JP4164416B2 - 吸収性物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁用吸収パッドなどの体液の吸収性物品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の吸収性物品の構造としては、表面シートと裏面シートと、これら両シートの間に配置された吸収体とで構成されているものが一般的である。通常、吸収性物品は、数回分の液体体液を吸収することができるよう設計されている。
【0003】
しかしながら、従来の吸収性物品では、一旦吸収された体液が、吸収体に着用者の荷重がかかることで、着用者の皮膚へ逆戻りしてしまう現象があり、着用者へ不快感を与えることがあった。
【0004】
吸収体に吸収された体液の逆戻りを抑えるため、表面シートと吸収体の間にいわゆるセカンドシートを設けた吸収性物品が各種提案されている。セカンドシートは、表面シートを通して受けた体液を吸収体へ移行させて吸収体での吸収を図りつつ、逆戻りを防止するもので、液拡散シートとも呼ばれることがある。
【0005】
セカンドシートとしては、疎水性繊維からなる密度の低い不織布を使用したものが多く、これらは疎水性であるために一旦吸収された体液の逆戻り現象を防止したり、残存体液によるカブレを防止する効果を有するものである。
【0006】
体液の逆戻り現象を防止するためには、セカンドシートの密度をコントロールすることが重要となる。すなわち、セカンドシートの密度が高いと逆戻りに対する効果は高くなるものの、体液がセカンドシートを通過しにくくなるため、表面シート上に体液が長い時間滞留することになり、表面のいわゆる「さらっと」感が損なわれ、漏れを引き起こす原因となる。逆に、液拡散シートの密度を低くしすぎると、液拡散シートの通過を早くすることができるが、逆戻りしやすくなる、相矛盾した現象がある。
【0007】
かかるために先行特許文献1にて提案されたものがある。
【先行特許文献1】
特開2001−157694号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
先行特許文献1では、表面シートとセカンドシートの密度の比が1:1.5〜1:10.0が望ましいとしており、表面シートに対するセカンドシートの密度の比が1.5より小さいと、表面シートを通過した体液をセカンドシートで十分に拡散させることができないとしている(同文献段落番号「0017」参照)。また、セカンドシートの厚みは、70〜300μmと薄いものしか想定していない。
【0009】
しかし、セカンドシートの密度が高いと、素材が硬くなり、製品の表面部がゴワつく感じとなり、商品価値が損なわれる。
【0010】
したがって、本発明の主たる課題は、従来の吸収性物品の上記問題点を解決するものであり、おむつ表面における吸収速度を高めるとともに、体液の逆戻り防止及びおむつ表面の濡れ・カブレ防止を図ることができる吸収性物品を提供することにある。しかも、かかる効果を発揮させつつ、おむつの表面部が柔軟性に富み、商品価値が高いものを得ることも他の課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1項記載の発明>
透液性表面シートを通して受けた体液を吸収体により吸収し、裏面側への漏れ防止を図る構造の吸収性物品において、
前記表面シートを、目付が18〜25g/m 2 の不織布とするとともに、
前記表面シートと前記吸収体との間に、繊度が2.2〜6.5デニールの熱接着性複合繊維からなり、目付が35〜45g/m 2 のセカンドシートを配置し、
前記セカンドシートは前記繊維からなる繊維ウェブをエアスルー型熱処理機で熱接着した後、金属ロールとJIS K7215によるショアーD硬度が60〜94度であるコットンロールとの間にニップ状態で通すことにより圧密処理して得られる不織布であり、
KES圧縮試験の圧縮特性における;
(1)前記セカンドシートの圧縮固さLCの値が0.15〜0.25、
(2)前記セカンドシートの厚み>前記表面シートの厚み、かつ0.5gf/cm2荷重時のセカンドシートの厚みが0.7〜0.9mm、
であり、
前記セカンドシートの密度が前記表面シートの密度よりも高い、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
本発明におけるセカンドシートは、KES圧縮試験の圧縮特性における圧縮固さLCの値が0.15〜0.25であり、柔らかいものである。したがって、おむつの表面部が柔軟性に富み、商品価値が高いものとなる。
さらに、セカンドシートの厚み>表面シートの厚みの関係にある。したがって、体液は表面シートを迅速に透過し、それより厚いセカンドシートにおいて、拡散及び吸収体への体液の移行を保証する。しかも、0.5gf/cm2荷重時のセカンドシートの厚みが0.7〜0.9mmであるから、一旦吸収された体液の逆戻り現象が防止される。
【0013】
<請求項2項記載の発明>
前記表面シートの密度/前記セカンドシートの密度が0.8〜0.9であり、
前記KES圧縮試験の圧縮特性における、0.5gf/cm2荷重時の前記表面シートの厚み+セカンドシートの厚み=1.0〜1.2mmである、
請求項1記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
請求項1の上記の作用効果に加えて、0.5gf/cm2荷重時の前記表面シートの厚み+セカンドシートの厚み=1.0〜1.2mmであり、全体としての厚みは極端に厚いものではないから、おむつの表面部の柔軟性が阻害されることはなく、商品価値が高いものとなる。
【0015】
さらに、表面シートの密度/セカンドシートの密度が0.8〜0.9で、セカンドシートの密度が表面シートの密度よりも高いから、一旦吸収された体液の逆戻り現象が確実に防止される。
【0016】
<請求項3項記載の発明>
透液性表面シートを通して受けた体液を吸収体により吸収し、裏面側への漏れ防止を図る構造の吸収性物品の製造に際し、
前記表面シートとして、目付が18〜25g/m 2 の不織布を用いるとともに、
前記表面シートと前記吸収体との間に配置される不織布からなるセカンドシートの素材シートを製造するにあたり、エアスルー型熱処理機で熱接着性複合繊維からなる繊維ウェブを熱接着した後、最終段階で、金属ロールとJIS K7215によるショアーD硬度が60〜94度であるコットンロールとの間にニップ状態で前記繊維ウェブを通して圧密処理することにより、
KES圧縮試験の圧縮特性における;
(1)圧縮固さLCの値が0.15〜0.25、
(2)厚み>前記表面シートの厚み、かつ0.5gf/cm2荷重時の厚みが0.7〜0.9mm、
であり、繊度が2.2〜6.5デニールの熱接着性複合繊維からなり、目付が35〜45g/m 2 であり、密度が前記表面シートよりも高い素材シートを得て、
この素材シートをセカンドシートとして前記表面シートと前記吸収体との間に配置する 、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【0017】
(作用効果)
本発明に従って、不織布からなるセカンドシートの素材シートを製造するにあたり、最終段階で、金属ロールとコットンロールとの間でニップ状態で通すと、通す前に対し密度を高めながらも、柔らかい(柔軟性に富んだ)シート素材を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明についてさらに詳説する。
本発明は、使用者の肌側に位置する透液性の表面シート(表面シートとも呼ばれる)、製品の外側に位置する裏面シート(バックシートとも呼ばれる)との間に吸収体が介在されている吸収性物品に関するものである。裏面シートは、製品の吸収体の外側にあればよく、最外表面にあるほか、裏面シートは、吸収体により吸収した体液の裏面側への漏れ防止を図る機能を有する限り、最外表面層と吸収体との間のどの位置にあってもよい。したがって、当該裏面シートは、体液不透過性または難透過性である。
【0019】
前記表面シートと前記吸収体との間に配置する不織布からなる本発明のセカンドシートが設けられる。本発明の吸収性物品では、高い吸収速度と逆戻り防止による着用時の快適性を実現するために、体液は着用者の肌に接する表面シートでは少ない領域を短時間に通過し、液拡散シートで広い範囲にすばやく拡散され、吸収体に移行し、しかも表面部での柔軟性に富むものであるように設計したものである。かかる構造によれば、表面シートの濡れた領域が少ない(カブレ防止を図る)ことで、着用者の不快感を抑えることができ、セカンドシートで広い範囲に拡散することで、逆戻りしにくくなり(サラット感を高め)、吸収体における吸収も効率良く行われることになる。
【0020】
表面シートとしては、不織布を使用し、その目付が着用者への肌触りや液の逆戻り防止のために、18〜25g/m2 とされる。また0.5gf/cm2荷重時の厚みが0.1〜0.5mm、より望ましくは0.15〜0.30mmである。
【0021】
表面シートの目付が低いと、着用時に高い荷重がかかったときに逆戻りがしやすくなる。目付が高くなると、シートの剛度が高くなり、着用者への肌触り、特に柔軟性が低下する。かかる表面シートの目付において、表面シートの厚さが過度に薄くなると、密度が高くなり体液が表面シートを通過するのに時間がかかってしまう。また、表面シートの厚さが過度に厚くなると、シートの剛度が高くなり、着用者へのフィット性が低下する。
【0022】
表面シートとして使用される液透過性不織布は、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリエステル、あるいはその他の熱可塑性樹脂を原料とした、合成繊維(複合繊維を含む)からなる不織布を用いることができる。表面シートとして、短繊維ウェブから得られるものを使用するのが望ましく、汗などの体液の透過性を向上させ、かぶれを防止するためである。不織布の製法としては、例えば、乾式法、湿式法、直接法としてのスパンボンド法及びメルトブローン法等が挙げられる。例えばメルトブローン法は、例えば、結晶性プロピレン系などの原料重合体を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡出された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、金網やベルトなどの捕集装置上で極細短繊維(不連続繊維)ウェブとする。これらの場合、短繊維同士の接着を図ることができる。すなわち、短繊維同士をそれら自体がもっている熱により熱融着させる方法の他、他の接着法、例えばニードルパンチ法、ウオータージェット(スパンレース法)、超音波シール等の手段によって交絡処理させる方法、あるいは熱エンボスロールによる熱融着法(カレンダー法)やエアスルー法等の方法によって接着させることができる。このような不織布には、親水性界面活性剤等により表面に親水性処理を施すことができる。
【0023】
セカンドシートとしては、液透過性不織布を使用する。その目付け及び厚みは、液の拡散速度、吸収速度及び逆戻り性を考慮して選定される。セカンドシートの目付けは35〜45g/m2 とされる。
【0024】
セカンドシートの厚みは、0.5gf/cm2荷重時での厚みは0.7〜0.9mmとされる。セカンドシートの厚みは、目付けや密度と相関する。さらに、表面シートの厚みや密度とも相関する。セカンドシートの厚み>表面シートの厚みであるのが望ましい。さらに、セカンドシートの厚み/表面シートの厚みの比は、1.4〜9.0であるのが望ましい。かかる関係によれば、体液は表面シートを迅速に透過し、それより厚いセカンドシートにおいて、拡散及び吸収体への体液の移行を保証する。さらに、0.5gf/cm2荷重時の前記表面シートの厚み+セカンドシートの厚みが1.0〜1.2mmであるのが特に好適である。表面層全体の厚みが厚くなると、柔軟性を損ね、しかも、体液の吸収体への移行量が少なくなる。
【0025】
表面シートの密度/セカンドシートの密度比も重量な要素となる。その密度比としては、0.8〜0.9が望ましい。
【0026】
表面シートの密度は、0.06〜0.15g/cm3 特に、0.07〜0.12g/cm3が望ましい。セカンドシートの密度は、0.03〜0.178g/cm3 特に、0.048〜0.138g/cm3が望ましい。
【0027】
セカンドシートの目付が過度に低く、厚みが過度に薄く、密度が過度に低いと、体液を拡散させる前に下方の吸収体に通過させてしまい、拡散効果を十分に果たすことができない。セカンドシートの目付が過度に高く、厚みが過度に厚く、密度が過度に高いと、体液がセカンドシートを通過するのに時間がかかり吸収速度の低下を招き、吸収体への移行量が少なくなる。したがって、上記の数値限定範囲内のものが望ましいのである。
【0028】
表面シートの密度/セカンドシートの密度比も重量な要素であることは、前述のとおりである。密度比が0.8未満の場合、逆戻り性は良好であるものの、吸収速度の低下を招き、吸収体への移行量が少なくなる。密度比が0.9を超える場合、逆戻りを生じがちとなる。
【0029】
本発明のセカンドシートとして使用される液透過性不織布については後述する。
【0030】
本発明で使用される吸収体は、綿状パルプ、高吸収性高分子物質(高分子吸収ポリマー)、合成繊維、熱溶融成分、接着剤及び親水性シート等からなる液体保持性を有するものであるが、特に制限されるものではない。前記吸収体の形状は、砂時計型、矩形、T字型等特に制限はなく、股下にフィットする形状であればよい。必要に応じて、吸収体を圧縮しても良い。 特に、綿状パルプに高吸収性高分子物質(高分子吸収ポリマー)を分散させたものをティッシュペーパーにより包むまたは上下で被覆したものを使用できる。吸収体の構成は、例えば、綿状パルプを主成分とする層単独でも構わないし、この層の下部に綿状パルプに高吸収性高分子物質を均一に混合した層を設けても良い。さらに、この2層間に、高吸収性高分子物質を層状に散布しても構わない。こうすることで更に多量の体液を吸収、保持することができる。上記のように、本発明の吸収体の層構成は、必要に応じて複数層になっても構わない。エンボス付与などを図ることもできる。
【0031】
綿状パルプとしては、化学パルプ、機械パルプあるいは化学機械パルプのシートを粉砕機で綿状にしたものが挙げられる。パルプ原料としては、針葉樹に限らず広葉樹等の木材パルプ、麻等の非木材パルプも適用される。パルプ原料は、目的とする吸収体により、単独又は複数を混合、積層して用いても良い。
【0032】
したがって、本発明における吸収体とは、単に綿状パルプや高吸収性高分子物質(高分子吸収ポリマー)のみのものに限られず、他の要素や他の形態が複合した場合も含む意味である。
【0033】
綿状パルプとともに、合成繊維、熱溶融成分、接着剤等が入っていても良く、3〜60重量%の熱融着性物質を混合して、熱圧着しても良い。熱溶融成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニリデン、アクリル樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。または、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の2成分以上からなる複合繊維でも良い。
【0034】
高吸収性高分子物質としては、例えばデンプン系、セルロース系、合成ポリマー系が挙げられる。自重の20倍以上の尿、体液及び水を吸収するもので、ポリアクリル酸ナトリウム系のものが吸収性能の点から最も好ましい。高吸収性高分子物質は、層状に散布しても良いし、綿状パルプ内に均一に、あるいは不均一に分布していても良い。
【0035】
本発明の液不透過性の裏面シートとしては、ポリエチレン等の液不透過性フィルム等を用いることができるほか、透湿性を付与するための微孔を設けたポリエチレンシートや、熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸したシート等の液不透過性のシートを用いても構わない。さらに、不織布を一枚または複数層積層したものに対し、液不透過処理したもの、不織布と液不透過性フィルムとを組み合わせたものなどでもよい。
【0036】
<吸収性物品の形態例>
本発明の吸収性物品として、図1及び図2に使い捨ておむつの形態例を挙げる。すなわち、本例は、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0037】
具体例について説明すると、図示のおむつでは、透液性表面シート1と、実質的に液を透過させない不透液性シート、例えばポリエチレン等からなる完全に液を透過させない不透液性裏面シート2との間に、綿状パルプ等からなる、例えば長方形又は好ましくは図示のように砂時計型のある程度剛性を有する吸収体3が介在されている。この吸収体3は、吸収用の上下ティッシュペーパーで被覆することができる。
【0038】
さらに、透液性表面シート1と吸収体3との間には、本発明に係るセカンドシートSが介在されている。
【0039】
裏面シート2は吸収要素より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート10が設けられている。
【0040】
透液性表面シート1は吸収要素より幅広の長方形をなし、吸収要素の側縁より若干外方に延在し、裏面シート2とホットメルト接着剤などにより固着されている(この固着部分を含めて本形態に関係する固着部分を符号*で示す)。
【0041】
おむつの両側部には、使用面側に突出する脚周り用起立カフスBが形成され、この起立カフスBは、実質的に幅方向に連続した不織布からなる起立シート4と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は図示のように複数本の脚周り用弾性伸縮部材5とにより構成されている。7は面ファスナーによるファスニング片である。
【0042】
さらに、起立カフスBは、起立シート4を内面側を短く段違いに内折りして2重に形成され、各脚周り用弾性伸縮部材5をホットメルト接着剤などにより固着した状態で包んでいる。
【0043】
二重の起立シート4の内面は、透液性表面シート1の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から裏面シート2の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。二重の起立シート4の外面は、その下面においてバックシート10にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0044】
その結果、二重の起立シート4の内面の、裏面シート2への固着始端は、起立カフスBの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、製品の中央側に向かう起立部と、途中で折り返し反転して外側に向かう平面当り部とに機能的にかつ概念的に区分されている。
【0045】
他方、図示しないが、長手方向前後端部において、ホットメルト接着剤などにより、前記起立部相当部(起立部の延長部)は、製品の中央側に向かう状態で製品に,具体的には透液性表面シート1及び裏面シート2の外面に固定され、前記平面当り部相当部(平面当り部の延長部)が折り返し反転した状態で起立部相当部上に固定されている。
【0046】
また、弾性伸縮部材5は、少なくとも1本が平面当り部にあることを基本形態とするが、特に弾性伸縮部材5は平面当り部の先端部にあることが好ましく、さらに、起立部にも弾性伸縮部材5を有することが好ましい。弾性伸縮部材5は、起立端近傍、折り返し近傍及び平面当り部の先端部に設けることができる。平面当り部の先端部には、図示のように複数本有するのがさらに望ましい。起立部には、起立力を高めるために、さらに弾性伸縮部材5,5を設けることができる。図示の形態では、合計6本である。
【0047】
本例では、ファスニング片7として、面ファスナーを用いることで、バックシート10に対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片7による止着位置を自由に選択できる。
【0048】
ファスニング片7は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート10に、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素7Aを有する。フック要素7Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素7Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素7Aより先端側に仮止め接着剤部7Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部7Bが起立シート4に接着されることによりファスニング片7の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片7の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部7Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0049】
前身頃の開口部側には、バックシート10の内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート20が設けられ、ファスニング片7のフック要素7Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート10を通して視認可能なように施されている。
【0050】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして各弾性伸縮部材5,5…の収縮力が作用するので、脚周りでは、各弾性伸縮部材5,5…の収縮力により起立カフスBが起立する。
【0051】
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性表面シート1を通って吸収体3内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスBの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0052】
本形態において、各起立カフスBを形成する起立シート4は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート1(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、起立シート4及びバックシート10は、それぞれ通気性があり、かつ起立シート4及びバックシート10は、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0053】
上記はテープ式の例であるが、図示して敢えて説明を省略するが、表面シート、セカンドシート、吸収体及び裏面シートを有し、前身頃及び後身頃の両側部が接合されたパンツ型おむつにも適用できる。また、生理用ナプキンや失禁パッドなどの他の吸収性物品にも使用できる。
【0054】
<セカンドシートについて>
本発明のセカンドシートは、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリエステル、あるいはその他の熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維(熱接着性複合繊維も含む)からなる不織布を用いることができる。
【0055】
セカンドシートとしては、短繊維ウェブから得られるものを使用するのが望ましい。その不織布の製法としては、例えば、乾式法、湿式法、直接法としてのスパンボンド法及びメルトブローン法等が挙げられる。例えばメルトブローン法は、例えば、結晶性プロピレン系などの原料重合体を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡出された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、金網やベルトなどの捕集装置上で極細短繊維(不連続繊維)ウェブとする。これらの場合、短繊維同士の接着を図ることができる。すなわち、短繊維同士をそれら自体がもっている熱により熱融着させる方法の他、他の接着法、例えばニードルパンチ法、ウオータージェット(スパンレース法)、超音波シール等の手段によって交絡処理させる方法、あるいは熱エンボスロールによる熱融着法(カレンダー法)やエアスルー法等の方法によって接着させることができる。このような不織布には、親水化処理を行うことができる。
【0056】
直接法以外では、短繊維を分散して降り積もらせるようないわゆる短繊維分散落下型である例えば、エアレイド法や短繊維を液体中で分散堆積させる湿式抄造法等のウェブ製造装置を用い、ウェブを形成し、さらに熱処理機で熱接着温度以上の温度で熱処理し繊維の交点を熱接着させることができる。ウェブ製造装置として、繊維を分散して降り積もらせるエアレイド法で得られた短繊維不織布は嵩が高くなり、不織布の密度を小さいものとすることが容易となる。繊維を分散して降り積もらせるようないわゆる短繊維分散落下型である例えば、エアレイド法のウェブ製造装置としては、例えば、前後、左右、上下、水平円状等の何れかに振動し、短繊維を篩の目から分散落下させる箱型篩タイプの装置が使用できる。また、ネット状の金属多孔板が円筒状に成形され且つその側面に繊維の投入口を有し、繊維をその目から分散落下させるネット状筒型タイプの装置等が使用できる。上記のウェブ製造装置を用い、その篩の目から短繊維をランダム分散落下させ、その下部に配置されたネットコンベアー等のようなウェブ捕集装置上に積層するように捕集し、その後に熱処理機を用い低融点成分以上、つまり熱接着温度以上高融点成分の融点以下の温度に加熱し短繊維の交点を接着することで短繊維不織布を得ることができる。ウェブの熱処理機は、エアスルー型熱処理機、エンボスロール型熱処理機、フラットロール型熱処理機等及び、その何れかの組合せた装置等が使用できる。特にエアスルー型熱処理機を用いた場合、嵩高な不織布が得られるので、本発明のセカンドシートの製造に適している。
【0057】
短繊維不織布は、繊維長の極めて短い短繊維を使用しているので、各々の繊維が種々異方性を持ってランダムな分散配列をして積層されている。この状態で繊維(あるいは熱接着性複合繊維)同士の交点が熱接着されているので構造的に極めて通水性に適したマトリクス構造が形成されているのである。しかも2.2〜6.5デニールのものを使用すると、荷重付加してもマトリクス構造が破壊されにくい。その結果、圧縮回復率が大きくなる。従って、吸収性物品を貯蔵時または運搬時にコンパクト化させても、嵩回復性に優れるので、良好な通水性を維持することができるのである。このため、尿、経血などの体液を吸収体内部へ速く移行させ、柔軟性に富むものとなる。
【0058】
セカンドシートとしては、所定の密度の確保が重要となるが、柔軟性を阻害してはならない。そこで、素材シートを熱処理機にかけた後、最終製品とする前、すなわち巻き取り前に、金属ロール(通常は鋼製ロール)とコットンロールとの間でニップ状態で通す(圧密処理する)ことが特に望ましい。この場合におけるコットンロールとしては、金属ロールにコットン層で被覆したもののほか、特にはゴムロールをコットン層で被覆したものが最適である。コットンロールとしては、ショアーD硬度(JIS K7215)で60〜94度、特に80〜90度の硬さのものが望ましい。
【0059】
積繊した端繊維を熱処理後において、金属ロールとコットンロールとの間でニップ状態で通すと、嵩を低下させ(密度を高め)ながらも、柔軟性を低下させない又は低下させるとしてもその柔軟性の低下度合いが低いものである点は、不織布の製造において画期的な知見であると思われる。
【0060】
このように得られた不織布のうち、KES圧縮試験の圧縮特性における圧縮固さLC(「圧縮特性の直進性LC」とも称される)の値が0.15〜0.25、特に0.18〜0.22のものがセカンドシートとして最適である。
【0061】
この圧縮特性の試験は、圧縮面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で、最大圧縮荷重50gf/cm2まで紙試料を圧縮し、元に戻すときの圧縮特性を評価するものである。このときの図3に示される圧縮特性において、本発明における、圧縮特性の直進性(圧縮固さ)LCとは、図3に示す斜線部の面積(S1+S2)/△ABCの面積の割合を示す。ここで、LCは、押し込み深さに対する反発力の直進性を意味し、固いものほど直進性が高く数値が高い。手で押し込んだときの適度な反発力が感じられる数値範囲である。すなわち弾力感に対応する。
【0062】
圧縮特性の直進性LCの値が0.15未満では、逆戻り防止が充分でなく、0.25を超えると硬くなり、本発明で期待する柔軟性を得ることができない。
【0063】
必要ならば(通常は不要)、柔軟材を不織布原料に混入することによって柔軟性を向上させることもできる。柔軟剤としては、例えば、ワックスエマルジョン、反応型柔軟剤、シリコン系のものなどを使用することもできるが、界面活性剤を使用するのが好ましい。界面活性剤としては、カルボン酸塩系のアニオン界面活性剤、スルホン酸塩系のアニオン界面活性剤、硫酸エステル塩系のアニオン界面活性剤、リン酸エステル塩系のアニオン界面活性剤(特にアルキルリン酸エステル塩)等のアニオン界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット蜜ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の、非イオン界面活性剤;第4級アンモニウム塩、アミン塩又はアミン等のカチオン界面活性剤;カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体等の、両性イオン界面活性剤;などを使用することができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例をもとに、本発明の効果を説明する。
本発明に係るセカンドシートを使用して紙おむつと市販の紙おむつの表面部の柔らかさ特性、体液吸収性(吸収速度及び逆戻り特性)を調べた。併せて官能評価との対応を調べた。
【0065】
セカンドシートとしては、その素材シートとして、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を原料としてエアスルーによりウェブを形成した後、熱ロールの温度を125℃、不織布の速度を80〜120m/分、熱ロールの不織布に対する圧力を20kgf/cm2とするニップ(抑え込み)処理をして得た。短繊維の繊維長は、平均41mm程度であった。
【0066】
KES圧縮試験の圧縮特性における圧縮固さLC(「圧縮特性の直進性LC」)の測定に際しては、試料を150mm×150mmでサンプリングし、これを前述の試験方法によって測定したものである。
【0067】
また、体液吸収性(逆戻り(さらっと感)特性)は次記の方法で測定した。
(1)吸収体にセカンドシート及びトップシートを順に積層した状態で、50ccの人口尿を注入し、3分、5分及び30分放置する。
(2)放置後、注入口に予め重量を測定しておいたろ紙当て、その上に1.0kgの錘(接触面積100cm2)を載せ、1分後に、ろ紙の重量を測定する。
(3)人口尿吸収によるろ紙重量の増加量を逆戻り特性(さらっと感)の指標とする。
【0068】
官能評価は、10人の成人一般試験員を選定し、試料を見せない状態で感触の評価によるものである。「柔らかさ」の評価は、ソフト感及びクッション性などを中心として評価したものである。「さらっと感」は、表面の体液残りの程度によるものである。評価は、◎、○、△、×の4段階である。
【0069】
KES試験結果(値が小さいほど「ふんわり」していることを意味する)、逆戻り特性の結果とあわせて官能評価の結果を、表1に示した。なお、市販品については、これを分解して、キシレンに浸漬し、ホットメルト接着剤を完全に除去したものを使用した。さらに、試験に供したセカンドシートを使用し、比較例1に係る構造の紙おむつに適用したサンプルを製作し、ある消費者に実使用してもらい、アンケート結果を回収した。その消費者調査結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1及び表2から、本発明のセカンドシートを有する紙おむつは、市販の紙おむつに比較して、逆戻りが実質的にないものでありながら、柔軟性に富むものとなった。
【0073】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、おむつ表面における吸収速度が充分高く、体液の逆戻り防止及びおむつ表面の濡れ・カブレ防止を図ることができる。しかも、かかる効果が発揮されつつ、おむつの表面部が柔軟性に富み、商品価値が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 吸収性物品例としての使い捨ておむつの平面図である。
【図2】 図1の2−2線矢視図である。
【図3】 圧縮固さLC(「圧縮特性の直進性LC」)の測定の説明図である。
【符号の説明】
1…透液性表面シート、2…不透液性裏面シート、3…吸収体、4…起立シート、5…弾性伸縮部材、10…バックシート。
Claims (3)
- 透液性表面シートを通して受けた体液を吸収体により吸収し、裏面側への漏れ防止を図る構造の吸収性物品において、
前記表面シートを、目付が18〜25g/m 2 の不織布とするとともに、
前記表面シートと前記吸収体との間に、繊度が2.2〜6.5デニールの熱接着性複合繊維からなり、目付が35〜45g/m 2 のセカンドシートを配置し、
前記セカンドシートは前記繊維からなる繊維ウェブをエアスルー型熱処理機で熱接着した後、金属ロールとJIS K7215によるショアーD硬度が60〜94度であるコットンロールとの間にニップ状態で通すことにより圧密処理して得られる不織布であり、
KES圧縮試験の圧縮特性における;
(1)前記セカンドシートの圧縮固さLCの値が0.15〜0.25、
(2)前記セカンドシートの厚み>前記表面シートの厚み、かつ0.5gf/cm2荷重時のセカンドシートの厚みが0.7〜0.9mm、
であり、
前記セカンドシートの密度が前記表面シートの密度よりも高い、
ことを特徴とする吸収性物品。 - 前記表面シートの密度/前記セカンドシートの密度が0.8〜0.9であり、
前記KES圧縮試験の圧縮特性における、0.5gf/cm2荷重時の前記表面シートの厚み+セカンドシートの厚み=1.0〜1.2mmである、
請求項1記載の吸収性物品。 - 透液性表面シートを通して受けた体液を吸収体により吸収し、裏面側への漏れ防止を図る構造の吸収性物品の製造に際し、
前記表面シートとして、目付が18〜25g/m 2 の不織布を用いるとともに、
前記表面シートと前記吸収体との間に配置される不織布からなるセカンドシートの素材シートを製造するにあたり、エアスルー型熱処理機で熱接着性複合繊維からなる繊維ウェブを熱接着した後、最終段階で、金属ロールとJIS K7215によるショアーD硬度が60〜94度であるコットンロールとの間にニップ状態で前記繊維ウェブを通して圧密処理することにより、
KES圧縮試験の圧縮特性における;
(1)圧縮固さLCの値が0.15〜0.25、
(2)厚み>前記表面シートの厚み、かつ0.5gf/cm2荷重時の厚みが0.7〜0.9mm、
であり、繊度が2.2〜6.5デニールの熱接着性複合繊維からなり、目付が35〜45g/m 2 であり、密度が前記表面シートよりも高い素材シートを得て、
この素材シートをセカンドシートとして前記表面シートと前記吸収体との間に配置する、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
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