JP4170739B2 - 燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置 - Google Patents

燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下、単にエンジンと称す)へ燃料を供給するために適用される燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置に関し、特に、二輪車等に搭載されるエンジンに適用される燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
二輪車等に搭載されるエンジンに適用される燃料噴射ポンプとしては、例えば特開平2001−221137号公報に示されるように、燃料タンクからフィードパイプにより導かれた燃料を、電磁駆動型のプランジャポンプにより圧送しつつ、圧送行程の初期領域の燃料をリターンパイプにより燃料タンクに還流すると共に、圧送行程の後期領域の燃料を噴射ノズルから吸気通路に向けて噴射するものが知られている。
この装置においては、プランジャポンプにより圧送された燃料が噴射ノズルにて噴射される前に、ベーパ(気泡)混じりの燃料を、予めリターンパイプにより燃料タンクに向けて還流させるディスチャージ機構が設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記装置においては、環境温度が高温のとき、あるいは、電磁駆動の際に生じるコイルの発熱等に起因して、供給された燃料内に大量のベーパが発生する場合があるため、発生したベーパを効率良く除去する必要がある。
例えば、エンジンが停止した直後等においては高温であるが故に大量のベーパが発生する虞がある。したがって、この高温状態からエンジンを再始動させる場合、エンジンが始動し難く(良好な再始動性が得られず)、又、ディスチャージ機構にて発生したベーパを排出するには、ある程度の時間を要し、安定した燃料噴射が得られない等の問題があった。
また、エンジンが高負荷運転の後にアイドル運転状態とされた場合には、高温雰囲気でありながら燃料の還流(循環)量が少ないため、発生したベーパが確実に排出されない等の問題があった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、特に構造的な変更を行なうことなく、アイドル運転時等に温度上昇を抑制しつつ発生したベーパの排出を促進し、又、高温雰囲気により発生したベーパを確実に排出して再始動時等における始動性を改善した燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料噴射ポンプの駆動方法は、往復動により燃料を吸引及び圧送すると共に圧送行程の初期領域において燃料を戻し通路に向けて逃がしかつ圧送行程の後期領域において燃料を噴射口に向けて圧送するプランジャと、プランジャに対して電磁起動力を及ぼすための励磁用のコイルと、エンジンの運転状態に応じた燃料を噴射させるべくコイルへの通電を制御する制御手段とを備えた燃料噴射ポンプの駆動方法であって、上記制御手段は、燃料を噴射させる噴射駆動パルス又は燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するべくコイルに対してパルス通電を行なうものであり、エンジンが所定の状態にあるとき、コイルに対して非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、ことを特徴としている。
この構成によれば、エンジンが所定の状態(例えば、燃料内にベーパが発生し易い運転状態又は高温停止状態等)にあるとき、燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスが発せられ、すなわち、圧送行程の初期領域の範囲内においてプランジャが往復動するように駆動されるため、発生するベーパは積極的に戻し通路に向けて排出される。
これにより、ベーパが効率良く排出されると共に、還流される燃料流量も増加して冷却作用も高まり、ベーパの発生も抑制される。
【0006】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、コイルに対して噴射駆動パルスを発するパルス通電の合間に非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、構成を採用できる。
この構成によれば、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、燃料を噴射させるパルス通電(噴射駆動パルス)の合間に、燃料を噴射しないパルス通電(非噴射駆動パルス)を追加するため、燃料流量の少ない状態でも、発生したベーパを効率良く排出でき、又、冷却作用が得られてベーパの発生を抑制できる。
【0007】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、エンジンを始動させるための電源が始動前のオン状態にされたとき、コイルに対して非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、構成を採用できる。
この構成によれば、エンジンの始動又は再始動に先立って、圧送行程の初期領域の範囲においてプランジャを駆動させるため、滞留したベーパを予め排出させることができ、エンジンの始動性、特に再始動性が向上する。
【0008】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、電源がオン状態にされてから、所定の時間に亘りあるいは所定の回数だけ、コイルに対して非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、構成を採用できる。
この構成によれば、予め設定された時間あるいは回数だけ非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なうため、ベーパが完全に排出された後の無駄な駆動が避けられ、消費電力が低減される。
【0009】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、コイルの電流、電源の電圧、噴射駆動パルスを発するパルス通電の周波数のうち、少なくとも一つの状態量に基づき、コイルに対して非噴射駆動パルスのパルス幅を設定する、構成を採用できる。
この構成によれば、エンジンの運転に関係する上記状態量に基づき非噴射駆動パルスのパルス幅を制御することで、高精度な通電制御が行なえる。
【0010】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、温度情報に基づき、コイルに対して非噴射駆動パルスのパルス幅を設定する、構成を採用できる。
この構成によれば、例えば、燃料温度、あるいは、燃料温度と関係があるエンジン温度、オイル温度、コイル温度等の温度情報に基づいて、燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスのパルス幅を設定することで、エンジンの運転状態に応じた、より高精度な通電制御が行なえる。
【0011】
上記構成の駆動方法において、制御手段は、非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なうか否かを、温度情報に基づき決定する、構成を採用できる。
この構成によれば、燃料温度、あるいは、燃料温度と関係する外気温度、エンジン温度、オイル温度、コイル温度等の温度情報に基づき、燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なうか否かを決定することで、例えば、ベーパが発生しないような極端に寒い環境下においては、通電を行なわないことで無駄な駆動を避けて消費電力を低減できる。
【0012】
また、本発明の燃料噴射ポンプの駆動装置は、往復動により燃料を吸引及び圧送すると共に圧送行程の初期領域において燃料を戻し通路に向けて逃がしかつ圧送行程の後期領域において燃料を噴射口に向けて圧送するプランジャと、プランジャに対して電磁起動力を及ぼすための励磁用のコイルと、エンジンの運転状態に応じた燃料を噴射させるべくコイルへの通電を制御する制御手段とを備えた燃料噴射ポンプの駆動装置であって、上記制御手段は、燃料を噴射させる噴射駆動パルス又は燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するべくコイルに対してパルス通電を行なうものであり、エンジンが所定の状態にあるとき、コイルに対して非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、ことを特徴としている。
この構成によれば、エンジンが所定の状態(例えば、燃料内にベーパが発生し易い運転状態又は高温停止状態等)にあるとき、燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスが発せられ、すなわち、圧送行程の初期領域の範囲内においてプランジャが往復動するように駆動されるため、発生するベーパは積極的に戻し通路に向けて排出される。
これにより、ベーパが効率良く排出されると共に、還流される燃料流量も増加して冷却作用も高まり、ベーパの発生も抑制される。
【0013】
上記構成の駆動装置において、制御手段は、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、コイルに対して噴射駆動パルスを発するパルス通電の合間に非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、構成を採用できる。
この構成によれば、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、燃料を噴射させるパルス通電(噴射駆動パルス)の合間に、燃料を噴射しないパルス通電(非噴射駆動パルス)を追加するため、燃料流量の少ない状態でも、発生したベーパを効率良く排出でき、又、冷却作用が得られてベーパの発生を抑制できる。
【0014】
また、上記構成の駆動装置において、制御手段は、エンジンを始動させるための電源が始動前のオン状態にされたとき、コイルに対して非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、構成を採用できる。
この構成によれば、エンジンの始動又は再始動に先立って、圧送行程の初期領域の範囲においてプランジャを駆動させるため、滞留したベーパを予め排出させることができ、エンジンの始動性、特に再始動性が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき説明する。
図1は、二輪車に搭載されたエンジンの燃料供給システムを示す概略構成図である。この燃料供給システムは、図1に示すように、二輪車の燃料タンク1、エンジン2の吸気通路2aに配置されかつ電磁駆動型の燃料噴射ポンプ20及び噴射ノズル30からなる燃料噴射装置10、燃料を供給するフィードパイプ3、フィードパイプ3の途中に配置された低圧フィルタ4、供給された燃料の一部(余剰燃料)を燃料タンク1に戻す戻し通路を形成するリターンパイプ5、燃料噴射ポンプ20の駆動を制御する制御手段としてのエンジンコントロールユニット(ECU)40、電源としてのバッテリ50、システム全体の電源のオン/オフ及びエンジン2の始動を行なうキースイッチ60等を備えている。
【0016】
燃料噴射ポンプ20は、図1に示すように、往復動するプランジャ21、プランジャ21を摺動自在に収容するシリンダ22、シリンダ22の外側に配置されたヨーク(不図示)に磁力線を発生させるための励磁用のコイル23、シリンダ22の先端側に画定される圧送室P内に向かう流れのみを許容するチェックバルブ24、プランジャ21内に形成されたプランジャ通路21aに配置され圧送室Pからリターンパイプ(戻し通路)5に向かう流れのみを許容するチェックバルブ25、圧送行程の初期領域の終わりにプランジャ通路21aを閉塞するスピルバルブ26、圧送室P内の燃料が所定圧力以上に加圧されたときに吐出を許容するチェックバルブ27等を備えている。尚、コイル23への非通電のとき、プランジャ21はリターンスプリング(不図示)により付勢されて待機位置(図1の実線で示す位置)に位置付けられている。
【0017】
噴射ノズル30は、図1に示すように、所定の口径に絞られたオリフィスをもつオリフィスノズル31、オリフィスノズル31を通過した燃料が所定圧力以上のとき開弁するポペットバルブ32、燃料を噴射する噴射口33、燃料を霧化するためのエア(空気)を供給するアシストエアパイプ34等を備えている。
【0018】
上記構成からなる燃料噴射装置10においては、コイル23が所定以上のパルス幅にて通電されて電磁駆動力を発生すると、燃料の圧送行程を開始し、その初期領域(プランジャ21が二点差線Sで示す位置に移動するまで)においては、所定の圧力に加圧されたベーパ混じりの燃料が開弁したチェックバルブ25を抜けてプランジャ通路21aからリターンパイプ5へ排出される。
【0019】
プランジャ21が初期領域から後期領域に移動すると、圧送室P内の燃料をさらに加圧する。そして、所定圧力以上に加圧された燃料は、チェックバルブ27を開弁させて、オリフィスノズル31を通って計量され、ポペットバルブ32を開弁させ、アシストエアと共に噴射口33から吸気通路2aに向けて霧状になって噴射される。
【0020】
一方、コイル23への通電が断たれると、リターンスプリングの付勢力によりプランジャ21は待機位置に押し戻される。この際に、チェックバルブ24が開弁してフィードパイプ3から圧送室Pに向けて燃料が吸引され、次の噴射に備えて待機することになる。
【0021】
また、コイル23が所定以下のパルス幅による通電及び非通電を繰り返されると、プランジャ21は、プランジャ通路21aがスピルバルブ26により閉塞される(プランジャ21が二点差線Sで示す位置に移動する)までの初期領域の範囲を往復動する。したがって、圧送室P内のベーパ混じりの燃料は、噴射ノズル30に向けて吐出される(すなわち、吸気通路2aに向けて噴射される)ことなく、プランジャ通路21aからリターンパイプ5へ排出されるのみとなる。
【0022】
制御手段としてのエンジンコントロールユニット40は、種々の演算処理を行なうと共に制御信号を発するCPU等の制御部41、燃料噴射ポンプ20を駆動する駆動ドライバ42、種々の状態量を検出して制御部41に出力する検出回路43、キースイッチ60の状態(電源がオンか否か)及びバッテリ50の電圧等を検出して制御部41に出力する検出回路44、エンジンの運転情報を含む種々の情報が記憶された記憶部45等を備えている。
ここで、検出回路43は、駆動ドライバ42によりコイル23へ通電される電流値あるいは駆動パルスの周波数、スロットルバルブ2bの開度、温度センサ2cにより検出されるエンジン2の温度等の状態量を検出する。
【0023】
次に、上記燃料供給システムにおける燃料噴射ポンプ20の駆動につき、図2のフローチャート、図3及び図4のタイミングチャートを参照しつつ説明する。先ず、キースイッチ60がオン(電源がオン状態)にされると(ステップS1)、制御部41が駆動ドライバ42に制御信号は発し、図3に示すように、駆動ドライバ42は、コイル23に対して燃料の噴射に至らないパルス通電を行なう(ステップS2)。
【0024】
すなわち、駆動ドライバ42は、コイル23に対して、プランジャ21を圧送行程の初期領域の範囲(この範囲には、燃料が噴射されない限り、プランジャ通路21aが閉塞された後の近傍の範囲も含まれる)にて駆動する非噴射駆動パルスTniを発するパルス通電を行なう。
尚、このパルス通電に際しては、制御部41が、検出回路43,44により検出される状態量に基づき種々の演算処理を行ない、駆動ドライバ42に制御信号を発し、駆動ドライバ42が、これらの制御信号に基づいて、燃料噴射に至らないパルス幅を設定し、コイル23に対してパルス通電を行なうようにしてもよい。
【0025】
このように、エンジン2が始動される前に、プランジャ21が圧送行程の初期領域で駆動されるため、内部に滞留したベーパが予め排出される。特に、高負荷運転後にエンジン2を停止し、そのまま放置された後においてエンジン2を始動するような場合に、大量のベーパが滞留している可能性があるが、発生したベーパは予め排出されるため、スムーズにエンジン2を始動させることができる。
【0026】
続いて、キースイッチ60がスタート位置に回されてエンジン2が始動したか否か判断される(ステップS3)。ここで、未だ始動していない場合は、駆動ドライバ42は、コイル23に対して非噴射駆動パルスTniを発するパルス通電を行なう。
【0027】
ところで、この非噴射駆動パルスの通電は、好ましくは、タイマー(不図示)等を設けて時間を計測し、キースイッチ60がオン状態にされてから所定時間の間だけ行なわれるようにする。また、カウンター(不図示)を設けてパルスの回数をカウントし、所定の回数だけ行なわれるようにする。これにより、ペーパが完全に排出された後の無駄な駆動が避けられて、消費電力が低減される。
【0028】
一方、ステップS3において、エンジン2が始動したと判断された場合は、検出回路43,44等により種々の状態量が検出されてエンジン2の運転状態が検出され(ステップS4)、この検出情報に基づいて、エンジン2がアイドル運転状態にあるか否かが判断される(ステップS5)。
【0029】
ここで、エンジン2がアイドル運転状態ではないと判断された場合は、記憶部45に格納された制御マップ等に基づき運転状態に応じた燃料を噴射するように、駆動ドライバ42は、コイル23に対して噴射駆動パルスTinjを発するパルス通電を行なう。
【0030】
一方、ステップS5において、エンジン2がアイドル運転状態にあると判断された場合は、制御部41は、検出回路43,44により検出される状態量、例えば、直前のコイル電流、電源(バッテリ50)の電圧、直前の噴射駆動パルスTinjの周波数等のうち、少なくとも一つの状態量に基づき種々の演算処理を行なって、駆動ドライバ42に制御信号を発する。そして、駆動ドライバ42は、これらの制御信号に基づいてコイル23に対して燃料の噴射に至らないパルス通電を行なう。
【0031】
すなわち、図4に示すように、駆動ドライバ42は、コイル23に対して、燃料を噴射させる一つの噴射駆動パルスTinjから次の噴射駆動パルスTinjまでの合間に、噴射に至らない非噴射駆動パルスTniを複数回に亘って発するパルス通電を行なう。アイドル運転状態においては、噴射駆動パルスTinjの幅が短く、又、その周期が比較的長いため、上記のような非噴射駆動パルスTniを容易に挿入(追加)することができる。
これにより、燃料流量の少ないアイドル運転状態においても、発生したベーパを効率良く排出させることができ、又、コイル23からの発熱を冷却することができ、ベーパの発生も抑制できる。
【0032】
続いて、キースイッチ60が逆に回されてエンジン2が停止されたか否か判断される(ステップS7)。ここで、エンジン2が未だ運転状態にあり停止していないと判断された場合は、ステップS4に戻って再び同様にステップS4,S5,S6が繰り返される。
【0033】
一方、ステップS7において、エンジン2が停止したと判断された場合は、続けてキースイッチ60がオフとされたか否か判断される(ステップS8)。ここで、キースイッチ60は未だオン状態にある(オフとされていない)と判断された場合は、ステップS2に戻って、図3に示すように、駆動ドライバ42は、コイル23に対して、前述同様の燃料の噴射に至らないパルス通電を行なう。
すなわち、駆動ドライバ42は、コイル23に対して、エンジン2が停止されてから所定の時間に亘り、あるいは、所定の回数だけ、非噴射駆動パルスTniを発するパルス通電を行なう。
【0034】
特に、高負荷運転直後にエンジン2が停止された場合は、大量のベーパが発生し燃料通路の内部に滞留する。したがって、この状態のままエンジン2を再び始動(再始動)させようとしても、ベーパが燃料に混じり込んで噴射されるため噴射量が不均一になり、エンジン2が始動し難い。そこで、上記のように、エンジン2が再始動される前に、プランジャ21を初期領域で駆動させて内部に滞留したベーパを確実に排出させることで、ベーパが取り除かれた均一な燃料が噴射され、スムーズにエンジン2を再始動させることができる。
【0035】
図5は、燃料供給システムの他の実施形態を示す概略構成図である。
この実施形態においては、燃料噴射ポンプの構造が異なる以外は、前述の実施形態と同一であり、それ故に同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
燃料噴射装置10´の一部を構成する燃料噴射ポンプ20´は、図5に示すように、往復動するプランジャ21´、プランジャ21´を摺動自在に収容するシリンダ22´、シリンダ22´の外側に配置されたヨーク(不図示)に磁力線を発生させるための励磁用のコイル23、シリンダ22´の先端側に画定される圧送室P内に向かう流れのみを許容するチェックバルブ24、シリンダ22´の側面に形成された還流孔22a´に配置され圧送室Pから還流通路28´を経てリターンパイプ(戻し通路)5に向かう流れのみを許容するチェックバルブ25´、圧送室P内の燃料が所定圧力以上に加圧されたときに吐出を許容するチェックバルブ27等を備えている。
【0037】
尚、コイル23への非通電のとき、プランジャ21´はリターンスプリング(不図示)により付勢されて待機位置(図5の実線で示す位置)に位置付けられている。また、ここでは、プランジャ21´の外周面が、圧送行程の初期領域の終わり(図5中の二点鎖線Sで示す位置)に還流孔22a´を閉塞するようになっており、前述のスピルバルブ26と同様の作用をなす。
【0038】
上記構成からなる燃料噴射装置10´においては、コイル23が所定以上のパルス幅にて通電されて電磁駆動力を発生すると、燃料の圧送行程を開始し、その初期領域(プランジャ21´が二点差線Sで示す位置に移動するまで)においては、所定の圧力に加圧されたベーパ混じりの燃料が、還流孔22a´から開弁したチェックバルブ25´を抜けて還流通路28´を通りリターンパイプ5へ排出される。
【0039】
プランジャ21´が初期領域から後期領域に移動すると、圧送室P内の燃料をさらに加圧する。そして、所定圧力以上に加圧された燃料は、チェックバルブ27を開弁させて、オリフィスノズル31を通って計量され、ポペットバルブ32を開弁させ、アシストエアと共に噴射口33から吸気通路2aに向けて霧状になって噴射される。
【0040】
一方、コイル23への通電が断たれると、リターンスプリングの付勢力によりプランジャ21´は待機位置に押し戻される。この際に、チェックバルブ24が開弁してフィードパイプ3から圧送室Pに向けて燃料が吸引され、次の噴射に備えて待機することになる。
【0041】
また、コイル23が所定以下のパルス幅による通電及び非通電を繰り返されると、プランジャ21´は、還流孔22a´がプランジャ21´の外周面により閉塞される(プランジャ21´が二点差線Sで示す位置に移動する)までの初期領域の範囲を往復動する。したがって、圧送室P内のベーパ混じりの燃料は、噴射ノズル30に向けて吐出される(すなわち、吸気通路2aに向けて噴射される)ことなく、還流孔22a´及び還流通路28を通りリターンパイプ5へ排出されるのみとなる。
【0042】
上記燃料噴射ポンプ20´についても、図2ないし図4に示すように、前述同様に、エンジン2がアイドル運転状態のとき、あるいは、キースイッチ60がオン(電源がオン)とされた状態のとき、燃料の噴射に至らない(すなわち非噴射駆動パルスTniを発する)パルス通電を行なうことにより、ベーパの排出効率を高めて、安定した燃料の噴射が行なえ、又、再始動性等を向上させることができる。
【0043】
上記実施形態においては、燃料噴射装置10,10´として、燃料噴射ポンプ20,20´と噴射ノズル30とが一体となったものを示したが、両者が別々に配置されて燃料配管等により接続されたシステムにおいても同様に、本発明の駆動方法を適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、エンジン2の所定の状態として、アイドル運転状態、キースイッチ60がオン状態とされエンジン2が停止した状態を示したが、アイドル運転以外の低負荷運転状態等においても、非噴射駆動パルスTniの追加が可能である限り、同様のパルス通電を行なうことでベーパの排出効率を高め、又、冷却作用を確保してベーパの発生を抑制できる。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、燃料の噴射に至らないパルス通電を予め設定された時間あるいは回数だけ行なう場合を示したが、このように一定の時間あるいは回数とするのではなく、燃料温度、あるいは、燃料温度と関係する外気温度、エンジン温度、オイル温度、コイル温度等の温度情報に基づき、燃料の噴射に至らないパルス通電を行なう時間あるいは回数を適宜決定することも可能である。これにより、無駄な駆動を避けて消費電力を低減でき、エンジンの運転状態に応じたより高精度な通電制御を行なえる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る燃料噴射ポンプの駆動方法及び駆動装置によれば、プランジャによる圧送行程の初期領域において燃料を噴射することなく排出できるディスチャージ機構を備えた燃料噴射ポンプにおいて、エンジンが所定の状態、例えば、アイドル運転状態あるいは停止しかつ電源がオンとされた状態の如く、燃料内にベーパが発生し易い運転状態又は高温停止状態にあるとき、コイルに対して燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なうことにより、ベーパが効率良く排出されると共に、還流される燃料流量も増加して冷却作用も高まる。これにより、ベーパの発生も抑制されて燃料の噴射が安定し、又、特に再始動性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動方法を適用する燃料噴射ポンプを採用した燃料供給システムを示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る燃料噴射ポンプの駆動方法を示すフローチャートである。
【図3】エンジンの電源がオンとされた状態での燃料噴射ポンプに対するパルス通電を示すタイムチャートである。
【図4】エンジンがアイドル運転状態にあるときの燃料噴射ポンプに対するパルス通電を示すタイムチャートである。
【図5】本発明に係る駆動方法を適用する他の燃料噴射ポンプを採用した燃料供給システムを示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 燃料タンク
2 エンジン
2a 吸気通路
3 フィードパイプ
4 低圧フィルタ
5 リターンパイプ(戻し通路)
10,10´ 燃料噴射装置
20,20´ 燃料噴射ポンプ
21,21´ プランジャ
21a プランジャ通路
22,22´ シリンダ
22a´ 還流孔
23 コイル
24,25,25´,27 チェックバルブ
26 スピルバルブ
28´ 還流通路
30 噴射ノズル
31 オリフィスノズル
32 ポペットバルブ
33 噴射口
34 アシストエアパイプ
40 エンジンコントロールユニット(制御手段)
41 制御部
42 駆動ドライバ
43,44 検出回路
45 記憶部
50 バッテリ(電源)
60 キースイッチ

Claims (11)

  1. 往復動により燃料を吸引及び圧送すると共に圧送行程の初期領域において燃料を戻し通路に向けて逃がしかつ圧送行程の後期領域において燃料を噴射口に向けて圧送するプランジャと、前記プランジャに対して電磁起動力を及ぼすための励磁用のコイルと、エンジンの運転状態に応じた燃料を噴射させるべく前記コイルへの通電を制御する制御手段と、を備えた燃料噴射ポンプの駆動方法であって、
    前記制御手段は、燃料を噴射させる噴射駆動パルス又は燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するべく前記コイルに対してパルス通電を行なうものであり、エンジンが所定の状態にあるとき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする燃料噴射ポンプの駆動方法。
  2. 前記制御手段は、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、前記コイルに対して、前記噴射駆動パルスを発するパルス通電の合間に前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  3. 前記制御手段は、エンジンを始動させるための電源が始動前のオン状態にされたとき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  4. 前記制御手段は、前記電源がオン状態にされてから所定の時間に亘り、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項3記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  5. 前記制御手段は、前記電源がオン状態にされてから所定の回数だけ、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項3記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  6. 前記制御手段は、前記コイルの電流、電源の電圧、前記噴射駆動パルスの周波数の少なくとも一つの状態量に基づき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスのパルス幅を設定する、
    ことを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  7. 前記制御手段は、温度情報に基づき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスのパルス幅を設定する、
    ことを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  8. 前記制御手段は、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なうか否かを、温度情報に基づき決定する、
    ことを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の燃料噴射ポンプの駆動方法。
  9. 往復動により燃料を吸引及び圧送すると共に圧送行程の初期領域において燃料を戻し通路に向けて逃がしかつ圧送行程の後期領域において燃料を噴射口に向けて圧送するプランジャと、前記プランジャに対して電磁起動力を及ぼすための励磁用のコイルと、エンジンの運転状態に応じた燃料を噴射させるべく前記コイルへの通電を制御する制御手段と、を備えた燃料噴射ポンプの駆動装置であって、
    前記制御手段は、燃料を噴射させる噴射駆動パルス又は燃料の噴射に至らない非噴射駆動パルスを発するべく前記コイルに対してパルス通電を行なうものであり、エンジンが所定の状態にあるとき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする燃料噴射ポンプの駆動装置。
  10. 前記制御手段は、エンジンがアイドル運転状態にあるとき、前記コイルに対して、前記噴射駆動パルスを発するパルス通電の合間に前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項9記載の燃料噴射ポンプの駆動装置。
  11. 前記制御手段は、エンジンを始動させるための電源が始動前のオン状態にされたとき、前記コイルに対して、前記非噴射駆動パルスを発するパルス通電を行なう、
    ことを特徴とする請求項9記載の燃料噴射ポンプの駆動装置。
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