JP4176489B2 - 車両ステアリング用伸縮軸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雄軸と雌軸を相互に嵌合して車両のステアリングシャフトに組込み、雄軸は、雌軸に対して相対回転不能に且つ摺動自在に嵌合すると共に樹脂コーティングした摺動部を備え、例えば、車両ステアリング用中間シャフトである車両ステアリング用伸縮軸に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の操舵機構部の伸縮軸、例えば、中間シャフトには、自動車が走行する際に発生する軸方向の変位を吸収して、ステアリングホイール上にその変位や振動を伝えないといった性能が要求される。
【0003】
このようなことから、伸縮軸(中間シャフト)では、雄軸と雌軸を相互に回転不能に且つ摺動自在に嵌合してあり、例えば、スプライン嵌合、セレーション嵌合してある。
【0004】
この場合、伸縮軸(中間シャフト)は、ガタ音を低減することと、ステアリングホイール上のガタ感を低減することと、軸方向の摺動動作時における摺動抵抗を低減することとが要求されている。
【0005】
このようなことから、従来、伸縮軸(中間シャフト)では、その雄軸のスプライン摺動部に、樹脂(例えば、ナイロン膜)をコーティングし、これにより、金属騒音、金属打音等を吸収して、緩和すると共に、摺動抵抗を低減し、また、回転方向ガタ付きを低減している。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に開示してあるように、樹脂コーティングした中間シャフト(伸縮軸)では、雌軸の端部に、抜止め用部材を装着して、この抜止め用部材に、雄軸のスプライン摺動部(樹脂コーティングした部分)の端部が係止するようにし、これにより、雄軸が雌軸から抜け出て脱落するといったことを防止している。
【0007】
さらに、雄軸の端部に、加締めにより抜止め用打痕を形成して、この抜止め用打痕に、雄軸のスプライン摺動部の端部(樹脂コーティングした部分)が係止するようにし、これにより、雄軸が雌軸から抜け出て脱落するといったことを防止している。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−230184号公報
【特許文献2】
特開平11−291921号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、雄軸のスプライン摺動部は、山の尾根の形状をしていると共に、この尾根形状の上に、樹脂コーティングしてある。
【0010】
そのため、雄軸を雌軸から無理に引き抜こうとすると、スプライン摺動部の端部は、その係止している雌軸の抜止め用部材又は打痕に圧接(圧入)して、樹脂コーティングしてある尾根形状がテーパ形状に変形し、雌軸の抜止め用部材又は打痕に固着してしまい、その後、雄軸が雌軸に対して自由に摺動できなくなるといったことがある。
【0011】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、雄軸の摺動部の端部が雌軸に固着することを防止することができる車両ステアリング用伸縮軸を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る車両ステアリング用伸縮軸は、金属製の雄軸と金属製の雌軸を相互に嵌合して車両のステアリングシャフトに組込み、当該雄軸は、雌軸に対して相対回転不能に且つ摺動自在にスプラインもしくはセレーション嵌合すると共に非鉄材料をコーティングした摺動部を備えた車両ステアリング用伸縮軸において、
前記雌軸は、その端部でスプラインもしくはセレーションの少なくとも 1 つの谷部空間内に突出していて、前記雄軸が抜け出ることを防止する抜止め部が加締め加工により形成されており、前記摺動部の、軸方向において当該抜止め部側の部位は、前記雄軸が抜け方向に移動するとき前記抜止め部と金属対金属の接触をするよう、非鉄材料をコーティングすることなく、露出してあることを特徴とする。
【0013】
このように、請求項1によれば、摺動部は、軸方向において雌軸の抜止め部側の部位では、非鉄材料(樹脂)をコーティングすることなく、金属が露出してある。従って、雄軸を雌軸から無理に引き抜こうとしたとしても、摺動部は、その露出した金属地肌部分が金属の抜止め部に係止し、従来のように樹脂コーティングした部分が抜止め部に係止することがないことから、抜止め部に圧接して固着するといったことを効果的に防止することができる。
【0015】
さらに、請求項2によれば、好適には、前記雌軸の端面に、加締め加工により前記抜止め部を形成するために形成された少なくとも一つの凹部を設けている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を適用した自動車の操舵機構部の側面図である。
【0018】
図1において、ステアリングコラム1に、ステアリングシャフト2が回転自在に支持してあり、このステアリングシャフト2の後端に、ステアリングホイール3が装着してある。
【0019】
ステアリングシャフト3の前端には、自在継手4を介して、雄軸5と雌軸6を相対回転不能且つ摺動自在に嵌合した中間シャフト(伸縮軸)7が連結してある。
【0020】
この中間シャフト(伸縮軸)7の前端には、自在継手8を介して、ステアリングギヤ9が連結してある。また、中間シャフト(伸縮軸)7の雌軸6は、ダッシュボード10にシール部材11等を介して取付けてある。
【0021】
図2は、図1のX部の中間シャフト(伸縮軸)の拡大縦断面図である。図3は、図2の中間シャフト(伸縮軸)の雌軸端部に沿った横断面図である。図4は、図2に示した中間シャフト(伸縮軸)の要部の拡大断面図である。
【0022】
図5(a)(b)は、夫々、図1のX部の中間シャフト(伸縮軸)の拡大縦断面図であって、(a)は、通常取り付け状態を示す図であり、(b)は、雄軸の摺動部の端部が雌軸の抜止め部に当接している状態を示す図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、雌軸6の内周面には、雌スプラインが形成してあると共に、雄軸5は、その外周面に雄スプラインを形成したスプライン摺動部20と、このスプライン摺動部20より小径の軸部21とを備えている。
【0024】
このスプライン摺動部20には、非鉄材料のコーティング材、樹脂(例えば、ナイロン膜)がコーティングしてある。
【0025】
また、雌軸6は、その端部に、雄軸5の摺動部20が抜け出ることを防止するための抜止め部(突起部30)を備えている。
【0026】
本実施の形態では、図4に詳細に示すように、雌軸6の端面に、加締め加工により凹部31を形成し、この加締め加工による塑性加工によって、雌軸6の雌スプラインの谷部の端部に、突起部30を形成している。
【0027】
すなわち、図3に示すように、雌軸6の2箇所の端面に、加締め加工を施して、2箇所の凹部31(図2及び図4)を形成し、この加締め加工による塑性加工によって、雌軸6の雌スプラインの谷部の2箇所の端部に、盛り上がるように2個の突起部30を形成している。
【0028】
但し、凹部31、突起部30は、2個に限らず、1個でもよく、3個以上であってもよい。さらに、突起部30は、上記のように、加締め加工の塑性加工により形成してもよいが、切削加工により形成してもよい。
【0029】
また、特に図示しないが、雌軸6の雌スプラインの山部の端面に、凹部31を加締め加工による塑性加工をすることによって、雌スプラインの山部の側面(又は両側面)に、突起部30(抜止め部)が形成してあってもよい。すなわち、雌軸6の雌スプラインの山部の端面に、凹部31を加締め加工による塑性加工をすることによって、雌スプラインの谷部の側面(又は両側面)に、突起部30(抜止め部)が形成してあってもよい。
【0030】
摺動部20は、突起部30(抜止め部)側の部位20aでは、非鉄材料(樹脂)をコーティングすることなく、露出してある。
【0031】
摺動部20の露出部20aの尾根部は、テーパー形状で、コーティングしてある樹脂がもともと塗られていたものを、機械加工等で剥ぎ取って地金がむき出しの状態になっているように構成してあるか、又は、樹脂コーティング時に地金がむき出しになるように構成してある。
【0032】
なお、図4において、摺動部20の露出部20aの面取り角度がαであり、突起部30(抜止め部)の傾斜角度がαであると、α≦βに設定してある。
【0033】
さらに、図5(a)において、摺動部20の露出部20aの径がφAであり、一対の抜け止め部30の径がφBであり、軸部21の径がφCであるとすると、φA>φB>φCに設定してある。
【0034】
このように、本実施の形態では、摺動部20は、雌軸6の突起部30(抜止め部)側の部位20aでは、非鉄材料(樹脂)をコーティングすることなく、露出してある。従って、図5(b)に示すように、雄軸5を雌軸6から無理に引き抜こうとしたとしても、摺動部20の端部は、その露出した露出部(地肌部分)20aが突起部30(抜止め部)に係止し、従来のように樹脂コーティングした部分が抜止め部に係止することがないことから、突起部30(抜止め部)に圧接して固着するといったことを効果的に防止することができる。
【0035】
なお、本来の目的は、雄軸5が雌軸6より抜け出さないためのものであるが、金属同士の接触により、雄軸5と雌軸6の食付きが起こりにくい。
【0036】
以上から、本実施の形態は、雄軸5、雌軸6共に金属同士の接触となっているから、食付き防止の効果がある。
【0037】
また、本発明は、樹脂コートならば雌軸、雄軸もしくはその相手が、雌軸の外管チューブの内側の通過できる形状の関係であれば、二平面形状、多角形でもこの効果は、発揮できる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1によれば、摺動部は、軸方向において雌軸の抜止め部側の部位では、非鉄材料(樹脂)をコーティングすることなく、金属が露出してある。従って、雄軸を雌軸から無理に引き抜こうとしたとしても、摺動部は、その露出した金属地肌部分が金属の抜止め部に係止し、従来のように樹脂コーティングした部分が抜止め部に係止することがないことから、抜止め部に圧接して固着するといったことを効果的に防止することができる。
【0040】
また、請求項1によれば、前記抜止め部は、前記雌軸の内周面の、スプラインもしくはセレーションの少なくとも 1 つの谷部空間内に引用文献2は方向に突出していて、前記雄軸が抜け出ることを防止する抜止め部が加締め加工により形成されている。
【0041】
さらに、請求項2によれば、好適には、前記雌軸の端面に、加締め加工により前記抜止め部を形成するために形成された少なくとも一つの凹部を設けている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を適用した自動車の操舵機構部の側面図である。
【図2】図1のX部の中間シャフト(伸縮軸)の拡大縦断面図である。
【図3】図2の中間シャフト(伸縮軸)の雌軸端部に沿った横断面図である。
【図4】図2に示した中間シャフト(伸縮軸)の要部の拡大断面図である。
【図5】(a)(b)は、夫々、図1のX部の中間シャフト(伸縮軸)の拡大縦断面図であって、(a)は、通常取り付け状態を示す図であり、(b)は、雄軸の摺動部の端部が雌軸の抜止め部に当接している状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングホイール
4 自在継手
5 雄軸
6 雌軸
7 中間シャフト(伸縮軸)
8 自在継手
9 ステアリングギヤ
10 ダッシュボード
11 シール部材
20 摺動部
20a 露出部(地肌部分)
21 軸部
30 突起部(抜止め部)
31 凹部
Claims (2)
- 金属製の雄軸と金属製の雌軸を相互に嵌合して車両のステアリングシャフトに組込み、当該雄軸は、雌軸に対して相対回転不能に且つ摺動自在にスプラインもしくはセレーション嵌合すると共に非鉄材料をコーティングした摺動部を備えた車両ステアリング用伸縮軸において、
前記雌軸は、その端部でスプラインもしくはセレーションの少なくとも 1 つの谷部空間内に突出していて、前記雄軸が抜け出ることを防止する抜止め部が加締め加工により形成されており、前記摺動部の、軸方向において当該抜止め部側の部位は、前記雄軸が抜け方向に移動するとき前記抜止め部と金属対金属の接触をするよう、非鉄材料をコーティングすることなく、露出してあることを特徴とする車両ステアリング用伸縮軸。 - 前記雌軸の端面に、加締め加工により前記抜止め部を形成するために形成された少なくとも一つの凹部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両ステアリング用伸縮軸。
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