JP4172877B2 - 歯車ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯車ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
歯車ポンプは、図4(A)に示すように互いに噛合う原動歯車1及び従動歯車2と、図4(A)、(B)に示すように両歯車1、2の両側面をシールする両側板3a,3b(一方の側板3a のみ図示)とを有する。両歯車1、2が図4(A)から図5の状態を経て図6の状態となるように回転するときに、両歯車1、2の噛合部と両側板3a,3b とで囲まれる閉じ込み容積部u、v(図示せず)の容積が減少すると、閉じ込み容積部u、v内の油が昇圧して騒音又は振動等を生じる。このような騒音又は振動等を防止するために閉じ込み容積部u、vを吐出口4に連通させている。
通常、歯車ポンプの原動歯車1及び従動歯車2はバックラッシュが無ければ三点(図4ではA0,A3,A2)で噛合うが、実際の原動歯車1及び従動歯車2にはバックラッシュが有るため、噛合開始点A0 と噛合終了側の噛合点A2 とで噛合い、A3 は噛合うことのない無効噛合点となる。このような噛合開始点A0 は図5の噛合点A1 を経て図6の噛合点A1 まで移動すると共に、噛合終了側の噛合点A2 は図5の噛合点A2 を経て図6の噛合終了点A4 まで移動し、どちらも噛合線(右上がりの一点鎖線)上を移動する。また、無効噛合点A3 は図5、図6に示す噛合線(右下がりの一点鎖線)上を移動する。
両側板3a,3b には、無効噛合点A3 と噛合点A2 との間にある閉じ込み容積部u1 及び噛合開始点A0 と無効噛合点A3 との間にある閉じ込み容積部v1 を吐出口4に連通する溝5a,5b(斜線で示す)が形成される。また、後述する図6に示す無効噛合点A3 と噛合終了点A4 との間にある閉じ込み容積部u3 及び噛合点A1 と無効噛合点A3 との間にある閉じ込み容積部v3 を吸入口6に連通する溝7b,7a(斜線で示す)が形成される。尚、図示を省略するが、溝5a,5b,7a,7b は深さhに形成される。詳しくは次の通り。
【0003】
溝5a は、図4に示すように、ピッチ点Pを通るピッチ円の接線Tよりも従動歯車2側に位置し、かつ原動歯車1の一つの歯がこの原動歯車1の回転中心G1 と従動歯車2の回転中心G2 とを結ぶ線上にあるとき無効噛合点A3 と噛合点A2 との間にある最小閉じ込み容積部u1 に連通するように形成されている。この構成により、閉じ込み容積部は最小閉じ込み容積部u1 になるまで溝5a(斜線で示す)に連通し続けるため、閉じ込み容積部の昇圧による騒音又は振動等を防止できる。溝7a(斜線で示す)は、その両歯車1、2側部分が接線Tよりも原動歯車1側に位置すると共に通常はピッチ点Pに対して溝5a と点対称に形成されている。溝5b(斜線で示す)は、図5に示すように、無効噛合点A3 がピッチ点Pと一致するとき、接線Tよりも原動歯車1側に位置して噛合点A1 に接するように設けられる。溝7b(斜線で示す)は、接線Tよりも従動歯車2側に位置し、かつ噛合点A2 に接するように設けられる。この構成によって、吐出口4の高圧油が無効噛合点A3 を介して吸入口6に吹抜ける、いわゆる吹抜け現象を防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記従来の技術には次のような問題がある。
(1)図5の状態から更に回転して図6の状態になるとき、閉じ込み容積部v2 は最小閉じ込み容積部v3 まで減少しつつ閉じ込み容積部u3 が溝7b を介して吸入口6に連通するが、無効噛合点A3 のバックラッシュによる流路抵抗によってその上流部の油が昇圧して騒音又は振動等が発生する。
(2)溝5a と溝5b とが接線Tに対して非対称であり、また溝7a と溝7b とが接線Tに対して非対称であるため、両歯車1、2の両側面に二種類の側板3a,3b が必要となる。従って二種類の側板3a,3b の位置を間違えて組立てる、いわゆる誤組立てとなる可能性があり、組立作業能率が低下する。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、騒音及び振動等を確実に低減できる歯車ポンプの提供を目的とし、さらに誤組立てを防止できる歯車ポンプの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明に係る歯車ポンプは、互いに噛合う原動歯車及び従動歯車と、両歯車の両側面を各々シールすると共に両歯車の閉じ込み容積部を吐出口に連通する第1溝及び両歯車の閉じ込み容積部を吸入口に連通する第2溝を有する側板とを備えて成る歯車ポンプにおいて、従動歯車の一つの歯が、原動歯車の回転中心と従動歯車の回転中心とを結ぶ線上にあるとき、最小閉じ込み容積部に連通するように第1溝を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記構成の歯車ポンプによれば、従動歯車の一つの歯が、原動歯車の回転中心と従動歯車の回転中心とを結ぶ線上にあるとき、最小閉じ込み容積部に連通するように第1溝を形成したことで、閉じ込み容積が減少するときに圧縮される閉じ込み容積内 ( 最小閉じ込み容積部 ) の油は第1溝を介して吐出口に排出され、このため閉じ込み容積内の油が昇圧することによる騒音又は振動等が防止される。 すなわち、上記構成の歯車ポンプによれば、最小閉じ込み容積部と該最小閉じ込み容積部に隣り合う閉じ込み容積内とは、原動歯車と従動歯車とのバックラッシュを介して互いに連通しているものの、上記バックラッシュによる隙間が極めて小さいことと併せ、特に原動歯車と従動歯車とが高速回転している場合、上記バックラッシュを介して油が流通することは困難であるため、事実上、最小閉じ込み容積部は隣り合う閉じ込み容積内と独立することとなり、吐出口と吸入口とが連通して生ずる“吹抜け現象”を無視でき、もって最小閉じ込み容積部に連通するように第1溝を形成したことで、閉じ込み容積内の油が昇圧することによる騒音又は振動等を防止することが可能となる。
【0008】
また、上記の目的を達成するために、請求項2の発明に係る歯車ポンプは、側板における第1溝及び第2溝を、原動歯車と従動歯車とのピッチ点を通るピッチ円の接線に対して線対称に形成したことを特徴とする。
【0009】
上記構成の歯車ポンプによれば、両歯車の回転中心間を結ぶ線に近接する第1溝及び第2溝の形状を、ピッチ点を通るピッチ円の接線に対して線対称に形成したことで、各側板の上下を逆にすることによって、両歯車の両側面に同じ側板を使用することが可能となる。
この結果、両歯車の両側面をシールする両側板を別々に用意する必要がなく、また左右の両側板を取違えて組立てる、いわゆる誤組立てを防止でき、もって組立作業能率が向上することとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を図1〜図3を参照し説明する。尚、図4〜図6の従来技術で示した同一要素には同一符号を付して重複説明を省略する。図1に示すように、歯車ポンプは互いに噛合う原動歯車1及び従動歯車2を備えている。両歯車1、2は、図3に示すようにインボリュート曲線で形成の歯面と、トロコイド曲線で成形の歯底とを有する外歯歯車である。両歯車1、2の側面にはシール用の側板3が両側面にそれぞれ設置される。側板3には吐出口4に連通する第1溝5(斜線で示す)と、吸入口6に連通する第2溝7(斜線で示す)とが形成される。第1、第2溝5、7の深さはhに形成してある。尚、図1は噛合開始状態を示し、噛合開始点A0 からピッチ点Pまでの距離L1(始点側噛合線の長さL1)は、近寄り噛合率ε1 が略0.6になるように設定されている。一方、図2は噛合終了状態を示し、ピッチ点Pから噛合終了点A4 までの距離L2(終点側噛合線の長さL2)は遠のき噛合率ε2 (遠のき弧/円ピッチ)が略0.75になるように設定されている。第1溝5は、図1、図2に示す通り両歯車1、2側で両歯車1、2の回転中心G1,G2 を結ぶ線に平行の、かつ図2の状態での最小閉じ込み容積部v5 に接する縁を有して形成されると共に、吐出口4に連通する。第2溝7は、図1、図2に示す通り両歯車1、2側で両歯車1、2の回転中心G1,G2 を結ぶ線に平行の、かつ図2の状態で噛合終了点A4 に接する縁を有して形成されると共に、吸入口6に連通する。また第1、第2溝5、7の形状は、ピッチ点Pを通るピッチ円の接線Tに線対称に形成されている。
【0015】
上記実施例によれば、次のような作用効果を奏する。第1溝5は、図2に示す通り、最小閉じ込み容積部v5 に接するように形成してあるため、図1の噛合開始状態から両歯車1、2が矢印のように回転して閉じ込み容積がv4 からv5 まで減少する間では、閉じ込み容積部v4 内の油が第1溝5を介して吐出口4に排出される。従って閉じ込み容積部v4 内の油が圧縮されて局部的に昇圧することがなく、このため騒音又は振動等が防止される。次いで、図1の噛合開始状態から図2の噛合終了状態に移行すると、閉じ込み容積u4 はu5 へと増加するが、両歯車1、2間のバックラッシュによって閉じ込み容積v5 と閉じ込み容積u5 とが連通するため、実質的閉じ込み容積(v5 +u5 )の増加率が小さく、このためキャビテーション等は殆ど問題とならない。また図2に示す通り、最小閉じ込み容積部v5 が噛合点A1 で第1溝5に接ししている状態では、第2溝7が噛合終了点A4 に接する。従って、たとえ両歯車1、2間のバックラッシュが大きくても、無効噛合点A3 を介して吐出口4と吸入口6とが連通することはない。このため、吐出口4の高圧油が吸入口6に洩れる「吹抜け現象」もなく、容積効率の低下を防止できる。
【0016】
尚、図3に示すように、従動歯車2の歯先部を削除すると、原動歯車1に噛合う位相が遅れる。このため、始点側噛合線の長さL1 が減少し、これにより近寄り噛合率ε1 (近寄り弧/円ピッチ)を上記0.6に設定できる。また、原動歯車1の歯先部を削除すると、従動歯車2に噛合う位相が遅れる。このため、終点側噛合線の長さL2 が増加、これにより遠のき噛合率ε2 を上記0.75に設定できる。このように、両歯車1、2の両歯先部を削除するだけで近寄り噛合率ε1 及び遠のき噛合率ε2 を修正でき、転位等の必要がなく、このため製造コストを低減できる。
【0017】
尚、第1、第2溝5、7の形状は、前記の通り、接線Tに対して線対称に形成したため、両側板3、3の上下を逆とすれば、両歯車1、2の両側面に同じ側板3を使用できる。従って、両歯車1、2の両側面で両側板3、3を別々に用意する必要がなく、また左右の両側板3、3を取違えて組立てるとのいわゆる「誤組立」を防止でき、組立作業能率が向上する。
【0018】
バックラッシュからの吹抜けを防止するためには、従動歯車2の一つの歯が両歯車1、2の回転中心G1,G2 を結ぶ線上に位置して生ずる最小閉じ込み容積部v5 が第1溝5に接するときに、遠のき噛合率ε2 での噛合終了点A4 が第2溝7に接する必要がある。このときの遠のき噛合率ε2 は略0.75である。近寄り噛合率ε1 と遠のき噛合率ε2 とが等しい一般の歯車ポンプでは、遠のき噛合率ε2 が増加すると、近寄り噛合率ε1 も増加するが、近寄り噛合率ε1 が増加すると、閉じ込み容積部v4 が生じる範囲が増加して騒音又は振動等の原因となるため、近寄り噛合率ε1 は遠のき噛合率ε2 より小さく設定する。また、遠のき噛合率ε2 が増加すると、原動歯車1の歯の曲げ応力が増加したり、従動歯車2の歯のピッチングが発生するため、噛合終了点A4 となる前から噛合開始点A0 が存在する必要がある。即ち、噛合終了点A4 付近では2組の歯が噛合う必要があるため近寄り噛合率ε1 は0.5より大きく設定する。
【0019】
以上のように、本発明によれば次のような効果を奏する。
(1)近寄り噛合率を小さく設定して吐出口に連通する第1溝を最小閉じ込み容積部に接するように有するため、閉じ込み容積が減少するときに圧縮される油は第1溝を介して吐出口に排出される。このため、閉じ込み容積の油が昇圧することによる騒音又は振動等を防止できる。
(2)遠のき噛合率を大きく設定して吸入口に連通する第2溝を噛合終了点に接するように有するため、吐出口と吸入口とが連通する吹抜け現象がなくなり、容積効率の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯車ポンプの噛合開始状態を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】本発明に係る歯車ポンプの噛合終了状態を示す図である。
【図3】噛合率の修正方法を示す図である。
【図4】従来技術に係る歯車ポンプの噛合開始状態を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図5】図4の噛合状態に続く噛合状態を示す図である。
【図6】従来技術に係る歯車ポンプの噛合終了状態を示す図である。
【符号の説明】
1;原動歯車、2;従動歯車、3;側板、4;吐出口、5;第1溝、6;吸入口、7;第2溝、A0 ;噛合開始点、A1 、A2 ;噛合点、A3 ;無効噛合点、A4 ;噛合終了点、G1 ;原動歯車の回転中心、G2 ;従動歯車の回転中心、L1 ;始点側噛合線の長さ、L2 ;終点側噛合線の長さ、v5 ;最小閉じ込み容積部

Claims (2)

  1. 互いに噛合う原動歯車(1)及び従動歯車(2)と、
    前記両歯車 ( 1,2 ) の両側面を各々シールすると共に、前記両歯車(1,2)の閉じ込み容積部(u,v)を吐出口(4)に連通する第1溝(5)、及び前記両歯車 ( 1,2 ) の閉じ込み容積部 ( u,v ) を吸入口 ( ) に連通する第2溝 ( ) を有する側板 ( )とを備えて成る歯車ポンプにおいて、
    前記従動歯車 ( ) の一つの歯が、前記原動歯車 ( ) の回転中心 ( 1) と前記従動歯車 ( ) の回転中心 ( G2 ) とを結ぶ線上にあるとき、最小閉じ込み容積部 ( v5 ) に連通するように前記第1溝 ( ) 形成したことを特徴とする歯車ポンプ。
  2. 前記側板 ( ) における前記第1溝 ( ) 及び前記第2溝 ( ) を、前記原動歯車 ( ) と前記従動歯車 ( ) とのピッチ点 ( ) を通るピッチ円の接線 ( ) に対して線対称に形成したことを特徴とする請求項1記載の歯車ポンプ。
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