JP4169925B2 - 植物の環境装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温湿度を制御して育苗したり、一定の環境の下、特定の種子を発芽させてその植物の特性などを観察するための植物の環境装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特定の種子を発芽させ、これを育苗してその植物の特性を観測する際には、日照量や温湿度などの環境を一定にして行う必要がある。
【0003】
従来の植物の環境装置は、発芽用など小型のものはあるが、大型のものは温室等で育苗するのが大部分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近は遺伝子組み換え植物など、その植物の特性を正確に観察するには、これら植物を比較的大量に、しかも、照度、温湿度を一定に保って、植物を一定の環境で育苗させる必要がある。
【0005】
通常、育苗に必要な照度は、育苗廻りで、最低10000Lux以上必要であり、これを育苗する苗に均一に照射する必要がある。
【0006】
しかしながら、照明器具自体発熱体であり、しかも、最低照度を保つには苗の直上に配置する必要があるため、室内を単純に空調したのでは、育苗廻りを設定した温湿度環境に保つには難しい問題がある。
【0007】
また、照明器具からの熱の影響を考慮して育苗廻りに温湿度センサを配置し、その温湿度センサの検出値で、温湿度を制御することは可能であるが、育苗に対する適正な風速を無視して空調することとなり、適正環境下での育苗は期待できない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、照度を保ちつつ温湿度を適正に保つことができる植物の環境装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、空調空気が供給される空調室内に、育苗トレイを収容する前面が開口した育苗室を有するベンチを設け、そのベンチの背面に、空調室内の空調空気を育苗室を通して吸引するドラフト室を設け、該育苗室の天井部に照明器具を設けると共にその照明器具直下に、光透過率が90%以上で開孔率が40%以上に形成されたスクリーンフィルタを設けて育苗室と仕切られた照明室を区画形成し、その照明室の背面をドラフト室に連通し、育苗室の背面に、ドラフト室に連通する多数のスリット孔を形成すると共に、そのスリット孔の幅を調整する気流調整板を設け、育苗室の前面から空調空気を育苗室に導入し、その育苗室内の空調空気をスリット孔と気流調整板を通してドラフト室に排気し、かつ、育苗室内に供給された空調空気の一部をスクリーンフィルタを通して照明室に導入すると共にその空調空気で照明器具を冷却した後ドラフト室に排気するようにした植物の環境装置である。
【0010】
請求項2の発明は、空調室内に通路を挟んでベンチが設けられ、その通路の上の空調室天井部に、空調空気の吹出口が通路に沿ってスリット状に設けられ、その給気口が高性能フィルタ、加湿器を介して空調機の吹込側に接続され、他方ベンチの頂部にドラフト室につながるレターンダクトが接続されると共にそのレターンダクトが空調機の吸込側に接続される請求項1記載の植物の環境装置である。
【0011】
請求項3の発明は、育苗室は、ベンチに上下多段に形成され、照明器具が取り付けられる各育苗室の天井部は鏡面に形成される請求項1記載の植物の環境装置である。
【0012】
請求項4の発明は、最下段の育苗室の下部のベンチには、各育苗室やドラフト室内に流入した水を溜めるドレン溜めが形成される請求項3記載の植物の環境装置である。
【0013】
請求項5の発明は、スクリーンフィルタは、透明なポリエチレン繊維をメッシュ状に編んで形成され、光透過率が90%以上で開孔率が40%以上に形成される請求項1又は3記載の植物の環境装置である。
【0014】
請求項6の発明は、育苗室の背面には、ドラフト室に連通する多数のスリット孔が形成され、その背面にスリット孔の幅を調整する気流調整板が設けられ、育苗室内に流入する空調空気の流速が0.1〜1m/sec、好ましくは0.1〜0.5m/secに調整される請求項1又は3記載の植物の環境装置である。
【0015】
請求項7の発明は、上記育苗室を有するベンチの上部に上部育苗室を設け、その上部育苗室の天井部に照明器具を設けると共にその照明器具直下に透明板を設けて上部育苗室と仕切られた照明室を区画形成し、その照明室の背面をドラフト室に連通すると共に、照明室の前面側をレターンダクトに接続して各育苗室からドラフト室内に排気された空調空気を照明室を通して照明器具を冷却した後、レターンダクトに排気する請求項1記載の植物の環境装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1〜図3は、本発明の植物の環境装置の一実施の形態を示すもので、図1は平面図、図2はA−A線断面図、図3はB−B線断面図である。
【0018】
図1〜図3において、10は、パネル11で区画形成された空調室で、その空調室10にオペレータMの出入りのための開閉ドア12が設けられる。
【0019】
この開閉ドア12に位置して空調室10の中央に通路13が形成され、その通路13を挟んで、育苗室14を有するベンチ15が設けられる。
【0020】
ベンチ15は、前面が開口した箱形状に形成され、上下に育苗室14を区画する棚16が設けられると共に前面に適宜棚16を支持する支柱17が設けられる。
【0021】
空調室10の天井には、通路13に沿ってスリット状の空調空気の吹出口18が設けられる。
【0022】
育苗室14の棚16上には、育苗すべき植物20の育苗トレイ21が前後にかつ長さ方向に多数載置される。
【0023】
育苗すべき植物20としては、キャベツ、大豆などの野菜や花物などの花卉に適している。
【0024】
育苗室14の背面には、空調室10内の空調空気を育苗室14を通して吸引するドラフト室22が形成される。
【0025】
この育苗室14の背面壁23には、育苗室14とドラフト室22を連通する多数の縦長のスリット孔24が形成され、その背面壁23に、スリット孔24の幅を調整する気流調整板25が設けられる。
【0026】
育苗室14の天井部26には、多数の蛍光灯からなる照明器具27が設けられ、その照明器具27の直下にスクリーンフィルタ28が設けられて、照明室30を区画される。
【0027】
天井部26は、照明器具27からの光を育苗室14側に反射するようにステンレス板等で鏡面状に形成される。
【0028】
スクリーンフィルタ28は、透明なポリエチレン等の繊維をメッシュ状(約300mesh)に編んで形成されたもので、光透過率が90%以上で、開孔率が40%以上に形成されている。
【0029】
照明器具27は、育苗室14内の植物20に対して、照度が10000Lux以上で、照明するように、蛍光灯等の本数が設定され、また育苗すべき植物によって、例えば春夏秋冬に応じた照度に変えられるようになっている。
【0030】
この照明室30の背面には、育苗室13と同様にスリット孔31とそのスリット孔の幅を調整する気流調整板32が設けられる。
【0031】
育苗室13内の空気は、スクリーンフィルタ28を通して照明室30に導入され、この空気で照明器具27が冷却され、気流調整板32を通してドラフト室22に排気される。
【0032】
ベンチ15の底部には、ドラフト室22に流入し、落下した水分等のドレン溜め部33が形成され、その前面にドレン水を排出するドレン排出管34が接続される。
【0033】
ベンチ15の頂部には、レターンダクト35が接続される。レターンダクト35は、空調室10の外側に設置した空調機36の空気吸込側に接続され、空調機36の吹出側が、加湿器37、HPAフィルタ等からなる高性能フィルタ38を介して給気ライン39にて吹出口18に接続される。
【0034】
次に本発明の作用を説明する。
【0035】
空調室10内のベンチ15内の育苗室14に育苗すべき植物20の育苗トレイ21を収容し、その植物20の育苗条件に応じて温度、湿度、照度、照明時間を適宜設定する。
【0036】
今、温度を23℃、湿度を70%、照度を12000Lux、照明時間を12時間として育苗するとする。
【0037】
吹出口18から吹き出された空調空気は、図1に示すように間隔をおいて、或いは吹出口18から均一に吹き出され、その空調空気がベンチ15の各育苗室14に矢印に示したように流入し、育苗室14を通過し気流調整板25にてドラフト室22に吸い込まれると共に一部はスクリーンフィルタ28を通して照明室30内に流入し、照明器具27の発熱を抑え、気流調整板32を通してドラフト室22に吸い込まれる。
【0038】
この際、育苗室14内に流入する空調空気の流速が0.1〜1m/sec、好ましくは0.1〜0.5m/secになるように、気流調整板25にてスリット孔24の幅を調整することで、植物20に最適な風速とすることができる。
【0039】
また照明器具27による照明は、天井部26が鏡面に形成され、光の大半をスクリーンフィルタ28を通して植物20に効率よく照度12000Luxで、均一に照射できると共に照明器具27が発熱しても、スクリーンフィルタ28を通して空調空気が流入し、その熱をドラフト室22に逃がすため、発熱による影響を無くすことができる。
【0040】
ドラフト室22に流入した空気は、ベンチ15の頂部のレターンダクト35から空調機36に吸い込まれ、そこで設定温度に冷却されたのち、加湿器38で、設定湿度に加湿され、高性能フィルタ38で、空調空気中の微粒子分が除去されて吹出口18から吹き出される。この際、詳細は図示していないが、空調機36の吸込側に外気導入ラインと吹出側に排気ラインを設けて空調室10内を適宜換気するように構成する。
【0041】
以上のように、各段の育苗室14で植物20は、温度、湿度、照度、照明時間が常に一定の環境で育苗することが可能となり、植物20の育苗特性を再現性良く観察することが可能となる。また、空調空気は、植物20に対して0.2m/secと微風で常に一方向に流しているため、滞留することがなく、他の隣接する植物20に影響を与えることもない。
【0042】
また、育苗中に植物20への散水は、オペレータMが行うが、オペレータMによる散水の個人差があるため、空調空気の湿度を高めることで、散水回数を極力最小限とすることができる。さらに、散水は、散水管を育苗室14にそれぞれ設けて、各育苗トレイ21に定量灌水するように構成してもよい。
【0043】
尚、散水した水の一部は、気流に乗ってドラフト室22に流入し、落下するがベンチ15の底部にドレン溜め33に溜めることができ、これをドレン管34から抜き取ることで、カビ等微生物の繁殖を防止できる。
【0044】
図4〜図6は、本発明の他の実施の形態を示すもので、図4は平面図、図5は図4のC−C断面図、図6は図4のD−D断面図を示している。
【0045】
本実施の形態は、基本的には、図1〜図3で説明した実施の形態と同じであるが、育苗する植物によっては、その特性を観察するには数ヶ月以上を必要とするのも、例えば、苗木などや育苗中に、その高さが高くなる植物の育苗に適用したものである。
【0046】
図において、空調室10aには、スライド式の扉12aが設けられ、通路13を挟んでベンチ15が設けられる。
【0047】
このベンチ15には、下部には、図1〜図3で説明した育苗室14が形成され、上部には、下部の育苗室14で育苗した植物20aを移し換えて、さらに育苗するための上部育苗室14aが形成される。
【0048】
上部育苗室14aは、下部の育苗室14で育苗した植物20aを、移して、さらに育苗するため、その高さHが、下部の育苗室14より十分高く形成される。
【0049】
このように、上部の育苗室14aの高さHが高くなると、下部の育苗室14の天井部26に設けた蛍光灯等の照明器具27では、距離の関係で照度10000Lux以上が得られないため、太陽光のようにスペクトル分布を調和させたメタルハライドランプからなる照明器具27aを用いる。
【0050】
この照明器具27aの直下には、ガラス板等の透明板42を設けて照明室30aを区画し、その照明室30の天井部26aを鏡面状に形成しておく。
【0051】
照明器具27aの冷却は、ドラフト室22に流入した空気を、直接照明室30aに通し、これを照明室30aの前部に形成した排気口44を介して照明室30aの上部の排気室45に流し、その排気室45よりレターンダクト35より空調機36(図3参照)に吸い込まれ、温度調整、湿度調整、除塵されたのち、吹出口18から吹き出される。
【0052】
また、上部の育苗室14aは、高さHが高いため、スリット孔24aを上下二段にし、気流調整板25aもそれに合わせて上下二段とする。
【0053】
尚、上部の育苗室14a内の植物20aの成長に応じて、メタルハライドランプからなる照明器具27aにより近づくため、成長に合わせて照明器具27aの照度を適宜変更するようにする。
【0054】
この図4〜図6の実施の形態でも、下部の育苗室14では、スクリーンフィルタ28を通して空調空気が照明室30内に流入してその照明器具27の発熱による影響を無くしながら、その育苗室14内の植物20aに温湿度と風速調整された空調空気を供給することができる。
【0055】
また、下部の育苗室14で、ある程度の高さまで成長したならば上部の育苗室14aに移し、同様の環境下で育苗することができる。
【0056】
この場合、照明器具27aの照明室30aには、ドラフト室22に流入した空気が直接導入されて、照明器具27aが冷却され、その後、排気口44を介して上部の排気室45を介してレターンダクト35に流れることとなる。
【0057】
このように、上部の育苗室14aの照明器具27aが発熱してもドラフト室22の空気を照明室30aに流して冷却し、これを排気室45よりレターンダクト35を介して空調機36に流して空調することで、発熱の影響を無くすことができる。
【0058】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、照明器具からの発熱の影響を受けることなく、温湿度と照度を適正に保ちながら植物を一定の環境に保って育苗することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す平面図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【図6】図4のD−D線断面図である。
【符号の説明】
10 空調室
14 育苗室
15 ベンチ
21 育苗トレイ
22 ドラフト室
26 天井部
27 照明器具
28 スクリーンフィルタ
30 照明室

Claims (7)

  1. 空調空気が供給される空調室内に、育苗トレイを収容する前面が開口した育苗室を有するベンチを設け、そのベンチの背面に、空調室内の空調空気を育苗室を通して吸引するドラフト室を設け、該育苗室の天井部に照明器具を設けると共にその照明器具直下に、光透過率が90%以上で開孔率が40%以上に形成されたスクリーンフィルタを設けて育苗室と仕切られた照明室を区画形成し、その照明室の背面をドラフト室に連通し、育苗室の背面に、ドラフト室に連通する多数のスリット孔を形成すると共に、そのスリット孔の幅を調整する気流調整板を設け、育苗室の前面から空調空気を育苗室に導入し、その育苗室内の空調空気をスリット孔と気流調整板を通してドラフト室に排気し、かつ、育苗室内に供給された空調空気の一部をスクリーンフィルタを通して照明室に導入すると共にその空調空気で照明器具を冷却した後ドラフト室に排気するようにしたことを特徴とする植物の環境装置。
  2. 空調室内に通路を挟んでベンチが設けられ、その通路の上の空調室天井部に、空調空気の吹出口が通路に沿ってスリット状に設けられ、その給気口が高性能フィルタ、加湿器を介して空調機の吹込側に接続され、他方ベンチの頂部にドラフト室につながるレターンダクトが接続されると共にそのレターンダクトが空調機の吸込側に接続される請求項1記載の植物の環境装置。
  3. 育苗室は、ベンチに上下多段に形成され、照明器具が取り付けられる各照明室の天井部は鏡面に形成される請求項1記載の植物の環境装置。
  4. 最下段の育苗室の下部のベンチには、各育苗室やドラフト室内に流入した水を溜めるドレン溜めが形成される請求項3記載の植物の環境装置。
  5. スクリーンフィルタは、透明なポリエチレン繊維をメッシュ状に編んで形成され、光透過率が90%以上で開孔率が40%以上に形成される請求項1又は3記載の植物の環境装置。
  6. 育苗室の背面には、スリット孔の幅を調整する気流調整板にて、育苗室内に流入する空調空気の流速が0.1〜1m/sec、好ましくは0.1〜0.5m/secに調整される請求項1又は3記載の植物の環境装置。
  7. 上記育苗室を有するベンチの上部に上部育苗室を設け、その上部育苗室の天井部に照明器具を設けると共にその照明器具直下に透明板を設けて上部育苗室と仕切られた照明室を区画形成し、その照明室の背面をドラフト室に連通すると共に、照明室の前面側をレターンダクトに接続して各育苗室からドラフト室内に排気された空調空気を照明室を通して照明器具を冷却した後、レターンダクトに排気する請求項1記載の植物の環境装置。
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