JP4177286B2 - 新規なアントラセン誘導体 - Google Patents
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Description
有機分子の分子間での導電経路として考えられているのは、π結合が高度に共役した分子のπ−π相互作用およびヘテロ原子を含む化合物におけるヘテロ原子−ヘテロ原子相互作用であり、この観点から、固体状態で強いπ−πスタッキング相互作用によって生じるカラム構造を持つ化合物の有機光電子デバイスとしての特性に興味が持たれている。
高度にπ共役系が広がっているこの種の化合物は、分子骨格が強固であるために有効共役長が長く、キャリア移動度が高い事が知られており、有用な有機光電子デバイスとなりうる事が期待されている。しかし一般に、高度に芳香環が縮環した化合物は、グラファイトの部分構造と見なせ、その高い疎水性により溶解度が低い事が多い。
有機光電子デバイス層を形成する方法として、ウェットプロセスは安価な方法であるため、工業的に有利である。しかしながら、上記のような不溶性の化合物に対しては適用出来ない。このような背景から、単分子系で良好な溶解度を持つ有機半導体の開発が望まれているが、現在のところ実現した例は殆ど無い。
導電性有機化合物の導電経路として、隣接する分子間のヘテロ原子−ヘテロ原子非結合性相互作用による導電性ネットワーク構造の構築が有効であると考えられる。加えて、強いπ−π相互作用が可能な分子同士でのπ−πスタッキングによるネットワーク構造も有用な導電経路のひとつと考えられる。これらのことを鑑みて、更に溶解度の向上を考えた場合、チオフェンを縮環した大きなπ共役系平面分子でアルキル基を有する本発明の化合物は、工業的に有用な有機光電子デバイス材料として大いに期待される。
即ち、チオフェン環を縮環した大きなπ共役系分子である本発明化合物は、p型トランジスタとして潜在的に高い電子移動度を持つものと期待される。また、有機溶媒への溶解度を、導入する側鎖置換基によって調整する事が可能である。更には置換基の長さや種類によって結晶中でのカラム間の距離を調整する事も出来る。加えて、本発明化合物は合成が容易であり、熱的、化学的安定性が高く、空気中で取り扱いが容易である。
また、一般にカルコゲン(硫黄、セレン、テルル)を導入する事によって溶解度が更に向上する事が知られている。加えて、これらの元素は電子供与体として働くため、有機p型トランジスタとしての性能の向上にも有効であると考えられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
また、チオアルキル基としては、チオ基に上記した如きアルキル基が結合した基が挙げられ、具体例としては、例えば、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオイソプロピル基、チオブチル基、チオイソブチル基、チオ第二級ブチル基、チオ第三級ブチル基、チオペンチル基、チオヘキシル基などが挙げられる。
これらアルキル基、チオアルキル基の置換基としては、当該アントラセン誘導体の合成に於いて反応に支障のない置換基であって、当該アントラセン誘導体の目的とする用途への使用に際し、支障のない置換基であればどのような置換基でも良いが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、アミノ基、例えば、塩素、臭素ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシキ等のアルコキシ基等が挙げられる。
上記一般式(1a)、(1a')、(7a)及び(7a')で示される本発明化合物において、Rで表される、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のチオアルキル基の定義及び具体例等は上記と全く同じである。
また、例えば、置換又は無置換のアルキル基や置換又は無置換のチオアルキル基等に代表される置換基R1〜R4や、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表すRのチオフェン環上の置換位置は、それぞれが独立してどの位置であっても良いが、例えば、上記一般式(1')で示される本発明化合物や上記一般式(1a')で示される本発明化合物、或いは上記一般式(7')で示される本発明化合物や上記一般式(7a')で示される本発明化合物のように、置換基同士がそれぞれ対称となる位置に置換されている方が、合成上の面に於いても、また、用途的な面からも好ましい。
次に、上で得られた化合物1をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これにN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンを加え、0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却下、これに、nーブチルリチウムの例えばヘキサン溶液を少量ずつゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間程度撹拌する。この溶液を再度0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却し、ここに一般式RSX(RはR1〜R4と同じ、X=SR,CN,I,Br又はCl)で示されるスルフィド化合物、例えば、ジブチルジスルフィドを少量ずつ加えた後、室温で5〜10時間程度撹拌する。反応後、水処理し、以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ{2−(5ーブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物2)を得る。
次に、上で得られた化合物4をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解し、これにN−ブロムコハク酸イミドを室温で加え、10〜30時間撹拌、反応させる。反応後は常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(2−ブロモ)チエニル]ベンゼン(化合物5)を得る。
次いで、この化合物5をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これに0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却下、nーブチルリチウムの例えばヘキサン溶液を少量ずつゆっくりと加えて1時間程度撹拌した後、3−チエニル基の2−位を保護するためのクロロトリメチルシランを加え、撹拌しながら室温まで昇温させる。以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物6)を得る。
次に、この化合物7の3−チエニル基の2−位の保護基を外すため、化合物7をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これに水及びフッ化テトラブチルアンモニウムを加えて、室温で10〜15時間程度撹拌する。以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物8)を得る。
一般に、酸化電位が概ね1.5V以下である化合物は、有機トランジスタとしての機能を示すことが知られている。後述のサイクリックボルタンメトリーに示されるように、化合物3は第1酸化電位が0.97V、第2酸化電位が1.16Vであり、また複数回のスキャンを行っても酸化還元波に全く変化はなく、良好な可逆性を示した。
なお、以下の反応は、全て乾燥アルゴン下で行った。
また、無水溶媒と各種試薬類は市販品をそのまま使用した。
但し、テトラヒドロフランはアルゴン下ナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥し、使用直前に蒸留した。
(1)1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物1)の合成
1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(4.13g,10.5mmol)とジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(376mg,0.536mmol)の混合物にN、N−ジメチルホルムアミド(25mL)を加えて、撹拌しながら80℃に加熱し溶解させた。これに、2−トリn−ブチル錫チオフェン(20mL,63mmol)をシリンジでゆっくりと加え、この混合物を80℃で24時間加熱撹拌した。反応混合物を放冷して室温に戻し、クロロホルム(200mL)で希釈し、フッ化カリウム水溶液を加え、室温にて1時間撹拌した。この混合物をセライトろ過して不溶物を取り除き、有機層を分離した。更に水層からクロロホルム(150mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。これをジクロロメタン(400mL)に溶かし、シリカゲルカラムを通した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒から再結晶し、1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物1)の白色結晶(2.70g,6.64mmol、収率:63%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 7.67(s,2H),7.30(d,4H,J=4Hz),6.99−6.96(m,8H)。
13C NMR(CDCl3)δ 141.48,133.29,133.16,127.32,126.94,126.25。
MALDI−TOF−MS:m/z=406.61[M+]。
Mp:246−247℃。
上記(1)で得た1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物1)(1.62g,3.98mmol)のテトラヒドロフラン(160mL)溶液にN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(4.8mL,32mmol)を加え、溶液を−78℃に冷却した。これに、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,20mL,32mmol)をシリンジでゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間撹拌した。この溶液を再度−78℃に冷却し、ここにジブチルジスルフィド(9.0mL,47mmol)をシリンジで加えた。室温で8時間撹拌後、水処理し、ジクロロメタンで抽出(300mL×2)した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=4:1)で分離し、得られた黄色油状物をヘキサンに溶かして−25℃にて放置し、析出した1,2,4,5−テトラ{2−(5−ブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物2)の白色針状晶をろ取した(2.87g,3.78mmol、収率:95%)。
1H NMR(CDCl3)δ 7.55(s,2H),6.96(d,4H,J=3.5Hz),6.82(d,4H,J=3.5Hz),2.79(t,8H,J=8Hz),1.60(sept,8H,J=8Hz),1.42(sextet,8H,J=8Hz),0.91(t,12H,J=8Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 144.15,136.44,132.93,132.80,132.70,127.70,38.66,31.46,21.64,13.73。
MALDI−TOF−MS:m/z=758.72[M+]。
Mp:45−46℃。
1,2,4,5−テトラ{2−(5−ブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物2)(190mg,0.250mmol)のジクロロメタン溶液(25mL)を撹拌しながら、ガラスキャピラリーを通してアルゴンガスをバブリングした。そこに塩化第二鉄(FeCl3,490mg,3.02mmol)のニトロメタン溶液(5mL)を室温で5分以上かけて滴下した。この間、溶液の色が淡黄色から深青色に変化した。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間撹拌した。反応混合物をメタノール(200mL)に注いだところ、黄色沈殿が生じた。これをろ取し、メタノールで洗浄して乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=2:1)にかけて、更にゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム)によって分離し、黄色固体を得た。再結晶(ヘキサン/トルエン)により、化合物3の黄色針状晶(26.1mg,0.0346mmol、収率:14%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 8.21(s,2H),7.48(s,4H),3.03(t,8H,J=7Hz),1.76(sept,8H,J=7Hz),1.52(sextet,8H,J=7Hz),0.98(t,12H,J=7Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 136.73,136.60,132.48,127.44,124.30,117.80,38.29,31.77,21.89,13.81
MALDI−TOF−MS:m/z=754.58[M+]。
UV−vis(CH2Cl2),λ/nm(logε):271(4.37),330(4.75),345(4.83),362(5.06),446(3.75)。
Mp:>240℃(分解)。
実施例1で得られた化合物3の単結晶を用いて単結晶X線構造解析を行った。
〈装置等〉
化合物3の単結晶は、ジクロロメタン/メタノール系蒸気拡散法により成長させ、黄色板状晶として得た。測定は、Mercury CCDシステム(理学電機)を使用し、単色MoKα線(波長0.71073Å)照射によって行った。単位格子の決定とデータ処理は、PC上でCrystalClear(理学電機)を用いて行った。構造解析は、CrystalStructure(理学電機)ソフトウェアで直接法(SIR92)を用いて行った。
化合物3のORTEP図を図1に示す。また、化合物3のクリスタルパッキング図を図2に示す。なお、側鎖のチオブチル基は表示していない。
実施例1で得られた化合物3の紫外−可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を行った。
〈装置等〉
紫外−可視:V−560紫外可視分光光度計(日本分光)を使用した。
蛍光:FP−6500分光蛍光光度計(日本分光)を使用した。
化合物3の紫外−可視吸収スペクトルを図3の(1)に、また、蛍光スペクトルを図3の(2)にそれぞれ示す。
なお、測定条件は以下の通りである。
濃度:10μM(紫外−可視)、1μM(蛍光)
溶媒:ジクロロメタン
蛍光スペクトルの励起波長:361nm
実施例1で得られた化合物3のサイクリックボルタンメトリーによる測定を行った。
〈装置等〉
溶媒:ジクロロメタン
支持電解質:ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(0.1M)
作用電極:グラッシーカーボン
対極:白金
参照電極:SCE
測定溶媒(ジクロロメタン)はアルゴン下水素化カルシウムで乾燥し、使用直前に蒸留した。支持電解質は市販品(Aldrich Chemical社製)をそのまま使用した。参照電極は株式会社ヤナコの飽和カロメル電極(SCE:MR−P2A型,No.403001)を使用した。作用電極、対極、測定セルはビー・エー・エス株式会社のものを使用した。測定装置は、CH Instruments社製のALSモデル1202電気化学アナライザーを使用した。測定は、室温、アルゴン雰囲気下で行った。
走査速度:100mV/s
Epa=1.00,1.19V
ΔEp=70,70mV
E1/2=0.97,1.16V
これらの結果を図4に示す。
(1)1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物4)の合成
1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(4.13g,10.5mmol)、3−チオフェンボロン酸(2.82g,22.0mmol)及び炭酸ナトリウム(8.55g,80.7mmol)の混合物にトルエン(100mL)、エタノール(25mL)及び水(25mL)を加えて溶解させ、そこにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(393mg,0.340mmol)を加えて24時間加熱還流した。反応混合物を放冷して室温に戻し、トルエン(200mL)で希釈して、分離した有機層を2M水酸化カリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。これをジクロロメタン(400mL)に溶かし、短いシリカゲルカラムを通して、溶媒留去した。得られた固体をエタノール/ジクロロメタン混合溶媒から再結晶し、1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物4)の白色結晶(1.85g,4.55mmol、収率:91%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 7.57(s,2H),7.21(dd,4H,J=5,3Hz),7.14(dd,4H,J=3,1Hz),6.86(dd,4H,J=5,1Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=406.02[M+]。
1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物4)(620mg,1.52mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)溶液に、N−ブロモコハク酸イミド(1.2g,6.7mmol)を室温で加えて、24時間撹拌した。溶媒の大半をロータリーエバポレータによって留去し、エーテル(200mL)に溶解させ、これを水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、残渣をジクロロメタン(200mL)に溶解させてシリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。得られた固体を温かいヘキサン、エタノールで洗浄した後、ジクロロメタン−メタノールで再沈殿して白色の固体(化合物5)を得た(950mg,1.31mmol、収率:87%)。
1H NMR(CDCl3)δ 7.60(s,2H),7.12(d,4H,J=5.5Hz),6.61(d,4H,J=5.5Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=718.38[(M+H)+],638.52[(M−Br)+]。
1,2,4,5−テトラ[3−(2−ブロモ)チエニル]ベンゼン(化合物5)(724mg,1.00mmol)のTHF(20mL)溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,4.0mL,6.3mmol)をシリンジでゆっくりと加え、1時間撹拌した。クロロトリメチルシラン(1.0mL,7.9mmol)を加え、撹拌しつつ室温まで昇温した。混合物を水処理し、エーテル抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=9:1)によって分離し、1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物6)の白色固体(522mg,0.750mmol,75%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 7.44(s,2H),7.28(d,4H,J=5Hz),6.57(d,4H,J=5Hz),0.16(s,36H)。
MALDI−TOF−MS:m/z=694.24[M+],717.24[(M+Na)+],621.26[(M−SiMe3)+]。
1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物6)(510mg,0.734mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液にN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(0.90mL,6.0mmol)を加え、溶液を−78℃に冷却した。これに、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,3.8mL,6.0mmol)をシリンジでゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間撹拌した。この溶液を再度−78℃に冷却し、ここにジブチルジスルフィド(1.4mL,7.4mmol)をシリンジで加えた。室温で8時間撹拌後、水処理し、エーテルで希釈した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=9:1)で分離し、1,2,4,5−テトラ[3−(5−ブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物7)の無色油状物(644mg,0.615mmol、収率:84%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 7.35(s,2H),6.54(s,4H),2.66(t,8H,J=7Hz),1.47−1.35(m,16H)0.90(t,12H,J=7Hz),0.14(s,36H)。
1,2,4,5−テトラ[3−(5−ブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物7)(627mg,0.599mmol)のテトラヒドロフラン(6mL)溶液に水(1mL)を加え、フッ化テトラブチルアンモニウム(1.0M THF溶液、3.6mL,3.6mmol)を加えて、室温で14時間撹拌した。エーテルで希釈した後、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して油状粗生成物を得た。この油状物をヘキサンに溶かして−25℃にて放置し、析出した1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル]ベンゼン(化合物8)の白色針状晶をろ取した(366mg,0.482mmol、収率:80%)。
1H NMR(CDCl)δ 7.47(s,2H),7.12(d,4H,J=1Hz),6.83(d,4H,J=1Hz),2.75(t,8H,J=7Hz),1.57(sept,8H,J=7Hz),1.42(sextet,8H,J=7Hz),0.91(t,12H,J=7Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=758.28[M+]。
1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル]ベンゼン(化合物8)(182mg,0.226mmol)のジクロロメタン溶液(45mL)を撹拌しながら、ガラスキャピラリーを通してアルゴンガスをバブリングした。そこに塩化第二鉄(FeCl3,368mg,2.27mmol)のニトロメタン溶液(10mL)を室温で5分以上かけて滴下した。この間、溶液の色が淡黄色から深青色に変化した。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間撹拌した。反応混合物にメタノール(20mL)を加えて更に1時間撹拌した後、水(50mL)とジクロロメタン(100mL)を加えた。有機層を分離して、水で洗浄し、炭酸カリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別し、ロータリーエバポレータで溶媒留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=4:1)で分離した後、再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)により、化合物9の黄色針状晶(92.0mg,0.122mmol、収率:54%)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ 9.00(br,s,2H),8.10(s,4H),3.02(t,8H,J=7Hz),1.75(sept,8H,J=7Hz),1.51(sextet,8H,J=7Hz),0.96(t,12H,J=7Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 135.60,135.03,133.58,127.91,125.32,118.66,38.52,31.80,21.84,13.77。
MALDI−TOF−MS:m/z=754.22[M+]。
UV−vis(CH2Cl2),λ/nm(logε):244(4.51),262(4.60),309(5.23),368(4.13),387(4.33),410(4.30)。
実施例2で得られた化合物9の単結晶を用いて単結晶X線構造解析を行った。
〈装置等〉
化合物9の単結晶は、クロロホルム/エタノール系蒸気拡散法により成長させ、黄色板状晶として得た。測定は、Mercury CCDシステム(理学電機)を使用し、単色MoKα線(波長0.71073Å)照射によって行った。単位格子の決定とデータ処理は、PC上でCrystalClear(理学電機)を用いて行った。構造解析は、CrystalStructure(理学電機)ソフトウェアで直接法(SIR92)を用いて行った。
化合物9のORTEP図を図5に示す。また、化合物9のクリスタルパッキング図を図6に示す。なお、側鎖のチオブチル基は表示していない。
Claims (13)
- 1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す),CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、請求項6又は7に記載のアントラセン誘導体の製造法。
- 塩化第二鉄を用いて酸化的に環化させる請求項8に記載の製造法。
- 1,2,4,5−テトラ(2−保護−3−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す),CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−保護−3−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、保護基を脱離させ、これを酸化的に環化させることを特徴とする、請求項10又は11に記載のアントラセン誘導体の製造法。
- 塩化第二鉄を用いて酸化的に環化させる請求項12に記載の製造法。
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