JP3652092B2 - 閃光放電管およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス等の材料で形成される透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成された、写真撮影等に用いられる閃光放電管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、写真撮影等に用いられる閃光放電管は、円柱形のガラスにキセノン等の希ガス類を封入し、該ガラスの両端部にカソード電極およびアノード電極を設けるとともに、ガラスの外周面に酸化スズ等を主成分とする透明導電性膜からなるトリガ電極を形成して構成されている。
【0003】
この種の閃光放電管の発光効率を向上するための手段として、本出願人は、先に、閃光放電管の被写体を直射する側の全部または大部分に透明導電性材料の非塗布部分を形成する技術を提案している(実開昭60−141065号公報参照)。前記考案に係る閃光放電管において、例えば、放電管の裏面にのみ透明導電性材料を被覆したときの光量が、全面被覆したときの光量に比べて7%程度増加することが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明導電性材料の被覆条件と発光効率との関係について、上記の技術に関連して、本出願人がその後さらに鋭意検討した結果によるものであり、十分な光量が得られるとともに、発光信頼性に優れる閃光放電管およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る閃光放電管は、透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成される閃光放電管において、該透明導電性膜による透光性封体被覆率が5〜30%の範囲内であることを特徴とする。ここで、透光性封体被覆率とは、前記透明導電性膜による透光性封体の被覆面積と、透光性封体の中心軸と同軸上に設けられる両端部に設けられるカソード電極およびアノード電極の両電極の各先端部と軸方向に垂直の同一断面上の透光性封体の表面位置間における透光性封体の表面積との比を百分率で表したものをいう。
【0006】
前記透光性封体の材料は、好適にはガラスを用いるが、これに限定するものではない。また、透明導電性膜を形成するための材料は、好適にはインジウムまたはスズを主成分金属として含有する有機金属化合物の溶液であり、該材料が加熱処理されてインジウムの酸化物(In2 3 +SnO2 )を主成分とし、またはスズの酸化物(SnO2 +Sb2 3 )を主成分とする透明導電性膜が形成される。インジウムの酸化物を主成分とする皮膜はITO膜と呼ばれるものである。なお、本発明において、これらの材料に特に限定するものではない。
【0007】
これにより、従来の閃光放電管に比べて光量が増加するとともに、一定条件下で連続発光可能な最低発光電圧が上昇することなく、また一定条件下での連続発光試験の合格率に優れる発光信頼性の高い閃光放電管を得ることができる。なお、これら発光信頼性試験方法等の内容については、後述する。
【0008】
また、本発明に係る閃光放電管において、前記透光性封体は該透光性封体の一端部に該透光性封体の中心軸と同軸上に設けられるカソード電極の先端部と軸方向に垂直の同一断面上における該透光性封体の表面位置近傍から該軸方向中央に向けて透光性封体被覆率が5%以上となるように透明導電性膜により帯状に被覆されていると好適である。すなわち、少なくとも透光性封体被覆率の5%分に相当する帯状の透明導電性膜を上記のカソード電極の先端部付近に形成することにより、前記した本発明の効果を得ることができる。
【0009】
さらに、本発明に係る閃光放電管の製造方法は、透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成される閃光放電管の製造方法において、透明導電性材料として主成分金属がインジウムまたはスズである有機金属化合物の溶液を用いて該透光性封体の表面を浸漬法により被覆し、これを乾燥した後、さらに該透明導電性材料の被覆層のうち透明導電性膜を形成する部分のみに熱風を吹き付けて該透明導電性材料に含有されるインジウムまたはスズを酸化して局部的に焼成し、その後酸性溶液で該透明導電性材料の未焼成部分をエッチング除去して該透光性封体の表面に帯状の該透明導電性膜を形成することを特徴とする。ここで、熱風は酸素含有ガスであればその種類を特に限定するものではないが、空気を用いると簡便であり、好ましい。
【0010】
これにより、透光性封体の表面に帯状の透明導電性膜が容易に形成され、本発明に係る閃光放電管を好適に得ることができる。また、上記した方法において、透光性封体の表面に形成された透明導電性材料の被覆層のうち焼成する部分のみに局部的に熱風を吹き付けることから、閃光放電管のリード端子の酸化を防止することができ、カソード電極中のセシウム成分の加熱損失を回避することができる。
【0011】
本発明に係る閃光放電管の製造方法において、透光性封体の表面に帯状の透明導電性膜を形成するに先立ち、予めアノード電極またはカソード電極を該透光性封体の両端部に封止処理して設ける場合は、該透明導電性膜を形成した後、さらに真空中または不活性ガス雰囲気下でアニーリング処理することにより、透明導電性膜の導電性をより高くすることができて好適である。
【0012】
これに対して、透光性封体の表面に帯状の透明導電性膜を形成した後に、アノード電極またはカソード電極を該透光性封体の両端部に封止処理して設ける場合は、該封止処理を施すことが同時に透明導電性膜のアニーリング処理を施すことになるために、透明導電性膜のアニーリング処理を格別に行うことなく、透明導電性膜の導電性を向上させるという効果が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る閃光放電管およびその製造方法の好適な実施の形態例を図1〜図6を参照しながら説明する。
【0014】
先ず、図1〜図2を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る閃光放電管の構成とその製造方法について説明する。
【0015】
本実施の形態に係る閃光放電管10は、図1に示すように、ガラス管12の両端部にカソード電極14とアノード電極16が封止処理して設けられ、カソード電極14とアノード電極16にはリード端子18がそれぞれ接続される。ガラス管12の内部には、キセノンガス20が所定の圧力で封入される。ガラス管12の表面には、カソード電極14の先端部に対応するガラス管12の表面の位置から所定の表面位置まで、透明導電性膜22により帯状に被覆される。
【0016】
前記透明導電性膜22は、以下の方法により形成される。
【0017】
先ず、図2Aに示すように、ガラス管12の両端部にカソード電極14とアノード電極16が封止処理して設けられる閃光放電管10を準備する。
【0018】
次いで、図2Bに示すようにインジウムを主成分金属とする有機金属化合物の溶液を満たした浴24を準備し、この浴24の中に、前記閃光放電管10をカソード電極14を下向きとして、アノード電極16が浸されない位置まで浸漬し、約10mm/sの引き上げ速度で引き上げることにより溶液の被覆膜22aを閃光放電管10に塗布する。図示しない乾燥工程において、例えば、約60℃程度の温度雰囲気下で約5分間程度乾燥した後、図2C中、矢印で示すように、閃光放電管10のカソード電極14の上端部から所定の高さ(W)までの前記被覆膜22aのみに局部的に、例えば、約500℃程度の温度の空気を約2l−空気/cm2 −透明導電性材料/s(秒)程度の量で約20s(秒)間程度吹き付けて溶液中のインジウムを酸化して焼成させる。
【0019】
さらに、図2Dに示すように、1規定の塩酸水溶液を満たした浴26を準備し、この浴26の中に、前記閃光放電管10全体を約30s(秒)浸漬させる。これにより、閃光放電管10の前記被覆膜22aは、浴26中の塩酸水溶液に溶解して除去され、先に高温の空気により加熱されたカソード電極14近傍の酸化された部分の被覆膜22bのみが残る。その後、図示しない水洗工程において水洗して乾燥することにより、閃光放電管10の表面への所定の幅(W)の帯状の透明導電性膜22bの形成が完了する。
【0020】
好ましくは、図2Eに示すように、引き続き前記閃光放電管10を真空中または不活性ガス雰囲気下で、例えば、約200℃程度の温度で約20分程度加熱してアニーリング処理を施す。これにより、前記透明導電性膜22bの導電性を向上させることができる。
【0021】
なお、本実施の形態に係る閃光放電管10の製造方法に代えて、ガラス管12の両端部にカソード電極14とアノード電極16を封止する作業を前記した透明導電性膜22bを形成した後に最終工程で行う場合には、該封止作業によって、前記透明導電性膜22のアニーリング処理を兼ねることができる。
【0022】
次に、本実施の形態に係る閃光放電管10の発光特性の評価方法および評価結果について、図3〜図6を参照しつつ、以下に説明する。
【0023】
閃光放電管10の発光特性の評価は、図3に示す基本回路を構成して行った。すなわち、基本回路は、電源である乾電池28とこの乾電池28の電圧を昇圧させるためのDC−DCコンバータ30を有し、DC−DCコンバータ30にはメインコンデンサ32が接続される。メインコンデンサ32には、さらに抵抗34と抵抗36とからなる分圧回路が並列接続され、その分圧点と接地線間にはパイロットランプ38が接続される。メインコンデンサ32には、さらに抵抗40、トリガ用コンデンサ42および抵抗44の直列回路が並列接続されるとともに、閃光放電管10の一対の電極が接続される。トリガ用コンデンサ42の一端には、トリガコイル46の一次巻線48の一端が接続され、トリガ用コンデンサ42の他端と一次巻線48の他端はスイッチ50に接続される。トリガコイル46の二次巻線52は、透明導電性膜からなるトリガ電極54に接続される。
【0024】
図示しない電源スイッチを投入すると、メインコンデンサ32の電圧が数百Vに昇圧されて、発光準備が完了する。次いで、スイッチ50をオンすると、トリガコイル46の二次巻線52に数kVのパルスを生じ、トリガ電極54に印加されて放電を誘発し、閃光放電管10が発光する。スイッチ50のオン、オフにより発光が連続して繰り返される。ここで、発光量を測定するために、閃光放電管10に対置するように受光素子としての積分球56を設ける。
【0025】
発光特性の評価は、次の3項目について行った。
【0026】
光量は、前記閃光放電管10の基本回路において、静電容量が100μFのメインコンデンサ32に280V充電して発光させ、前記積分球56を用いて光量を測定し、これをガイドナンバ(光量)に換算した。評価には、10本の閃光放電管10の平均値を用いた。
【0027】
最低発光電圧は、前記静電容量が100μFのメインコンデンサ32を140Vの電圧から始めて5Vずつ昇圧した場合において、5回連続して全て発光したときの最低電圧とした。これについても、評価には、10本の閃光放電管10の平均値を用いた。
【0028】
連続発光試験の合格率は、前記閃光放電管10の基本回路において、静電容量が170μFのメインコンデンサ32に320V充電して20s(秒)間隔で連続して300回発光させて、300回全て発光したときを合格とし、各設定電圧で行った10本の閃光放電管10のうちの合格本数の比率とした。
【0029】
評価対象となる閃光放電管10は、透光性封体被覆率(図1において、(W/W0 )×ガラス管円周長さ×100)が、100%、54.0%、23.0%、15.4%、7.7%、3.8%、0%のものを用いた。
【0030】
各評価項目についての評価結果を図4〜図6に示す。
【0031】
図4に示すガイドナンバ(光量)は、透光性封体被覆率を減少させるにつれて顕著に増加し、例えば、透光性封体被覆率が100%のものに比べて50%のものの方が約5%程度増加する点は、先の知見と同様であったが、今回さらに透光性封体被覆率が小さい範囲において、透光性封体被覆率が5%未満となるまではさらに漸増傾向が続くことがわかった。
【0032】
図5に示す最低発光電圧は、透光性封体被覆率を5%まで減少させてもほぼ同等レベルに維持されるが、これを超えて透光性封体被覆率を減少させると急激に上昇することがわかった。
【0033】
図6に示す連続発光試験の合格率は、透光性封体被覆率を5%まで減少させても100%が維持されるが、これを超えて透光性封体被覆率を減少させると急激に低下することがわかった。
【0034】
上記各評価結果を総合的に判断すると、光量を十分に確保するとともに、発光信頼性の高い閃光放電管を得るためには、透明導電性膜による透光性封体被覆率を5〜30%の範囲内とすると好適であることがわかった。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る閃光放電管によれば、透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成される閃光放電管において、該透明導電性膜による透光性封体被覆率を5〜30%の範囲内としている。
【0036】
このため、十分な光量が得られるとともに、発光信頼性に優れる閃光放電管を得ることができるという効果が達成される。
【0037】
また、本発明に係る閃光放電管の製造方法によれば、透明導電性材料として主成分金属がインジウム等の有機金属化合物の溶液を用いて該透光性封体の表面を浸漬法により被覆し、これを乾燥した後、さらに該透明導電性材料の被覆層のうち透明導電性膜を形成する部分のみに熱風を吹き付けて該透明導電性材料に含有されるインジウム等を酸化して局部的に焼成し、その後酸性溶液で該透明導電性材料の未焼成部分をエッチング除去して該透光性封体の表面に帯状の該透明導電性膜を形成している。
【0038】
このため、透光性封体の表面に帯状の透明導電性膜を容易に形成することができ、本発明に係る閃光放電管が好適に得られるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る閃光放電管の概略断面図である。
【図2】図1の閃光放電管において、ガラス管の表面に透明導電性膜を形成する工程を説明するための概略工程図であり、図2Aは、ガラス管の両端部にカソード電極とアノード電極が封止処理して設けられた閃光放電管の概略外形図であり、図2Bは、図2Aの閃光放電管を透明導電性材料の溶液に浸漬して塗布する工程を示す説明図であり、図2Cは、図2Bの閃光放電管の透明導電性膜形成予定部分に高温空気を吹き付ける工程を示す説明図であり、図2Dは、図2Cの閃光放電管を酸性溶液によりエッチング処理する工程を示し、左側部分は処理前の状態、右側部分は処理後の状態を示す説明図であり、図2Eは、図2Dの閃光放電管の透明導電性膜にアニーリング処理を施す工程を示す説明図である。
【図3】本実施の形態に係る閃光放電管の発光特性を評価するために用いる基本回路図である。
【図4】本実施の形態に係る閃光放電管の光量と透光性封体被覆率との関係を示すグラフである。
【図5】本実施の形態に係る閃光放電管の最低発光電圧と透光性封体被覆率との関係を示すグラフである。
【図6】本実施の形態に係る閃光放電管の連続発光試験の合格率と透光性封体被覆率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…閃光放電管 12…ガラス管
14…カソード電極 16…アノード電極
22…透明導電性膜 22a、22b…被覆膜
24、26…浴 32…メインコンデンサ
54…トリガ電極 56…積分球

Claims (2)

  1. 透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成される閃光放電管において、
    前記透光性封体は、該透光性封体の一端部に該透光性封体の中心軸と同軸上に設けられるカソード電極の先端部と軸方向に垂直の同一断面上における該透光性封体の表面位置近傍から該軸方向中央に向けて透光性封体被覆率が5〜30%の範囲となるように、前記透明導電性膜が前記カソード電極先端から前記透光性封体の中央部に向けて、前記透光性封体の外面周方向に帯状に被覆されていることを特徴とする閃光放電管。
  2. 透光性封体の表面に透明導電性膜からなるトリガ電極が形成され、かつ、前記透光性封体の一端部に該透光性封体の中心軸と同軸上に設けられるカソード電極の先端部と軸方向に垂直の同一断面上における該透光性封体の表面位置近傍から該軸方向中央に向けて透光性封体被覆率が5〜30%の範囲となるように、前記透明導電性膜が前記カソード電極先端から前記透光性封体の中央部に向けて、前記透光性封体の外面周方向に帯状に被覆された閃光放電管の製造方法において、
    透明導電性材料として主成分金属がインジウムまたはスズである有機金属化合物の溶液を用いて該透光性封体の表面を浸漬法により被覆し、これを乾燥した後、さらに該透明導電性材料の被覆層のうち透明導電性膜を形成する部分のみに熱風を吹き付けて該透明導電性材料に含有されるインジウムまたはスズを酸化して局部的に焼成し、その後酸性溶液で該透明導電性材料の未焼成部分をエッチング除去して該透光性封体の表面に帯状の該透明導電性膜を形成することを特徴とする閃光放電管の製造方法。
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