JP4165321B2 - 動力出力装置およびその制御方法並びに自動車 - Google Patents

動力出力装置およびその制御方法並びに自動車 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに自動車に関し、詳しくは、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびその制御方法並びに動力出力装置を備える自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジン駆動系のフライホイールに誘導機が装着されたリターダ装置を備える自動車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、通常時に誘導機を発電機として機能させてバッテリに電力を蓄えておき、何らかのトラブルによりエンジンが停止してしまったときに、バッテリからの電力により誘導機を電動機として機能させて車両を移動させるものとしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−49105号公報(第3頁,第4頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように非常時にはバッテリの電力を用いて車両を移動させる必要もあるが、エンジントラブルを放置してバッテリからの電力による車両の移動を繰り返すように、本来の使用方法として予定されていない使用が行なわれると、この予定されていない使用により、過放電によるバッテリの破損など構成機器の破損を生じる場合がある。
【0005】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに自動車は、装置の使用として本来予定されていない使用による構成機器の破損を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに自動車は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記内燃機関の始動に必要な電力の供給と前記電動機への電力の供給とが可能な蓄電手段と、
該蓄電手段の放電能力を検出する放電能力検出手段と、
前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電すると共に該発電電力の少なくとも一部を用いて前記蓄電手段を充電可能な発電手段と、
前記発電手段による発電ができない発電不能状態を検出する発電不能状態検出手段と、
操作者の操作に基づいて前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、
通常時には前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されると共に前記蓄電手段の放電能力が通常の範囲となるよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する通常時制御を実行し、前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が検出されたときには前記内燃機関と前記発電手段とを停止した状態で前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する発電不能時制御を実行する駆動制御手段と、
前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が継続して検出されている状態における前記放電能力検出手段により前記蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動(低能力発電不能状態の起動)に基づいて前記駆動制御手段による前記発電不能時制御の実行を制限する駆動制限手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の動力出力装置では、発電手段による発電ができない発電不能状態が継続して検出されている状態における蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動(以下、低能力発電不能状態の起動という)に基づいて発電不能状態が検出されたときの制御、即ち、内燃機関と発電手段とを停止した状態で要求動力に基づく動力が駆動軸に出力されるよう電動機を制御する発電不能時制御の実行を制限する。この結果、発電ができない状態における蓄電手段の過剰な放電という蓄電手段の予定されていない使用を抑制することができると共にこの予定されていない使用による蓄電手段の過放電による破損を抑止することができる。
【0009】
こうした本発明の動力出力装置において、前記駆動制限手段は、前記低能力発電不能状態の起動の回数が所定回以上となるときに前記駆動制御手段による前記発電不能時制御の実行を禁止する手段であるものとすることもできる。こうすれば、非常の際に必要な発電不能時制御の実行を支障なく行なうことができ、それ以上の予定されていない発電不能時制御の実行を禁止することができる。
【0010】
また、本発明の動力出力装置において、前記発電不能状態検出手段は、前記内燃機関へ燃料を供給できない状態を検出する手段であるものとすることもできるし、前記発電手段の異常により発電できない状態を検出する手段であるものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の動力出力装置において、前記発電手段は、前記蓄電手段から電力の供給を受けて前記内燃機関をクランキングする手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関を始動する電動機を別個に設ける必要がない。
【0012】
本発明の動力出力装置において、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な手段であるものとすることもできる。この場合、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子に対して該第2の回転子の相対的な回転を伴って該第1の回転子と該第2の回転子の電磁作用による電力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する発電機であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の自動車は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関の始動に必要な電力の供給と前記電動機への電力の供給とが可能な蓄電手段と、該蓄電手段の放電能力を検出する放電能力検出手段と、前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電すると共に該発電電力の少なくとも一部を用いて前記蓄電手段を充電可能な発電手段と、前記発電手段による発電ができない発電不能状態を検出する発電不能状態検出手段と、操作者の操作に基づいて前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、通常時には前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されると共に前記蓄電手段の放電能力が通常の範囲となるよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する通常時制御を実行し、前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が検出されたときには前記内燃機関と前記発電手段とを停止した状態で前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する発電不能時制御を実行する駆動制御手段と、前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が継続して検出されている状態における前記放電能力検出手段により前記蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動(低能力発電不能状態の起動)に基づいて前記駆動制御手段による前記発電不能時制御の実行を制限する駆動制限手段と、を備える動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が機械的に車軸に接続されて走行することを要旨とする。
【0014】
この本発明の自動車では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、発電ができない状態における蓄電手段の過剰な放電という蓄電手段の予定されていない使用を防止することができる効果や予定されていない使用による蓄電手段の過放電による破損を防止することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0015】
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関の始動に必要な電力の供給と前記電動機への電力の供給とが可能な蓄電手段と、前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電すると共に該発電電力の少なくとも一部を用いて前記蓄電手段を充電可能な発電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)通常時には操作者の操作に基づく要求動力に応じた動力が前記駆動軸に出力されると共に前記蓄電手段の放電能力が通常の範囲となるよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する通常時制御を実行し、前記発電手段が発電できない発電不能状態のときには前記内燃機関と前記発電手段とを停止した状態で前記要求動力に応じた動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する発電不能時制御を実行し、
(b)前記発電不能状態が継続している状態における前記蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動の回数が所定回に至ったときに前記ステップ(a)による前記発電不能時制御の実行を禁止する
ことを特徴とする。
【0016】
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、発電手段による発電ができない発電不能状態が継続している状態における蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動の回数が所定回数に至ったときに発電不能状態における駆動制御、即ち、内燃機関と発電手段とを停止した状態で要求動力に応じた動力が駆動軸に出力されるよう電動機を制御する発電不能時制御の実行を禁止するから、発電ができない状態における蓄電手段の過剰な放電という蓄電手段の予定されていない使用を抑制することができると共にこの予定されていない使用による蓄電手段の過放電による破損を抑止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0018】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料が蓄えられた燃料タンク23から燃料の供給を受けて動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、各種センサからの信号に基づいてエンジン22の運転状態を監視しており、エンジン22を良好に運転することができない状態、例えば燃料切れによりエンジン22を運転できない状態や各気筒のいずれかの点火ができないために良好に運転できない状態などを検出する。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、各種センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の運転状態を監視しており、モータMG1,MG2を良好に運転することができない状態、例えばインバータ41,42の異常によりモータMG1,MG2を運転できない状態やモータMG1,MG2に異常が生じて運転できない状態などを検出する。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、燃料タンク23に取り付けられた燃料計23aからの燃料残量やイグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に燃料切れやエンジン22の異常,モータMG1の異常などにより発電できない状態のときの動作について説明する。図2はイグニッションスイッチ80がオンされたときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される起動時処理の一例を示すフローチャートであり、図3はイグニッションスイッチ80がオンされて起動した後にハイブリッド用電子制御ユニット70により繰り返し実行されるカウンタ処理の一例を示すフローチャートである。
【0025】
起動時処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、カウンタ用フラグFcを初期化するために値0をセットすると共に(ステップS100)、エンジン22やモータMG1,MG2,インバータ41,42などの駆動系が運転可能な状態にあるか否かチェックする(ステップS110)。カウンタ用フラグFcについては後述する。駆動系が運転可能な状態にあるか否かチェックは、エンジン22やモータMG1,MG2,インバータ41,42などの機器自体に異常が生じていないかをチェックするだけでなく、エンジン22への燃料供給を行なうことができる状態にあるかもチェックする。なお、これらのチェックは、エンジンECU24やモータECU40による監視データを入力することにより行なうことができる。何ら異常がなく正常なときには、ステップS120で肯定的は判定がなされ、運転者のアクセルペダル83の操作に応じてモータ運転モードやトルク変換運転モード,充放電運転モードを切り替えて走行する通常走行を許可して(ステップS130)、起動時処理を終了する。
【0026】
いま、何らかの異常が生じた場合、特に、燃料切れによってエンジン22を運転できない状態やエンジン22の異常によりエンジン22を運転できない状態,エンジン22は運転可能であるがモータMG1の異常により発電することができない状態,インバータ41の異常によりモータMG1を駆動することができない状態など、発電してバッテリ50を充電することができない発電不能状態が生じた場合について考える。この場合、ステップS120では否定的な判定がなされ、異常ランプ90を点灯し(ステップS140)、カウンタCを閾値Crefと比較する(ステップS150)。ここで、カウンタCは、起動後に繰り返し実行される図3に例示するカウンタ処理により設定される。閾値Crefは、発電不能状態が継続している際にモータ走行を許可する起動の回数を設定するものであり、値3,4,5、6などのように設定される。カウンタCが閾値Cref未満のときにはエンジン22とモータMG1とを停止した状態でモータMG2からの動力だけで走行するモータ走行を許可し(ステップS160)、カウンタCが閾値Cref以上のときには走行を禁止して(ステップS170)、起動時処理を終了する。このように発電不能状態が生じていてもカウンタCが閾値Cref未満のときにはモータ走行を許可するのは、発電不能状態が原因で車両が踏み切りで停車したような場合でも、モータ走行により車両を移動することができるようにするためである。
【0027】
起動時処理により通常走行やモータ走行が許可されて起動すると、図3に例示するカウンタ処理が繰り返し実行される。カウンタ処理が実行されると、まず、エンジン22やモータMG1,MG2,インバータ41,42などの駆動系が運転可能な状態にあるか否かチェックする(ステップS200)。このチェックは起動時処理のステップS100の状態チェックと同様である。次に、この状態チェックに結果、発電不能状態にあるか否かを判定し(ステップS210)、発電不能状態にないときにはカウンタCに値0をセットして(ステップS220)、カウンタ処理を終了する。このように、発電不能状態ではないときにはカウンタCには値0がセットされるから、次の起動時に図2の起動時処理によって発電不能状態が判定されても、カウンタCは閾値Crefより小さいからモータ走行が許可される。
【0028】
ステップS210で発電不能状態にあると判定されると、カウンタ用フラグFcが値0であるか否かを判定すると共に(ステップS220)、モータ走行中であるか否かを判定し(ステップS230)、更にバッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満であるか否かを判定する(ステップS240)。ここで、バッテリ50の出力制限Woutは、実施例では、温度センサ51により検出される電池温度Tbと残容量(SOC)とを用いてバッテリECU52により設定されたものをバッテリECU52から通信により読み込んで用いるものとした。閾値Wrefは、バッテリ50の過放電を防止するために設定されるものであり、バッテリ50の特性により求めることができる。カウンタ用フラグFcが値1のときやモータ走行中でないとき、あるいは、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときには、何もせずにカウンタ処理を終了する。一方、カウンタ用フラグFcが値0であると共にモータ走行中であり、且つ、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満のときには、カウンタCを値1だけインクリメントすると共に(ステップS250)、カウンタ用フラグFcに値1をセットして(ステップS260)、カウンタ処理を終了する。このようにカウンタ用フラグFcは、カウンタCがインクリメントされたときに値1がセットされ、カウンタ用フラグFcに値1がセットされた後は、ステップS220で否定的な判定がなされる結果、カウンタCのインクリメント処理は行なわれない。したがって、ハイブリッド自動車20が起動されてカウンタCがインクリメントされると、その後、ハイブリッド自動車20を停止して起動するまではカウンタCはインクリメントされない。
【0029】
図2の起動時処理と図3のカウンタ処理とを組み合わせて考えると、燃料切れやエンジン22の異常,モータMG1の異常などにより発電不能な状態を継続しても、閾値Crefにより設定された回数まではモータ走行を許可する起動が行なわれるが、閾値Crefにより設定された回数に至ったときには走行を禁止する起動が行なわれることになる。起動間に燃料の補給やエンジン22やモータMG1の整備などにより発電不能状態が解消されると、通常走行を許可する起動が行なわれ、カウンタCは値0にクリアされる。この結果、燃料切れを承知でハイブリッド自動車20の起動と停止を何度となく繰り返すような本来の使用方法として予定されていない使用が行なわれても、バッテリ50の過放電を抑止することができると共に過放電に伴って生じ得るバッテリ50の破損を抑止することができる。
【0030】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、燃料切れやエンジン22の異常,モータMG1の異常などにより発電不能な状態が継続された状態でハイブリッド自動車20の起動と停止を何度となく繰り返すような本来の使用方法として予定されていない使用が行なわれても、バッテリ50の過放電を抑止することができると共に過放電に伴って生じ得るバッテリ50の破損を抑止することができる。もとより、発電不能状態が原因で車両が踏み切りで停車したような場合でも、モータ走行により車両を移動することができる。
【0031】
ここで、実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の放電能力としてバッテリ50の出力制限Woutを用いたが、放電能力としては出力制限Woutに限られず、例えばバッテリ50の残容量(SOC)など種々のものを用いることもできる。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図4の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図4における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0034】
また、エンジンの動力を用いて発電する発電機と、この発電機からの電力により充電する二次電池と、発電機や二次電池からの電力により駆動力を出力する電動機とを備えるハイブリッド自動車であれば、如何なるハイブリッド自動車であっても差し支えない。さらに、こうしたハイブリッド自動車に搭載された動力出力装置をハイブリッド自動車以外の車両や機器に搭載するものとしてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される起動時処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるカウンタ処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図5】 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 燃料タンク、23a 燃料計、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34キャリア、35,減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b,64a,64b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (10)

  1. 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
    内燃機関と、
    前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
    前記内燃機関の始動に必要な電力の供給と前記電動機への電力の供給とが可能な蓄電手段と、
    該蓄電手段の放電能力を検出する放電能力検出手段と、
    前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電すると共に該発電電力の少なくとも一部を用いて前記蓄電手段を充電可能な発電手段と、
    前記発電手段による発電ができない発電不能状態を検出する発電不能状態検出手段と、
    操作者の操作に基づいて前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、
    通常時には前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されると共に前記蓄電手段の放電能力が通常の範囲となるよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する通常時制御を実行し、前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が検出されたときには前記内燃機関と前記発電手段とを停止した状態で前記要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する発電不能時制御を実行する駆動制御手段と、
    前記発電不能状態検出手段により発電不能状態が継続して検出されている状態における前記放電能力検出手段により前記蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動(低能力発電不能状態の起動)に基づいて前記駆動制御手段による前記発電不能時制御の実行を制限する駆動制限手段と、
    を備える動力出力装置。
  2. 前記駆動制限手段は、前記低能力発電不能状態の起動の回数が所定回以上となるときに前記駆動制御手段による前記発電不能時制御の実行を禁止する手段である請求項1記載の動力出力装置。
  3. 前記発電不能状態検出手段は、前記内燃機関へ燃料を供給できない状態を検出する手段である請求項1または2記載の動力出力装置。
  4. 前記発電不能状態検出手段は、前記発電手段の異常により発電できない状態を検出する手段である請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置。
  5. 前記発電手段は、前記蓄電手段から電力の供給を受けて前記内燃機関をクランキングする手段である請求項1ないし4いずれか記載の動力出力装置。
  6. 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な手段である請求項1ないし5いずれか記載の動力出力装置。
  7. 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段である請求項6記載の動力出力装置。
  8. 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子に対して該第2の回転子の相対的な回転を伴って該第1の回転子と該第2の回転子の電磁作用による電力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する発電機である請求項6記載の動力出力装置。
  9. 請求項1ないし8いずれか記載の動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が機械的に車軸に接続されて走行する自動車。
  10. 内燃機関と、駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関の始動に必要な電力の供給と前記電動機への電力の供給とが可能な蓄電手段と、前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電すると共に該発電電力の少なくとも一部を用いて前記蓄電手段を充電可能な発電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
    (a)通常時には操作者の操作に基づく要求動力に応じた動力が前記駆動軸に出力されると共に前記蓄電手段の放電能力が通常の範囲となるよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する通常時制御を実行し、前記発電手段が発電できない発電不能状態のときには前記内燃機関と前記発電手段とを停止した状態で前記要求動力に応じた動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する発電不能時制御を実行し、
    (b)前記発電不能状態が継続している状態における前記蓄電手段の放電能力が所定能力以下になるのを検出する装置の起動の回数が所定回に至ったときに前記ステップ(a)による前記発電不能時制御の実行を禁止する
    ことを特徴とする動力出力装置の制御方法。
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