JP4169380B2 - フタロシアニン組成物およびそれを用いた光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規フタロシアニン組成物およびそれを用いた光記録媒体に関するものである。本発明にかかる新規フタロシアニン組成物は、600〜1000nmの近赤外域に吸収を有し溶解性に優れているので、半導体レーザーを使う光記録媒体、液晶表示装置、光学文字読取機等における書き込みあるいは読み取りのための近赤外吸収色素、近赤外増感剤、感熱転写、感熱紙・感熱孔版などの光熱変換剤、近赤外線吸収フィルター、眼精疲労防止剤、光導電材料などとして用いる近赤外線吸収材料として、あるいは、撮像管に用いる色分解フィルター、液晶表示素子、カラーブラウン管選択吸収フィルター、カラートナー、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用バーコード用インク、さらに微生物不活性化剤、腫瘍治療用感光性色素等に用いる際に優れた効果を発揮する。
【0002】
特にコンパクトディスク対応の追記型光記録媒体に用いるための近赤外吸収色素として非常に優れた効果を発揮するものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、半導体レーザーを光源として用いるコンパクトディスク、レーザーディスク、光メモリーディスク、光カード等の光記録媒体の開発が活発である。特に、CD、PHOTO−CDあるいはCD−ROMは、大容量、高速アクセスのデジタル記録媒体として音声、画像、コードデータ等の保存再生に、大量に利用されている。これらのシステムはいずれも半導体レーザーに感受するいわゆる近赤外吸収色素を必要とし、それらの色素に関して特性の良好なものが求められている。
【0004】
なかでも光、熱、温度等に対して安定であり堅牢性に優れているフタロシアニン系化合物については、数多く検討されている。
【0005】
コンパクトディスク対応の追記型光記録媒体に用いる際に要求される特性としては、
(1)薄膜での極大吸収波長が700〜730nmに制御されていること(会合によるピークが少なく、そのことにより吸光度が高く、ピークがシャープであることによって、反射率などの光学特性に対する主要な構成要因となる)、
(2)スピンコート等の簡便でかつ生産性に優れた方法で基板上に塗布でき、かつ基板を侵さない溶媒に対しての溶解性に優れていること、
(3)耐熱性、耐光性が良好であること、
(4)熱分解特性が良好であること(感度に対する主要な構成要因となる)、
(5)製造方法などにおいて経済性に優れた化合物であること、
等が挙げられる。
【0006】
例えば、特開昭58−56892号には、ペルフルオロフタロシアニン化合物を用いる方法が提案されている。しかしながら、これらの化合物は、有機溶媒に対しての溶解性に乏しく、また満足できる吸収波長に制御できない。
【0007】
特開昭61−192780号、特開昭61−246091号、特開昭63−37991号、特開昭64−42283号、特開平2−276677号、特開平2−91360号、特開平2−265788号、特開平3−215466号、特開平4−226390号などには、フタロシアニン骨格のベンゼン環に酸素を介して置換基を導入したものが提案されている。しかしながら、これらの化合物は、色素の置換基の種類、数および位置によっては耐光性が悪かったり、反射率が小さかったり、通常よく用いられているポリカーボネートなどの基板に直接塗布できる溶剤に溶解しなかったり、あるいは吸収波長の制御において難点があったりするなどの問題点を有している。
【0008】
それらの欠点が比較的解決されたものとして特開平5−1272号などにはフタロシアニンのα位にアルコキシ基を4個導入し、残基にハロゲン化合物などを一部導入したものが提案されている。しかしながら、α位に置換基を導入したものは、原料とするフタロニトリルからの生産性が悪いなど、経済性の点で問題点を有している。またこのようなフタロシアニン化合物も、必ずしもすべての特性を満足すべきものでなく、よって更なる良好な特性が望まれている。
【0009】
また、本出願人らは、これまでに嵩高い置換基をもつフェノキシ基がβ位に置換されたフタロシアニン化合物を提案してきた(特開平5−345861、特開平6−107663、特開平6−328856、特開平8−225751号)。
【0010】
しかしながら、これらの化合物も光記録媒体において反射率、感度等に問題点を有しており、これまでに提案されているフタロシアニン化合物は、上記特性をすべて満足するものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の有する前記事情に考慮してなされたものである。すなわち、本発明の目的は、600〜1000nmの吸収波長域において目的に応じた吸収制御が可能であり、また用途に応じた溶媒、例えばアルコール系溶媒等に対して溶解性に優れ、かつ耐熱性、耐光性の高い新規なフタロシアニン組成物を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、光記録媒体、特にコンパクトディスク対応の光記録媒体として、それらに必要な特性である溶解度、吸収波長、感度、反射率、耐光性、熱分解特性において優れた効果を発揮するフタロシアニン組成物を用いてなる光記録媒体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記特性を改善するために特願平8−271005号および特願平9−129534号で改良されたフタロシアニン化合物およびそれを用いた光記録媒体を提案している。これによれば上記課題を解決するに足りるフタロシアニン化合物が得られるものである。しかしながら、本発明者らは、さらなる改良をめざし鋭意検討した結果、2種以上のフタロシアニン化合物(好ましくは上記提案のフタロシアニン化合物に含まれるもの同士)を混合することによって、混合前の単独のフタロシアニン化合物よりも熱重量分析における熱分解開始温度が下がり、その結果、光記録媒体にしたときの記録感度が向上することを見出したものである。
【0014】
すなわち、上記諸目的は、下記(1)〜(3)により達成される。
【0015】
(1) 下記(I)群および(II)群に含まれるフタロシアニン化合物を各1種類以上含んでなるフタロシアニン組成物:
(I)群:一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物:
【0016】
【化3】
【0017】
式中、Xは下記に規定した(1)〜(7)群:
【0018】
【化4】
【0019】
式中、R 1 、R 2 、R 3 およびR 5 は各々独立に炭素原子数1〜20個の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わし、AはCH基または窒素原子を表わし、Bは酸素原子、硫黄原子、CH 2 基、NH基または炭素原子数1〜4個のアルキルアミノ基を表わし、R 4 は置換基を有していてもよいアリール基または炭素原子数3〜10個のシクロアルキル基を表わし、a、b、fおよびgは1〜5の整数であり、cおよびkは0〜6の整数であり、dおよびeは各々独立に1〜4の整数であり、lは1〜20の整数であり、mはC l H m なる直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を飽和するのに必要な水素原子数である;
の置換基よりなる群から選ばれた置換基を表わし、YはXについて定義した置換基、臭素原子を除くハロゲン原子または水素原子を表わし、Wは臭素原子を除くハロゲン原子を表わし、ZはYについて定義した置換基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するモノ−もしくはジ−アルキルアミノ基、置換されていてもよいアニリノ基またはニトロ基を表わし、pおよびqは0〜3の整数であり、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす;
【0020】
(II)群:一般式(5)で表されるフタロシアニン化合物:
【0021】
【化5】
【0022】
式中、w、x、yおよびzは0〜3の整数でかつ置換された臭素原子数の総和は2〜12の整数であり、またnは0〜3の整数であり、Uはアリール基を表わし、Vは、w、x、y、zが1〜3の整数の場合には、下記に規定した( i )〜( iii )群:
【0023】
【化6】
【0024】
式中、R 6 、R 7 およびR 8 は各々独立に炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表わし、rは1〜5の整数であり、sは0〜6の整数である;
の臭素置換残基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、w、x、y、zが0の場合(すなわち、臭素置換されていない場合)には、上記(i)〜(iii)群の置換基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす。
【0025】
(2) 上記(1)に記載のフタロシアニン組成物を基板上に設けられた記録層に含有してなる光記録媒体。
【0026】
(3) 透明な樹脂製基板上に設けられた記録層および金属の反射層を有するコンパクトディスク対応の追記型光記録媒体において、該記録層が上記(2)に記載の記録層である光記録媒体。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係るフタロシアニン組成物は、
(I)群:一般式(1)
【0028】
【化7】
【0029】
で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置のうちの少なくとも一箇所がフェノキシ基で置換されており、かつ該フェノキシ基がオルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフタロシアニン化合物、および
(II)群:臭素原子を有するフタロシアニン化合物
に含まれるフタロシアニン化合物を各1種類以上含んでなるものであり、以下、これにつき詳述する。
【0030】
本発明に係るフタロシアニン組成物のうち(I)群のフタロシアニン化合物は、上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置のうちの少なくとも一箇所がフェノキシ基で置換されており、かつ該フェノキシ基がオルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフタロシアニン化合物であり、好ましくは該フェノキシ基のオルソ位の置換基に含まれる原子のうちで水素原子を除いた原子の原子半径の総計が6.0Å以上であることが望ましい。ここで、主な原子の原子半径は、以下の数字を用いた;炭素=0.77、酸素=0.74、窒素=0.74、フッ素=0.72、塩素=0.99、ケイ素=1.17、リン=1.10、硫黄=1.04(いずれも単位はÅである)。6.0Å以上であることによって、該フタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物において、実用上有意な溶媒溶解性を示すので好ましい。
【0031】
また、前記(I)群の上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置のうちの少なくとも一箇所に置換されてなるフェノキシ基のオルソ位の少なくとも一方に置換し得る置換基としては、下記(1)〜(7)群の置換基:
【0032】
【化8】
【0033】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR5 は各々独立に炭素原子数1〜20個の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表わし、AはCH基または窒素原子を表わし、Bは酸素原子、硫黄原子、CH2 基、NH基または炭素原子数1〜4個のアルキルアミノ基を表わし、R4 は置換基を有していてもよいアリール基または炭素原子数3〜10個のシクロアルキル基を表わし、a、b、fおよびgは1〜5の整数であり、cおよびkは0〜6の整数であり、dおよびeは各々独立に1〜4の整数であり、lは1〜20の整数であり、mはCl Hm なる直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を飽和するのに必要な水素原子数である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基であることが望ましい。
【0034】
上記R1 、R2 、R3 およびR5 で表されるものは、炭素原子数1〜20個の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基である。
【0035】
このうち、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基として、好ましくは第2級以上の炭素原子を2〜4個含み、かつ炭素原子数が5〜20個の第2級または第3級のアルキル基であり、特に好ましくは第2級以上の炭素原子を2〜4個含み、かつ炭素原子数が6〜15個の第2級または第3級のアルキル基である。さらに好ましくは、第2級以上の炭素原子を2〜4個含み、かつ炭素原子数が6〜10個の第2級または第3級のアルキル基である。当該アルキル基中に第2級以上の炭素原子を2〜4個含んでいることにより、熱重量分析装置で測定した時に、熱分解開始直後の単位時間当たりの重量減少度がより大きくなり、当該(I)群のフタロシアニン化合物単独よりも(II)群のフタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物の方が、熱分解開始温度が下がる。その結果、該組成物を光記録媒体にした時の記録感度がさらに向上することとなるので好ましい。上記アルキル基としては、具体的には、3−メチル−2−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2,2−ジメチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、4,4−ジメチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ヘキシル基、5−メチル−2−ヘキシル基、2,3,3−トリメチル−2−ブチル基、3,4−ジメチル−2−ペンチル基、2,3−ジメチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチル−2−ペンチル基、3−エチル−2−ペンチル基、4−メチル−3−ヘキシル基、3−メチル−2−ヘキシル基、2,2−ジメチル−3−ヘキシル基、2,3−ジメチル−2−ヘキシル基、2,5−ジメチル−2−ヘキシル基、2,5−ジメチル−3−ヘキシル基、3,4−ジメチル−3−ヘキシル基、3,5−ジメチル−3−ヘキシル基、3−エチル−2−メチル−3−ペンチル基、4−メチル−3−ヘプチル基、5−メチル−2−ヘプチル基、5−メチル−3−ヘプチル基、6−メチル−2−ヘプチル基、6−メチル−3−ヘプチル基、2,3,4−トリメチル−2−ペンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2−メチル−3−エチル−2−ペンチル基、3−エチル−3−メチル−2−ペンチル基、3−エチル−4−メチル−2−ペンチル基、2−エチル−3−メチル−2−ペンチル基、2,3−ジメチル−3−ヘキシル基、2,4−ジメチル−3−ヘキシル基、4,5−ジメチル−3−ヘキシル基、4−エチル−3−ヘキシル基、3−エチル−2−ヘキシル基、3,4−ジメチル−2−ヘキシル基、3,5−ジメチル−2−ヘキシル基、2−メチル−3−ヘプチル基、3−メチル−2−ヘプチル基、3−メチル−4−ヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンチル基、2−メチル−3−オクチル基、3,5−ジメチル−4−ヘプチル基、2,4−ジメチル−3−エチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−4−ヘプチル基、4−エチル−2−メチル−3−ヘキシル基、2,4,5−トリメチル−3−ヘキシル基、3,4,5−トリメチル−2−ヘキシル基、3−エチル−4−メチル−2−ヘキシル基、4−エチル−3−メチル−2−ヘキシル基、2,3−ジメチル−4−ヘプチル基、3,7−ジメチル−3−オクチル基、3,7−ジメチル−4−オクチル基、2,6−ジメチル−3−オクチル基、2−メチル−3−ウンデシル基、7−エチル−2−メチル−4−ウンデシル基、2−メチル−3−トリデシル基、2−メチル−4−トリデシル基などである。これらのアルキル基のうちで好ましくは、第2級以上の炭素原子が2個以上隣接しているアルキル基であり、特に好ましくは、第2級以上の炭素原子が3個以上隣接しているアルキル基である。その具体例としては、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、3,4−ジメチル−2−ペンチル基、2,3,4−トリメチル−2−ペンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、3−エチル−4−メチル−2−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ヘキシル基、4,5−ジメチル−3−ヘキシル基、3,4−ジメチル−2−ヘキシル基、3,5−ジメチル−4−ヘプチル基、2,4−ジメチル−3−エチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−4−ヘプチル基、4−エチル−2−メチル−3−ヘキシル基、2,4,5−トリメチル−3−ヘキシル基、3,4,5−トリメチル−2−ヘキシル基、3−エチル−4−メチル−2−ヘキシル基、4−エチル−3−メチル−2−ヘキシル基、2,3−ジメチル−4−ヘプチル基などである。第2級以上の炭素原子が3個以上隣接しているアルキル基であることによって、該フタロシアニン化合物が熱重量測定した時に、熱分解開始後の単位時間当たりの重量減少度がより大きくなる。これは、フタロシアニン化合物が熱に対してより速い応答で変化することを意味しており、その結果、光記録媒体にした時の記録感度が向上するので好ましい。
【0036】
また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トルイル基などを挙げることができる。特に好ましくはフェニル基である。
【0037】
上記炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基に場合によっては存在する置換基は、例えば、臭素原子を除くハロゲン原子、アルコシキ基、その一部が臭素原子以外でハロゲン化されたハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコシキカルボニル基などである。また、上記アリール基に場合によっては存在する置換基は、例えば、臭素原子を除くハロゲン原子、アルキル基、アルコシキ基、その一部が臭素原子以外でハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、その一部が臭素原子以外でハロゲン化されたハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコシキカルボニル基などである。
【0038】
ここで、上記アルキル基またはアリール基に場合によっては存在する置換基のうち、臭素原子を除くハロゲン原子とは、フッ素、塩素およびヨウ素であり、この中で好ましくは塩素である。
【0039】
上記アリール基に場合によっては存在する置換基のうち、アルキル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、ラウリル基、ステアリル基などを示す。
【0040】
上記アルキル基またはアリール基に場合によっては存在する置換基のうち、アルコキシ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基などを示す。
【0041】
上記アリール基に場合によっては存在する置換基のうち、臭素原子を除くハロゲン化アルキル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部が臭素原子以外でハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル基の一部が臭素原子以外でハロゲン化されたものである。特に好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル基の一部が塩素化されたものである。具体的には、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基、クロロペンチル基、クロロヘキシル基、クロロヘプチル基、クロロオクチル基等のモノクロロアルキル基、1,3−ジクロロプロピル基、1,3−ジクロロブチル基等のジクロロアルキル基などを示す。
【0042】
上記アルキル基またはアリール基に場合によっては存在する置換基のうち、臭素原子を除くハロゲン化アルコキシ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基の一部が臭素原子以外でハロゲン化されたものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルコキシ基の一部が臭素原子以外でハロゲン化されたものである。特に好ましくは炭素原子数1〜8個のアルコキシ基の一部が塩素化されたものである。具体的には、クロロメトキシ基、クロロエトキシ基、クロロプロポキシ基、クロロブトキシ基、クロロペントキシ基、クロロヘキシルオキシ基、クロロヘプチルオキシ基、クロロオクチルオキシ基等のモノクロロアルコキシ基、1,3−ジクロロプロポキシ基、1,3−ジクロロブトキシ基等のジクロロアルコキシ基等を示す。
【0043】
上記アルキル基またはアリール基に場合によっては存在する置換基のうち、アルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を含むアルキルアミノ基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル基を含むアルキルアミノ基である。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、およびn−デシルアミノ基などが挙げられる。
【0044】
上記アルキル基またはアリール基に場合によっては存在する置換基のうち、アルコキシカルボニル基とは、アルコキシ基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1〜8個、好ましくは炭素原子数1〜5個のアルコキシカルボニル、またはヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数3〜8個、好ましくは炭素原子数5〜8個の環状アルコキシカルボニルを示す。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基、ブトキシエトキシカルボニル基、ジエチルアミノエトキシカルボニル基、メチルチオエトキシカルボニル基、メトキシプロピルオキシカルボニル基、(3,6,9−オキサ)デシルオキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基、ピランオキシカルボニル基、ピペリジノオキシカルボニル基、ピペリジノエトキシカルボニル基、テトラヒドロピロールオキシカルボニル基、テトラヒドロピランメトキシカルボニル基、テトラヒドロチオフェンオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基などを示す。
【0045】
上記Bで示される炭素原子数1〜4個のアルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜4個のアルキル基を含むアルキルアミノ基である。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基などが挙げられる。
【0046】
上記R4 で表されるものは、置換基を有していてもよいアリール基または炭素原子数3〜10個のシクロアルキル基である。このうち、置換基を有していてもよいアリール基としては、上述したR1 、R2 、R3 およびR5 において説明した置換基を有していてもよいアリール基と同じものを表すものである。また、炭素原子数3〜10個のシクロアルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
【0047】
上述した(1)〜(7)群の置換基のうち、特に、(1)〜(4)および(6)群の置換基のいずれかを少なくとも1個用いるのがより好ましい。また、その際のオルソ位、すなわちフェノキシ基の2位と6位に置換された置換基の原子数の両位の総計が4以上あるのが好ましい。
【0048】
これらフェノキシ基の2位あるいは6位、若しくは両位に置換される上記(1)〜(7)群の置換基としては、以下に具体的に例示されるものが挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されるものではなく、上記に規定した範囲に含まれるものであればいかなるものでもよい。
【0049】
(1)群の置換基:
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したペンチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したヘプチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したオクチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したノニルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したデシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したウンデシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したドデシルオキシカルボニル、シクロヘキサンメトキシカルボニル、シクロヘキサンエトキシカルボニル、3−シクロヘキシル−1−プロポキシカルボニル、tert−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−クロロフェノキシカルボニル、4−シクロヘキシルフェノキシカルボニル、4−フェニルフェノキシカルボニル、2−フルオロフェノキシカルボニル、4−エトキシフェノキシカルボニル。
【0050】
(2)群の置換基:
メトキシエトキシカルボニル、エトキシエトキシカルボニル、3′,6′−オキサヘプチルオキシカルボニル、3′,6′−オキサオクチルオキシカルボニル、3′,6′,9′−オキサデシルオキシカルボニル、3′,6′,9′,12′−オキサトリデシルオキシカルボニル。
【0051】
(3)群の置換基:
メトキシプロピルオキシカルボニル、エトキシプロピルオキシカルボニル、4′,8′−オキサノニルオキシカルボニル、4′,8′−オキサデシルオキシカルボニル、4′,8′,12′−オキサトリデシルオキシカルボニル。
【0052】
(4)群の置換基:
2−テトラヒドロキシフランオキシカルボニル、4−テトラヒドロピラノオキシカルボニル、2−ピロリジノオキシカルボニル、2−ピペリジノオキシカルボニル、2−テトラヒドロチオフェンオキシカルボニル、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル、4−テトラヒドロピラノオキシカルボニル、2−モルフォリノエトキシカルボニル、2−ピロリジノエトキシカルボニル、2−ピペラジノエトキシカルボニル。
【0053】
(5)群の置換基:
ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、3−フェニル−1−プロポキシカルボニル、4−フェニル−1−ブトキシカルボニル、5−フェニル−1−ペントキシカルボニル。
【0054】
(6)群の置換基:
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、直鎖あるいは分岐したペンチルオキシ、直鎖あるいは分岐したヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、直鎖あるいは分岐したヘプチルオキシ、直鎖あるいは分岐したオクチルオキシ、直鎖あるいは分岐したノニルオキシ、直鎖あるいは分岐したデシルオキシ、直鎖あるいは分岐したウンデシルオキシ、直鎖あるいは分岐したドデシルオキシ、直鎖あるいは分岐したヘキサデシルオキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、3′,6′−オキサヘプチルオキシ、3′,6′−オキサオクチルオキシ、3′,6′,9′−オキサデシルオキシ、3′6′,9′,12′−オキサトリデシルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシプロピルオキシ、4′,8′−オキサノニルオキシ、4′,8′−オキサデシルオキシ。
【0055】
(7)群の置換基:
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、直鎖あるいは分岐したペンチル、直鎖あるいは分岐したヘキシル、シクロヘキシル、直鎖あるいは分岐したヘプチル、直鎖あるいは分岐したオクチル、直鎖あるいは分岐したノニル、直鎖あるいは分岐したデシル、直鎖あるいは分岐したウンデシル、直鎖あるいは分岐したドデシル、直鎖あるいは分岐したヘキサデシル。
【0056】
なお、上記(1)〜(7)群の置換基以外にフェノキシ基の2位若しくは6位に導入し得る置換基としては、臭素原子を除くハロゲン原子が挙げられる。具体的には、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子である。
【0057】
また、上記(I)群のフタロシアニン化合物のフェノキシ基のオルソ位(2位および6位)以外の位置(3〜5位)にも、当該フタロシアニン化合物の溶解性を向上させたり吸収波長の制御のために、上記(1)〜(7)群の置換基を有していてもよいほか、新たな置換基を有していてもよい。これらの置換基としては、例えば、臭素原子を除くハロゲン原子、アルコキシ基が置換されていてもよい炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルコキシからなるアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、直鎖または分岐している置換されていてもよい炭素原子数1〜12個のアルキル基、置換されていてもよい直鎖または分岐している炭素原子数1〜12個のアルコキシ基、置換されていてもよい直鎖または分岐している炭素原子数1〜20個のモノアルキルアミノ基、置換されていてもよい直鎖または分岐している炭素原子数1〜20個のジアルキルアミノ基、シクロヘキシル基、置換されていてもよいフェノキシ基、置換されていてもよいアニリノ基またはニトロ基などが挙げられる。
【0058】
また、上記(I)群の一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置には、上記オルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフェノキシ基が置換されている以外に、臭素原子を除くハロゲン原子が置換されていてもよく、上記一般式(1)のフタロシアニン骨格のβ位(2、3、6、7、10、11、14および15位)の少なくとも1箇所が、オルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフェノキシ基で置換されてなるフタロシアニン化合物の場合には、フタロシアニン組成物の溶解性の点からフッ素原子が好ましいものである。
【0059】
また、上記(I)群の一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、Mはフタロシアニン化合物の中心金属を表すものである。中心金属Mとしては、金属、オキシ金属または金属塩を用いることができ、具体的には例えば、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、チタニル、バナジル、塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化インジウム、ヨウ化インジウム、塩化ガリウム、ヨウ化ガリウム、塩化チタン、塩化ゲルマニウム、塩化バナジウム、塩化錫および塩化珪素等が挙げられ、このうち、上記一般式(1)のフタロシアニン骨格のβ位(2、3、6、7、10、11、14および15位)に、オルソ位に置換基を持つフェノキシ置換基で置換されている場合には、コバルト、銅、亜鉛、バナジルまたは塩化錫が耐光性が良好である点で好ましく、特に光記録媒体にしたときの光学特性の適合性からバナジルが好ましい。一方、上記一般式(1)のフタロシアニン骨格のα位(1、4、5、8、9、12、13および16位)に、オルソ位に置換基を持つフェノキシ置換基で置換されている場合には、光学特性の適合性から2価の金属原子が好ましい。
【0060】
上述した(I)群のフタロシアニン化合物において、好ましくは、一般式(2)
【0061】
【化9】
【0062】
(式中、Xは上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置のうちの少なくとも一箇所に置換されてなるフェノキシ基のオルソ位の少なくとも一方に置換し得る置換基として規定した(1)〜(7)群の置換基よりなる群から選ばれた置換基を表わし、YはXについて定義した置換基、臭素原子を除くハロゲン原子または水素原子を表わし、Wは臭素原子を除くハロゲン原子を表わし、ZはYについて定義した置換基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するモノ−もしくはジ−アルキルアミノ基、置換されていてもよいアニリノ基またはニトロ基を表わし、pおよびqは0〜3の整数であり、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす。)で表わされるフタロシアニン化合物である。
【0063】
この一般式(2)で表わされるフタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格に4個のフェノキシ基を導入し、さらにフェノキシ基のオルソ位に嵩高い置換基XぉよびYを導入したものであるため、耐光性を維持しながら溶解性、吸収波長の制御および反射率において優れた特性が得られ、よってかくなるフタロシアニン化合物を記録層に含有させて用いることで、得られる光記録媒体においても優れた効果が発揮できるものである。本発明では、これらのフェノキシ基をフタロシアニン骨格のβ位に導入するのが経済性の面で好ましい。
【0064】
上記一般式(2)において、Xで表される置換基は、上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置のうちの少なくとも一箇所に置換されてなるフェノキシ基のオルソ位の少なくとも一方に置換し得る置換基として規定した(1)〜(7)群の置換基よりなる群から選ばれた置換基を表わす。これら(1)〜(7)群の置換基の詳細な内容および具体的な例示に関しても、上記一般式(1)において詳細に説明した内容となんら変わるものではなく同じである。
【0065】
上記一般式(2)において、Yで表される上記フェノキシ基上のオルソ位の一方に置換する置換基のうち、臭素原子を除くハロゲン原子とは、フッ素、塩素およびヨウ素であり、この中で好ましくは塩素である。
【0066】
上記置換基XおよびYがフェノキシ基のオルソ位(2、6位)にあることによって、フタロシアニン化合物の薄膜の吸収スペクトルにおける会合体由来の吸収ピーク(以下、会合体ピークという。)が大きく抑制され、単量体由来の吸収ピーク(以下、単量体ピークという。)がシャープになるため好ましい。さらに、該フタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物を光記録媒体に用いたときの反射率、記録感度などの光学特性に優れる。
【0067】
上記一般式(2)において、Zで表される上記フェノキシ基上のオルソ位以外の残りの位置(3、4、5位)に置換し得る置換基は、フタロシアニン化合物の溶解性をより一層向上させたり、吸収波長の制御を行う目的で導入される。当該Zで表される置換基のうち、炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するモノ−もしくはジ−アルキルアミノ基とは、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、n−デシルアミノ基などが挙げられる。
【0068】
上記炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するモノ−もしくはジ−アルキルアミノ基に場合によっては存在する置換基としては、例えば、臭素原子を除くハロゲン原子、アルコキシ基、その一部が臭素原子以外でハロゲン化されたハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0069】
上記一般式(2)において、Zで表される上記フェノキシ基上のオルソ位以外の残りの位置(3、4、5位)に置換し得る置換基のうち、アニリノ基に場合によっては存在する置換基としては、例えば、臭素原子を除くハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、臭素原子を除くハロゲン化アルキル基、臭素原子を除くハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基などである。これらの置換基の詳細な内容および具体的な例示に関しては、上記一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR5 で表されるアリール基に場合によっては存在する置換基関して詳細に説明した内容となんら変わるものではなく同じである。
【0070】
一般式(2)において、Wは臭素原子を除くハロゲン原子を表わす。臭素原子を除くハロゲン原子とは、フッ素、塩素およびヨウ素であり、この中で好ましくはフッ素である。該置換基Wの数pは0〜3の整数であるが、好ましくはWが3個全て導入されたものが好ましく、特に、3個導入されたWがいずれもフッ素原子であることが好ましい。3個導入されたWがいずれもフッ素原子であるフタロシアニン化合物では、(II)群のフタロシアニン化合物と混合する際に用いる溶媒などに対して優れた溶解性を有する。さらに、当該フタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物を含有する溶液は、基板上に光記録媒体用の記録層を形成する際に優れた造膜性を発現し得るため、有用な光記録媒体用の材料として利用できる。また、当該フタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物を光記録媒体に用いたときの反射率、記録感度などの光学特性が特に優れている。このため高速記録タイプのコンパクトディスクに対応する性能を有しているため特に好ましい。
【0071】
上記一般式(2)において、Mで示されるフタロシアニン化合物の中心金属は、金属、オキシ金属または金属塩であり、詳細な内容および具体的な例示に関しては上記一般式(1)の中心金属Mに関して詳細に説明した内容となんら変わるものではなく同じである。
【0072】
次に、上記(I)群のフタロシアニン化合物の製造方法としては、特に制限されるものでなく、上記一般式(1)のフタロシアニン骨格のβ位(2、3、6、7、10、11、14および15位)の少なくとも1箇所が、オルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフェノキシ基で置換されてなるフタロシアニン化合物の場合には、例えば、特開平6−3288565号公報に記載の製造方法と同様の製造法などを利用することができる。一方、上記一般式(1)のフタロシアニン骨格のα位(1、4、5、8、9、12、13および16位)の少なくとも1箇所が、オルソ位の少なくとも一方に置換基を持つフェノキシ基で置換されてなるフタロシアニン化合物の場合には、α位のみにFのあるニトリル化合物から、従来既知の方法を利用して合成することができる。
【0073】
上記(I)群のフタロシアニン化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(3)において、式中の置換基Aおよび中心金属Mが、それぞれ下記表1〜2に示すもの、および下記一般式(4)において、式中の置換基Bおよび中心金属Mがそれぞれ下記表3に示すものであるフタロシアニン化合物などが挙げられる。
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
一方、本発明に係るフタロシアニン組成物のうち(II)群のフタロシアニン化合物は、臭素原子を有するフタロシアニン化合物である。本発明では、従来知られているフタロシアニン化合物において、その構造の一部が臭素化されたものを使用することができる。すなわち、該フタロシアニン化合物中の臭素原子は、フタロシアニン骨格のベンゼン核の置換可能な位置(上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置)に直接導入されている場合、および/または該ベンゼン核の置換可能な位置に置換されている置換基が臭素原子を有する場合のいずれであってもよい。好ましくはベンゼン核の置換可能な位置に置換されている置換基(以下、ベンゼン核上の置換基という)が臭素原子を有する場合である。
【0080】
また、好ましくは臭素原子を有するフタロシアニン化合物が、少なくとも一つのアルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されているものである。
【0081】
ここで、アルコキシ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基などを示す。
【0082】
また、アリールオキシ基とは、フェノキシ基、ナフトキシ基などであり、好ましくはフェノキシ基である。
【0083】
本発明の(II)群のフタロシアニン化合物において、臭素原子は前記ベンゼン核上の置換基に直接置換されていてもよいし、ベンゼン核上の置換基にさらに置換されている置換基上にあってもよい。好ましくはベンゼン核上の置換基にさらに置換されている置換基上にある場合である。前記ベンゼン核上の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられ、好ましくはアリールオキシ基である。アリールオキシ基とは、フェノキシ基、ナフトキシ基などであり、好ましくはフェノキシ基である。さらに好ましくは、フェノキシ基が臭素原子を有する置換基およびアリール基で置換されている場合である。さらには、フタロシアニン骨格のベンゼン核の置換可能な位置(上記一般式(1)で表されるフタロシアニンの構造式において、1〜16の位置)のうちの1〜8個がフェノキシ基で置換されており、かつ該フェノキシ基の少なくとも一つが置換基を有していてもよいアリール基および臭素原子を有する置換基で置換されているものが望ましい。
【0084】
ここで、置換基を有していてもよいアリール基のアリール基とはフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。アリール基に場合によっては存在する置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等である。上記置換基を有していてもよいアリール基は、フェノキシ基のオルソ位にあることが好ましい。置換基を有していてもよいアリール基がフェノキシ基のオルソ位にあることによって、該フタロシアニン化合物を混合してなるフタロシアニン組成物の薄膜の吸収スペクトルにおける会合体由来の吸収ピーク(以下、会合体ピークという。)が大きく抑制され、単量体由来の吸収ピーク(以下、単量体ピークという。)がシャープになるので好ましい。
【0085】
また、上記のフェノキシ基の少なくとも一つを置換する臭素原子を有する置換基としては、好ましくは炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル鎖を有する置換基の水素の一部または全部が臭素原子で置換された置換基が挙げられ、該アルキル鎖としては、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル鎖である。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、ラウリル、ステアリル、メトキシエチル、エトキシエチル、3′,6′−オキサヘプチル、3′,6′−オキサオクチル、3′,6′,9′−オキサデシル、3′,6′,9′,12′−オキサトリデシル等のアルキル鎖が例示される。
【0086】
上記臭素原子を有する置換基は、フェノキシ基のオルソ位にあることが好ましい。臭素原子を有する置換基がフェノキシ基のオルソ位にあることによって、フタロシアニン化合物の薄膜の吸収スペクトルにおける会合体由来の吸収ピーク(以下、会合体ピークという。)が大きく制御され、単量体由来の吸収ピーク(以下、単量体ピークという。)がシャープになるので好ましい。
【0087】
上記臭素原子を有する置換基に含まれる臭素原子数は、1〜3個であることが好ましい。また、本発明の(II)群のフタロシアニン化合物中の臭素原子の総数は1〜16個であることが好ましく、特に好ましくは2〜12個である。
【0088】
上記のアルキル鎖を有する置換基としては、下記に規定した(i)〜(iii)群
【0089】
【化12】
【0090】
(式中、R6 、R7 およびR8 は各々独立に炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表わし、rは1〜5の整数であり、sは0〜6の整数である。)から選ばれる置換基が好ましい。よって本発明の(II)群のフタロシアニン化合物中の臭素原子を有する置換基の好ましい例としては、上記(i)〜(iii)群の置換基の水素原子の一部または全部が臭素原子で置換された置換基が挙げられる。
【0091】
具体的には、(II)群のフタロシアニン化合物が、一般式(5)
【0092】
【化13】
【0093】
[ただし、式中、w、x、yおよびzは0〜3の整数でかつ置換された臭素原子数の総和は2〜12の整数であり、またnは0〜3の整数であり、Uは置換基を有していてもよいアリール基を表わし、Vは、w、x、y、zが1〜3の整数の場合には、下記に規定した(i)〜(iii)群の置換基
【0094】
【化14】
【0095】
(式中、R6 、R7 およびR8 は各々独立に炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表わし、rは1〜5の整数であり、sは0〜6の整数である。)の臭素置換残基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、w、x、y、zが0の場合(すなわち、臭素置換されていない場合)には、上記(i)〜(iii)群の置換基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす。]で表されるものである。
【0096】
上記一般式(5)において、Mで表される詳細な内容および具体的な例示に関しては、上記一般式(1)でMに関して詳細に説明した内容となんら変わるものではなく同じである。
【0097】
一般式(5)において、Uで表わされるフェノキシ基上の置換基は、置換基を有していてもよいアリール基を表わす。当該アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、トルイル基等を挙げることができる。特に好ましくはフェニル基である。該アリール基に場合によっては存在する置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコシキ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコシキカルボニル基等である。
【0098】
ここで、上記アリール基に場合によっては存在する置換基のうち、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素であり、この中で好ましくは臭素もしくは塩素であり、特に好ましくは臭素である。
【0099】
アルキル基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、ラウリル基、ステアリル基等を示す。
【0100】
アルコキシ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基などを示す。
【0101】
アルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を含むものであり、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキルアミノ基である。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基およびn−デシルアミノ基などが挙げられる。
【0102】
アルコキシカルボニル基とは、アルコキシ基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1〜8個、好ましくは炭素原子数1〜5個のアルコキシカルボニル、またはヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数3〜8個、好ましくは炭素原子数5〜8個の環状アルコキシカルボニルを示す。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基、ブトキシエトキシカルボニル基、ジエチルアミノエトキシカルボニル基、メチルチオエトキシカルボニル基、メトキシプロピルオキシカルボニル基、(3,6,9−オキサ)デシルオキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基、ピランオキシカルボニル基、ピペリジノオキシカルボニル基、ピペリジノエトキシカルボニル基、テトラヒドロピロールオキシカルボニル基、テトラヒドロピランメトキシカルボニル基、テトラヒドロチオフェンオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等を示す。
【0103】
一般式(5)において、V−(Br)w(もしくはx,y,z)で表わされるフェノキシ基上の置換基は、w、x、y、zが1〜3の整数の場合には臭素原子を有する置換基を表わし、その際、Vは上記(i)〜(iii)群のアルキル鎖を有する置換基の臭素置換残基から選ばれる少なくとも1種である。このような臭素原子を有する置換基の具体例としては、例えば、下記の(iv)〜(vi)群の置換基群が例示される。
【0104】
(iv)群の置換基:
ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、1−ブロモエチル、2−ブロモエチル、1,2−ジブロモエチル、1,1−ジブロモエチル、2,2−ジブロモエチル、1,1,2−トリブロモエチル、1,2,2−トリブロモエチル、1−ブロモプロピル、2−ブロモ−1−プロピル、3−ブロモ−1−プロピル、1−ブロモ−2−プロピル、2,3−ジブロモ−1プロピル、1,3−ジブロモ−2−プロピル、4−ブロモ−1−ブチル、1−ブロモ−1−ブチル、1−ブロモ−2−ブチル、2−ブロモ−1−ブチル、1,4−ジブロモ−2−ブチル、5−ブロモ−1−ペンチル、1−ブロモ−1−ペンチル、6−ブロモ−1−ヘキシル、1−ブロモ−1−ヘキシル、7−ブロモ−1−ヘプチル、1−ブロモ−1−ヘプチル、8−ブロモ−1−オクチル、1−ブロモ−1−オクチル、9−ブロモ−1−ノニル、1−ブロモ−1−ノニル、10−ブロモ−1−デシル、1−ブロモ−1−デシル、11−ブロモ−1−ウンデシル、1−ブロモ−1−ウンデシル、12−ブロモ−1−ドデシル、1−ブロモ−1−ドデシル。
【0105】
(v)群の置換基:
ブロモメトキシカルボニル、2−ブロモエトキシカルボニル、3−ブロモ−1−プロポキシカルボニル、2−ブロモ−1−プロポキシカルボニル、1−ブロモ−2−プロポキシカルボニル、2,3,ジブロモ−1−プロポキシカルボニル、1,3−ジブロモ−2−プロポキシカルボニル、1−ブロモ−2−ブトキシカルボニル、2−ブロモ−1−ブトキシカルボニル、4−ブロモ−1−ブトキシカルボニル、1,4−ジブロモ−2−ブトキシカルボニル、5−ブロモ−1−ペンチルオキシカルボニル、6−ブロモ−1−ヘキシルオキシカルボニル、7−ブロモ−1−ヘプチルオキシカルボニル、8−ブロモ−1−オクチルオキシカルボニル、9−ブロモ−1−ノニルオキシカルボニル、10−ブロモ−1−デシルオキシカルボニル、11−ブロモ−1−ウンデシルオキシカルボニル、12−ブロモ−1−ドデシルオキシカルボニル。
【0106】
(vi)群の置換基:
ブロモメトキシ、ジブロモメトキシ、トリブロモメトキシ、1−ブロモエトキシ、2−ブロモエトキシ、1,2−ジブロモエトキシ、1,1−ジブロモエトキシ、2,2−ジブロモエトキシ、1,1,2−トリブロモエトキシ、1,2,2−トリブロモエトキシ、1−ブロモプロポキシ、2−ブロモ−1−プロポキシ、3−ブロモ−1−プロポキシ、1−ブロモ−2−プロポキシ、2,3−ジブロモ−1−プロポキシ、1,3−ジブロモ−2−プロポキシ、4−ブロモ−1−ブトキシ、1−ブロモ−1−ブトキシ、1−ブロモ−2−ブトキシ、2−ブロモ−1−ブトキシ、1,4−ジブロモ−2−ブトキシ、5−ブロモ−1−ペンチルオキシ、1−ブロモ−1−ペンチルオキシ、6−ブロモ−1−ヘキシルオキシ、1−ブロモ−1−ヘキシルオキシ、7−ブロモ−1−ヘプチルオキシ、1−ブロモ−1−ヘプチルオキシ、8−ブロモ−1−オクチルオキシ、1−ブロモ−1−オクチルオキシ、9−ブロモ−1−ノニルオキシ、1−ブロモ−1−ノニルオキシ、10−ブロモ−1−デシルオキシ、1−ブロモ−1−デシルオキシ、11−ブロモ−1−ウンデシルオキシ、1−ブロモ−1−ウンデシルオキシ、12−ブロモ−1−ドデシルオキシ、1−ブロモ−1−ドデシルオキシ、ブロモメトキシエトキシ、1−ブロモエトキシエトキシ、1−ブロモ−3′,6′−オキサヘプチルオキシ、1−ブロモ−3′,6′−オキサオクチルオキシ、1−ブロモ−3′,6′,9′−オキサデシルオキシ、1−ブロモ−3′,6′,9′,12′−オキサトリデシルオキシ、ブロモメトキシプロポキシ、1−ブロモエトキシプロポキシ、1−ブロモ−4′,8′−オキサノニルオキシ、1−ブロモ−4′,8′−オキサデシルオキシ。
【0107】
上記(iv)〜(vi)群の置換基のうちで、特に(v)群であることが好ましい。特に1−ブロモ−2−プロポキシカルボニル、1,3−ジブロモ−2−プロポキシカルボニル等の臭素化された2級以上のアルキル基を持つアルコキシカルボニル基が好ましい。臭素化された2級以上のアルキル基を持つアルコキシカルボニル基が置換基であるフタロシアニン化合物を用いることによって、当該フタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物を光記録媒体に用いたときの反射率および記録感度などの光学特性、特に記録感度に優れている点から好ましい。
【0108】
一般式(5)において、フェノキシ基のオルソ位および場合によってはメタ位やパラ位にも臭素原子を有する置換基が置換可能であるが、このとき上記一般式(5)におけるVは、フタロシアニン骨格上で必ずしも全て同一である必要はなく、それぞれが上記(i)〜(iii)群のアルキル鎖を有する置換基の臭素置換残基から選ばれる1種であればよい。
【0109】
また、一般式(5)において、V−(Br)w(もしくはx,y,z)で表わされるフェノキシ基上の置換基において、w(もしくはx,y,z)が0の場合(すなわち、臭素置換されていない場合)には、Vが上記(i)〜(iii)群のアルキル鎖を有する置換基から選ばれる少なくとも1種である。このような置換基Vの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0110】
(i)群のアルキル鎖を有する置換基:
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、直鎖あるいは分岐したペンチル、直鎖あるいは分岐したヘキシル、シクロヘキシル、直鎖あるいは分岐したヘプチル、直鎖あるいは分岐したオクチル、直鎖あるいは分岐したノニル、直鎖あるいは分岐したデシル、直鎖あるいは分岐したウンデシル、直鎖あるいは分岐したドデシル。
【0111】
(ii)群のアルキル鎖を有する置換基:
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したペンチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したヘプチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したオクチルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したノニルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したデシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したウンデシルオキシカルボニル、直鎖あるいは分岐したドデシルオキシカルボニル、シクロヘキサンメトキシカルボニル、シクロヘキサンエトキシカルボニル、3−シクロヘキシル−1−プロポキシカルボニル、tert−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル。
【0112】
(iii)群のアルキル鎖を有する置換基:
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、直鎖あるいは分岐したペンチルオキシ、直鎖あるいは分岐したヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、直鎖あるいは分岐したヘプチルオキシ、直鎖あるいは分岐したオクチルオキシ、直鎖あるいは分岐したノニルオキシ、直鎖あるいは分岐したデシルオキシ、直鎖あるいは分岐したウンデシルオキシ、直鎖あるいは分岐したドデシルオキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、3′,6′−オキサヘプチルオキシ、3′,6′−オキサオクチルオキシ、3′,6′,9′−オキサデシルオキシ、3′6′,9′,12′−オキサトリデシルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシプロピルオキシ、4′,8′−オキサノニルオキシ、4′,8′−オキサデシルオキシ。
【0113】
前記フェノキシ基に上記(i)〜(vi)群の置換基、置換基を有していてもよいアリール基を導入した残りの位置には、さらに溶解性を向上させたり、吸収波長の制御のために新たな置換基を導入してもよい。これらの置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基が置換されていてもよい炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルコキシからなるアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、直鎖または分岐している置換されていてもよい炭素原子数1〜12個のアルキル基、直鎖または分岐している炭素原子数1〜12個のアルコキシル基、直鎖または分岐している炭素原子数1〜20個のモノアルキルアミノ基、直鎖または分岐している炭素原子数1〜20個のジアルキルアミノ基、シクロヘキシル基、置換されていてもよいフェノキシ基、置換されていてもよいアニリノ基またはニトロ基などが挙げられる。
【0114】
さらに、上記(i)〜(vi)群の置換基がカルボニル基に2級以上のアルキル基が直接結合したアルコキシカルボニル基およびこれの一部を臭素化したものであることによって、溶解性に優れているため造膜性に優れている。また、このフタロシアニン化合物を混合したフタロシアニン組成物を光記録媒体に用いたときの反射率、記録感度などの光学特性が特に優れている。このため高速記録タイプのコンパクトディスクに対応する性能を有しているため特に好ましい。
【0115】
上記(II)群のフタロシアニン化合物としては、具体的に、例えば、
(II)−1:テトラキス(4−(2−ブロモエトキシカルボニル)−2−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−2:ビス(2−(2−ブロモエトキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ビス(2−エトキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−3:テトラキス(2−(1,3−ジブロモ−2−プロポキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−4:テトラキス(2,4−ジ(6−ブロモヘキシルオキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−5:テトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−6:テトラキス(4−(2−ブロモエトキシ)−2−イソプロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−7:テトラキス(2−(2−ブロモエトキシ)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−8:テトラキス(2−(2−ブロモエトキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−9:テトラキス(2−(1−ブロモ−2−プロポキシカルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−10:テトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−11:テトラキス(4−(6−ブロモヘキシル)−2−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−12:テトラキス(2−(2−ブロモエトキシカルボニル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
(II)−13:テトラキス(2−(2,3−ジブロモ−1−プロポキシ)カルボニル−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン、
などを挙げることができる。
【0116】
次に、上記(II)群のフタロシアニン化合物の製造方法としては、特に制限されるものでなく、例えば、フェノキシ基で置換されてなり、該フェノキシ基が置換基を有していてもよいアリール基および臭素原子を有する置換基で置換されているフタロニトリル化合物単独あるいは該フェノキシ基で置換されていないフタロニトリル化合物との混合物と金属化合物とを反応させることにより合成してもよいほか、臭素原子を持たないフェノキシ基で置換されたフタロニトリル化合物から一旦臭素原子を持たないフタロシアニン化合物を合成した後、臭素化することにより合成してもよい。
【0117】
以上、上述した(I)群および(II)群に含まれるフタロシアニン化合物を各1種類以上含んでなるフタロシアニン組成物中の(I)群と(II)群のフタロシアニン化合物との組成比率は、特に制限されるものでなく、任意の比率に調整することができるものであるが、好ましくは、フタロシアニン組成物中の(I)群のフタロシアニン化合物の割合が5〜95重量%であり、(II)群のフタロシアニン化合物の割合が5〜95重量%である。より好ましくは(II)群のフタロシアニン化合物の割合が5〜50重量%である。これらフタロシアニン化合物を混合した組成物を用いることによって、これらフタロシアニン化合物単独の場合に比して、熱重量分析における熱分解開始温度が下がる。例えば、例示化合物(I)−14(単独の熱分解開始温度:350℃)と(II)−5(単独の熱分解開始温度:350℃)を50重量%ずつ混合して得られる組成物では、熱分解開始温度が335℃と単独の場合に比べて15℃低下する。このような熱分解開始温度の低下効果によって光記録媒体に用いた時の記録感度が向上する。したがって、記録感度が向上し得る最適の範囲に、実際に使用するフタロシアニン化合物の組み合わせに応じて、(I)群と(II)群のフタロシアニン化合物との組成比率を適宜調整することが望ましい。
【0118】
また、本発明に係るフタロシアニン組成物は、上記(I)群および(II)群に含まれるフタロシアニン化合物各1種類以上を適当な手段を用いて混合することにより得ることができる。混合の方法としては、例えば、混合するフタロシアニン化合物を粉体のままで混合する方法、適当な溶媒に溶解させて混合する方法などがあるが、好ましくは適当な溶媒に溶解させて混合する方法である。溶解させる溶媒として具体的には、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族、脂環式炭化水素系の溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系の溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。本発明のフタロシアニン組成物は、上記溶媒を用いて溶解させた混合フタロシアニン化合物の溶液から、溶媒を除去することによって得られる。ただし、上記溶媒のうちで、光記録媒体の基板を侵さない溶媒については、溶媒を除去せずに、その溶液をそのまま基板の塗布に用いても構わない。
【0119】
次に、本発明に係る光記録媒体について詳細に説明する。
【0120】
本発明に係る光記録媒体は、上記フタロシアニン組成物を基板上に設けられた記録層に含有してなるものである。より好ましくは、透明な樹脂製基板上に設けられた記録層および金属の反射層を有するコンパクトディスク対応の追記型光記録媒体において、該記録層が上記フタロシアニン組成物を含有してなるものである光記録媒体が望ましい。
【0121】
本発明に係るフタロシアニン組成物を基板上に設けられた記録層に含有してなる光記録媒体では、当該フタロシアニン組成物の特性(属性)により、該組成物を含有する薄膜(記録層)の吸収スペクトルにおける会合ピークが大きく抑制され、単量体ピークがシャープになる。また、記録層が熱分解特性に優れる。したがって、該フタロシアニン組成物を用いた本発明の光記録媒体では、反射率、記録感度に優れる。
【0122】
本発明の光記録媒体に用いられる基板としては、信号の記録または読みだしを行なうための光が透過するものが好ましい。光の透過率としては85%以上であってかつ光学異方性の小さいものが望ましい。該基板としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂などからなる基板が挙げられる。これらの中で光学特性、成形のしやすさあるいは機械的強度などからポリカーボネート樹脂からなる基板が好ましい。
【0123】
本発明に係る光記録媒体の製造法の一例(概略)を示せば次の通りである。上記基板上に色素(前記したフタロシアニン組成物)を含む記録層がまず形成されて、その上に金属の反射膜層が形成される。反射膜層として使用する金属はアルミニウム、銀、金、銅、白金などが挙げられ、この反射膜層は通常、真空蒸着、スパッター法などの方法により形成される。
【0124】
本発明の光記録媒体において、色素(前記したフタロシアニン組成物)を含む記録層を基板上に成膜させるためには、通常塗布法を用いるのがよい。方法としてはスピンコート法、ディップ法あるいはロールコート法によって可能であり、特にスピンコート法が好ましい。その際使用する有機溶剤は、基板を侵さないものを用いる。例えば、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族、脂環式炭化水素系の溶媒あるいはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系の溶媒が好ましい。本発明の前記色素(フタロシアニン組成物)は、アルコール系溶媒に特に良く溶解するのでこれらの溶媒を用いるのがよい。
【0125】
本発明の光記録媒体の1種であるCDは、プレーヤーに対しての互換性の観点から基板を通しての読み出しレーザー光に対する反射率は60%以上であることが必要とされている。これらはそれぞれの色素(フタロシアニン組成物)に合わせて膜厚を最適化することによって可能であり、通常50nm〜300nm、特に80nm〜200nmがよい。
【0126】
上記により、本発明に係るフタロシアニン組成物およびそれを用いた光記録媒体を得ることができる。さらに詳細に説明するため、実施例において具体的数値を挙げ説明する。
【0127】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0128】
実施例1
テトラキス(2−(2−メトキシエトキシカルボニル)−6−メチルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン50重量%、およびテトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン50重量%からなるフタロシアニン組成物の製造
100mlのナスフラスコ中に、テトラキス(2−(2−メトキシエトキシカルボニル)−6−メチルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン1.00g(0.61ミリモル)、テトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン1.00g(0.53ミリモル)およびアセトン20mlを仕込み25℃で1時間撹拌した。アセトンを留去し、目的物の緑色のケーキ[テトラキス(2−(2−メトキシエトキシカルボニル)−6−メチルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン50重量%、およびテトラキス(2−(2−ブロモエチル)−6−フェニルフェノキシ)ドデカフルオロバナジルフタロシアニン50重量%からなるフタロシアニン組成物]を得た。得られた目的物の可視吸収スペクトル、溶解度の分析結果を下記表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
実施例2
深さ80nm、ピッチ1.6μmの螺旋状の案内溝を有する厚さ1.2mm、外径120mm、内径15mmのポリカーボネート樹脂基板上に実施例1のフタロシアニン組成物を2−メトキシエタノールに5重量%の濃度で溶解した塗液をスピンコーターを用いて120nmに成膜した。次に、このようにして得られた塗布膜の上に金を膜厚75nmで真空蒸着により成膜した。さらに、この上に紫外線硬化型の樹脂からなる保護コート膜を設けて、光記録媒体を作製した。このようにして得られた光記録媒体の反射率を測定したところ、770nm〜800nmの波長域で81%であり、安定した光学特性が得られた。
【0131】
さらに、この光記録媒体を用いて波長780nmの半導体レーザーを使用し、5.2mWの出力で線速1.4m/sでEFM信号を記録したところ、記録が可能であり、エラーレートは、0.2%未満であった。得られた信号を解析した結果、市販のCDプレーヤーで再生できるレベルであった。
【0132】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明のフタロシアニン組成物は、従来知られているフタロシアニン化合物に比べ吸収特性、溶解性、耐光性、熱分解特性および経済性に優れており、また650〜900nmの近赤外域に吸収を有するので、近赤外吸収色素として実用的に使用できる。特にCD、PHOTO−CDまたはCD−ROMのプレーヤーに対して互換性、共有性を有する追記型光記録媒体に用いる際に優れた効果を発揮できる。
【0133】
本発明の光記録媒体は、その記録層に本発明のフタロシアニン組成物を含有してなるために、反射率および記録感度などの光学特性、特に記録感度に優れた効果を奏するものである。
Claims (3)
- 下記(I)群および(II)群に含まれるフタロシアニン化合物を各1種類以上含んでなるフタロシアニン組成物:
(I)群:一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物:
の置換基よりなる群から選ばれた置換基を表わし、YはXについて定義した置換基、臭素原子を除くハロゲン原子または水素原子を表わし、Wは臭素原子を除くハロゲン原子を表わし、ZはYについて定義した置換基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有するモノ−もしくはジ−アルキルアミノ基、置換されていてもよいアニリノ基またはニトロ基を表わし、pおよびqは0〜3の整数であり、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす;
(II)群:一般式(5)で表されるフタロシアニン化合物:
の臭素置換残基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、w、x、y、zが0の場合(すなわち、臭素置換されていない場合)には、上記(i)〜(iii)群の置換基から選ばれる少なくとも1種の置換基を表わし、Mは金属、オキシ金属または金属塩を表わす。 - 請求項1に記載のフタロシアニン組成物を基板上に設けられた記録層に含有してなる光記録媒体。
- 透明な樹脂製基板上に設けられた記録層および金属の反射層を有するコンパクトディスク対応の追記型光記録媒体において、該記録層が請求項2に記載の記録層である光記録媒体。
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