JP4177597B2 - 電動スクリュードライバ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイレントクラッチを備えた電動スクリュードライバであって、異なるネジ締付形態に対応することができるサイレントクラッチを備えた電動スクリュードライバに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開昭61−219581号に開示されるように、従来の電動スクリュードライバとして、工具ビットと該工具ビットに回転駆動トルクを付与するためのモータとをサイレントクラッチで連結することによって、ネジ締付作業時の騒音や振動を低減する技術が知られている。このサイレントクラッチによれば、締付対象であるネジが被加工材に対して一定量の締込み深さに達した場合に、当該締込み深さに基づいてクラッチによる回転トルク伝達が迅速に解除され、クラッチ歯同士の回転接触を回避することにより、騒音を抑制する構成とされている。
【0003】
その一方において、締付作業対象であるネジの形態の一つとして、鉄板等の金属材料に止着されて材料を固定するためのネジがある。かかるネジの締付作業を行う場合、ネジの締込み深さではなく、ネジの締付トルク量に応じて締付作業を完了するものであり、締付トルクに応じてクラッチの断続を確実に行う必要がある。従来は、ネジ締作業形態に応じて、ネジの被加工材に対する締込み深さに応じてクラッチの断続を行う電動スクリュードライバと、ネジの締付トルク量に応じてクラッチの断続を行う電動スクリュードライバとをそれぞれ準備して使い分けていたため、ネジ締付作業に要するコスト・簡便性の点で更なる改善の余地がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、サイレントクラッチを備えた電動スクリュードライバにつき、異なるネジ締付形態に対応することができる技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、請求項1に記載の発明は、モータを収容した機体と、第1および第2のスピンドルと、第1および第2のクラッチ手段と、クラッチ係合規制手段と、機体に装着されるネジ締め深さ規定用のロケータとを有する電動スクリュードライバにおいて、第1スピンドルは、機体方向に相対移動可能とされるとともに、機体に向かう端部側に第1クラッチ手段が配置され、他端側にネジ締付用の工具ビットが接続され、第1クラッチ手段は、第1スピンドルの軸方向に相対移動可能とされつつ当該第1スピンドルとともに回転し、第2スピンドルは、モータに接続されて回転し、第2クラッチ手段は、第2スピンドルに装着されて当該第2スピンドルとともに回転し、かつ第1スピンドルが機体側に位置する場合に第1クラッチ手段と係合してモータの駆動トルクを工具ビットに伝達するトルク伝達許容位置から、トルク伝達禁止位置へと第2スピンドルの軸方向に相対移動可能であり、クラッチ係合規制手段は、第1クラッチ手段と第2クラッチ手段とが互いに離反する方向に付勢力を付与するように第1クラッチ手段と第2クラッチ手段との間に配置され、ネジ締め深さ規定用のロケータは、機体に着脱自在に装着され、装着時には当該機体の先端側の端面から長軸方向に所定長さで延出するとともに、機体を被加工材側に押し込んで工具ビットによるネジ締め作業をする際、当該ロケータの先端が被加工材に当接することにより機体が被加工材に対し所定長さを越えて近接するのを規制するものであり、第2クラッチ手段の機体側には、当該第2クラッチ手段を第1クラッチ手段側に付勢するスプリングおよび設定トルク調整スリーブが配置され、さらに、第2クラッチ手段と係合して当該第2クラッチ手段がトルク伝達許容位置へ移動するのを規制するストッパを備えており、設定トルク調整スリーブは、第2クラッチ手段がトルク伝達許容位置からトルク伝達禁止位置への移動を許容するとともにスプリングの付勢力を調整し、被加工材側からの工具ビットへの反動トルクが所定の範囲を超える場合には、第2クラッチ手段がトルク伝達許容位置からトルク伝達禁止位置へ移動してストッパと係合することで第1クラッチ手段と第2クラッチ手段相互の係合が解除される第1の動力伝達モードと、第2クラッチ手段側へと移動操作されて当該第2クラッチ手段に当接し、これにより当該第2クラッチ手段をトルク伝達禁止位置へ移動することを規制する第2クラッチ後退規制手段として機能する第2の動力伝達モードと、に切替操作可能である、ことを特徴とする。
【0006】
上記のように構成された本発明によれば、設定トルク調整スリーブは、第1の動力伝達モードでは設定トルクの調整部材として機能し、第2の動力伝達モードでは第2クラッチ後退規制手段として機能する。これにより双方の動力伝達モードにおける構成部材を一部 共用することができ、電動スクリュードライバの構造の簡素化を図ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態である電動スクリュードライバおよびその使用方法につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。本実施の形態に係る電動スクリュードライバ100の要部が図1に示される。なお図1では、電動スクリュードライバ100のうちモータハウジングおよびギアハウジングよりなる本体部110の要部断面を示し、本体部110に連接されるハンドグリップについては便宜上図示を省略する。
【0008】
電動スクリュードライバ100は、概括的に見て、本体部110、第1スピンドル120、第2スピンドル130、第1クラッチカム140、第2クラッチカム150、クラッチ係合規制スプリング160、第2クラッチカム位置規制手段170を主体として構成される。
【0009】
本体部110は、本発明における「機体」を構成する要素である。また第1クラッチカム140は本発明における「第1クラッチ手段」に、第2クラッチカム150は本発明における「第2クラッチ手段」に対応し、さらにクラッチ係合規制スプリング160は本発明における「クラッチ係合規制手段」に、第2クラッチカム位置規制手段170は本発明における「第2クラッチ手段の位置規制手段」に対応する。
【0010】
電動スクリュードライバ100の本体部110内にはモータ113が収容配置されている。モータ113の出力軸113aは、減速機構115を経由して第2スピンドル130に連接されている。なお減速機構115には減速ギアを主体とした周知の機構を採用しているため、その詳細な説明は便宜上省略する。
【0011】
一方、第1スピンドル120は、第2スピンドル130と同軸上において本体部110の先端側(図1において左端側)に回転可能に設けられる。第1スピンドル120は、本体部110のスリーブ110aに支持されつつ、第2スピンドル130との関係において、第1スピンドル120の長軸方向に相対移動可能に構成されている。第1スピンドル120の先端側には工具ビット取付用チャック121が設けられ、他端側(図1において右端側)には第1クラッチカム140が設けられる工具ビット取付用チャック121には工具ビット123が取り付けられている。
【0012】
またスリーブ110aには、工具ビット123の先端近傍までを覆うようにロケータ191が着脱自在に取り付けられる。ロケータ191は、本体部110が図2に示す被加工材125に対し所定量以上近接するのを規制し、本体部110が被加工材125へ近接するのを規制した状態で工具ビット123が被加工材125側へ近接するのを許容する部材である。本実施の形態では、後述するように、電動スクリュードライバ100を設定トルク感応モード(第1の動力伝達モード)とするにはロケータ191をスリーブ110aから取り外し、ネジ締め深さ感応モード(第2の動力伝達モード)とするにはロケータ191をスリーブ110aに取り付ける。
【0013】
第1クラッチカム140は、第1スピンドル120の第2スピンドル130に向かう側の端部に第1スチールボール143を介在して配置される。第1スチールボール143は、第1スピンドル120上に形成されたリード溝120a内において、第2スピンドル130へ向かう側の端部と、第2スピンドル130から離反する側の端部の間で移動可能に構成されている。なお特に図1では示されないものの、リード溝120aは、第1スピンドル120の長軸方向に対し傾斜状に形成されている。すなわちリード溝120aの両端部は、第1スピンドル120の長軸方向に所定の距離を有して設定されるとともに、その径方向についても所定の距離を有して設定される。そしてこれら両端部間で移動可能とされた第1スチールボール143を介し、第1クラッチカム140は第1スピンドル120に対し当該第1スピンドル120の軸方向に相対移動することが許容される。また第1クラッチカム140は、第1スチールボール143がリード溝120aの両端間で移動する範囲においては第1スピンドル120に対し相対的に回転することを許容されるが、第1スチールボール143がリード溝120aの第2クラッチカム150に近接する側の端部に置かれると、第1スチールボール143が当該リード溝120a端部に当接規制されることにより、第1クラッチカム140は第1スピンドル120と一体に回転するよう規制される。また第1クラッチカム140の第2スピンドル130に向かう側の端部(図1において右端側)にはクラッチ歯141が設けられている。
【0014】
第1クラッチカム140は、ネジ締付作業時に、工具ビット123の先端にネジ124を取り付けた状態で被加工材125(図2参照)に押し当てながら作業者が電動スクリュードライバ100に押し込み荷重を付加することにより、第1スピンドル120とともに、当該押し込み荷重に対する被加工材側からの反力によって第2スピンドル130方向(図中右方向)に移動することになる。これらの動作の詳細については後述する。
【0015】
第2クラッチカム150は、第2スピンドル130の第1スピンドル120に向かう側の端部(図1において左側端部)に第2スチールボール153を介在して配置される。第2クラッチカム150の第1スピンドル120に向かう側の端部にはクラッチ歯151が設けられている。第2スチールボール153は、第2スピンドル130上に設けられたカム溝130a内において、第1スピンドル120方向に向かう端部と、第1スピンドル120から離反する方向に向かう端部との間を移動することにより、第2クラッチカム150の位置規定部材としての役割を果たす。第2クラッチカム150は、この第2スチールボール153により、第2スピンドル130に対し当該第2スピンドル130の軸方向に円滑に相対移動することが許容されるとともに、第2スピンドル130と一体に回転するように構成されている。なお第2スチールボール153について上記両端部間を軸方向に移動可能とする構成は機能上必ずしも必要ではないものの、第2クラッチカム153の第2スピンドル130に対する円滑な摺動動作を確保する観点から、本実施の形態では、上記のように両端部間を移動可能に構成している。
【0016】
第1クラッチカム140と第2クラッチカム150との間には、クラッチ係合規制スプリング160が配置される。クラッチ係合規制スプリング160は、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150とが互いに離反する方向に付勢力を生じる。換言すればクラッチ係合規制スプリング160は、その付勢力により、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151が確実に係合解除するとともに、係合解除後に不用意に接触しないように確実に離間させる役割を果たす。
【0017】
次に第2クラッチカム位置規制手段170の詳細な構造について説明する。
第2クラッチカム位置規制手段170は、付勢スプリング171、ストッパー181、ストッパー作動用ピン183、ストッパー係合溝185、リングスプリング187、ストッパー作動用スプリング189を主体として構成される。
【0018】
このうち付勢スプリング171は、第2クラッチカム150と付勢スプリング支持ワッシャ179との間に装着されて、第2クラッチカム150が第1クラッチカム140へ向かうように付勢力を付与する。付勢スプリング171は、本発明における第1の動力伝達モード時の「第1の位置規制手段」および第2の動力伝達モード時の「第2クラッチ後退規制手段」に対応するとともに、両手段を兼用する。
【0019】
ストッパー181はスチールボールによって構成される。ストッパー作動用ピン183は、リングスプリング187を介在して第1スピンドル120に設けられるとともに、ストッパー作動用スプリング189によって第2スピンドル130に向かう方向に付勢される。ストッパー作動用ピン183の途上にはストッパー係合溝185が形成され、このストッパー係合溝185にストッパー181が嵌着して配置される。
【0020】
ストッパー係合溝185のストッパー181への当接面は曲面ないしテーパ面とされており、ストッパー作動用スプリング189の付勢力によってストッパー作動用ピン183が軸方向に移動することにより、ストッパー181は第2スピンドル130の周面から出没可能に突出するように構成されている。しかしながら、図1に示す状態では、ストッパー181の上方に第2クラッチカム150の脚部が位置し、ストッパー181はこの第2クラッチカム150の脚部に邪魔をされることにより、第2スピンドル130の周面から突出することが規制されている。ストッパー181、ストッパー作動用ピン183、ストッパー係合溝185、リングスプリング187およびストッパー作動用スプリング189は、本発明における第1の動力伝達モード時の「第2の位置規制手段」に対応する。
【0021】
付勢スプリング171の第2クラッチカム150に対する付勢力は、設定トルク調整リング173、設定トルク調整用ピン175、設定トルク調整用スリーブ177および付勢スプリング支持ワッシャ179の協働によって適宜変更調整することができる。具体的には、本体部110の長軸回りに設定トルク調整リング173を回転させることにより、当該設定トルク調整リング173に本体部110の長軸方向(図1においては左右方向)に微小距離だけ相対移動させる。設定トルク調整リング173は、設定トルク調整用ピン175を介して設定トルク調整用スリーブ177に連結されており、設定トルク調整用スリーブ177は、設定トルク調整リング173とともに本体部110の長軸方向に相対移動する。
【0022】
設定トルク調整用スリーブ177の端部には付勢スプリング支持ワッシャ179が取り付けられており、結果的に第2スピンドル130上における付勢スプリング支持ワッシャ179の配置位置が、第2スピンドル130の長軸方向に変化する。これにより付勢スプリング支持ワッシャ179と第2クラッチカム150間の付勢スプリング171の長さを適宜変更し、該付勢スプリング171の付勢力を変更する。本実施の形態では、付勢スプリング171の付勢力を調節することにより、後述する設定トルク感応モードにおける設定トルク値の調整が可能となる。さらに本実施の形態では、設定トルク調整用スリーブ177の移動動作を利用して、後述する設定トルク感応モードとネジ締め深さ感応モードとの切り替えが可能となる。
【0023】
次に、本実施の形態に係る電動スクリュードライバ100の作用および使用方法について説明する。電動スクリュードライバ100は、ネジの反動トルク(すなわちネジの締付トルク)が所定のトルクに達することに応じてモータ113から工具ビット123へのトルク伝達を解除する設定トルク感応モードと、被加工材に対するネジの締め込み量に応じてモータ113から工具ビット123へのトルク伝達を解除するネジ締め深さ感応モードとで切り替え可能とされる。設定トルク感応モードは本発明の「第1の動力伝達モード」に対応し、ネジ締め深さ感応モードは本発明の「第2の動力伝達モード」に対応する。
【0024】
(設定トルク感応モード)
まず設定トルク感応モード(第1の動力伝達モード)について説明する。電動スクリュードライバ100のうち、第1スピンドル120、第2スピンドル130、第1クラッチカム140、第2クラッチカム150、クラッチ係合規制スプリング160、第2クラッチカム位置規制手段170を主体とした要部の構成が図2から図7に示される。このうち図2は、本実施の形態に係る電動スクリュードライバ100につき、被加工材125に対しネジ124の締付作業を開始しようとする初期状態を示す。なお図示の便宜上、各図においては電動スクリュードライバ100の要部のみを示すとともに、各図における設定トルク調整用のスリーブ177等の位置関係については、便宜上初期位置に置かれた状態を示している。設定トルク感応モードでは、図1に示すロケータ191はスリーブ110aから取り外されている。
【0025】
図2に示す状態では、第2スピンドル130は、モータ113(図1参照)の回転トルクを第1スピンドル120および第1クラッチカム140に伝達することなく遊転する。また第2スピンドル130の遊転に伴って第2クラッチカム150も遊転する。なお第2スピンドル130は、モータ113側から第1スピンドル120方向に見た場合、右回りに回転している。図2に示す状態では、クラッチ係合規制スプリング160の付勢力により、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151とは相互に離間した状態が維持される。
【0026】
すなわち図2に示す状態では、第2クラッチカム150は付勢スプリング171の付勢力によって第1クラッチカム140方向へ付勢される一方、未だ作業者は電動スクリュードライバ100にネジ締付のための押し込み荷重を加えておらず、この結果、第1スピンドル120および第1クラッチカム140が第2クラッチカム150方向へ移動せず、両クラッチ歯141,151は離間した状態、すなわちクラッチ非係合状態が維持される。またこの時、第2クラッチカム150は付勢スプリング171によって第1クラッチカム140側に付勢され、第2スチールボール153がカム溝130aの第1クラッチカム140に近接する側の端部に置かれ、第2クラッチカム150の位置規制をなす。すなわち、図2に示す状態では、第2スチールボール153が、カム溝130a内において第1スピンドル120(ないし第1クラッチカム140)に向かう側の溝端部に位置し、第2クラッチカム150は第1クラッチカム140側へ臨むよう、第2スピンドル130上における第2クラッチカム150の相対的位置が規定されている。このように第2クラッチカム150が第1クラッチカム140に近接して保持された位置は、本発明の「トルク伝達許容位置」に対応する。
【0027】
さらに図2に示す状態では、ストッパー181の上部に第2クラッチカム150の脚部が位置するため、ストッパー181は当該第2クラッチカム150の脚部によって抑えられて第2スピンドル130の周面から突出するのを規制されている。
【0028】
図2に示す初期状態からネジ締付作業を開始する場合、ネジ124を被加工材125へ進入させるべく、作業者は電動スクリュードライバ100を被加工材125方向(図中左方向)へ押し込んでいく。作業者が電動スクリュードライバ100に押し込み荷重を加えることにより、第1スピンドル120および第1クラッチカム140は、工具ビット123と一体となって、被加工材125側からの押し込み荷重に対する反力により第2スピンドル130方向(図中右方向)へ押圧され本体部100側へと相対的に移動していく。この状態が図3に示される。
【0029】
図3では、押し込み荷重の反力により工具ビット123、第1スピンドル120および第1クラッチカム140が一体となって図中右方向に移動し、第1クラッチカム140の端部に設けられたクラッチ歯141が、クラッチ係合規制スプリング160の付勢力に抗しつつ第2クラッチカム150側のクラッチ歯151へ接近する。このとき第2クラッチカム150には付勢スプリング171の付勢力が付加されており、第2クラッチカム150は、第2スチールボール153がカム溝130aのうち第1スピンドル120に向かう側の端部に位置し、第1クラッチカム140に近接した位置、すなわちトルク伝達許容位置に置かれている。かくして第1クラッチカム140の図中右方向への移動により、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150との相対距離は縮まっていくことになる。
【0030】
また図3に示す状態では、ストッパー181は第2クラッチカム150の脚部によって外方に突出するのを規制されているため、第1スピンドル120が図中右方向に移動した場合、ストッパー作動用ピン183に形成されたストッパー係合溝185がストッパー181に当接し、ストッパー作動用ピン183の第2スピンドル130方向(図中右方向)への移動を規制する。従って、押し込み荷重の反力によって図中右方向に移動していく第1スピンドル120と、移動が規制されたストッパー作動用ピン183との間に介装されたストッパー作動用スプリング189は圧縮されていくことになる。
【0031】
さて、図3に示す状態から、更に第1スピンドル120および第1クラッチカム140が、第2クラッチカム150方向(図中右方向)へ移動することにより、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151が噛み合い係合することになる。この状態が図4に示される。
【0032】
なお、第1スチールボール143は、リード溝120a内にて第2スピンドル130へ向かう側の端部と、第2スピンドル130から離反する側の端部との間を移動可能とされているが、図3および図4の対比から理解されるように、両クラッチ歯141,151の噛み合い係合に際し、第2スピンドル130とともに回転する第2クラッチカム150のクラッチ歯151が、第1クラッチカム140のクラッチ歯141に噛み合うことで、第1クラッチカム140に回転トルクが伝えられる。すると第1クラッチカム140は、第1スチールボール143がリード溝120aの両端部間を移動する範囲において、第1スピンドル120に対し相対的に回転しつつ第2クラッチカム150側へと軸方向に移動していく。そして第1スチールボール143がリード溝120aの第2クラッチ150に近接する側の端部に到達することにより、第1クラッチカム140は第1スピンドル120と一体としてのみ回転が許容されることになる。
【0033】
図4では、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151とが噛み合いを始めた状態が示され、図5では、第1クラッチカム140が、リード溝120aの軸方向長さ分だけ第1スピンドル120上の第2クラッチカム150側に移動することにより、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151とが完全に噛み合い係合し、ネジ124を被加工材125へ締め込んでいく状態が示されている。図4および図5に示す状態における第2クラッチカム150の位置は、本発明の「トルク伝達許容位置」に相当する。
【0034】
本実施の形態では、両クラッチ歯141,151が噛み合い係合することにより、モータ113の回転トルクは確実にトルク伝達される。具体的には、両クラッチ歯141,151の噛み合い係合により、モータ113(図1参照)の回転トルクが、第2スピンドル130、第2スチールボール153、第2クラッチカム150、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141、第1クラッチカム140、第1スチールボール143、第1スピンドル120、工具ビット取付用チャック121、工具ビット123を経由して、ネジ124に伝達される。
【0035】
なお図5に示す状態では、作業者による電動工具100への押圧反力によって図中右方向に移動しようとする第1スピンドル120と、ストッパー係合溝185がストッパー181に抑えられることで移動を規制されたストッパー作動用ピン183との間に介装されたストッパー作動用スプリング189は、図4に示す状態よりも更に圧縮された状態とされる。
【0036】
図5に示す状態でネジ124の被加工材125に対する締付作業が進行し、図6に示すように、ネジ124の頭部着座面124aが被加工材125に着座してネジ124の締付作業が最終段階に至った場合、第1スピンドル120が作業者の押し込み荷重反力により第2スピンドル方向に押し込まれた状態において、ネジ締付トルクが過大となる。この状態において、モータ113(図1参照)の回転トルクを更に伝達しようとする第2クラッチカム150側のクラッチ歯151が、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141に乗り上げる状態となる。その結果、図6に示すように、第2クラッチカム150は、上記トルク伝達許容位置から、付勢スプリング171の付勢力に抗しつつ第1クラッチカム140から離反する方向(図中右方向)に移動し始める。
【0037】
なお図6に示す状態では、第2スチールボール153は、カム溝130a内において、第1スピンドル120(第1クラッチカム140)に向かう側の端部から離反移動することにより、第2クラッチカム150が円滑に移動するのをアシストする。
【0038】
第2クラッチカム150がトルク伝達許容位置から図中右方向に移動し始めると、ストッパー181の上方に位置していた第2クラッチカム150の脚部が図中右方向に退くことになる。一方、ストッパー作動用ピン183は、圧縮されたストッパー作動用スプリング189の付勢力によって図中右方向に押圧された状態とされている。そのためストッパー181は、図7に示すように、ストッパー作動用ピン183が右方向へ移動しようとする場合に、曲面状(テーパ状)の当接面を有するストッパー係合溝185に押し出される形で、第2スピンドル130の周面から外方に突出することになる。
【0039】
図7では、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151の噛み合い係合が解除された状態が示される。図7では、作業者による押し込み荷重の反力が第1スピンドル120に付加され、第1スピンドル120は第2スピンドル130側へ最も近接した状態とされている。この状態において、第1スチールボール143がリード溝120a内を第2クラッチカム150から離反する側の端部へ移動し、第1クラッチカム140は、第1スピンドル120上を当該リード溝120aの軸方向長さ分だけ第2クラッチカム150から離反する方向に移動する。第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151との噛み合い係合が解除される。
【0040】
なお第1スチールボール143は、第1スピンドル120上のリード溝120a内を、第2スピンドル130に向かう側の端部と、離間した側の端部との間で移動可能とされるが、このリード溝120aの両端部間の軸方向距離は、クラッチ歯141,151の噛み合い解除の際の第1クラッチカム140の軸方向移動量を規定するとともに、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150との間の係合解除時のクリアランス量を規定することになる。
【0041】
第1スチールボール143がリード溝120a内を移動し、第2クラッチカム150から離反する側へ移動した第1クラッチカム140は、第1スチールボール143がリード溝120aの第2クラッチカム150から離反する側の端部に当接することで、それ以上の移動を規制される。一方、第2クラッチカム150は、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150に作用するクラッチ係合規制スプリング160の付勢力により、第1クラッチカム140から離反する方向へ迅速に移動し、クラッチ歯141,151の噛み合い係合の解除状態を維持する。かくしてサイレントクラッチとしての機能が奏される。
【0042】
第2クラッチカム150が図中右方向へ移動するとき、上述のように、ストッパー181に対する第2クラッチカム150脚部による抑えがなくなり、ストッパー181は第2スピンドル130外方へ突出する。従ってストッパー作動用ピン183は、ストッパー作動用スプリング189の付勢力により第1スピンドルと対向する方向(図中右方向)へと移動し、ストッパー181が第2クラッチカム150の内側凹部に入り込んだ状態となる。
【0043】
この状態では、第2クラッチカム150は、付勢スプリング171の付勢力が付加されるにも拘わらず、第2スピンドル130の周面から突出したストッパー181により第1クラッチカム140方向へ移動するのを規制される。換言すれば、ネジ123の締付トルクが過大となってクラッチ歯141,151の係合が解除され、第2クラッチカム150がクラッチ係合規制スプリング160の付勢力によって第1クラッチカム140から離反する方向へ移動した場合、第2クラッチカム150は、ストッパー181によって第1クラッチカム140から離反したトルク伝達禁止位置に係止維持されることになる。そして不用意な押し込み荷重付加によって、第1クラッチカム140が第1スピンドル120とともに第2クラッチカム150方向へ近接したとしても、第2クラッチカム150はストッパー181によってトルク伝達禁止位置に係止されるとともに、トルク伝達許容位置へ復帰することが規制されているため、不用意なクラッチ歯141,151同士の噛み合い係合が回避される。なおストッパー181は、第2クラッチカム150の第1クラッチカム140から離反する方向(図中右方向)への移動は許容する構成とされている。
【0044】
なお本実施の形態では、「締付トルクが所定の範囲を超えて過大となった場合」の具体的構成として、ネジ124が被加工材125に締め込まれることによって締付トルクが所定の設定トルクに到達することで、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と第2クラッチカム150側のクラッチ歯151の噛み合い係合が直ちに解除されるよう設定されている。
【0045】
ネジ124の締付作業が終了すると、作業者は電動スクリュードライバ100に対する押し込み荷重を緩める。すると第1スピンドル120は、第1クラッチカム140とともに、第2スピンドル130から離反し、図2に示す初期状態へ復帰する。なお本実施の形態では、押し込み荷重がクラッチ係合規制スプリング160の付勢力以下に減少した場合に第1スピンドル120の復帰が許容されることになる。さらにリングスプリング187(図1参照)を介して第1スピンドル120に取り付けられたストッパー作動用ピン183についても、第1スピンドル120とともに初期状態に復帰することになる。ストッパー作動用ピン183が第1スピンドル120とともに先端方向(被加工材125方向)へ移動して初期状態に復帰すると、ストッパー係合溝185がストッパー181の下部に位置することとなる。これによりストッパー181は、第2クラッチカム150の脚部に押されつつ、第2スピンドル130の周面からストッパー係合溝185へ収容され、同様に図2に示す初期状態に復帰する。
【0046】
ストッパー181が初期状態に復帰することにより、第2クラッチカム150は、当該ストッパー181に係止されることなく第2スピンドル130の周面を移動可能とされる。一方、付勢スプリング171の付勢力は、クラッチ係合規制スプリング160の付勢力よりも大きく設定されており、第2クラッチカム150は、当該付勢スプリング171により第1クラッチカム140方向へ移動していくことになる。このとき第2スチールボール153は、カム溝130a内において、第1スピンドル120(第1クラッチカム140)に向かう側の端部へ移動することにより第2クラッチカム150の移動動作を許容し、さらに当該端部に当接することにより、第2クラッチカム150の第2スピンドル130上での位置を規定する。かくして電動スクリュードライバ100は、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150とが離間した初期状態(図2参照)に復帰することになる。
【0047】
以上より、設定トルク感応モードに置かれた電動スクリュードライバ100では、ネジ124が被加工材125に締付けられて締付トルクが過大となり、被加工材125側から工具ビット123が受ける反動トルクが大きくなって所定の設定トルクに達した場合に、クラッチ係合規制スプリング160の付勢力を介して、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151との係合が解除されるとともに迅速に離間される。このとき、第2クラッチカム150は、ストッパー181によりトルク伝達禁止位置に係止維持され、第1クラッチカム140側のトルク伝達許容位置へ移動するのを阻止される。
【0048】
従って本実施の形態である電動スクリュードライバ100は、とりわけネジ締付トルクを管理しつつ作業を遂行するというトルク管理型のネジ締付作業において、クラッチ歯141,151の噛み合い係合を迅速かつ確実に解除するするとともに、第2クラッチカム150をトルク伝達禁止位置に係止して、クラッチが不用意に係合して振動や騒音を生じるのを確実に抑制することが可能である。
【0049】
なお、本実施の形態におけるストッパー係合溝185の溝形状は、ストッパー181を第2スピンドル130の周面から出没させることができる範囲内にて、テーパ面、曲面など様々な形状から採用可能である。またクラッチ係合規制スプリング160は、第1クラッチカム140と第2クラッチカム150との間に介装する以外に、それぞれのクラッチカム140,150ごとに別個に設定し、独立して付勢力を付与してもよい。
【0050】
(ネジ締め深さ感応モード)
次に本実施の形態に係る電動スクリュードライバ100のネジ締め深さ感応モード(第2の動力伝達モード)について図8から図14を参照しつつ説明する。なお上述した設定トルク感応モードと実質的に同等の作用を奏する箇所については、便宜上その詳細な説明を省略する。設定トルク感応モードに置かれた電動スクリュードライバ100をネジ締め深さ感応モードに切り替えるには、まず図8に示すようにスリーブ110aにロケータ191を取り付ける。スリーブ110aに取り付けられたロケータ191は、当該スリーブ110a先端、すなわち本体部110の先端からロケータ191先端部192に至るまで符号Lで示される有効長を有する。
【0051】
次に図9に示すように、設定トルク調整用リング173を操作することにより、設定トルク調整用ピン175を介して、トルク伝達許容位置に置かれた第2クラッチカム150に対し、設定トルク調整用スリーブ177を移動して当接させる。これにより第2クラッチカム150は、上記したトルク伝達許容位置からトルク伝達禁止位置へ移動(後退)するのが規制されることになる。換言すればトルク伝達許容位置に置かれた第2クラッチカム150は、設定トルク調整用スリーブ177により、第1スピンドル120および第1クラッチカム140から離反する方向へと第2スピンドル130上を移動するのを規制されることになる。すなわち設定トルク調整用スリーブ177は、上記した設定トルク感応モードでは付勢スプリング171の付勢力を変化させてクラッチ解除のための設定トルク値を調整するのに用いられたが、ネジ締め深さ感応モードでは第2クラッチカム150の後退を規制するのに用いられ、本発明における「第2クラッチ後退規制手段」に対応するものである。すなわち設定トルク調整用スリーブ177は設定トルク感応モードにおいては第2クラッチカム150に対する「第2の位置規制手段」に対応する一方、ネジ締め深さ感応モードにおいては第2クラッチカム150に対する「第2クラッチ後退規制手段」に対応するものであり、双方の機能を兼用する要素である。なおネジ締め深さ感応モードにおいては付勢スプリング171の付勢力はクラッチ係合ないし係合解除に影響を与えないことになる。
【0052】
上記のようにロケータ191をスリーブ110aに取り付け、設定トルク調整用スリーブ177を第2クラッチカム150に当接することでネジ締め深さ感応モードへの切り替えが完了する。図9に示すネジ締め深さ感応モードの初期状態からネジ締付作業を開始する場合、図10に示すように、ネジ124を被加工材125へ進入させるべく、作業者は電動スクリュードライバ100を被加工材125方向(図中左方向)へ押し込んでいく。作業者が電動スクリュードライバ100に押し込み荷重を加えることにより、第1スピンドル120および第1クラッチカム140は、工具ビット123とともに、被加工材125側からの押し込み荷重に対する反力により第2スピンドル130方向(図中右方向)へ押圧され本体部100側へと相対的に移動していく。図10では、第1クラッチカム140側のクラッチ歯140と、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151とが噛み合い係合する寸前の状態が示される。
【0053】
図10に示す状態において更に電動スクリュードライバ100を被加工材125側に押し込むことで、第1クラッチカム140側のクラッチ歯141と、第2クラッチカム150側のクラッチ歯151とが噛み合い係合する。この噛み合い係合により、図11に示すように、第1スチールボール143がリード溝120aの第2クラッチカム150側の端部に移動しつつ、第1クラッチカム140はリード溝120aの軸方向長さ分だけ第2クラッチカム150側に移動し、これによってクラッチ歯141,151が完全に噛み合い係合する。かくして図1に示すモータ113の駆動トルクは第2スピンドル130、第2クラッチカム150、第2クラッチ歯151、第1クラッチ歯141、第1クラッチカム140、第1スピンドル120および工具ビット123を介してネジ124に伝達され、当該ネジ124が被加工材125に締め込まれていく。なお、この時点ではロケータ191の先端部192は被加工材125に当接していない。また電動スクリュードライバ100への上記押し込み荷重により、工具ビット123がロケータ先端部192より幾らか本体部110側に後退して入り込むことにより、ロケータ先端部192とネジ124頭部における被加工材125への着座面124aとの間にはセットバックCが形成される。
【0054】
ネジ124が被加工材125に締め込まれていくと、図12に示すように、ロケータ191の先端部192が被加工材125に当接し、本体部110の更なる被加工材125側への近接を規制する。すなわちロケータ191は、本体部110が被加工材110に対し所定の離間距離(図12では符号Lで示される)を越えて近接するのを規制する。図12に示す状態では、ロケータ191によって本体部110が被加工材125へ近接規制された状態で、更にネジ124の締め込みが行われるため、工具ビット123、第1スピンドル120および第1クラッチカム140が、第2クラッチカム150および第2スピンドル130を含む本体部110の各要素に対し、図11に示すセットバックCの分だけ相対的に被加工材125側に移動し、これによってネジ124の頭部着座面124aが被加工材125に着座する。この時、第1クラッチカム140が、第2クラッチカム150に対し被加工材125側に上記セットバックCの分だけ相対移動するため、クラッチ歯141,151は当該セットバックCの分だけ離間しつつ噛み合い係合を維持する。
【0055】
クラッチ歯141,151の噛み合い係合が維持されるため、図12に示すようにロケータ先端部192が被加工材125に当接した状態で、さらに工具ビット123はネジ124を被加工材125に締め込んでいく。すなわち本実施の形態では、ネジ124のいわゆる増し締めが可能とされる。これによって、上記工具ビット123、第1スピンドル120および第1クラッチカム140は、さらに第2クラッチカム150および第2スピンドル130を含む本体部110の各要素から被加工材125側に移動する。かくして図13に示すように、被加工材125に対するネジ124の締め深さが所定量に達した段階で、第1クラッチカム140が第2クラッチカム150から所定量離間し、クラッチ歯141,151の噛み合い係合が解除される寸前の状態に至る。
【0056】
するとクラッチ係合規制スプリング160の付勢力を受けて、図14に示すように、第1スチールボール143がリード溝120aの第2クラッチ150から離反する側の端部に移動しつつ、第1クラッチカム140がリード溝120aの軸方向距離だけ第2クラッチカム150から離間し、クラッチ歯141,151の噛み合い係合が解除される。クラッチ係合規制スプリング160の付勢力により、クラッチ歯141、151の解除は迅速かつ確実に行われ、噛み合い解除時のクラッチ歯141,151同士の接触による異音や振動の発生が効果的に防止され、サイレントクラッチとしての実効性が確保される。クラッチ解除によって第2クラッチカム150側から第1クラッチカム140側へのトルク伝達が遮断され、ネジ締め深さ感応モードにおける被加工材125へのネジ124の締付作業が終了する。その後、電動スクリュードライバ100に対する作業者の押し込み荷重がクラッチ係合規制スプリング160の付勢力以下まで緩和ないし解除されると、工具ビット123、第1スピンドル120および第1クラッチカム140が図9に示す初期状態に復帰し、次のネジ締付作業に備えることとなる。
【0057】
本実施の形態によれば、ネジ締め深さ感応モードにおいて、設定トルク調整用スリーブ177を第2クラッチカム150に当接させ、第2クラッチカム150の後退を規制し、常にトルク伝達許容位置に置かれる構成としたため、上記した設定トルク感応モードにおける部材要素を兼用しつつ、ロケータ191を取り付けるだけで簡単にネジ締め深さ感応モードに切り替えることが可能な電動スクリュードライバ100が得られることとなった。
【0058】
しかも本実施の形態における設定トルク調整リング173は、設定トルク感応モードにおいては適宜回転操作することで付勢スプリング171の付勢力を変化させてクラッチ解除のための設定トルクを可変とする構成とし、ネジ締め深さ感応モードでは、さらに設定トルク調整スリーブ177を第2クラッチカム150に当接させて第2クラッチカム150がトルク伝達許容位置から後退するのを規制することにより、ネジ締め深さに応じてクラッチ解除を可能とする構成としている。このため設定トルク調整用リング173の操作によって簡単に設定トルク感応モードとネジ締め深さ感応モードとを切り替えることができる実用的な電動スクリュードライバ100が提供されることとなった。
【0059】
なお上記の実施の形態に関し、下記の態様が構成可能である。
すなわち、
【態様】
「請求項1に記載の電動スクリュードライバであって、
前記第1クラッチ手段および第2クラッチ手段は、それぞれ対向する箇所に互いに噛み合い係合するクラッチ歯を有することを特徴とする電動スクリュードライバ。」
【0060】
この態様では、請求項1に記載の発明につき、第1クラッチ手段および第2クラッチ手段が、それぞれ対向する箇所に互いに噛み合い係合するクラッチ歯を有する構成とするのが好ましい。このように構成することで、クラッチ歯同士の噛み合い係合を介した確実なトルク伝達が可能となる。またトルク伝達を解除するに際しても、第1クラッチ手段および第2クラッチ手段の各クラッチ歯の一方が、相対的に他方に対し滑って乗り上げていくので、確実なトルク伝達の解除が可能であり、サイレントクラッチとしての実用性を確保することが可能な構成とされる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、サイレントクラッチを備えた電動スクリュードライバにつき、異なるネジ締付形態に対応することができる技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施の形態である電動スクリュードライバの要部の構成を示す断面図である。
【図2】 本実施の形態である電動スクリュードライバを設定トルク感応モードで用いる場合において、未だネジ締付作業を開始していない初期状態を示す。
【図3】 作業者がネジ締付のための押し込み荷重を付加したことにより、第1スピンドルが第2スピンドル方向に移動し始めた状態を示す。
【図4】 さらに第1スピンドルが移動し、第1クラッチカム側のクラッチ歯と、第2クラッチカム側のクラッチ歯とが噛み合い係合し始めた状態を示す。
【図5】 両クラッチ歯が噛み合い係合し、モータのトルクが工具ビット側に伝達されてネジ締付作業を遂行している状態を示す。
【図6】 ネジ締付作業が最終段階に至り、締付トルクが過大となったことにより、第2クラッチカムが後方に移動し始めた状態を示す。
【図7】 第1クラッチカムと第2クラッチカムとが係合解除され、クラッチ係合規制スプリングにより第2クラッチカムが第1クラッチカムから離反する方向に移動し、ストッパーが突出した状態を示す。
【図8】 ネジ締め深さ感応モードに切り替えるべく、電動スクリュードライバにロケータを設置した状態を示す。
【図9】 第2クラッチカムの後退を規制し、ネジ締め深さ感応モードとされた電動スクリュードライバの初期状態を示す。
【図10】 作業者がネジ締付のための押し込み荷重を付加したことにより、第1スピンドルが第2スピンドル方向に移動し始めた状態を示す。
【図11】 両クラッチ歯が噛み合い係合し、モータのトルクが工具ビット側に伝達されてネジ締付作業を遂行している状態を示す。
【図12】 ロケータの先端部が被加工材に当接した状態を示す。
【図13】 ロケータ着座後、さらにネジが被加工材に締めこまれていく状態を示す。
【図14】 ネジ締付作業が完了し、第1クラッチカムと第2クラッチカムの係合が解除された状態を示す。
【符号の説明】
100 電動スクリュードライバ
110 モータハウジング(機体)
110a スリーブ
113 モータ
115 減速機構
120 第1スピンドル
120a リード溝
121 工具ビット取付用チャック
123 工具ビット
124 ネジ
124a ネジ頭部着座面
125 被加工材
130 第2スピンドル
130a カム溝
140 第1クラッチカム(クラッチ手段)
141 クラッチ歯
143 第1スチールボール
150 第2クラッチカム
151 クラッチ歯
153 第2スチールボール
160 クラッチ係合規制スプリング(クラッチ係合規制手段)
170 第2クラッチカム位置規制手段
171 付勢スプリング
173 設定トルク調整リング
175 設定トルク調整用ピン
177 設定トルク調整用スリーブ
179 付勢スプリング支持ワッシャ
181 ストッパー
183 ストッパー作動用ピン
185 ストッパー係合溝
187 リングスプリング
189 ストッパー作動用スプリング
191 ロケータ
192 ロケータ先端部

Claims (1)

  1. モータを収容した機体と、第1および第2のスピンドルと、第1および第2のクラッチ手段と、クラッチ係合規制手段と、前記機体に装着されるネジ締め深さ規定用のロケータとを有する電動スクリュードライバであって、
    前記第1スピンドルは、前記機体方向に相対移動可能とされるとともに、前記機体に向かう端部側に前記第1クラッチ手段が配置され、他端側にネジ締付用の工具ビットが接続され、
    前記第1クラッチ手段は、前記第1スピンドルの軸方向に相対移動可能とされつつ当該第1スピンドルとともに回転し、
    前記第2スピンドルは、前記モータに接続されて回転し、
    前記第2クラッチ手段は、前記第2スピンドルに装着されて当該第2スピンドルとともに回転し、かつ前記第1スピンドルが機体側に位置する場合に前記第1クラッチ手段と係合して前記モータの駆動トルクを前記工具ビットに伝達するトルク伝達許容位置から、トルク伝達禁止位置へと前記第2スピンドルの軸方向に相対移動可能であり
    前記クラッチ係合規制手段は、前記第1クラッチ手段と前記第2クラッチ手段とが互いに離反する方向に付勢力を付与するように前記第1クラッチ手段と前記第2クラッチ手段との間に配置され、
    前記ネジ締め深さ規定用のロケータは、前記機体に着脱自在に装着され、装着時には当該機体の先端側の端面から長軸方向に所定長さで延出するとともに、前記機体を被加工材側に押し込んで前記工具ビットによるネジ締め作業をする際、当該ロケータの先端が被加工材に当接することにより前記機体が被加工材に対し前記所定長さを越えて近接するのを規制するものであり、
    前記第2クラッチ手段の機体側には、当該第2クラッチ手段を前記第1クラッチ手段側に付勢するスプリングおよび設定トルク調整スリーブが配置され、
    さらに、前記第2クラッチ手段と係合して当該第2クラッチ手段が前記トルク伝達許容位置へ移動するのを規制するストッパを備えており、
    前記設定トルク調整スリーブは、前記第2クラッチ手段が前記トルク伝達許容位置から前記トルク伝達禁止位置への移動を許容するとともに前記スプリングの付勢力を調整し、被加工材側からの前記工具ビットへの反動トルクが所定の範囲を超える場合には、前記第2クラッチ手段がトルク伝達許容位置からトルク伝達禁止位置へ移動して前記ストッパと係合することで第1クラッチ手段と第2クラッチ手段相互の係合が解除される第1の動力伝達モードと、前記第2クラッチ手段側へと移動操作されて当該第2クラッチ手段に当接し、これにより当該第2クラッチ手段を前記トルク伝達禁止位置へ移動することを規制する第2クラッチ後退規制手段として機能する第2の動力伝達モードと、に切替操作可能である、ことを特徴とする電動スクリュードライバ。
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