JP4168375B2 - パルプを成形してなる容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプを成形してなる容器に関し、特に底面等にパルプからなる突条を形成した容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、インスタントラーメンのための包装用容器としては、発泡させた合成樹脂材料によって形成するのが一般的であるが、このような合成樹脂製の容器は、なかなか分解しないため、これを処分しようとすると焼却するしか手段がないものである。このような現在一般的に使用されている合成樹脂製の包装用容器は、その処分に苦慮しているのが実状である。
【0003】
そこで、近年においては、土に返したときの分解が十分可能で、自然環境に優しいものとして「パルプ」が見直されてきている。つまり、一度使用したら捨てられる「ワンウエイ容器」として、パルプを材料とした容器も、ゴミ問題解決の一手段として見直されてきているのである。勿論、パルプにより形成した容器は、手触りも非常によく、合成樹脂シートから作った容器より大きな剛性を有するものとすることができるから、代えられるものであるのなら、包装用容器等の各種容器をこのパルプによって是非形成したいものである。
【0004】
しかしながら、パルプを材料として容器を形成することは、合成樹脂シートから容器を作るのとは格段に手間と時間が掛かる。手間としては、パルプ用木材からパルプスラリーを形成しなければならないことと、このパルプスラリーを型成形して容器等の形ある製品に仕上げることが主である。また、スラリーから完全に乾燥して固化させるのには、合成樹脂シートからのシート成形などとは比較にならない大きな時間が掛かるものである。
【0005】
それだけでなく、パルプから作った容器は、これを例えば食品を入れるための包装用容器として考えた場合、次のような問題が発生する可能性を含んでいる。パルプから容器を作るには、図4に示したような手段あるいは方法が一般的に採用されるものであるが、この図4の一般的方法では、スラリーからパルプを漉き採るときから、これを乾燥させて製品化するまで、一貫して金網が使用される。この金網は、パルプを漉き採ったり、これから水分を絞り出したり蒸発させたりするのに有利な通水性や通気性を有していることは当然として、製品の生な状態から乾燥完了時まで形崩れを防止することもできるため、非常に好都合なものである。
【0006】
しかしながら、この金網が一貫して使用されるということは、製品の表面に「網目」の跡が付くことを意味しており、この網目は、見た目に美しくないだけでなく、製品の表面に凹凸を形成することになるから、パルプ自体のやさしい手触りを阻害するのである。つまり、図4に示したような従来方法を採用すれば、出来上がった製品は、合成樹脂によって成形したような滑らかさが全くないものとなるのである。
【0007】
それだけでなく、この図4に示した従来方法では、この金網が一貫して使用されるだけでなく、何回も繰り返して使用されることから、場合によっては、この金網の一部が破損して製品中に混入する可能性が十分有り得るものである。金属片が混入した容器は、電子レンジに掛けるとスパークするため、使用できないことは言うまでもない。
【0008】
そこで、本発明者等は、パルプによって容器を製造するに当たって、網目が付かずこの網の混入も防止できるようにするにはとうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、従来の製造方法で金網が必要であったのは、乾燥させるときに全体の通気性を確保するためであったことに気付き、本発明を完成したのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとする課題は、製造途中の早めの段階で金網を使用しないで済むようにでき、その結果、製造するにあたって網目がつかず、またその混入もないようにすることのできる構造の容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施の形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「パルプを一体成形することにより、パルプが主材料になって一体成形された容器10であって、
この容器10の底面13に折れ曲がり部を形成するとともに、この折れ曲がり部の外側に、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第1突条11を形成したことを特徴とするパルプを成形してなる容器10」
である。
【0011】
すなわち、本発明に係る容器10は、パルプを主材としたものであり、図1及び図2に示すような容器形状のものに一体成形したものであって、特にその底面13に、前記パルプの一部を突出した状態で固化して形成した第1突条11を有したものなのである。この第1突条11は、底面13に形成したことによって、「糸尻」を形成することにもなるものであり、当該容器10を机の上等においたときの安定性を確保するものである。そして、この第1突条11で最も重要な機能は、以下に説明する通り、当該容器10の製造時にある。
【0012】
この容器10は、図3に示したような製造方法を採用して製造されるものであるが、図4に示した一般的な方法の場合とは異なって、図3の(2)に示すように、まず水抜きのための金網40を生成形体10aから外し、この生成形体10aを、図3の(3)に示すように、乾燥金型30内に入れるのである。このため、金網40の一部が容器10内に混入する確率が格段に低くなるのである。
【0013】
下型31及び上型32によって形成されるキャビティ内面は、金網40が外されていることから完全な滑らかな面となっており、この滑らかな面によって生成形体10aが乾燥されていくに従って滑らかな表面を有する容器10が順次完成されていくことになることは当然である。また、下型31には、水や水蒸気を排出するためのスリット31aが形成してあり、生成形体10aの成形及び乾燥時に、生成形体10aの一部がこのスリット31a内に入ることにより、本発明における第1突条11等が自然と形成されるのである。さらに、下型31の底面に、上記スリット31aを形成しておくと、このスリット31aからの水分の排出をすばやく行うことができる。
【0014】
また、この第1突条11は、図1及び図2に示すように、当該容器10の外面にて僅かに突出した環状のもの、あるいは部分的なものとして存在していることから、当該容器10の表面の滑らかさをそれ程阻害しないで、当該容器10を手に持ったとき等の滑り止めの役目を果たしているものである。逆に言えば、この容器10に第1突条11を存在させるようにしているので、その製造時に生成形体10aの表面にあったパルプが第1突条11を形作ることから、容器10の表面の滑らかさが確保されることになったのである。
【0015】
さらに、この第1突条11は、後述する第2突条12や第3突条16と同様に、容器10の底の折れ曲がり部に形成してある。何故なら、このような容器10の底の折れ曲がり部に第1突条11を形成することによって、容器10の強度を高めることやフランジ内側に第3突条16を形成し、ゴミの付着を塞ぐことができるからである。また、これらの第1突条11等がスリット31aから引かれて形成されるときに、その反対側の部分のパルプを引き込むことになるから、当該第1突条11等が形成されるべき折れ曲がり部の反対側部分(容器10の内面)での寸法精度がよくなり、綺麗に仕上げられることになるのである。
【0016】
そして、この容器10は、水抜きや水蒸気抜きの言わば跡としての第1突条11等が外面に形成されているのであるから、その内側面は、合成樹脂によって成形したのと変わらない非常に滑らかなものとなっている。このため、この容器10の内側には、ポリプロピレンやポリエチレン、あるいは通称ペット等からなるフィルムを貼ることができるのであり、当該容器10のガスバリア性等を簡単に確保できるものとなっているのである。
【0017】
従って、この請求項1に係る容器10は、その底面13に、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第1突条11を形成するようにしたことによって、製造途中の早めの段階で金網40を使用しないで済むようにでき、その結果、製造するにあたって網目がつかず平滑な面の確保ができているのであり、また金網40の混入もない乾燥金型30のとなっているのである。
【0018】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のパルプを成形してなる容器10について、
「容器10の側面14に形成した段部15にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第2突条12を形成したこと」
である。
【0019】
すなわち、この請求項2の容器10では、上記第1突条11の他、側面14に形成した段部15にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第2突条12を形成するようにしたものである。なお、この第2突条12は、型抜きが容易なように、容器10の底面側に突出したものとして形成するのがより好ましい。
【0020】
従って、この請求項2の容器10は、請求項1のそれと同様な機能を発揮することは勿論、より一層の平滑性が確保されたものとなっているのである。
【0021】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載のパルプを成形してなる容器10について、
「容器10のフランジ部にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第3突条16を形成したこと」
である。
【0022】
すなわち、この請求項3の容器10では、上記第1突条11、及び側面14に形成した段部15に形成した第2突条12の他にも、当該容器10のフランジ部となる部分にも、図1に示すように、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第3突条16を形成するようにしたものである。
【0023】
従って、この請求項3の容器10は、請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮することは勿論、より一層の平滑性が確保されたものとなっているのである。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を図面に示した実施の形態である容器10について説明すると、この実施形態の容器10は、まず、パルプを主材料として成形したものであり、図1及び図2に示したように、その底面13に、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第1突条11を形成するとともに、容器10の側面14に形成した段部15にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第2突条12を形成したものである。なお、本実施形態の容器10では、図1及び図2に示したように、第1突条11の内側にも補助第1突条11aを形成し、フランジ部にも第3突条16を形成したものである。
【0025】
この容器10は、図3に示したような製造方法を採用して製造されるものであるが、図3の(1)では、図4に示した一般的な方法の場合と同様に、水抜きのための金網40を入れた絞り金型20内にパルプを分散させたスラリーを投入して、生成形体10aを形成するのである。この水抜き工程は、約13秒〜15秒程度の時間であった。
【0026】
形成された生成形体10aからは、図3の(2)に示したように、金網40は完全に外されるのであり、この金網40を外した生成形体10aは、図3の(3)に示したように、そのまま乾燥金型30を構成している下型31とスリット31aとの間のキャビティ内に装入される。この下型31及び上型32によって形成したキャビティ内面は、金網40が外されていることから完全な滑らかな面となっており、下型31には、絞り金型20側の水抜き孔21よりも幅の小さいスリット31aが複数形成してある。
【0027】
次いで、この乾燥金型30による乾燥工程に入るのであるが、本実施形態では、型締めを二つの段階、つまり、先の水抜き工程と、後の乾燥工程とに分けている。このため、先の水抜き工程では、各スリット31aから水がさらに絞り出されると同時に、生成形体10a中の一部のパルプが第1突条11を形成すべく各スリット31a内に入り込むのである。そして、後の乾燥工程では、各スリット31aから内部の水蒸気が排出されることになるのである。なお、この図3に示した水抜きも含む乾燥工程は、約60秒〜70秒間であり、金型温度は、約140℃〜170℃であった。
【0028】
なお、実施形態の乾燥金型30では、その上型32の内面にフッ素樹脂面32aが形成してあって、このフッ素樹脂面32aによっても生成形体10aが乾燥されていくに従って、容器10の内面に滑らかな面を形成出来るようにしている。
【0029】
そして、以上のように製造した容器10は、水抜きや水蒸気抜きの言わば跡としての第1突条11等が外面に形成されているのであるから、その内側面は、合成樹脂によって成形したのと変わらない非常に滑らかなものとなっている。このため、この容器10の内側には、ポリプロピレンやポリエチレン、あるいは通称ペット等からなるフィルムを貼ることができるのであり、当該容器10のガスバリア性等を簡単に確保できるものとなっているのである。
【0030】
【発明の効果】
以上、詳述した通り、各請求項に係る発明においては、
「パルプを一体成形することにより、パルプが主材料になって一体成形された容器10であって、
この容器10の底面13に折れ曲がり部を形成するとともに、この折れ曲がり部の外側に、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第1突条11を形成したこと」
にその主たる構成上の特徴があり、これにより、表面は全く滑らかなままで網目が付いておらず、しかも金属類の混入が全くない容器10を提供することができたのである。
【0031】
特に、本発明に係る容器10は、パルプを主材料として一体成形したものであり、その底面に形成した折れ曲がり部の外側に第1突条11を形成したものであるから、この第1突条11が糸尻の役割を果たすことになって、全体の強度を高めることができるだけでなく、第1突条11等が形成されるべき折れ曲がり部の反対側部分(容器10の内面)での寸法精度がよくなり、綺麗に仕上げられることになるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る容器の断面図である。
【図2】同容器の底面図である。
【図3】同容器を製造する工程を、(1)〜(4)の順に示した各断面図である。
【図4】従来の容器を製造する工程を順に示した断面図である。
【符号の説明】
10 容器
10a 生成形体
11 第1突条
11a 補助第1突条
12 第2突条
13 底面
14 側面
15 段部
16 第3突条
20 絞り金型
21 水抜き孔
30 乾燥金型
31 下型
31a スリット
32 上型
32a フッ素樹脂面
40 金網
Claims (3)
- パルプを一体成形することにより、パルプが主材料になって一体成形された容器であって、
この容器の底面に折れ曲がり部を形成するとともに、この折れ曲がり部の外側に前記パルプの一部が突出した状態で固化された第1突条を形成したことを特徴とするパルプを成形してなる容器。 - 前記容器の側面に形成した段部にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第2突条を形成したことを特徴とする請求項1に記載のパルプを成形してなる容器。
- 前記容器のフランジ部にも、前記パルプの一部が突出した状態で固化された第3突条を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパルプを成形してなる容器。
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