JP4171105B2 - 位相差板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一軸もしくは二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムよりなる位相差板の製造方法に関し、例えば、液晶表示装置で位相差を補償するために用いて好適な位相差板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりTN(ツイステッドネマチック)液晶表示装置やSTN(スーパーツイステッドネマチック)液晶表示装置が各種OA機器や表示機器に用いられている。しかしながら、上記液晶表示装置では、液晶セルで生じる位相差により表示画面が着色するという問題があった。そのため位相差板を用いて位相差を補償して上記着色を解消する方法が行われている。
【0003】
また、液晶表示装置などにおいては、表示部分の全面にわたり色むらやコントラストむらが小さいことが強く要求される。従って、このような均一な表示を可能とするには液晶表示セルに貼り合わされる位相差板の位相差が全面にわたり均一であることが必要である。
【0004】
上記色むらやコントラストむらは位相差板を液晶表示装置に組み込んだ際に、位相差板の位相差ばらつきにより生じる画質不良であり、位相差のばらつきを抑制することが必要である。ところで、位相差板における位相差補償性能は位相差で表される。位相差は樹脂フィルムの屈折率差(即ち複屈折性)をΔn、樹脂フィルムの厚さをdとしたとき、Δn×dで表される。
【0005】
位相差の均一な位相差板を製造する方法として、特開平8−122526号公報には、延伸前の原反フィルムの溶剤含有量を固形分基準で0.5〜7重量部として延伸することが開示されている。しかし、この方法で得られた位相差板では、例えば屈折率差Δnが幅方向に均一化されていたとしても、フィルムの厚みdがばらついていると位相差がばらつくことになり、必ずしも色むらやコントラストむらが解消できるとは限らなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、厚み精度がよくないフィルムでも延伸後の位相差むらを充分小さくすることのできる位相差板の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の位相差板の製造方法は、重量平均分子量が4.5万以下である内層樹脂の両面に、重量平均分子量が6万以上である外層樹脂が積層された熱可塑性樹脂フィルムを、該熱可塑性樹脂のTg−30℃〜Tg+100℃の温度範囲で予熱した後、該予熱温度よりも低い温度へ冷却しつつ延伸することを特徴とする。
【0008】
本発明ではフィルムである熱可塑性樹脂は、延伸した後に位相差板として要求される100〜1000nmの位相差が得られるものであれば限定されず、例えばセルロース系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂等が挙げられる。
【0009】
上記のうち、特に透明性と光の波長分散性にすぐれるポリカーボネート系樹脂やポリサルホン系樹脂が好ましく、ポリサルホン系樹脂は光の波長分散性が液晶に近い特性を有するので特に好ましい。光の波長分散性がよいということは、液晶によって各波長で異なる楕円偏光になった光を良好に補償することができ、液晶表示のコントラストが向上することである。
【0010】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとすると、本発明では上記熱可塑性樹脂フィルムをTg−30℃〜Tg+100℃の温度範囲で予熱する。予熱温度がTg−30℃よりも低いと、フィルムの柔軟性が不足して延伸の際に破断しやすくなる。また、Tg+100℃よりも高いと、熱可塑性樹脂フィルムの保形性が低下し、搬送などにおいてフィルムが垂れたり変形することがある。
【0011】
予熱の手段は特に限定されず、熱風、マイクロ波もしくは遠赤外線等を利用したヒーター、温度調節して加熱されたロールもしくは金属ベルト等を用いた公知の加熱手段を採用することができる。
【0012】
上記のようにして予熱した熱可塑性樹脂フィルムを上記予熱温度よりも低い温度へ冷却しつつ延伸する。延伸はフィルムの押出成形工程に連続して行ってもよく、フィルムを押出成形後一旦巻き取り、その後延伸を行う別工程としてもよい。延伸の形態は縦一軸延伸、横一軸延伸、縦横同時二軸延伸、逐次二軸延伸などいずれでもよいが、縦一軸延伸によるものが視野角特性にすぐれるので好ましい。延伸倍率は特に限定しないが、液晶表示装置に使用する場合は通常1.2〜2倍程度とされる。
【0013】
本発明で熱可塑性樹脂フィルムを予熱温度よりも低い温度へ冷却しつつ延伸するのは、熱可塑性樹脂フィルムの厚みの大きい部分と小さい部分との熱容量差に起因する冷却速度の差にもとづき生じる温度差により屈折率差Δnが異なることを利用するためである。また同時に、外層樹脂と内層樹脂との温度差を利用し、内層樹脂よりも温度の低い外層樹脂をより高配向させることにより、厚みの大きい部分と小さい部分との位相差を近づけるためである。
【0014】
冷却温度は延伸により熱可塑性樹脂フィルムが破断しない限り特に限定するものではない。しかしながら、Tg−30℃よりも低い温度で延伸を行うと熱可塑性樹脂フィルムの破断が起こりやすくなるので、予熱温度はTg付近からTg+100℃の範囲とし、延伸時の温度はTg−30℃を下回らないようにするのが好ましい。
【0015】
本発明では位相差板として、外層樹脂が内層樹脂よりも重量平均分子量の大きい熱可塑性樹脂を用いる。この理由は位相差をより均一にするためで、同一延伸条件では重量平均分子量の大きい外層樹脂の方が配向度が高くなり屈折率差が大きいので、それにより外層樹脂と内層樹脂との屈折率差がより大きくなる。
【0016】
上記において、表層樹脂の重量平均分子量が6万よりも小さいと、延伸しても配向の緩和が速く充分な配向を付与できず、所望の位相差を得ることが困難である。厚みを大きくすれば所望の位相差を得ることは可能であるが、コスト高となり、重くて取扱い性がよくない等の問題がある。また、内層樹脂の重量平均分子量が4.5万を超えると外層樹脂との配向度の差が充分つかず位相差の均一性が不充分となる。
【0017】
本発明の位相差板とする熱可塑性樹脂フィルムの成形方法は、多層化が可能であり、厚み精度がよく、成形による低歪み性などの面からTダイ共押出成形法が好適であるが、溶液キャスティング法により多層成形する方法も採用できる。
【0018】
(作用)
フィルムを熱可塑性樹脂のTg−30℃〜Tg+100℃の温度範囲で予熱した後、該予熱温度よりも低い温度へ冷却しつつ延伸するので、平面方向にみてフィルムに厚みむらがあっても、延伸時において厚みの大きい部分では冷却され難く、厚みの小さい部分よりも温度が高くなる。屈折率差Δnはフィルム温度が高いほど小さくなるので厚みの大きい部分ではΔnが小さく、位相差を厚みの小さい部分に近づけることができる。
【0019】
一方、フィルムの厚み方向における温度分布をみると、外部から冷却を受けたフィルムは厚み方向全体にわたり均一な温度分布ではなく、表面から中心部へ向かって昇温する温度勾配が生じており、延伸による配向度、即ち屈折率差は内層樹脂の方が小さい。この状態で延伸されるとフィルム全体にわたって厚みむらを相殺して屈折率差が均一となり、位相差むらを小さくすることができる。
【0020】
また、本発明では外層樹脂が内層樹脂よりも重量平均分子量の大きい熱可塑性樹脂を用いているので、外層樹脂での配向度が内層樹脂に比べ、より大きくなり上記のように表面から中心部へ向けて昇温する厚み方向における温度勾配が生じたときの効果を高める作用がある。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
ポリサルホン樹脂(帝人アモコエンジニアリングプラスチック社製,商品名「P−3500」,重量平均分子量65000)ペレットとポリサルホン樹脂(帝人アモコエンジニアリングプラスチック社製,商品名「P−1700」,重量平均分子量44000)ペレットをそれぞれ異なる二軸押出機を用いてそれぞれ300℃で混練した後、共押出用のTダイで金型温度300℃、金型先端温度(リップ温度)330℃に設定して3層押出成形を行った。各層の厚みは30μm、20μm、30μmに設定した。冷却ロール温度150℃に設定し、金属ロールとゴムロールでニップ冷却し、厚み81±2μmのポリサルホン未延伸フィルムを作製した。
【0022】
上記未延伸フィルムを搬送ロールを有するオーブンで220℃に予熱し、190℃のオーブン中のロール延伸機(ロール温度190℃)にて延伸倍率1.3倍に縦一軸延伸し、平均厚み69±2.5μmの延伸フィルムを得た。
【0023】
得られた延伸フィルムの中央部から幅500mm、長さ1000mmの位相差フィルム試料を切り出した。この試料の位相差(レターデーション値)を590nmで幅方向、長さ方向とも1cm間隔で測定したところ、平均値は502nm、レターデーション値のばらつきの最大値(シート面内におけるレターデーション値の最大値−最小値)は2.8nmであった。
【0024】
(実施例2)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製,商品名「パンライトK−1300」,重量平均分子量65000)ペレットとポリカーボネート樹脂(帝人化成社製,商品名「パンライトK−1200」,重量平均分子量43000)ペレットを、それぞれ異なる二軸押出機を用いてそれぞれ250℃で混練した後、共押出用のTダイで金型温度260℃、金型先端温度(リップ温度)270℃に設定して3層押出成形を行った。各層の厚みは30μm、20μm、30μmに設定した。冷却ロール温度120℃に設定し、金属ロールとゴムロールでニップ冷却し、厚み80±2μmのポリカーボネート未延伸フィルムを作製した。
【0025】
上記未延伸フィルムを実施例1で用いたものと同じロール延伸機(ロール温度190℃)にて予熱ゾーン170℃、延伸ゾーン145℃(ロール温度145℃)に設定し、延伸倍率1.4倍に縦一軸延伸し、平均厚み66±2.5μmの延伸フィルムを得た。
【0026】
得られた延伸フィルムを用いて実施例1と同様にして位相差を測定したところ、平均値は680nm、レターデーション値のばらつきの最大値は3.2nmであった。
【0027】
(比較例1)
ポリサルホン樹脂(帝人アモコエンジニアリングプラスチック社製,商品名「P−3500」,重量平均分子量65000)ペレットを二軸押出機を用いて290℃で混練した後、金型温度290℃、金型先端温度(リップ温度)330℃に設定して押出成形を行った。冷却ロール温度150℃に設定し、金属ロールとゴムロールでニップ冷却し、厚み80±2μmのポリサルホン未延伸フィルムを作製した。
【0028】
上記未延伸フィルムを実施例1で用いたものと同じロール延伸機にて、予熱ゾーン200℃、延伸ゾーン195℃(ロール温度195℃)に設定し、延伸倍率1.4倍に縦一軸延伸し、平均厚み71±2.5μmの延伸フィルムを得た。
【0029】
得られた延伸フィルムを用いて実施例1と同様にして位相差を測定したところ、平均値は615nm、レターデーション値のばらつきの最大値は25nmであった。
【0030】
【発明の効果】
一般に溶融押出法で成形されたフィルムはキャスティング法によるフィルムに比べて厚み精度が劣るが、このような厚み精度がよくない溶融押出フィルムでも延伸後の位相差が均一な位相差板を提供できる。
従って、キャスティング法に比べて設備が安価であり、溶剤を用いないので安全に製造することのできる押出成形フィルムを利用して高精度の均一性を有する位相差板を得ることができ、更に、位相差の高い(500nm以上)の位相差板にも適用することができる。
Claims (1)
- 重量平均分子量が4.5万以下である内層樹脂の両面に、重量平均分子量が6万以上である外層樹脂が積層された熱可塑性樹脂フィルムを、該熱可塑性樹脂のTg−30℃〜Tg+100℃の温度範囲で予熱した後、該予熱温度よりも低い温度へ冷却しつつ延伸することを特徴とする位相差板の製造方法。
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