JP4164406B2 - レーダ装置および類似装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、極座標系で受信される探知信号を直交座標系に変換して表示器に出力するレーダ装置やソナー装置、特に、探知された物標のスキャン相関処理結果を出力する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
舶用のレーダ装置は、レーダアンテナから電波を送信し、物標で反射して得られた極座標系の受信データを直交座標系に変換して画像メモリに記憶した後、ラスター走査方式で表示器に表示する。ここで、受信データは、必ずしも目的とする物標で反射したものだけでなく、海面反射等による不要な成分(以下、これを「クラッター」という。)をも含んでいる。このため、従来のレーダ装置では、レーダアンテナが1回転する間に得られる今回の受信データと以前のスキャン相関処理データとの相関を繰り返し行うスキャン相関処理機能を備えている。この処理を行うことで、クラッターのような突発的なデータを除去し、必要とする物標からの受信データのみを表示することができる。
【0003】
このようなスキャン相関処理を行うレーダ装置の従来の構造について図9を参照して説明する。
【0004】
図9は従来のスキャン相関処理付きレーダ装置の主要部を表すブロック図である。
レーダアンテナ101は、所定回転周期で水平面を回転しながら、所定送受信周期でパルス状電波を外部に送信するとともに、物標で反射した電波を極座標系で受信し、受信部102に受信信号を出力し、描画アドレス発生部105にスイープ角度データを出力する。受信部102はレーダアンテナ101からの受信信号を検波して増幅し、AD変換部103に出力する。AD変換部103は、このアナログ形式の受信信号を複数ビットからなるディジタル信号(受信データ)に変換する。スイープメモリ104は、ディジタル変換された1スイープ分の受信データを実時間で記憶し、次の送信により得られる受信データが再び書き込まれるまでに、この1スイープ分のデータを相関データ発生部107に出力する。
【0005】
描画アドレス発生部105は、図2に示すように、スイープの中心を開始番地として、中心から周囲に向かって、所定方向(例えば船首方向)を基準としたアンテナの角度θとスイープメモリ104の読み出し位置rとから、対応する直交座標系で配列された画像メモリの画素を指定する番地を作成する。この描画アドレス発生部105は、具体的には次式を実現するハードウェアにより構成される。
【0006】
X=Xs+r・sinθ
Y=Ys+r・cosθ
ただし、
X,Y:画像メモリの画素を指定する番地
Xs,Ys:スイープの中心番地
r:中心からの距離
θ:スイープ(アンテナ)の角度
FIRST/LAST検出部106は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転中において、相関処理用画像メモリ108上における描画アドレス発生部105で設定された直交座標系の各画素に、このスイープが最初にアクセスした時点、または最後にアクセスした時点を検出し、このいずれかのタイミングを相関データ発生部107に与える。これは、スキャン相関処理用画像メモリの各画素の更新をスイープ1回転につき1回のみに制限することが必要であるため、このタイミングとしてFIRST信号またはLAST信号を使用する。
【0007】
相関データ発生部107は、FIRST/LAST検出部106から入力されるFIRST信号(またはLAST信号)に基づいて、スイープメモリ104から入力される受信データと、後述する相関処理用画像メモリ108に記憶されているスイープの1回転前の画像データとを用いてスキャン相関処理を行い、再度、相関処理用画像メモリ108に記憶させる。
【0008】
ここで、例えば、スキャン相関処理は、スイープメモリ104から入力される受信データをN(t)とし、相関処理用画像メモリ108から入力される、前回までに得られた、前記受信データに該当する画素位置の相関処理画像データをW(t−1)とすると、次式を用いて、今回1回転中の相関処理画像データW(t)を演算する。
【0009】
W(t)=α・N(t)+β・W(t−1)
ここで、α,βは任意の数であり、このα,βの値を変えることにより、スキャン相関処理内容を変更することができる。
相関処理用画像メモリ108は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転分の受信データ(相関処理画像データ)を記憶する容量を備え、スキャン相関処理のために、1回転前の相関処理画像データを相関データ発生部107にフィードバックする。また、相関処理用画像メモリ108は、図示されていない表示制御部により、表示器109がラスター走査されると、このラスター走査に同期して、相関処理画像データを出力する。ここで、相関処理画像データの画素データ毎のデータ値に応じて輝度や表示色を異ならせることで、オペレータはこのスキャン相関処理された画像を用いて物標の位置や動きを認識する。(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−352212号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のスキャン相関処理を行うレーダー装置では、スキャン相関中に、GAINや、STC、FTC等を調整する場合、調整結果が映像に反映されるまでに、前記レーダーアンテナの数回転分(α、βの値により決まる)の時間を必要とし、この間オペレータは最適な調整量の加減が判りにくく、調整に時間がかかるとともに調整が困難である。また、スキャン相関処理を行わない生の受信信号による表示からスキャン相関処理画像データによる表示に切り換える場合も、アンテナ数回転部の時間を有するため、前述のような不具合が発生する。
【0012】
また、選択したスキャン相関処理内容が適当でない場合、抑圧したい画像が強調され、逆に強調したい画像が抑圧されることがあるが、このような状態を判断し最適な処理内容に変更する場合にも、前述のように所定時間を要してしまう。
【0013】
また、高速で移動する他船と海岸等の固定物標とでは、スキャン相関処理内容が異なり、固定物標を強調するスキャン相関処理内容とした場合、高速で移動する他船の画像が抑圧されてしまう可能性がある。すなわち、固定物標を強調すれば移動物標が抑制され、反対に移動物標を強調すれば固定物標が抑制される。
【0014】
この発明の目的は、現在受信中の受信データによるスキャン相関していない画像から、スキャン相関処理後の画像へ徐々に近づける、または、あるスキャン相関処理を実行した画像から、異なったスキャン相関処理を実行した画像へ徐々に近づけることにより、所望の画像を即座に観測できるレーダ装置および類似装置を提供することである。
【0015】
また、この発明の目的は、現在受信中の受信データとスキャン相関処理画像データとを並行して出力したり、異なる内容の二つのスキャン相関処理画像データとを並行して出力することで、所望の画像を即座に出力できるレーダ装置および類似装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明のレーダ装置および類似装置は、スイープが回転して得られる今回の受信データの画素データと記憶されている当該画素データの以前のデータとの相関処理を行って、スキャン相関処理データを生成するスキャン相関処理手段と、受信データとスキャン相関処理データとを入力し、スイープ1回転中における所定タイミングで前記受信データを画像データとして出力し、所定タイミング以外の期間に該受信データとスキャン相関処理データとに基づいてこれらの間の値となる変移データを生成し画像データとして出力する変移画像データ生成手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】
この構成では、極座標系の受信データが直交座標系の画像メモリの各画素エリアに最初または最後にアクセスするタイミングを検出して、このタイミング信号がスキャン相関処理手段と変移画像データ生成手段とに入力される。スキャン相関処理手段はこのタイミング信号に基づいて、今回の受信データと既に記憶されている以前のスキャン相関処理画像データとを用いて、今回のスキャン相関処理画像データを生成し更新する。変移画像データ生成手段は、入力される生の受信データとスキャン相関処理画像データとを入力し、スイープ(アンテナ)の1回転中において、前記タイミング信号が入力されると生の受信データを選択して、後述するラジアル描画アドレスで画像メモリに書き込み、前記タイミング信号が入力されていない期間に、前記スキャン相関処理画像データと受信データとを用いて、この受信データによる画像データとスキャン相関処理画像データとの間の状態となる変移データを生成して、後述するラスター描画アドレスで画像メモリに書き込む。これらの描画動作と並行して表示器の走査に同期して読み出し、表示器に映像として表示する。この変移データの生成は該当する画素に対する次のタイミング信号が入力されるまで繰り返し行われる。これにより、表示器には、生の受信データから時間経過とともに徐々にスキャン相関処理画像データに変化していく画像が表示される。
【0018】
また、この発明のレーダ装置および類似装置は、それぞれにスイープが回転して得られる今回の受信データの画素データと記憶されている当該画素データの以前のデータとの相関処理を行って、スキャン相関処理データを生成する第1、第2のスキャン相関処理手段と、第1のスキャン相関処理手段で生成される第1のスキャン相関処理データと、第2のスキャン相関処理手段で生成される第2のスキャン相関処理データとを入力し、スイープ1回転中における所定タイミングで前記第2のスキャン相関処理データを画像データとして出力し、所定タイミング以外の期間に第1、第2のスキャン相関処理データに基づいてこれらの間の値となる変移データを生成し画像データとして出力する変移画像データ生成手段とを備えたことを特徴としている。
【0019】
この構成では、極座標系の受信データが直交座標系の画像メモリの各画素エリアに最初または最後にアクセスするタイミングを検出して、このタイミング信号が第1、第2のスキャン相関処理手段と変移画像データ生成手段とに入力される。第1、第2のスキャン相関処理手段は、それぞれにこのタイミング信号に基づいて、今回の受信データと既に記憶されている以前のスキャン相関処理画像データとを用いて、今回のスキャン相関処理画像データを生成し更新記憶する。変移画像データ生成手段は、第1のスキャン相関処理手段から入力される第1のスキャン相関処理画像データと第2のスキャン相関処理手段から入力される第2のスキャン相関処理画像データとを入力し、スイープ(アンテナ)の1回転中において、前記タイミング信号が入力されると第2のスキャン相関処理画像データを選択して、後述するラジアル描画アドレスで画像メモリに書き込み、前記タイミング信号が入力されていない期間に、前記第1のスキャン相関処理画像データと第2のスキャン相関処理画像データとを用いて、この第2のスキャン相関処理画像データと第1のスキャン相関処理画像データとの間の状態となる変移データを生成して、後述するラスター描画アドレスで画像メモリに書き込む。これらの描画動作と並行して表示器の走査に同期して読み出し、表示器に映像として表示する。この変移データの生成は該当する画素に対する次のタイミング信号が入力されるまで繰り返し行われる。これにより、表示器には、第2のスキャン相関処理画像データから時間経過とともに徐々に第1のスキャン相関処理画像データに変化していく画像が表示される。
【0020】
また、この発明のレーダ装置および類似装置は、第1のスキャン相関処理手段で、受信データをスキャン相関処理することなく出力することを特徴としている。
【0021】
この構成では、前述の第2のスキャン相関処理画像データから第1のスキャン相関処理画像データに変移していくとき、この第1のスキャン相関処理画像データが受信データであるので、実質的に、第2のスキャン相関処理画像データから受信データへ徐々に変化する画像が表示される。
【0022】
また、この発明のレーダ装置および類似装置は、変移画像データ生成手段に加減算器または乗算器を備え、変移データの生成演算に加減算処理または乗算処理を用いたことを特徴としている。
【0023】
この構成では、変移データの生成演算を構成が簡素な加減算器または乗算器で行われることで、変移画像データの生成演算が容易となる。
【0024】
また、この発明のレーダ装置および類似装置は、変移画像データ生成手段で、複数の変移データを同時に生成、記憶することを特徴としている。
【0025】
この構成では、変移データが複数同時に生成記憶されることで、変移データの生成、記憶速度が高速化するため、アンテナ1回転中における変移データの生成、記憶回数が増加する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置について、図1〜図6を参照して説明する。
【0027】
図1は本実施形態に係るレーダ装置の主要部の構成を示すブロック図である。レーダアンテナ1は、所定回転周期で水平面を回転しながら、所定送受信周期でパルス状電波を外部に送信するとともに、物標で反射した電波を極座標系で受信し、受信部2に受信信号を出力し、ラジアル描画アドレス発生部5にスイープ角度データを出力する。受信部2はレーダアンテナ1からの受信信号を検波して増幅し、AD変換部3に出力する。AD変換部3は、このアナログ形式の受信信号を複数ビットからなるディジタル信号(受信データ)に変換する。スイープメモリ4は、ディジタル変換された1スイープ分の受信データを実時間で記憶し、次の送信により得られる受信データが再び書き込まれるまでに、この1スイープ分のデータをスキャン相関処理部7に出力する。
【0028】
ラジアル描画アドレス発生部5は、スイープの中心を開始番地として、中心から周囲に向かって、所定方向(例えば船首方向)を基準としたアンテナの角度θとスイープメモリ4の読み出し位置rとから、対応する直交座標系で配列された画像メモリの画素を指定する番地を作成する。この極座標系と直交座標系との関係を図2に示す。図2に示すように、スイープの中心番地を(Xs,Ys)とし、rを中心からの距離とし、スイープ(レーダアンテナ1)の角度とすると、画像メモリの画素を示す番地(X,Y)は、次式で表される。
【0029】
X=Xs+r・sinθ
Y=Ys+r・cosθ
ラジアル描画アドレス発生部5は、具体的には前式を実現するハードウェアにより構成される。
【0030】
なお、ラジアル描画アドレス発生部5には、自船の船首方位、速度、緯度経度等が入力され、これにより自船の姿勢および移動量を安定化させたアドレス発生処理を行う。
【0031】
FIRST/LAST検出部6は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転内において、それぞれの画像メモリ8,13上におけるラジアル描画アドレス発生部5で設定された直交座標系の各画素に、このスイープが最初にアクセスした時点、または最後にアクセスした時点を検出し、このいずれかのタイミングをスキャン相関処理部7およびセレクタ10,12に与える。これは、スキャン相関処理用画像メモリの各画素の更新をスイープ1回転につき1回のみに制限することが必要であるため、このタイミングとしてFIRST信号またはLAST信号を使用する。
【0032】
このように、画素の更新のためにはスイープ1回転についき1回でよいので、FIRST検出またはLAST検出のいずれかを行えばよく、以下の説明では、FIRST検出する場合を示す。以下、FIRSTのタイミングで出力する信号を「FIRST信号」という。
【0033】
スキャン相関処理部7は、FIRST/LAST検出部6から入力されるFIRST信号に基づいて、スイープメモリ4から入力される受信データと、後述するスキャン相関処理用画像メモリ8に記憶されているスイープの1回転前の画像データとを用いてスキャン相関処理を行い、再度、スキャン相関処理用画像メモリ8に記憶させる。
【0034】
このスキャン相関処理は、スイープメモリ4から入力される受信データをN(t)とし、相関処理用画像メモリ8から入力される、前回1回転中に得られた、前記受信データに該当する画素位置のスキャン相関処理画像データをW(t−1)とすると、次式を用いて、今回1回転中のスキャン相関処理画像データW(t)を演算する。
【0035】
W(t)=α・N(t)+β・W(t−1)
ここで、α,βは任意の数である。
【0036】
この処理は継続して行われ、スキャン相関処理画像データはこれに伴い随時更新されていく。そして、αおよびβを所定値に設定することで、所望の物標からの受信データを強調し、他の物標や不要成分を抑制することができる。
スキャン相関処理用画像メモリ8は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転分の受信データ(スキャン相関処理画像データ)を記憶する容量を備え、スキャン相関処理のために、1回転前の相関処理画像データをスキャン相関処理部7にフィードバックするとともに、変移データ発生部11に出力する。
【0037】
ラスター描画アドレス発生部9は、図3に示すように、表示用画像メモリ13上の直交座標系の各画素の番地を作成する。図3において、X’s、Y’sは始点の座標、mは表示用画像メモリ13上のラスターアドレス始点からのY方向の画素数、nは表示用画像メモリ13上のラスターアドレス始点からのX方向の画素数であり、表示用画像メモリ13上の各画素の番地(X,Y)は次式で表される。
【0038】
X=X’s+n
Y=Y’s+m
セレクタ10はFIRST/LAST検出部6からのFIRST信号と、ラジアル描画アドレス発生部5からのラジアル描画アドレスと、ラスター描画アドレス発生部9からのラスター描画アドレスとを入力し、FIRST信号が入力された場合(FIRST=1)は受信データのラジアル描画のため、スキャン相関処理用画像メモリ8および表示用画像メモリ13にラジアル描画アドレスを出力し、FIRST信号が入力されていない場合(FIRST=0)はスキャン相関処理したデータのラスター描画のため、スキャン相関処理用画像メモリ8および表示用画像メモリ13にラスター描画アドレスを出力する。
【0039】
変移データ発生部11は、図4に示すように、比較器51と加減算器52とを備えており、比較器51に入力されるスキャン相関処理用画像メモリ8からのスキャン相関処理画像データaと、後述の表示用画像メモリ13に記憶され、フィードバックされている表示画像データbとを比較し、これらの差の絶対値|b−a|と「0」との間の値k(0<k<|b−a|)を加減算器52に出力する。加減算器52は入力されたkと表示画像データbとを入力して、表示画像データbとkとを次式を用いて加減算してその結果としての変移データcをセレクタ12に出力する。
【0040】
ここで、前記加減算は、a(スキャン相関処理画像データ)<b(表示画像データ)の時、
c=b−kの演算を行い、
a(スキャン相関処理画像データ)>b(表示画像データ)の時、
c=b+kの演算を行う。
この演算は所定周期で繰り返し行われ、演算を繰り返す毎に徐々に表示画像データがスキャン相関処理画像データに近づいていく。
なお、前述の説明では、kはb,aにより決定されるが、予め所定値(例えば「1」)に設定しておいても良い。
【0041】
セレクタ12は、スイープメモリ4からの受信データと変移データ発生部11からの変移データと、FIRST/LAST検出部6からのFIRST信号とを入力し、FIRST信号が入力された場合(FIRST=1)に、受信データを表示用画像メモリ13に出力し、FIRST信号が入力されない場合(FIRST=0)に、変移データを表示用画像メモリ13に出力する。
【0042】
例えば、レーダアンテナ1の回転数が24rpmであり、1スイープ上の半径画素数が512であり、表示用画像メモリ13の画素数(ラスター描画数)が1024×1024=1048576であり、さらに1画素当たりの描画速度が0.1μsec.であった場合、スイープ上の半径画素数が512であるので、アンテナ1回転中にFIRST信号入力タイミングで描画する画素数(ラジアル描画数)は多くとも、512×512×π=823550画素である。この全てを描画すると必要時間は、823550×0.1(μsec.)=0.08sec.となり、アンテナ回転数が24rpmであることからアンテナの回転周期は2.5sec.であるので、変移データの描画に少なくとも2.5−0.08=2.42sec.利用することができる。変移データの描画数(ラスター描画数)は1048576であるので、全ての画素を描画しても、1048576×0.1(μsec.)=0.1sec.程度となるので、アンテナ1回転中に2.42(sec.)/0.1(sec.)=24回程度変移データを描画できる。すなわち、約24回、アンテナ1回転中に各画素の変移データを生成できる。
なお、実際には、表示器に表示するための画像メモリへの表示アクセスの時間も考慮する必要があるが、上記の計算では表示アクセスに必要な時間を省略した。
【0043】
表示用画像メモリ13は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転分の画像データ(受信データおよび変移データ)を記憶する容量を備え、記憶されている画像データを変移データ発生部11にフィードバックする。また、表示用画像メモリ13は、FIRST信号がセレクタ12に入力されている時にラジアル描画アドレスで画像データを描画し、FIRST信号がセレクタ12に入力されていない期間にラスター描画アドレスで画像データを描画する。そして、表示用画像メモリ13は、図示されていない表示制御部により、表示器14が走査されると、この走査に同期して、描画された画像データを表示データとして出力する。
【0044】
ここで、これら変移データ発生部11とセレクタ12と表示用画像メモリ13とで本発明の変移画像データ生成手段を構成している。
【0045】
このような構成とすることで、アンテナ1回転中において、受信データと変移データとを並行して出力することができるとともに、この変移データを受信データから徐々にスキャン相関処理画像データに近づけることができる。
【0046】
例えば、物標が検出された画素の画素値の変化は、図5に示すように、あるFIRST信号入力タイミングで、受信データの強度に応じた画素値でラジアル描画され、これ以降、この受信データと1回転前のスキャン相関処理画像データからなる今回1回転分のスキャン相関処理画像データにおける該当画素の画素値に、徐々に変移して繰り返しラスター描画されていく。そして、次のFIRST信号入力タイミングで、再度物標が検出されれば、画素値は受信データの強度に応じた値でラジアル描画される。
【0047】
この構成により、図6(c)に示すような表示画像を得ることができる。
図6(a)は受信データのみからなる表示画像であり、図6(b)はスキャン相関処理画像データのみからなる表示画像である。そして、図6(c)は本実施形態に示すレーダ装置による表示画像である。
図6に示すように、表示画像上には、受信データによる画像とスキャン相関処理された画像とが存在し、スイープの回転方向に逆行する方向で徐々に、受信データによる画像からスキャン相関処理画像データによる画像に変化していく。
【0048】
これにより、オペレータはスキャン相関処理されていない画像とスキャン相関処理された画像の両方を観測することができる。
【0049】
例えば、高速で移動する他船は、現在の周囲の状態を確認できる受信データによる画像で捕捉し、ブイなどの固定物はスキャン相関処理された画像で捕捉することができる。さらに、海面反射等のクラッターは、受信データによる画像では表示されるが、スキャン相関処理された画像では表示されないので、これを基準に海面反射等のクラッターと所望の物標とを識別することができる。
【0050】
また、受信画像データとスキャン相関処理されたデータが同時に表示されるので、GAIN,STC,FTC調整を行う場合でも、調整結果が即座に確認することができ、調整操作が容易となる。
【0051】
また、受信画像データによる画像とスキャン相関処理画像データによる画像とを略同時に見られるので、最適な画像となるように切り換えたり、切り換えた後に処理結果が表示されるまで待つ必要がなくなる。
【0052】
また、受信画像データによる画像からスキャン相関処理画像データによる画像に徐々に変化する画像が表示されるので、オペレータは得られる情報が増加する。特に、変化する画像を観測することで、スキャン相関処理内容が適当ではなく所望の物標の画像が消えてしまうということを防止することができる。
【0053】
また、受信画像データによる画像とスキャン相関処理画像データによる画像とを略同時に見られるので、設定したスキャン相関処理内容が適当であるかを容易に且つ即座に確認することができる。
【0054】
なお、本実施形態の説明では、スキャン相関処理用画像メモリと表示用画像メモリとを別の物理メモリで構成したが、これらを同じ物理メモリ内に構成してもよい。これにより、レーダ装置の構成部品を削減することができ、装置のコストダウンを計ることができる。
【0055】
次に、第2の実施形態に係るレーダ装置について、図7を参照して説明する。図7は本実施形態に係るレーダ装置の主要部の構成を示すブロック図であり、図1に示したレーダ装置と同じ構成部分には同符号を付し、構成及び動作が同じものの説明は省略する。なお、本実施形態においても、FIRST信号を用いた場合について説明する。
【0056】
第2のスキャン相関処理部27はFIRST/LAST検出部6から入力されるFIRST信号に基づいて、スイープメモリ4から入力される受信データと、後述する第2のスキャン相関処理用画像メモリ28に記憶されているスイープの1回転前の画像データとを用いてスキャン相関処理を行い、セレクタ12に出力する。第2のスキャン相関処理用画像メモリ28には、ラジアル描画アドレス発生部5からラジアル描画アドレスが入力されており、第2のスキャン相関処理部27から出力されるデータを記憶するとともに、第2のスキャン相関処理部27にフィードバックする。ここで、第2のスキャン相関処理部27の動作は、第1の実施形態に示したスキャン相関処理部7の説明において、スキャン相関処理用画像メモリ8を第2のスキャン相関処理用画像メモリ28に置き換えたものと同じである。また、第1のスキャン相関処理部7と第2のスキャン相関処理部27とでは、係数α,βを異ならせることで、相関処理内容を変えたものである。
【0057】
セレクタ12は、第2のスキャン相関処理部27からの第2のスキャン相関処理画像データと変移データ発生部11からの変移データと、FIRST/LAST検出部6からのFIRST信号とを入力し、FIRST信号が入力された場合(FIRST=1)に、第2のスキャン相関処理データを表示用画像メモリ23に出力し、FIRST信号が入力されない場合(FIRST=0)に、変移データを表示用画像メモリ23に出力する。
【0058】
表示用画像メモリ23は、スイープ(レーダアンテナ1)の1回転分の画像データを記憶する容量を備え、変移データ発生部11に記憶されている画像データをフィードバックする。また、表示用画像メモリ23は、FIRST信号がセレクタ12に入力されている時にラジアル描画アドレスで画像データを描画し、FIRST信号がセレクタ12に入力されていない期間にラスター描画アドレスで画像データを描画する。そして、表示用画像メモリ23は、図示されていない表示制御部により、表示器14が走査されると、この走査に同期して、描画された画像データを表示データとして出力する。
【0059】
ここで、前述の変移データ発生部11とセレクタ12と表示用画像メモリ23とが本発明の変移画像データ生成手段に対応する。
【0060】
このような構成とすることで、第1のスキャン相関処理と第2のスキャン相関処理とを表示する場合に、FIRST信号入力タイミングで第2のスキャン相関処理画像データがラジアル描画アドレスを用いて描画され、これ以外の期間で徐々に第1のスキャン相関処理画像データに徐々に近づく変移データがラスター描画アドレスを用いてが描画される。
本実施形態に構成により、形成した表示画像例を図8に示す。
図8(a)は第1のスキャン相関処理画像データのみを表示したものであり、図8(b)は第2のスキャン相関処理画像データのみを表示したものであり、図8(c)は本実施形態に構成により得られる表示画像を示す。ここで、第1のスキャン相関処理は高速移動する物標(高速船)を探知するように設定されており、第2のスキャン相関処理は固定物標(ブイ等)を探知するように設定された場合を示す。
【0061】
図8(c)に示すように、本実施形態の構成を用いた場合、最初に固定物標であるブイの画像が観測され、その後ブイの画像が徐々に消えていくと同時に高速移動物標である高速船の画像が表示される。
【0062】
また、第1のスキャン相関処理画像データによる画像と第2のスキャン相関処理画像データによる画像とを略同時に見られるので、最適な画像となるように切り換えたり、切り換えた後に処理結果が表示されるまで待つ必要がなくなる。
【0063】
また、第2のスキャン相関画像データによる画像から第1のスキャン相関処理画像データによる画像に徐々に変化する画像が表示されるので、オペレータは得られる情報が増加する。特に、変化する画像を観測することで、スキャン相関処理内容が内容ではなく、所望の物標の画像が消えてしまうことを防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態の説明で、第1のスキャン相関処理のβ=0とすることで、第1のスキャン相関処理部ではスキャン相関処理を行うことなく変移データ発生部に出力する。これにより、第2のスキャン相関処理画像から徐々に生の受信データに変移していく画像データを出力することができる。
【0065】
また、本実施形態の説明では、第1のスキャン相関処理用画像メモリと表示用画像メモリとを別の物理メモリで構成したが、これらを同じ物理メモリ内に構成してもよい。これにより、レーダ装置の構成部品を削減することができ、装置のコストダウンを計ることができる。
【0066】
また、前述の各実施形態では、ラスター描画される変移データの生成および描画を1画素単位で行っていたが、連続するアドレスの変移データを一括処理することで、複数画素単位に生成および描画を行ってもよい。このような構成とすることで、変移データ全体の生成、描画時間を短縮することができ、アンテナ1回転中における変移データの生成、描画回数をさらに増加させることができる。
【0067】
また、前述の各実施形態ではレーダ装置について説明したが、極座標系で得られる受信データを直交座標系で表示する装置について、前述の構成は適用でき、これによる効果を期待することができる。
【0068】
また、前述の各実施形態では、簡単にするため、コンパス、船速、緯度/経度を入力した構成としていないが、実際の装置ではこれらの信号により、方位、位置を安定化した状態でのスキャン相関処理を実行することが望ましい。しかし、表示用画像メモリは、オペレータの使用用途に応じて、ヘッドアップ、コースアップ、ノースアップ相対運動で動作させる場合がある。この場合、スキャン相関処理用画像メモリと表示用画像メモリとで描画基準が異なるため、それぞれに専用のラスター描画アドレス発生部を設ける。そして、これらのラスター描画アドレス発生部における描画アドレスの進行方向を所望する角度に設定することにより、スキャン相関処理用画像メモリと表示用画像メモリとでモードが異なっていても、各画素同士を対応させることができる。
【0069】
【発明の効果】
この発明のレーダ装置および類似装置によれば、表示器に、スイープ1回転中に生の受信データから時間経過とともに徐々にスキャン相関処理画像データに変化していく画像が表示されるので、スキャン相関処理されていない生の物標の状況とスキャン相関処理された所望の物標の状況とを同時に観測できる。また、受信データとスキャン相関処理画像データとこれらの間の値の変移データとを同時に観測することで、設定したスキャン相関処理内容が適当であるかを容易に且つ即座に確認できる。また、これを観測しながら、スキャン相関処理内容を容易に調整できる。
【0070】
また、この発明のレーダ装置および類似装置によれば、表示器に、第2のスキャン相関処理画像データから時間経過とともに徐々に第1のスキャン相関処理画像データに変化していく画像が表示されるので、これらのスキャン相関処理内容を異ならせておけば、ブイ等の固定物標と高速に移動する他船とを同じ表示画面で同時に観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の主要部の構成を表すブロック図
【図2】ラジアル描画アドレスを表す概要図
【図3】ラスター描画アドレスを表す概要図
【図4】変移データ発生部の動作を説明するための概要図
【図5】表示用画像メモリの画素データの画素値の時間推移を表した図
【図6】第1の実施形態の構成を用いた場合の表示画像を表す図
【図7】第2の実施形態に係るレーダ装置の主要部の構成を表すブロック図
【図8】第2の実施形態の構成を用いた場合の表示画像を表す図
【図9】従来のレーダ装置の主要部の構成を表すブロック図
【符号の説明】
1,101−レーダアンテナ
2,102−受信部
3,103−AD変換部
4,104−スイープメモリ
5,105−描画アドレス発生部(ラジアル描画アドレス発生部)
6,106−FIRST/LAST検出部
7−スキャン相関処理部(第1のスキャン相関処理部)
27−第2のスキャン相関処理部
28−第2のスキャン相関処理用画像メモリ
8−スキャン相関処理用画像メモリ
9−ラスター描画アドレス発生部
10,12−セレクタ
11−変移データ発生部
13,23−表示用画像メモリ
14,109−表示器
107−相関データ発生部
108−相関処理用画像メモリ

Claims (5)

  1. スイープが回転して得られる今回の受信データの画素データと、記憶されている当該画素データの以前のデータとの相関処理を行って、スキャン相関処理データを生成するスキャン相関処理手段を備えたレーダ装置および類似装置において、前記受信データと前記スキャン相関処理データとを入力し、スイープ1回転中における所定タイミングで前記受信データを画像データとして出力し、前記所定タイミング以外の期間に該受信データと前記スキャン相関処理データとに基づいてこれらの間の値となる変移データを生成し画像データとして出力する変移画像データ生成手段を備えたことを特徴とするレーダ装置および類似装置。
  2. スイープが回転して得られる今回の受信データの画素データと、記憶されている当該画素データの以前のデータとの相関処理を行って、スキャン相関処理データを生成するスキャン相関処理手段を備えたレーダ装置および類似装置において、前記スキャン相関処理手段を二つ備えるとともに、第1のスキャン相関処理手段で生成される第1のスキャン相関処理データと、第2のスキャン相関処理手段で生成される第2のスキャン相関処理データとを入力し、スイープ1回転中における所定タイミングで前記第2のスキャン相関処理データを画像データとして出力し、前記所定タイミング以外の期間に第1、第2のスキャン相関処理データに基づいてこれらの間の値となる変移データを生成し画像データとして出力する変移画像データ生成手段を備えたことを特徴とするレーダ装置および類似装置。
  3. 前記第1のスキャン相関処理手段で、前記受信データをスキャン相関処理することなく出力する請求項2に記載のレーダ装置および類似装置。
  4. 前記変移画像データ生成手段は加減算器または乗算器を備え、前記変移データの生成演算に加減算処理または乗算処理を用いた請求項1〜3のいずれかに記載のレーダ装置および類似装置。
  5. 前記変移画像データ生成手段は、複数の変移データを同時に生成する請求項1〜4のいずれかに記載のレーダ装置および類似装置。
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