JP4170657B2 - 還元型補酵素q10の結晶化法 - Google Patents

還元型補酵素q10の結晶化法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元型補酵素Q10の結晶化方法に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に対して高い経口吸収性を示し、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により得られることが知られている(特開平10−109933号公報)。この場合には、上記還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良いこと、また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度補酵素Q10に上記還元剤を作用させる方法によっても得られることも、該特許公報中に記載されている。
【0003】
しかしながら、このようにして得られる還元型補酵素Q10は、好適に結晶化させるのが容易ではなく、低純度結晶、半固体状や油状物で得られやすい。また、結晶化できたとしても、結晶が微細で、スラリーや結晶の性状が悪く、晶析濃度が高めにくい、撹拌しにくい、晶析缶から払い出しにくい、濾過性が悪くて結晶分離に時間かかる、嵩比重が小さく梱包容器の大型化や個数の増加につながるといった、生産性や操作性の問題があった。
【0004】
また、還元型補酵素Q10は分子酸素によって酸化型補酵素Q10に酸化され易い。酸化防護の観点から、比表面積のより小さい粒子、すなわち、大粒径の結晶を効率的に取得することが望まれるところでもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、操作性の極めて優れた還元型補酵素Q10結晶を得るための、工業的規模での製造に適した結晶化方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、還元型補酵素Q10の高濃度液相を、還元型補酵素Q10の固化温度以下、又は、該液相の固化温度以下の温度の貧溶媒中に添加することを特徴とする還元型補酵素Q10の結晶化方法である。
【0007】
本発明の方法によれば、スラリーや結晶の性状を改善することができるため、生産性や操作性の優れた方法により、高品質の還元型補酵素Q10を製造することができる。さらに、大粒径の結晶を取得することができるため、還元型補酵素Q10が分子酸素によって酸化されるのを好適に防護することができ、酸化型補酵素Q10の副生が最小化され、高品質の還元型補酵素Q10結晶を取得することができる。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用しうる還元型補酵素Q10は、先述のごとく、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、既存の高純度補酵素Q10など酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤を用いて還元することにより得ることができる。まずは、酸化型補酵素Q10を還元する方法について説明する。
【0010】
還元型補酵素Q10は分子酸素によって酸化され酸化型補酵素Q10を副生しやすいため、還元工程の溶媒として酸化からの防護効果の高い溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち少なくとも一種を用いるのが好ましく、最も好ましくは炭化水素類である。
【0011】
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0012】
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
【0013】
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2、3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
【0014】
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン)、メチルシクロヘキサン、(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す)、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向がありさらに好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
【0015】
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12、とりわけ炭素数7〜10のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンであり、より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
【0016】
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。普通、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素が好ましく、特に塩素化炭化水素が好ましい。炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、とりわけ炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
【0017】
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
【0018】
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンであり、より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【0019】
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。特に、酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、とりわけ、酢酸エステルが好ましい。特に制限されないが、一般に、エステル基としては、炭素数1〜8のアルキルエステル又はアラルキルエステル、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0020】
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチルを挙げることができる。
【0021】
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルであり、より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
【0022】
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
【0023】
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数3〜20、特に炭素数4〜12、とりわけ炭素数4〜8のものが好適に用いられる。
【0024】
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができる。
【0025】
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール等であり、最も好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルである。
【0026】
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12、とりわけ炭素数2〜8のものが好適に用いられる。
【0027】
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
【0028】
好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオニトリルであり、より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
【0029】
上記溶媒の中でも、沸点、粘性等の性質(例えば、溶解度を高めるための適度な加温ができ、且つ、湿体からの溶剤の乾燥除去や晶析濾液等からの溶剤回収の行いやすい沸点(1気圧下、約30〜150℃)、室温での取り扱い時及び室温以下に冷却した時も固化しにくい融点(約20℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約0℃以下)を持ち、粘性が低い(20℃において約10cp以下等))を考慮して選定するのが好ましい。工業的な作業上の観点から、常温で揮発し難いものが好ましく、一般に、例えば、沸点が約80℃以上、更には約90℃以上のものが特に好ましい。
【0030】
上記溶媒のうち、還元反応の溶媒としては、水と相溶性の低い溶媒を用いるのが特に好ましく、後述する還元剤や還元剤に由来する不純物を水相に抽出、除去し、還元型補酵素Q10を効率的に精製、取得するのを助成する。
【0031】
還元型補酵素Q10は高濃度の溶液ほど酸化されにくい傾向にある。上記溶媒に対して還元型補酵素Q10は高い溶解性を示し、上記溶媒はこの点でも酸化防護に好適である。還元型補酵素Q10の酸化を防護するために好ましい濃度は、溶媒の種類などにより一律に規定できないが、上記溶媒に対する還元型補酵素Q10の濃度として、普通1w/w%以上、好ましくは2w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、実際的な操作性という観点から、400w/w%、好ましくは200w/w%、より好ましくは100w/w%、とりわけ50w/w%である。
【0032】
しかして、上記溶媒の使用によって、望ましくない酸素の副反応は、還元工程を通して最小化される。
【0033】
還元反応は、上記の溶媒中、水素化金属化合物、鉄(金属又は塩としての鉄)、亜鉛(金属としての亜鉛)、次亜硫酸類、アスコルビン酸類等を還元剤として用いて実施することができる。
【0034】
水素化金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等を挙げることができる。上記水素化金属化合物の使用量は、水素化金属化合物の種類により異なり、一律に規定できないが、普通、理論水素当量の1〜3倍量で好適に実施できる。
【0035】
鉄または亜鉛を用いる還元は、普通、酸を使用して実施される。酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸等の脂肪酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸や硫酸等の無機酸等を挙げることができる。好ましくは無機酸であり、より好ましくは、硫酸である。
【0036】
鉄の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/5重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。なお、鉄は、金属のみならず、硫酸鉄(II)等の塩の形態でも使用できる。
【0037】
亜鉛の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/10重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。
【0038】
次亜硫酸類としては、特に制限されず、普通、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が用いられるが、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。上記次亜硫酸類の使用量は、特に制限されないが、普通、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、約1/5重量以上、好ましくは約2/5重量以上、より好ましくは約3/5重量以上である。多くても特に支障はないが、経済的に不利であるため、普通、約2倍重量以下、好ましくは同重量以下で用いられる。普通、約2/5重量〜約同重量の範囲で好適に実施できる。
【0039】
アスコルビン酸類としては、特に制限されず、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するものを含み、更に、それらのエステル体や塩であってもかまわない。これらは、L体、D体、或いは、ラセミ体であっても良い。具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビルステアレート、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。還元型補酵素Q10の製造において、上記のアスコルビン酸類をいずれも好適に使用しうるが、生成した還元型補酵素Q10との分離のしやすさ等を考慮すると、上記のアスコルビン酸類のうち、特に水溶性のものが好適に用いられ、最も好ましくは、入手容易性、価格等の観点から、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸等のフリー体である。
【0040】
上記のアスコルビン酸類の使用量は、特に制限されず、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換しうる有効量であればよく、一般的に、酸化型補酵素Q10に対して、普通1倍モル量以上、好ましくは1.2倍モル量以上である。上限は特に制限されないが、経済性も考慮して、普通10倍モル量、好ましくは5倍モル量、より好ましくは3倍モル量である。
【0041】
上記還元剤のうち、還元能力、収率、品質といった観点から、特に、亜鉛、次亜硫酸類、アスコルビン酸類が好ましく、特に次亜硫酸類(具体的には、次亜硫酸塩)、アスコルビン酸類が好ましい。
【0042】
還元反応においては、後述するアルコール類及び/又は水を好適に併用することができる。水は、特に還元剤として鉄、亜鉛、次亜硫酸類を用いる場合に好適である。還元剤として水素化金属化合物やアスコルビン酸類を用いる場合にはアルコール類を併用することができる。これら水、アルコール類の併用は、これらの特性が発揮され、反応速度の向上や反応収率の向上等に寄与する。
【0043】
以下に好ましい還元方法について詳細に述べる。
【0044】
上記次亜硫酸類を用いる還元は、水を併用して、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち少なくとも一種の有機溶媒(好ましくは炭化水素類、より好ましくは脂肪族炭化水素、なかでもヘプタン類、特にヘプタン)との混合溶媒系で実施するのが好ましい。その際、反応時のpHは、収率等の観点から、普通pH7以下、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH3〜6で実施される。上記pHは、塩酸や硫酸等の鉱酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等の塩基を用いて、調整することができる。
【0045】
上記次亜硫酸類を用いる還元において、水の使用量は、特に制限されず、還元剤である次亜硫酸類を適度に溶解する量であれば良く、例えば、一般的には、上記次亜硫酸類の水に対する重量が、普通、30w/w%以下、好ましくは20w/w%以下になるように調整するのが良い。又、生産性等の観点から、普通、1w/w%以上、好ましくは5w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上であるのが良い。
【0046】
上記アスコルビン酸類を用いる還元も、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち、特に水と相溶性の高い溶媒、なかでも水と相溶性の高いエーテル類及びニトリル類、具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等を用いて実施することができるが、後述するアルコール類及び/又はケトン類(好ましくは、水と相溶性の高いアルコール類及び/又はケトン類(具体的には、アルコール類としては、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3の1価又は2価(好ましくは1価)のアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等))を使用するのが特に好ましい。すなわち、アスコルビン酸類を用いる還元においては、アルコール類及び/又は水溶性有機溶媒を用いるのが好ましい。又、アスコルビン酸類を用いる還元においては、反応促進剤(例えば、反応温度の低下、反応時間の短縮等)として塩基性物質や亜硫酸水素塩等の反応促進効果を有する添加剤を共存させて実施することができる。
【0047】
上記の塩基性物質としては、特に制限されず、例えば、無機化合物、有機化合物を問わず使用しうる。上記無機化合物としては、特に制限されないが、例えば、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩やアンモニア等を挙げることができる。その代表的なものとして、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。上記有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン等のアミン等を挙げることができる。上記の塩基性物質のうち、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア等の無機化合物;トリエチルアミン等のアミン等の有機化合物といった弱い塩基性物質(弱塩基又は弱アルカリ)を特に好ましく使用できる。最も好ましくは、上記無機化合物であり、より好ましくは、上記の弱塩基性の無機化合物である。
【0048】
また、亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸水素塩等を好適なものとして挙げることができる。
【0049】
上記添加剤の量は、期待する程度の反応促進効果を発揮しうる量(有効量)であればよく、特に制限されないが、一般的に、経済性も考慮して、アスコルビン酸類に対して、普通20倍モル量以下、好ましくは10倍モル量以下、より好ましくは5倍モル量以下、特に2倍モル以下である。下限は、特に制限されないが、普通0.01倍モル量以上、好ましくは0.05倍モル量以上、より好ましくは0.1倍モル量以上、特に0.2倍モル量以上である。
【0050】
還元反応は、強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m3以上、好ましくは約0.1kW/m3以上、より好ましくは約0.3kW/m3以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法などを利用しても良い。
【0051】
還元温度は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できない。例えば、次亜硫酸類を用いる還元においては、普通100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。通常、0〜100℃程度、好ましくは0〜80℃程度、より好ましくは0〜60℃程度で好適に実施できる。アスコルビン酸類を用いる還元においては、普通30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で実施される。上限は系の沸点である。通常、30〜150℃程度、好ましくは40〜120℃程度、より好ましくは50〜100℃程度で好適に実施できる。
【0052】
反応濃度は、特に制限はないが、一般に、溶媒の重量に対する酸化型補酵素Q10の重量として、普通約1w/w%以上、好ましくは3w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上、とりわけ15w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、普通約60w/w%、好ましくは50w/w%、より好ましくは40w/w%、とりわけ30w/w%である。一般に、約2〜30w/w%、好ましくは約5〜30w/w%、より好ましくは約10〜30w/w%で好適に実施できる。
【0053】
還元反応は、通常、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは10時間以内、とりわけ好ましくは5時間以内に完了させることができる。
【0054】
このようにして得られた反応混合物から、生成した還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液を採取し、本発明の結晶化法に用いることができる。
【0055】
結晶化に際し、該有機溶媒の溶液を、例えば、予め水や食塩水等を用いて繰り返し水洗することにより、夾雑物を除去することもできる。還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液は、更に好ましくは、濃縮又は溶媒置換して、還元型補酵素Q10の高濃度液相を得ることができる。言うまでもなく、反応混合物を濃縮してもよい。最も好ましくは、上記有機溶媒の溶液の濃縮に際して、共存する溶媒を完全に又はほぼ完全に留去するために、還元型補酵素Q10の融解温度以上、又は、還元型補酵素Q10を主成分とする濃縮物の融解温度以上の温度に高めることにより、還元型補酵素Q10の油状物を得ることができる。還元型補酵素Q10の油状物を得るための上記温度は、共存する有機溶媒の量にもよる為、一律には規定できないが、例えば、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、特に50℃以上、とりわけ60℃以上である。溶媒の種類や残存量にもよるが、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃の範囲で好適に実施できる。
【0056】
また、還元型補酵素Q10の油状物は、酸化型補酵素Q10の油状物を水中で還元したのち、水相を除去することによっても取得することができる。この場合、還元温度は、還元型補酵素Q10の純度等にもよるが、普通、45℃以上、好ましくは48℃以上、より好ましくは50℃以上で実施される。上限は、系の沸点であるが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0057】
この方法においては、有機溶媒の分離及び濃縮といった時間の消費、高価な製造装置や容量の増大を避けて、還元型補酵素Q10を合成することができる。
【0058】
なお、上記還元反応および後処理(有機相の分離、洗浄)は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましく、特に次亜硫酸類を用いた還元反応では、還元反応収率向上や還元剤量の削減に大きく寄与することも見い出した。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0059】
次に、還元型補酵素Q10の結晶化法について説明する。
【0060】
晶析に用いる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。本発明の結晶化方法は、酸化型補酵素Q10を比較的多く含んだ還元型補酵素Q10に対しても適用できるが、上記の方法で取得した高純度還元型補酵素Q10の高濃度液相に適用した場合、特に効果的である。
【0061】
本発明において、還元型補酵素Q10の結晶化は、還元型補酵素Q10の高濃度液相を、還元型補酵素Q10又は該液相の固化温度以下の貧溶媒中に添加又は滴下することにより行われる。
【0062】
還元型補酵素Q10の高濃度液相としては、特に制限されないが、還元型補酵素Q10の濃度が、例えば50%以上、特に70%以上、とりわけ90%以上のものであるのが好ましい。言うまでもなく、還元型補酵素Q10の油状物は最も好適な形態である。
【0063】
還元型補酵素Q10の高濃度液相中に共存する溶媒としては、特に制限されず、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、ニトリル類、窒素化合物類(ニトリル類を除く)、硫黄化合物類、水等を挙げることができる。
【0064】
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0065】
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。結晶化収率の観点からは、非環状脂肪族炭化水素が最も好ましい。
【0066】
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2、3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
【0067】
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン)、メチルシクロヘキサン、(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す)、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向がありさらに好ましく、収率の観点からはヘプタンが最も好ましい。
【0068】
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12、とりわけ炭素数7〜10のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンであり、より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
【0069】
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。普通、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素が好ましく、特に塩素化炭化水素が好ましい。炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、とりわけ炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
【0070】
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
【0071】
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンであり、より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
【0072】
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。特に、酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、とりわけ、酢酸エステルが好ましい。特に制限されないが、一般に、エステル基としては、炭素数1〜8のアルキルエステル又はアラルキルエステル、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0073】
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチルを挙げることができる。
【0074】
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルであり、より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
【0075】
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
【0076】
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数3〜20、特に炭素数4〜12、とりわけ炭素数4〜8のものが好適に用いられる。
【0077】
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができる。
【0078】
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルであり、さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール等であり、最も好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルである。
【0079】
アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12、とりわけ炭素数1〜6、なかでも炭素数1〜5の1価アルコールが好ましく、又、炭素数2〜5の2価アルコールが好ましく、又、炭素数3の3価アルコールが好ましい。
【0080】
1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
【0081】
好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコールであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールであり、最も好ましくは、エタノールである。
【0082】
2価のアルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,2−エタンジオールである。
【0083】
3価のアルコールとしてはグリセリン等を好適に用いることができる。
【0084】
ケトン類としては、特に制限されず、普通炭素数3〜6のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
【0085】
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12、とりわけ炭素数2〜8のものが好適に用いられる。
【0086】
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
【0087】
好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオニトリルであり、より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
【0088】
窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0089】
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
【0090】
脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を挙げることができるが、ギ酸、酢酸が好ましく、最も好ましくは酢酸である。
【0091】
上記溶媒のなかでも、還元型補酵素Q10の高濃度液相中に共存する溶媒としては、炭化水素類(特に、ヘプタン類等の脂肪族炭化水素)、脂肪酸エステル類(特に、酢酸エチル等の酢酸エステル)、エーテル類(メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン等)、アルコール類(エタノール等)、ニトリル類(アセトニトリル等)が好ましく、特に、エーテル類、アルコール類、ケトン類、ニトリル類が好ましく、とりわけ、アルコール類が好ましい。
【0092】
還元型補酵素Q10の各種有機溶媒に対する溶解度は高い温度依存性、すなわち、還元型補酵素Q10は上記有機溶媒に、低温では溶けにくく、高温では溶けやすい傾向を示す。従って、上記の有機溶媒はいずれも、温度を調整することによって貧溶媒としても用いることができる。
【0093】
しかしながら、還元型補酵素Q10の結晶化においては、貧溶媒は結晶形状や結晶の粒径に重大な影響を与えることから、上記溶媒のなかでも、貧溶媒としては、炭化水素類(特に、ヘプタン類等の脂肪族炭化水素)、ケトン類(アセトン等)、アルコール類(エタノール等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、水、ケトン類と水との混合溶媒、アルコール類と水との混合溶媒を用いるのが好ましい。より好ましくは、アルコール類、ケトン類、水、アルコール類と水との混合溶媒、ケトン類と水との混合溶媒であり、さらに好ましくは、水、アルコール類、アルコール類と水の混合溶媒であり、最も好ましくは、アルコール類と水の混合溶媒である。
【0094】
さらに上記溶媒のなかでも、互いに相溶性の高い、好ましくは、互いに相溶性のある溶媒を、本発明における還元型補酵素Q10の高濃度液相中に共存する溶媒並びに貧溶媒として用いるのが好ましい。
【0095】
還元型補酵素Q10の高濃度液相中に共存する溶媒/貧溶媒の好ましい組み合わせとしては、例えば、炭化水素類/炭化水素類、炭化水素類/アルコール類と水の混合溶媒、アルコール類/アルコール類、アルコール類/水、アルコール類/アルコール類と水の混合溶媒、ケトン類/水、ケトン類/アルコール類と水の混合溶媒、エーテル類/水、エーテル類/アルコール類と水の混合溶媒、ニトリル類/水、ニトリル類/アルコール類と水の混合溶媒、脂肪酸エステル類/炭化水素類、脂肪酸エステル類/アルコール類と水の混合溶媒、エーテル類/炭化水素類、エーテル類/炭化水素類と水との混合溶媒等を挙げることができる。
【0096】
本発明においては、還元型補酵素Q10の高濃度液相を、還元型補酵素Q10又は該液相の固化温度以下の貧溶媒に滴下する。該温度は、還元型補酵素Q10の高濃度液相中に共存する溶媒の種類や量、貧溶媒の種類等により異なるので一律に規定できないが、普通約40℃以下、好ましくは約30℃以下、より好ましくは約20℃以下である。結晶化速度を高めて、晶析槽内への付着を減らす、良好な性状のスラリー得る、収率を高めるためには、上記温度は低いほど好ましい。結晶化時の温度の下限は、系の固化温度であるが、普通、約−20℃以上、好ましくは約−10℃以上、より好ましくは約0℃以上である。
【0097】
また、結晶化を促進させるために、種晶を添加することも好ましく行われる。種晶添加量は、特に制限されないが、普通、1%以下で充分である。
【0098】
尚、晶析槽内の温度等の条件によっては、添加又は滴下と同時に固化(結晶化)が進行しうるが、その場合も特に支障はない。
【0099】
上記結晶化は、普通、強制流動下に実施するのが好ましい。目的とする粒径等によっても異なるが、普通は、単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m3以上、好ましくは約0.1kW/m3以上、より好ましくは約0.3kW/m3以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法などを利用する方法も考え得る。
【0100】
結晶化時の単位時間当たりの上記高濃度液相の添加(滴下)量は、特に制限されないが、例えば、単位時間当たり全量が添加(滴下)される速度(100%量/時間)以下であり、好ましくは、単位時間当たり全量の約50%量が添加(滴下)される速度(50%量/時間)以下、より好ましくは、単位時間当たり全量の約25%量が添加(滴下)される速度(25%量/時間)以下である。
【0101】
結晶化終了時の濃度は、特に制限はないが、一般に、全溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、約50w/w%以下、好ましくは約40w/w%以下、より好ましくは約30%以下である。濃度の下限は、特に制限されないが、生産性の観点から、通常、約1w/w%であり、好ましくは約2w/w%である。
【0102】
このようにして得られる還元型補酵素Q10の結晶は、好ましくは、例えば、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等による固液分離、更に、必要に応じてケーキ洗浄を行い、更に、減圧乾燥(真空乾燥)により乾体として取得することができるし、乾体として取得するのが好ましい。
【0103】
本発明の一連の操作は、脱酸素雰囲気下で実施することにより、酸化防止効果を高めることができる。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
【0104】
本発明により、工業的規模での生産に適した方法で、操作性の極めて優れた還元型補酵素Q10結晶を簡便且つ効率的に製造することができる。
【0105】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中の還元型補酵素Q10の純度、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比は下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型補酵素Q10の純度は本発明における純度の限界値を規定するものではなく、また、同様に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比も、その上限値を規定するものではない。
(HPLC分析条件)
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;C25OH:CH3OH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
【0106】
(実施例1)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。このヘプタン溶液から、48℃、減圧下にてヘプタンを留去し、油状物の還元型補酵素Q10を得た。この油状物を、窒素雰囲気下で2℃の冷水中に2時間かけて滴下することにより、鱗片状の還元型補酵素Q10を得た。この結晶を減圧ろ過し(濾過性は極めて良好)、固形物を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5、還元型補酵素Q10の純度は99.2%であった。
【0107】
(実施例2)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を25℃で1000gのヘキサンに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘキサン相を6回水洗した。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。このヘキサン溶液から、48℃、減圧下にてヘキサンを留去し、油状物の還元型補酵素Q10を得た。この油状物を、窒素雰囲気下で冷水:冷エタノール=1:1(v:v)中(2℃)に2時間かけて滴下することにより、還元型補酵素Q10を結晶化させた。得られた結晶を減圧ろ過し(濾過性は極めて良好)、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶は直径約1.5mmの粒状であり、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.3/0.7、還元型補酵素Q10の純度は99.1%であった。
【0108】
(実施例3)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)、60gのL−アスコルビン酸、30gの炭酸水素ナトリウムを加え、78℃にて攪拌し、還元反応を行った。3時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらヘプタン1000gと脱気した水1000gを加えた。25℃まで冷却後、水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水1000gで6回水洗し、水相を除去した。このヘプタン溶液を48℃にて濃縮し、還元型補酵素Q10の油状物を得た。この油状物を、窒素雰囲気下で冷水:冷エタノール=1:1(v:v)中(2℃)に2時間かけて滴下することにより、還元型補酵素Q10を結晶化させた。得られた結晶を減圧ろ過し(濾過性は極めて良好)、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶は直径約1.5mmの粒状であり、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.3/0.7、還元型補酵素Q10の純度は99.1%であった。
【0109】
(参考例1)
実施例2と同様にして還元型補酵素Q10のヘキサン相を得た。このヘキサン相を減圧下において溶媒置換し、50℃の還元型補酵素Q10の7%(w/w)エタノール溶液を調製した。この溶液を窒素雰囲気下にて攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら2℃まで冷却し、結晶を析出させた。得られた結晶を減圧ろ過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、粉末の乾燥結晶を得た。この粉末結晶2gと実施例2で得られた粒状結晶2gをそれぞれ空気中、25℃で保存した。7日後の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は、粉末結晶が85.3/14.7、粒状結晶が97.3/2.7であった。
【0110】
(参考例2)
表1に示す各種溶媒20gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、25℃下で溶解した。大気中、25℃で24時間の攪拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
Figure 0004170657
【0112】
(参考例3)
表2に示す各種溶媒100gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、35℃下で溶解した。大気中、35℃で24時間の攪拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
Figure 0004170657
【0114】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での生産に適した方法で、高品質の還元型補酵素Q10を簡便且つ効率的に得ることができる。

Claims (12)

  1. 還元型補酵素Q10の高濃度液相を、還元型補酵素Q10又は該液相の固化温度以下の温度の溶媒中に添加することを特徴とする還元型補酵素Q10の結晶化方法であって、
    溶媒が、ケトン類、アルコール類、ニトリル類又は水である結晶化方法
  2. 溶媒の温度が40℃以下である請求項1記載の結晶化方法。
  3. 還元型補酵素Q10の高濃度液相は、還元型補酵素Q10の濃度が50%以上である請求項1又は2記載の結晶化方法。
  4. 還元型補酵素Q10の高濃度液相は、還元型補酵素Q10の油状物である請求項3記載の結晶化方法。
  5. 溶媒が水である請求項記載の結晶化方法。
  6. 溶媒が水とアルコール類の混合溶媒である請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  7. 結晶化は、単位容積当たりの撹拌所要動力として0.01kW/m以上の強制流動下に実施する請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  8. 結晶化に際して種晶を添加する請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  9. 還元型補酵素Q10の高濃度液相の添加速度は、該液相全量の100%量/時間以下である請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  10. 還元型補酵素Q10の高濃度液相は、酸化型補酵素Q10を還元して生成した還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液を採取し、更に濃縮又は溶媒置換して還元型補酵素Q10の高濃度液相とするか、又は、該有機溶媒の溶液を還元型補酵素Q10又は還元型補酵素Q10を主成分とする濃縮物の融解温度以上で溶媒を留去して、還元型補酵素Q10の油状物とすることにより得られたものである請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  11. 還元型補酵素Q10の高濃度液相は、酸化型補酵素Q10の油状物を水中で次亜硫酸類を用いて還元した後、水相を除去して還元型補酵素Q10の油状物として得られたものである請求項1〜のいずれかに記載の結晶化方法。
  12. 脱酸素雰囲気下で実施する請求項1〜11のいずれかに記載の結晶化方法。
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