特許文献1に記載された多回路電力測定装置では、計測対象の回路ごとに計測ユニットおよびCTを設置する必要がある。さらに、計測ユニットの各々が本体ユニットと通信する。このため、計測ユニットの数と同数の通信線が必要である。したがって特許文献1に記載された構成によれば、電力量計測システムを構成するための要素の数が多くなるという課題がある。
また、複数の計測箇所の電力量を監視しやすくするために、各計測箇所の電力量を計測する電力量計が1箇所に集中して設置されることがある。複数の電力量計は、たとえば1つの配電盤あるいは1つの分電盤の内部に設置される。しかし特許文献1に記載された構成によれば、計測ユニットの台数と同じ数の通信線が必要である。したがって、特許文献1に記載された複数の計測ユニットを分電盤の内部に設置した場合には、分電盤の内部が煩雑になる可能性がある。
一方、特許文献2に記載された構成によれば、計測対象点の数に応じて増設ユニットの台数を決定することができる。増設ユニットは、コネクタにより本体部に接続されて、電圧データを示すアナログ信号を本体部から受ける。増設ユニットは、電流を計測して、その計測された電流と、本体部からの電圧データとに基づいて電力量を演算する。増設ユニットによって算出された電力量の値は、上記のコネクタを介して本体部へと送られる。したがって特許文献2に記載された構成によれば、特許文献1に記載された構成に比べて通信線の数を減らすことができる。この結果、電力量計測システムの構成を簡素にすることができるので、電力量計測システムのコスト低減を図ることができる。
特許文献2は、電圧データをアナログ信号によって伝送する理由を以下のように説明している。本体部において電圧値をアナログ/デジタル変換してデジタル信号を出力し、増設ユニットにおいてデジタル信号から電圧値を取り出す場合、本体部および増設ユニットの各々の信号処理に時間を要する。このために、本体部で電圧を計測する時刻と、増設ユニットにおいて電流を計測する時刻との間にずれが生じる。この結果、演算した電力量の値に誤差が含まれる。
しかしながら、特許文献2に記載された構成の場合、増設ユニットの台数が増えるに従って、アナログ信号が元の信号から大きく劣化する可能性がある。つまり、本体部からのアナログ信号の伝送距離が最も長い増設ユニットでは、正確な電圧値を取得できない可能性がある。したがって、この増設ユニットにおいて演算された電力量の値に誤差が含まれる可能性がある。
以上述べたように、電力量センサおよびその増設ユニットで構成される電力量計測システムにおいては、できるだけ簡素な構成によって電力量の計測精度を高くすることが求められる。
本発明の目的は、できるだけ簡素な構成によって電力量の計測精度を高くすることが可能な電力量計測システムを構成するための電力量センサおよびその増設ユニットを提供することである。
本発明の1つの局面によれば、電力量センサは、交流回路の第1の計測対象箇所を流れる電流を計測する第1の電流計測部と、第1の計測対象箇所における電圧を計測する電圧計測部と、第1の電流計測部によって計測された電流と電圧計測部によって計測された電圧とに基づいて、第1の計測対象箇所における電力量を演算する第1の演算部とを備える。第1の演算部は、予め定められた時間幅を有する計測期間の端点に同期した同期パルスを繰り返して出力する。電力量センサは、同期パルスの受信をトリガとして交流回路の第2の計測対象箇所を流れる電流を計測する増設ユニットと、電力量センサとを電気的に接続するための第1の接続部と、第1の通信制御部とをさらに備える。第1の通信制御部は、第1の接続部を介して、同期パルスを電力量センサから増設ユニットへと送信する。
この構成によれば、増設ユニットは、電力量センサの発する同期パルスの受信をトリガとして電流を計測する。同期パルスは、電力量センサの計測の期間の端点を示す。したがって電力量センサと増設ユニットとが同一の計測期間に計測を実行することができる。これにより、電力量センサおよび増設ユニットの計測によって演算される電力量の精度を高めることができる。
「計測期間の予め定められた時間幅」は、当該計測期間の前に設定された時間幅を意味する。したがって、1つの実施形態では、計測期間の時間幅が一定に保たれつつ、電圧および電流が計測される。他の実施形態では、計測期間の時間幅が変化しながら、電圧および電流が計測されてもよい。
「計測期間の端点」は、計測期間の始点および終了点のいずれでもよい。一定の時間幅を有する計測期間が連続的に生じる場合、計測期間の端点は、ある計測期間の終了点であるとともに、その次の計測期間の始点である。間欠的に計測が実行される場合、電力量センサは、計測期間の始点を示す第1の同期パルスと、その計測期間の終了点を示す第2の同期パルスとを増設ユニットに送信してもよい。
「繰り返して出力する」とは、たとえば周期的な出力といった、複数回の出力を意味する。
第2の計測対象箇所における電力量は、増設ユニットにより演算されてもよく、電力量センサによって演算されてもよい。
好ましくは、増設ユニットは、増設ユニットにより計測された電流と、増設ユニットに入力された電圧データとに基づいて、第2の計測対象箇所における電力量を演算するように構成される。第1の演算部は、計測期間に計測された電圧のデータを表すデジタル信号を生成してデジタル信号を出力する。第1の通信制御部は、第1の演算部からのデジタル信号を、第1の接続部を介して、増設ユニットへと送信する。
この構成によれば、電力量センサにより計測された電圧を示すデジタル信号が、電力量センサから増設ユニットへと送られる。増設ユニットは、計測対象箇所の電圧を計測しなくとも、その計測対象箇所における電力量を演算することができる。したがって、増設ユニットでは、交流回路の電圧を計測するための配線を省略することができる。
さらに、計測された電圧を示すデータがデジタル信号の形式で伝送されるので、電力量センサと増設ユニットとの間の信号線の本数を減らすことができる。したがって、電力量計測システムの低コスト化を図ることができる。
さらに、電圧データがデジタル信号により増設ユニットに送られる。デジタル信号は、アナログ信号に比べて劣化しにくいという特性を有する。したがって、増設ユニットに正確な電圧値が送られるので、増設ユニットでの電力量の演算精度を高めることができる。
好ましくは、デジタル信号は、計測期間としての第1の周期に計測された電圧を表す。第1の演算部は、第2の周期において、デジタル信号を出力するとともに、第1の周期に計測された電圧および電流に基づいて、第1の周期における電力量を演算する。第2の周期は、第1の周期に続く計測期間に対応する。
この構成によれば、第1の演算部の処理負荷の増大を抑えることができる。たとえば増設ユニットが、第1の周期において電流を計測するとともに第1の周期の電力量を演算する場合、電力量センサは、電圧を計測するたびに、その計測された電圧を示すデジタル信号を生成して増設ユニットに送信することが要求される。このため、第1の演算部の処理負荷が増大する可能性がある。この構成によれば、電力量センサは、第1の周期に計測された電圧を表すデジタル信号を、第1の周期に続く第2の周期に出力する。増設ユニットは、第1の周期に計測された電流のデータと、デジタル信号により表される電圧のデータとを用いて、第1の周期の電力量を演算することができる。したがって、第1の演算部の処理負荷の増大を抑えることができる。
好ましくは、計測期間は、交流波形の複数の周期を含む期間である。第1の演算部は、複数の周期のうちの最初の周期に計測された電圧値を示す基準データと、複数の周期のうちの残りの周期に計測された電圧値と基準データのうちの対応する電圧値との間の差分を示す差分データとを生成して、基準データおよび差分データをデジタル信号として出力する。
この構成によれば、電力量センサから増設ユニットに送られる電圧データの精度を確保しつつ、そのデータのサイズを小さくすることができる。電力量センサによって計測される電圧は交流電圧であるので、その周期は一定である。したがって、電圧値のみが時間的に変化する可能性があると考えられる。上記の構成によれば、電圧値の変化分が差分データとして生成されることで、電圧データの精度を確保しつつ、そのデータのサイズを小さくすることができる。
好ましくは、第1の通信制御部は、第1の接続部を介して、増設ユニットによって演算された電力量に関するデータを増設ユニットから受信する。
この構成によれば、電力量センサは、当該電力量センサによって演算された電力量(すなわち第1の計測対象箇所の電力量)のデータだけでなく、増設ユニットによって演算された電力量(すなわち第2の計測対象箇所の電力量)のデータを有することができる。
好ましくは、第1の通信制御部は、第1の接続部を介して、増設ユニットによって計測された電流に関するデータを増設ユニットから受信する。
この構成によれば、電力量センサは、第1の計測対象箇所の電力量だけでなく、第2の計測対象箇所の電力量を演算することができる。したがって電力量センサは、第1の計測対象箇所および第2の計測対象箇所の各々の電力量のデータを有することができる。
好ましくは、電力量センサは、第1の演算部と第1の通信制御部との間に形成された信号経路と、信号経路に設けられた信号絶縁部とをさらに備える。
好ましくは、信号絶縁部は、アイソレータを含む。
この構成によれば、高電圧回路(たとえば電圧計測部あるいは電流計測部)からの電気的絶縁を確保しつつ、電力量センサと増設ユニットとの間での通信を可能にすることができる。
本発明の他の局面によれば、電力量センサの増設ユニットは、上記の電力量センサと通信可能に構成された増設ユニットである。増設ユニットは、増設ユニットと電力量センサとを電気的に接続するための第2の接続部と、第2の接続部を介して、電力量センサから同期パルスを受信する第2の通信制御部と、第2の通信制御部からの同期パルスをトリガとして、第2の計測対象箇所を流れる電流を計測する第2の電流計測部とを備える。
この構成によれば、増設ユニットは、電力量センサの発する同期パルスの受信をトリガとして電流を計測する。同期パルスは、電力量センサの計測の期間の端点を示す。したがって電力量センサと増設ユニットとが同一の計測期間に計測を実行することができる。これにより、電力量センサおよび増設ユニットの計測によって演算される電力量の精度を高めることができる。
好ましくは、第2の通信制御部は、第2の接続部を介して、電力量センサによって計測された電圧を示すデジタル信号を電力量センサから受ける。増設ユニットは、第2の計測対象箇所における電力量を演算する第2の演算部をさらに備える。第2の演算部は、第2の電流計測部により計測された電流と、前記デジタル信号によって表される電圧とに基づいて電力量を演算する。
この構成によれば、増設ユニットが、計測対象箇所の電圧を計測しなくても、その計測対象箇所における電力量を演算することができる。したがって、交流回路の電圧を増設ユニットに伝達するための配線が不要となる。さらに、電圧のデータがデジタル信号として伝送されるので、電圧データの劣化を抑制できる。したがって増設ユニットにより演算された電力量の精度を高めることができる。さらに、電圧データがデジタル信号の形式で伝送されるので、電力量センサと増設ユニットとの間の信号線の本数を減らすことができる。したがって、低コストで電力量の計測精度を高めることが可能な電力量計測システムを構成することができる。
好ましくは、デジタル信号は、計測期間としての第1の周期に計測された電圧を表す。第2の演算部は、第2の電流計測部によって第1の周期に計測された電流と、デジタル信号とに基づいて、第1の周期における電力量を第2の周期に演算する。第2の周期は、第1の周期に続く計測期間である。
この構成によれば、増設ユニットは、増設ユニットの電流の計測のタイミングと同じタイミングで電力量センサが計測した電圧のデータを受信することができる。したがって、増設ユニットによる電力量の演算の精度を確保することができる。
好ましくは、第2の通信制御部は、第2の接続部を介して、第2の演算部によって演算された電力量に関するデータを電力量センサに送信する。
この構成によれば、増設ユニットの演算により生成された電力量データが、電力量センサに送られる。これにより、電力量センサにおいて、電力量センサによって演算された電力量(すなわち第1の計測対象箇所の電力量)のデータだけでなく、増設ユニットによって演算された電力量(すなわち第2の計測対象箇所の電力量)のデータを有することができる。
好ましくは、第2の通信制御部は、第2の接続部を介して、第2の電流計測部によって計測された電流に関するデータを電力量センサに送信する。
この構成によれば、電力量センサにおいて、第2の計測対象箇所の電力量のデータを演算することができる。したがって電力量センサにおいて、電力量センサによって演算された第1の計測対象箇所の電力量のデータだけでなく、第2の計測対象箇所の電力量のデータを有することができる。
本発明のさらに他の局面によれば、電力量計測システムは、交流回路の第1の計測対象箇所を流れる電流と交流回路の電圧とを計測して、第1の計測対象箇所における電力量を演算する電力量センサと、電力量センサと通信可能に構成され、交流回路の第2の計測対象箇所を流れる電流を計測する増設ユニットとを備える。電力量センサは、予め定められた時間幅を有する計測期間の端点に同期した同期パルスを繰り返して増設ユニットに送信する。増設ユニットは、同期パルスの受信をトリガとして、第2の計測対象箇所を流れる電流を計測する。
この構成によれば、増設ユニットは、電力量センサの発する同期パルスの受信をトリガとして電流を計測する。同期パルスは、電力量センサの計測の期間の端点を示す。したがって電力量センサと増設ユニットとが同一の計測期間に計測を実行することができる。これにより、電力量センサおよび増設ユニットの計測によって演算される電力量の精度を高めることができる。
好ましくは、電力量センサは、計測期間に計測された電圧のデータを表すデジタル信号を生成して、増設ユニットにデジタル信号を送信する。増設ユニットは、増設ユニットにより計測された電流と、デジタル信号により表される電圧とに基づいて、第2の計測対象箇所における電力量を演算する。
この構成によれば、増設ユニットが、第2の計測対象箇所の電圧を計測しなくても、その計測対象箇所における電力量を演算することができる。さらに、電圧のデータがデジタル信号として増設ユニットに送られるので、精度を確保したまま、増設ユニットに電圧データを送ることができる。これにより、増設ユニットでの電力量の計測精度を高めることができる。さらに、電圧データがデジタル信号の形式で伝送されるので、電力量センサと増設ユニットとの間の信号線の本数を減らすことができる。したがって、低コストで電力量の計測精度を高めることが可能な電力量計測システムを構成することができる。
好ましくは、増設ユニットは、増設ユニットによって計測された電流に関するデータを電力量センサに送信する。電力量センサは、増設ユニットによって計測された電流と、電力量センサによって計測された電圧とに基づいて、第2の計測対象箇所の電力量を演算する。
この構成によれば、電力量センサにおいて、第2の計測対象箇所の電力量のデータを演算することができる。したがって電力量センサにおいて、電力量センサによって演算された第1の計測対象箇所の電力量のデータだけでなく、第2の計測対象箇所の電力量のデータを有することができる。
本発明によれば、できるだけ簡素な構成によって電力量の計測精度を高くすることが可能な電力量計測システムを構成することができる。
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力量計測システムの全体的な構成を示す概略図である。図1を参照して、電力量計測システム100は、電力量センサ1〜4を備える。電力量センサ1は、本発明の「電力量センサ」に対応する。電力量センサ2〜4の各々は、本発明の「電力量センサの増設ユニット」に対応する。
交流回路5は、電力線5a,5b,5cを含む。交流回路5は、負荷装置6a〜6dの各々に交流電力を供給する。負荷装置6a〜6dの各々は、たとえば、工場内の装置あるいは設備である。
図1は、交流回路5の配電方式の一例として三相3線式を示す。交流回路5の配電方式は三相3線式に限定されず、たとえば単相2線式、単相3線式、あるいは三相4線式であってもよい。
電力量センサ1は、交流回路5の電圧および第1の計測対象箇所の電流を計測する。第1の計測対象箇所は、交流回路5と負荷装置6aとの間で交流電力が伝達される部分に対応する。したがって、第1の計測対象箇所は1点に限定されない。具体的には、電力量センサ1は、電力線5a,5b,5cに接続されて、交流回路5の電圧を計測する。さらに変流器1a,1bが電力量センサ1に接続される。変流器1a,1bは、電力線5a,5bに流れる電流をそれぞれ検出する。電力量センサ1は変流器1a,1bから出力される信号により、第1の計測対象箇所の電流を計測する。
電力量センサ2〜4の各々は、第2の計測対象箇所の電流を計測する。第2の計測対象箇所は、交流回路5と、負荷装置6b,6c,6dの各々との間で交流電力が伝達される部分に対応する。電力量センサ1と同じく、電力量センサ2〜4の各々には2つの変流器(2a,2b,3a,3b,4a,4b)が接続される。電力量センサ2〜4の各々は、当該電力量センサに接続された2つの変流器から出力される信号により、第2の計測対象箇所の電流を計測する。
電力量センサ1は、電力量センサ2〜4の各々との間で通信可能である。電力量センサ1は、予め定められた時間幅を有する計測期間の端点に同期した同期パルスを繰り返して出力する。たとえば同期パルスは一定の時間間隔で繰り返し電力量センサ1から出力される。ただし同期パルスの出力の時間間隔は固定されるものと限定されず、たとえば系統の周波数に同調して変動してもよい。あるいは、同期パルスの出力の時間間隔は、たとえば商用電源によって変動してもよい。電力量センサ2〜4の各々は、その同期パルスの受信をトリガとして、第2の計測対象箇所を流れる電流を計測する。
この実施の形態では、電力量センサ1は、さらに、電力量センサ1によって計測された電圧を示すデジタル信号を、電力量センサ2〜4の各々へと送信する。電力量センサ1は、計測された電圧および計測された電流に基づいて、第1の計測対象箇所における電力量を演算する。電力量センサ2〜4の各々は、計測された電流のデータと、電力量センサ1からのデジタル信号によって表された電圧データとに基づいて、電力量を演算する。
演算によって求められる電力量は負荷装置の消費電力量に限定されない。たとえば負荷装置がモータを備え、そのモータが回生動作を行なう場合には、モータの発電電力量が求められてもよい。
この実施の形態では、電力量センサ2〜4の各々は、演算によって求められた電力量のデータをデジタル信号として電力量センサ1へと送る。したがって、電力量センサ1は、電力量センサ1〜4の各々によって求められた電力量のデータを保持する。電力量センサ1は、電力量センサ1〜4の各々によって求められた電力量のデータをデータ処理装置7へと送る。データ処理装置7は、たとえば所定のプログラムを実行するパーソナルコンピュータによって実現される。
電力量センサ1は、たとえば図示しない通信装置および通信線を介してデータ処理装置7へとデータを転送する。ただし電力量センサ1は、たとえばメモリカードのような記録媒体にデータを記録してもよい。その記録媒体は電力量センサ1から取り出されて、データ処理装置7に挿入される。データ処理装置7は記録媒体に記憶された電力量データを読み出す。このような方法によっても、電力量センサ1からデータ処理装置7へとデータを転送することができる。
電力量センサ1〜4の電源電圧は、個別に与えられてもよい。したがって電力量センサ1〜4の各々が電源に接続されていてもよい。あるいは電力量センサ1から電力量センサ2〜4の各々に電源電圧が供給されるという構成が採用されてもよい。
図2は、図1に示された電力量計測システムの設置例を示した模式図である。図2を参照して、電力量センサ1〜4は、たとえば分電盤8の内部に設置される。たとえば図2に示されるように、分電盤8の内部には、レール9(たとえばDINレール)が設置される。電力量センサ1〜4の各々はレール9に取り付けられる。電力量センサ1と電力量センサ2〜4の各々とは、通信ケーブル10を介して通信する。1つの実施の形態において、電力量センサ間の通信方式は、シリアル通信である。
上記のように、電力量センサ1は、電力量センサ2〜4の各々による電力量の演算を制御する。すなわち、電力量計測システム100において、電力量センサ1は、マスタユニットとして機能し、電力量センサ2〜4の各々はスレーブユニットとして機能する。図1および図2に示された構成によれば、スレーブユニットの数は3であるが、これに限定されるものではない。計測対象箇所の数に応じてスレーブユニットの数を増減させることができる。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電力量センサ(マスタユニット)の主要部の構成を示した機能ブロック図である。図3を参照して、電力量センサ1は、電圧計測部11と、電流計測部12と、演算回路18と、通信制御部13と、接続部14と、アイソレータ15aを含む信号経路15と、記憶部19とを含む。
電圧計測部11は、分圧回路11aと、A/D変換回路11bとを含む。電流計測部12は、変流器1a,1bと、電流/電圧変換回路12aと、A/D変換回路12bとを含む。A/D変換回路11b,12bが1つの回路に統合されていてもよい。あるいはA/D変換回路11b,12bおよび演算回路18が、1つの処理装置(たとえばCPU)に統合されていてもよい。また、通信制御部13も、たとえばCPUにより実現される。
電圧計測部11は、電力線5a,5b,5cのそれぞれの電圧Va,Vb,Vcを計測する。分圧回路11aは、入力電圧(電圧Va,Vb,Vc)を分圧して、計測に適した強度の電圧を生成する。A/D変換回路11bは、分圧回路11aから出力された電圧に対してサンプリングおよびA/D変換を実行する。これにより電圧Va,Vb,Vcの各々の値を示すデジタルデータが生成される。電圧計測部11は、本発明の「電力量センサ」が備える「電圧計測部」を実現する。
電流計測部12は、電力線5a,5bのそれぞれの電流I1,I3を計測する。変流器1aは、電流I1に比例する電流I1aを出力する。変流器1bは、電流I3に比例する電流I3aを出力する。電流/電圧変換回路12aは、電流I1a,I3aを電圧に変換し、さらにその電圧を増幅する。これにより電流/電圧変換回路12aは、計測に適した強度の電圧を生成する。A/D変換回路12bは、電流/電圧変換回路12aから出力された電圧に対してサンプリングおよびA/D変換を実行する。これにより電流I1,I3の各々の値を示すデジタルデータが生成される。電流計測部12は、本発明の「電力量センサ」が備える「第1の電流計測部」を実現する。
演算回路18は、電流計測部12からの電流I1,I3の各々の値を示すデジタルデータに基づいて、電力線5cを流れる電流I2の値を示すデジタルデータを生成する。電流I1,I2,I3の合計が0であるので、電流I1,I3の値に基づいて電流I2の値を算出することができる。演算回路18は、電圧計測部11から出力された電圧Va,Vb,Vcのデジタルデータ、および電流I1〜I3のデジタルデータを用いて第1の計測対象箇所における電力量を演算する。演算回路18は、演算結果としての電力量データを記憶部19に記憶させる。演算回路18は、本発明の「電力量センサ」が備える「第1の演算部」を実現する。
演算回路18は、電圧Va,Vb,Vcおよび電流I1,I2,I3の計測の開始のタイミングを示す同期パルスを生成する。演算回路18は、その同期パルスを出力する。
演算回路18は、さらに、電圧Va,Vb,Vcのデジタルデータを用いてデジタル信号を生成し、そのデジタル信号を出力する。
信号経路15は、演算回路18と通信制御部13との間に設けられる。信号経路15の途中にはアイソレータ15aが設けられる。アイソレータ15aは、演算回路18と通信制御部13とを絶縁する。交流回路5の電圧値および電流値が高い場合には、電圧計測部11および電流計測部12が高電圧回路となり得る。高電圧部に対する電気的絶縁を確保しつつ、電力量センサ1と電力量センサ2との間でのデジタル信号の通信を可能にするために、信号絶縁部としてのアイソレータ15aが設けられている。アイソレータ15aは、たとえばコンデンサタイプのデジタルアイソレータである。ただし信号絶縁部は、たとえばフォトカプラによって実現されてもよい。
演算回路18は、同期パルスおよびデジタル信号(電圧データ)を、信号経路15を介して通信制御部13へと送る。通信制御部13は、演算回路18からのデジタル信号と同期パルスとを接続部14へと出力する。通信制御部13がスレーブユニットからのデジタル信号(電力量データ)を受信した場合、通信制御部13は、そのデジタル信号を、信号経路15を介して演算回路18へと送る。この場合、演算回路18は、スレーブユニットから送られた電力量データを記憶部19に記憶させる。たとえば通信制御部13によるデータの送信および受信は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信に準拠している。通信制御部13は、本発明の「電力量センサ」が備える「第1の通信制御部」を実現する。
接続部14は、通信ケーブル10を介して電力量センサ2と電気的に接続される。同期パルスおよびデジタル信号(電圧データ)は接続部14から通信ケーブル10へと出力され、通信ケーブル10を介して電力量センサ2の接続部24に入力される。一方、電力量センサ2の接続部24から送られたデジタル信号(電力量データ)は、通信ケーブル10を介して電力量センサ1の接続部14へと入力される。接続部14は、たとえばバスおよびコネクタ端子によって構成される。接続部14は、本発明の「電力量センサ」が備える「第1の接続部」を実現する。
記憶部19は、データの書き込みが可能であるとともに、書き込まれたデータを不揮発的に記憶する。周知の不揮発性半導体メモリを記憶部19に用いることができる。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る増設ユニット(スレーブユニット)の主要部の構成を示した機能ブロック図である。電力量センサ2〜4の構成は互いに同一である。したがって図4では、代表的に電力量センサ2の構成が示される。
図4を参照して、電力量センサ2の構成は、電圧計測部を含まない点において電力量センサ1の構成と異なるが、他の部分の構成は、電力量センサ1の構成と基本的に同様である。具体的には、電力量センサ2は、電流計測部22と、演算回路28と、通信制御部23と、接続部24と、アイソレータ25aを含む信号経路25と、記憶部29とを含む。
電流計測部22は、変流器2a,2bと、電流/電圧変換回路22aと、A/D変換回路22bとを含む。A/D変換回路22bおよび演算回路28は、1つの処理装置(たとえばCPU)に統合されていてもよい。また、通信制御部23も、たとえばCPUにより実現される。
電流計測部22は、電力線5a,5bのそれぞれの電流I4,I6を計測する。変流器2aは、電流I4に比例する電流I4aを出力する。変流器2bは、電流I6に比例する電流I6aを出力する。電流/電圧変換回路22aは、電流I4a,I6aを電圧に変換し、さらにその電圧を増幅する。これにより電流/電圧変換回路22aは、計測に適した強度の電圧を生成する。A/D変換回路22bは、電流/電圧変換回路22aから出力された電圧に対してサンプリングおよびA/D変換を実行する。これにより電流I4,I6の各々の値を示すデジタルデータが生成される。電流計測部22は、本発明の「電力量センサの増設ユニット」が備える「第2の電流計測部」を実現する。
演算回路28は、電流I4,I6の各々の値を示すデジタルデータに基づいて、電力線5cを流れる電流I5の値を示すデジタルデータを生成する。電流I5の値を示すデジタルデータの生成方法は、電流I2の値を示すデジタルデータの生成方法と同じである。
演算回路28は、同期パルスと、電圧Va,Vb,Vcの値を示すデジタル信号を受ける。A/D変換回路22bは、その同期パルスの受信をトリガとしてサンプリングおよびA/D変換を開始する。演算回路28は、電流I1〜I3の値と、受信したデジタル信号により得られる電圧Va,Vb,Vcの値とを用いて、第2の計測対象箇所における電力量を演算する。演算回路28は、演算結果としての電力量データを記憶部29に記憶させる。演算回路28は、本発明の「電力量センサの増設ユニット」が備える「第2の演算部」を実現する。
信号経路25は、演算回路28と通信制御部23との間に設けられる。信号経路25の途中にはアイソレータ25aが設けられる。アイソレータ15aと同じく、アイソレータ25aは、演算回路28と通信制御部23とを絶縁する信号絶縁部である。アイソレータ25aは、たとえばコンデンサタイプのデジタルアイソレータである。ただしアイソレータ25aに代えて、たとえばフォトカプラによって実現されてもよい。
通信制御部23は、電力量センサ1(マスタユニット)からの同期パルスおよびデジタル信号(電圧データ)を接続部24を介して受信する。この場合、通信制御部23はその同期パルスおよびデジタル信号を、信号経路25を介して演算回路28へと送る。一方、演算回路28は、第2の計測対象箇所の電力量を示すデジタル信号を、信号経路25を介して通信制御部23へと出力する。この場合、通信制御部23は、そのデジタル信号を接続部24へと出力する。通信制御部23によるデータの送信および受信は、UART通信に準拠している。通信制御部23は、本発明の「電力量センサの増設ユニット」が備える「第2の通信制御部」を実現する。
接続部24は、通信ケーブル10を介して電力量センサ1に電気的に接続される。同期パルスおよびデジタル信号(電圧データ)は通信ケーブル10から接続部24へと入力されて、通信制御部23へと送られる。一方、通信制御部23から送られたデジタル信号(電力量データ)は接続部24から通信ケーブル10を介して電力量センサ1の接続部14へと入力される。接続部24は、たとえばバスおよびコネクタ端子によって構成される。接続部24は、本発明の「電力量センサの増設ユニット」が備える「第2の接続部」を実現する。
記憶部29は、データの書き込みが可能であるとともに、書き込まれたデータを不揮発的に記憶する。周知の不揮発性半導体メモリを記憶部29に用いることができる。
図4に示されるように、電力量センサ2では電圧は計測されないため、電力量センサ2(スレーブユニット)を電力線5a,5b,5cの各々に接続するための配線が省略される。したがって、この実施の形態によれば、電力量計測システムに用いられる配線の数を減らすことができる。特に、スレーブユニットの数が多い場合には、配線の本数を節約できる効果が顕著となる。
上記のように、この実施の形態では、三相交流の各相について電流および電圧が計測される。ただし以下においては、三相のうちの1相の電流および電圧の計測を代表的に説明する。残りの2相の電流および電圧の計測も、以下に説明される計測と同じ方法によって行なわれる。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る計測処理および演算処理を説明するためのシーケンス図である。図5を参照して、計測期間T0,T1,T2,T3は、予め定められた時間幅を有する。この実施の形態では、計測期間T0〜T3の時間幅は一定である。
時刻t1において、マスタユニット(電力量センサ1)は同期パルスをスレーブユニット(代表的には電力量センサ2)に送信する。これにより計測期間T0が終了するとともに計測期間T1が開始する。マスタユニットは、さらに、計測期間T0で取得された電圧データをデジタル信号としてスレーブユニットへと送信する。
時刻t1において、マスタユニットは、電圧および電流の計測を開始する。これにより計測期間T1の電圧データおよび電流データが取得される。マスタユニットは、さらに、計測期間T0の間に取得された電圧データおよび電流データに基づいて、計測期間T0の電力量を演算する。
スレーブユニットは、時刻t1において同期パルスを受信することにより、計測期間T0の終了および計測期間T1の開始を把握する。スレーブユニットは、時刻t1において電流の計測を開始する。これにより、スレーブユニットは、計測期間T1の電流データを取得する。
スレーブユニットは、計測期間T0の直前の計測期間(図5には示さず)の電力量のデータを、デジタル信号としてマスタユニットに送信する。さらにスレーブユニットは、計測期間T0に取得された電流データ、およびマスタユニットから送られた、計測期間T0の電圧データに基づいて、計測期間T0の電力量を演算する。
計測期間T0,T1における処理と同様の処理が計測期間T2,T3において実行される。時刻t2において、マスタユニットは同期パルスをスレーブユニットに送信する。これにより計測期間T1が終了するとともに計測期間T2が開始する。マスタユニットは、さらに、計測期間T1に取得された電圧データをデジタル信号としてスレーブユニットへと送信する。計測期間T2において、マスタユニットは電圧および電流を計測する。さらに、マスタユニットは、計測期間T1で取得された電圧データおよび電流データに基づいて、計測期間T1の電力量を算出する。
計測期間T2において、スレーブユニットは、計測期間T1の電力量のデータを、デジタル信号としてマスタユニットに送信する。さらに、スレーブユニットは、電流を計測する。さらに、計測期間T2において、スレーブユニットは、計測期間T1に取得された電流データおよびマスタユニットから送られた、計測期間T1の電圧データに基づいて、計測期間T1の電力量を演算する。
時刻t3において、マスタユニットは同期パルスをスレーブユニットに送信する。これにより計測期間T2が終了するとともに計測期間T3が開始する。マスタユニットは、さらに、計測期間T2に取得された電圧データをデジタル信号としてスレーブユニットへと送信する。計測期間T3において、マスタユニットは電圧および電流を計測する。さらに、マスタユニットは、計測期間T2で取得された電圧データおよび電流データに基づいて、計測期間T2の電力量を算出する。
計測期間T3において、スレーブユニットは、計測期間T1の電力量のデータを、デジタル信号としてマスタユニットに送信する。さらに、スレーブユニットは、電流を計測する。さらに、計測期間T3において、スレーブユニットは、計測期間T2に取得された電流データおよびマスタユニットから送られた、計測期間T2の電圧データに基づいて、計測期間T2の電力量を演算する。
図5に示された処理は以下のように説明される。電力量センサ1の演算回路18は、第2の周期において、デジタル信号を出力するとともに、第1の周期に計測された電圧および電流に基づいて、第1の周期における電力量を演算する。同じく、電力量センサ2の演算回路28は、電流計測部22によって第1の周期に計測された電流と、電力量センサ1からのデジタル信号とに基づいて、第1の周期における電力量を第2の周期に演算する。「第2の周期」は、「第1の周期」に続く計測期間に対応する。すなわち、第1の周期が計測期間T0であれば、第2の周期は計測期間T1に対応する。第1の周期が計測期間T1であれば、第2の周期は計測期間T2に対応する。
電力量の正確な演算のためには、電圧値と電流値とが同じタイミングで取得されることが望ましい。本発明の実施の形態との比較のために、ある計測期間の電力量が、その計測期間に算出されると仮定する。この場合、スレーブユニットが電圧データと電流データとを同じタイミングで取得するためには、スレーブユニットとマスタユニットでサンプリングのタイミングが同期している必要がある。さらに、マスタユニットが電圧データを取得するタイミングと、その電圧データをスレーブユニットが受信するタイミングとが一致しなければならない。しかしながら、電圧データはマスタユニットからスレーブユニットへと送られるため、電圧データをスレーブユニットが受信するタイミングは、マスタユニットが電圧データを取得するタイミングよりも遅れる。
この実施の形態によれば、第1の周期の電力量は第2の周期に演算される。したがって、スレーブユニットは、第1の周期中の同じタイミングに取得された電圧データおよび電流データに基づいて、第1の周期の電力量を演算することができる。これにより電力量の演算の精度を確保できる。
さらに、マスタユニットおよびスレーブユニットは、複数の計測対象箇所における同一期間(たとえば計測期間T1)の電力量を、同じタイミング(たとえば計測期間T2)で演算する。したがって、マスタユニットがスレーブユニットから電力量データを取得した際に、マスタユニットにより演算された電力量データとスレーブユニットにより演算された電力量データとの関連付けが容易となる。たとえば電力量センサ1による電力量データの管理が容易になる。これにより、たとえば記憶部19へのデータの書込み処理および記憶部19からのデータの読出し処理の高速化が期待できる。
さらに、マスタユニットは、第1の周期に取得された電圧データを、第2の周期にまとめてスレーブユニットに送信することができる。したがってマスタユニットは、電圧データが取得されるたびに、そのデータをスレーブユニットに送信する必要はない。これによりマスタユニット(演算回路18)の処理負荷の増大を抑制することができる。
図6は、スレーブユニットによる電流の計測の開始および終了を説明するための波形図である。図6を参照して、マスタユニットにより設定された計測期間は、交流波形の5周期に対応する期間に加えて補正期間を含む。補正期間は、マスタユニットとスレーブユニットとの間で計測の開始タイミングを同期させるために設定される。補正期間の長さは、たとえばマスタユニットとスレーブユニットとの間での処理速度(たとえばクロック周波数)の差、スレーブユニットの台数などを考慮して適切に設定することができる。
スレーブユニットが同期パルスを受信すると、スレーブユニットは、そのパルスの受信時点から電流の計測を開始する。スレーブユニットは、交流波形30の5周期分の電流を計測して、次の同期パルスを受信するまで計測を一時的に停止する。スレーブユニットが次に同期パルスを受信すると、スレーブユニットは電流の計測を再開する。
マスタユニットは、サンプリングおよびA/D変換によって、交流波形の5周期分の電圧データを生成する。上記のように、マスタユニットは、その電圧データをデジタル信号によってスレーブユニットへと送信する。A/D変換のビット数を高くするほど、データの精度を高くすることができる。しかしながらスレーブユニットに送られるデータのサイズが大きくなる。
データのサイズが大きくなると、通信時間が長くなる。通信時間が長くなると、たとえばマスタユニットおよびスレーブユニットの少なくとも一方の処理に影響が生じる可能性がある。一方、サンプリング周波数を下げる、あるいは、A/D変換のビット数を下げることによりデータのサイズを小さくすることができる。しかしながら、この場合にはデータの精度が低下する。
これらの課題を解決するために、この実施の形態では、マスタユニットは、電圧データを圧縮して、その圧縮データをスレーブユニットへと送信する。さらにマスタユニットは、電圧値の精度をできるだけ確保するための圧縮方法を実行する。
図7は、マスタユニットによるデータ圧縮を説明するための波形図である。図8は、マスタユニットからスレーブユニットに送られる電圧データの構成を説明するための図である。なお、図7では、1相分の電圧波形が示される。図7および図8を参照して、交流の1周期中のサンプリング数をnとする。電圧値V11,V12,・・・V1nは、1周期目に計測された電圧値をデジタル値(A/D値)で示したものである。たとえば電圧値V11は、1周期目の第1番目のサンプリングタイミングにおいて取得された電圧値を示す。nはたとえば64である。
マスタユニット(演算回路18)は、1周期目の計測により取得された電圧値をそのまま保存する。電圧値V11,V12,・・・V1nは、後述する処理において基準データとされる。
マスタユニット(演算回路18)は、2周期目〜5周期目の各々において計測された電圧値と、基準データの対応する電圧値との間の差分値を示す差分データを生成する。なお、図7に示されるように、1周期目〜5周期目のいずれにおいても、サンプリングタイミングは同じである。たとえば差分値ΔV21は、2周期目の第1番目のサンプリングタイミングにおいて取得された電圧値と、電圧値V11との間の差分値である。2周期目の計測における計測値は、差分データΔV21,ΔV22,・・・ΔV2nとして表される。以下、同様に3周期目〜5周期目の各々において差分データが生成される。
マスタユニットによって計測される電圧は交流電圧であるので、その周期は一定である。したがって、電圧値のみが時間的に変化する可能性があると考えられる。この実施の形態では、2周期目〜5周期目の各々の電圧値を、1周期目の対応する電圧値との差分として生成する。これにより、2周期目〜5周期目の各々の電圧値の精度を確保しつつ、データサイズを基準データのサイズより小さくすることができる。たとえば基準データは、12ビットのデータであり、差分データは、8ビットのデータである。
この実施の形態によれば、マスタユニットとスレーブユニットとの間で伝送されるデータはデジタルデータである。これによりマスタユニットおよびスレーブユニットの各々の信号経路の数を減らすことができる。この点について説明する。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る電力量センサおよび増設ユニットが有する接続部の構成例を示した図である。図9を参照して、接続部14,24の構成は互いに同じである。接続部14,24の各々は、パルス信号端子Pxと、送信端子Txと、受信端子Rxとを含む。受信端子Rxはデジタル信号を外部から受信するための信号端子である。送信端子Txはデジタル信号を外部へと送信するための端子である。これらの端子は、図示しないバスに接続される。
通信ケーブル10は、通信線10a,10b,10cを含む。通信線10aは、接続部14,24のパルス信号端子Px同士を接続する。通信線10bは、接続部14の送信端子Txと、接続部24の受信端子Rxとを接続する。通信線10cは、接続部14の受信端子Rxと、接続部24の送信端子Txとを接続する。接続部14のパルス信号端子Pxから出力される同期パルスは、通信線10aを介して接続部24のパルス信号端子Pxに入力される。接続部14の送信端子Txから出力される電圧データ(デジタル信号)は、通信線10bを介して接続部24の受信端子Rxに入力される。接続部24の送信端子Txから出力されるデジタル信号、すなわち電力量データは、通信線10cを介して接続部14の受信端子Rxに入力される。
図10は、第1の実施の形態の比較例に係るバスの構成例を示した図である。図10を参照して、電力量センサ41,42は、接続部14a,24aをそれぞれ備える。接続部14aは、パルス信号端子Pxと、送信端子Tx1,Tx2と、受信端子Rxとを含む。接続部24aは、パルス信号端子Pxと、送信端子Txと、受信端子Rx1,Rx2とを含む。
送信端子Tx1,Tx2および受信端子Rx1,Rx2はアナログ信号の伝送のための端子である。パルス信号端子Px、送信端子Txおよび受信端子Rxの機能は上記の機能と同じである。
通信ケーブル40は、通信線40a,40b,40c,40dを含む。通信線40aは、接続部14a,24aのパルス信号端子Px同士を接続する。通信線40bは、接続部14aの送信端子Tx1と接続部24の受信端子Rx1とを接続する。通信線40cは、接続部14aの送信端子Tx2と接続部24の受信端子Rx2とを接続する。通信線40dは、接続部14aの受信端子Rxと接続部24の送信端子Txとを接続する。
電力量センサ41は、電圧の絶対値に関するデータを表すアナログ信号と、その電圧の符号を示すアナログ信号とを、送信端子Tx1,Tx2からそれぞれ出力する。これらの信号は、通信線40b,40cを介して接続部24aの受信端子Rx1,Rx2にそれぞれ入力される。一方、電力量センサ42は電力量データを示すデジタル信号を送信端子Txから出力する。このデジタル信号は、通信線40dを介して接続部14aの受信端子Rxに入力される。
図10に示された構成によれば、図9に示された構成に比べて、必要な信号線の本数が多くなる。これは、アナログ信号とデジタル信号との両方が伝送されるためである。図9および図10の対比によって示されるように、この実施の形態によれば、信号線の本数を減らすことができる。これにより、電力量計測システムのコストを抑えることができる。
以上のように、第1の実施の形態によれば、電圧計測のための配線および通信線の本数を減らしながら、電力量の演算精度を確保できる。したがって第1の実施の形態によれば、できるだけ簡素な構成によって電力量の計測精度を高くすることが可能な電力量計測システムを構成することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2に係る電力量計測システムの全体的な構成は、図1に示された構成と同様である。さらに、マスタユニットおよびスレーブユニットの構成は、図3および図4に示された構成とそれぞれ同様である。
実施の形態2では、マスタユニット(電力量センサ1)は、各スレーブユニット(電力量センサ2〜4の各々)によって計測された電流に関するデータを、そのスレーブユニットから受信する。そして、マスタユニットは、スレーブユニットによって計測された電流と、マスタユニットによって計測された電圧とに基づいて、第2の計測対象箇所の電力量を演算する。
図3および図4を参照して、実施の形態2に係るマスタユニットおよびスレーブユニットの動作について説明する。電力量センサ2(スレーブユニット)において、演算回路28は、電流計測部22によって計測された電流を示すデジタル信号を通信制御部23に出力する。通信制御部23は、接続部24および通信ケーブル10を介して、そのデジタル信号を電力量センサ1(マスタユニット)に送信する。
電力量センサ1において、通信制御部13は、接続部14を介して、電力量センサ2によって計測された電流に関するデータを示すデジタル信号を受信する。演算回路18は、電圧計測部11によって計測された電圧および、電力量センサ2からのデジタル信号によって表される電流に基づいて、第2の計測対象箇所における電力量を演算する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る計測処理および演算処理を説明するためのシーケンス図である。図11を参照して、計測期間T0,T1,T2,T3は、図5に示された計測期間と同様であり、一定の時間幅を有する。
実施の形態2では、マスタユニット(電力量センサ1)は同期パルスのみをスレーブユニット(代表的には電力量センサ2)に送信する。スレーブユニットは、電流のデータをマスタユニットに送信する。マスタユニットは、マスタユニットにより計測された電圧および電流に基づいて第1の計測対象箇所(マスタユニット側)の電力量を演算する。さらに、マスタユニットは、マスタユニットにより計測された電圧と、スレーブユニットから送られた電流データとに基づいて、第2の計測対象箇所(スレーブユニット側)の電力量を演算する。この点で、実施の形態2に係る計測処理および演算処理は、実施の形態1に係る計測処理および演算処理と異なる。
電力量センサ2は、第1の周期に計測された電流を示すデジタル信号を、第2の周期において電力量センサ1に送信する。電力量センサ1の演算回路18は、第2の周期において、第1の周期に計測された電圧および電流に基づいて、第1の周期における電力量を演算する。したがって、電力量センサ1は、第1の周期中の同じタイミングに取得された電圧データおよび電流データに基づいて、電力量センサ2の第1の周期の電力量を演算することができる。「第2の周期」は、「第1の周期」に続く計測期間に対応する。この点は実施の形態1と同様である。
以上のように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、電圧計測のための配線および通信線の本数を減らしながら、電力量の演算精度を確保できる。したがって第2の実施の形態によれば、できるだけ簡素な構成によって電力量の計測精度を高くすることが可能な電力量計測システムを構成することができる。
なお、上記の各実施の形態では、同期パルスの時間間隔により計測期間が決定される。したがって計測期間の長さは一定(たとえば交流波形の5周期分)と限定される必要はなく、計測期間の長さが適宜変化してもよい。マスタユニットによる計測の開始と同期してマスタユニットは同期パルスをスレーブユニットに送信する。これにより計測期間の長さが変化しても、マスタユニットとスレーブユニットとの間で計測の開始を同期させることができる。
また、上記の各実施の形態では、連続的に計測が実行される。このため、同期パルスは、ある計測期間の終了点および次の計測期間の始点を示す。しかしながら、間欠的に計測が実行されてもよい。この場合、たとえばマスタユニットは計測期間の始点を示す第1の同期パルスと、その計測期間の終了点を示す第2の同期パルスとをスレーブユニットに送信してもよい。スレーブユニットが第2の同期パルスを受信してから、次の第1の同期パルスを受信するまでの間の期間は、計測が行なわれない期間に対応する。
また、上記の各実施の形態では、シリアル通信の1つの例としてUART通信を示した。しかしながら、USB(Universal Serial Bus)通信、CAN(Controller Area Network)通信といった、他の方式のシリアル通信をマスタユニットとスレーブユニットとの間の通信に適用してもよい。
また、上記の各実施の形態において、マスタユニットは、交流波形の所定の周期(たとえば5周期)ごとに同期パルスを送信する。ただしマスタユニットは、1周期ごとに同期パルスを送信してもよい。マスタユニットからスレーブユニットに送信される電圧データは、上記の方法により圧縮することができる。たとえばマスタユニットは、第1の周期において基準データを生成してスレーブユニットに送信する。第2の周期において、マスタユニットは、差分データを生成してスレーブユニットに送信する。基準データは、所定の複数周期ごとに生成されればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。