JP4168241B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に関するもので、さらに詳しくは、常温溶融塩を電解質に含有する非水電解質電池の電解質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高性能化、小型化が進む電子機器用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源などの用途に用いられる電池として、高エネルギー密度が得られる種々の非水電解質電池が注目されている。
【0003】
一般に、非水電解質電池には、正極にリチウム金属複合酸化物、負極にリチウム金属やリチウム合金、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素質材料等を用い、電解質として常温で液体の有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の非水電解質(電解液)が用いられている。現在、リチウムイオン電池に広く用いられている非水電解質としては、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを溶解させたもの等が用いられている。また、近年、さらなる小型、軽量化や形状自由度の拡大を目的として、アルミラミネートフィルムに代表される金属樹脂複合材料を外装体に用いた非水電解質電池が開発されている。
【0004】
非水電解質電池の負極に炭素質材料を用いる場合には、非水電解質を構成する材料と前記炭素質材料との副反応を効果的に抑制しうることが求められる。上記の例に挙げた系においては、初充電時に、エチレンカーボネートの存在により、炭素質材料表面に良好な被膜が形成されるため、充放電を繰り返しても非水電解質を構成する材料と炭素質材料との副反応が抑えられ、高い充放電効率が実現される。
【0005】
しかしながら、上記した従来の非水電解質電池には、次のような問題点があった。即ち、これらの非水電解質に用いられる有機溶媒は一般に蒸気圧が高いものであるため、周囲温度が常温から高温まで極端に変化する環境においては電池の膨れなどを生じ、結果として電池性能を低下させることがあり、耐高温性能において改良の余地があった。
【0006】
一方、非水電解質としてリチウム塩と四級アンモニウム有機物カチオンを有する常温溶融塩を用いた電池が特開平4−349365号公報、特開平10−92467号公報、特開平11−86905号公報、特開平11−260400号公報等に提案されている。これらの電池に用いられている常温溶融塩は、常温で液状でありながら揮発性がほとんどないため耐高温性能に優れているといった特徴がある。
【0007】
しかしながら、従来の常温溶融塩を用いた電池は、常温溶融塩の耐還元性が必ずしも充分ではなく、初期効率を充分に高いものとすることが困難であり、従って、電池の容量が充分に得られないといった問題点があった。すなわち、四級アンモニウム有機物カチオンを有する常温溶融塩は、一般に還元電位が比較的貴である。一方、非水電解質リチウム二次電池の負極活物質に用いられるリチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素質材料の作動電位は、一般に金属リチウムの電位(−3.045V vs.NHE)と同等であり、非常に卑であるため、電解質中の四級アンモニウム有機物カチオンや負極活物質そのものが還元反応により分解されてしまい、その結果充放電効率が低下してしまうといった問題点があった。
【0008】
また、従来の常温溶融塩を用いた非水電解質に例えば前記したエチレンカーボネートを添加すると、耐還元性は向上するものの、例えば高率放電特性といった他の電池性能の低下が著しく、実用には向かないものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、初期充放電効率を向上させて電池容量を向上させ、耐高温性能に優れた非水電解質電池を提供することを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載したように、正極、負極および非水電解質を具備し、前記非水電解質が、(化学式1)で示される骨格を有する四級アンモニウム有機物カチオンと非金属元素のみからなるアニオンとで形成された常温溶融塩を主構成成分として含有し、かつ、リチウムイオンと非金属元素のみからなるアニオンとで形成されたリチウム塩を0.5mol/l以上の濃度で含有している非水電解質電池において、前記非水電解質は、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物のうち少なくとも一方をさらに含有するものであることを特徴とする非水電解質電池である。
【0011】
【化4】
【0012】
このような構成によれば、非水電解質が四級アンモニウム有機物カチオンを有する常温溶融塩を主構成成分として含有することにより、常温溶融塩の、常温で液状でありながら揮発性がほとんどなく、耐高温性に優れた特徴を確実に備えたものとなる。しかも、常温溶融塩が、非金属元素のみからなるアニオンを用いて形成されており、従来の常温溶融塩電池に用いられていたハロゲン化アルミニウムイオンを含んでいないので、ハロゲン化アルミニウムイオンに起因する電池性能の劣化や取り扱いの困難さが生じない。また、リチウム塩が、非金属元素のみからなるアニオンを用いて形成されているので、上記常温溶融塩を含有した非水電解質は液体状態を良好に維持することができる。
【0013】
また、非水電解質にリチウム塩を含有させることにより、還元電位が一般に比較的貴である四級アンモニウム有機物カチオンを有する常温溶融塩を用いた場合でも、非水電解質としての還元電位が卑な電位にシフトさせることができる。本構成においては、非水電解質がリチウム塩を0.5mol/l以上の濃度で含有しているので、非水電解質の還元電位が金属リチウム電位と同等または更に卑な電位にシフトさせることができ、そのため、非水電解質中の四級アンモニウム有機物カチオンや負極活物質そのものが還元分解されてしまうことが防止され、従って、電池の充放電効率特性が優れたものとなる。この効果については、特開平2002−110230号公報に記載の通りである。
【0014】
また、非水電解質中のリチウム塩の含有量を3mol/l以下とすることにより、非水電解質の融点の上昇を抑え、常温で液状を維持することができる。従って、非水電解質中のリチウム塩の含有量は、0.5〜3mol/lの範囲であることが好ましく、更には0.5〜2mol/lの範囲であることが好ましい。
【0015】
本願明細書にいう常温溶融塩とは、常温とされる温度範囲の少なくとも一部において液状を呈する塩をいう。常温とは、電池が通常作動すると想定される温度範囲であり、上限が100℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限が−50℃程度、場合によっては−20℃程度である。
【0016】
一方、「溶融塩・熱技術研究会.溶融塩・熱技術の基礎、アグネ技術センター,1993, 313p.(ISBN 4-900041-24-6)」に記載されているような、各種電析などに用いられるLi2CO3−Na2CO3−K2CO3などの無機系溶融塩は、融点が300℃以上のものが大半であり、通常電池が作動すると想定される温度範囲内で液状を呈するものではなく、本発明における常温溶融塩には含まれない。
【0017】
(化学式1)で示される骨格を有する四級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。
【0018】
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
非金属元素のみからなるアニオンとは、例えばハロゲン化アルミニウムイオンのような金属元素を含むアニオンではないものをいう。四級アンモニウム有機物カチオンと非金属元素のみからなるアニオンとが常温溶融塩を形成する組み合わせは、具体的には、次の(1)〜(4)に示すような組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)N−ブチルピリジニウムカチオンとテトラフルオロホウ酸アニオン(BF4 -)、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3 -)などとの組み合わせ。
(2)トリメチルヘキシルアンモニウムカチオンとトリフルオロメタンスルフォニルアミドアニオン(N(CF3SO2)2 -)、ビスペンタフルオロエタンスルフォニルアミドアニオン(N(C2F5SO2)2 -)などとの組み合わせ。
(3)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロホウ酸アニオン(BF4 -)、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3 -)、トリフルオロメタンスルフォニルアミドアニオン(N(CF3SO2)2 -)、ビスペンタフルオロエタンスルフォニルアミドアニオン(N(C2F5SO2)2 -)などとの組み合わせ。
(4)1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロホウ酸アニオン(BF4 -)、ヘキサフルオロリン酸アニオン(PF6 -)などとの組み合わせ。
【0020】
リチウム塩に用いる非金属元素のみからなるアニオンは、常温溶融塩に用いる非金属元素のみからなるアニオンと同じでも異なっていてもよい。即ち、リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、LiBF4が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なかでも、LiPF6やLiBF4と、LiN(CF3SO2)2やLiN(C2F5SO2)2のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いると、非水電解質の粘度をさらに下げることができる点、保存性を向上させる効果がある点で好ましい。
【0021】
さらに、本発明における非水電解質は、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物をさらに含有することにより、非水電解質の粘度および凝固点を低くすることができる。このため、電池の各種性能を向上させるとともに、電池の初充電の際、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物が還元され、負極活物質表面にリチウムイオン透過性の保護被膜を形成するため、2サイクル目以降の四級アンモニウム有機物カチオンの還元分解を抑制することができる。従って、充放電効率を向上させることができる。さらに、前記環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物は、リチウム塩の解離を促進する作用があるため、イオン状態で存在するリチウム塩の割合が高くなり、電池の各種性能をさらに向上させることができる。ここで、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物は、添加量が比較的多くても、常温溶融塩の持つ耐高温性を損なうことがない。そのうえ、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物は、フッ素化されているため耐酸化性が高く、正極上での酸化分解がほとんど起こらず、過剰に添加しても電池性能を劣化させることがない。
【0022】
環状カーボネートのフッ化物は、(化学式4)に示される構造を有するものである。
【0023】
【化5】
【0024】
ただし、化学式4において、
g、h、i、jはそれぞれ0〜6の整数、
pは0〜2g+1の整数、
qは0〜2h+1の整数、
rは0〜2i+1の整数、
sは0〜2j+1の整数であり、
g+h+i+j≧0、且つ、p+q+r+s≧1である。
【0025】
また、鎖状カーボネートのフッ化物は、(化学式5)に示される構造を有するものである。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
【化6】
【0027】
ただし、化学式5において、
k、mはそれぞれ1〜6の整数、
tは0〜2k+1の整数、
uは0〜2m+1の整数であり、
t+u≧1である。
【0028】
環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物の含有量は、電池性能と耐高温性能とを両立させるため、非水電解質の全重量に対して0.01重量%〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.10重量%〜15重量%である。環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物の含有量が、非水電解質の全重量に対して0.01重量%以上であることによって、初充電時における非水電解質を構成する四級アンモニウムイオンの還元分解をほぼ完全に抑制し、充電をより確実に行うことができる。また、20重量%以下であることによって、常温溶融塩の持つ耐高温性を損なうことなく、充分な電池性能を発揮することができる。
【0029】
また、本発明における非水電解質は、リチウム塩と常温溶融塩、環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物の他、さらに常温で液状である有機溶媒を添加して使用してもよい。ここで、前記有機溶媒としては、一般に液状非水電解質(電解液)に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジオキソラン、スルホラン、スルトンなどや、これらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、一般に液状非水電解質(電解液)に添加される難燃性溶媒である、リン酸エステルを使用することもできる。例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。非水電解質中の環状カーボネートのフッ化物または鎖状カーボネートのフッ化物を含めた有機溶媒の含有量は、1〜50体積%の範囲であることが好ましく、更には5〜30体積%の範囲であることが好ましい。
【0030】
なお、本発明における非水電解質は、高分子を複合化させることにより、ゲル状に固体化してもよい。ここで、前記高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、各種アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、アリル系モノマー、スチレン系モノマーの重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0031】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記非水電解質が、(化学式2)で示されるイミダゾリウムカチオン、または、(化学式3)で示される骨格を有するピリジニウムカチオンのうち、少なくとも一方を含有するものであることを特徴とする非水電解質電池である。
【0032】
【化7】
【0033】
ただし、化学式2において、
R1:CaH2a+1
R2:CbH2b+1
R3:HまたはCcH2c+1
a,b,cは1〜6の自然数
である。
【0034】
【化8】
【0035】
ただし、化学式3において、
R4:CdH2d+1
R5:HまたはCeH2e+1
R6:HまたはCfH2f+1
d,e,fは1〜6の自然数
である。
【0036】
このような構成によれば、非水電解質に少なくとも(化学式2)で示されるイミダゾリウムカチオン、または、(化学式3)で示される骨格を有するピリジニウムカチオンを有する常温溶融塩を含有するものを用いることにより、非水電解質中のリチウムイオンの移動度を充分に得ることができるだけでなく、耐高温性を充分に得ることができ、上記作用を効果的に得ることができる。
【0037】
前記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンなどが、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
また前記アルキルピリジニウムイオンとしては、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記非水電解質が、少なくともテトラフルオロホウ酸アニオンを含有するものであることを特徴とする非水電解質電池である。
【0041】
このような構成によれば、非水電解質に少なくともテトラフルオロホウ酸アニオンを含有するものを用いることにより、常温溶融塩を非水電解質に用いた場合でも、特に常温溶融塩の粘度および凝固点が低くなるため、非水電解質中のリチウムイオンの移動度を充分に得ることができるうえ、上記作用を効果的に得ることができる。
【0042】
また、本発明は、請求項4に記載したように、前記負極は、負極活物質として金属複合酸化物材料が用いられていることを特徴とする非水電解質電池である。
【0043】
このような構成によれば、金属複合酸化物材料は、作動電位が金属リチウムの電位に対して1Vよりも貴である物質が多く、一般的な液状非水電解質(電解液)に比較して還元電位が貴であるイミダゾリウムイオンやピリジニウムイオンを含有する非水電解質を用いた場合でも、サイクル特性や充放電効率特性に優れた非水電解質電池を得ることが可能となる。金属複合酸化物材料としては、MoO2、TiS2、Li4/3Ti5/3O4、LixTi5/3-yLyO4(Lは1種以上のTi及びOを除く2〜16族の元素である。また、4/3≦x≦7/3であり、0≦y≦5/3である)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0044】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記負極は、負極活物質として炭素質材料が用いられていることを特徴とする非水電解質電池である。
【0045】
このような構成によれば、炭素質材料の作動電位が金属リチウム電位(水溶液の場合−3.045V vs.NHE)と同等であるため、高作動電圧を有し、高エネルギー密度である非水電解質電池を得ることが可能である。炭素質材料としては、メソフェーズカーボンマイクロビーズ、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂焼成炭素材料、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
また、本発明は、請求項6に記載したように、外装体に金属樹脂複合材料を用いたことを特徴とする非水電解質電池である。
【0047】
このような構成によれば、金属樹脂複合材料は、金属よりも軽く、また、薄型形状に容易に成形できるので、非水電解質電池の小型軽量化が可能である。金属樹脂複合材料としては、例えば公知のアルミラミネートフィルムを例示できる。
【0048】
本発明における非水電解質電池を製造する方法や手段については、特に限定されるものではないが、例えば、正極、負極、セパレータから構成される発電要素を、外装材からなる電池用パッケージの内に入れ、次いで電池用パッケージの内に非水電解質を注液し、最終的に封止して得る方法を用いてもよく、また、例えばコイン型電池のように、正極,負極,セパレータを、正極収納部,負極収納部,セパレータ収納部を有する電池用パッケージの各収納部にそれぞれ独立して収納し、次いで外装材からなる電池用パッケージ内に非水電解質を注液し、最終的に封止して得る方法を用いても良い。
【0049】
本発明における非水電解質電池に用いられる正極は、正極活物質を主要構成成分としており、リチウムイオンがインターカレート・デインターカレート可能な酸化物が好適に挙げられる。前記酸化物は、リチウムを含む複合酸化物であることが好ましく、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiV2O5、Lim[Ni2-nMnO4](Mは1種以上のNiを除くの遷移金属元素。例えば、Mn、Co、Zn、Fe、Vなど。0≦m≦1.1、0.75≦n≦1.80)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。酸化物は、平均粒径が1〜40μm程度の粉末であることが好ましい。
【0050】
前記正極および負極は、主要構成成分である前記活物質の他に、導電剤および結着剤を構成成分として作製されることが好ましい。
【0051】
導電剤としては、電池特性に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
【0052】
これらの中で、導電剤としては、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2重量%〜30重量%が好ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0053】
結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤をリチウム電池の用いる場合には、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0054】
正極活物質または負極活物質、導電剤および結着剤をトルエン等の有機溶剤あるいは水を添加して混練し、電極形状に成形して乾燥することによって、それぞれ正極および負極を好適に作製できる。
【0055】
なお、正極が正極用集電体に密着し、負極が負極用集電体に密着するように構成されるのが好ましく、例えば、正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。負極用集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0056】
集電体の形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚さの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極用集電体としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔が、負極用集電体としては、還元場において安定であり、且つ導電性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、およびそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極および負極と集電体との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記述により限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
本発明における非水電解質電池の断面図を図1に示す。本発明における非水電解質電池は、正極1、負極2およびセパレータ3からなる極群4と、非水電解質と、金属樹脂複合材料5から構成されている。正極1は、正極合剤11が正極集電体12上に塗布されてなる。また、負極2は、負極合剤21が負極集電体22上に塗布されてなる。非水電解質は極群4に含浸されている。金属樹脂複合材料5は、極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止されている。
【0059】
次に、上記構成の非水電解質電池の製造方法を説明する。
【0060】
正極1は次のようにして得た。まず、LiCoO2と、導電剤であるアセチレンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物をアルミ箔からなる正極集電体12の片面に塗布した後、乾燥し、正極合剤11の厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により正極1を得た。
【0061】
負極2は、次のようにして得た。まず、負極活物質であるグラファイトと、導電剤であるケッチェンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物を銅箔からなる負極集電体22の片面に塗布した後、乾燥し、負極合剤21厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により負極2を得た。
セパレータ3は、次のようにして得た。まず、(化学式6)で示される構造を持つ2官能アクリレートモノマーを3重量パーセント溶解するエタノール溶液を作製し、多孔性基材であるポリエチレン微孔膜(平均孔径0.1μm、開孔率50%、厚さ23μm、重量12.52g/m2、透気度89秒/100ml)に塗布した後、電子線照射によりモノマーを架橋させて有機ポリマー層を形成し、温度60℃で5分間乾燥させた。以上の工程により、セパレータ3を得た。なお、得られたセパレータ3は、厚さ24μm、重量13.04g/m2、透気度103秒/100mlであり、有機ポリマー層の重量は、多孔性材料の重量に対して約4重量%、架橋体層の厚さは約1μmで、多孔性基材の孔がほぼそのまま維持されているものであった。
【0062】
【化9】
【0063】
極群4は、正極合剤11と負極合剤21とを対向させ、その間にセパレータ3を配し、正極1、セパレータ3、負極2の順に積層することにより、構成した。非水電解質は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン(EMI+)とテトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)からなる常温溶融塩(EMIBF4)に、トリフルオロエチルメチルカーボネートを体積比90:10で混合した液1リットルに、1モルのLiBF4を溶解させることにより得た。
次に、非水電解質中に極群4を浸漬させることにより、極群4に非水電解質を含浸させた。さらに、金属樹脂複合材料5で極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止した。
【0064】
以上の製法により得られた電池を本発明電池Aとする。なお、本発明電池Aの設計容量は、10mAhである。
【0065】
(実施例2)
非水電解質として、N−ブチルピリジニウムイオン(BPy+)とBF4 -からなる常温溶融塩(BPyBF4)に、トリフルオロエチルメチルカーボネートを体積比85:15で混合した液1リットルに、1モルのLiBF4を溶解したものを用いた以外、実施例1と同一の原料および製法により非水電解質電池を得た。これを本発明電池Bとする。
【0066】
(実施例3)
非水電解質として、EMIBF4に、フルオロエチレンカーボネートを体積比80:20で混合した液1リットルに、1モルのLiBF4を溶解したものを用いた以外、実施例1と同一の原料および製法により非水電解質電池を得た。これを本発明電池Cとする。
【0067】
(比較例1)
非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiBF4を溶解したものを用いた以外、実施例1と同一の原料および製法により非水電解質電池を得た。これを比較電池Dとする。
【0068】
(比較例2)
非水電解質として、EMIBF4、ジエチルカーボネートを重量比80:20で混合した液1リットルに、1モルのLiBF4を溶解したものを用いた以外、実施例1と同一の原料および製法により非水電解質電池を得た。これを比較電池Eとする。
【0069】
(比較例3)
非水電解質として、EMIBF41リットルに、1モルのLiBF4を溶解したものを用いた以外、実施例1と同一の原料および製法により非水電解質電池を得た。これを比較電池Fとする。
【0070】
(放電容量試験)
本発明電池A、B、Cおよび比較電池D、E、Fについて、放電容量試験を行った。試験温度は20℃とした。充電は、電流1mA、終止電圧4.2Vの定電流充電とした。放電は、電流1mA、終止電圧2.7Vの定電流放電とした。得られた放電電気量を初期放電容量とした。
【0071】
(温度サイクル試験)
本発明電池A、B、Cおよび比較電池D、E、Fについて、耐高温性能を評価するため、温度サイクル試験を行った。前記初期容量の確認を行ったそれぞれの電池に対して、電流1mA、終止電圧4.2Vの定電流充電を行った後、100℃で3時間保存後室温で21時間保存することを繰り返す温度サイクルを30日間続け、電流1mA、終止電圧2.7Vの定電流放電により前記温度サイクル後の放電容量を測定し、自己放電率を求めると共に、電池厚さの変化を測定した。なお、自己放電率および電池厚さ変化は(式1)および(式2)により算出した。
【0072】
【式1】
【0073】
【式2】
【0074】
放電容量試験および温度サイクル試験の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1からわかるように、従来の常温溶融塩を用いた非水電解質電池である比較電池EおよびFでは、初期放電容量は設計容量のほぼ80%しか得られなかった。これに対し、本発明電池では初期放電容量は設計容量のほぼ100%が得られた。これは本発明電池においては100%近い初期充放電効率が得られたためであると考えられる。また、温度サイクル試験の結果、従来の電解液を用いた非水電解質電池である比較電池Dでは自己放電率が高いだけでなく、電池厚さが大きく増大した。これに対し、本発明電池では自己放電率が抑制され、電池厚さもほとんど増大せず、耐高温性能が向上した。
【0077】
表1からわかるように、本発明電池A,B,Cは、比較電池D,E,Fと比べて、温度サイクル試験後の電池厚さ変化が小さい結果となった。
【0085】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、初期充放電効率を向上させて電池容量を向上させ、耐高温性能に優れた非水電解質電池を提供することができる。
また、外装体に金属樹脂複合材料を用いた場合、温度サイクルを行っても電池厚さ変化の小さい非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解質リチウム二次電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極
11 正極合剤
12 正極集電体
2 負極
21 負極合剤
22 負極集電体
3 セパレータ
4 極群
5 金属樹脂複合材料
Claims (4)
- 正極、負極および非水電解質を具備し、前記非水電解質が、(化学式1)で示される骨格を有する四級アンモニウム有機物カチオンと非金属元素のみからなるアニオンとで形成された常温溶融塩を主構成成分として含有し、かつ、リチウムイオンと非金属元素のみからなるアニオンとで形成されたリチウム塩を0.5mol/l以上の濃度で含有している非水電解質電池において、前記非水電解質は、トリフルオロエチルメチルカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートをさらに含有するものであることを特徴とする非水電解質電池。
- 外装体に金属樹脂複合材料を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質電池。
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