JP4166423B2 - 平版印刷版用原版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用原版に関するものであり、詳しくは支持体、及び感光層(画像形成層ともいう)から成り、ディジタル信号に基づいた走査露光による製版が可能であり、且つ水現像可能な、あるいは現像することなしにそのまま印刷機に装着し印刷することが可能な平版印刷版用原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原版としては、従来、親水性支持体上に、親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理するディジタル化技術に対応した、新しい画像出力方式が種々実用される様になっきた。これに伴い、レーザ光の様な指向性の高い活性放射線をディジタル化された画像情報に応じて走査し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ トゥ プレート技術が切望されており、これに適応した印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0003】
他方、従来のPS版に於ける製版行程は、露光の後、非画像部を湿式の処理により溶解除去する工程が不可欠であり、改善が望まれているもう一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。処理の簡素化、乾式化、無処理化は、この様な環境面と、先述のディジタル化に伴った工程の合理化の両方の観点から、従来にも増して、強く望まれるようになっている。
この様な観点から、従来の処理工程をなくす方法の一つとして、印刷版用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程のなかで行えるような感光層を用い、現像工程を行うことなく、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る機上現像方式がある。しかしながら、機上現像方式の大きな問題は、原版は露光後も、感光層が定着されないため、例えば、印刷機に装着するまでの間、版を完全に遮光及び/もしくは恒温条件にて保存する、といった非効率な方法をとる必要があった。
【0004】
一方、走査露光による印刷版の製造法として、最近、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザで高出力なものが安価に入手できるようになってきたことから、特に、これらのレーザを用いる方法が有望視されるようになってきた。これらの高出力レーザを用いた高パワー密度露光系では、従来の、低〜中パワー密度露光用感光材料系に利用される光反応とは異なった、 様々な現象を利用できる。通常、このような高パワー密度露光による記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、感材に吸収された光エネルギーは、熱に変換され、生じた熱によって、所望の現象が引き起こされる。
この様なヒートモード記録方式の大きな長所は、普通の強度の光に対する暴露や、普通の環境温度下では実質的に生じないため、露光後の画像の定着は必須ではないことにある。従って、例えば、ヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する感光層を用い、製版を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、画像露光後、任意の時間、たとえ環境光に暴露させてから行っても得られる画像に変化が生じないシステムが可能である。
従ってヒートモード記録によれば、先述の機上現像方式に望ましい平版印刷版原版を得ることも可能となる。
【0005】
ヒートモード記録に基づく平版印刷版の好ましい製造法の一つとして、親水性の支持体上に疎水性の画像形成層を設け、画像状にヒートモード露光し、疎水性の画像形成層の溶解性・分散性を変化させ、必要に応じ、湿式現像により非画像部を除去する方法が提案されている。
しかしながら、上記のような画像形成層は感熱性が十分でないため、ヒートモード走査露光感度がはなはだ不十分であった。また、露光前後の疎水性/親水性のディスクリミネーション、即ち、溶解性の変化が小さいことも、実用上問題であった。この様な小さいディスクリミネーションで、機上現像方式の製版を行うことは実質不可能に近い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このよな露光前後の親疎水性のディスクリミネーションを改良した平版印刷版用原版の例として、例えば、特開平10−282672号公報には、側鎖に熱によりスルホン酸を生成する官能基を有する高分子化合物を用いた感光層を有する原版をヒートモード記録し、印刷版を得る方法が開示されている。開示された感光層は、露光前後で大きな親疎水性のディスクリを有するため、水又は印刷機上の湿し水により露光部を現像することが可能である。しかしながら、元々疎水性の高分子化合物を水溶性に変化させるには、側鎖に相当量のスルホン酸を発生させる必要があり、故に比較的高エネルギーで露光しなければならなかった。
従って、本発明の目的は、ディジタル信号に基づいた赤外線を放出する固体レーザー及び半導体レーザーの走査露光による製版が可能であり、感度が高く、且つ残膜による汚れの生じない平版印刷版用原版を提供することにある。
更に本発明の目的は水または水溶液によって現像可能な、あるいは現像することなしにそのまま印刷機に装着し印刷することが可能な平版印刷版用原版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記平版印刷版用原版を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち本発明は以下の通りである。
(1)親水性支持体上に、下記一般式(1)で示される構造単位および下記一般式(2)で示される構造単位の少なくともいずれかを主鎖中に有する高分子化合物と光熱変換剤とを含有する感光層を有することを特徴とする平版印刷版用原版。
【0008】
【化2】
【0009】
本発明の平版印刷用原版によれば、露光前は水不溶性であった高分子化合物が、露光後の光熱変換により発生した熱により、上記構造単位を主鎖中に有する高分子化合物は、主鎖が上記構造単位部分において分解してスルホン酸を生成すると共に、分子量が低下し、水に非常に溶けやすくなる。
上記構造単位を側鎖に有する水不溶性高分子化合物も、熱によって構造単位部分で分解してスルホン酸を生成し水溶性に変化するのだが、一般の高分子化合物では、上記構造単位を分解しうる熱によって主鎖を分解することは困難である。そのために、そのような高分子化合物を水溶性に変化させるためには、より多くの熱によって十分な量のスルホン酸を生成させる必要がある。また、主鎖解重合しやすいポリ(α−メチルスチレン)の様な高分子化合物の側鎖に上記構造単位を導入したとしても、スルホン酸の生成と低分子量化を同時に引き起こすことはできず、水溶性に変化させるためにはやはり相当量の熱が必要になってくる。即ち、側鎖にスルホン酸を発生させる官能基を有する高分子化合物では、少ない熱=露光エネルギーによって水不溶性→水溶性の変化を起こすことは困難であり、故にそのような高分子化合物を用いた平版印刷版用原版は感度が低い。
【0010】
上記の平版印刷版用原版に対して、本発明の平版印刷版用原版は、上記構造単位を高分子主鎖中に導入することによって、スルホン酸の生成と低分子量化を同時に引き起こすことができ、そのためにより少ない熱=露光エネルギーによって、疎水性→親水性の変化を起こすことが可能であるために、非常に高感度である。
従って、本発明の平版印刷版用原版は、赤外線を放出する固体レーザー及び半導体レーザーを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接製版可能であり、より高感度であり、且つ、残膜による汚れのない印刷物を与えることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明による平版印刷用原版は、表面が親水性の支持体上に、下記一般式(1)で示される構造単位および下記一般式(2)で示される構造単位の少なくともいずれかを主鎖中に有する高分子化合物(以下、高分子化合物と略す)と、光熱変換剤とを含有する感光層を設けてなる平版印刷版用原版である。
【0012】
【化3】
【0013】
〔高分子化合物〕
本発明に用いられる「高分子化合物」とは、上記一般式(1)で示される構造単位および下記一般式(2)で示される構造単位の少なくともいずれかを主鎖中に有する高分子化合物である。
本発明に用いられる高分子化合物は、上記のような構造単位を主鎖中に有する限り何れの高分子化合物も好適に使用することができるが、水不溶性高分子化合物から水溶性高分子化合物への変化を考えると、高分子化合物主鎖の繰り返し構造単位中に上記のような構造単位が含まれるのがより好ましい。そのような高分子化合物としては、以下の一般式(3)〜(6)で表される高分子化合物が挙げられる。
【0014】
【化4】
【0015】
式中、R1〜R8はアルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を表し、X、Yは非金属原子からなる2価の連結基を表し、n、p、qは自然数を表す。
【0016】
R1〜R8がアルキル基を表す場合、アルキル基としては、炭素原子数が1〜20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができる。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状、並びに炭素原子数5〜10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0017】
R1〜R8が置換アルキル基を表すとき、その置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
【0018】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0019】
これらの置換基におけるアルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(R9CO−)におけるR9としては、水素、及び上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0020】
これら置換基の内、更により好ましいものとしては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基等が挙げられる。
【0021】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては、前述の炭素数1〜20のアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除き、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状、及び炭素原子数5〜10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。
【0022】
R1〜R8が、アリール基を表すとき、アリール基としては、1個〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。また、アリール基には上記炭素環式アリール基の他、複素環式(ヘテロ)アリール基が含まれる。複素環式アリール基としては、ピリジル基、フリル基、その他ベンゼン環が縮環したキノリル基、ベンゾフリル基、チオキサントン基、カルバゾール基等の炭素数3〜20、ヘテロ原子数1〜5を含むものが用いられる。
【0023】
R1〜R8が、置換アリール基を表すとき、置換アリール基としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、及び、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
この様な、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0024】
R1〜R8が、アルケニル基、置換アルケニル基[−C(R10)=C(R11)(R12)]、アルキニル基、又は置換アルキニル基[−C≡C(R13)]を表すとき、R10〜R13としては、一価の非金属原子団を使用することができる。
好ましいR10〜R13の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基を挙げることができる。これらの具体例としては、前述の例として示したものを挙げることができる。R10〜R13のより好ましい置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を挙げることができる。
【0025】
アルキニル基の具体例としては、ビニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−エテニル基、2−クロロ−1−エテニル基、エチニル基、プロピニル基、フェニルエチル基等を挙げることができる。
上記のうち、R1〜R8として好ましいものは、アルキル基、置換基アルキル基、アリール基、及び置換アリール基である。
【0026】
X、Yで表される非金属原子からなる2価の連結基とは、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
【0027】
【化5】
【0028】
多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としてはメチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基のような炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のような炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基のような炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネートのような炭酸エステル基等を用いることができる。
【0029】
以下に、本発明で使用される高分子化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
また、本発明の平版印刷版用原版で使用される高分子化合物のGPCで測定した重量平均分子量は、好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2000〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは500以上であり、更に好ましくは8000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらの高分子化合物は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等何れでも良いが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0038】
本発明で使用される高分子化合物を合成する際には、必ずしも溶媒を用いる必要はないが、使用される溶媒としては、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で或いは2種以上混合して用いることができる。
本発明の平版印刷版用原版の感光層に使用される高分子化合物は、2種以上の高分子化合物を混合して用いても良い。
【0039】
感光層に含まれる高分子化合物の割合は、40重量%〜95重量%が好ましく、50重量%〜90重量%がより好ましい。添加量が40重量%未満の場合は、画像強度が弱くなり、耐刷性が低下し、95重量%を越えると光熱変換剤の添加量が少なくなるために、低エネルギーで所望の分解を十分に起こすことができなくなり感度が低下する。
【0040】
〔光熱変換剤〕
本発明の平版印刷版用原版の感光層に含まれ得る、レーザー光を吸収して熱に変換しうる光熱変換剤について説明する。
本発明において好ましく使用される光熱変換剤は、波長760〜1200nmの光を有効に吸収する染料又は顔料である。より好ましくは、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0041】
好ましい染料としては例えば、シアニン染料、メチン染料、ナフトキノン染料、スクワリリウム色素等を挙げることができる。
また、近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、トリメチンチアピリリウム塩、ピリリウム系化合物、シアニン色素、ペンタメチンチオピリリウム塩等やピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0042】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0043】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理をほどこして用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0044】
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感光層の塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると塗布後の感光層の均一性の点で好ましくない。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0045】
これらの染料若しくは顔料は、本発明の平版印刷版用原版の感光層の全固形物分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは1.0〜10重量%の割合で添加することができる。顔料若しくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生しやすい。
【0046】
〔酸発生剤〕
本発明の平版印刷版用原版の感光層中に含有される前記高分子化合物の熱分解を促進するために、該感光層中に光若しくは熱により酸を発生させる化合物(以下、酸発生剤と呼ぶ)を添加することが望ましい。
本発明に用いられる酸発生剤としては、以下のような公知の化合物を選択して用いることができる。
例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハライド、o−ナフトキノンジアジド化合物を挙げることができる。
【0047】
その他の酸発生剤としては、シクロヘキシルシトレート、p−アセトアミノベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル、p−ブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル等のスルホン酸アルキルエステル、本発明者らが先に出願した特開平10−282672号公報に記載の下記構造式で表されるアルキルスルホン酸エステル等を用いることができる。
【0048】
【化13】
【0049】
上記光、熱又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に有効に用いられるものについて以下に説明する。
(1)トリハロメチル基が置換した下記一般式(PAG1)で表されるオキサゾール誘導体又は一般式(PAG2)で表されるS−トリアジン誘導体、
【0050】
【化14】
【0051】
式中、R1は置換若しくは未置換のアリール基、アルケニル基、R2は置換若しくは未置換のアリール基、アルケニル基、アルキル基、−CY3を示す。Y3は塩素原子又は臭素原子を示す。
具体的には以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
(2)下記の一般式(PAG3)で表されるヨードニウム塩、又は一般式(PAG4)で表されるスルホニウム塩、若しくはジアゾニウム塩。
【0055】
【化17】
【0056】
ここで、式Ar1及びAr2は、各々独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0057】
R3、R4及びR5は各々独立に、置換若しくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基及びそれらの置換誘導体である。好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である。
【0058】
Z-は対アニオンを示し、例えば、BF4 -、AsF6 -、PF6 -、SbF6 -、Si2F2 -、ClO4 -、CF3SO3 -等のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン;ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の結合多核芳香族スルホン酸アニオン;アントラキノンスルホン酸アニオン;スルホン酸基含有染料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、R3、R4及びR5のうちの2つ及びAr1、Ar2はそれぞれの単結合又は置換基を介して結合してもよい。
【0059】
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
一般式(PAG3)、(PAG4)で示される上記オニウム塩は公知であり、例えば、J. W. Knapczyk etal, J. Am. Chem. Soc., 91, 145(1969)、A. L. Maycok etal, J. Org. Chem., 35, 2532 (1970)、B. Goethas etal, Bull. Soc. Chem. Belg., 73, 546 (1964)、H. M. Leicester, J. Am. Chem. Soc., 51, 3587 (1929) 、J. V. Crivello etal, J. Polym. Chem. Ed., 18, 2677(1980)、米国特許第2,807,648号及び同4,247,473号、特開昭53−101331号等の公報に記載の方法により合成することができる。
【0063】
(3)下記一般式(PAG5)で表されるジスルホン誘導体又は一般式(PAG6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
【0064】
【化20】
【0065】
式中、Ar3及びAr4は各々独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。R6は置換若しくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。Aは置換若しくは未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
これら酸発生剤の含有量は、本発明の平版印刷版用原版の感光層全固形物分に対して通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%である。
【0069】
〔増感色素〕
本発明の感光層に含まれる酸発生剤が紫外域から可視域にまで感度を持たない場合、紫外域から可視域の光に対して酸発生剤を活性にするために、種々の酸発生剤の増感色素が用いられる。
このような増感色素の例としては、ピラン系色素、シアニン色素、及びスクアリリウム系色素、メロシアニン系色素、ピリリュウム色素、その他、ミヒラーズケトン、チオキサントン、ケトクマリン色素、9−フェニルアクリジン等を有効なものとして用いることができる。また、その他にもビスベンジリデンケトン色素、9,10−ジフェニルアントラセンのような多環芳香族化合物等を用いることができる。
【0070】
その他の成分としては、例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。
具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等、あるいは特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。
なお、添加量は、本発明の平版印刷版用原版の感光層全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合である。
【0071】
〔固体粒子〕
本発明の感光層には、光熱変換剤の他に固体粒子を添加しても良い。固体粒子は、感光層の除去性を挙げると共に、熱伝導率分布を変化させて感光層で発生した熱を効率よく利用できる粒子が好ましい。かかる固体粒子としては、無機粒子、有機粒子、及び金属粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、ジルコニア等の金属酸化物;無水ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム及び含水ケイ酸アルミニウム等それ自体は可視域に吸収を持たないホワイトカーボンとも呼ばれている珪素含有酸化物;クレー、タルク、カオリン、ふっ石等の粘土鉱物粒子等が使用できる。また、金属粒子としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、銀、鉄等が使用できる。無機粒子又は金属粒子は10mm以下、好ましくは0.01〜10mm、さらに好ましくは0.1〜5mmの平均粒径を有する。
【0072】
無機粒子又は金属粒子の平均粒径が0.01mmを下回ると、感光層の除去性、熱伝導率分布変化は、効果が見られるほど改良されない。10mmを上回ると、印刷物の解像度が悪くなったり、支持体との接着性が極端に悪くなって画像部の強度が低下する。
無機粒子又は金属粒子は、他の成分が好ましい含有量で使用されている限り、どのような含有量でも使用することができるが、含有する場合は感光層の全固形分に対し2〜90重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましい。粒子の含有量が2重量%を下回ると、感光層の除去性、熱伝導率分布変化は、効果が見られるほど改良されない。また、90重量%を上回ると、印刷物の解像度が悪くなったり、支持体との接着性が極端に悪くなって画像部の強度が低下することがある。
【0073】
粒状物として無機粒子又は金属粒子以外に有機粒子も使用できる。有機粒子は感光層の除去性を挙げると共に、熱伝導率分布を変化させて感光層で発生した熱を効率よく利用できるものであれば特に限定はしないが粒状物の有機粒子としては樹脂粒子が使用できる。使用の際に次の注意を払うことが必要である。樹脂粒子を分散させる際に溶剤を用いるときはその溶剤に溶解しない樹脂粒子を選択するか、樹脂粒子を溶解しない溶剤を選択する必要がある。また、樹脂粒子を熱可塑性ポリマーと熱により分散させる際には樹脂粒子が分散させるときの熱により溶融したり、変形したり、分解しないような物を選択する必要がある。
【0074】
これらの注意点を軽減する物として、架橋された樹脂粒子を好ましく使用することができる。有機粒子は0.01〜10mm、好ましくは0.05〜10mm、さらに好ましくは0.1〜5mmの平均粒径を有する。有機粒子の平均粒径が0.01mmを下回ると、感光層の除去性、熱伝導率分布変化は、効果が見られるほど改良されない。10mmを上回ると、印刷物の解像度が悪くなったり、支持体との接着性が極端に悪くなって画像部の強度が低下する。
有機粒子は、他の成分が好ましい含有量で使用されている限り、どのような含有量でも使用することができるが、含有する場合は2〜90重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましい。粒子の含有量が2重量%を下回ると、感光層の除去性、熱伝導率分布変化は、効果が見られるほど改良されない。また、90重量%を上回ると、印刷物の解像度が悪くなったり、支持体との接着性が極端に悪くなって画像部の強度が低下することもある。
【0075】
有機粒子としては、ポリスチレン粒子(粒径4〜10mm)、シリコーン樹脂粒子(粒径2〜4mm)等が挙げられる。架橋された樹脂粒子としては、例えば、2種以上のエチレン性不飽和モノマーから成るマイクロゲル(粒径0.01〜1mm)、スチレンとジビニルベンゼンとから成る架橋樹脂粒子(粒径4〜10mm)メチルメタクリレートとジエチレングリコールジメタクリレートとからなる架橋樹脂粒子(粒径4〜10mm)等、つまりアクリル樹脂のマイクロゲル、架橋ポリスチレン及び架橋メチルメタクリレート等が挙げられる。これらは乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法等の一般的な方法で調製される。
【0076】
また、溶液から無機粒子を調製することも可能である。例えば、エタノールなどの溶剤中に金属低級アルコキシドを加え、水及び酸もしくはアルカリの存在下により、該金属を含む無機粒子が得られる。できた無機粒子溶液を溶剤可溶の熱可塑性ポリマー溶液に加えて無機粒子分散溶液を作ることができる。或いは金属低級アルコキシドをさきに熱可塑性ポリマー溶液に加えてから水及び酸もしくはアルカリを添加し、該金属を含む無機粒子を得ることも可能である。
熱可塑性ポリマーの前駆体溶液に金属低級アルコキシドを添加して無機粒子を作成する場合はポリマー前駆体を熱により熱可塑性ポリマーにするときにポリマーと無機の複合体のものが得られる。金属低級アルコキシドとしてはテトラエトキシシラン、テトラエトキシチタン等が使用できる。
【0077】
〔界面活性剤〕
本発明の平版印刷版用原版の感光層中には、印刷条件に対する安定性を拡げるため、特開昭62-251740号公報や特開平3-208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59-121044号公報、特開平4-13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2-アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN-テトラデシル-N,N-ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光層全固形物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、0.1〜5 重量%がより好ましい。
【0078】
[その他]
さらに、本発明の平版印刷用原版の感光層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0079】
本発明の平版印刷版用原版の感光層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより、或いはさらに必要に応じて酸加水分解、塩基加水分解、熱分解、光分解、酸化、還元等の種々の処理を行うことにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド、水、スルホラン、γ-ブチロラクトン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。塗布液を調製する場合、溶媒中の上記感光層構成成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。
【0080】
塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明の平版印刷版用原版の感光層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62-170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、感光層全固形物分に対し、0.01〜1重量%であり、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
塗布、乾燥後に得られる感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的な平版印刷版用原版についていえば、0.1〜5.0g/m2の範囲であり、0.2〜2.5g/m2が好ましく、0.5〜2.0g/m2がより好ましい。
【0081】
〔支持体〕
本発明の感光層を塗布すべき平版印刷版用原版に使用される支持体(基板)は、寸法安定性の良好な板状物であり、これまで印刷版の支持体として使用された公知のものはいずれも好適に使用することができる。かかる支持体としては、紙、プラスチックス(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、鉄、銅等のような金属の板、例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等のようなプラスチックスのフィルム、上記のような金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれるが、特にアルミニウム板が好ましい。アルミニウム板には純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えば、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。これらの合金組成物には、いくらかの鉄及びチタンに加えてその他無視し得る程度の量の不純物を含むことが容認される。
【0082】
支持体は、必要に応じて表面処理される。例えば、平版印刷版用原版を作製する場合には、支持体の表面に、感光層を塗布するに先立って親水化処理が施される。
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、ケイ酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理等の表面処理がなされていることが好ましい。また、米国特許第2,714,066号公報に記載されているように、砂目立てしたのち珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理したアルミニウム板、米国特許第3,181,461号公報に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理を行った後にアルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、若しくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸又はこれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0083】
表面処理としては、米国特許第3,658,662号公報に記載されているようなシリケート電着も有効である。
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光層との有害な反応を防ぐ為や、該層との密着性を向上させるために施されるものである。
アルミニウム板を砂目立てにより粗面化するに先立って、必要に応じて表面の圧延油を除去するため、あるいは清浄なアルミニウム面を表出させるためにその表面に前処理を施してもよい。通常、圧延油等の除去には、トリクレン等の溶剤、界面活性剤等が用いられている。また、清浄な面の表出のためには水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリエッチング剤を用いる方法が広く行われている。
【0084】
砂目立て方法としては、機械的、化学的及び電気化学的な方法のいずれの方法も有効である。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラスト研磨法、軽石のような研磨剤の水分散スラリーをナイロンブラシで擦りつけるブラシ研磨法等があり、化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適しており、電気化学的方法としては塩酸、硝酸又はこれらの組合せのような酸性電解液中で交流電解する方法が好ましい。このような粗面化方法のうち、特に特開昭55−137993号公報に記載されているような機械的粗面化と電気化学的粗面化を組合せた粗面化方法が、感光層の支持体への接着力が強いので好ましい。
上記の如き方法による砂目立ては、アルミニウム板の表面の中心線表面粗さ(Ha)が0.3〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
このようにして砂目立てされたアルミニウム板は必要に応じて水洗及び化学的にエッチングされる。
【0085】
エッチング処理液は、通常アルミニウムを溶解する塩基あるいは酸の水溶液より選ばれる。この場合、エッチングされた表面に、エッチング液成分から誘導されるアルミニウムと異なる被膜が形成されないものでなければならない。好ましいエッチング剤を例示すれば、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等;酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、アルミニウムよりイオン化傾向の低い金属、例えば、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、銅等の塩はエッチング表面に不必要な被膜を形成するため好ましくない。
これらのエッチング剤は、使用濃度、温度の設定において、使用するアルミニウムあるいは合金の溶解速度が浸漬時間1分あたり0.3〜40g/m2になるように行なわれるのが最も好ましいが、これを上回るあるいは下回るものであっても差支えない、
【0086】
エッチングは上記エッチング液にアルミニウム板を浸漬したり、該アルミニウム板にエッチング液を塗布すること等により行われ、エッチング量が0.5〜10g/m2の範囲となるように処理されることが好ましい。
上記エッチング剤としては、そのエッチング速度が早いという特長から塩基の水溶液を使用することが望ましい。この場合、スマットが生成するので、通常デスマット処理される。デスマット処理に使用される酸は、硝酸、硫酸、りん酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。
エッチング処理されたアルミニウム板は、必要により水洗及び陽極酸化される。陽極酸化は、この分野で従来より行なわれている方法で行なうことができる。具体的には、硫酸、りん酸、クロム酸、蓚酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等あるいはそれらの二種類以上を組み合せた水溶液又は非水溶液中でアルミニウムに直流又は交流の電流を流すと、アルミニウム支持体表面に陽極酸化被膜を形成させることができる。
【0087】
陽極酸化の処理条件は使用される電解液によって種々変化するので一般には決定され得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80重量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間30秒〜50分の範囲が適当である。
これらの陽極酸化処理の内でも、とくに英国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第3,511,661号公報に記載されている燐酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
上記のように粗面化され、更に陽極酸化されたアルミニウム板は、必要に応じて親水化処理しても良く、その好ましい例としては米国特許第2,714,066号及び同第3,181,461号明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート、例えば珪酸ナトリウム水溶液又は特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコニウム酸カリウム及び米国特許第4,153,461号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法がある。
【0088】
[その他の層]
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報に記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好ましい。
【0089】
[製版方法]
次に、本発明の平版印刷版用原版からの平版印刷版の製版方法について説明する。この平版印刷版用原版は、例えば、熱記録ヘッド等により直接画像様に感熱記録を施されたり、光によって画像様に露光されることで記録を施されたりする。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線等がある。またg線、i線、Deep-UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
本発明においては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
【0090】
上述の画像記録後、現像処理を行う場合も行わない場合も、記録時の感度向上という観点から加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、80〜160℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。即ち、この加熱処理を施すことにより、上述の各光源での露光時に、記録に必要なエネルギーを減少させることができる。
本発明の平版印刷版用原版は、上述の手法により画像記録された後、直ちに(現像工程を経ずに)印刷機に版を装着し印刷を行うことができる。この場合は、湿し水等により、加熱部或いは露光部が膨潤し、印刷初期に膨潤部が除去され、平版印刷版が形成される。即ち、本発明の平版印刷版用原版は、現像処理やその他の処理を経ることなく平版印刷版を製版し得る。
【0091】
また、近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。
【0092】
本発明の平版印刷版用原版は、上述の手法により画像記録された後、このような自動現像機を用いて現像することもできる。この場合、現像液としてはこれまでのような、アルカリ強度の高い水溶液を用いる必要はなく、水または、現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、有機カルボン酸塩、消泡剤、硬水軟化剤を添加した水溶液を用いることができる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。
【0093】
上述のように自動現像機を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版用原版に画像形成を行い印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0094】
本発明の平版印刷版用原版を、画像露光し、現像、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きした場合、その得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行われる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0095】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜6及び比較例1〕
〔平版印刷版用原版(1)の調製〕
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に2%硝酸に20秒間浸漬して水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。次にこの板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2の直流で3g/m2の陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。得られたアルミニウム板を2.5wt%の3号珪酸ソーダ水溶液(70℃)に14秒間浸した後、水洗乾燥した。
更に上記の処理済みのアルミニウム板に、下記のように調製した感光層溶液[1]を回転数:150rpmで回転塗布し、80℃で3分間乾燥して平版印刷版用原版(1)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は0.6g/m2であった。
【0096】
感光層溶液[1]
・高分子化合物(1)、重量平均分子量:4万 1.288g
・光熱変換剤(1)、[下記構造] 0.236g
・アセトニトリル 48g
【0097】
【化23】
【0098】
〔平版印刷版用原版(2)の調製〕
感光層溶液[1]を感光層溶液[2]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版用原版(2)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は1.2g/m2であった。
【0099】
感光層溶液[2]
・高分子化合物(25)、重量平均分子量:5万 3.65g
・光熱変換剤(2)[下記構造] 0.236g
・酸発生剤 0.10g
ジフェニルヨードニウムアントラキノンスルホン酸塩
・メチルエチルケトン 30g
・1-メトキシ-2-プロパノール 18g
【0100】
【化24】
【0101】
〔平版印刷版用原版(3)の調製〕
感光層溶液[1]を感光層溶液[3]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版用原版(3)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は1.1g/m2であった。
【0102】
感光層溶液[3]
・高分子化合物(30)、重量平均分子量:3.5万 3.65g
・光熱変換剤(1) 0.236g
・アセトニトリル 48g
【0103】
〔平版印刷版用原版(4)の調製〕
感光層溶液[1]を感光層溶液[4]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版用原版(4)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は1.2g/m2であった。
【0104】
感光層溶液[4]
・高分子化合物(1)、重量平均分子量:4万 3.65g
・光熱変換剤(1) 0.405g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを 0.05g
1-ナフタレン-スルホン酸にした染料
・アセトニトリル 48g
【0105】
[平版印刷版用原版(5)の調製]
感光層溶液[1]を感光層溶液[5]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版用原版(5)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は1.1g/m2であった。
【0106】
感光層溶液[5]
・高分子化合物(1)、重量平均分子量:4万 2.78g
・カーボンブラック 0.310g
・フッ素系界面活性剤 0.05g
メガファックF-177、大日本インキ化学工業(株)製
・メチルエチルケトン 30g
【0107】
[平版印刷版用原版(6)の調製]
感光層溶液[1]を感光層溶液[6]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版用原版(6)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は1.3g/m2であった。
【0108】
感光層溶液[6]
・高分子化合物(1)、重量平均分子量:4万 2.78g
・光熱変換剤(1) 0.310g
・シリカゲル粒子サイリシア#445(富士シリシア化学社製) 1.0g
・フッ素系界面活性剤 0.05g
メガファックF-177、大日本インキ化学工業(株)製
・アセトニトリル 30g
【0109】
〔平版印刷版用原版(7)の調製〕
感光層溶液[1]を感光層溶液[7]に代えた以外は全て平版印刷版用原版(1)と同様にして平版印刷版原版(7)を得た。このときの感光層の乾燥後の塗布重量は0.6g/m2であった。
【0110】
感光層溶液[7]
・比較用高分子化合物(1)[下記構造] 1.288g
、重量平均分子量:4.5万
・光熱変換剤(1) 0.236g
・アセトニトリル 48g
【0111】
【化25】
【0112】
〔平版印刷版用原版の性能評価〕
上記のようにして実施例1〜6及び比較例1の順に作製した平版印刷版用原版(1)〜(7)を、波長840nmの赤外線を発する半導体レーザーにより主走査速度2.0m/sで露光した。露光後、蒸留水に1分間浸した後、光学顕微鏡で非画像部の線幅を観測した。その線幅に相当するレーザーの照射エネルギーを求めて、これを感度とした。
同様に平版印刷版用原版(1)〜(7)を、波長840nmの赤外線を発する半導体レーザーにより主走査速度2.0m/sと4.0m/sでそれぞれ露光した後、何ら処理することなくハイデルKOR−D機で通常通り印刷した。この際、3000枚目の印刷物の非画像部に汚れが発生しているかどうか、何枚良好な印刷物が得られるかどうかを評価した。以上の結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
主鎖中に特定の構造単位を有する高分子化合物を使用した本発明の平版印刷版用原版(1)〜(6)は何れも感度が高く、2.0m/s、4.0m/sの何れの走査速度で露光しても3000枚目の印刷物非画像部には汚れが生じなかった。
これに対して側鎖に同様の構造単位を有する高分子化合物を使用した比較例の平版印刷版用原版(7)は、若干感度が低く、走査速度2.0m/sでは3000枚目の印刷物非画像部にも汚れが無く、良好な印刷物が45000枚得られたが、走査速度4.0m/sで露光した際には500枚目の印刷物非画像部に汚れが生じていた。これは、平版印刷版用原版(7)においては走査速度が速い(4.0m/s)場合には感光層全てを水溶性にする事ができずに感光層が残膜したことが原因である。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の平版印刷版用原版は、感光層に含有させる高分子化合物として、スルホン酸を生成させる構造単位を高分子主鎖中に導入することによって、スルホン酸の生成と低分子量化を同時に引き起こすことができ、そのためにより少ない熱=露光エネルギーによって、疎水性→親水性の変化を起こすことが可能であるために、水現像可能な、あるいは画像書き込み後、湿式現像処理やこすり等の特別な処理を必要としない非常に高感度なものである。
従って、赤外線を放出する固体レーザー及び半導体レーザーを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接製版可能であり、より高感度であり、且つ、残膜による汚れのない印刷物を得ることができる平版印刷版用原版を提供することができる。
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