JP2005320299A - 新規なアントラセン誘導体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、有機光電子デバイス等としての有用性が期待される、各種有機溶媒に可溶なチオフェン縮環アントラセン誘導体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、4分子のチオフェン誘導体のそれぞれが1分子のアントラセンの1位と2位、3位と4位、5位と6位、及び7位と8位の位置にそれぞれ縮環した構造を有するアントラセン誘導体に関する。
また、本発明は、例えば、1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR,CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、上記アントラセン誘導体の製造法に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機光電子デバイス等としての有用性が期待される、各種有機溶媒に可溶なチオフェン縮環アントラセン誘導体に関する。
近年、有機化合物を用いた有機光電子デバイスの開発が盛んに行われている。これは、有機化合物の構造が多様で様々な分子デザインと合成が可能になってきたことによる機能化への期待と、有機溶媒への溶解性を利用して、ウェットプロセスにより機能層の形成が行えることへの期待とからである。
有機分子の分子間での導電経路として考えられているのは、π結合が高度に共役した分子のπ−π相互作用およびヘテロ原子を含む化合物におけるヘテロ原子−ヘテロ原子相互作用であり、この観点から、固体状態で強いπ−πスタッキング相互作用によって生じるカラム構造を持つ化合物の有機光電子デバイスとしての特性に興味が持たれている。
高度に芳香環が縮環した平面性ディスク状分子は、π結合が高度に共役しており、その強いπ−πスタッキング相互作用により自己集合し、特異な集積構造体を形成する事が知られている。このような非結合的な相互作用を利用した超分子構造体の研究が、近年盛んに行われている。
高度にπ共役系が広がっているこの種の化合物は、分子骨格が強固であるために有効共役長が長く、キャリア移動度が高い事が知られており、有用な有機光電子デバイスとなりうる事が期待されている。しかし一般に、高度に芳香環が縮環した化合物は、グラファイトの部分構造と見なせ、その高い疎水性により溶解度が低い事が多い。
芳香環が縮環した平面性ディスク状分子としてペンタセンがある。ペンタセンはバイアス電圧をかけないときは完全な絶縁体であり、電圧をかけると極めて良好な導電性を示し、有機化合物のトランジスタ素子として優れた半導体特性を示すことが知られている (非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、溶媒に不溶であり薄膜トランジスタの形成には、真空蒸着を利用せざるを得ないという欠点を有しているためにコスト面から問題があり実用化に至っていない。
含チオフェン有機化合物は、その明瞭な酸化還元の可逆性ゆえに、電子デバイスへの応用が数多く研究されている。導電性含チオフェン化合物として知られている化合物としては、チオフェンを複数、或いは多数連結させたポリチオフェン、チエニレン−フェニレンオリゴマー、チオフェン縮環芳香族化合物などがある。ポリマーのなかではポリ(3−ヘキシル)チオフェン(非特許文献4)は良好な導電性を示し、また溶解度が高いことが知られているが、有機光電子デバイスとしてはとりたてて優れた特性を持たず、実用化には至っていない。また、単分子系含チオフェン化合物の中ではベンゾジチオフェン誘導体 (非特許文献5)、アントラジチオフェン誘導体 (非特許文献6)、ジチオフェン−テトラチアフルバレン (非特許文献7)が良い特性を示しているが、これらは長鎖アルキル基を持つ誘導体であっても、その溶解度は低い。
有機光電子デバイス層を形成する方法として、ウェットプロセスは安価な方法であるため、工業的に有利である。しかしながら、上記のような不溶性の化合物に対しては適用出来ない。このような背景から、単分子系で良好な溶解度を持つ有機半導体の開発が望まれているが、現在のところ実現した例は殆ど無い。
Nelson, S. F. et al., Appl. Phys. Lett. 1998, 72, 1854. Lin, Y. Y. et al., IEEE Trans. Electron Devices 1997, 44, 1 325. Dimitrakopoulos, C. D. et al., Science 1999, 283, 822. Stutzmann, N. et al., Science 2003, 299, 1881. Katz, H. E. et al., Acc. Chem. Res. 2001, 34, 359. Laquindanum, J. G. et al., J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 664. Mas-Torrent, M. et al., J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 984.
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、有機光電子デバイス等としての有用性が期待される、各種有機溶媒に可溶なチオフェン縮環アントラセン誘導体を提供することを目的とする。
本発明は、4分子のチオフェン誘導体のそれぞれが1分子のアントラセンの1位と2位、3位と4位、5位と6位、及び7位と8位の位置にそれぞれ縮環した構造を有するアントラセン誘導体に関する。
より具体的には、本発明は、例えば下記一般式(1)〜(7)の何れかで示される、アントラセン誘導体に関する。
Figure 2005320299
[式(1)〜(7)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
更に具体的には、本発明は、例えば上記一般式(1)〜(7)で示される、アントラセン誘導体において、R1〜R4で表される、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基が、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基であるアントラセン誘導体に関する。
また、本発明は、下記一般式(1a)
Figure 2005320299
[式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
で示されるアントラセン誘導体に関する。
更に、本発明は、1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR,CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、上記一般式(1a)で示されるアントラセン誘導体の製造法に関する。
更にまた、本発明は、下記一般式(7a)
Figure 2005320299
[式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
で示されるアントラセン誘導体に関する。
また、本発明は、1,2,4,5−テトラ(2−保護−3−チエニル)ベンゼン[2−位に保護基を有する1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼンのこと。以下同様。]のリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR,CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−保護−3−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、上記一般式(7a)で示されるアントラセン誘導体の製造法に関する。
即ち、本発明者らは、π−πスタッキング相互作用能と溶解度との両立を目指し、更にヘテロ原子−ヘテロ原子相互作用をも期待して、チオフェンを縮環したアントラセン誘導体に溶解度向上のために環外に4つのアルキル又はチオアルキル基を導入した、有機溶媒可溶性の化合物をデザインした。そして同誘導体の合成方法を開発し、この化合物が種々の有機溶媒への溶解度が高く、結晶中でπ−π相互作用によるカラム構造を有する事を明らかにして、本発明に到達した。
本発明化合物、例えば上記一般式(1)〜(7)において、R1〜R4がブチルチオ基である化合物は、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)は勿論、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、更にはヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶媒にすら可溶である。
導電性有機化合物の導電経路として、隣接する分子間のヘテロ原子−ヘテロ原子非結合性相互作用による導電性ネットワーク構造の構築が有効であると考えられる。加えて、強いπ−π相互作用が可能な分子同士でのπ−πスタッキングによるネットワーク構造も有用な導電経路のひとつと考えられる。これらのことを鑑みて、更に溶解度の向上を考えた場合、チオフェンを縮環した大きなπ共役系平面分子でアルキル基を有する本発明の化合物は、工業的に有用な有機光電子デバイス材料として大いに期待される。
即ち、チオフェン環を縮環した大きなπ共役系分子である本発明化合物は、p型トランジスタとして潜在的に高い電子移動度を持つものと期待される。また、有機溶媒への溶解度を、導入する側鎖置換基によって調整する事が可能である。更には置換基の長さや種類によって結晶中でのカラム間の距離を調整する事も出来る。加えて、本発明化合物は合成が容易であり、熱的、化学的安定性が高く、空気中で取り扱いが容易である。
また、一般にカルコゲン(硫黄、セレン、テルル)を導入する事によって溶解度が更に向上する事が知られている。加えて、これらの元素は電子供与体として働くため、有機p型トランジスタとしての性能の向上にも有効であると考えられる。
上記一般式(1)〜(7)で示される本発明化合物の中で、より好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(1)
Figure 2005320299
[式中、R1〜R4は前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
上記一般式(1)で示される本発明化合物の中で、特に好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(1')
Figure 2005320299
[式中、R1〜R4は前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
また、上記一般式(1a)で示される本発明化合物の中で、特に好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(1a')
Figure 2005320299
[式中、Rは前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
上記一般式(1)〜(7)で示される本発明化合物の中で、更に好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(7)
Figure 2005320299
[式中、R1〜R4は前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
上記一般式(7)で示される本発明化合物の中で、特に好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(7')
Figure 2005320299
[式中、R1〜R4は前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
また、上記一般式(7a)で示される本発明化合物の中で、特に好ましい化合物としては、例えば、下記一般式(7a')
Figure 2005320299
[式中、Rは前記と同じ。]
で示される化合物が挙げられる。
上記本発明に係る各式中、R1〜R4で表される、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基としては、例えば、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のチオアルキル基等が好ましいものとして挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
また、チオアルキル基としては、チオ基に上記した如きアルキル基が結合した基が挙げられ、具体例としては、例えば、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオイソプロピル基、チオブチル基、チオイソブチル基、チオ第二級ブチル基、チオ第三級ブチル基、チオペンチル基、チオヘキシル基などが挙げられる。
これらアルキル基、チオアルキル基の置換基としては、当該アントラセン誘導体の合成に於いて反応に支障のない置換基であって、当該アントラセン誘導体の目的とする用途への使用に際し、支障のない置換基であればどのような置換基でも良いが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、アミノ基、例えば、塩素、臭素ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシキ等のアルコキシ基等が挙げられる。
上記一般式(1a)、(1a')、(7a)及び(7a')で示される本発明化合物において、Rで表される、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のチオアルキル基の定義及び具体例等は上記と全く同じである。
本発明のアントラセン誘導体に於いて、1分子のアントラセンの1位と2位、3位と4位、5位と6位、及び7位と8位の位置にそれぞれ縮環する4分子のチオフェン誘導体は、例えば上記一般式(1)〜(7)で示されるように、それぞれがその二つの二重結合の何れでアントラセンと縮環していても良いが、例えば一般式(1)で示される本発明化合物のように、それぞれが互いに対称となるような位置で縮環されている方が、合成上の面に於いても、また、用途的な面からも好ましい。
また、例えば、置換又は無置換のアルキル基や置換又は無置換のチオアルキル基等に代表される置換基R1〜R4や、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表すRのチオフェン環上の置換位置は、それぞれが独立してどの位置であっても良いが、例えば、上記一般式(1')で示される本発明化合物や上記一般式(1a')で示される本発明化合物、或いは上記一般式(7')で示される本発明化合物や上記一般式(7a')で示される本発明化合物のように、置換基同士がそれぞれ対称となる位置に置換されている方が、合成上の面に於いても、また、用途的な面からも好ましい。
本発明のアントラセン誘導体、例えば上記一般式(1a')で示されるアントラセン誘導体の合成法を反応スキームで示すと、例えば下記のようになる。
Figure 2005320299
即ち、例えば、先ずテトラブロモベンゼンとジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとを、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に加熱、溶解させ、これに、2−トリn−ブチル錫チオフェンを徐々に加えて十数時間〜数十時間加熱、撹拌反応させる。反応後、放冷して室温に戻し、これをクロロホルム等で希釈した後、弗化カリウム水溶液を加えて室温で一時間程度撹拌する。その後、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物)を得る。
次に、上で得られた化合物をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これにN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンを加え、0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却下、これに、nーブチルリチウムの例えばヘキサン溶液を少量ずつゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間程度撹拌する。この溶液を再度0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却し、ここに一般式RSX(RはR1〜R4と同じ、X=SR,CN,I,Br又はCl)で示されるスルフィド化合物、例えば、ジブチルジスルフィドを少量ずつ加えた後、室温で5〜10時間程度撹拌する。反応後、水処理し、以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ{2−(5ーブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物)を得る。
次いで、上で得られた化合物を酸化的に環化させれば上記一般式(1a')で示される本発明に係るアントラセン誘導体が得られるが、より具体的には、例えば、化合物をジクロロメタン等の有機溶媒に溶解し、撹拌下、不活性ガスをバブリングした後、これに塩化第二鉄のニトロメタン溶液を室温でゆっくりと滴下する。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間程度撹拌した後、反応混合物をメタノールに注いで、沈殿を生じさせる。これをろ取し、カラムクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、再結晶等により単離、精製すれば、上記一般式(1a')で示される本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェン(化合物)が得られる。
また、例えば上記一般式(7a')で示される本発明のアントラセン誘導体の合成法を反応スキームで示すと、例えば下記のようになる。
Figure 2005320299
即ち、例えば、先ずテトラブロモベンゼンと3−チオフェンボロン酸及び炭酸ナトリウムとを、例えばトルエン−エタノール−水の混合溶媒に溶解させ、これに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを加えて10〜30時間加熱、還流させる。反応後、放冷して室温に戻し、これをトルエン等で希釈し、分離した有機層を常法に従い後処理することにより、1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物)を得る。
次に、上で得られた化合物をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解し、これにN−ブロムコハク酸イミドを室温で加え、10〜30時間撹拌、反応させる。反応後は常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(2−ブロモ)チエニル]ベンゼン(化合物)を得る。
次いで、この化合物をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これに0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却下、nーブチルリチウムの例えばヘキサン溶液を少量ずつゆっくりと加えて1時間程度撹拌した後、3−チエニル基の2−位を保護するためのクロロトリメチルシランを加え、撹拌しながら室温まで昇温させる。以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)を得る。
得られた化合物をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これにN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンを加え、0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却下、これに、nーブチルリチウムの例えばヘキサン溶液を少量ずつゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間程度撹拌する。この溶液を再度0℃以下、好ましくは−50℃以下に冷却し、ここに一般式RSX(RはR1〜R4と同じ、X=SR,CN,I,Br又はCl)で示されるスルフィド化合物、例えば、ジブチルジスルフィドを少量ずつ加えた後、室温で5〜10時間程度撹拌する。反応後、水処理し、以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル}ベンゼン(化合物)を得る。
次に、この化合物の3−チエニル基の2−位の保護基を外すため、化合物をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解し、これに水及びフッ化テトラブチルアンモニウムを加えて、室温で10〜15時間程度撹拌する。以下、常法に従い後処理を行うことにより、1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物)を得る。
次いで、上で得られた化合物を酸化的に環化させれば上記一般式(7a')で示される本発明に係るアントラセン誘導体が得られるが、より具体的には、例えば、化合物をジクロロメタン等の有機溶媒に溶解し、撹拌下、不活性ガスをバブリングした後、これに塩化第二鉄のニトロメタン溶液を室温でゆっくりと滴下する。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間程度撹拌した後、反応混合物をメタノールに注いで、沈殿を生じさせる。これをろ取し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により単離、精製すれば、上記一般式(7a')で示される本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−c:3,4−b':5,6−c'':7,8−b''']テトラチオフェン(化合物)が得られる。
本発明によれば、高度にチオフェン縮環したアントラセンにアルキル基、チオアルキル基等を導入する事で可溶化出来る。これらの置換基は、上記化合物や3−チエニル基の2−位に保護基を有する化合物のテトラリチオ体から容易に導入可能である。アルキル基、チオアルキル基等を導入した化合物や化合物を酸化縮合させれば本発明に係るアントラセン誘導体が得られるが、このようにして得られた化合物は、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)は勿論、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、更にはヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶媒にすら可溶である。
一般に、酸化電位が概ね1.5V以下である化合物は、有機トランジスタとしての機能を示すことが知られている。後述のサイクリックボルタンメトリーに示されるように、化合物は第1酸化電位が0.97V、第2酸化電位が1.16Vであり、また複数回のスキャンを行っても酸化還元波に全く変化はなく、良好な可逆性を示した。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の反応は、全て乾燥アルゴン下で行った。
また、無水溶媒と各種試薬類は市販品をそのまま使用した。
但し、テトラヒドロフランはアルゴン下ナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥し、使用直前に蒸留した。
2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェン(化合物3)の合成
(1)1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(4.13g,10.5mmol)とジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(376mg,0.536mmol)の混合物にN、N−ジメチルホルムアミド(25mL)を加えて、撹拌しながら80℃に加熱し溶解させた。これに、2−トリn−ブチル錫チオフェン(20mL,63mmol)をシリンジでゆっくりと加え、この混合物を80℃で24時間加熱撹拌した。反応混合物を放冷して室温に戻し、クロロホルム(200mL)で希釈し、フッ化カリウム水溶液を加え、室温にて1時間撹拌した。この混合物をセライトろ過して不溶物を取り除き、有機層を分離した。更に水層からクロロホルム(150mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。これをジクロロメタン(400mL)に溶かし、シリカゲルカラムを通した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒から再結晶し、1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物)の白色結晶(2.70g,6.64mmol、収率:63%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 7.67(s,2H),7.30(d,4H,J=4Hz),6.99−6.96(m,8H)。
13C NMR(CDCl3)δ 141.48,133.29,133.16,127.32,126.94,126.25。
MALDI−TOF−MS:m/z=406.61[M]。
Mp:246−247℃。
(2)1,2,4,5−テトラ{2−(5−ブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物)の合成
上記(1)で得た1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼン(化合物)(1.62g,3.98mmol)のテトラヒドロフラン(160mL)溶液にN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(4.8mL,32mmol)を加え、溶液を−78℃に冷却した。これに、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,20mL,32mmol)をシリンジでゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間撹拌した。この溶液を再度−78℃に冷却し、ここにジブチルジスルフィド(9.0mL,47mmol)をシリンジで加えた。室温で8時間撹拌後、水処理し、ジクロロメタンで抽出(300mL×2)した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=4:1)で分離し、得られた黄色油状物をヘキサンに溶かして−25℃にて放置し、析出した1,2,4,5−テトラ{2−(5−ブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物)の白色針状晶をろ取した(2.87g,3.78mmol、収率:95%)。
H NMR(CDCl3)δ 7.55(s,2H),6.96(d,4H,J=3.5Hz),6.82(d,4H,J=3.5Hz),2.79(t,8H,J=8Hz),1.60(sept,8H,J=8Hz),1.42(sextet,8H,J=8Hz),0.91(t,12H,J=8Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 144.15,136.44,132.93,132.80,132.70,127.70,38.66,31.46,21.64,13.73。
MALDI−TOF−MS:m/z=758.72[M]。
Mp:45−46℃。
(3)2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ{2−(5−ブチルチオ)チエニル}ベンゼン(化合物)(190mg,0.250mmol)のジクロロメタン溶液(25mL)を撹拌しながら、ガラスキャピラリーを通してアルゴンガスをバブリングした。そこに塩化第二鉄(FeCl3,490mg,3.02mmol)のニトロメタン溶液(5mL)を室温で5分以上かけて滴下した。この間、溶液の色が淡黄色から深青色に変化した。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間撹拌した。反応混合物をメタノール(200mL)に注いだところ、黄色沈殿が生じた。これをろ取し、メタノールで洗浄して乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=2:1)にかけて、更にゲル浸透クロマトグラフィー(クロロホルム)によって分離し、黄色固体を得た。再結晶(ヘキサン/トルエン)により、化合物の黄色針状晶(26.1mg,0.0346mmol、収率:14%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 8.21(s,2H),7.48(s,4H),3.03(t,8H,J=7Hz),1.76(sept,8H,J=7Hz),1.52(sextet,8H,J=7Hz),0.98(t,12H,J=7Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 136.73,136.60,132.48,127.44,124.30,117.80,38.29,31.77,21.89,13.81
MALDI−TOF−MS:m/z=754.58[M]。
UV−vis(CH2Cl2),λ/nm(logε):271(4.37),330(4.75),345(4.83),362(5.06),446(3.75)。
Mp:>240℃(分解)。
試験例1(単結晶X線構造解析)
実施例1で得られた化合物の単結晶を用いて単結晶X線構造解析を行った。
〈装置等〉
化合物の単結晶は、ジクロロメタン/メタノール系蒸気拡散法により成長させ、黄色板状晶として得た。測定は、Mercury CCDシステム(理学電機)を使用し、単色MoKα線(波長0.71073Å)照射によって行った。単位格子の決定とデータ処理は、PC上でCrystalClear(理学電機)を用いて行った。構造解析は、CrystalStructure(理学電機)ソフトウェアで直接法(SIR92)を用いて行った。
化合物のORTEP図を図1に示す。また、化合物のクリスタルパッキング図を図2に示す。なお、側鎖のチオブチル基は表示していない。
試験例2(紫外−可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定)
実施例1で得られた化合物の紫外−可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を行った。
〈装置等〉
紫外−可視:V−560紫外可視分光光度計(日本分光)を使用した。
蛍光:FP−6500分光蛍光光度計(日本分光)を使用した。
化合物の紫外−可視吸収スペクトルを図3の(1)に、また、蛍光スペクトルを図3の(2)にそれぞれ示す。
なお、測定条件は以下の通りである。
濃度:10μM(紫外−可視)、1μM(蛍光)
溶媒:ジクロロメタン
蛍光スペクトルの励起波長:361nm
試験例3(サイクリックボルタンメトリー)
実施例1で得られた化合物のサイクリックボルタンメトリーによる測定を行った。
〈装置等〉
溶媒:ジクロロメタン
支持電解質:ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(0.1M)
作用電極:グラッシーカーボン
対極:白金
参照電極:SCE
測定溶媒(ジクロロメタン)はアルゴン下水素化カルシウムで乾燥し、使用直前に蒸留した。支持電解質は市販品(Aldrich Chemical社製)をそのまま使用した。参照電極は株式会社ヤナコの飽和カロメル電極(SCE:MR−P2A型,No.403001)を使用した。作用電極、対極、測定セルはビー・エー・エス株式会社のものを使用した。測定装置は、CH Instruments社製のALSモデル1202電気化学アナライザーを使用した。測定は、室温、アルゴン雰囲気下で行った。
走査速度:100mV/s
Epa=1.00,1.19V
ΔEp=70,70mV
E1/2=0.97,1.16V
これらの結果を図4に示す。
2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−c:3,4−b':5,6−c'':7,8−b''']テトラチオフェン(化合物9)の合成
(1)1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(4.13g,10.5mmol)、3−チオフェンボロン酸(2.82g,22.0mmol)及び炭酸ナトリウム(8.55g,80.7mmol)の混合物にトルエン(100mL)、エタノール(25mL)及び水(25mL)を加えて溶解させ、そこにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(393mg,0.340mmol)を加えて24時間加熱還流した。反応混合物を放冷して室温に戻し、トルエン(200mL)で希釈して、分離した有機層を2M水酸化カリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。これをジクロロメタン(400mL)に溶かし、短いシリカゲルカラムを通して、溶媒留去した。得られた固体をエタノール/ジクロロメタン混合溶媒から再結晶し、1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物)の白色結晶(1.85g,4.55mmol、収率:91%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 7.57(s,2H),7.21(dd,4H,J=5,3Hz),7.14(dd,4H,J=3,1Hz),6.86(dd,4H,J=5,1Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=406.02[M]。
(2)1,2,4,5−テトラ[3−(2−ブロモ)チエニル]ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ(3−チエニル)ベンゼン(化合物)(620mg,1.52mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)溶液に、N−ブロモコハク酸イミド(1.2g,6.7mmol)を室温で加えて、24時間撹拌した。溶媒の大半をロータリーエバポレータによって留去し、エーテル(200mL)に溶解させ、これを水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、残渣をジクロロメタン(200mL)に溶解させてシリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。得られた固体を温かいヘキサン、エタノールで洗浄した後、ジクロロメタン−メタノールで再沈殿して白色の固体(化合物)を得た(950mg,1.31mmol、収率:87%)。
H NMR(CDCl3)δ 7.60(s,2H),7.12(d,4H,J=5.5Hz),6.61(d,4H,J=5.5Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=718.38[(M+H)],638.52[(M−Br)]。
(3)1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ[3−(2−ブロモ)チエニル]ベンゼン(化合物)(724mg,1.00mmol)のTHF(20mL)溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,4.0mL,6.3mmol)をシリンジでゆっくりと加え、1時間撹拌した。クロロトリメチルシラン(1.0mL,7.9mmol)を加え、撹拌しつつ室温まで昇温した。混合物を水処理し、エーテル抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=9:1)によって分離し、1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)の白色固体(522mg,0.750mmol,75%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 7.44(s,2H),7.28(d,4H,J=5Hz),6.57(d,4H,J=5Hz),0.16(s,36H)。
MALDI−TOF−MS:m/z=694.24[M],717.24[(M+Na)],621.26[(M−SiMe3)]。
(4)1,2,4,5−テトラ[3−(5−ブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ[3−(2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)(510mg,0.734mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液にN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(0.90mL,6.0mmol)を加え、溶液を−78℃に冷却した。これに、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,3.8mL,6.0mmol)をシリンジでゆっくりと加えた後、室温に昇温しつつ1時間撹拌した。この溶液を再度−78℃に冷却し、ここにジブチルジスルフィド(1.4mL,7.4mmol)をシリンジで加えた。室温で8時間撹拌後、水処理し、エーテルで希釈した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=9:1)で分離し、1,2,4,5−テトラ[3−(5−ブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)の無色油状物(644mg,0.615mmol、収率:84%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 7.35(s,2H),6.54(s,4H),2.66(t,8H,J=7Hz),1.47−1.35(m,16H)0.90(t,12H,J=7Hz),0.14(s,36H)。
(5)1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル]ベンゼン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ[3−(5−ブチルチオ−2−トリメチルシリル)チエニル]ベンゼン(化合物)(627mg,0.599mmol)のテトラヒドロフラン(6mL)溶液に水(1mL)を加え、フッ化テトラブチルアンモニウム(1.0M THF溶液、3.6mL,3.6mmol)を加えて、室温で14時間撹拌した。エーテルで希釈した後、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過によって取り除いたあと、溶媒をロータリーエバポレータで留去して油状粗生成物を得た。この油状物をヘキサンに溶かして−25℃にて放置し、析出した1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル]ベンゼン(化合物)の白色針状晶をろ取した(366mg,0.482mmol、収率:80%)。
H NMR(CDCl)δ 7.47(s,2H),7.12(d,4H,J=1Hz),6.83(d,4H,J=1Hz),2.75(t,8H,J=7Hz),1.57(sept,8H,J=7Hz),1.42(sextet,8H,J=7Hz),0.91(t,12H,J=7Hz)。
MALDI−TOF−MS:m/z=758.28[M]。
(6)2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−c:3,4−b':5,6−c'':7,8−b''']テトラチオフェン(化合物)の合成
1,2,4,5−テトラ[3−(5ーブチルチオ)チエニル]ベンゼン(化合物)(182mg,0.226mmol)のジクロロメタン溶液(45mL)を撹拌しながら、ガラスキャピラリーを通してアルゴンガスをバブリングした。そこに塩化第二鉄(FeCl3,368mg,2.27mmol)のニトロメタン溶液(10mL)を室温で5分以上かけて滴下した。この間、溶液の色が淡黄色から深青色に変化した。滴下後、更に室温でバブリングを継続したまま1時間撹拌した。反応混合物にメタノール(20mL)を加えて更に1時間撹拌した後、水(50mL)とジクロロメタン(100mL)を加えた。有機層を分離して、水で洗浄し、炭酸カリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別し、ロータリーエバポレータで溶媒留去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン=4:1)で分離した後、再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)により、化合物の黄色針状晶(92.0mg,0.122mmol、収率:54%)を得た。
H NMR(CDCl3)δ 9.00(br,s,2H),8.10(s,4H),3.02(t,8H,J=7Hz),1.75(sept,8H,J=7Hz),1.51(sextet,8H,J=7Hz),0.96(t,12H,J=7Hz)。
13C NMR(CDCl3)δ 135.60,135.03,133.58,127.91,125.32,118.66,38.52,31.80,21.84,13.77。
MALDI−TOF−MS:m/z=754.22[M]。
UV−vis(CH2Cl2),λ/nm(logε):244(4.51),262(4.60),309(5.23),368(4.13),387(4.33),410(4.30)。
試験例4(単結晶X線構造解析)
実施例2で得られた化合物の単結晶を用いて単結晶X線構造解析を行った。
〈装置等〉
化合物の単結晶は、クロロホルム/エタノール系蒸気拡散法により成長させ、黄色板状晶として得た。測定は、Mercury CCDシステム(理学電機)を使用し、単色MoKα線(波長0.71073Å)照射によって行った。単位格子の決定とデータ処理は、PC上でCrystalClear(理学電機)を用いて行った。構造解析は、CrystalStructure(理学電機)ソフトウェアで直接法(SIR92)を用いて行った。
化合物のORTEP図を図5に示す。また、化合物のクリスタルパッキング図を図6に示す。なお、側鎖のチオブチル基は表示していない。
本発明に係る、チオフェンを高度に縮環した有機溶媒可溶性のアントラセン誘導体は、有機半導体素子、液晶素材、機能性色素、有機EL素子、リチウム電池電解質、太陽電池材料等に使用可能である。
本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェンのORTEP図を示す。(試験例1) 本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェンのクリスタルパッキング図を示す。(試験例1) (1)は本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェンの紫外−可視吸収スペクトルを示し、(2)は同蛍光スペクトルを示す。(試験例2) 本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−b:3,4−c':5,6−b'':7,8−c''']テトラチオフェンのサイクリックボルタンメトリーを示す。(試験例3) 本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−c:3,4−b':5,6−c'':7,8−b''']テトラチオフェンのORTEP図を示す。(試験例4) 本発明化合物2,5,9,12−テトラ(ブチルチオ)アントラ[1,2−c:3,4−b':5,6−c'':7,8−b''']テトラチオフェンのクリスタルパッキング図を示す。(試験例4)

Claims (15)

  1. 4分子のチオフェン誘導体のそれぞれが1分子のアントラセンの1位と2位、3位と4位、5位と6位、及び7位と8位の位置にそれぞれ縮環した構造を有するアントラセン誘導体。
  2. 下記一般式(1)〜(7)の何れかで示される、請求項1に記載のアントラセン誘導体。
    Figure 2005320299
    [式(1)〜(7)中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
  3. 下記一般式(1)
    Figure 2005320299
    [式中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
    で示される、請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  4. 下記一般式(1')
    Figure 2005320299
    [式中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
    で示される、請求項3に記載のアントラセン誘導体。
  5. 下記一般式(7)
    Figure 2005320299
    [式中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
    で示される、請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  6. 下記一般式(7')
    Figure 2005320299
    [式中、R1〜R4はそれぞれ独立して、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基を表す。]
    で示される、請求項5に記載のアントラセン誘導体。
  7. R1〜R4で表される、当該アントラセン誘導体の有機溶媒可溶化に寄与し得る基が、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基である請求項2〜6の何れかに記載のアントラセン誘導体。
  8. 下記一般式(1a)
    Figure 2005320299
    [式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
    で示される、請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  9. 下記一般式(1a')
    Figure 2005320299
    [式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
    で示される、請求項8に記載のアントラセン誘導体。
  10. 1,2,4,5−テトラ(2−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR,CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、請求項8又は9に記載のアントラセン誘導体の製造法。
  11. 塩化第二鉄を用いて酸化的に環化させる請求項10に記載の製造法。
  12. 下記一般式(7a)
    Figure 2005320299
    [式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
    で示される、請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  13. 下記一般式(7a')
    Figure 2005320299
    [式中、Rは、置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表す。]
    で示される、請求項12に記載のアントラセン誘導体。
  14. 1,2,4,5−テトラ(2−保護−3−チエニル)ベンゼンのリチオ体に、一般式RSX(Rは置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を表し、XはSR,CN,I,Br又はClを表す。)で示されるスルフィド化合物を反応させて、2−保護−3−チエニル基のそれぞれに置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のチオアルキル基を導入した後、これを酸化的に環化させることを特徴とする、請求項12又は13に記載のアントラセン誘導体の製造法。
  15. 塩化第二鉄を用いて酸化的に環化させる請求項14に記載の製造法。
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