JP4177720B2 - 閃光放電ランプ、閃光放電ランプ点灯装置および光照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、瞬間的に大きな強度の光を照射するのに適した閃光放電ランプ、これを点灯する閃光放電ランプ点灯装置および光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
透光性の細長い気密容器の内部にキセノンなどの放電媒体を封入した閃光放電ランプを点灯させてパルスのランプ電流を通流させると、瞬間的に大きな強度の閃光、例えば波長400nm以下の紫外光および可視光などからなる放射を瞬間的に発生させることができる。上記の光を照射することによって半導体材料のアニールなど半導体、液晶プロセス分野における表面加熱や表面処理ならびに食品分野における表面殺菌など種々の分野において、種々の利用が可能になる。従来、この種の光照射には主としてレーザを用いているが、レーザに代えて上記の閃光放電ランプを使用することが可能になり、これに伴って照射処理装置の構成が簡単になる。
【0003】
また、この種の閃光放電ランプは、石英ガラスからなり、内部空間の断面積が管軸方向に等しい直管状気密容器の両端内部に一対の電極を封装して形成するのが一般的な構造である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
閃光放電ランプによる上記のような瞬間的な光照射においては、光照射処理の態様に応じて管軸方向の好ましい光出力分布が異なる。例えば、比較的大きな面積の被照射処理物に対して同時に光照射を実施する場合には、閃光放電ランプの有効発光長のなるべく広い範囲を利用可能にするのが好ましい。
【0005】
ところが、上述した一般的な構造の閃光放電ランプの場合、高い光照射効果が得られる領域がランプの軸方向の中央部における比較的狭い範囲に限られていた。
【0006】
本発明は、ランプの管軸方向における比較的広い範囲に高い光照射効果が得られる閃光放電ランプ、これを用いた閃光放電ランプ点灯装置および光照射装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の閃光放電ランプは、管軸方向の中央部に形成された内部断面積がS1の第1の領域および第1の領域の管軸方向の両側に分散して形成された内部断面積がS2の第2の領域を備え、石英ガラスを主体として形成されていて、0.3<S2/S1<0.9を満足する透光性の細長い気密容器と;気密容器の両端内部の第2の領域に隣接した位置に封装されている一対の電極と;気密容器の内部に封入されて放電時に光を放射する放電媒体と;気密容器の外周に近接して配設されているトリガーワイヤと;を具備していることを特徴としている。
【0008】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0009】
<気密容器について> 気密容器は、少なくとも放電により発生した光、例えば紫外光または/および可視光を外部に導出して利用しようとする部位すなわち主要部が上記の光に対して透光性の石英ガラスにより形成されている。したがって、上記の部位以外のその他の部位は透光性でなくてもよい。本発明における「透光性」とは、外部に導出して利用とする所望波長帯の光を実質的に透過すればよく、したがって真空紫外線に対しては実質的に遮光性であるのが好ましいが、要すればこれに対して透過性であってもよい。
【0010】
また、気密容器は、全体として細長い形状をなしていて、内部が中空になっている。そして、管軸方向すなわち中空部の長さ方向の中央部に内部断面積がS1の第1の領域を形成し、かつ、第1の領域の両側に分散して内部断面積がS2の第2の領域をそれぞれ形成して備え、断面積比S2/S1が0.3<S2/S1<0.9を満足する関係を有している。なお、「内部断面積」とは、管軸方向に対して垂直な面内における気密容器の内面により囲まれた空間の面積をいう。また、第1の領域および第2の領域の長さの管軸方向に対する割合および相対的な位置は、管軸方向に沿って均一な光照射効果が比較的長い距離にわたり得られるように設定されていればよく、種々の組み合わせが存在する。数式1において、断面積比が0.3以下であると、両端領域における管壁負荷が大きくなりすぎて、閃光放電ランプが短寿命になりやすいので、不可である。また、断面積比が0.9以上であると、所期の紫外線照射効果が得られないので、不可である。なお、好適には0.6〜0.8である。
【0011】
さらに、第1および第2の領域は、次のとおり定めるものとする。すなわち、気密容器の内部空間について、内部断面積の大きさの最大値と最小値とを求める。次に、これらの値から平均値を算出する。平均値を境として内部空間を大小2つに区分する。そして、相対的に内部断面積の大きい部位を第1の領域とする。同様に相対的に内部断面積の小さな部位を第2の領域とする。
【0012】
さらにまた、気密容器は、第1の領域の内部断面積をS1とし、第2の領域の内部断面積をS2としたとき、断面積比S2/S1が0.3<S2/S1<0.9を満足していれば、横断面の形状は特段限定されない。例えば、第1の領域および第2の領域の横断面形状をともに真円形にすることができる。また、第1の領域を扁平形状にしてもよい。
【0013】
さらにまた、気密容器は、後記一対の電極間における有効発光長に関して、前記第1の領域が中央部に位置して、その発光長をL1とし、前記第2の領域が第1の領域の両側に分散して位置して、その発光長をL2とし、かつ、一対の電極が第2の領域に隣接する位置に封装されているときに、発光長比L1/L2がL1/L2≧1を満足するように設定することができる。なお、第2の領域の発光長L2は、当該領域が気密容器の両端に分散して配設されるが、それぞれの領域における発光長の和である。
【0014】
発光長比L1/L2がL1/L2≧1を満足するように設定することにより、ランプ長に占める光照射有効長を相対的に長くすることができる。なお、「光照射有効長」とは、光照射に有効に用いることのできる部位の管軸方向の長さをいう。
【0015】
<一対の電極について> 一対の電極は、気密容器の両端内部に対向して封装されている。従来から閃光放電ランプに一般に用いられている構成の冷陰極形の電極を用いることができる。また、電極は、例えばニッケルNi、タングステンW、モリブデンMoおよびタンタルTaのグループから選択された一種または複数種の金属あるいは複数種の金属の合金を用いて形成することができる。
【0016】
さらに、一対の電極は、第2の領域に隣接する位置に封装されている。
【0017】
<放電媒体について> 放電媒体は、放電により所望波長の光を放射する媒体である。例えば、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのグループから選択された一種を単独で、または複数種の希ガスを混合して用いることができる。また、放電媒体の封入圧は、従来から閃光放電ランプに一般に用いられているのと同様な圧力であればよい。
【0018】
<トリガーワイヤについて> トリガーワイヤは、気密容器の外面に近接して配設され、少なくとも一方の電極との間に強い電界強度を形成することにより、一対の電極間に放電を開始させる手段である。トリガーワイヤによって一方の電極との間に強い電界強度を形成するためには、例えばトリガーワイヤと当該一方の電極との間にトリガ用電源を接続したり、トリガーワイヤを他方の電極に接続したりすればよい。
【0019】
また、トリガーワイヤは、気密容器の外面に近接して配設するために、棒状、帯状または線条の導体を、気密容器の外面にコイル状に巻回したり、管軸方向に沿ってほぼ直線的に配置したりすることができる。後者の場合、気密容器の外面に近接した状体を維持するために、接着剤によってトリガーワイヤを固定することができる。
【0020】
さらに、トリガーワイヤは、導電性材料からなり、気密容器の外面において、一対の電極間に跨るような管軸方向の長さにわたって配設することができる。しかしながら、要すれば、一方の電極に対向する位置から他方の電極にまで至らない手前の適当な距離にわたって配設することができる。
【0021】
<本発明の作用について> 本発明においては、一対の電極をパルス電流を供給する電源、例えば充電コンデンサに接続して、トリガーワイヤと一方の電極との間にトリガー用の電圧を印加することにより、閃光放電ランプは、トリガーされて瞬間的に放電を生起する。そして、放電により一対の電極間にパルス状の電流が流れて、放電媒体から光が放射し、気密容器から外部へ透過する。
【0022】
そうして、外部へ導出された光をそれぞれの目的に応じて利用することができる。外部へ導出された光の利用の態様としては、例えば半導体材料のアニールなど半導体、液晶プロセス分野における表面加熱や表面処理ならびに食品分野における表面殺菌など種々の分野において、種々の態様が可能である。
【0023】
また、本発明においては、閃光放電ランプの気密容器の管軸方向の中央部に形成された内部断面積がS1の第1の領域および第1の領域の管軸方向の両側に分散して形成された内部断面積がS2の第2の領域における内部断面積比S2/S1が0.3<S2/S1<0.9を満足するので、管軸方向の光照射による効果均整度が管軸方向の比較的広い範囲にわたり得られる。その結果、光照射の効率が高くなる。また、閃光放電ランプが短寿命になるのを回避することができる。
【0024】
請求項2の発明の閃光放電ランプは、請求項1記載の閃光放電ランプにおいて、気密容器は、第1の領域の内面が扁平であることを特徴としている。
【0025】
本発明において、第1の領域における内面の形状が扁平であるとは、例えば横断面が楕円形、長円形、ほぼ長方形などである。また、第1の領域は、好ましくは中央部に位置している。
【0026】
他方、本発明において、第2の領域は、内面の形状が自由である。例えば、横断面が真円形状、非円形などであることを許容する。
【0027】
第2の領域の内面が真円形状であれば、電極の封装が容易で、しかも、電極の封装および気密容器の封止に対する信頼性が高くなる。
【0028】
そうして、本発明においては、第1の領域が扁平な内部形状を有しているので、内部断面積比S2/S1が0.3<S2/S1<0.9を満足しながら第1の領域の幅方向の外形寸法を第2の領域のそれと同一以下に維持することが可能になる。すなわち、第1の領域が扁平であれば、扁平面に対して直角な方向から見たときの幅寸法が第1の領域の幅と同等以下に形成することができる。そのため、複数の閃光放電ランプを複数並列配置する場合に、近接配置することが可能になる。
【0029】
本発明の閃光放電ランプの一態様として、気密容器の内面に金属およびまたは金属酸化物からなり真空紫外線を遮断するとともに少なくとも長波長紫外線を透過する波長選択性透過膜を形成することができる。
【0030】
金属およびまたは金属酸化物からなり真空紫外線を遮断するとともに少なくとも長波長紫外線を透過し、さらに所望により可視光も透過するように形成される波長選択性透過膜は、例えばチタンTi、セリウムCe、インジウムInおよびケイ素Siのグループから選択された一種または複数種の金属および金属酸化物の膜により得ることができる。
【0031】
また、波長選択性透過膜は、0.5μm以上の膜厚を有していれば、波長200nm以下の真空紫外線を効果的に遮断することができるので、好ましい。また、波長選択性透過膜の膜厚を上記よりさらに大きくすることにより、波長選択性を所望に設定するとともに、信頼性の高い波長選択性透過膜を得ることができる。
【0032】
さらに、波長選択性透過膜を形成するには、例えばスパッタリング法、化学的被着法CVD法またはディッピング法などによることができる。
【0033】
そうして、本態様においては、上記の構成を具備していることにより、波長選択性透過膜が真空紫外線を遮断するとともに少なくとも長波長紫外光を透過するので、放電により放射された紫外光のうち、波長200nm以下の真空紫外光および波長240nm以下の紫外光は、波長選択性透過膜により実質的に遮断されて気密容器の石英ガラス内に入射されなくなる。そのため、気密容器の主体となる石英ガラスの短波長紫外光による歪および劣化を抑制することができる。
【0034】
これに対して、少なくとも波長240nm以上の長波長紫外光および所望により可視光は、実質的に波長選択性透過膜を透過するので、気密容器の外部へ導出して、これを利用することができる。
【0035】
請求項3の発明の閃光放電ランプは、請求項1または2記載の閃光放電ランプにおいて、トリガーワイヤは、管軸方向の長さが電極間距離の2/3以下であることを特徴としている。
【0036】
トリガーワイヤの閃光放電ランプの管軸方向における長さは、閃光放電ランプの始動性の函数であるが、当該長さが電極間距離の2/3以下であれば、始動性を失うことなく、所望に始動性を抑制することができる。すなわち、始動性がよすぎると、コンデンサの充電圧が所定値まで達しないような場合、トリガーワイヤの管軸方向における長さを電極間距離の2/3以下にすることにより、始動性が適当な程度まで低下するため、コンデンサの充電圧を所定値まで到達させることができる。その結果、放電エネルギーを所望に設定することができる。
【0037】
なお、トリガーワイヤは、1本の導電性金属線からなるものであれば、接触抵抗が小さくなるので、好ましい。また、トリガーワイヤが気密容器の外面に巻装されていることにより、放電のアークが気密容器の中心部に形成されるので、反射鏡を配設して閃光放電ランプの紫外線発光を集光させる構成において、当該反射鏡の設計が容易になるとともに、集光作用が安定する。
【0038】
そうして、本発明においては、トリガーワイヤの閃光放電ランプの管軸方向における長さを電極間距離の2/3以下にするだけの簡単な構成で、始動性が促進されるとともに、コンデンサの充電圧を所定値まで到達させて、放電エネルギーを所望に設定することができる。
【0039】
請求項4の発明の閃光放電ランプ点灯装置は、複数の請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプを直列接続してなる直列接続ランプ回路と;直列接続ランプ回路にパルス電流を通流するコンデンサと;コンデンサを充電する高圧電源と;を具備していることを特徴としている。
【0040】
閃光放電ランプの直列接続は、放電用エネルギーを供給するコンデンサに対して複数の閃光放電ランプが直列的に接続されていればよく、したがって閃光放電ランプと隣接する閃光放電ランプのとの間に他の電気部品、例えば抵抗器などが介在していてもよい。また、直列接続される閃光放電ランプの数は特段限定されない。なお、複数の閃光放電ランプのトリガーワイヤを直列接続することができる。これにより、トリガーワイヤの回路構成を簡単化することができる。
【0041】
複数の閃光放電ランプに放電エネルギーを供給するコンデンサは、単一でもよいし、所望により例えば並列接続した複数のコンデンサからなるのであってもよい。
【0042】
高圧電源は、高電圧直流電圧を出力して、コンデンサを充電する。
【0043】
そうして、本発明においては、上記の構成を具備していることにより、コンデンサおよび高圧電源が1台で複数の閃光放電ランプを同時に点灯させることができる。そのため、閃光放電ランプ点灯装置の構成が簡単化、かつ、小形化され、延いては安価になる。また、本発明は、複数の閃光放電ランプを多数併設する場合に、複数の閃光放電ランプの放電エネルギーを揃えるとともに、同時に照射することが容易になり、紫外線照射処理を良好に行うことができる。
【0044】
請求項5の発明の光照射装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプと;閃光放電ランプの発光を被処理部に集光する反射鏡と;閃光放電ランプにパルス電流を供給して点灯する閃光放電ランプ点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0045】
反射鏡は、光反射性であって、かつ、閃光放電ランプの発光を被処理部に集光することができれば、具体的な構成は特段限定されない。
【0046】
閃光放電ランプ点灯回路は、コンデンサおよび高圧電源が閃光放電ランプと1対1の関係をなして複数配設されてもよいし、請求項4に規定するように構成されていてもよい。
【0047】
閃光放電ランプおよび反射鏡と被処理部との間に所望波長の光、例えば所望波長の紫外線のみを透過する波長選択性の光学フィルタを介在させることができる。
【0048】
次に、本発明の光照射装置を用いる態様の一例として、半導体材料などのディスク状の材料からなる被割断物の割断方法について以下説明する。すなわち、閃光放電ランプから発生する瞬間的な光エネルギーの光を予定の割断線に沿って集光して被割断物に照射する。このとき、好ましくは割断線の部分をスリット状に除いて被割断物のその他の領域に光遮断性のマスクを配設しておくことにより、精細な割断の場合に効果的である。また、光学フィルタを用いて割断に効果的な波長帯を選択的に抽出して割断線に沿って照射するように構成することができる。さらに、被割断物の載置台に割断線に沿った凸条部を備えることにより、割断がより一層容易になるとともに、正確な割断を行わせるのに効果的である。
【0049】
そうして、閃光放電ランプから発生する瞬間的な高エネルギーの光を集光して被割断物の予定の割断線に照射すると、割断線に沿って大きな熱エネルギーが瞬間的に加えられて、材料の破壊が生じる。そのため、被割断物は、割断線に沿って容易に割断する。なお、マスクは、常法により所望時に除去することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0051】
図1ないし図4は、本発明の閃光放電ランプの第1の実施の形態を示し、図1は正面断面図、図2は要部拡大正面断面図、図3は要部拡大横断面端面図、図4は管軸方向における放射光の照射効果を比較例のそれととともに示すグラフである。
【0052】
本実施の形態において、閃光放電ランプXFLは、気密容器SE、一対の電極E、E、放電媒体およびトリガーワイヤTWからなる。
【0053】
気密容器SEは、石英ガラスからなり、管軸方向に一端から第2の領域2、第1の領域1および第2の領域2からなる。第1および第2の領域1、2は、その管軸方向の内部断面積がS1、S2であり、内部断面積比がS2/S1が数式1を満足している。すなわち、第1および第2の領域は、図3に示すように、ともに横断面がほぼ真円形状であり、第1の領域1が内径10mm、第2の領域2が内径6mmであり、ともに管軸方向に延在する円筒状をなしている。したがって、上記内径に基づいて計算すると、本実施の形態において内部断面積比S2/S1は約0.36である。第1および第2の領域1、2の中間は、段継ぎされて一体化されている。
【0054】
一対の電極E、Eは、タングステンW製であり、導入線3によって支持されて第2の領域2、2の端部の内部に封装されている。なお、導入線3は、電極Eを支持するとともに、気密容器SEの両端部から外部へ気密に導出されていて、電極Eにランプ電流を供給する際の導電体としても機能する。
【0055】
放電媒体は、キセノンが封入されている。
【0056】
トリガーワイヤTWは、例えばモリブデン線からなり、気密容器SEの外面に接触した状態で管軸方向に沿って延在している。
【0057】
そうして、本実施の形態における閃光放電ランプは、第1の領域1における有効発光長をL1とし、第2の領域2、2における有効発光長を合算してL2としたとき、有効発光長比L2/L1がL1/L2≧1を満足するように設定されている。
【0058】
また、本実施の形態における閃光放電ランプを2000Vに充電した容量300μFのコンデンサを300μHのインダクタを経由して一対の電極E、E間に接続して点灯した。そして、ランプ電流のピーク値が3000Aのときの気密容器SEの内部における電流密度分布は計算により求めることができ、次のとおりであった。すなわち、第1の領域1における電流密度が3836A/cm2、第2の領域2における電流密度が10600A/cm2である。
【0059】
閃光放電ランプの管軸方向に沿って単位長当たりに発生する光放射量は、管軸方向に沿った電流密度に応じて変化する。したがって、本実施の形態においては、両端部に位置する第2の領域における光放射量は、中央部に位置する第1の領域1のそれより増大する。その結果、光照射によって高い効果が得られる閃光放電ランプの管軸方向に沿った領域が図4に示すように長くなる。なお、図4において、横軸は閃光放電ランプの有効発光長における管軸方向の位置を、縦軸は放射光照射による相対効果を、それぞれ示す。図中、曲線Aは本実施の形態、曲線Bは比較例、をそれぞれ示している。
【0060】
これに対して、比較例は、放射光照射によって高い効果が得られる閃光放電ランプの管軸方向に沿った領域が顕著に狭い。なお、比較例は、気密容器が有効発光長の全長にわたり内径10mmの石英ガラスからなる以外は、本実施の形態におけるのと同一仕様であるとともに、点灯条件も同一である。
【0061】
以下、図5ないし図12を参照して本発明の閃光放電ランプのその他の実施の形態を説明する。なお、各図において、図1ないし図3と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0062】
図5は、本発明の閃光放電ランプにおける第2の実施の形態を示す正面断面図である。本実施の形態は、気密容器の管軸方向における内径が両端部から中央に向かって順次連続的に増大している。本実施の形態においては、第1の実施の形態と基本的に同様で、放射光照射によって高い効果が得られる領域を長くすることができるが、放射光照射効果の均整度がより一層良好になる。
【0063】
図6は、本発明の閃光放電ランプにおける第3の実施の形態を示す正面断面図である。本実施の形態は、気密容器の管軸方向における内径が両端部から中央に向かって3段階に増大している。本実施の形態においては、第1の実施の形態と基本的に同様で、放射光照射によって高い効果が得られる領域を長くすることができるが、放射光照射効果の均整度が図5に示す第2の実施の形態の次に良好になる。
【0064】
図7は、本発明の閃光放電ランプにおける参考例を示す正面図である。本参考例は、第1の領域1が気密容器SEの両端部に、第2の領域2が中央部に、それぞれ配置されている。そして、第1の領域1、1の有効発光長を合算してL1とし、第2の領域2の有効発光長をL2としたとき、L1/L2が数式2を満足している。
【0065】
そうして、本参考例においては、放射光出力が増大する第2の領域が気密容器の中央部で、しかも、相対的に長い距離にわたり形成されるので、第2の領域を用いて強い放射光による被照射物の光照射処理を行うことができる。
【0066】
図8は、本発明の閃光放電ランプにおける第4の実施の形態を示す正面断面図である。本実施の形態は、気密容器の内面に波長選択性透過膜4が形成されている。波長選択性透過膜3は、酸化チタンを主成分として構成されていて、膜厚が約8μmである。
【0067】
図9ないし図11は、本発明の閃光放電ランプにおける第5の実施の形態を示し、図9は正面断面図、図10は要部拡大正面断面図、図11は要部拡大横断面端面図である。本実施の形態は、第1の領域1が楕円形状になっているが、第2の領域2は真円形状である。第1の領域1は、その短径部の外径が第2の領域2の外径とほぼ同一サイズになっている。そのため、短径部を隣接させることにより、複数の閃光放電ランプを隙間なく隣接配置することができる。
【0068】
図12は、本発明の閃光放電ランプにおける第6の実施の形態を示す正面図である。本実施の形態は、トリガーワイヤTWの管軸方向の長さを電極間距離の2/3以下に設定されている。なお、トリガーワイヤTWは、気密容器SEの外面に接触してコイル状に巻回されている。また、気密容器SEの構成は、図1ないし図3、図5ないし図11にそれぞれ示す第1ないし第5の実施の形態における構成であることを許容する。
【0069】
図13、本発明の閃光放電ランプにおける第7の実施の形態を説明する石英ガラスのOH基濃度と光減衰率の関係を示すグラフである。図において、横軸は石英ガラスのOH濃度(ppm)を、縦軸は真空紫外光を照射後の光減衰率(%)を、それぞれ示す。図の曲線は、OH基濃度の異なる石英ガラスに真空紫外光を100時間照射後に真空紫外光の減衰率を調査して作成されたもので、光減衰率が大きいほど石英ガラスの劣化が大きいことを意味する。
【0070】
図14は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置の一実施の形態を示す回路ブロック図である。本実施の形態においては、3本の閃光放電ランプXFLに対してこれらを点灯するためのコンデンサCが1組であり、コンデンサを充電する高圧電源HVSも単一である。また、複数の閃光放電ランプXFLは、直列接続されてコンデンサCの両極間に接続している。
【0071】
図15は、本発明の光照射装置における第1の実施の形態を示す略図的断面図である。本実施の形態において、光照射装置は、閃光放電ランプXFL、反射鏡Mおよび図示しない閃光放電ランプ点灯装置を具備している。なお、Sは被照射処理物である。
【0072】
閃光放電ランプXFLは、図1ないし図3、図5ないし図13にそれぞれ示す第1ないし第7の実施の形態におけるランプを用いる。
【0073】
反射鏡Mは、閃光放電ランプXFLの発光中心を第1焦点とする楕円反射面を備えている。
【0074】
閃光放電ランプ点灯装置は、図示を省略しているが、閃光放電ランプXFLに接続したコンデンサおよびコンデンサを充電する高圧電源を備えている。
【0075】
被照射処理物Sは、例えば半導体基板からなり、反射鏡Mの第2焦点に被照射面が位置するように反射鏡Mの下方に配置される。そして、紫外線照射により熱エネルギーが集中して被照射面に加えられることにより、被照射処理物Sは所望の予定割断線に沿って割断される。
【0076】
図16は、本発明の光照射装置における第2の実施の形態を示す略図的断面図である。本実施の形態において、被照射処理物Sは、予定割断線以外の表面部位が遮光マスクMSで被覆されている点で異なる。
【0077】
図17は、本発明の光照射装置における第3の実施の形態を示す略図的断面図である。本実施の形態においては、反射鏡Mおよび閃光放電ランプXFLと被照射処理物Sとの間に波長選択性フィルタFが介在されている点で異なる。
【0078】
図18および図19は、本発明の光照射装置における第4の実施の形態を示し、図18は略図的断面図、図19は載置面の機能説明図である。本実施の形態においては、被照射処理物Sの載置面STに予定割断線に沿った凸条部11が形成されている点で異なる。
【0079】
載置面STに予定割断線に沿った凸条部11が形成されていると、被照射処理物Sの質量によって、図18の矢印に示す方向の押し下げ力が作用するので、予定割断線に沿った割断が促進される。
【0080】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、内部断面積がS1の第1の領域が管軸方向の中央部に形成され、内部断面積がS2の第2の領域が第1の領域の両側に分散して形成され、石英ガラスを主体として形成されていて、内部断面積比S2/S1が0.3<S2/S1<0.9を満足する透光性の細長い気密容器と、気密容器の両端内部の第2の領域に隣接する位置に封装された一対の電極と、放電媒体と、トリガーワイヤとを具備していることにより、ランプの光照射による効果均整度が管軸方向の比較的広い範囲にわたって得られて光照射の効率が高くなるとともに、短寿命になるのを回避した閃光放電ランプを提供することができる。
【0081】
請求項2の発明によれば、気密容器は、第1の領域の内面が扁平であることにより、複数並列配置する場合に、近接配置することが可能になる閃光放電ランプを提供することができる。
【0082】
請求項3の発明によれば、トリガーワイヤは、管軸方向の長さが電極間距離の2/3以下であることにより、始動性が促進されるとともに、コンデンサの充電圧を所定値まで到達させて、放電エネルギーを所望に設定することが可能な閃光放電ランプを提供することができる。
【0083】
請求項4の発明によれば、複数の請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプを直列接続してなる直列接続ランプ回路と、直列接続ランプ回路にパルス電流を通流するコンデンサと、コンデンサを充電する高圧電源とを具備していることにより、閃光放電ランプ点灯装置の構成が簡単化、かつ、小形化され、延いては安価になり、かつ、複数の閃光放電ランプの放電エネルギーを揃えるとともに、同時に照射することが容易になり、光照射処理を良好に行うことが可能な閃光放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0084】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプと、反射鏡と、閃光放電ランプ点灯回路とを具備していることにより、請求項1ないし5の効果を有する光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の閃光放電ランプの第1の実施の形態を示す正面断面図
【図2】 同じく要部拡大正面断面図
【図3】 同じく要部拡大横断面端面図
【図4】 同じく管軸方向における光照射効果を比較例のそれととともに示すグラフ
【図5】 本発明の閃光放電ランプにおける第2の実施の形態を示す正面断面図
【図6】 本発明の閃光放電ランプにおける第3の実施の形態を示す正面断面図
【図7】 参考例を示す正面断面図
【図8】 本発明の閃光放電ランプにおける第4の実施の形態を示す正面断面図
【図9】 本発明の閃光放電ランプにおける第5の実施の形態を示す正面断面図
【図10】 同じくは要部拡大正面断面図
【図11】 同じく要部拡大横断面端面図
【図12】 本発明の閃光放電ランプにおける第6の実施の形態を示す正面図
【図13】 本発明の閃光放電ランプにおける第7の実施の形態を説明する石英ガラスのOH基濃度と光減衰率の関係を示すグラフ
【図14】 本発明の閃光放電ランプ点灯装置の一実施の形態を示す回路ブロック図
【図15】 本発明の光照射装置における第1の実施の形態を示す略図的断面図
【図16】 本発明の光照射装置における第2の実施の形態を示す略図的断面図
【図17】 本発明の光照射装置における第3の実施の形態を示す略図的断面図
【図18】 本発明の光照射装置における第4の実施の形態を示す略図的断面図
【図19】 同じく載置面の機能説明図
【符号の説明】
1…第1の領域、2…第2の領域、3…導入線、E…電極、SE…気密容器、TW…トリガーワイヤ、XFL…閃光放電ランプ
Claims (5)
- 管軸方向の中央部に形成された内部断面積がS1の第1の領域および第1の領域の管軸方向の両側に分散して形成された内部断面積がS2の第2の領域を備え、石英ガラスを主体として形成されていて、0.3<S2/S1<0.9を満足する透光性の細長い気密容器と;
気密容器両端の両端内部の第2の領域に隣接した位置に封装されている一対の電極と;
気密容器の内部に封入されて放電時に光を放射する放電媒体と;
気密容器の外周に近接して配設されているトリガーワイヤと;
を具備していることを特徴とする閃光放電ランプ。 - 気密容器は、第1の領域の内面が扁平であることを特徴とする請求項1記載の閃光放電ランプ。
- トリガーワイヤは、管軸方向の長さが電極間距離の2/3以下であることを特徴とする請求項1または2記載の閃光放電ランプ。
- 複数の請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプを直列接続してなる直列接続ランプ回路と;
直列接続ランプ回路にパルス電流を通流するコンデンサと;
コンデンサを充電する高圧電源と;
を具備していることを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。 - 請求項1ないし3のいずれか一記載の閃光放電ランプと;
閃光放電ランプの発光を被処理部に集光する反射鏡と;
閃光放電ランプにパルス電流を供給して点灯する閃光放電ランプ点灯回路と;
を具備していることを特徴とする光照射装置。
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