以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(実施形態の構成)
図1は、多回路電力量計の本体の構成を示す図である。図2は、電力量計測演算処理回路の一例を示すブロック図である。図3は、電力量計測演算処理回路の他の一例を示すブロック図である。図4は、交流回路の電流測定回路及びコネクタDの構成を示す図である。図4(A)は、交流回路の電流測定回路の構成を示す図であり、図4(B)は、コネクタDの構成を示す正面図である。図5は、共通電圧測定回路の構成を示す図である。図6は、絶対値化回路と分解能との関係を説明するための図である。図6(A)は、絶対値化回路が有る場合における分解能を説明するための図であり、図6(B)は、絶対値化回路が無い場合における分解能を説明するための図である。図7は、絶対値化回路の入力波形、絶対値化回路の出力波形、及び、極性信号生成回路の出力における相互関係を示す図である。図7(A)は、絶対値化回路の入力波形を示し、図7(B)は、絶対値化回路の出力波形を示し、図7(C)は、極性信号生成回路の出力を示す。図8は、単相3線式の場合における結線の正誤を説明するための図である。図9は、多回路電力量計の増設ユニットの構成を示す図である。
図1において、多回路電力量計の本体10は、メモリカードスロット21、メモリカードインターフェース22、制御回路23、電源24、表示設定ユニットインターフェース25、本体通信処理回路26、コネクタB27、極性信号生成回路28(28−1、28−2)、電力量計測演算処理回路29、本体アドレス生成回路30、絶対値化回路31(31−1、31−2)、共通電圧測定回路32、電流測定回路33、コネクタC34、コネクタD35及びコネクタE36を備えて構成される。
これらメモリカードスロット21、メモリカードインターフェース22、制御回路23、電源24、表示設定ユニットインターフェース25、本体通信処理回路26、コネクタB27、極性信号生成回路28(28−1、28−2)、電力量計測演算処理回路29、本体アドレス生成回路30、絶対値化回路31(31−1、31−2)、共通電圧測定回路32及び電流測定回路33は、回路基板12に実装され、箱状の筐体11に収納される。コネクタC34、コネクタD35及びコネクタE36は、筐体11の一方側面に備え付けられる。そして、筐体11には、回路基板12に実装されたコネクタB27における増設ユニット40のコネクタA43(図9)が差し込まれる差込口の在る方向における延長上にケーブル収納スペース13が設けられている。ケーブル収納スペース13は、例えば、対向する1対の面が無い中空直方体状の枠体によって構成される。なお、図1では、筐体11の前面板を外した状態を示している。なお、増設ユニット40及びコネクタA43については、図9を参照しながら後述する。
メモリカードスロット21は、情報を記憶するメモリカードが差し込まれ、メモリカードとメモリカードインターフェースとを電気的に接続するための部材である。メモリカードは、例えば、PCMCIAに準拠したカード等である。メモリカードインターフェース22は、制御回路23の制御に従ってメモリカードスロット21に差し込まれたメモリカードに情報を読み書きする回路である。
制御回路23は、例えば、マイクロプロセッサ(以下、「MPU」と略記する。)231及びRAMやROM等のメモリ232等を備えたマイクロコンピュータで構成され、メモリ232に記憶された制御プログラムに従ってメモリカードインターフェース22、表示設定ユニットインターフェース25、本体通信処理回路26及び電力量計測演算処理回路29を制御する。また、制御回路23は、コネクタB27に接続された増設ユニット40から送信された通信信号に収容された電力量データを本体通信処理回路26を介して受信し、メモリ232に記憶する。そして、制御回路23のメモリ232は、増設ユニット40のアドレス及び制御プログラム等の各種プログラム等を予め記憶すると共に、プログラム実行中に生じたデータ等を記憶する。
電源24は、メモリカードインタフェース22、制御回路23、表示設定ユニットインタフェース25、本体通信処理回路26及び電力量計測演算処理回路29等の電力供給の必要な各回路に電力を供する回路である。そして、電源24は、電源線m1を介して増設ユニット40に電力を供給する。電源24は、例えば、交流回路から取り込んだ電力の電圧を所要の電圧に変換する変圧回路と、変圧回路の交流出力を整流する整流回路と、整流回路の脈流出力を直流に平滑する平滑回路とを備えて構成され、平滑回路の直流出力を負荷変動や温度変動等に対して安定化させて出力する安定化回路を必要に応じてさらに備えて構成される。変圧回路は、例えば、トランスを備えて構成され、整流回路は、例えば、ダイオードを備えた半端整流回路又は全波整流回路で構成される。平滑回路は、例えば、コンデンサを備えて構成され、安定化回路は、例えば、三端子レギュレータを備えて構成される。
表示設定ユニットインタフェース25は、後述の表示設定ユニット50を駆動するための回路であり、コネクタE36を介して表示設定ユニット50に接続される。本体通信処理回路26は、当該本体10と増設ユニット40との間で通信を行うための回路であり、制御回路23からのデータを所定のプロトコルに従った通信信号に生成すると共に通信線m2(増設ユニット40)からの通信信号を制御回路23が処理可能な形式のデータに変換する回路である。
コネクタB27は、この多回路電力量計の本体10と増設ユニット40とを電気的に接続するための部材であり、増設ユニット40に例えばIECの規格に準拠したフラットケーブル47(図9)を介して接続されたコネクタA43が差し込まれる。
電力量計測演算処理回路29は、共通電圧の絶対値化波形におけるオフセットずれを補正すると共に、共通電圧測定回路32の出力及び電流測定回路33の出力に基づいて交流回路の各計測点ごとに該計測点における電力量を演算する回路である。
電力量計測演算処理回路29は、例えば、図2に示すように、入力回路切替回路291と、電力量計測回路292と、回路毎電力量演算回路293とを備えて構成される。
入力回路切替回路295は、共通電圧線m5からのL1−N線間における共通電圧、共通電圧線m6からのL2−N線間における共通電圧、及び、第1乃至第4電流計測回路33−1〜33−4からの各計測点における電流を、交流回路の交流周期Tの半分以下の時間間隔(T/2以下)で各計測点における電流を順次に切替えつつ、共通電圧と各計測点における電流とを交互に切替えて、電力量計測回路292に出力する回路である。交流回路の交流周期Tの半分以下の時間間隔(T/2以下)で切替えるのは、標本化定理に依る。
電力計測回路292は、ゲイン可変増幅回路2921と、電圧・電流サンプルホールド回路(以下、「電圧・電流S/H」と略記する。)2922と、アナログ/ディジタル変換器(以下、「A/D変換器」と略記する。)2923と、メモリ2924と、電力演算回路2925とを備えて構成される。電力計測回路292は、入力回路切替回路291の出力をゲイン可変増幅回路2921でA/D変換器2923の分解能を最大限利用することができるように増幅し、電圧・電流S/H2922にホールドさせる。電力計測回路292は、電圧・電流S/H2922にホールドされているアナログ値をA/D変換器2923でディジタル化し、そのディジタル値をメモリ2924に記憶させる。そして、電力計測回路292は、メモリ2924の共通電圧と当該計測点の電流とに基づいて電力演算回路2925で電力を演算する。また、電力計測回路292の電力演算回路2925は、共通電圧の絶対値化波形におけるオフセットずれを補正する。
回路毎電力量演算回路293は、電力計測回路292で計測した電力を積算することによって電力量を計測点ごとに演算する回路である。
このような図2に示す構成の電力量計測演算処理回路29は、交流回路の交流周期Tの半分以下の時間間隔(T/2以下)で各計測点における電流を順次に切替えつつ、共通電圧と各計測点における電流とを交互に切替えて、交流回路の各計測点について順次に電力を演算すると共に、演算した電力を各計測点ごとに積算することによって交流回路の各計測点について電力量を計測する。
電力量計測演算処理回路29は、また例えば、特開平10−026641号公報に詳述されているが、図3に示すように、入力回路切替回路295と、電力量計測回路296と、回路毎電力量演算回路297とを備えて構成される。
入力回路切替回路295は、共通電圧線m5からのL1−N線間における共通電圧、共通電圧線m6からのL2−N線間における共通電圧、及び、第1乃至第4電流計測回路33−1〜33−4からの各計測点における電流を、交流回路の計測点ごとに交流の特定整数周期を単位時間として順次に切替えて電力量計測回路296に出力する回路である。
電力量計測回路296は、時分割回路2961と、計測対象の複数の計測点別に設けた電圧サンプルホールド回路2962a及び電流サンプルホールド回路2962bから成る電圧電流サンプルホールド回路2962と、マルチプレクサ2963と、A/D変換器2964と、メモリ2965と、時分割電力量演算回路2966とを備えて構成され、入力回路切替回路295からの出力に基づいて単位時間における電力量を周期的に計測する。また、電力量計測回路296の時分割電力量演算回路2966は、共通電圧の絶対値化波形におけるオフセットずれを補正する。回路毎電力量演算回路297は、電力量計測回路296で計測した単位時間における電力量を連続計測した場合の電力量に換算して計測点ごとについての電力量を演算する回路である。
このような図3に示す構成の電力量計測演算処理回路29は、交流回路の各計測点について順次に、当該計測点の電圧及び電流を交流の特定整数周期(単位時間)で検出して単位時間の電力量を演算すると共に、他計測点の電圧及び電流を検出している間における当該計測点の電力量がこの検出した単位時間の電力量であると擬制して連続計測した場合における電力量に換算している。例えば、第1乃至第3の3個の計測点における各電力量を計測する場合には、電力量計測演算処理回路29は、第1単位時間で第1計測点の電圧及び電流を検出して電力量を計測し、第2単位時間で第2計測点の電圧及び電流を検出して電力量を計測し、第3単位時間で第3計測点の電圧及び電流を検出して電力量を計測する。第4単位時間では第1計測点に戻り、以下同様に各計測点の電力量を順次に周期的に計測する。そして、第2及び第3単位時間における第1計測点の電力量は、第1単位時間で計測した電力量であるとみなし、第1計測点の第1乃至第3単位時間における電力量を得ている。
図1に戻って、本体アドレス生成回路30は、アドレス線m7、m8、m9のうちアドレス線m7、m8に対して増設ユニット40でアドレスを自動的に生成するための第1電位が印加される。
電流測定回路33は、計測対象の交流回路における計測点にカップリングされた変流器の出力に基づいて当該計測点における電流を測定し、測定した電流を電力量計測演算処理回路27に出力する回路である。電流測定回路33は、本実施形態では4箇所の計測点における電力量を略同時に計測することができるようにすることから、第1電流測定回路33−1、第2電流測定回路33−2、第3電流測定回路33−3及び第4電流測定回路33−4の4個である。電流測定回路33の個数は、多回路電力量計の本体10における仕様による。電流測定回路33には、例えば、図4(A)に示すように、単相3線式の交流回路(L1、N、L2)100にカップリングして取り付けられる変流器331の出力がコネクタD35を介して入力される。そして、電流測定回路33は、入力インピーダンス332と、電流検出部333とを備えて構成され、電流検出部333で検出した電流が電力量計測演算処理回路29に出力される。
ここで、変流器331と電流検出部333とは、コネクタD35を介して接続されるため、コネクタD35の個数は、電流測定回路33の個数と同数であり、本実施形態では、コネクタD35−1、コネクタD35−2、コネクタD35−3及びコネクタD35−4の4個である。そして、図4(B)において、本体10の筐体11側には、コネクタD35のコネクタオス35−aが設けられ、コネクタD35のコネクタオス35−aは、2個の変流器331の出力が入力され得る電流入力用の3個の電流入力用のピン351、352、353と、パルスが入力され得るパルス入力用の2個のピン354、355とを備えて構成される。即ち、変流器331からの電流を入力する場合には、2個の変流器331の出力が、コネクタD35のコネクタオス35−aに接続可能なコネクタメス35−bの3個のピンに接続され、変流器331の出力端子k1がピン351に接続され、変流器331の出力端子k3がピン352に接続され、そして、変流器331の出力端子lがピン353に接続される。なお、変流器331の出力端子lは、2個の変流器331の共通の出力端子となっている。また、パルスを入力する場合には、パルス出力が、コネクタD35のコネクタオス35−aに接続可能なコネクタメス35−bの2個のピンに接続され、パルス出力の一方の出力がピン354に接続され、そして、パルス出力の他方の出力がピン355に接続される。パルス入力用の端子354、355には、例えば、ガスメータや量水器などの計量結果をパルスとして出力する計測機器が接続され、コネクタD35を介して入力されたパルスは、不図示のパルス計数回路によってパルス数が計数される。
このように電流入力用のコネクタメス35−bとパルス入力用のコネクタメス35−bとを1個のコネクタオス35−aに接続可能とすることによって、電流入力用のコネクタメスと接続するためのコネクタオスとパル入力用のコネクタメスと接続するためのコネクタオスとを各々本体10の筐体11に設ける必要がなく、筐体11を小型化することができる。さらに、電流入力用のコネクタメスと接続するためのコネクタオスとパル入力用のコネクタメスと接続するためのコネクタオスとがコネクタD35のコネクタオス35−aとして兼用されているので、当該本体10を取り扱う取扱者にとっても誤接続の心配がない。
共通電圧測定回路32は、計測対象の交流回路における共通の電圧を測定し、測定した共通電圧を絶対値化回路31及び極性信号生成回路28に出力する回路である。共通電圧測定回路32は、本実施形態では3線式(L1、N、L2)で電気を供給する交流回路100における電圧を測定することから、L1−N間の電圧を測定するためのL1−N共通電圧測定回路32−1、及び、L2−N間の電圧を測定するためのL2−N共通電圧測定回路32−2の2個である。共通電圧測定回路32の個数は、測定対象とする交流回路の配電方式による。共通電圧測定回路32は、例えば、図5に示すように、交流回路100に接続される変成器331と、電圧検出部322とを備えて構成され、電圧検出部322で検出した電圧が絶対値化回路31及び極性信号生成回路28に出力される。ここで、交流回路100と変成器331とは、コネクタC34を介して接続される。このため、コネクタC34の個数は、共通電圧測定回路32の個数と同数であり、本実施形態では、コネクタC34−1及びコネクタC34−2の2個である。
電力を演算するためには、位相ずれによる誤差等を軽減するために略同時刻に測定した電圧値と電流値とが必要である。多回路電力量計の本体10は、上述したように共通電圧測定回路32と電流測定回路33とを備えるので、略同時刻に測定した電圧値と電流値とを得ることができる。一方、多回路電力量計の増設ユニット40は、図9を用いて後述するように、コストを低減するために、共通電圧測定電圧を備えることなく、電力の演算に必要な電圧値を多回路電力量計の本体10から得るように構成されている。
ここで、多回路電力量計の本体10から増設ユニット40に電圧値を通知する方法は、多回路電力量計の本体10において、共通電圧測定回路32で計測した電圧値をアナログ値からディジタル値にアナログ/ディジタル変換し、本体通信処理回路26で所定のプロトコルに従って電圧値(ディジタル値)を収容する通信信号を生成し、生成した通信信号を通信線m2を用いて増設ユニット40に送信し、そして、増設ユニット40において、受信した通信信号から電圧値(ディジタル値)を取り出す方法がある。このような方法では、本体10側で通信信号を生成し、増設ユニット40側では通信信号から電圧値(ディジタル値)を取り出す処理が必要となり、その処理に時間を要してしまう。この処理時間に起因して共通電圧の測定時刻と増設ユニット40で測定された電流の測定時刻とがずれてしまい、その結果、演算した電力は、誤差を含むものとなってしまう。この誤差が多回路電力量計の増設ユニット40に要求される測定精度の範囲内であれば、問題ないが、測定精度を満たさない場合もある。そこで、本実施形態に係る多回路電力量計の本体10は、共通電圧測定回路32で計測した電圧値をアナログ/ディジタル変換することなくアナログ波形で増設ユニット40に通知している。このような方法を採用することにより、本体10側では通信信号を生成し、増設ユニット40側では通信信号から電圧値(ディジタル値)を取り出すための処理時間が不必要となり、その分、多回路電力量計の増設ユニット40における測定精度を向上させることができる。
共通電圧測定回路32で計測した電圧値をアナログ/ディジタル変換することなくアナログで増設ユニット40に通知する方法は、共通電圧測定回路32の出力を直接共通電圧線m5、m6を介して増設ユニット40に通知する方法がある。電力量計測演算処理回路29にはアナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器が含まれるが、この方法では、交流回路100に流れる交流が正負の値を取り得るので、図6(B)に示すように、A/D変換器のビット数の半分に入力波形のゼロレベルを合わせる必要がある。そのため、正側の分解能及び負側の分解能は、A/D変換器のビット数における半分のビット数である。例えば、A/D変換器が10ビットである場合には、入力波形は、正側512段階の分解能でディジタル化(量子化)され、負側512段階の分解能でディジタル化される。
多回路電力量計の本体10及び増設ユニット40に要求される仕様によっては、この方法でも充分であるが、より測定精度を向上させるために、本実施形態では、絶対値化回路31によって、絶対値化した共通電圧を共通電圧線m5、m6を介して増設ユニット40に通知する。絶対値化回路31は、図6(A)及び図7(B)を見ると分かるように、入力波形(図7(A))、即ち、共通電圧測定回路32の出力波形のうち正側をそのままにし共通電圧測定回路32の出力波形のうち負側を正側に折り返して入力波形の絶対値の波形(図7(B))を形成する回路である。このように共通電圧測定回路32の出力波形を絶対値化することによって、絶対値化した波形の最大ピークがA/D変換器の入力レンジ一杯になるように絶対値化した波形を増幅して、絶対値化した波形をA/D変換器の全ビット数の分解能でディジタル化することができる。例えば、A/D変換器が10ビットである場合には、入力波形は、1024段階のフル分解能でディジタル化される。絶対値化部304は、例えば、ダイオードを用いた全波整流回路とオペアンプで構成される。
このように絶対値化回路31を用いることによってA/D変換器の分解能を最大限利用することが可能であるが、共通電圧の極性が不明となり、電力量を演算することができなくなってしまう。そのため、本実施形態では、絶対値化回路31によって絶対値化した共通電圧波形の他に、この絶対値化した共通電圧波形の電気的な極性を示す情報も多回路電力量計の本体10から増設ユニット40に通知している。
極性信号生成回路28は、図7(A)及び図7(C)を見ると分かるように、入力波形(図7(A))、即ち、共通電圧測定回路32の出力波形における電気的な極性(正(+)か負(−)か)を判定する回路であり、極性に従った矩形波(図7(C))を生成する。例えば、極性信号生成回路28は、入力波形が正(+)の場合にはハイレベルの矩形波を生成し、入力波形が負(−)の場合にはローレベルの矩形波を生成する。判定結果は、極性信号線m3、m4を介して増設ユニット40に通知される。極性信号生成回路28は、例えば、コンパレータICで構成される。
また、このような極性信号生成回路28を備えることによって、L1−N共通電圧測定回路32−1の交流回路100に対する結線の正誤、及び、L2−N共通電圧測定回路32−2の交流回路100に対する結線の正誤を判断することができる。
即ち、交流回路が単相3線式の場合には、図8に示すように、各共通電圧測定回路32の結線が正しい場合には、L1−N間における共通電圧の正弦波と、L2−N間における共通電圧の正弦波とは、180°(π)だけ位相がずれているので、L1−N共通電圧測定回路32−1で測定された共通電圧の極性を示す矩形波(極性信号生成回路28−1の出力波形)と、L2−N共通電圧測定回路32−2で測定された共通電圧の極性を示す矩形波(極性信号生成回路28−2の出力波形)とは、逆極性となる。即ち、極性信号生成回路28−1の出力波形が正(+)を示している場合には、極性信号生成回路28−2の出力波形は、負(−)を示し、極性信号生成回路28−1の出力波形が負(−)を示している場合には、極性信号生成回路28−2の出力波形は、正(+)を示す。一方、各共通電圧測定回路32の結線が誤っている場合には、L1−N間における共通電圧の正弦波と、L2−N間における共通電圧の正弦波とは、同相となるので、極性信号生成回路28−1の出力波形と、極性信号生成回路28−2の出力波形とは、同極性となる。
このように極性信号生成回路28−1の出力波形と極性信号生成回路28−2の出力波形とを逆極性か同極性かの観点から比較することによって、L1−N共通電圧測定回路32−1の交流回路100に対する結線の正誤、及び、L2−N共通電圧測定回路32−2の交流回路100に対する結線の正誤を判断することができる。
次に、多回路電力量計の増設ユニット40について説明する。なお、多回路電力量計の増設ユニット40の各構成要素において、多回路電力量計の本体10と同等の機能を果たす構成要素については、符号にダッシュ「’」を付することによって増設ユニット40の構成要素であること示す。
図9において、多回路電力量計の増設ユニット40は、コネクタA43、フラットケーブル47、基板コネクタ44、増設ユニット通信処理回路45、増設ユニットアドレス判断回路46、コネクタB27’、電力量計測演算処理回路29’、電流測定回路33’及びコネクタD35’を備えて構成される。
これら基板コネクタ44、増設ユニット通信処理回路45、増設ユニットアドレス判断回路46、コネクタB27’、電力量計測演算処理回路29及び電流測定回路33’は、回路基板42に実装され、箱状の筐体41に収納される。コネクタD35’は、筐体11の一方側面に備え付けられる。そして、筐体11には、回路基板42に実装されたコネクタB27’における他の増設ユニット40のコネクタA43が差し込まれる差込口の在る方向における延長上にケーブル収納スペース13’が設けられている。なお、図9では、筐体41の前面板を外した状態を示している。
コネクタA43は、フラットケーブル47を介して基板コネクタ44に接続される。端子44とコネクタB27’との間には、多回路電力量計の増設ユニット40における電力線m1’、信号線m2’、極性信号線m3’、m4’及び共通電圧線m5’、m6’が形成される。
コネクタA43が多回路電力量計の本体10におけるコネクタB27に差し込まれることによって、多回路電力量計の本体10と増設ユニット40とは、電気的に接続される。即ち、多回路電力計の本体10における電力線m1が本体10におけるコネクタB27−1の電源ピン(a)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の電源ピン(a)を介して増設ユニット40における電力線m1’に接続され、本体10から増設ユニット40に電力が供給される。多回路電力計の本体10における通信線m2が本体10におけるコネクタB27の通信ピン(b)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の通信ピン(b)を介して増設ユニット40における通信線m2’に接続され、本体10と増設ユニット40とが通信可能になる。多回路電力計の本体10における極性信号線m3が本体10におけるコネクタB27の極性信号ピン(c)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の極性信号ピン(c)を介して増設ユニット40における極性信号線m3’に接続され、本体10からL1−N共通電圧測定回路32−1で測定された電圧の極性を示す矩形波(極性信号生成回路28−1の出力波形)が増設ユニット40に出力される。多回路電力計の本体10における極性信号線m4が本体10におけるコネクタB27の極性信号ピン(d)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の極性信号ピン(d)を介して増設ユニット40における極性信号線m4’に接続され、本体10からL2−N共通電圧測定回路32−2で測定された電圧の極性を示す矩形波(極性信号生成回路28−2の出力波形)が増設ユニット40に出力される。多回路電力計の本体10における共通電圧線m5が本体10におけるコネクタB27の共通電圧ピン(e)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の共通電圧ピン(e)を介して増設ユニット40における共通電圧線m5’に接続され、本体10からL1−N共通電圧測定回路32−1で測定された電圧の絶対値化された波形(絶対値化回路31−1の出力波形)が増設ユニット40に出力される。多回路電力計の本体10における共通電圧線m6が本体10におけるコネクタB27の共通電圧ピン(f)及び増設ユニット40におけるコネクタA43の共通電圧ピン(f)を介して増設ユニット40における共通電圧線m6’に接続され、本体10からL2−N共通電圧測定回路32−2で測定された電圧の絶対値化された波形(絶対値化回路31−2の出力波形)が増設ユニット40に出力される。ここで、極性信号ピン(c)、(d)及び共通電圧ピン(e)、(f)が請求項の電圧ピンに相当する。そして、多回路電力計の本体10におけるアドレス線m7、m8が本体10におけるコネクタB27のアドレスピン(g)、(h)及び増設ユニット40におけるコネクタA43のアドレスピン(g)、(h)を介して増設ユニット40におけるアドレス線m8’、m9’にそれぞれ接続され、増設ユニット40におけるアドレス線m7’には、電力線m1’によって第1電位とは異なる電位である第2電位が印加される。
増設ユニット通信処理回路45は、当該増設ユニット40と本体10との間で通信を行うための回路であり、本体10からの通信信号に従って電力量計測演算処理回路29’で得られた各計測点における電力量を所定のプロトコルに従った通信信号に収容して信号線m2’を用いて本体10に送信する。増設ユニット通信処理回路45は、電力線m1’から電力供給を受ける。
増設ユニットアドレス判断回路46は、アドレス線m7’、m8’、m9’における電位に基づいてアドレスを自動的に判断し生成する回路である。
コネクタB27’は、多回路電力量計の本体10におけるコネクタB27と同様であり、他の増設ユニット40をさらに増設するために当該増設ユニット40と接続するためのコネクタであり、他の増設ユニット40をさらに増設する場合には他の増設ユニット40におけるコネクタA43が差し込まれる。コネクタB27’の差込口は、コネクタA43が引き出されている筐体41の面に対向する面(反対側の面)に向けられる。このようにコネクタA43とコネクタB27’を配置することによって、複数の増設ユニット40が本体10に対して一方向に直線的に増設することができる。特に、配電盤や分電盤には一般に一方向に直線的にスペースが空いていることが多く、多回路電力量計の本体10及び増設ユニット40は、一方向に直線的に増設することができるので、このような配電盤や分電盤に設置する場合に好適である。
電力量計測演算処理回路29’は、共通電圧の絶対値化波形におけるオフセットずれを補正すると共に、多回路電力量計の本体10における電力量計測演算処理回路29と同様であり、極性通信線m3’、m4’と共通電圧線m5’、m6’を介して得られる共通電圧測定回路32の出力及び電流測定回路33’の出力に基づいて交流回路の各計測点ごとに電力量を演算する回路である。電力量計測演算処理回路29’は、電力線m1’から電力供給を受け、各計測点における電力量の情報を増設ユニット通信処理回路45に出力する。
電流測定回路33’は、多回路電力量計の本体10における電流測定回路33と同様であり、計測対象の交流回路における各計測点の電流を測定し、測定した各電流を電力量計測演算処理回路27’に出力する回路である。電流測定回路33’は、本実施形態では4箇所の計測点における電力量を略同時に計測することができるようにすることから、第1電流測定回路33’−1、第2電流測定回路33’−2、第3電流測定回路33’−3及び第4電流測定回路33’−4の4個である。電流測定回路33’の個数は、多回路電力量計の増設ユニット40における仕様による。従って、本実施形態では、増設ユニット40を1個増設するごとに計測点を4個増やすことができる。なお、増設ユニット40によって増やすことができる計測点の個数は、4個に限定されるものではなく、任意でよい。
コネクタD35’は、多回路電力量計の本体10におけるコネクタD35と同様であり、電流測定回路33’における変流器と電流検出部とを接続する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(実施形態の動作)
図10は、多回路電力量計の本体又は増設ユニットに増設ユニットを増設した状態及びケーブル収納スペースを示す図である。図10(A)は、多回路電力量計の本体又は増設ユニットに増設ユニットを増設した状態を示し、図10(B)は、ケーブル収納スペースを示す斜視図である。
図10(A)、(B)において、例えば、オフィスビルや小売店舗等の建物に多回路電力量計の本体10が例えばBAKモジュール留め方法等によって予め固定されているものとする。このような状態で、例えばさらに多くの計測点における電力量を計測する必要が生じたために、この多回路電力量計の本体10に増設ユニット40を取り付ける場合には、施工者は、まず、増設ユニット40のコネクタA43を本体10のコネクタB27に差し込む。
次に、施工者は、フラットケーブル47をつづら折り(複数層に重ね折り)しながらケーブル収納スペース13に収めて、本体10の筐体11におけるコネクタB27の差込口が在る面と、増設ユニット40の筐体41におけるコネクタA43が取り出されている面とを略密着するように増設ユニット40を配置する。そして、施工者は、増設ユニット40を本体10と同様に例えばBAK留め方法等によって支持台座等に固定する。
ここで、BAK留め方法とは、周知のように、BAK協約ブレーカ等を分電盤内に取り付ける方法であり、一方側の剛体爪と他方側のばねとを備える支持台座に、爪、ばねを引っ掛ける溝を底面付近に備えるBAKを押し込むことによって固定する方法である。なお、BAKを外す場合はばねを押しながら引き出す。
このように施工することによって多回路電力量計の本体10のみでは、4個の計測点だけしか電力量を計測することができないが、増設ユニット40を増設することによってさらに4個の計測点における電力量を計測可能になる。また、多回路電力量計の本体10と増設ユニット40とは、略密着するように施工することができるので、省スペース化を図ることができる。特に、多回路電力量計の本体10及び増設ユニット40を配電盤内や分電盤内に設置する場合には、この省スペース化は、有効である。さらに、多回路電力量計の本体10と増設ユニット40と電気的に接続するフラットケーブル47は、複数層に折り曲げられてケーブル収納スペース13に収納されるので、美観上好ましいだけでなく、誤って人が触れることもないので、人が触れることによって生じる静電気による悪影響を避けることができる。
そして、さらに多くの計測点における電力量を計測する必要が生じた場合には、多回路電力量計の本体10に取り付けられた増設ユニット40にさらに他の増設ユニット40を上述と同様の施工方法により取り付けることによってさらに4個の計測点における電力量を計測可能となる。本実施形態に係る多回路電力量計の本体10には、増設ユニット40をコネクタB27の差込口が在る面の延長方向の一方向に直線的に、増設ユニット40に他の増設ユニット40を取り付けることによって最大3個まで増設ユニット40を増設することができる。従って、本実施形態に係る多回路電力量計の本体10は、増設ユニット40を3個増設することによって、合計16個の計測点における電力量を計測することができる。また、複数の増設ユニット40は、順次に本体10に対し一方向に直線的に取り付けられるので、例えば一直線支持台座のIECレールを用いることができ、取り付けの支持台座への汎用性を持たせることができる。
このように増設された増設ユニット40は、当該増設ユニット40で計測した各計測点における電力量を本体10に通信線m2、m2’を用いて送信するが、通信信号の送受信には通信用のアドレスが必要である。次に、各増設ユニット40におけるアドレス判定方法について説明する。
図11は、多回路電力量計の本体に一方方向で増設ユニットを順次に取り付けた場合における各増設ユニットのアドレスについて説明するための図である。図11に示す例では、多回路電力量計の本体10に第1増設ユニット40−1が取り付けられ、第1増設ユニット40−1に第2増設ユニット40−2が取り付けられ、そして、第2増設ユニット40−2に第3増設ユニット40−3が取り付けられることによって、多回路電力量計の本体10に3個の増設ユニット40が増設されている。なお、図11に示す多回路電力量計の本体10や第1乃至第3増設ユニット40−1、40−2、40−3には、上述したように、回路基板12や回路基板42に各回路が実装されているが、図11では、アドレスについて説明するための図であるので、これに関連する部分のみを示し、他を省略している。また、符号に枝番号を付することによって第1乃至第3増設ユニット40−1、40−2、40−3における各構成要素を区別することとする。
多回路電力量計の本体10におけるアドレス線m7、m8、m9には、上述したように、本体アドレス生成回路30によってアドレス線m7、m8に第1電位、例えば0Vが印加され、アドレス線m9は、開放である。そして、多回路電力量計の本体10におけるコネクタB27に第1増設ユニット40−1のコネクタA43−1を接続することによって、コネクタB27のアドレスピン(g)がコネクタA43のアドレスピン(g)に接続され、コネクタB27のアドレスピン(h)がコネクタA43−1のアドレスピン(h)に接続され、そして、コネクタB27のアドレスピン(i)がコネクタA43のアドレスピン(i)に接続される。つまり、コネクタB27のアドレスピン間隔とコネクタA43のアドレスピン間隔とは同一であり、アドレスピンの並びも同一である。コネクタB27’−1とコネクタA43’−2とについても、そして、コネクタB27’−2とコネクタA43’−3とについても同様である。
また、第1増設ユニット40−1では、コネクタA43−1のアドレスピン(g)は、第1増設ユニット40−1におけるコネクタB27’−1のアドレスピン(h)に接続され、アドレス線m8’−1となり、コネクタA43−1のアドレスピン(h)は、コネクタB27’−1のアドレスピン(i)に接続され、アドレス線m9’−1となる。そして、本体10のアドレス線m7、m8、m9の何れにも接続されないアドレス線m7’−1は、電力線m1に接続されることによって第1電位とは異なる第2電位、例えばVccが印加される。即ち、本体10のアドレス線m7、m8、m9は、1つだけシフトして第1増設ユニット40−1のアドレス線m8’−1、m9’−1に接続され、アドレス線m7とアドレス線m8’−1とが第1電位で同電位となると共に、アドレス線m8とアドレス線m9’−1とが第1電位で同電位となる。1つだけシフトすることによって、本体10のアドレス線m9の接続先が無くなり、一方、本体10のアドレス線m7、m8、m9に接続しない第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1に第2電位Vccが印加される。ここで、コネクタA43−1のアドレスピン(g)及びアドレスピン(h)が請求項の複数の入力ピンに相当し、コネクタB27’−1のアドレスピン(g)、アドレスピン(h)及びアドレスピン(i)が請求項の出力ピンに相当する。
第1増設ユニット40−1の増設ユニットアドレス判断回路46−1は、アドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1の電位に基づいてアドレスを判断する。例えば第1電位をL(0)に割り当て、第2電位をH(1)に割り当てることによって、第1増設ユニット40−1の増設ユニットアドレス判断回路46−1は、LLH(001)とアドレスを判断する。
そして、多回路電力量計の第1増設ユニット40−1におけるコネクタB27’−1に第2増設ユニット40−2のコネクタA43−2を接続することによって、コネクタB27’−1のアドレスピン(g)がコネクタA43−2のアドレスピン(g)に接続され、コネクタB27’−1のアドレスピン(h)がコネクタA43−2のアドレスピン(h)に接続され、そして、コネクタB27’−1のアドレスピン(i)がコネクタA43−2のアドレスピン(i)に接続される。
第2増設ユニット40−2では、コネクタA43−2のアドレスピン(g)は、第2増設ユニット40−2におけるコネクタB27’−2のアドレスピン(h)に接続され、アドレス線m8’−2となり、コネクタA43−2のアドレスピン(h)は、コネクタB27’−2のアドレスピン(i)に接続され、アドレス線m9’−2となる。そして、第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1の何れにも接続されないアドレス線m7’−2は、電力線m1−2に接続されることによって第2電位Vccが印加される。即ち、第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1は、1つだけシフトして第2増設ユニット40−2のアドレス線m8’−2、m9’−2に接続され、アドレス線m7’−1とアドレス線m8’−2とが第1電位で同電位となると共に、アドレス線m8’−1とアドレス線m9’−2とが第1電位で同電位となる。1つだけシフトすることによって、第1増設ユニット40−1のアドレス線m9’−1の接続先が無くなり、一方、第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1に接続しない第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2に第2電位Vccが印加される。
第2増設ユニット40−2の増設ユニットアドレス判断回路46−2は、アドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2の電位に基づいてLHH(011)のようにアドレスを判断する。
そして、多回路電力量計の第2増設ユニット40−1におけるコネクタB27’−2に第3増設ユニット40−3のコネクタA43−3を接続することによって、コネクタB27’−2のアドレスピン(g)がコネクタA43−3のアドレスピン(g)に接続され、コネクタB27’−2のアドレスピン(h)がコネクタA43−3のアドレスピン(h)に接続され、そして、コネクタB27’−2のアドレスピン(i)がコネクタA43−3のアドレスピン(i)に接続される。
第3増設ユニット40−3では、コネクタA43−3のアドレスピン(g)は、第3増設ユニット40−3におけるコネクタB27’−3のアドレスピン(h)に接続され、アドレス線m8’−3となり、コネクタA43−3のアドレスピン(h)は、コネクタB27’−3のアドレスピン(i)に接続され、アドレス線m9’−2となる。そして、第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2の何れにも接続されないアドレス線m7’−3は、電力線m1−3に接続されることによって第2電位Vccが印加される。即ち、第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2は、1つだけシフトして第3増設ユニット40−3のアドレス線m8’−3、m9’−3に接続され、アドレス線m7’−2とアドレス線m8’−3とが第1電位で同電位となると共に、アドレス線m8’−2とアドレス線m9’−3とが第1電位で同電位となる。1つだけシフトすることによって、第2増設ユニット40−2のアドレス線m9’−2の接続先が無くなり、一方、第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2に接続しない第3増設ユニット40−3のアドレス線m7’−3に第2電位Vccが印加される。
第3増設ユニット40−3の増設ユニットアドレス判断回路46−3は、アドレス線m7’−3、m8’−3、m9’−3の電位に基づいてHHH(111)のようにアドレスを判断する。
このように増設ユニット40のアドレス線m7’、m8’、m9’において、コネクタB27とコネクタA43とコネクタB27’とのアドレスピン間隔及びアドレスピンの並びが同一であって、コネクタA43からコネクタB27’に至る間に、即ち、入力側から出力側に至る間に、コネクタA43のアドレスピン(g)、(h)、(i)とコネクタB27’のアドレスピン(g)、(h)、(i)とを1つだけシフトして接続すると共に、コネクタA43のピンアドレス(g)、(h)、(i)の何れにも接続されないコネクタB27’のアドレスピン(g)におけるアドレス線m7’に第2電位を印加することによって、接続される側におけるアドレス線m7、m8、m9の電位を接続する側におけるアドレス線m7’、m8’、m9’に1つだけシフトして伝導することができ、コネクタA43のアドレスピン(g)、(h)、(i)の何れにも接続されないコネクタB27’のアドレスピン(g)におけるアドレス線m7’に第2電位を印加することができる。なお、第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1については、本体10のアドレス線m7、m8、m9に対して上述の関係となっており、第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2については、第1増設ユニット40−1のアドレス線m7’−1、m8’−1、m9’−1に対して上述の関係となっており、第3増設ユニット40−3のアドレス線m7’−3、m8’−3、m9’−3については、第2増設ユニット40−2のアドレス線m7’−2、m8’−2、m9’−2に対して上述の関係となっている。
このため、増設ユニット40において、入力側端子となるコネクタA43の2個のアドレスピン(g)、(h)、出力側端子となるコネクタB27’の3個のアドレスピン(g)、(h)、(i)、及び、アドレス線m7’、m8’、m9’を図11に示すように全ての製品について同一に構成したとしても、増設ユニットアドレス判断回路46は、増設ユニット40が取り付けられる位置(本体10から数えた番号)に対応したアドレスを判断することができ、本体10と1又は複数の増設ユニット40で構成される通信ネットワークにおいて唯一のアドレスを生成することができる。このため、増設ユニット40の製造時にアドレスを意識することなく(個々の製品に予め個別のアドレスを割り当てることなく)、増設ユニット40を製造することができ、また、施工者は、増設ユニット40の取り付け時にアドレス設定を行う必要がない。
また、多回路電力量計の本体10に取り付けられる第1増設ユニット40−1のアドレスとしてLLH(001)を、第1増設ユニット40−1に取り付けられる第2増設ユニット40−2のアドレスとしてLHH(011)を、そして、第2増設ユニット40−2に取り付けられる第3増設ユニット40−3のアドレスとしてHHH(111)を予め制御回路23のメモリ232に記憶しておくことができ、このアドレスを用いて多回路電力量計の本体10に増設された増設ユニット40の有無及び各計測点における電力量の要求を行うことができる。
なお、増設ユニットアドレス判断回路46とアドレス線m7’、m8’、m9’との接続順を変えて、第1増設ユニット40−1のアドレスをHLL(100)と、第2増設ユニット40−2のアドレスをHHL(110)と、そして、第3増設ユニット40−3のアドレスをHHH(111)としてもよい。また、本実施形態では、多回路電力量計の本体10に増設ユニット40を3個まで増設可能と設計したために、3本のアドレス線m7’、m8’、m9’が必要であるが、n個まで増設可能と設計する場合には、n本のアドレス線が必要である。即ち、複数の入力ピンと、この複数の入力ピンの入力が出力される複数の出力ピンとの間に形成される複数のアドレス線、及び、この複数のピンの一方側に設けられ電位が印加される出力ピンに接続されるアドレス線からアドレス線が構成され、増設ユニットアドレス判断回路46は、これらアドレス線に印加されている電位に基づいてアドレスを判断して生成する。本構造を持った増設ユニットを本体に接続することにより異なるアドレスを生成することができるから、ディップスイッチ等で手動設定する手間が省け、また設定間違いがない。
次に、電力量計測演算処理回路29、29’におけるオフセットずれの補正動作について説明する。
図12は、再現波形におけるオフセットずれを説明するための図であり、図12(A)は、絶対値化波形及びその極性を示す矩形波を示し、図12(B)は、再現波形及びそのオフセットずれを示す。図13は、オフセットずれを求める場合におけるフローチャートを示す図である。
上述したようにL1−N間の共通電圧及びL2−N間の共通電圧は、絶対値化回路31−1及び絶対値化回路31−2によって絶対値化された波形に形成され、共通電圧線m5、m6によって各増設ユニット40に出力されるが、共通電圧測定回路32から電力量計測演算処理回路29、29’に至るまでの回路構成上、共通電圧測定回路32における出力波形のゼロレベルからずれて電力量計測演算処理回路29、29’に入力され得る。例えば、共通電圧測定回路32における出力波形のゼロレベルから△Vだけずれて電力量計測演算処理回路29、29’に入力されると、図12(A)に示すように、正側の入力波形を絶対値化した場合における絶対値化波形の振幅A(+)は、負側の入力波形を絶対値化した場合における絶対値化波形の振幅A(−)よりも2×△Vだけ小さくなる。そして、この絶対値化波形から再現した正弦波は、図12(B)に示すように、△Vのレベルをゼロレベルとした波形となり、負側にずれた波形となる。なお、図12(B)における○は、サンプリング点である。このずれた状態で電力を演算すると誤差を含むものとなる。そこで、図13に示すように、電力量計測演算処理回路29、29’は、例えば、起動直後等において次のようにオフセットずれを求める。まず、電力量計測演算処理回路29、29’は、再現波形の数周期間、例えば、3周期間における波形をサンプリングする(S1)。次に、電力量計測演算処理回路29、29’は、サンプリング値Pnの平均値(ΣPn)/nを求め、この平均値をオフセットずれとする(S2)。そして、電力(電力量)の計測において、電力量計測演算処理回路29、29’は、サンプリング値からオフセットずれを減算し、電力を演算する(S3)。例えば、共通電圧測定回路32の出力波形が振幅5の正弦波であって、オフセット値=−1と演算された場合に、図12(B)に示す正のピーク近傍の値Ap4=4は、Ap4−(−1)=4−(−1)=5と真値が計算され、負のピーク近傍の値Ap−6=−6は、Ap−6−(−1)=−6−(−1)=−5と真値が計算される。
このようにオフセットずれを補正することによって直流的な誤差が無くなるので、電力をより精度よく演算することができる。
次に、多回路電力量計の本体10が増設された増設ユニット40から各計測点における電力量の情報を収集する動作について説明する。
図14は、多回路電力量計の本体が増設ユニットから各計測点における電力量の情報を受信する場合のシーケンスを示す図である。図15は、多回路電力量計の本体が増設ユニットから各計測点における電力量の情報を受信する場合のフローチャートを示す図である。
図14及び図15において、多回路電力量計の本体10における制御回路23は、メモリ232に記憶されている第1増設ユニット40−1のアドレスLLH(001)を通信先アドレスとしてポーリングを行う通信信号(ポーリング信号)を通信線m2に本体通信処理回路26を介して送信する(図14の(1)、図15のS11)。そして、制御回路23は、一定時間、ポーリングに対する応答を示す通信信号(応答信号)に対する受信の有無を判断する(図15のS12)。
このポーリング信号を受信した増設ユニット40の増設ユニット通信処理回路45は、ポーリング信号に収容されている通信先アドレスと増設ユニットアドレス判断回路46の出力とを比較し、一致する場合には、自己宛てのポーリング信号であると判断し、応答信号を本体10に返信する。なお、一致しない場合には、ポーリング信号を破棄する。この場合には、増設されていると第1増設ユニット40−1のみが応答信号を返信する。
S12において、この応答信号を受信すると(図14の(2))、制御回路23は、第1増設ユニット40−1が本体10に増設されていると判断し、第1増設ユニット40−1に対して、第1増設ユニット40−1のアドレスLLH(001)を通信先アドレスとして、電力量データを要求する旨を示す情報を収容した通信信号(電力量データ要求信号)を送信する(図14の(3)、図15のS13)。
この電力量データ要求信号を受信した第1増設ユニット40−1の増設ユニット通信処理回路45−1は、電力量計測演算処理回路29’−1から各計測点における電力量の情報を取得し、各計測点における電力量の情報を収容した通信信号(電力量データ送信信号)を本体10に返信する。
この電力量データ送信信号を受信すると、制御回路23は、第1増設ユニット40−1のアドレスと対応付けて電力量データをメモリ232に記憶する(図14の(4)、図15のS14)。
一方、S12において、応答信号を受信しない場合には、S15の処理を行う。
次に、制御回路23は、メモリ232に記憶されている第2増設ユニット40−2のアドレスLHH(011)を通信先アドレスとしてポーリング信号を送信する(図14の(5)、図15のS15)。そして、制御回路23は、一定時間、応答信号に対する受信の有無を判断する(図15のS16)。
このポーリング信号を受信した増設ユニット40の増設ユニット通信処理回路45は、ポーリング信号に収容されている通信先アドレスと増設ユニットアドレス判断回路46の出力とを比較し、一致する場合には、自己宛てのポーリング信号であると判断し、応答信号を本体10に返信する。なお、一致しない場合には、ポーリング信号を破棄する。この場合には、増設されていると第2増設ユニット40−2のみが応答信号を返信する。
S16において、この応答信号を受信すると(図14の(6))、制御回路23は、第2増設ユニット40−2が本体10に増設されていると判断し、第2増設ユニット40−2に対して、第2増設ユニット40−2のアドレスLHH(011)を通信先アドレスとして、電力量データ要求信号を送信する(図14の(7)、図15のS17)。
この電力量データ要求信号を受信した第2増設ユニット40−2の増設ユニット通信処理回路45−2は、電力量計測演算処理回路29’−2から各計測点における電力量の情報を取得し、電力量データ送信信号を本体10に返信する。
この電力量データ送信信号を受信すると、制御回路23は、第2増設ユニット40−2のアドレスと対応付けて電力量データをメモリ232に記憶する(図14の(8)、図15のS18)。
一方、S16において、応答信号を受信しない場合には、S19の処理を行う。
次に、制御回路23は、メモリ232に記憶されている第3増設ユニット40−3のアドレスHHH(111)を通信先アドレスとしてポーリング信号を送信する(図14の(9)、図15のS19)。そして、制御回路23は、一定時間、応答信号に対する受信の有無を判断する(図15のS20)。
このポーリング信号を受信した増設ユニット40の増設ユニット通信処理回路45は、ポーリング信号に収容されている通信先アドレスと増設ユニットアドレス判断回路46の出力とを比較し、一致する場合には、自己宛てのポーリング信号であると判断し、応答信号を本体10に返信する。なお、一致しない場合には、ポーリング信号を破棄する。この場合には、増設されていると第3増設ユニット40−3のみが応答信号を返信する。
S20において、この応答信号を受信すると(図14の(10))、制御回路23は、第3増設ユニット40−3が本体10に増設されていると判断し、第3増設ユニット40−3に対して、第3増設ユニット40−3のアドレスHHH(111)を通信先アドレスとして、電力量データ要求信号を送信する(図14の(11)、図15のS21)。
この電力量データ要求信号を受信した第3増設ユニット40−3の増設ユニット通信処理回路45−3は、電力量計測演算処理回路29’−3から各計測点における電力量の情報を取得し、電力量データ送信信号を本体10に返信する。
この電力量データ送信信号を受信すると、制御回路23は、第3増設ユニット40−3のアドレスと対応付けて電力量データをメモリ232に記憶する(図14の(12)、図15のS22)。
一方、S20において、応答信号を受信しない場合には、処理を終了する。
このような処理を一定時間ごとに定期的に繰り返し行うことによって、多回路電力量計の本体10は、増設ユニット40で計測した各計測点における電力量を増設ユニット40から収集し、メモリ232に蓄積する。
ここで、上述の実施形態では、第1乃至第3増設ユニット40−1、40−2、40−3の増設の有無に関わらず、ポーリングを行い、応答信号を受信した場合には、電力量データ要求信号を送信して、増設ユニット40で計測した電力量の情報を得ている。このため、例えば、第3増設ユニット40−3が増設されていない場合には、S19乃至S22の処理時間が無駄である。そこで、増設ユニット40が増設された際に、増設ユニット通信処理回路45が増設ユニットアドレス判断回路46の出力を収容した通信信号(増設通知信号)を本体10に送信し、この増設通知信号があった場合に増設通知信号に収容されているアドレスを持つ増設ユニット40に対してのみ、以後、ポーリングを行い、応答信号を受信した場合には、電力量データ要求信号を送信して、増設ユニット40で計測した電力量の情報を得るように構成してもよい。このように構成することによって増設されていない増設ユニット40に対する、ポーリングを行い、応答信号を受信した場合には、電力量データ要求信号を送信して、増設ユニット40で計測した電力量の情報を得るに至るまでの処理を省略することができる。このため、制御回路23の負荷を軽減することができ、他の処理、例えば、表示設定ユニット50に対する表示内容の更新処理等に制御回路23の処理能力を割り振ることができる。
最後に、多回路電力量計の本体に表示設定ユニットの装着方法について説明する。
図16は、多回路電力量計の本体に表示設定ユニットの装着方法について説明するための図である。図16(A)は、装着前の多回路電力量計の本体及び表示設定ユニットを示し、図16(B)は、装着後の多回路電力量計の本体及び表示設定ユニットを示す。
図16(A)において、多回路電力量計の本体10における筐体11の前面板には、回路基板12に実装されているカードスロット21の位置に合わせて、メモリカード61をメモリカードスロット21に差込むための挿入口37が設けられる。そして、この前面板の内側には、鉄等の磁石と作用する金属板38が備えられる。
表示設定ユニット50は、多回路電力量計の本体10や増設ユニット40で計測した各計測点における電力量等を表示すると共に、メモリカードスロット21に差し込まれたメモリカード61に対するデータの読み書き指示やコネクタD35を介して電流測定回路33に接続される変流器の電流定格の設定等の操作指示を入力する装置である。表示設定ユニット50の箱状の筐体51における裏面板には、永久磁石等の磁石52が備えられる。
このような多回路電力量計の本体10と表示設定ユニット50とは、図16(B)に示すように、表示設定ユニット50の磁石52と本体10の金属板38とが磁気的に結合することによって表示設定ユニット50が本体10に装着される。そして、表示設定ユニット50と本体10とは、コネクタE36、ケーブル53及びコネクタE36’を介して電気的に接続され、電力供給を受けると共に通信信号を送受信する。
表示設定ユニット50の筐体51における前面面積は、図16(B)を見ると分かるように、本体10に表示設定ユニット50を装着した場合でも、メモリカード51が挿入口37を介してメモリカードスロット21に差し込むことができるように、本体10における前面面積よりも小さい。
なお、メモリカードスロット21及び挿入口37は、本体10の前面右側、上側及び下側の何れに設けてもよいが、コネクタB27、コネクタC34、コネクタD35及びコネクタE36と配置上干渉することなく設けることができるので、本実施形態のように本体10の前面左側に設けることが好ましい。そして、メモリカードスロット21及び挿入口37が本体10の前面に設けられた位置に応じて、金属板38、磁石52及び表示設定ユニット50の筐体51における前面面積が決定される。
このように表示設定ユニット50を構成することによって、表示設定ユニット50を本体10に着脱自在に装着することができ、装着時でもメモリカード61の挿抜が可能となる。メモリカード61には、例えば、本体10及び増設ユニット40から得られた電力量データを記憶する。また例えば、他の多回路電力量計の本体10又は増設ユニット40から得られた電力量データと、本多回路電力量計の本体10及び増設ユニット40から得られた電力量データとを制御回路23で比較し、差や比率等の比較結果を記憶する。このように差や比率等の比較結果を記憶することによって、メモリカード61から比較結果を例えばパーソナルコンピュータに取り込み、さらに詳細に分析することができ、分析結果に基づいて他の多回路電力量計の本体10又は増設ユニット40が計測対象としている交流回路における消費電力と、本多回路電力量計の本体10及び増設ユニット40が計測対象としている交流回路における消費電力との割り振りを決定することができる。また例えば、前月までの電力量データを記憶しておき、当月の電力量データと制御回路23で比較することによって電力量の時間的な推移を知ることができる。