JP4172153B2 - 車輌の制動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌の制動制御装置に係り、更に詳細には作動液圧供給通路に設けられた制御弁と、制御弁とホイールシリンダとの間にて作動液圧供給通路に設けられた増減圧弁とを有する車輌の制動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌の制動制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる特開2000−190835号公報に記載されている如く、車輌状態若しくは運転者による制動操作に応じて各車輪の目標制動力及び目標スリップ率を演算する手段と、制動スリップ率に対する制動力の関係が線形の領域に於いては目標制動力に基づき各車輪の制動圧を制御し、前記関係が非線形の領域に於いては目標スリップ率に基づき各車輪の制動圧を制御する制御切換え手段とを有する車輌の制動制御装置に於いて、各車輪の実スリップ率を推定する手段を有し、制御切換え手段は車輪の実スリップ率が基準値以上になると当該車輪について目標制動力に基づく制御より目標スリップ率に基づく制御に切換えることを特徴とする車輌の制動制御装置が従来より知られている。
【0003】
この先の提案にかかる制動制御装置によれば、車輪が線形領域にあるときには目標制動力に基づく制御が行われ、車輪が非線形領域にあるときには目標スリップ率に基づく制御が行われるので、車輪の状況に応じて高精度に制動制御を行い、これにより車輌の運動を高精度に制御して車輌の運動を確実に且つ適正に安定化させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上述の先の提案にかかる制動制御装置に於いては、車輪の制動力を制御する制動力制御手段の応答性については考慮されておらず、特に作動液圧供給通路に設けられた制御弁と、制御弁とホイールシリンダとの間にて作動液圧供給通路に設けられた増減圧弁とを有する車輌に於いて車輪の制動力を如何に制御すべきかについては考慮されておらず、従ってこの点に関し改善の余地がある。また上述の先の提案にかかる制動制御装置に於いては、各車輪の実スリップ率が推定され、実スリップ率に基づいてスリップ率に対する制動力の関係が線形の領域にあるか非線形の領域にあるかが判定され、従って常時車体速を推定する必要があるため、スリップ率に対する制動力の関係が線形の領域にあるか非線形の領域にあるかの判定が複雑であり、そのため制御が複雑になると共に制御装置が高コストになるという不具合があり、この点についても改善の余地がある。
【0005】
本発明は、各車輪の実スリップ率を推定し、実スリップ率に基づいてスリップ率に対する制動力の関係が線形の領域にあるか非線形の領域にあるかを判定し、スリップ率に対する制動力の関係が線形の領域に於いては目標制動力に基づき各車輪の制動圧を制御し、前記関係が非線形の領域に於いては目標スリップ率に基づき各車輪の制動圧を制御するよう構成された上記先の提案にかかる制動制御装置に於ける上述の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、作動液圧供給通路に設けられた制御弁と、制御弁とホイールシリンダとの間にて作動液圧供給通路に設けられた増減圧弁とを有する車輌に於いて、複雑な演算や高コストな制御装置を要することなくスリップ率に対する制動力の関係が非線形領域であるか否かの判定を従来に比して容易に且つ簡便に行い、その判定結果に応じて最適な制動力制御態様により車輪の制動力を制御することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ちマスタシリンダの作動液圧を車輪に対応して設けられたホイールシリンダへ供給する作動液圧供給通路と、前記作動液圧供給通路に設けられた制御弁と、前記制御弁と前記ホイールシリンダとの間にて前記作動液圧供給通路に設けられた増減圧弁と、前記制御弁と前記増減圧弁との間の前記作動液圧供給通路へ高圧の作動液体を供給する高圧液体供給源と、前記車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かを判定する制動力発生領域判定手段と、前記制動力発生領域判定手段の判定結果に応じて前記制御弁及び前記増減圧弁の制御態様を選択し、選択された制御態様を使用して車輪の制動力を制御する選択制御手段とを有する車輌の制動制御装置に於いて、前記作動液圧供給通路はマスタシリンダの作動液圧を同一系統の各車輪に対応して設けられたホイールシリンダへ供給するよう構成され、前記増減圧弁は各車輪に対応して前記作動液圧供給通路に設けられ対応するホイールシリンダ内の圧力を増減するよう構成され、前記制動力発生領域判定手段は車輪速度を検出する手段と、検出された車輪速度に基づき車輪加速度を演算する手段とを有し、車輪加速度が基準値未満であるときに前記関係が非線形領域であると判定し、前記選択制御手段は各車輪の目標制動圧及び目標スリップ率を演算する手段を有し、前記選択制御手段は前記作動液圧供給通路内の圧力が前記同一系統の車輪の目標制動圧のうち最も高い目標制動圧になるよう前記制御弁を制御すると共に、前記制動力発生領域判定手段により目標制動圧が最も高い車輪について前記関係が線形領域であると判定されたときには、目標制動圧が最も高い車輪の制動圧が前記最も高い目標制動圧になるよう該車輪の前記増減圧弁を制御し、且つ前記同一系統の他の車輪のスリップ率が対応する前記目標スリップ率になるよう他の車輪の前記増減圧弁を制御し、前記制動力発生領域判定手段により目標制動圧が最も高い車輪について前記関係が非線形領域であると判定されたときには、各車輪のスリップ率がそれぞれ対応する前記目標スリップ率になるよう各車輪の前記増減圧弁を制御することを特徴とする車輌の制動制御装置によって達成される。
【0008】
一般に、車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が線形領域であるときには、制動力制御手段に対する制御量と車輪により実際に発生される制動力とが実質的に比例関係にあるので、制御量に対する制動力の比及び制動力に対する車輪のスリップ率の比は実質的に一定であるが、制御量の増大により車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が線形領域より非線形領域へ移行すると、制御量に対する制動力の比は低下し、逆に制動力に対するスリップ率の比は増大し、これに対応して車輪加速度も低下する。従って車輪が制動される際の車輪加速度に基づき車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かを判定することができる。
また、上記構成に於ける増減圧弁による制動圧制御の応答性は制御弁による制動圧制御の応答性よりも高いが、増減圧弁による制動圧の制御に於いては増減圧弁が断続的に繰り返し開閉制御されなければならないので、高応答が必要なときには増減圧弁により制動圧が制御されることが好ましく、高応答が必要でないときには主として制御弁により制動圧が制御されることが好ましい。
上記請求項1の構成によれば、作動液圧供給通路はマスタシリンダの作動液圧を同一系統の各車輪に対応して設けられたホイールシリンダへ供給するよう構成され、増減圧弁は各車輪に対応して作動液圧供給通路に設けられ対応するホイールシリンダ内の圧力を増減するよう構成される。また作動液圧供給通路内の圧力が同一系統の車輪の目標制動圧のうち最も高い目標制動圧になるよう制御弁が制御されると共に、車輪加速度に基づいて車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かが判定され、車輪加速度が基準値未満であるときに前記関係が非線形領域であると判定される。そして前記関係が線形領域であると判定されたときには、目標制動圧が最も高い車輪の制動圧が最も高い目標制動圧になるよう該車輪の増減圧弁が制御され、且つ同一系統の他の車輪のスリップ率が対応する目標スリップ率になるよう他の車輪の増減圧弁が制御され、前記関係が非線形領域であると判定されたときには、各車輪のスリップ率がそれぞれ対応する目標スリップ率になるよう各車輪の増減圧弁が制御されるので、複雑な演算や高コストな制御装置を要することなく車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かの判定を容易に且つ簡便に行うことが可能になり、またその判定結果に応じて最適の制動力制御態様により車輪の制動力が制御され、これにより車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が線形領域であり高応答が必要でないときには目標制動圧が最も高い車輪の増減圧弁が繰り返し開閉制御されることをできるだけ回避してその耐久性の低下を防止することが可能になると共に、車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であり高応答が必要な状況に於いては目標制動圧が最も高い車輪についても応答性よく制動力を制御することが可能になる。
【0020】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、制御弁は該制御弁とホイールシリンダとの間の作動液圧供給通路内の圧力が目標制動圧よりも高いときには自動的に開弁して制御弁とホイールシリンダとの間の作動液圧供給通路内の作動液を制御弁を経てマスタシリンダ側へ導くことによりホイールシリンダとの間の作動液圧供給通路内の圧力を目標制動圧に制御するよう構成される(好ましい態様1)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、選択制御手段は必要に応じて運転者の制動操作量とは無関係に車輌の安定走行を確保するために必要な車輪制動力に対応する目標制動圧及び目標スリップ率を演算するよう構成される(好ましい態様2)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、高圧液体供給源は作動液を貯留するリザーバと、リザーバより作動液を汲み上げて吐出するポンプと、マスタシリンダと制御弁との間の作動液圧供給通路とポンプの吸入側とを接続する通路の連通を制御するポンプ吸入弁とを含むよう構成される(好ましい態様3)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、選択制御手段は目標制動圧がホイールシリンダ内の圧力よりも低く且つマスタシリンダの作動液圧が目標制動圧以上であるときには、増減圧弁によりホイールシリンダ内の圧力を低下させるよう構成される(好ましい態様4)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、選択制御手段は増減圧弁によりホイールシリンダ内の圧力を減圧する際には、ポンプ吸入弁を閉弁させるよう構成される(好ましい態様5)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、選択制御手段は必要に応じて運転者の制動操作量とは無関係に車輌の安定走行を確保するために必要な車輪制動力に対応する目標制動圧及び目標スリップ率を演算するよう構成される(好ましい態様6)。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明による制動制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電子制御装置を示す概略構成図、図2は図1に示された前輪用の制御弁を示す解図的断面図である。尚図1に於いては、電磁的に駆動される各弁のソレノイドの図示は省略されている。
【0031】
図1に於て、10は油圧式の制動装置を示しており、制動装置10は運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを圧送するマスタシリンダ14を有している。マスタシリンダ14はその両側の圧縮コイルばねにより所定の位置に付勢されたフリーピストン16により画成された第一のマスタシリンダ室14Aと第二のマスタシリンダ室14Bとを有している。
【0032】
第一のマスタシリンダ室14Aには前輪用のブレーキ油圧制御導管18Fの一端が接続され、ブレーキ油圧制御導管18Fの他端には左前輪用のブレーキ油圧制御導管20FL及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管20FRの一端が接続されている。ブレーキ油圧制御導管18Fの途中には常開型の電磁開閉弁である前輪用の制御弁22Fが設けられている。制御弁22Fの両側のブレーキ油圧制御導管18Fには第一のマスタシリンダ室14Aよりブレーキ油圧制御導管20FL又はブレーキ油圧制御導管20FRへ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管24Fが接続されている。
【0033】
図2に解図的に図示されている如く、制御弁22Fは内部に弁室70を郭定するハウジング72を有し、弁室70には弁要素74が往復動可能に配置されている。弁室70にはブレーキ油圧制御導管18Fのマスタシリンダ14の側の部分18FAが内部通路76を介して常時連通接続され、またブレーキ油圧制御導管18Fのマスタシリンダ14とは反対側の部分18FBが内部通路78及びポート80を介して連通接続されている。
【0034】
図示の如く、弁要素74の周りにはソレノイド82が配設されており、弁要素74は圧縮コイルばね84により図2に示された開弁位置へ付勢されている。弁要素74はソレノイド82に駆動電圧が印加されると、圧縮コイルばね84のばね力に抗してポート80に対し付勢され、これによりポート80を閉ざすことによって閉弁する。
【0035】
また制御弁22Fが閉弁位置にある状況に於いて、ブレーキ油圧制御導管18Fのマスタシリンダ14とは反対側の部分18FB内の圧力による力と圧縮コイルばね84のばね力との合計がソレノイド82による電磁力よりも高くなると、弁要素74はポート80より離れて該ポートを開き、部分18FB内のオイルが内部通路78、ポート80、弁室70、内部通路76を経てブレーキ油圧制御導管18Fの部分18FAへ流れる。そしてこのオイルの流動により部分18FB内のオイルの圧力が低下すると、その圧力による力と圧縮コイルばね84のばね力との合計がソレノイド82による電磁力よりも低くなり、弁要素74はポート80を再度閉ざす。
【0036】
かくして制御弁22Fはそのソレノイド82に対する印加電圧に応じてブレーキ油圧制御導管18Fの部分18FB内の圧力を制御するので、ソレノイド82に対する駆動電圧を制御することによって制御弁22Fにより部分18FB内の圧力(本明細書に於いては「上流圧」という)を所望の圧力に制御することができる。
【0037】
尚図示の実施形態に於いては、図1に示された逆止バイパス導管24Fは制御弁22Fに内蔵されており、内部通路86と、該内部通路の途中に設けられ弁室70より部分18FBへ向かうオイルの流れのみを許す逆止弁88とよりなっている。
【0038】
左前輪用のブレーキ油圧制御導管20FL及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管20FRの他端にはそれぞれ左前輪及び右前輪の制動力を制御するホイールシリンダ26FL及び26FRが接続されており、左前輪用のブレーキ油圧制御導管20FL及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管20FRの途中にはそれぞれ常開型の電磁開閉弁28FL及び28FRが設けられている。電磁開閉弁28FL及び28FRの両側のブレーキ油圧制御導管20FL及び20FRにはそれぞれホイールシリンダ26FL及び26FRよりブレーキ油圧制御導管18Fへ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管30FL及び30FRが接続されている。
【0039】
電磁開閉弁28FLとホイールシリンダ26FLとの間のブレーキ油圧制御導管20FLにはオイル排出導管32FLの一端が接続され、電磁開閉弁28FRとホイールシリンダ26FRとの間のブレーキ油圧制御導管20FRにはオイル排出導管32FRの一端が接続されている。オイル排出導管32FL及び32FRの途中にはそれぞれ常閉型の電磁開閉弁34FL及び34FRが設けられており、オイル排出導管32FL及び32FRの他端は接続導管36Fにより前輪用のバッファリザーバ38Fに接続されている。
【0040】
以上の説明より解る如く、電磁開閉弁28FL及び28FRはそれぞれホイールシリンダ26FL及び26FR内の圧力を増圧又は保持するための増圧弁であり、電磁開閉弁34FL及び34FRはそれぞれホイールシリンダ26FL及び26FR内の圧力を減圧するための減圧弁であり、従って電磁開閉弁28FL及び34FLは互いに共働して左前輪のホイールシリンダ26FL内の圧力を増減し保持するための増減圧弁を郭定しており、電磁開閉弁28FR及び34FRは互いに共働して右前輪のホイールシリンダ26FR内の圧力を増減し保持するための増減圧弁を郭定している。
【0041】
接続導管36Fは接続導管40Fによりポンプ42Fの吸入側に接続されており、接続導管40Fの途中には接続導管36Fよりポンプ42Fへ向かうオイルの流れのみを許す二つの逆止弁44F及び46Fが設けられている。ポンプ42Fの吐出側は途中にダンパ48Fを有する接続導管50Fによりブレーキ油圧制御導管18Fに接続されている。ポンプ42Fとダンパ48Fとの間の接続導管50Fにはポンプ42Fよりダンパ48Fへ向かうオイルの流れのみを許す逆止弁52Fが設けられている。
【0042】
二つの逆止弁44F及び46Fの間の接続導管40Fには接続導管54Fの一端が接続されており、接続導管54Fの他端は第一のマスタシリンダ室14Aと制御弁22Fとの間のブレーキ油圧制御導管18Fに接続されている。接続導管54Fの途中には常閉型の電磁開閉弁60Fが設けられている。この電磁開閉弁60Fはマスタシリンダ14と制御弁22Fとの間のブレーキ油圧制御導管18Fとポンプ42Fの吸入側との連通を制御するポンプ吸入弁として機能する。
【0043】
かくして制御弁22Fは電磁開閉弁60F等と共働して間接的に左右前輪のホイールシリンダ26FL、26FR内の圧力を増減することにより左右前輪の制動力を制御する左右前輪に共通の第一の制動力制御手段を構成しており、電磁開閉弁28FL等の増減圧制御弁は左右前輪のホイールシリンダ26FL、26FR内の圧力を増減することにより左右前輪の制動力を個別に制御する左前輪用及び右前輪用の第二の制動力制御手段を構成しており、第二の制動力制御手段による制動圧制御の応答性は第一の制動力制御手段による制動圧制御の応答性よりも高い。
【0044】
同様に、第二のマスタシリンダ室14Bには後輪用のブレーキ油圧制御導管18Rの一端が接続され、ブレーキ油圧制御導管18Rの他端には左後輪用のブレーキ油圧制御導管20RL及び右後輪用のブレーキ油圧制御導管20RRの一端が接続されている。ブレーキ油圧制御導管18Rの途中には常開型の電磁開閉弁である後輪用の制御弁22Rが設けられている。
【0045】
制御弁22Rは前輪用の制御弁22Fについて図2に示された構造と同一の構造を有しており、従って図には示されていないソレノイドに対する駆動電圧を制御することにより、制御弁22Rより下流側のブレーキ油圧制御導管18R内の圧力(上流圧)を所望の圧力に制御することができる。更に制御弁22Rの両側のブレーキ油圧制御導管18Rには第二のマスタシリンダ室14Bよりブレーキ油圧制御導管20RL又はブレーキ油圧制御導管20RRへ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管24Rが接続されている。
【0046】
左後輪用のブレーキ油圧制御導管20RL及び右後輪用のブレーキ油圧制御導管20RRの他端にはそれぞれ左後輪及び右後輪の制動力を制御するホイールシリンダ26RL及び26RRが接続されており、左後輪用のブレーキ油圧制御導管20RL及び右後輪用のブレーキ油圧制御導管20RRの途中にはそれぞれ常開型の電磁開閉弁28RL及び28RRが設けられている。電磁開閉弁28RL及び28RRの両側のブレーキ油圧制御導管20RL及び20RRにはそれぞれホイールシリンダ26RL及び26RRよりブレーキ油圧制御導管18Rへ向かうオイルの流れのみを許す逆止バイパス導管30RL及び30RRが接続されている。
【0047】
電磁開閉弁28RLとホイールシリンダ26RLとの間のブレーキ油圧制御導管20RLにはオイル排出導管32RLの一端が接続され、電磁開閉弁28RRとホイールシリンダ26RRとの間のブレーキ油圧制御導管20RRにはオイル排出導管32RRの一端が接続されている。オイル排出導管32RL及び32RRの途中にはそれぞれ常閉型の電磁開閉弁34RL及び34RRが設けられており、オイル排出導管32RL及び32RRの他端は接続導管36Rにより後輪用のバッファリザーバ38Rに接続されている。
【0048】
前輪側の場合と同様、電磁開閉弁28RL及び28RRはそれぞれホイールシリンダ26RL及び26RR内の圧力を増圧又は保持するための増圧弁であり、電磁開閉弁34RL及び34RRはそれぞれホイールシリンダ26RL及び26RR内の圧力を減圧するための減圧弁であり、従って電磁開閉弁28RL及び34RLは互いに共働して左後輪のホイールシリンダ26RL内の圧力を増減し保持するための増減圧弁を郭定しており、電磁開閉弁28RR及び34RRは互いに共働して右後輪のホイールシリンダ26RR内の圧力を増減し保持するための増減圧弁を郭定している。
【0049】
接続導管36Rは接続導管40Rによりポンプ42Rの吸入側に接続されており、接続導管40Rの途中には接続導管36Rよりポンプ42Rへ向かうオイルの流れのみを許す二つの逆止弁44R及び46Rが設けられている。ポンプ42Rの吐出側は途中にダンパ48Rを有する接続導管50Rによりブレーキ油圧制御導管18Rに接続されている。ポンプ42Rとダンパ48Rとの間の接続導管50Rにはポンプ42Rよりダンパ48Rへ向かうオイルの流れのみを許す逆止弁52Rが設けられている。尚ポンプ42F及び42Rは図1には示されていない共通の電動機により駆動される。
【0050】
二つの逆止弁44R及び46Rの間の接続導管40Rには接続導管54Rの一端が接続されており、接続導管54Rの他端は第二のマスタシリンダ室14Bと制御弁22Rとの間のブレーキ油圧制御導管18Rに接続されている。接続導管54Rの途中には常閉型の電磁開閉弁60Rが設けられている。この電磁開閉弁60Rもマスタシリンダ14と制御弁22Rとの間のブレーキ油圧制御導管18Rとポンプ42Rの吸入側との連通を制御するポンプ吸入弁として機能する。
【0051】
かくして制御弁22Rは電磁開閉弁60R等と共働して間接的に左右後輪のホイールシリンダ26RL、26RR内の圧力を増減することにより左右後輪の制動力を制御する左右後輪に共通の第一の制動力制御手段を構成しており、電磁開閉弁28RL等の増減圧制御弁は左右後輪のホイールシリンダ26RL、26RR内の圧力を増減することにより左右後輪の制動力を個別に制御する左後輪輪用及び右後輪用の第二の制動力制御手段を構成しており、第二の制動力制御手段による制動圧制御の応答性は第一の制動力制御手段による制動圧制御の応答性よりも高い。
【0052】
図示の実施形態に於いては、各制御弁及び各開閉弁は対応するソレノイドに駆動電流が通電されていないときには図1に示された非制御位置に設定され、これによりホイールシリンダ26FL及び26FRには第一のマスタシリンダ室14A内の圧力が供給され、ホイールシリンダ26RL及び26RRには第二のマスタシリンダ室14B内の圧力が供給される。従って通常時には各車輪のホイールシリンダ内の圧力、即ち制動力はブレーキペダル12の踏力に応じて増減される。
【0053】
これに対し制御弁22F、22Rが閉弁位置に切り換えられ、開閉弁60F、60Rが開弁され、各車輪の開閉弁が図1に示された位置にある状態にてポンプ42F、42Rが駆動されると、マスタシリンダ14内のオイルがポンプによって汲み上げられ、ホイールシリンダ26FL、26FRにはポンプ42Fによりポンプアップされた圧力が供給され、ホイールシリンダ26RL、26RRにはポンプ42Rによりポンプアップされた圧力が供給されるようになるので、各車輪の制動圧はブレーキペダル12の踏力に関係なく制御弁22F、22R及び各車輪の開閉弁(増減圧弁)の開閉により増減される。
【0054】
この場合、ホイールシリンダ内の圧力は、開閉弁28FL〜28RR及び開閉弁34FL〜34RRが図1に示された非制御位置にあるときには増圧され(増圧モード)、開閉弁28FL〜28RRが閉弁位置に切り換えられ且つ開閉弁34FL〜34RRが図1に示された非制御位置にあるときには保持され(保持モード)、開閉弁28FL〜28RR及び開閉弁34FL〜34RRが開弁位置に切り換えられると減圧される(減圧モード)。
【0055】
制御弁22F及び22R、開閉弁28FL〜28RR、開閉弁34FL〜34RR、開閉弁60F及び60Rは、後に説明する如く電子制御装置90により制御される。電子制御装置90はマイクロコンピュータ92と駆動回路94とよりなっており、マイクロコンピュータ92は当技術分野に於いて周知の一般的な構成のものであってよい。
【0056】
マイクロコンピュータ92には圧力センサ96よりマスタシリンダ圧Pmを示す信号が、車輪速度センサ98iより左右前輪及び左右後輪の車輪速度Vwiを示す信号(i=fl、fr、rl、rr)が、車速センサの如き種々のセンサ100より車輌の走行パラメータを示す信号がそれぞれ入力されるようになっている。またマイクロコンピュータ92は後述の制動制御フローを記憶しており、制動制御フローに従って左右前輪及び左右後輪の目標制動圧Pti及び目標スリップ率SLti(i=fl、fr、rl、rr)を演算すると共に、各車輪の車輪速度Vwiに基づき車輪加速度Vwdi(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
【0057】
特に図示の実施形態に於いては、左右前輪の高い方の目標制動圧が前輪の目標上流圧Ptfに設定され、前輪側の上流圧が目標上流圧Ptfになるよう制御弁22Fが制御される。同様に、左右後輪の高い方の目標制動圧が後輪の目標上流圧Ptrに設定され、後輪側の上流圧が目標上流圧Ptrになるよう制御弁22Rが制御される。
【0058】
そして左右前輪のうち目標制動圧が高い方の車輪について車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo(負の定数)未満であるか否かの判別が行われ、車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo以上であるときには、当該車輪の制動力発生領域、即ちスリップ率に対する制動力の関係が線形領域にあると判定され、当該車輪の制動圧は制御弁22Fにより対応する目標制動圧Ptiに制御され、当該車輪に対し左右反対側の前輪の制動圧は増減圧制御弁によりスリップ率が対応する目標スリップ率になるよう制御される。
【0059】
これに対し、左右前輪のうち目標制動圧が高い方の車輪の車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo未満であるときには、当該車輪の制動力発生領域が非線形領域にあると判定され、当該車輪及び左右反対側の前輪の何れの制動圧も増減圧制御弁によりスリップ率がそれぞれ対応する目標スリップ率になるよう制御される。
【0060】
同様に、左右後輪のうち目標制動圧が高い方の車輪について車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo(負の定数)未満であるか否かの判別が行われ、車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo以上であるときには、当該車輪の制動力発生領域が線形領域にあると判定され、当該車輪の制動圧は制御弁22Rにより対応する目標制動圧Ptiに制御され、当該車輪に対し左右反対側の後輪の制動圧は増減圧制御弁によりスリップ率が対応する目標スリップ率になるよう制御される。
【0061】
これに対し、左右後輪のうち目標制動圧が高い方の車輪の車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo未満であるときには、当該車輪の制動力発生領域が非線形領域にあると判定され、当該車輪及び左右反対側の後輪の何れの制動圧も増減圧制御弁によりスリップ率が対応する目標スリップ率になるよう制御される。
【0062】
また図示の実施形態に於いては、目標制動圧が高い方の車輪の制動圧が減圧されるべき状況に於いては、マスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧以上であるか否かが判別され、マスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧よりも低いときには、制御弁22F又は22Rが制御されることにより、換言すれば制御弁とポンプとの間のブレーキ油圧制御導管18F、18R内のオイルが制御弁を経て接続導管54F、54Rへ排出されることにより、上流圧及びホイールシリンダ内の圧力が目標制動圧に制御される。
【0063】
これに対しマスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧以上であるときには、増圧弁が開弁された状態にて減圧弁が開閉制御されることにより、減圧されるべきホイールシリンダ内のオイルがブレーキ油圧制御導管FL等及び接続導管36F、36Rを経てバッファリザーバ38F、38Rへ排出され、これによりホイールシリンダ内の圧力が目標制動圧に減圧される。
【0064】
次に図3乃至図5に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於ける制動制御ルーチンについて説明する。尚図3乃至図5に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0065】
まずステップ10に於いては圧力センサ96により検出されたマスタシリンダ圧Pmを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては種々のセンサ98により検出された車速の如き車輌走行パラメータに基づき車輌の挙動が推定され、車輌が例えばスピン状態又はドリフトアウト状態にあるときには当技術分野に於いて公知の要領にてスピン状態又はドリフトアウト状態を抑制するための各車輪の目標制動圧Pti及び目標スリップ率SLtiが演算される。
【0066】
ステップ30に於いては何れかの車輪の目標制動圧Ptiが非制御時の圧力よりも高い圧力である否かの判別により制動圧の制御が必要であるか否かの判別が行われ、否定判別、即ち制動圧の制御が不要である旨の判別が行われたときにはステップ40に於いて各弁が図1に示された非制御位置に設定された後ステップ10へ戻り、肯定判別、即ち制動圧の制御が必要である旨の判別が行われたときにはステップ50へ進む。
【0067】
ステップ50に於いては前輪側の目標上流圧Ptfが左前輪の目標制動圧Ptfl及び右前輪の目標制動圧Ptfrの大きい方の値に設定され、ステップ60に於いては後述のステップに於いて使用されるjが左前輪を示すflに設定されると共に、kが右前輪を示すrlに設定される。
【0068】
ステップ70に於いては当該車輪(この場合左前輪)の目標制動圧Ptjが左右反対側の車輪(この場合右前輪)の目標制動圧Ptk以上であるか否かの判別、即ち制御弁22Fが当該車輪の目標制動圧に基づき制御されるべきであるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ100へ進み、否定判別が行われたときにはステップ80に於いて図4に示されたルーチンに従ってホイールシリンダ圧の通常の増減圧制御が行われ、しかる後ステップ200へ進む。
【0069】
ステップ100に於いては前輪側の目標上流圧Ptfに基づき制御弁22Fのソレノイドに対する目標駆動電圧が演算されると共に、開閉弁28FL〜28RRが開弁され開閉弁34FL〜34RRが閉弁された状態にてポンプ42F、42Rが駆動され、開閉弁60F及び60Rが開弁され、制御弁22Fが上記目標駆動電圧にて制御され、これにより前輪側の上流圧が目標上流圧Ptfに制御される。
【0070】
ステップ105に於いては左右前輪のうち目標制動圧Ptiが高い方の車輪速度Vwjの時間微分値として車輪加速度Vwdjが演算されると共に、車輪加速度Vwdjが基準値Vwdo未満であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ80へ進み、否定判別が行われたときにはステップ110へ進む。
【0071】
ステップ110に於いては当該車輪のホイールシリンダ圧Pjが当技術分野に於いて公知の要領にてホイールシリンダに対するオイルの給排に基づき推定により演算されると共に、当該車輪の目標制動圧Ptjが当該車輪のホイールシリンダ圧Pj未満であるか否かの判別、即ち当該車輪の制動圧が減圧されるべき状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ120へ進む。
【0072】
ステップ120に於いてはマスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧Ptj以上であるか否かの判別、即ち制御弁22Fの制御によっては制動圧を目標制動圧に減圧することができない状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ160へ進み、肯定判別が行われたときには、ステップ130に於いて前輪側の吸入弁60Fが閉弁され、当該車輪の増圧弁28FR又は28FRが開弁され、当該車輪の減圧弁34FL又は34FRが目標制動圧Ptjとホイールシリンダ圧Pjとの偏差に基づくデューティ比にて開閉制御される。
【0073】
ステップ140に於いては当該車輪の目標制動圧Ptjがホイールシリンダ圧Pjと同一であるか否かの判別、即ち制動圧の増減が不要であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150に於いて当該車輪の増圧弁28FL又は28FRが閉弁されると共に当該車輪の減圧弁34FL又は34FRが閉弁され、否定判別が行われたときにはステップ160に於いて当該車輪の増圧弁28FL又は28FRが開弁されると共に当該車輪の減圧弁34FL又は34FRが閉弁される。
【0074】
ステップ200に於いてはjが右前輪を示すfrに設定されると共にkが左前輪を示すflに設定された後、上述のステップ70〜160と同様の処理が行われることにより、右前輪の制動力が制御される。
【0075】
ステップ300に於いては後輪側の目標上流圧Ptrが左後輪の目標制動圧Ptrl及び右後輪の目標制動圧Ptrrの大きい方の値に設定され、ステップ400に於いてはjが左後輪を示すrlに設定されると共にkが右後輪を示すrrに設定された後、上記ステップ70〜160と同様の処理が行われ、これにより左後輪の制動力が制御され、ステップ500に於いてはjが右後輪を示すrrに設定されると共にkが左後輪を示すrlに設定された後、上記ステップ70〜160と同様の処理が行われることにより、右後輪の制動力が制御され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0076】
図5に示された通常の増減圧制御ルーチンのステップ82に於いては、当該車輪の実スリップ率SLjが演算されると共に、実スリップ率SLjが当該車輪の目標スリップ率SLtjを越えているか否かの判別、即ち制動圧が減圧されるべき状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ86へ進み、肯定判別が行われたきにはステップ84に於いて当該車輪の増圧弁が閉弁された状態にて当該車輪の減圧弁が実スリップ率SLjと目標スリップ率SLtjとの偏差に基づくデューティ比にて開閉制御され、これにより当該車輪の実スリップ率が目標スリップ率になるよう減圧制御される。
【0077】
ステップ86に於いては当該車輪の実スリップ率SLjが目標スリップ率SLtj未満であるか否かの判別、即ち当該車輪の制動圧が増圧されるべき状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ88に於いて当該車輪の増圧弁及び減圧弁が閉弁されることによって制動圧が保持され、肯定判別が行われたときにはステップ90に於いて当該車輪の増圧弁が実スリップ率SLjと目標スリップ率SLtjとの偏差に基づくデューティ比にて開閉制御されると共に、当該車輪の減圧弁が閉弁され、これにより当該車輪の実スリップ率が目標スリップ率になるよう増圧制御される。
【0078】
かくして図示の実施形態によれば、左右の車輪のうち目標制動圧が低い方の車輪については、ステップ70に於いて否定判別が行われ、ステップ80に於いて通常の増減圧弁による増減圧制御が行われ、これにより当該車輪の実スリップ率が目標スリップ率になるよう制動力が制御される。
【0079】
左右の車輪のうち目標制動圧が高い方の車輪については、ステップ70に於いて肯定判別が行われ、ステップ100に於いて上流圧が左右の車輪の目標制動圧の高い方の値と等しい目標上流圧になるよう制御弁が制御され、車輪加速度Vwdjが基準値Vwdo以上であり目標制動圧が高い方の車輪の制動力発生領域が線形領域であるときには、ステップ105に於いて否定判別が行われ、ステップ100〜160が実行されることにより、当該車輪の制動圧Pjが目標制動圧Ptiになるよう制動力が制御される。
【0080】
これに対し、車輪加速度Vwdjが基準値Vwdo未満であり目標制動圧が高い方の車輪の制動力発生領域が非線形領域であるときには、ステップ105に於いて肯定判別が行われ、ステップ80に於いて増減圧弁による増減圧制御が行われ、これにより当該車輪の実スリップ率が目標スリップ率になるよう制動力が制御される。
【0081】
従って図示の実施形態によれば、前輪側及び後輪側の何れについても、左右の車輪のうち目標制動圧が高い方の車輪については、車輪の制動力発生領域が線形領域であるときには、応答性の低い制御弁22F、22Rが制御されることにより当該車輪の制動圧Pjが目標制動圧Ptiになるよう制動力が制御され、車輪の制動力発生領域が非線形領域であるときには、増減圧弁による増減圧制御が行われることにより当該車輪の実スリップ率が目標スリップ率になるよう制動力が制御されるので、左右の車輪のうち目標制動圧が高い方の車輪の制動力発生領域が線形領域であるか非線形領域であるかに拘わらず、当該車輪の制動力が制御弁22F、22Rにより制御される場合に比して応答性よく制動力を制御することができ、また当該車輪の制動力が増減圧弁により制御される場合に比して弁の制御により消費されるエネルギを低減し、また繰り返し開閉されることによる増減圧弁の耐久性の低下を低減することができる。
【0082】
また一般に、車輪のスリップ率SLと車輪の制動力Fbとの間には図6に示された関係があり、車輪の制動力発生領域が線形領域にあるときには、制動力Fbに対するスリップ率SLの比は実質的に一定であるが、制動力が増大され車輪の制動力発生領域が非線形領域になると、制動力Fbに対するスリップ率SLの比は低下する。
【0083】
従って例えば図7に示されている如く、車輪の制動力が0より大きい値に増大される場合について見ると、車輪加速度Vwdiは0より負の値に漸減し、車輪の制動力発生領域が線形領域より非線形領域になる時点t1以上になると急激に小さくなる。よって時点t1に於ける車輪加速度Vwdiを基準値Vwdoとして設定すれば、車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo未満であるか否かの判定により制動力発生領域が非線形領域にあるか否かを判定することができる。
【0084】
図示の実施形態によれば、ステップ105に於いて車輪速度Vwiに基づき車輪加速度Vwdiが演算されると共に、車輪加速度Vwdiが基準値Vwdo未満であるか否かの判別により制動力発生領域が非線形領域であるか否かの判別が行われるので、前述の先の提案にかかる制動制御装置の場合に比して容易に且つ簡単な演算にて制動力発生領域が非線形領域であるか否かを判別することができる。
【0085】
特に図示の実施形態によれば、目標制動圧が高い方の車輪の制動力発生領域が線形領域にあり、ステップ105に於いて否定判別が行われた場合に於いて、目標制動圧Ptjがホイールシリンダ圧Pjよりも低く、当該車輪の制動圧が減圧されるべき状況であっても、マスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧Ptjよりも低いときには、ステップ120に於いて否定判別が行われ、ステップ160に於いて増減圧弁が非制御位置に設定され、これにより制御弁とポンプとの間のブレーキ油圧制御導管18F又は18R内のオイルが制御弁22F又は22Rを経て接続導管導管54F又は54Rへ排出されることによって上流圧が目標上流圧に制御される。
【0086】
これに対し制動圧が減圧されるべき状況であってマスタシリンダPmが当該車輪の目標制動圧Ptj以上であるときには、ステップ110及び120に於いてそれぞれ肯定判別が行われ、ステップ130に於いて吸入弁60F又は60Rが閉弁され、増圧弁が開弁され、減圧弁が所定のデューティ比にて開閉され、これにより当該車輪のホイールシリンダ内のオイルがブレーキ油圧制御導管20FL等及び接続導管36F又は36Rを経てバッファリザーバ38F又は38Rへ排出されることによってホイールシリンダ圧が目標上流圧に制御される。
【0087】
従って図示の実施形態によれば、上流圧により制御されるべき車輪の目標制動圧がホイールシリンダ圧よりも低く且つマスタシリンダ圧が当該車輪の目標制動圧以上である状況に於いても、ホイールシリンダ圧を確実に目標上流圧に減圧することができ、これにより左右の車輪のうち目標制動圧が高い車輪の制動圧を確実に目標制動圧に減圧することができる。
【0088】
また図示の実施形態によれば、上流圧により制動圧が制御される車輪の目標制動圧Ptjがホイールシリンダ圧Pjよりも低く且つマスタシリンダ圧Pmが当該車輪の目標制動圧Ptj以上であるときには、ステップ130に於いて増圧弁が開弁され減圧弁が所定のデューティ比にて開閉されるだけでなく、吸入弁60F又は60Rが閉弁されるので、マスタシリンダ14内のオイルがポンプ吸入弁60F又は60Rを経てポンプの吸入側へ流れることに起因してブレーキペダル12の踏み込みストロークが不自然に増大することを確実に防止することができる。
【0089】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0091】
また図示の実施形態に於いては、増圧弁としての開閉弁28FL〜28RR及び減圧弁としての開閉弁34FL〜34RRがそれぞれ互いに共働して対応するホイールシリンダ内の圧力を増圧し保持し減圧する増減圧弁を構成しているが、これらの開閉弁はそれぞれ上記増圧モード、保持モード、減圧モードに対応する増圧位置、保持位置、減圧位置を有する一つの切換え弁に置き換えられてもよく、その場合にはマスタシリンダ圧Pmが制御弁によって制御されるべき目標制動圧以上である状況に於いて当該車輪の制動圧が減圧されるべき場合に、切換え弁が減圧位置に設定されることにより当該車輪の制動圧が目標制動圧に減圧される。
【0092】
また図示の実施形態に於いては、制動装置10は左前輪及び右前輪のブレーキ液圧系統と左後輪及び右後輪のブレーキ液圧系統とよりなっているが、制動装置10は左前輪及び右後輪のブレーキ液圧系統と右前輪及び左後輪のブレーキ液圧系統とよりなるものであってもよい。
【0093】
また図示の実施形態に於いては、各車輪の目標制動圧Pti及び目標スリップ率SLtiは車輌の挙動制御の目的で演算されるようになっているが、目標制動圧Pti及び目標スリップ率SLtiは当技術分野に於いて公知の任意の車輌制御の目的で演算されてよい。
【0094】
また図示の実施形態に於いては、挙動制御の如き車輌制御の目的で車輪の制動圧が制御される必要がないときには、各弁が図1に示された非制御位置に設定されるようになっているが、運転者による制動操作が行われたときにも制御弁及びポンプ吸入弁が制御され、これにより各車輪の制動圧がマスタシリンダ圧Pmに応じてブレーキバイワイヤ式に制御されてもよい。
【0095】
更に図示の実施形態に於いては、各車輪のホイールシリンダ圧Piはホイールシリンダに対するオイルの給排に基づき推定されるようになっているが、ホイールシリンダ圧Piは圧力センサにより検出されてもよい。
【0096】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、車輪加速度に基づいて車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かが判定され、車輪加速度が基準値未満であるときに前記関係が非線形領域であると判定される。そして前記関係が線形領域であると判定されたときには、目標制動圧が最も高い車輪の制動圧が最も高い目標制動圧になるよう該車輪の増減圧弁が制御され、且つ同一系統の他の車輪のスリップ率が対応する目標スリップ率になるよう他の車輪の増減圧弁が制御され、前記関係が非線形領域であると判定されたときには、各車輪のスリップ率がそれぞれ対応する目標スリップ率になるよう各車輪の増減圧弁が制御される。従って複雑な演算や高コストな制御装置を要することなく車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かの判定を容易に且つ簡便に行うことができ、またその判定結果に応じて最適の制動力制御態様により車輪の制動力を制御することができ、これにより車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が線形領域であり高応答が必要でないときには目標制動圧が最も高い車輪の増減圧弁が繰り返し開閉制御されることをできるだけ回避してその耐久性の低下を防止することができると共に、車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であり高応答が必要な状況に於いては目標制動圧が最も高い車輪についても応答性よく制動力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による制動制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電子制御装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示された前輪用の制御弁を示す解図的断面図である。
【図3】実施形態の制動制御ルーチンの要部を示すフローチャートである。
【図4】実施形態の制動制御ルーチンの残りの部分を示すフローチャートである。
【図5】図3のステップ80に於いて実行される通常の増減圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】車輪のスリップ率SLと車輪の制動力Fbとの間の関係を示すグラフである。
【図7】車輪の制動力が0より大きい値に増大される場合に於ける車輪加速度Vwdiの変化の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
10…制動装置
14…マスタシリンダ
22F、22R…制御弁
26FL、26FR、26RL、26RR…ホイールシリンダ
42F、42R…オイルポンプ
28FL〜28RR、34FL〜34RR…開閉弁
42F、42R…ポンプ
48F、48R…ダンパ
48…アキュムレータ
70…弁室
74…弁要素
84…圧縮コイルばね
88…逆止弁
90…電子制御装置
96…圧力センサ
98i…車輪速度センサ
100…種々の力センサ
Claims (1)
- マスタシリンダの作動液圧を車輪に対応して設けられたホイールシリンダへ供給する作動液圧供給通路と、前記作動液圧供給通路に設けられた制御弁と、前記制御弁と前記ホイールシリンダとの間にて前記作動液圧供給通路に設けられた増減圧弁と、前記制御弁と前記増減圧弁との間の前記作動液圧供給通路へ高圧の作動液体を供給する高圧液体供給源と、前記車輪のスリップ率に対する車輪の制動力の関係が非線形領域であるか否かを判定する制動力発生領域判定手段と、前記制動力発生領域判定手段の判定結果に応じて前記制御弁及び前記増減圧弁の制御態様を選択し、選択された制御態様を使用して車輪の制動力を制御する選択制御手段とを有する車輌の制動制御装置に於いて、前記作動液圧供給通路はマスタシリンダの作動液圧を同一系統の各車輪に対応して設けられたホイールシリンダへ供給するよう構成され、前記増減圧弁は各車輪に対応して前記作動液圧供給通路に設けられ対応するホイールシリンダ内の圧力を増減するよう構成され、前記制動力発生領域判定手段は車輪速度を検出する手段と、検出された車輪速度に基づき車輪加速度を演算する手段とを有し、車輪加速度が基準値未満であるときに前記関係が非線形領域であると判定し、前記選択制御手段は各車輪の目標制動圧及び目標スリップ率を演算する手段を有し、前記選択制御手段は前記作動液圧供給通路内の圧力が前記同一系統の車輪の目標制動圧のうち最も高い目標制動圧になるよう前記制御弁を制御すると共に、前記制動力発生領域判定手段により目標制動圧が最も高い車輪について前記関係が線形領域であると判定されたときには、目標制動圧が最も高い車輪の制動圧が前記最も高い目標制動圧になるよう該車輪の前記増減圧弁を制御し、且つ前記同一系統の他の車輪のスリップ率が対応する前記目標スリップ率になるよう他の車輪の前記増減圧弁を制御し、前記制動力発生領域判定手段により目標制動圧が最も高い車輪について前記関係が非線形領域であると判定されたときには、各車輪のスリップ率がそれぞれ対応する前記目標スリップ率になるよう各車輪の前記増減圧弁を制御することを特徴とする車輌の制動制御装置。
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