなリング状に形成されている。クーラ容器45cは、低温側シリンダ32の外周部の周方向の全周に亘って設けられている。または、これに代えて、クーラ容器45cは、低温側シリンダ32の外周部の周方向の一部を囲むように設けられることができる。
クーラ容器45cが、スターリングエンジン10の上下方向において、低温側シリンダ32と再生器46との間ではなく、低温側シリンダ32の外周部の側方に配置されているため、スターリングエンジン10の小型化に寄与することができる。クーラ容器45cが、低温側シリンダ32の外周部の側方に低温側シリンダ32の外周部を周方向に囲むように配置されることにより、スターリングエンジン10の上下方向の大きさをコンパクトに抑えつつ、クーラ容器45cは、必要な熱交換能力を得るための十分な容量を確保することができる。
複数の伝熱管45tのそれぞれの一方の開口部45taは、隔壁70の上面70aに開口するように設けられている(以下、再生器側出入口と称する)。即ち、再生器側出入口45taは、再生器46の下端面に開口した状態となるように構成されている。各伝熱管45tには、再生器側出入口45taを介して、再生器46からの作動流体が導入される。
複数の伝熱管45tのそれぞれの他方の開口部45tbは、低温側シリンダ32の頂面32a(隔壁70の下面70b)に開口するように設けられている(以下、低温側シリンダ側出入口と称する)。各伝熱管45tには、低温側シリンダ側出入口45tbを介して、低温側シリンダ32の上部の圧縮空間からの作動流体が導入される。低温側シリンダ32の頂面32aには、複数の伝熱管45tの低温側シリンダ側出入口45tbがそれぞれ頂面32aの面方向に均等に分散配置されている。
上記のように、低温側シリンダ32の外周部の圧縮空間に対応する上部がクーラ容器45cにより覆われることで、低温側シリンダ32の外周部の上部の冷却に効果がある。低温側シリンダ32の周囲には、排気管100からの熱のほか、ラジエターや内燃機関の表面からの熱があり、クーラ容器45cにより、これらの熱が低温側シリンダ32の外周部に伝わるのが有効に遮られる。これにより、スターリングエンジン10の出力の向上につながる。この場合、低温側シリンダ32の外周部の圧縮空間に対応する上部のうち、少なくとも低温側シリンダ32の頂面32a近傍に対応する部分がクーラ容器45cにより覆われることが好ましい。
一方、図1に示されるように、冷却器45(特にクーラ容器45c)は、高温側シリンダ22の側面22cの頂部22b側から、十分に離間するように、十分に下方に配置されている。即ち、本来、効率の向上のために高温であることが好ましい位置である高温側シリンダ22の側面22cの頂部22b側が、基板42の上方の排気管100の内部空間に配設されるのに対し、冷却器45は、基板42の下方の位置に配設されている。
冷却器45は、高温側シリンダ22の側面22cの頂部22b側から、特に、物理的距離ではなく熱伝達空間として捉えたときに、十分に離間した位置に配置されている。これにより、高温側シリンダ22の側面22cの上部が、クーラ容器45cによって冷却されることにより悪影響が生じることはない。
ここで、図1に示すように、低温側シリンダ32の軸線方向に直交する再生器46の任意の断面46sと、低温側シリンダ32の軸線方向に直交する低温側シリンダ32の任意の断面32sの間に形成され、それらの断面46s、32sがそれぞれ軸線方向両側の円形端面となる略円柱状の仮想空間Vsを考える。
従来一般のスターリングエンジンでは、この仮想空間Vsに冷却器(クーラ容器)が設けられているのに対し、本実施形態では、仮想空間Vsに冷却器45のクーラ容器45cが設けられていない。即ち、仮想空間Vsに冷却器45の冷媒により冷却される作動流体の流路(伝熱管45t)が設けられていない。これにより、低温側シリンダ32ないし駆動軸40(又はクランクシャフト43)と、再生器46との間の、低温側シリンダ32の軸線方向の寸法が小さく抑えられることになり、スターリングエンジン10の小型化が実現する。
仮想空間Vsは、以下のように言い換えることが可能である。
即ち、低温側シリンダ32の軸線方向に直交する低温側シリンダ32の任意の断面32sを低温側シリンダ32の頂面32aの方向に低温側シリンダ32の軸線上及びその軸線の延長線上に仮想的に重ねることにより圧縮空間側に仮想空間が形成される。
本実施形態では、低温側シリンダ32の外周部の側方に、低温側シリンダ32の外周部をその周方向に囲むように冷却器45が設けられているので、必要な冷却能力が得られるに十分な大きさ(体積)の冷却器45(特にクーラ容器45c)に形成されつつ、その冷却器45の大きさが低温側シリンダ32の軸線方向におけるスターリングエンジン10の長さ寸法に与える影響が最小限に抑えられている。
次に、ピストン・シリンダのシール構造及びピストン・クランク部の機構について説明する。
上記のように、スターリングエンジン10の熱源が車両の内燃機関の排気ガスであることから、得られる熱量に制約があり、その得られる熱量の範囲でスターリングエンジン10を作動させる必要がある。そこで、本実施形態では、スターリングエンジン10の内部フリクションを可能な限り低減させることとしている。本実施形態では、スターリングエンジンの内部フリクションのうち最も摩擦損失が大きいピストンリングによる摩擦損失を無くすため、ピストンリングを使用せずに、その代わりに、シリンダ22、32とピストン21、31との間には、それぞれ空気軸受(エアベアリング)48が設けられる。
空気軸受48は、摺動抵抗が極めて小さいため、スターリングエンジン10の内部フリクションを大幅に低減させることができる。空気軸受48を用いても、シリンダ22、32とピストン21、31との間の気密は確保されるため、高圧の作動流体が膨張・収縮の際に漏れるという問題は生じない。
空気軸受48は、シリンダ22、32とピストン21、31の間の微小なクリアランスで発生する空気の圧力(分布)を利用して,ピストン21、31が空中に浮いた形となる軸受である。本実施形態の空気軸受48では、シリンダ22、32とピストン21、31との間の直径クリアランスは数十μmである。空中に物体を浮上させる空気軸受を実現するには、機構的に空気圧が強くなる部分(圧力勾配)ができるようにする他に、後述するように高圧の空気を吹きつけるものでもよい。
本実施形態では、高圧の空気を吹き付けるタイプの空気軸受ではなく、医療用ガラス製注射器のシリンダとピストンの間で用いられている空気軸受と同じ構成の空気軸受が用いられる。
また、空気軸受48を使用することで、ピストンリングで用いる潤滑油が不要となるので、潤滑油によりスターリングエンジン10の熱交換器(再生器46,加熱器47)が劣化するという問題が発生しない。なお、本実施形態では、ピストンリングにおける摺動抵抗と潤滑油の問題が解消されれば足りるので、流体軸受のうち油を使用する油軸受を除いた、気体軸受であれば空気軸受48に限られることなく適用することができる。
本実施形態のピストン21、31とシリンダ22、32との間には、静圧空気軸受を用いることも可能である。静圧空気軸受とは、加圧流体を噴出させ、発生した静圧によって物体(本実施形態ではピストン21、31)を浮上させるものである。また、静圧空気軸受に代えて、動圧空気軸受を用いることも可能である。
空気軸受48を用いて、ピストン21、31をシリンダ22、32内で往復運動させる際には、直線運動精度を空気軸受48の直径クリアランス未満にしなくてはならない。また、空気軸受48の負荷能力が小さいため、ピストン21、31のサイドフォースを実質的にゼロにしなくてはならない。即ち、空気軸受48は、シリンダ22、32の直径方向(横方向,スラスト方向)の力に耐える能力(耐圧能力)が低いため、シリンダ22、32の軸線に対するピストン21、31の直線運動精度が高い必要がある。特に、本実施形態で採用する、微小クリアランスの空気圧を用いて浮上させて支持するタイプの空気軸受48は、高圧の空気を吹き付けるタイプに比べても、スラスト方向の力に対する耐圧能力が低いため、その分だけ高いピストンの直線運動精度が要求される。
上記の理由から、本実施形態では、ピストン・クランク部にグラスホッパの機構(近似直線リング)50を採用する。グラスホッパの機構50は、他の直線近似機構(例えばワットの機構)に比べて、同じ直線運動精度を得るために必要な機構のサイズが小さくて済むため、装置全体がコンパクトになるという効果が得られる。特に、本実施形態のスターリングエンジン10は、自動車の排気管の内部にその加熱器47が収容されるというように限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。また、グラスホッパの機構50は、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の重量が他の機構よりも軽量で済むため、燃費の点で有利である。さらに、グラスホッパの機構50は、機構の構成が比較的簡単であるため、構成(製造・組み立て)し易い。
図8は、スターリングエンジン10のピストン・クランク機構の概略構成を示している。本実施形態において、ピストン・クランク機構は、高温側パワーピストン20側と低温側パワーピストン30側とで共通の構成を採用しているため、以下では、低温側パワーピストン30側についてのみ説明し、高温側パワーピストン20側についての説明は省略する。
図8及び図1に示すように、圧縮ピストン31の往復運動は、コネクティングロッド109によって駆動軸40に伝達され、ここで、回転運動に変換される。コネクティングロッド109は、図8に示す近似直線機構50によって支持されており、圧縮ピストン31を直線状に往復運動させる。このように、コネクティングロッド109を近似直線機構50によって支持することにより、圧縮ピストン31のサイドフォースFがほとんどゼロになるので、負荷能力の小さい空気軸受48によって十分に圧縮ピストン31を支持することができる。
次に、上記のように、加熱器47が概ねU字形(カーブ形状)に形成される理由について説明する。
スターリングエンジン10の熱源は、上記のように車両のガソリンエンジンの排気ガスであり、スターリングエンジンに専用に用意された熱源ではない。そのため、それほど高い熱量が得られるわけではなく、排気ガスの例えば約800℃程度の熱量でスターリングエンジン10が作動する必要がある。そのために、スターリングエンジン10の加熱器47は排気管100内の排ガスから効率的に受熱する必要がある。
加熱器47、再生器46、冷却器45からなる熱交換器の体積は、出力に直接的には関与しない無効容積となっており、熱交換器の体積が増えると、スターリングエンジン10の出力が減少する。一方で、熱交換器の体積をコンパクトにすると、その分、熱交換が困難となり受熱量が減少し、スターリングエンジン10の出力が減少する。これらのことから、無効容積の減少と受熱量の増加とを両立させるためには、熱交換器の効率を上げる必要がある。そのために、加熱器47は効率的に受熱する必要がある。
熱源の種類を問わず、その熱源から効率的に受熱し、かつ効率的に熱交換するためには、加熱器は、熱エネルギーを受熱するための伝熱面積がなるべく大きく、かつ冷却器が受熱しない場所に配置可能であるという意味において、上記実施形態の構成が望ましい。
特に、排熱を利用する場合には熱エネルギーは管を介して排ガスとして供給される場合が殆どであることとも相俟って、例えば管の内部のように受熱可能な領域が限定されている場合に、伝熱面積が極力大きく、かつ冷却器が受熱しない場所に配置される構成としては、上述したスターリングエンジン10の構成が優れている。以下に、スターリングエンジン10の構成の技術的意義について更に述べる。
無効容積部分(冷却器、再生器、加熱器)が小さい方が良いことは前述の通りであるが、無効容積部分に湾曲した形状を有している場合、湾曲部の数が多いと流路抵抗が大きくなり、また湾曲部の曲率が小さいと流路抵抗は大きくなる。即ち、作動流体の圧力損失を考慮すると、湾曲部の数は単一であり曲率は大きい方が良い。この点に関し、加熱器47は概ねU字形であり、湾曲形状となっているが、湾曲部の数は1つである。また、冷却器45は、スターリングエンジン10の小型化(上下寸法の短縮)のために、湾曲部を有した構成とされており、上記のような特徴を有する構成とされている。
また、図1に示すように、上記実施形態の無効容積部分の曲率に関しては、直列並行に配置された2つのシリンダ22、32の上部同士を連結し、かつ排気管100の内部において作動流体の流動抵抗の増大を抑制すべく概ね同一面上に設定された高温側シリンダ22の頂部22b及び再生器46の上面46aと、排気管100の上部内面との間の上下方向の高さと、加熱器47の端部47a、47bと中央部47cの最上部との間の高さが概ね同じ高さhになる構成に合わせて、その曲率(カーブ形状)が設定されている。排気管100の内部のような限定された空間内で排気ガスのような流体の熱源との接触面積を大きく確保するためには、上記のようなカーブ形状が望ましい。
以上の観点からすると、無効容積部分のうち加熱器は、その全体が排気管の内部のような熱源からの熱を受ける限定された空間(受熱空間)内に収容されるとともに、その受熱空間内で、熱源からの伝熱面積を最大限に確保可能でかつ流路抵抗が最小となるように、例えばU字形やJ字形のようなカーブ形状に構成されるのがよい。
再生器46は、作動流体の流路抵抗を最小限にしつつ配置するために、低温側シリンダ32の延在方向(軸線方向)に沿って(同一軸線上に)直線状に構成される。このように、加熱器47の第2端部47bに連結される再生器46は、低温側シリンダ32の延在方向に沿って設けられる。加熱器47の第1端部47aは、高温側シリンダ22の上部に隙間無く接続される。これらのことから、少なくとも加熱器47の第1端部47a及び第2端部47b側には、それぞれ高温側シリンダ22、低温側シリンダ32の延在方向に沿う部分を有し、加熱器47の中央部47cは、上述したようなカーブ形状を有する場合が多いことになる。
上述した技術的理由から、加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間で、途中で方向変換(ターン)する形状に構成されている。加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間を連結する曲線部分とを有している。
また、図1に示すように、排気管100において、スターリングエンジン10が取り付けられる部分は、排気管100の内径(排気ガスの流路)が拡径されるように膨出された構成とされている。これにより、排気管100の内径が拡径された部分では、排気ガスの流速が低下し、排気ガスの滞留時間が長くなる。これにより、加熱器47と排気ガスとの接触時間(熱交換時間)を長く取ることができ、スターリングエンジン10の出力が向上する。
本発明の排気熱回収装置の一実施形態を示す正(断)面図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態を示す側(断)面図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態の遮熱板を示す上面図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態の冷却水路を示す上面図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態が車両に搭載された状態を説明するための図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態の変形例を示す側(断)面図である。 図1のA−A視底面図である。 本発明の排気熱回収装置の一実施形態において、適用される直線近似機構を説明するための説明図である。 従来のスターリングエンジンを説明するための説明図である。
符号の説明
10 スターリングエンジン
20 高温側パワーピストン
21 膨張ピストン
22 高温側シリンダ
22a 高温側シリンダの上面
30 低温側パワーピストン
31 圧縮ピストン
32 低温側シリンダ
32a 低温側シリンダの頂面
32s 低温側シリンダの断面
42 基板
42a 冷却水路
42b 入口
42c 出口
45 冷却器
45a 冷却器の上面
45c クーラ容器
45t 伝熱管
45ta 再生器側出入口
45tb 低温側シリンダ側出入口
46 再生器
46a 再生器の上面
47 加熱器
47a 第1端部
47b 第2端部
50 近似直線機構
70 隔壁
81 ボルト
82 断熱ワッシャー
83 断熱クランプ座
84 クランプ
88 ボルト
100 排気管
100c 開口部
110 断熱・耐熱ガスケット
120a、120b 遮熱板
130 車両
Vs 仮想空間
W 冷却水

Claims (18)

  1. 熱媒体が流通する配管に少なくとも2つのシリンダが取り付けられる排気熱回収装置であって、
    少なくとも2つの前記シリンダと、前記シリンダの内部に空気軸受を介して前記シリンダと非接触の状態で支持されるピストンと、再生器と、直線近似機構と、を有する排気熱回収装置本体と、
    熱膨張の少ない素材で構成されると共に、前記2つのシリンダの相対的位置の基準となる基準体と、
    前記熱媒体が流通する前記配管の内部に設けられると共に、前記シリンダの側面に設けられるフランジと前記再生器の側面に設けられるフランジとを覆う遮熱部材と、
    を備え、
    前記排気熱回収装置本体は、前記基準体を介して前記配管に取り付けられる
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  2. 請求項1記載の排気熱回収装置において、
    前記熱媒体の熱が前記配管の外部に伝達されることを抑制する伝熱抑制構造を備えた
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  3. 請求項2記載の排気熱回収装置において、
    前記伝熱抑制構造は、前記配管と前記基準体との間に設けられた第1断熱部材である
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  4. 請求項2記載の排気熱回収装置において、
    前記伝熱抑制構造は、前記配管の内部に設けられ前記熱媒体の熱が前記基準体に伝達されることを抑制する遮熱部材である
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の排気熱回収装置において、
    前記基準体には、冷媒が通るための冷媒通路が設けられている
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  6. 請求項5記載の排気熱回収装置において、
    前記熱媒体の熱が前記配管の外部に伝達されることを抑制する伝熱抑制構造を備えた
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  7. 請求項6記載の排気熱回収装置において、
    前記伝熱抑制構造は、前記配管と前記基準体との間に設けられた第1断熱部材である
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  8. 請求項6記載の排気熱回収装置において、
    前記伝熱抑制構造は、前記配管の内部に設けられ前記熱媒体の熱が前記基準体に伝達されることを抑制する遮熱部材である
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  9. 請求項5から8のいずれか一項に記載の排気熱回収装置において、
    前記冷媒通路は、前記2つのシリンダのうちの低温側シリンダ側にのみ設けられている
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  10. 請求項9記載の排気熱回収装置において、
    前記冷媒通路では、前記2つのシリンダのうちの高温側シリンダ側から前記冷媒が供給される
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  11. 請求項5から10のいずれか1項に記載の排気熱回収装置において、
    前記冷媒には、前記排気熱回収装置本体の冷却器の冷却水が使用される
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の排気熱回収装置において、
    前記排気熱回収装置本体のピストンの往復方向が概ね水平方向となるように、車両に取り付けられる
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の排気熱回収装置において、
    前記排気熱回収装置本体は、前記基準体を介して前記配管に設けられたフランジ部に取り付けられる
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  14. 請求項13記載の排気熱回収装置において、
    前記配管のフランジ部と前記基準体とを固定する固定具と、前記配管のフランジ部との間には、第2断熱部材が設けられている
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  15. 請求項1から14のいずれか1項に記載の排気熱回収装置において、
    前記排気熱回収装置本体は、前記配管の内径が前記熱媒体の流れにおける上流側よりも相対的に拡径された部分に取り付けられる
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  16. 請求項1から15のいずれか1項に記載の排気熱回収装置において、
    前記少なくとも2つのシリンダは、直列に配置され、
    前記排気熱回収装置本体は、冷却器と再生器と加熱器とを含む熱交換器を有し、
    前記熱交換器は、第1の前記シリンダと第2の前記シリンダとを結ぶように前記熱交換器の少なくとも一部がカーブ形状を有するように構成されている
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  17. 請求項16記載の排気熱回収装置において、
    前記加熱器は、前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとを結ぶような前記カーブ形状を有するように構成され、前記再生器は、前記シリンダの延在方向に沿う直線状に構成されている
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
  18. 請求項16または17に記載の排気熱回収装置において、
    前記第1のシリンダにおいて前記加熱器と接続される面と、前記再生器において前記加熱器と接続される面は、前記熱媒体が流通する熱媒体通路に露出するように設けられ、
    前記第1のシリンダにおいて前記加熱器と接続される面と、前記再生器において前記加熱器と接続される面は、概ね同一である
    ことを特徴とする排気熱回収装置。
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