JP4173237B2 - 酢酸製造のための無水カルボニル化法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、第VIII族貴金属カルボニル化触媒の存在下でのメタノール及び/又はジメチルエーテルのカルボニル化による酢酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酢酸は良く知られた貴重な化学商品であり、例えば保存料として及び酢酸エステル製造の中間体として使用される。工業的規模で酢酸は、メタノールを高温高圧で、例えばロジウム触媒及びヨウ化物含有助触媒の存在下で、カルボニル化することにより製造される。この方法で、メタノールから酢酸へのカルボニル化は、メタノール、一酸化炭素、触媒、ヨウ化物助触媒及び再循環材料をカルボニル化反応器に継続的に供給し、一方同時に酢酸含有生成物流を継続的に引き抜くことにより、定常状態の条件下で実施される。典型的な定常状態条件下で、カルボニル化反応は14−15%の定量の水の存在下で実施して、良好な反応速度を確保している(例えばEP−A−55618及びInd.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.16,281−285(1977年)参照)。反応混合物中のかかる大量の水の結果、資本的及び可変のコスト上のペナルティーが伴う大きな乾燥設備が必要になる。モンサント(Monsanto)法の導入以来、とりわけ現存するプラントの生産性が増大しそして新しいプラントへのCAPEXが減少する可能性がある、低水メタノールカルボニル化技術の開発に努力が集中した。この目的にいくらかの進歩がなされた。例えば、ビーピーケミカル社のCATIVA(商標)法は反応器で約2−8重量%の水を用いて操業して、現存する蒸留容量への負荷の減少を利用して、プラント生産性を増大させている。しかしながら、まだかなりの乾燥が必要である。メタノールのカルボニル化による酢酸の製造用の反応組成物中に水が存在することは、触媒活性及び安定性を維持するために必要であるか、あるいは非常に望ましいことが一般に認識されている。それでも、水の必要性を減少させるか又は除くことは、いまだに望ましい。
【0003】
例えばGB−A−1468940から、モノカルボン酸の無水物が、式:RCOORのカルボン酸エステルまたは式:RORのエーテルを、その場でまたは別個の段階で形成された式:RCOXのアシルハライドと実質的に無水条件下で反応させることにより、製造できることが知られている。上記式中、Xはヨウ素または臭素であり、複数のRは同じでも異なっても良く、各Rは一価のヒドロカルビル基または置換一価の炭化水素基であり、各置換基は不活性である。該アシルハライドは、式:RX(R及びXは前に定義した通りである)のハライドを超大気圧下でカルボニル化することにより製造し得、そしてカルボニル化は触媒として第VIII族貴金属、即ちイリジウム、オスミウム、白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウム、及び任意に第IA、IIA、IIIA、IVB、VIB族の原子量5より大きい元素、第VIII族の非−貴金属の元素、及び周期律表のランタニド及びアクチニド族の金属から選ばれた促進剤の存在下で行うことができ、その触媒中で適した金属はリチウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル及びアルミニウムである。GB−A−1468940中で、カルボニル化反応を実質的に無水の条件下で実施すべきであること、即ち反応体は本質的に乾燥していなければならないこと、が述べられている。
【0004】
無水酢酸を正味の酢酸同時生成を伴ってまたは伴わずに製造することも知られている。したがって、本出願人のEP−A−87870は、メタノールおよび一酸化炭素から、下記の段階を含む一連のエステル化、カルボニル化および分離段階により無水酢酸を、正味の酢酸同時生成を伴ってまたは伴わずに製造する方法を開示する:
(1)メタノールを再循環酢酸とエステル化段階で反応させて、主として酢酸メチル、水および任意に未反応メタノールを含むエステル化生成物を形成する、
(2)該エステル化生成物から水の一部を除去する、
(3)まだ水を含むエステル化生成物を、カルボニル化段階で、触媒として遊離のまたは組合わされた金属カルボニル化触媒および促進剤として遊離のまたは組合わされたハロゲンの存在下で、一酸化炭素と反応させて、酢酸と無水酢酸とを含むカルボニル化生成物を形成する、
(4)生成物を分別蒸留によりカルボニル化供給物および揮発性カルボニル化促進剤成分、酢酸および無水酢酸フラクションを含む低沸点フラクションと、カルボニル化触媒成分を含む高沸点フラクションとに分離する、
(5)カルボニル化供給物およびカルボニル化促進剤成分を含む低沸点フラクションと、カルボニル化触媒成分を含む高沸点フラクションとをカルボニル化段階に再循環させる、そして
(6)酢酸フラクションの少なくとも一部をエステル化段階に再循環させる。
【0005】
この方法は、反応器組成物中にかなりの量の無水酢酸(10−18重量%)を用いて操業しても、無水酢酸と組合わされた酢酸を生成するにすぎない。
【0006】
酢酸を、低量の水または無水条件下でのカルボニル化により製造する方法が、例えばUS−A−5,281,751;EP−A−0097978およびEP−A−0173170から知られている。
【0007】
US−A−5,281,751は、メタノールを一酸化炭素と、ロジウム触媒、ヨウ化メチル、反応媒体1リットル当たり少なくとも約0.2モルの、ヨウ素対リチウムの原子比が1より大きいヨウ化リチウム、0から6.5%の水および酢酸メチルまたは酢酸メチルに変換可能な物質、例えば酢酸、無水酢酸および酢酸のエステル、の存在下で反応させることによる、酢酸の製造法を開示する。好ましくは水素を反応系に加えて、水素濃度を1ないし50モルパーセント、好ましくは2ないし10モルパーセントに維持する。
【0008】
EP−A−0097978は、式:R1CH2COOHおよび/またはR2COOHのカルボン酸と式:R1CH2COOHおよび/またはR2CH2COOHのカルボン酸とを共に、式:R1XR2(ここでXは、
【数1】
そしてR1、R2およびR3は同じようなまたは非類似のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルアルキルまたはアルクアリール基を表す)の1種またはそれ以上の化合物を一酸化炭素および水素と、ロジウム触媒およびヨウ素および/またはヨウ素源の存在下で反応させることにより同時製造する方法において、反応をほとんど無水条件下で且つ化合物R1XR21モル当たり少なくとも2モルの式R4COOH(該式中、R4はアルキル、シクロアルキル、アリール、アルアルキルまたはアルクアリール基を表す)のカルボン酸の存在下で実施することを特徴とする、方法を開示する。EP−A−0097978に開示された方法は、一酸化炭素および水素が多かれ少なかれ等モル量で添加される限り、同族体化カルボニル化またはヒドロカルボニル化法である。但し、二つの該化合物の間のモル比は広い範囲、例えば10:1から1:10の範囲、好ましくは1:0.5と1:3の間で変化し得る。
【0009】
最後に、EP−A−0173170は、金属としてのロジウムまたはその化合物、ヨウ化リチウムとヨウ化メチルとの混合物および特定のリン含有リガンドを含む触媒系の存在下で、一酸化炭素とメタノールとの反応により無水酢酸および無水酢酸とを製造する方法において、該反応を酢酸メチルまたは反応条件下で酢酸メチルに変換できる化合物、例えば無水酢酸、の存在下で実施することを特徴とする方法を開示する。該方法は温和な反応条件、例えば170℃までの温度、好ましくは50ないし160℃、更に好ましくは105ないし150℃、および31.5バールまでの圧力、好ましくは7から28バール、を特徴とする。ガス成分としての水素については述べられてなく、そしてリン含有リガンドは触媒の不可欠成分である。
【0010】
前述の開示で無水条件下での操業は費用のかかる水除去段階の必要性を除くことが認識されたが、無水酢酸がかなりの量で生成する事実は、その代わりに酢酸/無水酢酸の分離段階を必要とするようになるという事実を認識していない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、反応器内に淀む水濃度を最低にして酢酸を製造する改良法の要求が未だにある。
【0012】
【問題点を解決するための手段】
本発明者等は、酢酸が無水条件下で有利に製造できることを見いだした。
【0013】
従って本発明は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルと、一酸化炭素および9モル%未満の量の水素を含む気体状反応体とを、触媒として周期律表第VIII族の少なくとも1種の貴金属、補助触媒としてハロー化合物および触媒安定剤としてヨウ化物塩を含む触媒系の存在下で反応させることによる酢酸の製造法であって、メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび気体状反応体を、(i)1から35重量%の量の酢酸メチル、(ii)8重量%までの量の無水酢酸、(iii)3から20重量%の量のハロー化合物、(iv)1から2000ppmの量の第VIII族貴金属触媒、(v)I-としてのヨウ素イオンを0.5から20重量%与えるのに充分な量のヨウ化物塩、および(vi)該組成物の残量から成る酢酸、を含む液体反応組成物を維持したカルボニル化反応器に供給することを特徴とする製造法である。
【0014】
反応器内にずっと高濃度の定常無水酢酸が存在するEP−A−87870の方法と比較して、本発明の酢酸の製造法は下記の主な利益を与えることができる:
(i)酢酸−無水酢酸分離段階の必要性が実質的に減少または除去される;
(ii)エステル化セクションの大きさが減少できるかまたは除去できる;
(iii)カルボニル化速度を増加させることができる;
(iv)望ましくないポリマー生成を著しく低減または除去できる;
(v)非酸性副生物、例えばメシチルオキシド、の生成速度を低下させることができる;および
(vi)エチリデンジアセテート生成速度を低下させることができる。
【0015】
反応器内で高濃度の定常水にて酢酸を製造するモンサント(Monsanto)法、およびその後に開発された反応器内で低濃度の定常水での製造法と比べて、本発明の無水方法は、主として、重大な水分離段階の必要性が除去されるという点において有利である。本願方法はまた副生物カルボン酸、例えばプロピオン酸、の同時製造を低減または除去する。
【0016】
供給原料としてメタノール、ジメチルエーテル、またはメタノールとジメチルエーテルとの混合物を使用でき、該混合物は、例えばEP−A−566370またはUS−A−5,189,203の方法で得るのが適当である。
【0017】
気体状反応体は一酸化炭素と水素とを含み、それらは別々に添加しても、または組み合わせて添加してもよい。かなり高量の水素、即ち9モル%未満まで、を含む気体状反応体を使用できるが、水素の存在下で副生物として一般に形成されるエチリデンジアセテート(二酢酸エチリデン)を除去するために更に蒸留カラムを使用する必要性を生じる結果となり得る。しかしながら、気体状反応体中にできるだけ少量の水素を用いて操業するのが好ましい。気体状反応体中の水素の量は、生成物中に多量のエチリデンジアセテートが生じないような量であるのが適当である。水素に加えて、一酸化炭素は二酸化炭素および/または気体状の炭化水素、例えばメタン、を含んでもよい。例えば、上記のメタノール/ジメチルエーテル混合物の製造から得られた残留一酸化炭素/水素混合物を使用することが適当であろう。気体状反応体は0.01から2.5モル%の水素、例えば0.01から1.0モル%の水素、典型的には約0.5モル%の水素を含むのが適当であろう。
【0018】
触媒系は、元素の周期律表第VIII族の少なくとも1種の貴金属を含む。これらはオスミウム、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムとして定義される。ロジウムは好ましい金属であり、従って本願方法を以後、簡略化のためにロジウムを参照して記述する。
【0019】
液体反応組成物中の触媒系のロジウム成分は、該液体反応組成物に溶解性のいかなるロジウム含有化合物を含んでもよい。ロジウムは該液体反応組成物に、該組成物に溶解性の適当な形体でまたは溶解性の形体に変換可能な適当な形体で、添加することができる。該液体反応組成物に添加できる適当なロジウム含有化合物の例には、[Rh(CO)2Cl]2、[Rh(CO)2I]2、[Rh(Cod)Cl]2、塩化ロジウム(III)、塩化ロジウム(III)三水和物、臭化ロジウム(III)、ヨウ化ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)、ジカルボニルアセチルアセトン酸ロジウム(III)、RhCl3(PPh3)3、およびRhCl(CO)(PPh3)2が含まれる。ロジウムは液体反応組成物中に、該組成物の重量を基準にして300から900ppmの量で存在するのが好ましい。
【0020】
触媒系は更に、助触媒としてハロー化合物を含む。好ましいハロー化合物はヒドロカルビルハライド、好ましくはアルキルハライド、であり、それはそのまま添加するか、またはその場で形成できる。適当なアルキルハライドは、C1ないしC10、好ましくはC1ないしC6、更に好ましくはC1ないしC4のアルキルハライドである。ハライドの中で、ヨウ化物および臭化物が好ましく、そしてヨウ化物が更に好ましい。助触媒として好ましいのはヨウ化メチルである。ハロー化合物は好ましくは液体反応組成物中に、該組成物の重量を基準にして8から18重量%の量で存在する。
【0021】
触媒系は更に、促進剤として、ルテニウム、オスミウム、カドミウム、水銀および亜鉛の金属の少なくとも1種を遊離形体でまたは結合形体で含むことができる。好ましい促進剤はルテニウムであり、それは、例えばルテニウムII、IIIまたはIVの塩または複合体のような、反応組成物中に溶解するあらゆる適当な形体で添加し得る。典型的には、ロジウムに対する促進剤のモル比は0.1:1から10:1の範囲であろう。
【0022】
触媒系は更に、触媒安定剤として、ヨウ化物塩を含む。かかるヨウ化物塩はいかなる金属ヨウ化物、第4級アンモニウムヨウ化物塩または第4級リンヨウ化物塩であることもできる。好ましくは、金属ヨウ化物はアルカリ金属ヨウ化物またはアルカリ土類金属ヨウ化物、更に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムのヨウ化物、更にもっと好ましくはリチウムヨウ化物である。適当な第4級アンモニウムヨウ化物には、第4級アミン、ピリジン、ピロリジンまたはイミダゾール、例えばヨウ化N,N′−ジメチルイミダゾリウム、が含まれる。適当な第4級リンヨウ化物には、ヨウ化メチルトリブチルホスホニウム、ヨウ化テトラブチルホスホニウム、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム等が含まれる。かかるヨウ化物塩安定剤は例えばEP−A−0573189に記載されている。使用するヨウ化物塩の量は、I-として0.5から20重量%のヨウ素を与えるに充分な量である。
【0023】
典型的な触媒系は、ロジウムおよびリチウムを含み、そして多分促進剤としてルテニウムも含む。
【0024】
液体反応組成物は、(i)酢酸メチルを含み、それはメタノール反応体と酢酸生成物とのエステル化反応によってその場で形成されてもよい。酢酸メチルもまた一つまたはそれ以上の再循環流中で反応器に戻してもよい。酢酸メチルを反応器内の液体反応組成物に加えて、そこから除去された酢酸メチルを補うことが必要であろう。酢酸メチルは液体反応器組成物中に5から25重量%の量で存在するのが好ましい。
【0025】
液体反応組成物はまた、(ii)無水酢酸を8重量%までの量で、好ましくは5重量%の量で、更に好ましくは0.1重量%を越える量から3.0重量%までの量で含む。液体反応組成物中の定常濃度の無水酢酸は該組成物を無水に維持する。無水酢酸は該組成物中の酢酸メチルのカルボニル化によって、或いは多分、例えば(その場で形成された)ヨウ化アシルと酢酸メチルとの反応によって、形成され得る。
【0026】
(i)および(ii)に加えて、液体反応組成物は更に(iii)ハロー化合物および(iv)第VIII族貴金属、そして好ましくは触媒安定剤としてヨウ化物塩を含み、該組成物の残部は(v)酢酸からなる。
【0027】
本発明の方法は、バッチ式または連続式の工程、好ましくは連続式の工程、で操業し得る。
【0028】
本質的に無水酢酸を含まない酢酸が工程の生成物として回収され、無水酢酸が同時に回収されない。
【0029】
好ましい態様において、本発明は酢酸の無水製造法を提供し、該方法は下記の段階を含む:
(1)メタノールおよび/またはジメチルエーテル、並びに一酸化炭素および0.5モル%までの量の水素を含む気体状反応体をカルボニル化反応器に高温および高圧で供給し、該反応器内で下記を含む液体反応組成物を維持する:(i)12から21重量%の量の酢酸メチル、(ii)3重量%までの量の無水酢酸、(iii)9から16重量%の量のハロー化合物助触媒、(iv)500から800ppmの量のロジウム触媒、(v)7から14重量%の範囲の量のヨウ化物塩、(vi)ロジウムに対して0.1:1から5:1のモル比のルテニウム促進剤、および(vii)該液体反応組成物の残部から成る酢酸、
(2)実質的に純粋な酢酸を、該液体反応組成物を反応器から取り出し、そして取り出した該組成物中の酢酸を1回またはそれ以上のフラッシュおよび/または分別蒸留段階により該組成物のその他の成分から分離することにより回収する、および
(3)酢酸から分離したその他の成分を該カルボニル化反応器に再循環させる。
【0030】
更に好ましい態様において、本発明は酢酸の無水製造法を含み、該方法は下記の段階を含む:
(a)メタノール、および一酸化炭素と0.5モル%までの量の水素とを含む気体状反応体を高温および高圧に保持されたカルボニル化反応器に供給し、該反応器内で下記を含む液体反応組成物を維持する:(i)12から21重量%の量の酢酸メチル、(ii)3重量%までの量の無水酢酸、(iii)9から16重量%の量のヨウ化メチル助触媒、(iv)500から800ppmの量のロジウム触媒、(v)7から14重量%の範囲の量のヨウ化物塩、(vi)ロジウムに対して1:1から5:1の範囲のモル比のルテニウム促進剤、および(vii)該液体反応組成物の残量から成る酢酸、
(b)該液体反応組成物を該反応器から取り出し、そして該組成物をフラッシュ分離ゾーンに該カルボニル化反応器の圧力よりも低い全圧力で通過させる、ここで、熱を加えまたは加えずに、蒸気および液体フラクションが該液体反応組成物から形成され、該蒸気フラクションは酢酸、ヨウ化メチル、少量の無水酢酸、酢酸メチル、および多分高沸点および低沸点の不純物をも含み、そして該液体フラクションは酢酸、無水酢酸、ロジウム触媒、ルテニウム促進剤、ヨウ化物塩および多分いくらかの酢酸メチルおよび/またはヨウ化メチルおよび/または高沸点不純物を含む、
(c)該液体フラクションの全部または一部を該カルボニル化反応器に再循環させる、
(d)該蒸気フラクションの全部または一部を分別蒸留カラム内の中間点に供給し、該カラムの底部から、酢酸、無水酢酸および高沸点不純物を含むフラクションを除去し、オーバーヘッド(上部)からヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノールおよび低沸点不純物を含む蒸気フラクションを除去し、そして該カラムの底部と上部の中間から実質的に純粋な酢酸を含む生成物フラクションを取り出す、そして
(e)該分別蒸留カラムからのオーバーヘッドフラクションの全部または一部をカルボニル化反応器に再循環させる。
【0031】
カルボニル化反応器は150から210℃、好ましくは170から195℃の範囲の温度、例えば170から195℃より高い温度、および10から100、好ましくは20から40バールの範囲の圧力に保持するのが適当である。
【0032】
ロジウム触媒およびヨウ化メチル助触媒に加えて、カルボニル化反応器は金属促進剤、例えばルテニウム、および触媒安定剤を1種またはそれ以上のヨウ化物塩の形で、例えばヨウ化リチウムおよびQASをも含むのが好ましい。
【0033】
工程の段階(b)において、液体反応組成物はフラッシュ分離ゾーンに、カルボニル化反応器の全圧力よりも低い全圧力で通される。フラッシュ分離ゾーンの圧力は0.5ないし5バールであるのが適当である。
【0034】
液体反応組成物中の酢酸から無水酢酸の分離を容易にするために、無水酢酸を添加したメタノールと反応させることによりできるだけ酢酸メチルに変換するのが好ましい。この目的にメタノールを、無水酢酸から酢酸メチルへの変換が最大になる位置に添加するのが適当であり、それはフラッシュ分離ゾーンまたは分別蒸留カラムであり得、後者が好ましい。このようにして、無水酢酸は有効に分離されそしてさらに分離し易い酢酸メチルの形体でカルボニル化反応器に再循環される。更に、エステル化セクションの必要性が低減または除去される。
【0035】
工程の段階(c)において、フラッシュ分離ゾーンで分離された液体フラクションの全部または一部はカルボニル化反応器に再循環される。液体フラクションの一部をカルボニル化反応器に戻す前にそこから蓄積したポリマーおよび/またはその他の望ましくない副生物を除去するために、時々液体フラクションの一部を除去するのが望ましいであろう。このようにして得られたポリマーは、ロジウム触媒および/または金属促進剤残留物を回収した後、廃棄し得る。
【0036】
工程の段階(d)において、フラッシュ蒸留ゾーンで分離された蒸気フラクションの全部または一部は分別蒸留カラムの中間点に供給される。フラッシュ蒸留ゾーンに供給されなかった蒸気フラクションの部分カルボニル化反応器に再循環するのが適当であろう。
【0037】
分別蒸留カラムのオーバーヘッドから除去された蒸気フラクションは凝縮するのが適当であり、凝縮物の一部は還流として分別蒸留カラムに戻され、そして残部はカルボニル化反応器に戻される。分別蒸留カラムの底部から、酢酸、無水酢酸および高沸点不純物、典型的には二酢酸エチリデン、を含むフラクションが除去される。カラムの底部および上部の中間で、実質的に純粋な酢酸からなる生成物フラクションが取り出され、それは更に精製しても、或いは精製しなくてもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様を、工程流れ図である添付の図面を参照して記述する。
【0039】
図1を参照すると、Aで示される項目はポンプであり、Bで示される項目は熱交換器であり、1−20で示される項目は材料移動ラインであり、Cは予備混合保持タンクであり、Dはカルボニル化反応器であり、Eはフラッシュタンクであり、Fは分別蒸留カラムであり、そしてGは液体蒸留物タンクである。
【0040】
操業に際して、メタノールはポンプA1を経て保持タンクCに供給され、そして次にライン3およびポンプA2を経て、カルボニル化反応器Dに供給される。カルボニル化反応器Dには一酸化炭素と水素も供給される。反応の発熱は、液体反応組成物を、反応器Dに戻す前に、ライン5およびポンプA3を経て汲み上げて熱交換器B1を通すことにより、除去される。該反応器は典型的には約170から200℃、例えば180から195℃、の範囲の温度、および典型的には25から40ゲージバールの間、例えば約36ゲージバール、の全圧力に維持される。
【0041】
反応器D内の液体反応組成物は典型的には下記から成る:
無水酢酸:2重量%、
酢酸メチル:12−21重量%、例えば20重量%、
ヨウ化メチル:13.5−14.5重量%、例えば14重量%、
ロジウム:550−750ppm、例えば700ppm、
イオン性ヨウ化物(例えばヨウ化リチウム):10.0−12.5重量%、例えば10重量%、
ルテニウム:ロジウムに対して約5:1のモル比。
【0042】
液体組成物は反応器D内のからライン6を経てフラッシュタンクEに1.5から2.5バールの圧力で供給される。反応器Dからのオーバーヘッドは連続的パージ物としてライン7を経て、気体状の不活性物および多分ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸および無水酢酸の1種またはそれ以上を含む高圧排ガス(HPOG)としてフラッシュタンクEに供給される。フラッシュタンクにおいて、酢酸、ロジウム触媒および金属促進剤および/または安定剤を含む液体フラクションと、酢酸、ヨウ化メチル、無水酢酸、酢酸メチル、高−および低−沸点物、および永久ガスを含む蒸気フラクションとの間で分離が起こる。液体フラクションはポンプA4およびライン8を経て反応器Dに戻される。蒸気フラクションはライン9を経て分別蒸留カラムFに供給され、該カラムFはライン10を経るオーバーヘッド取出し装置、ライン18を通る底部取出し装置、ライン13を通る側部取出し装置、および再ボイラーB2を有する。該カラムは典型的には20の理論的段階(再ボイラーを含むが、オーバーヘッド凝縮器は含まない)を有し、側部取出し装置は段階16に位置する。ライン1から供給されたメタノールの一部は、ポンプA1の後、ライン2を通り、ライン9を通って分別蒸留カラムFに供給される;該メタノールはライン9および該分別蒸留カラムで、フラッシュタンクEから取り出された蒸気フラクション中の無水酢酸と反応して、該無水酢酸を酢酸メチルに変換する。
【0043】
カラムFの底部取出し物はライン20およびポンプA5を経てフラッシュタンクEにその洗い液(wash)として再循環される。残りの部分は、所望により更に処理するためにプラントから除去される。
【0044】
生成物酢酸を含む側部取出し物はカラムFからライン13を経て取り出されて生成物保持タンクに渡される。生成物酢酸を過マンガン酸塩時間詳細(permanganate time specification)内にもって行くのにいかなる処理も必要でないことは本発明の方法の利点である。しかし、他の不純物、例えば二酢酸エチリデン、を除去することによってそれを更に精製するのが望ましいであろう。
【0045】
ライン10から取り出された蒸気取出し物は熱交換器B3内で凝縮される。酢酸メチル、ヨウ化メチル、メタノールおよび酢酸を含む凝縮物はライン12を通って液体留出物タンクGに渡され、そこから一部はライン16を通ってタンクCに戻され、そして一部は還流物としてポンプA6およびライン17を経てカラムFに戻される。
【0046】
オーバーヘッド凝縮器B4の上部からの蒸気流は、更に処理するためにライン18を経てスクラビングシステムに供給される。すべての回収された物質は、スクラビングシステムからライン11を経て戻される。
【0047】
本発明を下記の例を参照して例示する。該例中で、前に図面を参照して述べた方法を、ライン13を通る側部取出し装置の代わりにフラクションを蒸留カラムFの底部からライン18を経て取り出した以外は、使用した。
【0048】
【実施例】
例1−3および比較試験1
これらの例で、メタノールはフラッシュタンクEまたは蒸留カラムFのいずれにも供給しなかった。
【0049】
液体反応組成物および一酸化炭素供給速度を表1に示す。例で、酢酸は主な生成物ではなかった。酢酸以外の気体生成物および液体生成物を表2に示す。比較試験1は、液体反応組成物中の無水酢酸濃度が高いので、本発明の例ではない。比較試験は比較のためだけに含められる。
【0050】
例4
メタノールをフラッシュタンクEに供給する効果を表3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程の流れ図である。
【符号の説明】
A1−A6:ポンプ
B1−B3:熱交換器
1−20:移動ライン
C:予備混合保持タンク
D:カルボニル化反応器
E:フラッシュタンク
F:分別蒸留カラム
G:液体蒸留物タンク
Claims (20)
- メタノールおよび/またはジメチルエーテルと、一酸化炭素および9モル%未満の量の水素を含む気体状反応体とを、触媒として周期律表第VIII族の少なくとも1種の貴金属、補助触媒としてハロー化合物および触媒安定剤としてヨウ化物塩を含む触媒系の存在下で反応させることによる酢酸の無水製造法であって、メタノールおよび/またはジメチルエーテル、並びに気体状反応体を、(i)1から35重量%の量の酢酸メチル、(ii)0.1重量%を越える量から8重量%までの量の無水酢酸、(iii)3から20重量%の量のハロー化合物、(iv)1から2000ppmの量の第VIII族貴金属触媒、(v)I-としてヨウ素を0.5から20重量%与えるのに充分な量のヨウ化物塩および(vi)該組成物の残量からなる酢酸、を含む液体反応組成物を維持したカルボニル化反応器に供給することを特徴とする上記の製造法。
- 上記の気体状反応体が0.01ないし2.5モル%の水素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
- 上記の気体状反応体が0.01ないし1.0モル%の水素を含むことを特徴とする、請求項2に記載の製造法。
- 上記の周期律表第VIII族の貴金属がロジウムである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の助触媒がヨウ化メチルである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記のヨウ化メチルが上記液体反応組成物中に該組成物の重量を基準にして8ないし18重量%の量で存在する、請求項5に記載の製造法。
- 上記の触媒が更にルテニウムを促進剤として含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の触媒安定剤がアルカリ金属またはアルカリ土類金属ヨウ化物である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の触媒安定剤がリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムのヨウ化物である、請求項8に記載の製造法。
- 使用するヨウ化物塩の量がI-としてヨウ素を0.5から20重量%与えるのに充分な量である、請求項8または9に記載の製造法。
- 上記の酢酸メチルが上記液体反応組成物中に5ないし25重量%の量で存在する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の液体反応組成物が無水酢酸を5重量%までの量で含む、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の液体反応組成物が無水酢酸を0.1より多い量から3.0重量%までの量で含む、請求項12に記載の製造法。
- 連続的に操業する、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の製造法。
- 下記の段階:
(1)メタノールおよび/またはジメチルエーテル、並びに一酸化炭素および0.5モル%までの量の水素を含む気体状反応体をカルボニル化反応器に高温および高圧で供給し、該反応器内で下記を含む液体反応組成物を維持する:(i)12から21重量%の量の酢酸メチル、(ii)3重量%までの量の無水酢酸、(iii)9から16重量%の量のハロー化合物助触媒、(iv)500から800ppmの量のロジウム触媒、(v)7から14重量%の範囲の量のヨウ化物塩、(vi)ロジウムに対して0.1:1から5:1のモル比のルテニウム促進剤、および(vii)該液体反応組成物の残部から成る酢酸、
(2)実質的に純粋な酢酸を、該液体反応組成物を反応器から取り出し、そして取り出した該組成物中の酢酸を1回またはそれ以上のフラッシュおよび/または分別蒸留段階により該組成物のその他の成分から分離することにより回収する、および
(3)酢酸から分離したその他の成分を該カルボニル化反応器に再循環させる、
を含む、請求項1に記載の製造法。 - 下記の段階:
(a)メタノール、および一酸化炭素と0.5モル%までの量の水素とを含む気体状反応体を高温および高圧に保持されたカルボニル化反応器に供給し、該反応器内に下記を含む液体反応組成物を維持する:(i)12から21重量%の量の酢酸メチル、(ii)3重量%までの量の無水酢酸、(iii)9から16重量%の量のヨウ化メチル助触媒、(iv)500から800ppmの量のロジウム触媒、(v)7から14重量%の範囲の量のヨウ化物塩、(vi)ロジウムに対して1:1から5:1の範囲のモル比のルテニウム促進剤、および(vii)該液体反応組成物の残量から成る酢酸、
(b)該液体反応組成物を該反応器から取り出し、そして該組成物をフラッシュ分離ゾーンに該カルボニル化反応器の圧力よりも低い全圧力で通過させ、ここで、熱を加えまたは加えずに、蒸気および液体フラクションが該液体反応組成物から形成され、該蒸気フラクションは酢酸、ヨウ化メチル、少量の無水酢酸、酢酸メチル、および多分高沸点および低沸点の不純物をも含み、そして該液体フラクションは酢酸、無水酢酸、ロジウム触媒、ルテニウム促進剤、ヨウ化物塩および多分いくらかの酢酸メチルおよび/またはヨウ化メチルおよび/または高沸点不純物を含む、
(c)該液体フラクションの全部または一部を該カルボニル化反応器に再循環させる、
(d)該蒸気フラクションの全部または一部を分別蒸留カラム内の中間点に供給し、該カラムの底部から、酢酸、無水酢酸および高沸点不純物を含むフラクションを除去し、オーバーヘッド(上部)からヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノールおよび低沸点不純物を含む蒸気フラクションを除去し、そして該カラムの底部と上部の中間から実質的に純粋な酢酸を含む生成物フラクションを取り出す、そして
(e)該分別蒸留カラムからのオーバーヘッドフラクションの全部または一部をカルボニル化反応器に再循環させる、
を含む、請求項1に記載の製造法。 - 上記のメタノールをフラッシュゾーンまたは分別蒸留カラムに添加し、ここで該メタノールを無水酢酸と反応させて、該無水酢酸をできるだけ酢酸メチルに変換する、請求項15または16に記載の製造法。
- 上記のカルボニル化反応器を150から210℃の範囲の温度に保持する、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の製造法。
- 上記の温度が170から195℃の範囲である、請求項18に記載の製造法。
- 上記のカルボニル化反応器を20から40バールの範囲の圧力に保持する、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の製造法。
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