上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。図1は本発明にかかる床材用化粧材の一実施例を概略的に示す断面図であり、図中の1は床材用化粧材、2は木質系基材、3は接着剤層、4は合成樹脂製シート、5は溝部、6はインキ充填層、7は表面保護層、21は雌実、22は雄実、40は凹部、41は絵柄印刷層、42はベタ柄印刷層、43は意匠向上層をそれぞれ示す。
まず、図1は本発明にかかる床材用化粧材の一実施例を概略的に示す断面図であって、床材用化粧材1は、木質系基材2に接着剤層3を介して、一方の面(表面)に凹部40を有する凹凸模様を設け、他方の面(裏面)に絵柄印刷層41とベタ柄印刷層42とを順に印刷して意匠向上層43を形成した合成樹脂製シート4を前記一方の面(表面)が表出するように貼合すると共に、前記合成樹脂製シート4の一方の面側に溝加工を施して断面V字状の溝部5を設け、前記凹部40内と前記溝部5内とにインキ充填層6を形成して後に、前記合成樹脂製シート4の一方の面全面に硬化型樹脂からなる表面保護層7を形成したものである。前記木質系基材2の一側部には雌実21を設けてあり、他側部には前記雌実21に嵌合し得る雄実22を設けてある。ところで、図1においては床材用化粧材1の前記合成樹脂製シート4を設けた側の両角部を直角に形成したが、複数枚の床材用化粧材1を前記木質系基材2の一側部に設けた雌実21と他側部に設けた雄実22とで嵌合させた時に、前記断面V字状の溝部5を形成するように両角部が面取りされたものであってもよい。この場合には、面取りされた部位にも前記インキ充填層6と前記表面保護層とが当然形成されている。また、断面V字状の溝部5は一例を挙げたものであってこの形状に限るものではない。
前記木質系基材2としては、単板、合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボード、ソフトボードなどの周知のものを挙げることができる。
前記合成樹脂製シート4としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレンαオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン−6,ナイロン−66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂は単独であっても2種以上の混合物であってもよい。しかし、本発明の床材用化粧材1に用いる合成樹脂製シート4は、印刷層の形成や凹凸模様を設けるエンボス加工等が施されるために、これらの適性が要求されると共に安価である必要があり、また、昨今問題となっている燃焼時に有害なガスを発生しないこと等を考慮するとオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
また、前記オレフィン系熱可塑性樹脂からなる合成樹脂製シート4は、無延伸の状態、あるいは、1軸ないし2軸方向に延伸した状態のいずれの状態のシートであってもよいし、また、顔料等を添加した着色シートであっても構わないが、図1に示した構成の場合には、前記絵柄印刷層41と前記ベタ柄印刷層42等の前記意匠向上層43が前記合成樹脂製シート4を通して見えることが基本であり、すくなくとも前記意匠向上層43が見える程度の透明性が必要である。この合成樹脂製シート4の厚さとしては、概ね60〜300μm程度が好ましい。また、必要に応じて、この合成樹脂製シート4の一方の面ないし両方の面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。また、この合成樹脂製シート4を構成するオレフィン系熱可塑性樹脂には適宜、周知の酸化防止剤、光安定剤、紫外線防止剤、あるいは、難燃性を付与するための無機充填剤、あるいは、意匠性を付与するための発泡剤等の各種の添加剤を添加することができる。ところで、上記着色シートに用いる顔料としては、有機系顔料でもよいが耐熱性や耐候性を考慮すると周知の無機系顔料がより好ましい。
次に、表面保護層7としては、床材用化粧材に要求される耐擦傷性、耐磨耗性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層7を形成する樹脂としては硬化型樹脂を用いて形成するのが適当である。硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂に大別される。
まず、熱硬化型樹脂について説明する。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共重合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂には添加される。
上記のイソシアネートとしては、2価以上の脂肪族または芳香族イソシアネートを使用できるが、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的なイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。
上記2液硬化型ポリウレタンとしては、その分子構造中に水酸基を平均して2個以上有するポリオール化合物からなる第1液と、ポリイソシアネート化合物からなる第2液とを水酸基とイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5になるように配合したものを挙げることができる。
上記エポキシ樹脂としては、その分子構造中にエポキシ基を平均2個以上有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を1分子中に3個以上有するモノ−アミン、または、ポリ−アミンとをエポキシ樹脂のエポキシ当量とモノ−アミン、または、ポリ−アミンの活性水素当量の比が0.7〜1.5になるように配合したものを挙げることができる。
上記の溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されているものを使用することができ、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
ところで、この熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、この熱硬化型樹脂を溶液化し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗工法で塗工することにより形成することができる。この場合の塗工量としては、固形分として概ね5〜30g/m2が適当であり、より好ましくは15〜25g/m2である。
次に、電離放射線硬化型樹脂について説明する。電離放射線硬化型樹脂とは、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こし3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常1900〜3800Åの波長域が主として用いられ、また、電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型灯の各種電子線加速器を用い、100〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーをもつ電子を照射するものを使用できる。
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。尚、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ−ト等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。尚、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
上記の溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されているものを使用することができ、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
ところで、この電離放射線硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、この電離放射線硬化型樹脂を溶液化し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗工法で塗工することにより形成することができる。この場合の塗工量としては、固形分として概ね5〜30g/m2が適当であり、より好ましくは15〜25g/m2である。
また、電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、より一層耐擦傷性、耐磨耗性を付与する場合には、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等の研磨材を加えることにより達成することができる。この研磨材の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対する割合は1〜80重量部が適当である。
上記で説明した熱硬化型樹脂あるいは電離放射線硬化型樹脂には、必要に応じて、染料、顔料等の着色剤、艶調製剤、増量剤等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の添加剤を加えることができる。
また、前記合成樹脂製シート4と前記表面保護層7との接着強度を向上させる目的で、前記合成樹脂製シート4と前記表面保護層7との間にプライマー層を設けることもできる。このプライマー層としては、(1)アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と、(2)イソシアネートとからなる樹脂で形成されたものである。すなわち、プライマー層は、(1)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとなし、該プレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られるものである。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共にアクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体が形成される。そして、このアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基を(2)のイソシアネートと反応させて硬化させることにより形成されたものである。
前記成分Aは、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。具体的には、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)が耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れ、ウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。前記成分Aは共重合体においてアクリル樹脂成分となるものであり、分子量5000〜7000(重量平均分子量)のものが耐候性、接着性が特に良好であるために好ましく用いられる。また、前記成分Aは両末端に水酸基を有するもののみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っているものを上記の両末端に水酸基を有するものと混合して用いてもよい。共役二重結合が残っているアクリル重合体を混合することにより、プライマー層と接する層、たとえば、前記表面保護層7の樹脂に電離放射線硬化型樹脂を用いた場合に、該電離放射線硬化型樹脂とアクリル重合体の共役二重結合が反応するために特に電離放射線硬化型樹脂との間の接着性を向上させることができ、プライマー層を設ける場合には、電離放射線硬化型樹脂を用いて前記表面保護層7を形成する方が望ましい。
前記成分Bは、ジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成する。成分Bは両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。このポリエステルジオールとしては、芳香族またはスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物またはその誘導体、またはエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。上記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール等の短鎖ジオール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、上記二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸またはアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンタンジオールおよび1,4シクロヘキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
プライマー層において、成分Bと成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、該プライマー層に柔軟性を与え、合成樹脂製シートとの接着性に寄与する。また、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、前記プライマー層において耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂において、成分Bの分子量は前記プライマー層に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸またはアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオールおよび1,4シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルジオールの場合、500〜5000(重量平均分子量)が好ましい。
成分Cは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族または脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネートとしては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることできる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。上記の成分A〜Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオール、および、後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合も含める)と、イソシアネート基の当量比はイソシアネート基が過剰となるようにする。
上記の三成分A、B、Cを60〜120℃で2〜10時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共にアクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤として、たとえば、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を該鎖延長剤と反応させ、鎖延長することでアクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する(1)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
この(1)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体に、(2)のイソシアネートを加えると共に、塗工法、塗工量(乾燥後の)を考慮して必要な粘度に調節した塗工液となし、たとえば、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗工法で塗工することにより、プライマー層を形成することができる。前記プライマー層の乾燥後の塗工量としては、1〜20g/m2が適当であり、好ましくは1〜5g/m2である。また、前記プライマー層は、上記樹脂以外に必要に応じてシリカ微粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよい。また、(2)のイソシアネートとしては(1)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、たとえば、2価以上の脂肪族または芳香族イソシアネートが使用でき、特に熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、または、これらの2量体、3量体などの多量体、あるいは、これらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。
次に、前記合成樹脂製シート4の一方の面に形成する前記凹部40を有する凹凸模様は加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができる。凹凸模様としては、たとえば、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。
また、前記合成樹脂製シート4の一方の面に形成する前記絵柄印刷層41および前記ベタ柄印刷層42は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。前記絵柄印刷層41としては、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、前記ベタ柄印刷層42としては、隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。図1においては、前記絵柄印刷層41および前記ベタ柄印刷層42の両方を設けた構成を示したが、いずれか一方の構成であっても構わない。
また、前記絵柄印刷層41および前記ベタ柄印刷層42に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができが、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好適にはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。
また、前記合成樹脂製シート4に形成した前記凹部40内および前記断面V字状の溝部5内に形成するインキ充填層6としては、上記で説明した前記絵柄印刷層41および前記ベタ柄印刷層42を形成するために用いるインキと同じインキを用いて形成することができるので説明は省略する。
また、前記合成樹脂製シート4と、前記インキ充填層6、あるいは、前記絵柄印刷層41および前記ベタ柄印刷層42との接着強度を向上させる目的で、各層間に上記で説明したプライマー層を設けも構わない。
次に、本発明の床材用化粧材の製造方法について、図1を用いて説明する。本発明の床材用化粧材の製造方法は、まず、両面にコロナ放電処理を施した合成樹脂製シート(透明シート)4の一方の面(表面)にエンボス加工を施して凹部40を有する凹凸模様を形成すると共に、他方の面(裏面)に上記で説明したプライマー層(図示せず)を設けて後に、該プライマー層(図示せず)上に絵柄印刷層41とベタ柄印刷層42とを順に印刷して意匠向上層43を形成する。このものを別途用意した木質系基材2に接着剤層3を介して前記意匠向上層43が前記接着剤層3側に位置するようにして貼合する。その後、V溝加工機等にて表面側に溝加工を施して断面V字状の溝部5を形成すると共に、表面にワイピング処理を施して前記凹部40内と前記溝部5内にワイピングインキを充填してインキ充填層6を形成して後に、さらに表面全面に上記で説明したプライマー層(図示せず)を設けると共に、該プライマー層(図示せず)上に硬化型樹脂からなる表面保護層7を形成するというものである。このような製造方法を採ることにより、従来溝部に行っていた選択的塗料塗布作業をなくすことができると共に、従来、塗料塗布をすることにより発生していた溝部の経時的な色落ち問題を解消することができる。また、溝部の耐水性についても従来の塗料塗布に比べて格段に向上させることができる。
また、本発明の床材用化粧材は、図1に示した床材用化粧材1の裏面、すなわち、木質系基材2の表出面に合成樹脂製防湿シート(図示せず)を貼着することにより、裏面からの木質系基材2の吸放湿を防止することができ、木質系基材の反り、割れ、膨潤を一層防止することができる。これに用いる合成樹脂製防湿シートとしては、防湿性能とコスト、あるいは、昨今問題となっている燃焼時に有害なガスを発生しない等を考慮すると、オレフィン系熱可塑性樹脂からなるシートが好ましい。具体的には、前記合成樹脂製シートで説明したオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることができ、その厚さとしては、用いるオレフィン系熱可塑性樹脂の種類により異なるが、透湿度として30g/m2・24hr(JISZ0208:カップ法による測定)以下、より好ましくは20g/m2・24hr(JISZ0208:カップ法による測定)以下となるように設定すればよく、概ね25〜50μmである。この防湿シートについても一方の面ないし両方の面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
〔実施例1〕
両面にコロナ放電処理を施した120μmのポリプロピレンフィルム〔三菱化学エムケーブイ(株)製 150AG3〕の一方の面(裏面)にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕溶液をグラビア塗工法で固形分が2g/m2となるように塗工して印刷用プライマー層を形成し、該プライマー層上にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕からなる印刷インキを用いてグラビア印刷法で木目模様の絵柄印刷層とベタ柄印刷層と形成した。
その後、前記ポリプロピレンフィルム〔三菱化学エムケーブイ(株)製 150AG3〕の他方の面(表面)に前記木目模様の絵柄印刷層の導管部に対応するようにエンボス版で凹部を設け、このものを別途用意した12mm厚さの合板と接着剤層〔中央理化(株)製リカボンドBA−10A(100重量部)に対してBA−10B(5重量部)を添加した接着剤をウエット状態で65g/m2塗工して形成した接着剤層〕を介して前記ポリプロピレンフィルム〔三菱化学エムケーブイ(株)製 150AG3〕の他方の面(表面)が表出するように貼合すると共に、V溝加工機にて他方の面(表面)側に溝加工を施して断面V字状の溝部を形成し、さらに、前記凹部内と前記溝部内にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕からなるワイピングインキを充填して乾燥させると共に、その上にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕溶液をグラビア塗工法で固形分が2g/m2となるように塗工して表面保護層用プライマー層を形成し、その後に該プライマー層上に表1に示す配合の電離放射線硬化型樹脂をロールコート法で塗工、乾燥して後に電子線を照射することにより、固形分が20g/m2の表面保護層を形成して本発明の床材用化粧材を得た。
〔比較例1〕
両面にコロナ放電処理を施した120μmのポリプロピレンフィルム〔三菱化学エムケーブイ(株)製 150AG3〕の一方の面(裏面)にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕溶液をグラビアコート法で固形分が2g/m2となるように塗工して印刷用プライマー層を形成し、該プライマー層上にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕からなる印刷インキを用いてグラビア印刷法で木目模様の絵柄印刷層とベタ柄印刷層を形成した。
その後、前記ポリプロピレンフィルム〔三菱化学エムケーブイ(株)製 150AG3〕の他方の面(表面)に前記木目模様の絵柄印刷層の導管部に対応するようにエンボス版で凹部を設け、その後、前記凹部にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕からなるワイピング印刷インキを充填して乾燥させると共に、その上にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕溶液をグラビアコート法で固形分が2g/m2となるように塗工して表面保護層用プライマー層を形成し、その後に該プライマー層上に表1に示す配合の電離放射線硬化型樹脂をロールコート法で塗工、乾燥して後に電子線を照射することにより、固形分が20g/m2の表面保護層を形成して化粧シートを作製し、該化粧シートをこの化粧シートの前記表面保護層が表出するように別途用意した12mm厚さの合板と接着剤層〔中央理化(株)製リカボンドBA−10A(100重量部)に対してBA−10B(5重量部)を添加した接着剤をウエット状態で65g/m2塗工して形成した接着剤層〕を介して貼合すると共に、前記化粧シートの前記表面保護層側にV溝加工機にて溝加工を施して断面V字状の溝部を形成し、該溝部にアクリル−ウレタン樹脂〔アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂〕からなるセピア色の塗料を塗装して比較例とする床材用化粧材を得た。
※1−ウレタンアクリレートオリゴマー:攪拌機、温度調節装置、凝縮装置を備えた反応容器に、ポリエステルジオール〔旭電化工業製:アデカニューエースF15−20(重量平均分子量1000)〕1000重量部、イソホロンジイソシアネート444重量部を仕込み、75℃にて10時間反応させ、次いで、反応液を35℃に冷却し、2−ヒドロキシエチルアクリレート400重量部、メトキノン0.5重量部、ジラウリル酸ジブチル錫0.2重量部を仕込み75〜85℃で遊離イソシアネート基が0.1%以下になるまで反応させて得た重量平均分子量1700のウレタンアクリレートオリゴマーを用いた。
上記で作製した実施例1、および、比較例1の床材用化粧材について、耐磨耗性、および、耐擦傷性テストを下記方法により実施して、その評価結果を表2に纏めて示した。
※2:耐磨耗性テスト−半径が0.5インチの半球状先端を有する治具の半球状先端にメチルエチルケトンを含浸したガーゼを取り付け、断面V字状の溝部を横断するように床材用化粧材の表面を500g荷重で20往復してガーゼの着色状況を目視で評価
※3:耐擦傷性テスト−断面V字状の溝部を横断するように床材用化粧材の表面を爪をたてて20往復して表面の傷、および、艶変化を目視で評価