JP4167251B2 - 鋼管杭及びその根固め工法 - Google Patents

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この発明は、鋼管杭及びその根固め工法に関し、さらに詳細には、先端に切削ビットが固定され、回転圧入装置により地盤に回転圧入される回転中掘式の鋼管杭とその根固め工法に関する。
例えば、線路上空に人工地盤を構築する場合、その基礎杭は狭隘な線路間での施工となる。一般的には、線路を移動させて必要なスペースを確保するが、線路切り替えができない場合は、キ電停止間合いでの施工となるとなることから、杭施工に多くの日数がかかっている。基礎杭としては、多くの場合、場所打ち杭が適用され、この場合は孔壁の安定確保が問題となっている。対策としては、工事桁により列車を直接防護する方法や、地盤改良により孔壁を保護する補助工法を適用している。
場所打ち杭の場合、一般的には、薬液注入工等の地盤改良工により杭を施工する位置の地盤を補強し、TBH(逆循環掘削方式)やBH(正循環方式)の掘削方式を用いて施工している。これにより、長時間施工に及んでも対応可能とし、また列車振動による孔壁の崩壊を防ぎながら施工している。
孔壁の安定を図る杭の施工方法として、先端に切削ビットを取り付けた鋼管杭を用いる工法がある。この場合、鋼管杭を回転しながら地盤に圧入するため、大きなトルクが必要となる。このため、線路内に搬入できるベースマシン(回転圧入装置)も制限を受け、細い鋼管杭の施工に限定されている。
このような鋼管杭は仮設杭にしか利用されていないのが現状である。鋼管杭を本設杭に利用するためには、支持層においてセメントミルク等の固化材を注入し、掘削土砂と撹拌・混合して根固めを施す必要がある。
しかしながら、鋼管杭内部に入り込んだ掘削土砂については、鋼管杭の回転に伴って同一方向に回転するため(共回り現象)、掘削土砂と噴射されたセメントミルクとが十分に混合されず、所定の支持力を持った根固め構造とすることができない。このため、従来、支持層の所定の深度位置まで掘削が完了した時点で、鋼管杭に回転を加えながら上下させ、掘削土砂と噴射したセメントミルクとを混合し、ソイルセメントとして支持力を確保するようにしている。
しかしながら、このような鋼管杭を上下させる従来工法では、掘削土砂とセメントミルクとが十分に混合されないというのが現状である。また、鋼管杭を上下させることにより、孔壁の崩壊が生じるおそれもある。さらに、線路内の時間的制限により所定の位置までの掘削完了後、さらに翌日に亘って特別の施工をする必要が生じ、経済的に、そして工期的にも不利な方法である。
なお、先端に切削ビットを固定して地盤に回転圧入する方式の鋼管杭については、例えば特許文献1に記載されている。また、本出願人は、線路間での施工に適した低空頭用の鋼管杭回転圧入装置を既に提案している(特許文献2及び特許文献3)。
特開2003−261940公報 特許第3218202号公報 特許第3255278号公報
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、鋼管杭内部に取り込まれた掘削土砂と固化材との撹拌・混合が確実になされて所定の支持力を得ることができ、また孔壁の崩壊のおそれがなく、加えて経済的にも工期的に有利に施工をすることができる鋼管杭及びその根固め工法を提供することにある。
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、切削ビットが先端に固定され、内部に配置された掘削液及び固化材の送給管が、前記切削ビットに設けられた注入口と連通するように該ビットに連結され、地盤に回転圧入される鋼管杭であって、
該鋼管杭の内部にその内周に沿って下方に延びるように配置され、かつ先端が鋼管杭の下端縁から上方に離間した該鋼管杭の下端部内周で開口する固化材の注入管が設けられていることを特徴とする鋼管杭にある。
より具体的には、前記注入管の先端は周方向を向いて開口している。前記鋼管杭の下端部内周にスパイラルエッジが設けられ、前記注入管は先端が該スパイラルエッジ上で周方向を向いて開口している構造とすることもできる。また、前記送給管の上部には分岐継手が設けられ、この分岐継手に前記注入管が接続され、前記送給管及び前記注入管に選択的に固化材を供給可能となっている構造とすることもできる。
さらにこの発明は、上記鋼管杭の根固め工法であって、
前記送給管に掘削液を供給して、前記切削ビットの注入口から掘削液を噴射しながら地盤を掘削し、鋼管杭を回転圧入する第1工程と、
根固めを必要とする所定深度に達した後、掘削液を固化材に切り替えて前記送給管を通して前記切削ビットの注入口から固化材を噴射しながら地盤を掘削し、鋼管杭を回転圧入する第2工程と、
所定深度範囲掘削した後、鋼管杭の圧入を停止し、前記注入管を通して鋼管杭の内部に固化材を噴射しながら鋼管杭を回転する第3工程とからなり、
前記第2工程と前記第3工程とを繰り返して根固めをすることを特徴とする鋼管杭の根固め工法にある。
この発明によれば、鋼管杭の先端部内周で先端が開口する固化材の注入管を設けたので、鋼管杭内部に取り込まれた掘削土砂と固化材とが十分に撹拌・混合され、所定の支持力を発揮するソイルセメントによる根固めが造成される。
また、根固め時において鋼管杭を上下させる必要がないので、孔壁の崩壊を防止することができ、さらに従来に比べて1工程(上昇工程)少なくて済むので、経済的にも工期的にも有利に施工をすることができる。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の実施形態を示す鋼管杭の軸方向断面図、図2は図1のA−A線矢視断面図である。鋼管杭は、所定長さの複数本の鋼管を溶接あるいはねじ式継手等により順次接続しながら、地盤中に回転圧入される。図1に示される鋼管杭1は、先頭の鋼管部分である。鋼管杭1の先端には切削ビット2が固定されている。
切削ビット2は管軸3と、この管軸3の外周に固定された複数枚の掘削翼4とからなり、各掘削翼4の外縁が鋼管杭1に固定される。管軸3の先端には掘削液及び固化材の注入口5が設けられている。注入口5は通常は弁6により閉鎖され、注入圧力により開放するようになっている。鋼管杭1の内部には、その軸心位置に掘削液及び固化材の送給管7が配置され、この送給管7の下端は切削ビット2の管軸3に連結されている。鋼管杭1の上部に設けられたスタビライザ8は、送給管7を鋼管杭1の軸心位置に保持するための部材である。
この発明によれば、鋼管杭1の内部には複数(この実施形態では180度の角度間隔を置いて2本)の固化材の注入管9が設けられている。各注入管9は鋼管杭1の内周に沿って下方に延びるように配置され、Uボルトなどの止め具10により鋼管杭1の内周に固定されている。また、鋼管杭1の下端部内周にはスパイラルエッジ(突条)11が設けられている。各注入管9の先端には逆止弁12を有するエルボ13が設けられ、このエルボ13はスパイラルエッジ11上で周方向を向いて開口している。
送給管7の上端には弁14aを介して分岐継手15が設けられ、この分岐継手15にはスイベル16を介してホース17が接続されている。また、各注入管9の上端にはホース18が接続され、各ホース18は弁14bを介して分岐管15に接続されている。
次に上記のような鋼管杭の施工手順を図3及び図4を参照して説明する。鋼管回転圧入装置30は、鋼管杭1を把持して回転させる回転装置31と、回転装置31を昇降させる昇降装置32とを備えている。
1.回転圧入装置30を所定位置にセットし、回転装置31に先端部分となる鋼管杭1を装着する(図3(a))。
2.回転圧入装置30により鋼管杭1を回転させながら下降させる。これにより、鋼管杭1の回転にともなって先端の切削ビット2が回転して地盤が掘削され、同時に鋼管杭1は地盤に圧入される。その際、土質の性状に応じて送給管7を通じて、水にベントナイト等の添加剤が添加された掘削液を切削ビット2に送る。この掘削液は圧力により弁6を開放して注入口5から掘削孔底に噴射される(図3(b))。
3.所定深度に達したら、鋼管杭1の上端に新たな鋼管1、送給管7及び注入管9などを継ぎ足し、上記と同様にして鋼管杭1を地盤に回転圧入する(図3(c))。以下、所要杭長に応じて、これを繰り返す。
4.根固めが必要な深度位置に到達したら、掘削液の供給を停止してセメントミルク等の固化材の供給に切り替え、掘削すなわち鋼管杭1の回転圧入を続行する。供給された固化材は、送給管7を通して切削ビットの注入口5から掘削孔底に噴射され、固化材は切削ビット2の回転により掘削土砂と撹拌・混合される(図4(d))。
5.根固め範囲(例えば 1.5m 程度)において所定深度範囲(例えば 30cm )掘削した後、鋼管杭1の圧入を停止する。そして、弁14a及び弁15bの開閉を切り替えて、注入管9を通して鋼管杭1の内部に固化材を噴射する(図4(e))。これにより、前工程で鋼管杭1の先端部内に取り込まれている掘削土砂にさらに固化材が供給され、鋼管杭1の回転により内部の掘削土砂と固化材とが撹拌・混合される。特に、この発明では注入管9の先端を鋼管杭1の内周でしかも周方向を向いて開口させているので、鋼管杭内周付近の掘削土砂に固化材を十分供給することができる。このため、掘削土砂と固化材とを撹拌・混合してできるソイルセメントと鋼管杭との付着力を高めることができる。また、固化材はスパイラルエッジ10に沿って流動することから、固化材を鋼管杭1の内周全体に十分に行き渡らせることができる。
6.以下、上記4,5の工程を根固め範囲において交互に繰り返し、これにより鋼管杭の先端部内でも掘削土砂と固化材とが十分に撹拌・混合されてなる、ソイルセメントによる所定の支持力を発揮する根固めが造成される(図4(f))。
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では注入管を送給管から分岐させたが、注入管を独立した固化材の供給経路としてもよい。また、上記実施形態では複数の注入管を設置しているが、注入管は単数の場合もこの発明に包含される。
この発明の実施形態を示す鋼管杭の軸方向断面図である。 図2は図1のA−A線矢視断面図である。 鋼管杭の施工手順を示す断面図である。 図3に引き続く施工手順を示す断面図である。
符号の説明
1 鋼管杭
2 切削ビット
3 管軸
4 掘削翼
5 注入口
6 弁
7 送給管
9 注入管
10 注入口
11 スパイラルエッジ
12 逆止弁
13 エルボ
14 弁
15 分岐継手

Claims (5)

  1. 切削ビットが先端に固定され、内部に配置された掘削液及び固化材の送給管が、前記切削ビットに設けられた注入口と連通するように該ビットに連結され、地盤に回転圧入される鋼管杭であって、
    該鋼管杭の内部にその内周に沿って下方に延びるように配置され、かつ先端が鋼管杭の下端縁から上方に離間した該鋼管杭の下端部内周で開口する固化材の注入管が設けられていることを特徴とする鋼管杭。
  2. 前記注入管の先端は周方向を向いて開口していることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。
  3. 前記鋼管杭の下端部内周にスパイラルエッジが設けられ、前記注入管は先端が該スパイラルエッジ上で開口していることを特徴とする請求項2記載の鋼管杭。
  4. 前記送給管の上部には分岐継手が設けられ、この分岐継手に前記注入管が接続され、前記送給管及び前記注入管に選択的に固化材を供給可能となっていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の鋼管杭。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1記載の鋼管杭の根固め工法であって、
    前記送給管に掘削液を供給して、前記切削ビットの注入口から掘削液を噴射しながら地盤を掘削し、鋼管杭を回転圧入する第1工程と、
    根固めを必要とする所定深度に達した後、掘削液を固化材に切り替えて前記送給管を通して前記切削ビットの注入口から固化材を噴射しながら地盤を掘削し、鋼管杭を回転圧入する第2工程と、
    所定深度範囲掘削した後、鋼管杭の圧入を停止し、前記注入管を通して鋼管杭の内部に固化材を噴射しながら鋼管杭を回転する第3工程とからなり、
    前記第2工程と前記第3工程とを繰り返して根固めをすることを特徴とする鋼管杭の根固め工法。
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