JP4175072B2 - 杭頭結合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の下部に設置されるフーチングと、このフーチングの下部に設置されて構造物を支持する杭との結合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、柱脚、橋脚等の下部工であるフーチングとその支持杭(鋼管杭、場所打ち杭等)との結合構造には、次の三通りがある。
▲1▼ 杭頭固定度を剛結合に近くする結合構造
この結合構造は、現在、土木・建築分野において最も一般的な杭頭結合構造である。
【0003】
図11は、杭体に設けた鉄筋をフーチング内に埋め込むことにより定着する方法を示しており、(a)杭体の内部の中詰コンクリートに配筋する場合や、(b)杭体の外周部に溶接等により配筋する場合があるが、さらに杭体の内部と外部の双方に配筋する場合もある。
【0004】
図12は、杭体を直接フーチング内に埋め込むことにより定着する方法を示している。
【0005】
図11および図12において、1は柱、3は柱1の下部に形成された鉄筋コンクリート製のフーチング、5は頭部をフーチング3に埋め込むとともに地中に埋設された杭である。
【0006】
杭頭を剛結合とした場合、図13に示すとおり、他の結合条件に比較して杭頭曲げモーメントMtが大きくなるため、杭サイズおよびフーチングや基礎梁の配筋量の増大などの対処が必要であり、コストの面でも、施工性の面でも不利である。特に支持力が大きい杭の場合、杭頭曲げモーメントが過大となり、杭頭部の設計が困難になることがある。
【0007】
ここで、杭頭固定度αrは次式で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
αr:杭頭固定度
EI:杭の曲げ剛性
β:杭の特性値で、杭の径Dと曲げ剛性EIと地盤バネ定数kとにより、
(kD/4EI)1/4で決定される係数
Kp:杭頭部の回転バネ剛性
▲2▼ 杭頭固定度をピン結合に近くする結合構造
杭頭部に生じる曲げモーメントを低減するため、上部構造物に対して杭頭が回転できるように結合し、杭頭の曲げモーメントを開放するようにした図14(a)に示すようなピン結合構造(例えば、特許文献1参照。)や、上部構造物に対して杭頭がすべり移動できるように結合し、杭頭の曲げモーメントを開放するようにした図14(b)に示すようなローラー結合構造(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0010】
杭頭結合部をピン結合とすれば、剛結合の場合と比較して杭頭変位は大きくなるものの、杭体に作用する曲げモーメントが軽減され、杭本体について経済的な設計が可能となるが、回転機能やスライド機能などを有した複雑な構造であるため、耐久性や施工面、コスト面で問題がある。
【0011】
また、構造上、杭と上部構造物との連続性が絶たれていることから、特に大規模地震時などにおいて不安定な構造になりやすいという懸念がある。
【0012】
さらに、杭頭結合部に作用する荷重状態(押込み、引抜き、軸力の大きさ)によって、杭頭結合部の回転剛性が変化するため、それを適切に設計評価するのが困難なのも問題である。
▲3▼ 杭頭固定度を半剛結合とする結合構造
前述のようなピン結合構造に対して、より安定でかつシンプルな杭頭結合構造を得るため、杭の上端部を1本または複数本の細径の棒状体に置き換え、杭頭結合部を剛結合とピン結合の中間の状態(半剛結合)として支持する結合構造である(例えば、特許文献3または特許文献4参照。)。
【0013】
この方式では、杭頭結合部の回転剛性が、荷重状態(押込み、引抜き、軸力の大きさ)による影響をそれほど受けず、ほぼ一定に保たれる。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−073391号公報
【0015】
【特許文献2】
特開2001−303588号公報
【0016】
【特許文献3】
特公平08−006336号公報
【0017】
【特許文献4】
特開2001−159142号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図15に示すような前述の特許文献3の例では、以下のような問題点がある。
【0019】
この方式を鋼管杭の杭頭結合構造に適用する場合、外周面に複数枚のリブ33、34を取り付けた結合棒状体32を鋼管杭31の上端内部に挿入してリブ34と鋼管杭31の内面とを接合し、リブ34を介して上部構造物荷重を鋼管杭31に伝達する構造となっているが、この構造で荷重を伝達するためには、溶接等により十分な結合面を確保することが必要と考えられ、材料費、施工費ともに高価になる。
【0020】
さらに、地震時等において大きな水平せん断力が作用した場合、リブ34を介して集中荷重が鋼管杭31に作用するため、局部座屈等が生じ易く、弱点となる可能性がある。
【0021】
また、この構造では、鋼管杭31と結合棒状体32とは直接接合されており、結合棒状体32の端部は回転固定条件となることから、鋼管杭31本体と同等の支持力を維持させ、かつ杭頭結合部の固定度を図13に示した半剛結合に近くするためには、結合棒状体32の露出部35を相当長くする必要がある。そのため、大規模地震時等において結合棒状体32の部分で破壊が発生した場合、構造物の転倒等の致命的な被害を招くおそれがある。
【0022】
また、上部構造基礎部のコンクリートへの埋込み部において、水平せん断力に対し、特に基礎部コンクリートの下端部36でコンクリートに作用する応力度が大きくなるため、コンクリートが破壊、欠損する可能性がある。この点は、前述の特許文献4の例でも同様の懸念がある。
【0023】
また、この特許文献4の構造では、結合棒状体の露出部において結合棒状体が腐食し、所定の断面力、耐久性が得られないおそれがある。この点は、特許文献3の例では、複数層のコンクリート製等のリングで結合棒状体32の露出部35を覆うことで保護しているが、リング間の隙間から土中水が混入するため完全な防食は困難である。
【0024】
本発明は、杭頭結合構造における上述のような問題点を解決するためになされたものであり、上部構造物を確実に支持し、地震力に対抗できるとともに、施工性や経済性にも優れた上部構造物との間の杭頭結合構造を提供することを目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明は次のような構成を有する。
[1]フーチングと基礎杭の杭頭との結合構造であって、外径が前記杭頭よりも小さく、中央部の外周面に防食・緩衝材が設けられた1本または複数本の鋼製結合部材の、前記防食・緩衝材が設けられた部分の一部を含む上半部および下半部を、それぞれ前記フーチングの下端部および前記杭頭の上端部を構成するコンクリート中に埋設するとともに、前記フーチングの下端面と前記杭頭の上端面との間に所定の隙間を設けたことを特徴とする杭頭結合構造。
[2]鋼製結合部材の両端もしくは一端に、外径が該鋼製結合部材よりも大きく、かつ杭頭よりも小さい鋼製端板を装着したことを特徴とする前項[1]に記載の杭頭結合構造。
[3]鋼製結合部材の上端部上方のフーチングコンクリート中に、該鋼製結合部材よりも断面積が大きい補強鋼板を埋設したことを特徴とする前項[1]に記載の杭頭結合構造。
[4]鋼製結合部材の周囲のコンクリート中に、鉄筋を配設したことを特徴とする前項[1]〜[3]のいずれかに記載の杭頭結合構造。
[5]所定規模以上の地震発生時に、杭頭結合部に大きな変形が生じたとき、フーチングの下端面と杭頭の上端面とが接触するように、隙間を設定したことを特徴とする前項[1]〜[4]のいずれかに記載の杭頭結合構造。
[6]フーチングの下端面と杭頭の上端面との間の隙間に、弾性係数がコンクリートの1/10以下で、かつ難透水性の材料を充填したことを特徴とする前項[1]〜[4]のいずれかに記載の杭頭結合構造。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の説明図である。本実施形態では、杭体を鋼管杭とした場合を示す。
【0027】
本実施形態は、フーチング3と杭5とを、両者の間に設けた杭5よりも小径の鋼製結合部材21を介して結合する構造であって、この鋼製結合部材21の上端側および下端側を、それぞれ所定長さだけフーチング3および杭5に挿入し、鋼製結合部材21とフーチング3とはフーチングコンクリート6を介して、また、鋼製結合部材21と杭5とは中詰コンクリート13を介して接続するようにしたものである。
【0028】
前記鋼製結合部材21は、杭5本体よりも曲げ剛性が相当小さく、かつ同等の鉛直方向支持力を有する中実または中空部材であるが、フーチング3の下端面と杭5の上端面との間に隙間22を設けることで半剛結合構造とすることができ、従来の剛結合構造に比較して杭頭部に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0029】
さらに、杭頭部における所定の回転剛性を維持しつつ、埋込み部コンクリートの破壊を防止し、かつ鋼製結合部材21の腐食を防ぐため、鋼製結合部材21の中央部の外周面には、前記隙間22に当たる部分を含む所定の範囲に、ゴム、樹脂、またはアスファルト等の弾性材料からなる防食兼緩衝材10を巻き設ける。
【0030】
また、図2に示すように、鋼製結合部材21にずれ止め部材14を設けることにより、鋼製結合部材21をフーチングコンクリート6および中詰コンクリート13に定着させると同時に、引抜き力作用時にこれを伝達することができる。このずれ止め部材14としては、外周リブの付いた部材やスタッドボルト等を用いてもよい。
【0031】
なお、必要に応じて杭5の内面にずれ止め部材11を設けることにより、上部構造物の荷重の、中詰コンクリート13を介しての杭5への伝達を補助することができる。
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2の説明図である。
【0032】
理想的な半剛結合の回転剛性を得るためには、鋼製結合部材21の露出部分(フーチング3と杭5との隙間)の相当長さΔが必要になるが、大規模地震時等において鋼製結合部材21に破壊が生じた場合、構造物の転倒等の致命的な被害を招くおそれがある。
【0033】
本実施形態では、鋼製結合部材21の周囲に空隙を形成しながらフーチングコンクリート6を下方まで打設し、鋼製結合部材21の露出部分(フーチング3と杭5との隙間)の長さΔを維持しつつ、フーチング3と杭5との隙間22を極力小さくすることで、大規模地震時において構造物の転倒等の致命的な被害を受けない、安定性の高い構造を得ることができる。
【0034】
前記空隙(鋼製結合部材21とフーチングコンクリート6または中詰コンクリート13との隙間)を形成する方法として、予め樹脂等からなる円筒を鋼製結合部材21の外周面の所定位置に設置し、これを型枠としてコンクリートを打設してもよい。この場合、樹脂等からなる円筒は設置したままでよく、鋼製結合部材21に対して防食効果も発揮する。
【0035】
なお、フーチング3と杭5との隙間22には、フーチングコンクリート6の打設時等における施工性や杭5および鋼製結合部材21の腐食を考慮し、図4に示すように、発泡スチロールやウレタン等の剛性の小さい充填材25を充填してもよい。
(実施形態3)
フーチングコンクリート6に作用する支圧力およびせん断力に対し、発生応力度を低減する構造の実施例を図5に示す。
【0036】
地震時には、図6に示すような支圧応力およびせん断応力がフーチングコンクリート6に作用し、鋼製結合部材21の径φが小さいほど作用応力度は大きくなるが、図5に示すように、鋼製結合部材21に、より大きい外径を有する鋼製端板8を取り付けることにより、コンクリートに発生する鉛直支圧応力度、押抜きせん断応力度および引抜きせん断応力度を軽減することができる。
【0037】
さらに、図7に示すように、水平方向負荷が大きい場合には、鋼製結合部材21のフーチング埋込み部の周囲に、主筋と横拘束筋とからなる鉄筋かご27を配設する構造とし、鉄筋による拘束効果で鋼製結合部材21の周辺のコンクリート強度を増すことにより、フーチングに作用する水平方向の支圧応力およびせん断応力に対抗する。なお、予め鋼製端板8に鉄筋かご27を固定した状態で施工してもよい。
【0038】
さらに、図8に示すように、鉛直方向荷重が大きい場合には、鋼製結合部材21の上端部上方のフーチングコンクリート中に、より大きい外径を有する補強鋼板28を所定の間隔で埋設することにより、フーチングの支圧強度およびせん断強度を高めることができる。補強鋼板28は一枚でも効果があるが、複数枚重ねることで効果が高まり、信頼性が高くなる。なお、予め補強鋼板28をフーチングの配筋に組み込んでおくことも可能である(図9参照)。
(実施形態4)
本発明では、複数本の鋼製結合部材21を離散配置することも可能である。
【0039】
図10は実施形態4として4本の鋼製結合部材21を用いた例を示している。
【0040】
この場合、4本の鋼製結合部材21の合計断面が杭5本体同等の鉛直強度、せん断強度を持つように断面サイズを決める必要がある。
【0041】
また、防食兼緩衝材10は、複数本の鋼製結合部材21にそれぞれ別個に巻き付けてもよいが、図10に示すように、複数本の鋼製結合部材21の全体を包むように巻き付けて、予め複数本の鋼製結合部材21を一体化しておいてもよい。このようにすると、コンクリートの作用応力の緩和、鋼製結合部材21の腐食防止に加えて、鋼製結合部材21の杭頭断面内での配置が容易になり施工性を高めることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上に述べた本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1)本発明に係るフーチングと杭との結合構造では、従来の剛結合に比較して杭頭部での作用曲げモーメントを大幅に低減することができる。
(2)鋼製結合部材に防食兼緩衝材を巻き設けることにより、埋込み部コンクリートの破壊を防止し、良好な耐久性を得ることができる。
(3)鋼製結合部材の周囲に空隙を形成しながらフーチングコンクリートを下方まで打設し、フーチングと杭との隙間を極力小さくすることにより、大規模地震時においても構造物の転倒等の致命的な被害を受けない、安定性の高い構造を得ることができる。
(4)鋼製結合部材の両端もしくは一端に鋼製端板を固定することにより、コンクリートに作用する鉛直方向応力を緩和できる。さらに、鋼製結合部材の周囲に鉄筋かごを配設することにより、鋼製結合部材周辺のコンクリート強度が高まり、曲げ応力に対する抵抗が増大する。
(5)鋼製結合部材と杭本体との結合において、杭頭内に中詰コンクリートを打設し、コンクリートを介して水平せん断力を伝達することにより、鋼製結合部材と杭本体の局部破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の説明図
【図2】本発明の実施形態1におけるずれ止め部材の説明図
【図3】本発明の実施形態2の説明図
【図4】本発明の実施形態1における充填材の説明図
【図5】本発明の実施形態3の説明図
【図6】フーチングに作用する支圧応力およびせん断応力の説明図
【図7】本発明の実施形態3の説明図
【図8】本発明の実施形態3の説明図
【図9】本発明の実施形態3における補強鋼板のフーチング配筋への組込み例を示す説明図
【図10】本発明の実施形態4の説明図
【図11】従来の杭頭結合構造を示す説明図
【図12】従来の杭頭結合構造を示す説明図
【図13】杭の曲げモーメント分布を示すグラフ
【図14】従来の杭頭結合構造を示す説明図
【図15】従来の杭頭結合構造を示す説明図
【符号の説明】
1 柱
3 フーチング
5 杭
6 フーチングコンクリート
8 鋼製端板
9 フーチング配筋
10 防食・緩衝材
11 ずれ止め部材
13 中詰コンクリート
14 ずれ止め部材
21 鋼製結合部材
22 隙間
25 隙間充填材
27 鉄筋かご
28 補強鋼板
Claims (6)
- フーチングと基礎杭の杭頭との結合構造であって、外径が前記杭頭よりも小さく、中央部の外周面に防食・緩衝材が設けられた1本または複数本の鋼製結合部材の、前記防食・緩衝材が設けられた部分の一部を含む上半部および下半部を、それぞれ前記フーチングの下端部および前記杭頭の上端部を構成するコンクリート中に埋設するとともに、前記フーチングの下端面と前記杭頭の上端面との間に所定の隙間を設けたことを特徴とする杭頭結合構造。
- 鋼製結合部材の両端もしくは一端に、外径が該鋼製結合部材よりも大きく、かつ杭頭よりも小さい鋼製端板を装着したことを特徴とする請求項1に記載の杭頭結合構造。
- 鋼製結合部材の上端部上方のフーチングコンクリート中に、該鋼製結合部材よりも断面積が大きい補強鋼板を埋設したことを特徴とする請求項1に記載の杭頭結合構造。
- 鋼製結合部材の周囲のコンクリート中に、鉄筋を配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の杭頭結合構造。
- 所定規模以上の地震発生時に、杭頭結合部に大きな変形が生じたとき、フーチングの下端面と杭頭の上端面とが接触するように、隙間を設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の杭頭結合構造。
- フーチングの下端面と杭頭の上端面との間の隙間に、弾性係数がコンクリートの1/10以下で、かつ難透水性の材料を充填したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の杭頭結合構造。
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