JP4173356B2 - 燃料電池システムの起動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池自動車等に用いられる燃料電池システムの起動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、固体高分子膜型の燃料電池を備えた燃料電池システムとしては、例えば、特許文献1に示されているように、水素貯蔵装置や空気供給装置を備え、これらの装置から燃料電池に反応ガス(水素ガス、酸化剤ガス)を供給して、これらガスの酸化還元反応にかかる化学エネルギを直接電気エネルギとして抽出するようにしたものがある。
【0003】
また、燃料電池が搭載された燃料電池車両として、燃料としての水素ガスや酸化剤としての空気等のガス供給を伴う燃料電池の出力応答性を補うために、例えばバッテリやキャパシタ等からなる蓄電装置を備えることで、車両各部への電力供給の応答性を向上させたものが知られている。この種の燃料電池車両としては、例えば、特許文献2に記載されているように、燃料電池と負荷との間に電流制限器を介装して、該電流制限器により燃料電池の出力電流を制御可能としたものが知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−209469号公報
【特許文献2】
特開2001−359204号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料電池の出力電流が電気負荷に供給可能な状態で燃料電池を起動すると、反応ガスが十分に供給されていない燃料電池起動時において、燃料電池で出力可能な電流よりも大きな電流が電気負荷に供給される場合があり、燃料電池の性能を維持する上で好ましくない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、起動時における燃料電池の保護を厚くして、燃料電池に対する信頼性を高めることができる燃料電池システムの起動方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に係る発明は、燃料電池の発電電力を電流制限器を介して電気負荷(例えば、後述する実施の形態における駆動用モータ5、エアコンプレッサ用モータ11等の電気負荷10)に接続し、燃料電池が所定の運転状態になった時に該電流制限器を作動させて電気負荷への供給電流を制限する燃料電池システムの起動方法において、燃料電池の発電開始時に、反応ガスを供給して発電を開始させ、燃料電池の発電電圧が所定値以上に達した時に、制限抵抗(例えば、後述する実施の形態におけるプリチャージ抵抗R)を介して該電流制限器内のコンデンサ(例えば、後述する実施の形態におけるコンデンサ17)を充電するプリチャージを行い、プリチャージ中は前記電流制限器を停止して燃料電池から該電気負荷への電力供給を停止させ、プリチャージ完了後に、電流制限器を作動させて燃料電池から該電気負荷への電力供給を開始することを特徴とする燃料電池システムの起動方法である。
【0008】
この発明によれば、燃料電池のセルの電圧が所定値以上に達するまでプリチャージを行わないため、反応ガスが十分供給されていない燃料電池の発電開始時において、プリチャージにより燃料電池から電流が流れることを防止でき、燃料電池の性能劣化を防止できる。加えて、プリチャージ中は燃料電池から電気負荷への電力供給を停止させているため、プリチャージ中に燃料電池で出力可能な電流よりも大きな電流が電気負荷に供給されることを防止できる。従って、燃料電池起動時における燃料電池に対する信頼性を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、燃料電池を車両に搭載した場合について説明する。
図1は、本発明の適用される燃料電池システムの概略構成図である。同図に示したように、本実施の形態における燃料電池システムは、燃料電池3とキャパシタ4を電源装置として備えている。
【0010】
燃料電池3は、固体高分子膜をアノードとカソードとで挟持してなる燃料電池セルを、複数積層させて一体化させた構造となっている。前記燃料電池3のアノードには例えば高圧水素タンク9が接続され、前記水素タンク9からアノードに水素が供給される。また、燃料電池3のカソードにはエアコンプレッサ8が接続されており、前記エアコンプレッサ8からカソードに空気(酸素)が供給される。アノードの反応面に水素が供給されると、ここで水素がイオン化され、固体高分子電解質膜を介してカソードの方に移動する。この間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。
【0011】
前記燃料電池3は、プリチャージ回路12に接続されている。図2は図1に示したプリチャージ回路12を示すブロック図である。同図に示したように、プリチャージ回路12は、並列に接続されたメインコンタクタ13とプリチャージコンタクタ14とを備えている。前記コンタクタ13,14は、燃料電池3の正極、負極とに接続路を介して接続されている。燃料電池3の正極とコンタクタ13,14の接続路には、燃料電池3からコンタクタ13、14に電流を流す向きに、ダイオードDが設けられている。また、燃料電池3の正極とプリチャージコンタクタ14の接続路には、前記ダイオードDの下流側にプリチャージ抵抗Rが設けられている。そして、これらのコンタクタ13,14はそれぞれ開閉可能なスイッチを備えており、後述する制御装置(ECU)7により開閉制御される。これらのスイッチを開閉制御することにより、後述する電流制限器6に燃料電池3からの電流が供給もしくは遮断される。
【0012】
前記電流制限器6はプリチャージ回路12を介して前記燃料電池3に接続されている。前記電流制限器6は、キャパシタ4や駆動用モータ5、エアコンプレッサ用モータ11にも接続され、燃料電池3が所定の運転状態の時、例えば発電電圧の低下、反応ガスの供給不足等の発電不調時に、後述する制御装置7からの所定のスイッチング信号により、燃料電池3から電気負荷10への供給電流を制限して燃料電池2を保護するようになっている。本実施形態においては、これらのモータ5,11が燃料電池3の電気負荷10を構成している。
前記エアコンプレッサ用モータ11は前記エアコンプレッサ8に連結され、前記エアコンプレッサ用モータ11によりエアコンプレッサ8が駆動される。したがって、燃料電池3で発電する電力の一部は、反応ガス(酸化剤ガス)を供給するエアコンプレッサ8を駆動するために使用される。
【0013】
キャパシタ4は例えば電気二重層キャパシタとされ、前記燃料電池3の発電電流で充電されるとともに、該キャパシタ4が蓄えた電力を駆動用モータ5や前記エアコンプレッサ用モータ11に供給して燃料電池3の発電を補助する機能も備えている。また、キャパシタ4は、前記電流制限器6や電気負荷10に開閉装置16を介して接続され、開閉装置16のスイッチ(図示せず)を開閉制御することにより、キャパシタ4からの電流が電気負荷10に供給もしくは遮断される。
【0014】
燃料電池3およびキャパシタ4に接続された駆動用モータ5は、この燃料電池3やキャパシタ4から供給された電力を駆動力としている。この駆動力は、リダクション或いはトランスミッションT/Mを介して駆動輪(図示せず)に伝達され、これにより、燃料電池車両が走行する。
【0015】
前記燃料電池3やプリチャージ回路12、電流制限器6、電気負荷10、開閉装置16には制御装置(ECU)7が接続してある。この制御装置7は、アクセルペダルの踏み込み量Apや車速VcやイグニッションスイッチIGの開閉等から電気負荷10に必要な電力を算出して、この算出した電力に基づいてこれらの機器3、12、6、10、16にそれぞれ制御信号を送信する。
【0016】
また、前記燃料電池3には、燃料電池を構成する燃料電池セルの電圧を検出するセル電圧検出センサ15が設けられている。このセンサ15にて検出したセルの電圧が制御装置7に送信されると、制御装置7は前記電圧に基づいて燃料電池3の起動制御を行う。これについて図3を用いて説明する。
【0017】
図3は本実施の形態における燃料電池システムの起動方法を示すフローチャートである。同図に示したように、ステップS10で、燃料電池3の起動制御を開始すると、ステップS12で、キャパシタ4の開閉装置16の制御を行い、キャパシタ4の電力を電気負荷10に供給可能とする。そして、ステップS14で、キャパシタ4の開閉装置16の接続が終了したかどうかの判定を行い、判定結果がYESの場合はステップS16の処理に進み、判定結果がNOの場合には再度ステップS14の処理を行う。
【0018】
そして、ステップS16で、燃料電池システム起動処理を開始する。この処理は、水素タンク9、エアコンプレッサ8から燃料電池3に水素ガス、酸化剤ガスを供給することにより行う。このとき、エアコンプレッサ8に連結されたエアコンプッサ用モータ11は、キャパシタ4からの電力により駆動される。ついで、ステップS18で、燃料電池システム起動処理が完了したかどうかの判定を行う。この起動処理完了の判定は、セル電圧検出センサ15で検出された燃料電池3のセル電圧が所定値以上かどうかを制御装置7で判定することにより行う。このとき、制御装置7の制御信号により、プリチャージ回路12の両コンタクタ13、14のスイッチは開かれ、プリチャージを行わないようにする。これにより、反応ガスが十分に供給されていない燃料電池3の発電開始時において、プリチャージにより燃料電池3から電流が流れることを防止でき、燃料電池3の性能劣化を防止することができる。このステップS18の判定結果がYESの場合には、ステップS20の処理に進み、判定結果がNOの場合には、再度ステップS18の処理を行う。
【0019】
ステップS20では、燃料電池3のプリチャージ制御を行う。この制御はプリチャージ回路12を接続することにより行う。まず、プリチャージ回路12のプリチャージコンタクタ14のスイッチを閉じる制御を行い、燃料電池3の電流をプリチャージコンタクタ14を介して電流制限器6の入力側のコンデンサ17(図2参照)に供給してプリチャージを行う。このとき、電流制限器6により燃料電池3と電気負荷10との接続は遮断されている。このように、プリチャージ中は燃料電池3から電気負荷10への電力供給を停止させているため、プリチャージ中に燃料電池3で出力可能な電流よりも大きな電流が電気負荷10に供給されることを防止できる。
【0020】
ステップS22で、燃料電池3のプリチャージが完了したかどうかの判定を行い、判定結果がYESであればステップS24の処理に進み、判定結果がNOであればステップS22の処理を継続して行う。
そして、ステップS24では、プリチャージコンタクタ14のスイッチを開くとともに、メインコンタクタ13のスイッチを閉じる制御を行う。そして、電流制限器6を作動させて、燃料電池3で発電した電流を電気負荷10に供給する制御を行い、一連の処理を終了する。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態における燃料電池起動方法によれば、燃料電池起動時における燃料電池3に対する信頼性を向上させることができる。
【0022】
なお、本発明の適用対象は、上述した燃料電池自動車に好適に用いることができるが、他の用途にも適用することができるのはもちろんである。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、起動時の燃料電池からプリチャージによる電流が流れることを防止でき、燃料電池の性能劣化を防止できる。加えて、プリチャージ中に燃料電池で出力可能な電流よりも大きな電流が電気負荷に供給されることを防止できるため、燃料電池起動時における燃料電池に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る燃料電池が適用される燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】 図1に示したプリチャージ回路を示すブロック図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの起動方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
3 燃料電池
5 駆動用モータ
6 電流制限器
10 電気負荷
11 エアコンプレッサ用モータ

Claims (1)

  1. 燃料電池の発電電力を電流制限器を介して電気負荷に接続し、燃料電池が所定の運転状態になった時に該電流制限器を作動させて電気負荷への供給電流を制限する燃料電池システムの起動方法において、
    燃料電池の発電開始時に、
    反応ガスを供給して発電を開始させ、
    燃料電池の発電電圧が所定値以上に達した時に、制限抵抗を介して該電流制限器内のコンデンサを充電するプリチャージを行い、
    プリチャージ中は前記電流制限器を停止して燃料電池から該電気負荷への電力供給を停止させ、
    プリチャージ完了後に、電流制限器を作動させて燃料電池から該電気負荷への電力供給を開始することを特徴とする燃料電池システムの起動方法。
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